現在, CPUやLSIなどの電子機器用並列電源には, 低電圧・大電流かつ高速応答が求められている. これを 実現するためには, 平滑フィルタのインダクタンスを小 さくしなければならないが電流リプルが増大するため問 題となる. これを解決する手法として, 並列電源モジュー ルのインターリーブ動作[1-5]が行われている.
我々はすでに接続台数と時比率の組み合わせによって, 出力リプルの大幅な低減が可能であることを示した. [6- 9]本稿では, この関係を用いてリプルが小さく, 負荷急 変に対応する高速並列電源についてその設計指針を示す.
2. インターリーブ動作
インターリーブ動作とは, 図1に示すように並列電源 モジュールのスイッチング位相を意図的にずらすことに よって, 出力コンデンサにおける電流変化を相殺しリプ ルを低減する方法である. 2台接続の場合, モジュール 間の位相を180度ずらすことで最もリプルを抑制するこ とができる. ただし, 接続代数N及び時比率Dによっ てリプルの低減効果が異なるため, その関係を回路モデ ルを用い定量的に求める.
降圧形コンバータのリプル算出用回路モデルは, 図2 (a)のようにパルス電圧源で表すことができる. ここで, スイッチング周期において出力電圧が一定と仮定すれば, Lを流れる電流は三角波となるので, 降圧形コンバータ は図2(b)のような三角波電流源と等価と見なすことが できる. このことから, 図3のようにN台並列接続の 場合でも, 単純に各モジュールの電流リプルを加えるこ とで電流リプル波形 を表すことができ, このコンデン サ電流の最大値と最小値を求めることで, 並列電源シス テムの出力リプルを容易に導出できる.
リプル算出用回路モデルから電流リプルと時比率の関
低リプル並列電源の設計指針について *
小 浜 輝 彦**
常 定 亮 太***
Design guideline for low-ripple paralleled converter system is proposed. Current and voltage ripples in the out- put capacitor of the paralleled converter system are estimated through a simplified circuit model which is available for any paralleled converter system. Design example for paralleled converter system is given to confirm the effec- tiveness of proposed guideline. Insulated type converter enhances flexibility of the design by adjusting turn ratio of transform.
Key Words: Paralleled Converter System, Ripple, Interleaving Operation, DC-DC Converter
Design Guideline for Low-ripple Paralleled Converter System
Teruhiko KOHAMA and Ryota TSUNESADA
1. はじめに
*平成20年12月17日受付
**電気工学科
***工学研究科電気工学専攻
3. リプルの算出
図1 インターリーブ動作
図2 リプル算出用等価回路モデル
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図3 複数台リプル算出用等価回路モデル
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図4 減衰率と時比率の関係
係は図4のように表すことができる. 接続台数2台の場 合, 時比率0.5でゼロリプルとなる. また3台の場合, 時比率約0.33と0.67で最も減衰効果が確認できる. 図4 から分かるように同じ接続台数でも時比率が異なるとリ プルの低減効果が変化する. また接続台数を増加させる に従って全体的にリプルが低減する傾向がある. 大きな 特徴として時比率と接続台数の組み合わせが式(1)の条 件を満たす場合ゼロリプルとなる.
理論値と実験結果がほぼ一致することから, 回路モデル の妥当性を確認することができる.
4. 設計指針
まず, 電流リプルの減衰率 を次式で定義する.
ここで,
:並列電源システムの出力電流リプル
:モジュール1台の出力電流リプル である. が1に近い程リプルは低減する.
コンバータが非絶縁型の場合の設計フローチャートを 図5に示す. まず始めに, 入出力電圧とコンバータモジュー ル単体の内部損失から大まかな時比率の動作範囲を推定 する(Step0). 次にスイッチング周波数とモジュール単 体の応答速度から平滑コイルのインダクタンスを決定す る(Step1). 続いて電圧リプルの目標値と平滑コンデン サのESRから電流リプルの目標値を決め(Step2), モ ジュール単体の電流リプルを求め式(2)より電流リプル の減衰率を決定する(Step3). リプル算出用回路モデル を用いてグラフからリプルを見積り, 条件を満足する時 比率範囲を明確にする(Step4). 次にStep0で求めた時 比率範囲とStep4で明確にした時比率範囲が重なる接続 台数候補を選定する(Step5). ここで下記四点を考慮し て接続台数を決定する(Step6).
・N台合計のモジュール容量が目的とするシステムの 電流容量を満足するか.
・接続台数候補ごとに時比率範囲を計算しその値が条件 を満たすか.
・N台接続の場合モジュール全体で応答速度を満足す るか.
・接続台数の増加よるコストに問題はないか.
コンバータが絶縁型の場合の設計フローチャートを図 6に示す. 絶縁型はまず, 非絶縁型コンバータのフロー チャートのStep1〜4と同様の手順を行う. Step4で明確 にした時比率範囲の中から時比率範囲を決める. この際, 内部損失による時比率変化か考えられるので範囲の広い ものを選択し, 範囲が同じ程度のものが複数ある場合に
は全て候補に入れておく. 続いて, モジュール容量, モ ジュールの時比率範囲, 応答速度, 回路素子数を考慮し て接続台数を決定する. 最後に, 入出力電圧と時比率の 動作点からトランス比を決定する.
5. 設計例
設計例として入力12[V], 出力3.3[V], 30[A], 出力 電圧リプルが出力電圧の3%以下となる非絶縁型並列電 源について考える.
Step1 入出力電圧とコンバータモジュールの内部抵抗
から時比率の動作範囲を推定する
コンバータの内部損失がない場合次式の関係が得られ る.
ここで 12 3.3 より時比率Dは0.275と なる. また, コンバータの内部抵抗rが0.1[Ω]だとす (2)
(3)
× =整数 (1)
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図5 非絶縁型の設計フローチャート
ると時比率 は
で表わされる. したがって は0.358となる. ここでは 出力電流 はモジュール単体の定格電流値である. よっ て時比率の動作範囲は0.275から0.358となる.
Step2 スイッチング周波数・平滑コイルのインダクタ
ンスを決め, 電流リプルの減衰率を決定する
スイッチング周波数が300[kHz], モジュール単体の 応答速度の目標値を3[A/μs]とすると, 式(4)からコイ ルのインダクタンスL, インダクタンスに加わる電圧を Vは
となる. 降圧形では となるので式(5)よりL は2.9[μH]となる.
Step3 電圧リプルの目標値と平滑コンデンサのESR
から電流リプルの目標値を決定する
出力電圧リプル は, 平滑コンデンサのESRと電 流リプル の積に大きく依存しほぼ次式で表される.
この式を用いて に目標とする電圧リプルを設定すれ ば, が電流リプルの目標値 となる. ここでは例 として平滑コンデンサのESRを0.15[Ω]とすると, = 3.3×0.03=0.099[V]となるので電流リプルの目標値 は0.66[A]となる.
Step4 モジュール単体の電流リプルを求め電流リプル
の減衰率を決定する
モジュール単体の電流リプル は
で与えられる. これより =3.6[A]となる.以上の結 果より式(2)を用いて電流リプルの減衰率を決定すると
81.7[%]となる.
Step5 回路モデルを用いて電流リプル算出
電流リプルの見積りは, リプル算出用等価回路を用い 接続台数ごとのリプルを算出する.
Step6 求めた時比率範囲でリプルの減衰率が条件を満
たす接続台数候補を選定
図7に各接続台数に対する時比率と減衰率の関係を示 す. 接続台数が2台の場合, リプルの減衰率 が81.7
%以上を満たす時比率は, 0.46〜0.54までの範囲である.
接続台数3台の場合では, 条件を満たす時比率の範囲は 0.29〜0.38と0.62〜0.70の範囲となる. 同様にして接続 台数ごとのリプルの条件を満たす時比率の範囲を表した グラフが図8である. 図8からStep0で求めた時比率範 囲のときに条件を満たす接続台数候補は3台, 4台, 5 台, 6台, 7台となる.
Step7 モジュール容量, 内部損失, 応答速度, 回路素 子数を考慮して接続台数を決定する
(1) N台合計のモジュール容量が目的とするシステム の電流容量を満足するか.
例として, 一台のモジュール容量が10[A]であるとす ると3台以上なら条件を満たす.
(2) 接続台数候補ごとに時比率範囲を計算しその値が 条件を満たすか.
接続台数によってモジュール1台の出力電流分担が変 わるので, 式(4)を用いて再度, 実際に動作する時比率 (動作点) を計算すると, N=3のときの時比率は 0.358, N=4のとき 0.338, 同様にして 0.325,
0.317, 0.311となる. これらの動作点と減衰率 が条件を満たす時比率範囲を図9に示す. 図9から時比 率範囲内に動作点があるものは接続台数が3台, 6台, 7台と分かりこれらの台数が条件を満たす.
(5) 㪥บว⸘䈱䊝䉳䊠䊷䊦㔚ᵹኈ㊂䈏
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図6 絶縁型の設計フローチャート
(7)
(4)
(6)
(3) 台接続の場合にモジュール全体で応答速度を満足 するか.
並列システム全体の応答速度が10[A/μs]必要だとす るとモジュール単体の応答速度は3[A/μs]なので4台 以上のとき条件を満たす.
(4) 接続台数の増加よるコストに問題はないか.
(1)〜(3)を踏まえ, リプル条件を満足し回路素子数を 少なくするなら接続台数は6台に決まる. しかし, コス
トに見合わない場合, 以下の作業を行う.
(a) 応答速度は満足しないが, Step6の(2)で時比率 範囲にまだ余裕がある場合
Step1に戻り平滑コイルのインダクタンスを小さくし てモジュール単体の応答速度を上げる.
(b) 応答速度は満足するが, Step6の(2)で時比率範 囲内に動作点が存在しない場合
Step1に戻り平滑コイルのインダクタンスを大きくす
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0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 4.99 5
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0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 4.96 5
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1.0
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0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 0
0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 4.98 5
53 10´ -15 D㪠㫆㫌㫋(2,㪛)
1.0
0 㪛
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1.066 10´ -14 D㪠㫆㫌㫋(5,㪛)
1.0
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0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 4.98 5
2 10´ -15 D㪠㫆㫌㫋(6,㪛)
1.0
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0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 4.99 5
0.029 D㪠㫆㫌㫋(7,㪛)
1.0
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図7 出力電流リプルと時比率の関係
ることで電流リプルの減衰率が下がる. よってStep5で の条件を満たす時比率範囲が広がる.
(c) コンデンサのESRを変更し設計をやり直す場合 リ プ ル は 式 (6) の よ う にESR の 影 響 を 受 け る の で
ESRの値を変更することでリプルを低減できる. 例と して, 平滑コンデンサのESRを0.15[Ω]から0.10[Ω]
に変更した場合, 電圧リプルが3%以下の条件を満足す る減衰率は81.7%から70%と下がる. この結果, 図8の 条件を満たす時比率の範囲が広がり接続台数候補が3台 でも可能となる.
(d) コンバータモジュールを非絶縁型から絶縁型に する場合
トランス比により時比率の調整が可能となり接続台数 候補を増やすことができる. 例としてコンバータモジュー ルを絶縁型とし接続台数が2台の場合に, 条件を満たす ようトランス比を調整した実験結果を図10に示す. 実験 結果から接続台数が2台の場合でもリプルの減衰率が78
%となり接続台数候補が増える. コンバータを絶縁型と することで設計の自由度が高まったことが確認できる.
6. まとめ
低電圧リプルを実現する並列電源システムの設計指針 を示した. 等価回路を用いて事前にリプル抑制効果を把 握できるため, 負荷に合った適切な接続台数と回路パラ メータを選択することができる. また, コンバータを絶 縁型とすればトランスによる時比率調整が可能となり設 計の自由度を高めることができる.
参 考 文 献
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図8 目標減衰率を満足する時比率範囲(ESR=0.15Ω)
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図9 台数ごとの動作点と減衰条件を満足する時比率範囲の関係
図10 絶縁型コンバータの電流リプル波形(N=2)
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