当院における腹腔鏡下胆嚢摘出術の経験
桝
l芳和 渡 辺 恒 明 阪 田 章 聖 木 村 秀 須 見 高 尚 斎 藤 勢 也 、犀田成彦
小松島赤 卜 字病院 外 科
要 旨
小松島赤十字病院において 1 9 9 2 年 9 月から 1 9 9 6 年 4 月の聞に経験した腹腔鏡下胆謹摘出術(以下、 LCと略す)8 3 例 について検討した 。
LCの胆麓摘出術に占める比率は、期間を通じて67.2% であるが年々増加の傾向にある 。胆嚢結石、ポリ ープ、腺筋 症に対し施行されたが、結石を含む症例が84% を占め、無症状症例も 3 3 例 ( 4 0 .7 %)に LC が行われている。ポリ ープ
は全例 コレステ ロー ルポリ ープで癌症例はなかった 。開腹移行例は 9 例 0 0 .8%) であったが術中偶発症が原因で開腹 にいたった症例は 3 例 (3.6%) であり、他の 6 例は胆襲炎による手術困難例の 5 例と手術既往による腹壁癒着の 1 例 とである 。合併症では胆嚢壁の損傷、出血などが多かったが総胆管損傷 も l 例経験した 。術前 DIC での胆嚢造影陰性 例も LC 可能であったが、炎症の強い症例の手術操作には充分な注意 と 慎重 さが必要である 。
キーワー ド:腹腔鏡下胆嚢摘出術、開腹術移行例、 合併症、 DIC と手術
はじめに
腹腔鏡下胆嚢摘出術(以下、 LCと略す)は、 1 9 8 7 年に P .Mouret (仏)が最初に臨床例で成功したの をきっかけに欧米で、爆発的に普 及し、本邦では 1 9 9 0 年 5 月山川 ら1 ) により初めて施行された 。その後急速に 多くの施設で行われる様になり、今や胆嚢摘出術の標 準的術式となっている。当院でも 1 9 9 2 年 9 月以来、胆 嚢結石症を対象に本術式を導入し 1 9 9 6 年 8 月までに8 9 症例を経験した。当 院 に お け る 胆嚢 摘出術に対する LC の年度別頻度は、 1 9 9 3 年 35% 、 ' 9 4 年 65% 、 ' 9 5 年 7 5 . 6% 、 , 9 6 年 82.6% で あ り 年 々 に 増 加 し て い る (Tab l e . 1 )。今回 1 9 9 6 年 4 月までの 8 3 症例について、
臨床的特徴、開腹への移行、手術時問、合併症、 DIC 所見と手術との関係などにつき検討したので報告する。
対 象
対象となった 8 3 症例の患者の内訳、術中術後の記録 は Tab l e .2に示す。対象疾患は胆嚢結石症 5 6 例、胆 嚢 ポリ ープ 1 1 例、腺筋症 1 例などであり結石を認めた 症例が全体の 84% を占めている 。腹痛などの症状を有 している症例が4 8 例 (59.2%) で 3 3 例 (40.7%) は無
8 6 当院 における 腹腔鏡下胆嚢摘 出術の経験
T e b l e . l 胆 嚢摘出術に対する L C の比率
胆摘数 L C例 (%) 開腹移行例 1 9 9 2 年 9 月 3 l 1 9 9 3 年 2 0 7 ( 3 5 . 0 ) O 1 9 9 4 年 4 0 2 6 ( 6 5 . 0 ) 4 1 9 9 5 年 4 5 3 4 ( 7 5 . 6 ) 4 1 9 9 6 年 8 月 2 3 1 9 ( 8 2 . 6 )
8 9 1 9
lJ1 0 例
T a b l e .2 当院における腹腔鏡下胆嚢摘出術
症例数
8 3
例男 性
3 3
例 :5 1 .
0歳 (20~75歳) 女 性5 0
例 :52.2歳 (24~84歳) 腹部手術既往例3 0
例( 37% )
( 3 5
手 術 数)1
I
主!陛鏡下1 1
旦摘術成功 例7 4
例( 8 9 . 2 %)
開1Jl'l術への移行例
9
例0 0 . 8 %) I
I
El裂炎合併例1 9
例( 2 3 . 5 % )
急性 炎 症
1 3
例(開腹移行例5
例) 慢性炎症6
例(開J I
変移行例1
例) 肝硬変併存例4
例(開腹移行例2
例) 手 術l時間f i r s t 1 0 c a s e s 1 6 0 . 5
士6 0 . 6 ( 6 0 ‑ 2 5 0
分)f o l l o w i n g 3 0 c a s e s 8 9 . 4
士2 6 . 2 ( 5 0 ‑ 1 4 5
分). Pく0 . 0 1 l a s t c a s e s 8 7 . 2
士2 4 . 6 ( 5 0 ‑ 1 4 5
分)市!日後在院日数
1
1.4:1:5 . 9 ( 4 ‑ 5 1
日)( 1 )
日1 1
担術移行例)2 2 . 8 ! . : : 1 4 . 8 0 0 ‑ 5 9
E!)・p
く0 . 0 1
Komatushima Red C r o s s H o s p i t a l M e d i c a l J o u r n a l
中鎖骨線上、右側腹部前肢富線上の 4 カ所とし①より 腹腔鏡挿入、腹腔内の観察、胆袈 を視野展開し@③④ よ り 処 置 用 釦 子 を 挿 入 、 主 と し て ② ③ よ り two h anded t e c h niq u e で胆嚢周囲 を剥離、胆嚢管 ・ 胆嚢 動脈をそれぞれ 2 重ク リッピング後切離し 、胆嚢床を 奈IJ 離後① より 胆嚢 を体外に 摘出 した 。 生食 200 ~ 300 ml で洗浄後、ペン ロー ズドレ ー ンを肝床面に留置し 手術を終えて いる 。尚組織の剥離、切離、凝固止血は 高周波メスを使用 した。
症状症例 で あっ た。 胆嚢ポリープは全て非上皮性ポ リープであり 癌症例 はなかった ( T a b l e .3 ) 。
腹腔鏡下胆嚢摘出術の対象疾患
胆嚢結石症 胆嚢ポ リ ープ
5 6 ( 6 9 . 1 %) 1 1 03.6 %)
症例数 疾患名
T a b l e . 3
ー
1( 1 . 2% ) 胆護腺筋症
6 ( 7 . 4 %) 結石 +ポリ ープ
果
1)開腹手術既往例 ( Tab l e .4 )
開腹手術既往症例 は3 0 例 ( 3 7 %) で3 5 回の手術が行 われており、虫垂切除術、婦人科的手術の既往を有す る症例が多く、いずれも下腹部手術創であり L C 可能 であった。腹壁癒痕ヘ ルニ ア 2 例の内 1 例が瞬上下部 にわたる手術創であり 、腹壁への大網の癒着 が著明で
trocar 挿入できず開腹 術へ移行している 。 6 ( 7.4% ) 結
1 ( 1 . 2 %)
‑ 無症状 言 十
2 7 ( 3 3 . 3 %) 3 3 ( 4 0 . 7 %) 8 1
2 1 ( 25.9% ) 1 ヶ月内
結石 + 腺筋症 ポリ ープ+ 腺筋症
既往
‑ 有症状
開腹手術既往例 (N = 8 1 ) Teble.4
1 7 1
ρhut‑4円ノunyu
円ノ
ム︼
虫垂切除術 腹膜炎手術
婦 人 科 手 術 子 宮 筋 腫 子宮内 膜 症 卵巣 謹 腫 帝王切開
他 手術手技
当院における LC は 、 全麻 と 硬麻を併用 し 炭酸ガス による 気腹下 に行った。気腹法は初期の数例のみに c l o s e d 方 式で行ったが、 安全性を考慮し後の多数例 に open 方式 を採用 ι た 。 腹腔内圧は 10~ 1 2mmHg に維持 した。
Trocar の刺入部位 ( Fig.1 ) は1 9 9 4 年 までは 3 人 法の フランス式で行 い、 1 9 9 5 年か らは 2 人法の米国式 即ち臓上(下)部、貧 I J 状突起下正中線上、右肋骨弓下
1 2 腎結石
腸 l 抗全摘術
腹壁癒痕ヘルニア
3 5 回
2 )開腹術移行例 ( T ab l e .5 )
8 3 例中7 4 f y J l ( 8 9 . 2 %) は LC 可能であったが、 9 f y J l ( 1 0 . 8% )が開腹術へと移行した。 9 例の内 、炎症に よる壁肥厚 、 癒着が原因 とな ったものが 5 例 ( 5 5 . 6 %) と過半数を占め全て胆謹造影陰性例 であった。他の 4 例は術中偶発症が原因となった症例①②⑨の 3 例 と、
癒痕による 腹壁癒 着 で trocar 挿入が不能であった 1 例とである 。症例① は胆護管を切離した際、すぐうし
3 0 症 例
①
×米図式
卜ロッカーの刺入部位
いずれの場合も, ①は
l
即位鋭②から④は処置用針子を知人する。
体型により多少卜ロッカ一束)1人部位を笈えてもよい。
①
①一 一①. .
10an 10叩×F i g . 1
フランス式