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2 章薬の副作用を考える

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は じめに

有吉 敏彦

社会の高齢化が進むにつれて朝夕散歩やジョギ ングを し,毎 日の食事に も気 をつけて,健康保持に努力 している人々が多い。 しか し,一方では病気の治療 や予防 ・保健のために,毎 日薬の恩恵をうけている人 もいるが,なかには薬の 好 ま しか らざる有害作用のために,薬に対 し強い不信感や不安を抱いている人 も見 うけられ る。特にマスコミによる薬の副作用や薬害の報道によって,薬は すべて有害であると信 じている人 も多いようである。確かに薬の適量投与によ る事件や,薬の併用服用による事件, またア レルギー体質のためにお こる副作 用,妊娠中の薬の服用による奇形児の誘発など種 々の事件が生 じたことも事実 である。

しか し,ペニ シリンやス トレプ トマイシン, クロラムフェニ コールなどの抗 生物質の発見は結核を始めとす る肺炎や赤痢,腸チフス, コレラなどの細菌性 疾患を激減 させ,ポ リオ生 ワクチ ンの投与は日本における小児麻痔の発生をほ ぼ絶滅 させた ことも事実である。世界の中では幼児が次々とポ リオウィルスに 侵 され,例えば,アフリカでは毎年5 0 万人以上の幼児が病気にかか り, 5 万人 以上が死亡 しているといわれている。 ワクチ ンさえ服用すれば予防 はで きる が,その薬を買 う資力がないためにそれがで きないのだといわれている。 これ

らの例は薬が病気の治療や予防に大 きい力を持 っている例の 1つである。

薬は何をどれだけの量 ( 用量)でどう ( 用法)のむのかさえ正 しければ, ヒ

トの もつ 自然治癒力を助 け,すぼ らしい効力を示す もの と考え られ る。 しか

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し, もともと薬 は生理 ( 薬理)活性を もつ化学物質であ り体にとっては異物で ある。薬 は一般に一種類のみの作用を示すわけではな く,通常の用量で治療の 目的をす る薬理効果を示す作用を主作用 といい,治療上不必要か又は妨害にな るような作用を副作用 とい う

なかには体 にとって有害 に しかな らない作用 ( 有害作用 という) も生ず ることがある。 まず,薬の副作用を考えるためには 薬に対す る正 しい知識を学ばねばな らない。

1 節 薬の種類

薬は人の保健衛生上重要な役割を果たすので法律で規制されている。医薬品 の生産,取 り扱いに関 しては薬事法という法律がある。薬事法は医薬品を 1 ) 日本薬局方に収め られているもの ,2) 人 または動物の疾病の診断,治療 また は予防に使用 されていることが 目的とされているものであって器具器械でない もの ,3) 人または動物の身体の構造 または機能に影響を及ぼす ことが 目的 と されているものであって器具器械でないもの,と定義 している。参考 までに最 終頁に医薬品,医薬部外品,化粧品などの定義の表を掲げてお く。

沢山の薬は効能,薬理作用別にみると,治療薬 として病気の原因となる細菌 や微生物に直接作用 して死滅殺菌 させたり,その生育を阻害させたりして病気 を治療す る原因療法薬 と,病気の種 々の症状,頭が痛い,のどが痛い,熱があ る,下痢をす るなどの症状を緩和 させ る対症療法薬があ り,他方,将来おこる か もしれない病気を防 ぐ予防 ・保健薬に分け られる。 しか し,普通は,病気や 診療所で診察を うけたのち,医師か らもらう薬 と自分の判断でセル フメ

デ ィ

ケーション :自己治療の手段 として薬局などで自分で買 う薬に分けた方が理解

しやすい。つまり医師や歯科医師によって使用 され, これ らの人達の処方等ま

たはその指示によって使われる薬,医療用医薬品 と,一般消費者が薬局などで

直接購入できる医療用医薬品以外の処方等な しで買える薬,一般用医薬品のこ

とである。 この薬 は米国で は OT C ( ov e rt hec ount e rdr ugs )と呼ばれてい

ます大衆薬 といえる。薬事法では一般に,1 )薬理作用が激 しいもの ,2) 副作

用が強いもの ,3) 品質の経時的変化が著 しいもの ,4) 耐性が生 じやすいよう

な医薬品はむやみに使われないように要指示薬品 として,処方等があるかまた

(3)

は医師などの指示をうけた もの以外には売 ってはな らないことに定め られてい る。

処方等な しで購入できる一般用医薬品は大 きく分けて 5 つの販売業者か ら購 入す ることができる。店 ごとに管理薬剤師がいて,調剤室があ り,処方等に 従 って調剤を行 っているのが 1 )薬局で,調剤を行 っていないのが 2) 一般販 売業である 。3) 薬種商販売業は厚生大臣の指定す る薬以外の医薬品を売 るこ

とができる。政令で定める基準に該当するか,都道府県知事が行 う薬種商販売 業の認定試験に合格 した人が,店をかまえて売ることができる薬店 といわれる 小売業者である。指定医薬品の販売は禁止 されている 。4) 配置販売業者 は富 山の置き薬屋 さんで知 られている昔か らあった販売方法である。厚生大臣が定 めた配置販売品目指定基準に従 って,都道府県知事が指定 した医薬品目のみ販 売が可能で,販売員は一般家庭を訪問 して一般薬を配置 し,後 日使用 した薬だ けの代金を集金する販売方法である 。5) 特例販売業は薬局及び医薬品販売業 の普及が十分でない場合や特に必要である場合に限 って都道府県知事が許可を 与えたものである。知事が指定 した品 目以外は販売が禁止 されている。長崎県 では,約3 00 カ所認め られている。

2 節 薬の体の中での動き

薬が休の中で分解 されずに吸収 されて血液の中に入 り,全身に分布 して薬が 作用する場所 ( 作用点)に到達 して始めて,薬の作用が発揮されるが,この作 用点に到達するまでに多 くの関門がある。まず錠剤や頼粒剤などの,固形の薬 が体内で吸収 されるためには,崩壊 したのち溶液の形になる必要がある ( 図 1 ) 。粉 ぐす りの方が速 くまた多 く吸収 され,水 ぐす りではもっと効率よ く吸 収 され る。 しか し粉 ぐす りで も溶けに くい薬では吸収が遅 く,悪い場合 もあ る。服用 した薬がどれだけ吸収利用されたかを生物学的利用率 ( バイオアベイ ラビリティ)という

どんな経路で薬が投与 されて も吸収 された薬はまず血液中に入 り,血液中の

蛋白と結合 し体内を廻 り,脂肪組織や軟骨組織に沈着 した り,作用する器官に

到達する。 これを分布 とい

う 。

肝臓や肺臓その他の臓器を通過するときは,そ

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吸 収 ⊂ 】

ジ 苧 状

! ' ・ :微 粒 子 状

図 1 固 形薬剤からの薬の溶出

こに存在する酵素によって水に溶けるような形‑化学構造の変化を うける。 こ

の とき大部分の薬 は薬理効果を失 うが,( なかにはかえ って強 まるもの もあ

る)これを代謝 と い

肝臓は薬を代謝す る大きな臓器である。最後に腎臓を

経て尿中へと排他 される。一部分は肝臓か ら胆管を経て腸内へ排滑 され 糞と

ともに外へ出,またシンナーのような ものは肺か ら呼気 とともに外へ出る。ま

た,薬 は乳汁や唾液や汗の中に も分泌 され る。 もしも体に代謝や排滑のような

働 きがないと,服用 した医薬品ばか りでな く,食品とともに侵入 してきた農薬

や食品添加物 は蓄積 して大変なことになるにちがいない。 このような体の働 き

は自己防衛反応の 1 つ と考え られる。薬の適用経路 と体の中での動 きを図 2 に

示す。

(5)

経 口投与 した薬物が 消化管内‑消化管粘膜‑門脈‑肝臓‑肝静脈 を通過 し て全身循環血 に到達する間に受ける化学変化はとくに初回通過効果 ( f i r s 卜pas s e f f e c t ) とよばれ, この効果を受 けやすい薬物では投与方法が問題 となる。

図 2 薬の投与方法 と体の中での動 き

(6)

3 節 剤型

薬には何故色々な形の ものがあるのであろう 。 粉 くす りや頼粒状の もの,錠 剤やカプセル入 りの もの, トローチや丸剤などは固体の型である。咳止めなど は水剤が多 く, シロップ剤や リモナーデ剤 も液体である。眼 ぐす りや注射薬 も 液体であるが湿疹等の塗 り薬は軟膏剤であ り,座薬 も半固体の型である。 この

ように形が異なるのは薬本来の もつそれぞれの性質 と病気の治療に最 も有効で 使いやすい形を考えて製剤 してあるためである。 この薬の形態を剤形 と い

しか し薬はヒ トが使用す るのであるか ら服用 しやすい形でなければな らな い。

どんなに効果がある薬で も,のんで もらえなければ意味がない。明治以前では 薬は煎 じてのむ ものとされていた。現在で も生薬 (しょうや く)を配合 した漢 方薬では,煎 じて服用す る場合が多い。 しか し製剤技術が進歩 して くると,煎 じた液を濃縮 してエキス状 とし,服用量を少な くしてのみやす くしたり,エキ スを粉末状に して錠剤やカプセル剤 として,品質の一定化を計 って商品として の薬がで き上 った。薬の有効性 とともに薬の安定性,薬の安全性 ( 薬の副作用 の少ないこと) ,使用 されやす さ ( 便利性)などが加味 されて製剤化 されてい る。

4 節 用法と用量

一般に薬の効能効果を判定す る場合,血圧降下剤や糖尿病薬の効能は,血圧 や血糖を測定す ることで,その効果を判定す ることができる。 この結果か ら医 師は投与量 ( 用量)や投与時間 ( 用法)を適切に調節で きることになる。 もし

このような効能を判定す るためのよい指標がない薬では,血液中の薬の濃度を

測定 し,その値が治療上有効な濃度範囲内にあるかどうかを判断す ることにな

る。 これを薬の血中濃度モニタ リングと呼ぶ。つまり薬の体内濃度を監視確認

して投与量を調節 した り投与時間を決めることになる。組織や器官などの薬の

作用す る場所 ( 作用点)での薬の濃度は測 ることがで きないか ら,血液中の薬

の濃度が組織や器官へ移 る濃度 ‑量 と考えるわけである。 もちろんそのために

(7)

は薬の吸収,分布,代謝,排他などの体の中での薬の動 きがわか っていないと 困 る。体内に入 った薬が半分に減 るのに要す る時間はおよそ 4‑ 6 時間であ る。 これを消失半減期‑生物学的半減期 といい,なかには 2‑ 3 時間の もの も ある。従 って有効な血中濃度を維持す るためには, ほぼ 1 日 3 回のめば一定の 血中濃度を保つ ことがで きると考え られている。 1 日 3 回服用 というのは日本 人であれば普通 1日に 3 回食事をするか ら,その食前あるいは食後服用 とすれ ばのみ忘れが少ないであろうというの も 1つの根拠 になっている。一般に胃の 中に何か食物が入 っている方が副作用 は少ないが,胃腸か らの吸収はその分悪 くなる。薬 自身の性質,のむ人の状態など考えて用法,用量を考えることにな る。

さて薬のどれだけの量を,どうのむか ということがあるが,医師か らもらっ た薬にはどれだけをどうのむかについて薬袋あるいは薬瓶を入れた袋 に記入 さ れているか,記入 した紙が貼 ってある。診断の結果最 も効果的用量 と用法を決 めて出された薬であるか ら,指示 された通 り服用 しなければな らな

い 。

医師は 患者が決め られた方法で決め られた量だけの薬をのんでいると思い次の診察を す ることになる。従 って患者が きちん とのまなければ予期 した効果は得 られな い。 もし忘れた りして 2 回分をいっしょにのむなどすると量が多 くな り副作用 がでることにもなりかねない。

一方, 自己の判断や薬局の薬剤師の勧めで購入 した一般薬で も用法 ・用量が 記入 された添付文書 ( 薬の効能書)がついている筈である。 これは大変大切な もので無 くさないように注意 しなければな らない。 この添付文書 は薬事法で定 め られた内容を記載す ることが義務づけ られ,薬を使 うにあた って必要最小限 の情報が記載 されている。医師か らもらった薬は注文品 ( オーダーメイ ド)で その人その人の病気に応 じて適切に処方 された薬であ り,一般薬 は既製品 (レ デ ィーメイ ド)でぴ った りとは合わないが誰にで も向 くことにな っていてその 分,作用 は穏やかである。

次に薬をどれだけのむかという用量の問題になるが,薬 は用量が少なければ 全 く効かない。少 しづっ用量を増 してい くと,治療作用 ( 主作用)が現れて く

る。 それで もなお用量 を増 してい くと,意図 して いなか った別の作用 ( 副作

用) も現れ,終 には臓器障害などの中毒作用が生ず る。 さらに用量を増す と致

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死量に達す る。即ち用量 と作用効果の間には,無効量‑最小有効量‑薬用量 ( 治療量)‑中毒量‑致死量の関係がある。薬用量 と中毒量 との間に大きな差 があれば安全な薬 といえる。

5 節 年齢

最適の薬理効果がどの用量で得 られるかは医薬品側の条件 と生体側 (ヒト) の条件では大 きく変動す る。例えば小児の薬用量が大人に比べ著 しく少ない理

平 均 残 存 機 能 0 0 8 7 0 0 0 6 5 4

3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 80 9 0

年 齢

図 3 ヒ トの生理機能の年齢的推移

a :神経 伝導速 度 b : 基礎代謝 C :細胞 内水分量 d : 心 系数 e :肺活量 f :糸球体癒過量 (イ ヌ リン) g : 腎血 祭流量 (ダイオ ドラス ト) h : 最 大換気量 i :腎血祭流量

( PA杜)

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由は,薬の体の中での動 き即ち吸収,分布,代謝,排継や薬に対す る感受性な どが成人 と異な ‑ているか らである。一般には未熟児

は 成 人 の 去 量,新生 児Ⅰ ,0 ・ 5 歳Ⅰ , 1 歳Ⅰ ,

3 歳

与 7

5 歳Ⅰ

,

1 2 歳‡ の用量を用いているo 高齢者の生理機能 は年齢 とともに図 3 に示す ように低下する 。3 0 歳を1 00% と

して7 5 歳では体内水分含量 は 82 %,腎臓の血流量は 5 0% ,心臓か らの拍出量 は 7 0% ,筋力は 55% ,脳内血流量は 8 0%になっている。従 って薬の代謝が遅れた り腎臓の働 きが弱 っていることか ら,一般に薬の血中濃度は高 くなり副作用が 現れやすい。特 に睡眠薬や鎮静薬, トランキライザー ( 精神神経安定薬)など

は効 きす ぎるので,成人量の‡ 〜‡ 量でよいとされている。

6 節 薬の相互作用と副作用

さて一種類の薬ではな く数種類の薬を同時に,または時間をおいて服用す る と体の中で は吸収,分布,代謝,排他の場面でお互いに競 い合 うことにな る が, これを薬の相互作用 といい,副作用や有害作用が生ず る場合がある。

a. 吸収の場における相互作用

食物や飲み ものと薬の相互作用を考えてみよう

一般的には食物の摂取 は薬 の吸収を遅 らせ る。胃の中に食物があると薬は食物 といっしょに長 く胃の中に 停滞す るので,主な吸収部位の小腸への移行が遅れるためである。従 って胃の 運動を抑える抗 コリン剤などは吸収を遅 らせ る。 しか し,腸の運動を促進 させ る下痢は薬の小腸内通過が速 くなるので吸収が悪 くなる。カルシウムやアル ミ ニ ウムや鉄などの ミネラルを多 く含む食物は,ある種の抗生物質 ( テ トラサイ

クリン系)と反応 して吸収 されに くい物質 となるので薬効が低下す る。従 って この抗生物質を牛乳 と一緒にのむのは好 ま しくないことになる。 また脂肪分の 多い食物やバ ターなどといっしょに服用す ると,血中濃度が著 しく高 くなる薬

もあるが,薬の吸収が促進 された ことを意味す る。

最近は天然の果実 ジュースや合成の果実 ジュース,炭酸飲料などをのむ人が 多いが, ジュースは一般に酸性を示すので,酸性で分解す る抗生物質 ( ア ンピ シ リン,エ リスロマイシンなど)を ジュースで服用す るのは不適当であ る。

コーラ, コー ヒー,茶などはカフェインが含まれているが,鎮静剤や催眠剤 は

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カフェインの作用 ( 興奮) と括抗す る。またカフェインは胃液の分泌を促進す るので,消化性潰癌治療剤や制酸剤を服用 しているときは好 ま しくないことに なる。

薬 と飲み ものの相互作用ではアルコール性飲料が もっとも問題である。酒は 元来麻酔薬で 中枢神経系 に作用す るので,睡眠薬,鎮静剤, トラ ンキ ライ ザー,抗 ヒスタ ミン薬あ るいは糖尿病 の薬,血圧降下剤などの薬が効果を強 め,副作用が生ず る恐れがある。 このような薬剤を服用 しているときは飲酒を 避けることが望ましい。

b. 蛋白結合の場における相互作用

先に服用 した薬が,まず吸収 され,血液中の蛋白と結合 しているときに,級 か ら服用 した薬が, もし蛋白との結合力が前の薬より強い場合,前の薬を追い 出 して結合す る。その結果追い出された薬 は,一定の血中濃度を維持 していた のに,併用服用 した後の薬のために有効濃度が増加 して問題がおこる。例えば 経 口糖尿病 ・ (トルブタ ミ ド)をのんでいるときに,抗炎症鎮痛薬を併用す る と,遊離の糖尿病薬が血中に増加 し血糖効果作用が強め られ,低血糖 とな り危 険を招 く恐れがある。また抗凝血薬 と抗 リウマチ薬を併用 して も出血 しやす く なることも報告 されている。

C. 代謝の場における相互作用

薬を代謝す る酵素は多剤を併用す ると肝臓で競い合いの結果,代謝の阻害が

おこる。例えば抗 ウィルス剤 ソ リブジンと抗がん剤を併用 したとき,抗がん剤

を代謝す る酵素は阻害 され,抗がん剤の血中濃度が高 く維持 され強い有害作用

がおこった事件は記憶に新 し い。 糖尿病薬の トルブタ ミドは鎮痛解熱薬のアス

ピリンと併用す ると代謝が阻害 されて, トルブタ ミドの血中濃度が高 くな り低

血糖を招 く 消化性潰癖治療薬の シメチジンは大変よ く使用 されている薬であ

るが,併用す る多 くの薬の代謝を阻害する。例えば抗凝血薬のワルファリンや

トランキライザーのジアゼパム, クロルジアゼポキシ ドの代謝を阻害 し,それ

ぞれの薬の血中濃度を上昇 させ るので,薬理効果を増強 させ副作用が出現す

る。一方,併用す る薬の代謝を冗進 させその薬の血中濃度を低下 させて,薬効

を低下 させて しまう場合 もある。抗凝血薬 と催眠鎮静薬の相互作用はよ く知 ら

れた例である。心筋梗塞を経験 した人や血液凝固が冗進 した人達では,血栓症

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防止のため抗凝血剤 を常時服用 しているが,たまたま催眠鎮静剤を服用す る と,抗凝血薬の代謝が促進 されて抗凝血効果が低下することになる。従 って用 量を増 して血液の凝固を防止 しようとす るが,そのような状態のときに催眠薬 を勝手に中断すると,今度は代謝が元に戻 るので,抗凝血薬の血中濃度が高 く な り今度 は出血 しやす くなる。従 って,直ちに抗凝血薬の用量を少な くして血 中濃度を正常 に維持 しなければな らない。 このような例 は数多 く報告 されてい る。例えば噛息や リウマチには副腎皮質ホルモ ンかよ く使用されているが,催 眠薬 と併用す るとホルモ ンの代謝が元進 し,鳴息や リウマチが悪化す る。結核 の薬 リファンピシンも性ホルモ ンの代謝を促進 し,経口避妊薬 ピルの効果を低 下 させ妊娠 させるなどが知 られている。

一つの薬を長期間服用 しているときに,たまたま別の薬を併用する事態にな ると,相互作用をお こす機会が多い。特に,高齢者 は複数の薬をのむ機会が多 いので十分に注意す る必要がある。また複数の病院か ら薬を もらう場合には, 現在 このような薬をのんでいると医師または薬剤師に相談 した方が副作用や有 害作用のおこる機会が少な くなる。

d. 排滑の場 における相互作用

ペニ シ リンやアス ピリンなどは弱 い酸性を示すが,重曹を投与す ると尿の pH がアルカ リ性にな り薬 はよ く排他 される。酸性を示す尿酸排滑促進薬のプ ロベネシ ドを併用す ると,腎臓か ら排滑 されるペニ シピンは尿中への排他が抑 制 されて血中濃度を高 く維持 し効力は維持す る。 このプロベネシ ドはもともと 酸性物質の分泌を抑制するだけでな く,尿細管における薬物の再吸収をも抑制 す るので,尿酸の再吸収を抑制 し,結果的に尿酸の尿中への排滑を冗進 させ る 抗痛風薬 として知 られている。

7 節 副作用の症例

薬 は病原菌を殺 したり症状をなお したり健康を保つ化学物質であるが,体に

とっては結局の ところ異物であるか ら,量が増加すれば体の防衛能力をこえて

何等かの好 ま しくない作用がで ることは事実であ る。従 って血中の有効濃度

( 治療量)と中毒量 との間に大 きな幅があれば,その薬 はかな り安全な薬 とい

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える。 は じめに述べたように薬 は通常の用量で主たる強い薬理効果を示す作用 ( 主作用)の他 に,それ以外の効果を示す作用 ( 副作用)がある。副作用 とい う言葉には元来有害な作用,望 ま しくない作用 という意味はないが,その薬の 強い作用が効 きめ ( 薬効)であ り,弱い作用が しば しば望 ま しくない作用,あ るいは有害な作用であることが多いので,副作用が有害作用 と同義語に使われ るようになったと考え られ る。

a. 風邪薬などに含まれている抗 ヒスタ ミン薬は,主作用は抗アレルギー作用 で,鼻炎のア レルギー症状に有効であるが,副作用 として鎮静催眠作用があり 眠気を生ずる。従 って抗 ヒスタ ミン薬や風邪薬などを服用 して,自動車の運転 や機械の運転 は危険を招 く恐れがあるので注意 しなければな らない。

b. 解熱鎮痛薬のアスピリンは世界中で最 も広 く使われている薬で,主作用は 鎮痛解熱作用であるが消炎効果を利用 しで慢性関節 リウマチに も用いられ,ま た血小板の凝集 ( 血液凝固)を抑制す る作用 もあることか ら,血栓防止即ち脳 梗塞の予防や治療薬 として も広 く使用 されている。主作用の他 に副作用が有効 に利用 されているよい例である。 もちろん,アス ピリンはその他,消化管障害 ( 食欲不振,胸やけ,胃痛,悪心,鳴吐,消化管 出血,潰癌 など) ,神経障害 ( めまい,耳鳴 り,難聴など) ,過敏症 ( 発疹,浮腫,鼻炎,皮膚炎症など)皮 どの望 ま しくない反応,有害反応が知 られている。

このような有害反応のおこる原因はまず, 1) 薬の過量服用である。薬 は一 般には有効量 と中毒量の間に大 きな開きがあるので,医師か薬剤師が誤 って大 量を投与するか,患者が間違 って大量を飲 まない限 り危険はない。何カ所の病 院や診療所または薬局で薬を もらい,その薬をいっしょに服用することは過量 になる恐れがあり,また併用による相互作用の心配 もある。病院や薬局を転々 としないことも患者側の心得の一つか もしれない。できれば自分の体を十分に 知 って もらっている地域 に密着 した家庭医や家庭薬局があることが望 まし い。

一方,代謝に関係す る酵素が もし先天的にない人や,非常に少ない人であれ ば 普通の人で中毒をお こさない量で も中毒になる可能性 も生 じる。さらに肝 腎かなめの器官の肝臓や腎臓が障害を うけている場合にも,薬の服用量を少な

くしないと中毒をおこしやすいといえる。

2) 次にア レルギー素因のある人は特に注意が必要である。最初に服用 した薬

(13)

で免疫反応 ( 抗原抗体反応)がお こり,体の中には抗体因子を持つ ことにな っ た人が,つ ぎの機会に同 じ薬を服用す ると,微量を服用 して もすでにできてい

る抗体 と激 しい反応をおこし,発熱,発疹,呼吸困難,血圧低下,体循環不良 などで ショックをお こす。

3) 大量の抗生物質を長い間服用 していると,病原菌は死滅するが,腸管内に 存在 していた沢山の有害,無害,有用な菌 も同時に死滅 し,その結果抗生物質 に対 し全 く影響をうけないごく微量 しか存在 してなかった真菌や緑膿菌が繁殖 して別の病気が生 じる。 これを菌交代現象 といい,下痢症や偽膜性腸炎を生ず る。抗生物質の種類 は多いが,聴神経障害で難聴,めまい等が生 じた り,腎臓 障害を起 こす もの,再生不良性貧血や頼粒球減少症などの造血臓器障害を起 こ す もの,胃腸障害や肝臓障害を起 こす ものなど沢山の副作用例がある。

4 )抗かん剤 は活発に分裂するがん細胞を殺すが,分裂 している正常細胞 も障 害するので副作用の例 も多い。特に作用機構の異なる抗がん剤を同時に又 は時 期を異に して二剤,三剤 と併用す る場合が多いので問題が生ず る。骨髄障害, 頼粒球や リンパ球の減少などの造血器障害,肺臓維症や心臓毒性,腎臓障害や 脱毛など多 くの例が報告 されている。

5) 妊娠中の薬の服用は注意が必要である。 トランキライザーとして開発 され たサ リドマイ ドが,つわ りによ く効 くということで妊婦に多 く服用 され,アザ ラシ型奇形児が生まれたことはよ く知 られた事実である。 このような有害反応 と しての例は少ないが, もしひとたび発生す ると長期にわたり重大な被害をき たす。また妊婦は下剤や鎮痛剤 は注意 して使 う必要がある。

おわ りに

ソリブジンや抗がん剤がマスコ ミの話題になったが,薬の副作用や効きめに ついて皆 さん と考えて きた。要 は薬の本質を知 り上手に薬 とつ きあ うことであ る。病気を治療す る薬,症状をなおす薬,病気の予防や病気を管理す る薬,そ れぞれ特徴がある。薬はヒ トの自然治癒力を補助するもので, 自分の生命九

自己回復力が重要である。患者 さんが早 く元気になりたい, この薬 は効 くのだ

という強い気持ちと,医師の側の早 く良 くしてあげたいという態度が一致 した

(14)

とき,薬は奇妙なことに大変よ く効 く。いやいや薬を飲んだ り,半信半疑の気 持ちでは薬は効 きにくい。 これを薬のプラセボ‑効果という

最近は漢方薬をのまれる方 も多いが,民間薬 ( 一種類の生薬を使 う)と漢方薬

( 数種類以上の生薬を使 う)は異なる。漢方薬は長い歴史を経て取捨選択 され

てきた診断基準で治療を行 う。特に慢性の疾患,例えば慢性の肝炎,腎炎や慢

性の リウマチ,嶋息,ア トピー性皮膚炎などにかなり有効とされている。熟練

した漢方医による適切な診断と漢方薬処方による治療が必要である。漢方薬 も

副作用があり,素人判断で服用することはつつ しむべきであろう

(15)

付 表 医薬 品, 医薬部外 品,化 粧 品, 医療 用具 の定義

項 目 定 義 備 考

医薬 品 医薬 品 とは,次 に掲 げ る もの と定 義 ( 注 1 ) 日本 薬 局方 に収 載 され て い る ( 法 第 2 条 第 1項) もの は,全 て 医薬 品 で あ るo

( 1 ) 日本薬 局 方 に収 め られ て い る も ( 注 2 )健康 食 品等 と称 して販 売 され の ( 注 1) て い る もの で も製 品 に疾 病 の診 断,

(2)

人 又 は動 物 の疾 病 の診 断, 治療 治療 又 は予 防 の効 能 効 果 を表 示 すれ 又 は予 防 に使 用 され る ことが 目的 と され て い る もの で, 器 具 器 械 ( 注 ば, この定 義 か ら医薬 品 とみ な され るo 3 ) 具 体 的 に は, 嫌 酒 剤 , 催 乳

(歯 科 材 料 , 医療 用 品 及 び衛 生 用

品 を含 む )で な い もの (医薬 部 外 刺 , やせ薬 ,覚 せ い剤 な どが 該 当す

品 を除 く)( 注 2)

( 3 ) 能 に影 響 を及 ぼす こ とが 目的 とさ れ て い る物 で, 器 具器 械 で な い も の (医 薬 部 外 品 及 び 化 粧 品 を 除 く)( 人 又 は動物 の身体 の構造 又 は機 注 3) るo

医 薬部 医薬部外品 と は,次 に掲げることが ( 注 4 )法 律 で 目的 が 具体 的 に規 定 さ 目的 とされ て お り,かつ,人体 に対 れ て い る 医 薬 部 外 品 は, 口 中 清 涼 す る作用が 緩 和 な もので器具器械で 刺 , 体臭 防 止 剤 , て んか粉 額 , 育 毛 ない も の ( 注 4 )及 びこれ らに準ず 刺 ,徐 毛利 ,殺 虫 剤 ,殺 そ剤

る物 で厚生 大 臣の指定す るもの と定 ( 注 5 )厚 生 大 臣が 指 定 して い る医薬 義 ( 注 5)ただ し, これ らの使用 日 部 外 品 と して は,生 理処 理 用 品 .染 的の ほかに,医薬品の 目的をあわせ 毛 剤 ,パ ー マ ネ ン トウ エー ブ用 剤 ,

もつ も のを除外 薬 用化 粧 品 ,薬 用 歯磨 , 浴用剤 等

外 品

(

(

(

( 2

3)

4

1

) ) ) 若 しくは体臭 の防止 ね ず み, はえ ,蚊 , の み等 の駆 除 又 は防止 脱 毛 の防止 ,育毛 又 は除毛 吐 きけ その他 の不快 感 又 は 口臭 あせ も, ただれ等 の 防止 人 又 は動 物 の 保 健 の ため にす る (法 第 2条 第 2 項 )

化粧 品 化粧 品 と して は, 人 の身 体 を清 潔 に ( 注 6 )化粧 品

は,

医薬品.医 薬

部外

し, 美化 し,魅 力 を増 し,容 貌 を変 品 と異な り ,

に使用 され る も

え, 又 は皮 膚 若 しくは毛 髪 をす こや けが対象, 動

に使用 す るも の は ,

か に保 つ た め に,身 体 に塗擦 ,散 布 その他 これ らに類 似す る方 法 で使 用 され る こ とが 目的 と され て い る物 で , 人体 に対 す る作 用 が 緩 和 な もの と定 義 , た だ し, 医薬 品 の 目的 を あ

わせ もつ もの及 び医薬 部 外 品 を 除外 (法 第 2条第 3 ( 注 項) 6) この定義 の 対

象 外

医 療

用 具 医療 用 具 とは,人若 しくは動 物 の疾 (注 7 ) 医療 器 異 の定 義 で は, 条 文 に 病 の診 断, 治療若 しくは予 防 に使 用 記載 され た使 用 目的 を有 す る もので され る こと又 は人若 し くは動 物 の身 あ つて も, 政 令 で 具 体 的 に指 定 され 体 の構造 若 しくは機能 に影響 を 及 ぼ て い な い もの は, 医療 用 具 に該 当 し す こ とが 目的 と され て い る器 具 器械 な い,政 令 で指定 され て い る医療用 で, 政 令 で 定 め る もの と定 義 ( 症 異 は,

7) 器 具器 械 : 8 4 類 別 医療 用 具 : 6 類 別

図 2 薬の投与方法 と体の中での動 き

参照

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