( 4 3)
原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 39‑1 4 4,2 0 0 0
術後痛か らみた腹腔鏡下胆嚢摘 出術 の有用性
TheEmc a c yofLa pa r os c o pi cChol e c ys t e c t o my wi t hSpe c i a lRe f e r e nc et oPos t ope r a t i vePa i n
煙 山 晶 子 * 浅 沼 義 博 * 杉 山 令 子*
小 野 正 子 * 伊 藤 登茂子* 工 藤 由紀子*
白 川 秀 子 * * 安 藤 秀 明* **
Sho koKE MUYAMA*Yos hi hi r o Ma s a koONO*Tomo koI T OH*
Hi de koSHI RAKAWA**Hi de a ki
は じめに
従来,胆嚢結石症 に対する胆嚢摘 出術 は開腹 下 に施行 されて きた。 しか し近年,腹壁 を大切 開せず に胆嚢 を摘 出す る腹 腔鏡下胆嚢摘 出術 ( 以下,腹腔鏡下胆摘 とする)が我が国に導入 され,現在では胆嚢摘 出術 の実 に 9 0% 以上が腹 腔鏡下 に施行 されている
1)。 この ような急速 な 普及の背景 には手術侵襲度が軽度 なこと,術後 痛が少 ない こと,美容上優 れていることな どが あげ られてい る
2' 。本稿 では,実際 に腹腔鏡下 胆摘 において術後痛が軽減 しているか, またそ れに伴 う術後の活動性や睡眠状態,術後入 院期 間の短縮 に寄与 しているか を明 らかにすること を目的 とし, これまで我 々が経験 した症例 につ いて r e t r os pe c t i v eに検討 した。
As ANUMA*Re i koSUGI YAMA
*Yuki koKuDOH**
ANDOH***
1 対象 と方法
1 9 8 9 年 7 月 ‑1 9 9 5 年 9 月に秋 田大学医学部第
‑外科で胆嚢結石症等 に対 し月 旦嚢摘 出術 を施行 したのは 1 2 6 例 であ る。 この うち,開腹 下 に胆 嚢摘 出術 を行 ったのは 5 0 例であ り, この うち無 作為 に抽 出 した 41 例 を開腹下胆摘群 として検討 した。一方,腹腔鏡下 に胆嚢摘 出術 を行 ったの は 7 6 例であ り, この うち無作為 に抽出 した33例 を腹腔鏡下胆摘群 として検討 した。
開腹下胆摘群 41 例の内訳 は男性 2 0 例,女性 21 例,平均年令 は 5 3±1 4. 6 才であった。一方,腹 腔鏡下胆摘群33例の内訳 は,男性 1 7 例,女性 1 6 例,平均年令 は 51±1 2. 8 才であった ( 表 1)0
原疾患 は,開腹下胆摘群では胆嚢結石症 3 8 例, 胆嚢ポ リープ 2 例,アデノ ミオマ トージス 1 例 であった。腹腔鏡下胆摘群では胆嚢結石症 3 0 例,
秋 田大学医療技術短期大学部
*看護学科
**秋 田大学医学部附属病院 4階乗病棟
***秋 田大学医学部第一外科
Ke y Wor ds: 腹腔鏡下胆嚢摘 出術 術後痛
硬膜外 カテーテル
早期離床
表 1 対象の内訳
男性 女性 平均年令 ±S D
開腹下胆摘群 41 例 20 21 53±14. 6 才 腹腔鏡下胆摘群 33 例 17 16 51±12. 8 才
表 2 術後鎮痛薬 の投与法別件数
開腹下胆摘群 腹腔鏡下胆摘群
総数 投与方法
例総数 投与方法 例
硬 膜 外 カテーテル挿 入群 39 間欠投与 モルヒネ レぺタン 1 34 33 間欠投与 レぺタン モルヒネ 18 0
持続投与 0 持続投与 8
術後非投与 4 術後非投与 7
坐薬 .筋肉注射使用群 2 0
胆嚢 ポ リープ 2 例,急性胆嚢炎 1 例であ った。
術後経過 は全症例 で良好 であ り,合併症 は認 めなか った。術後,硬膜外 カテーテルによる レ ぺ タン㊥の投 与方法 は,間欠投与 と持続投与 の 2 種類が行 われていた。開腹下胆摘群 では 41 例 中 3 9 例が硬膜外 カテーテル を挿入 し, この うち 3 4 例が レぺ タン⑪の間欠投与 を受 けていた ( 秦 2) 。持続投与 はい なか った。腹 腔鏡 下胆摘 群 で は 3 3 例 中,硬膜外鎮痛薬投与 を行 った ものは 26 例であ り,その中で間欠投与が 1 8 例 ,持続投 与が 8 例であ った。術後 は患者 の訴 えに応 じて 0. 5% マ ーカイ ン 2mβ+ レぺ タン ⑧0. 2m g+ 生理 食塩水 7 m βを o n
e‑ s ho t で注入 した。持続投与 法 にお い て は レペ タ ン⑧ 0 . 2‑0. 4m g+0. 25%
マーカイ ン 46‑477 n Bを持続注入器 にセ ッ トして, 1時間 に 2 1 花 Bの速 さで注入 していた。 なお,両 群共 に硬膜外 カテーテルを挿入 しなか った,及 び術後 に使用 しなか った症例 に対 しては, ソセ ゴン等 の筋 肉注射 またはボル タレン座薬 5 0m g の 投与 によって術後痛 を管理 した。硬膜外 カテー
レンチューブを硬膜外腔 に 5 c m 留置 し固定 した。
これ らの症例 に関す る入院中の記録 か ら術後 の回復経過 をお ってデー タを収集 し,以下の項
目に関 して検討 を行 った。
1 4 0
1 )硬膜外鎮痛剤投与期 間
2 )間欠投与例 における レペ タン㊥の投与量 3 )間欠投与例 にお ける レぺ タン⑧の投与 回
数
4 )腹 腔鏡下胆摘群 にお ける レぺ タン㊥の間 欠投与 と持続投与 間の投 与 回数
5 )術後 の睡眠状態
6 )術後 に歩行 を開始す る まで に要 した 日数 7)術後 の入 院 日数
術後の睡眠の状態 は,各症例毎 に,記載 され ていた毎 日の睡眠の状態 か ら g r
ad e3 以上 の 日 数 を比較検討 した。 この睡眠の程度 は高橋 ら
3.に準 じ,以下 の ように分類 した。
g r a de1 : 巡 回毎 に睡眠中 とい う記載があ り,痛 み を訴 えず鎮痛剤 も必要 と していない
g r a de2 : 痛み を感 じているが,鎮痛剤 は用 いな いで数時間の睡眠が得 られた
g r a de3 : 痛みがあ り鎮痛剤 を使用 して数時間の 睡眠が得 られた
g r a de4: 痛 みのため に鎮痛剤 を用 いたが,ほ と ん ど睡眠が得 られ なか った
各項 目に関 して両群 の有意差検定 を smd e nt ‑ s t ‑ t e s t にて行 い,危険率 p<0. 05 を有意差あ りと
した。
秋 田大学医短紀要 第 8巻 第 2 号
煙山晶子/術後痛からみた腹腔鏡下胆嚢摘出術の有用性
2 結 果
1 )硬膜外鎮 痛剤投 与期 間
術 後 ,鎮 痛 目的で硬膜外鎮痛剤投与 を行 って いた期 間の平均 は,開腹 下胆摘 群 で は術 後 4±
1 . 5 病 日,腹 腔鏡下胆摘群 で は術後 2 ± 1. 0 病 日 であ り,腹腔鏡下胆摘 群 において有意 に鎮痛剤 投与期 間が短縮 されていた ( 表 3)
02 ) 間欠投 与例 にお ける レぺ タン⑧の投 与量 硬膜外 カテーテル よ り,投与 された レぺ タン の量 を比較 した。開腹 下胆摘 群で は平均
1±0. 8 m g ,腹 腔鏡下胆摘 群 で は 0. 6± 0. 4m g であ った
( 表 4)。腹 腔 鏡 下胆摘 群 にお い て有意 に投 与 量 の減少が見 られた。
3 ) 間欠投与例 にお け る レペ タン⑪の投 与 回数 間欠投 与例 において硬膜外 カテーテ ルか らの レぺ タン⑧の投 与 回数 を比較 す る と, 開腹 下胆 摘 群 で は平均 5±3. 8 回, 腹 腔鏡下胆摘 群 で は 3
± 1 . 6 回であ り, 腹腔鏡下胆摘群 で有意 に投与 回
( 4 5 )
数が少 なか った ( 表 4 )。
4 )腹 腔鏡 下胆摘 群 にお け る レペ タ ン㊥の間欠 投 与 と持続投与 間の投 与 回数
腹 腔 鏡 下胆 摘 群 の うち鎮 痛剤 の 間 欠投 与 を 行 った 1 8 例 で の投 与 回数 は平均 3±1. 6 回 だ っ た。一方,持続投 与 8例 について は, 2例 で鎮 痛剤 を術 後 に追加投与 したのみであ り,他 の 6 例 で は追加投与 は行 われ なか った。
5 )術後 の睡眠状態
術 後 ,睡眠の g r a d eが 3 以上 の期 間は開腹 下胆 摘 群 で は 3±3. 9 日,腹 腔 鏡 下胆 摘 群 で は 1±
2. 0 日であ り, 腹腔鏡 下胆摘 群 で有意 に睡眠の状 態が良好 であ った ( 表 5 )0
6) 術 後 に歩行 を開始す る まで に要 した 日数 術後初 めて歩行 を開始 した 日数 は,開腹 下胆 摘 群 で は術 後 3 ± 1 . 4 日目, 腹 腔鏡下胆摘 群 で は 術 後 2 ±1 . 1 日目であ り, 腹 腔鏡 下胆摘 群が有意 に歩行 を開始 す る までの時 間が短縮 されていた
表 3 硬膜外 レペ タン⑧投与期間
開腹下腿摘群 34例 腹腔鏡下腿摘群 26 例 t 検定 ( p 値)
* p<0. 05
表 4 間欠投与例 にお ける レペ タン⑧の投与量 と投与 回数
開腹下胆摘群 34
例腹腔鏡下胆摘群 26 例 t 検定 ( p 値) レぺタ ン㊤投与量 ( m g ) 1±0. 8 0. 6±0 , 4 * 0. 012
* p<0. 05
表 5 術 後 の睡眠状 態
開腹下胆摘群 41
伸腹腔鏡下値摘群 33
例t 検定 ( p 値)
* p<0. 05
表 6 術後 の歩 行開始 日と術 後 の入院 日数
開腹下肢摘群 41
例腹腔鏡下腿摘群 33
例t 検定 ( p 値) 歩行開始 日 (日) 3±1 . 4 2±1. 1 * 0. 002
* p<0. 05
表 7 術 後痛 の程度 と頻 度 お よび その持続 日数 4 ) よ り
手 術 中等度 (安静時痛%) 高度 (%) 中等度 (体勤 時痛%) 高度 (%) 平均 (持続 日数範 囲)
胸腔 内手術胸骨切開術 40〜50 30〜40 20‑30 60′ー70 8 (5‑12) 開胸手術 25〜35 45′‑65 20‑ー30 60〜70 4 (3‑7)
上腹部手術胃切除術 20′ー30 50〜75 20′〜30 60〜70 4 (3‑7) 胆嚢摘 出術およびその他 25‑35 45‑65 30〜40 60〜70 3 (2‑6)
下腹部手術子宮摘 出術 および腸切除術 30〜40 35‑55 40〜50 50〜60 2 (1‑4)
虫垂切除術 35‑45 20〜30 30′70‑80〜40 20〜3060〜70 1 (0.5‑3) 膜状 .前立腺 手術 15.‑20 65〜75 2 (0.5‑4)
腎摘出術 10〜 15 70‑85 5 (3‑7)
腹壁 .胸壁手術磨 ヘルニア手術 35.‑45 15.‑25 40.ー50 25〜35 1.5 (1‑3)