13.1 検討の目的
集成材フレームを用いた木造建築物、すなわち、建築基準法施行令第
46 条第 2 項第 1 号を適
用する建築物
(いわゆる集成材等建築物。集成材フレームを用いた木造建築物はこの一部である。
)
について、現行基準に則した構造計算方法をとりまとめる。
当面、構造計算に関する部分のみとし、防耐火設計、耐久設計、温熱環境設計、施工、維持管
理等は他のマニュアル類に委ねる。
構造計算における構造モデル化、応力算定、フレームや接合部等の許容耐力、検定方法などに
ついて、現行基準に沿った方法を記載する。
一連の作業を通じて、必要な情報を整理し、現行基準の妥当性も含めて問題点を把握し、本来
必要な計算の内容、さらには基準の改正提案をとりまとめることを目的としている。
13.2 平成 24 年度までの検討
13.2.1 指針の記載内容
検討の結果、指針の記載内容としては次に挙げる項目が必要と考えられる。
a) 適用範囲
1)建築基準法施行令第 46 条第 2 項を適用する集成材等建築物(在来軸組構法を除く)
2)用途は問わない
3)規模は問わない。従って耐火建築物となることも想定する。
4)計算ルートは 46 条第 2 項であるが、規模等に応じてルート2、ルート3となることも想定
する。昭和 62 年建設省告示第 1899 号によると、許容応力度計算、層間変形角・偏心率の
確認が要求される。また、ルート2(許容応力度等計算)の場合には、許容応力度計算、
層間変形角の確認、剛性率・偏心率の確認、β割増し、接合部の靱性確保等が要求される。
さらに、ルート3の場合には許容応力度計算、層間変形角の確認、保有水平耐力計算が要
求される。
5)構造形式は、半剛節ラーメン、ブレース、方杖、アーチ、及び、これらと壁式構造の併用
構造を想定する。
b)使用材料・材料特性
1)構造用集成材
2)製材
3)構造用合板、その他の面材
4)鋼材
5)コンクリート
c)接合部等の特性値
剛性、許容耐力、降伏耐力、終局耐力、
(可能であれば終局変形または靱性)の計算式、さらに
は詳細なモデル化を行う場合の荷重変形関係の設定方法を記載する。計算ルート(許容応力度計
算のみかルート 3 か)によって異なる場合はそれも記載する。
0)特性値の設定方法
鉛直荷重に対しては5%下限値に荷重継続時間や使用環境(含水率)による調整係数を乗
じる。その他の安全率等を考慮する可能性もある。水平力に対しては、5%下限値の代わり
に、当該要素の外力負担率に応じて5%下限値から50%下限値を用いることが考えられる。
次の7種類の接合を対象とする。
1)引きボルト接合
2)接着接合(グルードインロッド)
3)ラグスクリューボルト接合
4)合わせ梁式モーメント抵抗接合
5)鋼板挿入接合
6)湾曲アーチ肩部
7)方杖に用いるボルト接合
d)フレーム等の特性値
剛性、許容耐力、降伏耐力、終局耐力、
(可能であれば終局変形または靱性)の計算式、さらに
は詳細なモデル化を行う場合の荷重変形関係の設定方法を記載する。計算ルート(許容応力度計
算のみかルート 3 か)によって異なる場合はそれも記載する。次の 8 種類の構造形式を対象とす
る。
1)引きボルト接合を用いたラーメン構造
2)接着接合(グルードインロッド)を用いたラーメン構造
3)ラグスクリューボルト接合を用いたラーメン構造
4)合わせ梁式モーメント抵抗接合を用いたラーメン構造
5)鋼板挿入接合を用いたラーメン構造
6)ブレース構造
7)アーチ構造
8)ボルト接合を用いた方づえ構造
e)荷重外力
1)固定荷重
2)積載荷重
3)積雪荷重
4)地震力
モデル化の違いによる地震力の与え方として、剛床仮定であれば重心位置での地震力、3
次元モデルや疑似 3 次元モデルに対しては構面ごとの負担重量に応じた地震力の与え方を
示す。
5)風圧力
f)許容応力度計算
1)基準解説
令第 46 条第 2 項の解説として、材料の規定(1898 号)
、柱脚等の仕様規定、構造計算の内
容(1899 号:許容応力度計算、層間変形角、ねじれ補正等)を記載する。
2)留意事項
・許容応力度計算(またはルート2)の場合と、ルート3における許容応力度計算の違い(靱
性の確保方策とそれに伴う許容耐力の設定方法)
・水平構面剛性の考慮(剛床仮定が成り立つ範囲)
3)鉛直荷重に対する計算
・構造物のモデル化は、大別して剛床仮定と柔床仮定があり得る。剛床仮定の場合、 剛
性による応力配分にねじれ補正を加えて検定する。柔床仮定(水平構面剛性が有限の値を
持つ、または無視できる)の場合には 3 次元モデル、疑似 3 次元モデル、構面ごとの計算
などを行う。
・各構面において、水平力が許容耐力以下であることの確認
・検定項目(想定しない破壊が生じないことの確認方法)
「4.フレーム等の特性値」で挙げた各構造形式について、破壊モードの想定と、それを
実現する具体の方法
・層間変形角の確認
・大屋根、スキップフロアなど、特殊形状の計算方法
5)屋根葺き材等の検討
6)燃え代設計による準耐火構造の場合には変形制限 1/150
g)ルート2の計算
1)基準解説
・剛性率、偏心率、層間変形角
・昭 55 年建告第 1791 号には、次の要求が述べられている。
筋かいの応力負担割合βによる応力割り増し
木材の筋かいについて筋かい端部又は接合部にめりこみ材料強度に相当する応力が作用
する場合に、筋かいに割裂き、せん断破壊等が生じないことを確認
木材以外の筋かいについて、筋かい軸部が降伏する場合に筋かい端部及び接合部が破断
しないことを確認
必要に応じ、柱はり又はこれらの接合部が、割裂き、せん断破壊等によって構造耐力上
支障のある急激な耐力の低下を生ずるおそれのないことを確認。
2)β割り増しの根拠についてシミュレーションによる確認、具体的方法を記載
3)木材の筋かいの割裂き、せん断破壊が生じないことの具体的な確認方法
4)木材以外の筋かいの筋かい端部及び接合部の先行破壊防止
5)柱はり又はこれらの接合部の、割裂き、せん断破壊等が生じないことの確認
h)保有水平耐力計算
1)Ds の算定方法
増分解析による方法と、告示(昭 55 建告 1792 号第 2 第1項)の表による方法とがある。
告示の表についてシミュレーションによる妥当性の検証。
2)保有水平耐力の計算方法
3)保有水平耐力が必要保有水平耐力以上であることの確認方法
i)簡易設計法
使用材料・断面寸法、接合仕様、スパン等を限定して、(終局を考慮した)許容耐力を与え、
許容耐力の加算により必要耐力以上であることを確認する方法を記載。
j)構造計算における課題と考え方
1)接合部や構面の許容耐力等に関する課題
①接合部や構面の許容耐力と下限値の考え方
接合部や架構の許容耐力は 5%下限値を用いるべきか、50%下限値で良いのか。応力負担割
合による設定方法は、
「木造ラーメンの評価方法・構造設計の手引き」
((公財)日本住宅・
木材技術センター平成 26 年 3 月予定)に記載されている。
接合部の靱性を考慮して許容耐力を定めるのが一般的になっているが、地震時に破壊させ
ない接合部に対しても一定の靱性が必要かどうか。
②梁端部の複合応力
設計上はせん断キーを入れることが多いが、実態としては、せん断と圧縮・引張の役割分
担ができているとは限らない。
③柱脚接合部の接合形式
柱脚をベースプレート型とする場合、鉄骨造の露出型柱脚で行われているような Ds の割増
しが必要かどうか
2)構造物全体の設計における考え方
①水平構面剛性の考慮、水平構面の設計
剛床と見なせる範囲、及び非剛床の場合の解法。
非剛床のモデル化としては、ブレース置換、疑似 3 次元モデルなどの方法
水平構面に対するクライテリアとして、構造物の終局状態で弾性範囲(許容せん断耐力以
下)であることを求めるか、水平構面の安全限界変形以下であれば良いのか、それを許容
応力度設計(ルート 1)ではどのように実現するか
②接合形式と架構形式(柱通し型か梁通し型か)の関係
木造ラーメンには大別して、柱通し型と梁通し型がある。
柱通し型では建物全体で立体解析をしないと、 剛性評価が難しいというデメリットがある
一方、柱の折損がなければ全体崩壊形となるため、地震動に対して一般論としては有利で
ある。柱継手が必要になる場合が多いが、その場合の圧縮力の伝達が課題。ドリフトピン
等だと本数が必要、面タッチで伝えるには施工精度が課題。
梁通し型の場合には、層ごとに荷重変形関係が決まるため、設計は容易である。また、不
測の事態に陥った場合にも梁の脱落が生じにくいため、鉛直荷重に対する安全性はある。
しかしながら、めり込み応力が過大になるため、その設計法が課題となる。その際に、許
容応力度の割増しをしてよいかどうかの検討も必要である。耐震設計においては、層崩壊
形になるため、地震動に対しては一般に不利である。
③接合形式と崩壊形との関係
木質ラーメンにおいて、柱脚接合部が柱梁接合部よりも先に降伏することは許容されると
考えるが、どちらかが終局に達する前に、他方がまだ降伏していないという設計は好まし
くない。また、例えば、曲げで破壊したためにせん断が伝えられなくなって柱脚が滑る等、
破壊後に予想外の挙動を示したり、他の応力に対して悪影響を及ぼしたりする破壊は避け
るべきである。こうした考え方を述べる。
④想定外入力
想定している極めて稀な地震動に対して脆性的な破壊が生じなければいいのか、想定外の
地震動に対しても破壊モードはある程度考えておいた方がよいのか。
⑤損傷制御の考え方
木造建築物における部材や接合部の強度等の変動を考慮して、損傷を一定の確率において
制御する方法。静的増分解析と地震応答計算によっても損傷状況が異なる。損傷制御の考
認した上で、問題点を整理する。
②構造特性係数 Ds について
ラーメンフレームと耐力壁の併用構造など、荷重変形関係の異なる要素を併用した場合の
構造物の Ds の設定方法。応力負担割合に応じた重み付け平均をするという方針で良いか。
時刻歴応答計算を用いたパラメトリックな解析的検討に基づく記述が必要。
③形状係数(Fes)の扱い
形状係数のうち Fs については、立面的混構造で応答解析をすると必ずしも Fs による割増
しが必要でない場合がある。また、Fe について、現状の規定では偏心率が 0.3 を超えると
Fe は 1.5 で頭打ちとなるが問題ないか。直交方向入力や、動的な割増しを考慮すると 1.5
では甘いという意見もある。むしろ偏心率については、そもそも 0.45 を超えるようなもの
は不可というのが本来の意図か。
Fe の適用については、直交方向の入力を考えると、立体解析を行った上でさらに Fe 割り
増しを行うべきであるという意見もある。Fe 、Fs とも剛性で決めているが、本来は耐力
で決まるものという考え方もある。解析的検討に基づく記述が必要。
④「急激な耐力低下の恐れある破壊形式」について
急激な耐力低下の恐れある破壊形式として、割裂、部材の曲げ破壊、接合部でのせん断破
壊、グルードインロッドの引き抜け等が挙げられる。割裂を起こした場合、柱の鉛直支持
能力が失われる恐れがあるが、規定の内容は鉛直荷重支持能力が問題ではなく、架構とし
て急激な耐力低下を招かないことと思われる。
「急激な耐力低下の恐れある破壊を生じないこと」とは、 全ての要素について要求してい
るのか、部分的に脆性な破壊があっても架構として急激な耐力の低下を招かければよいと
いうことか、どちらか。後者と思われるが、ルート 2(告示 1791 号)では要素単位で要求
されている。木造の場合、絶対に木で壊れない設計は難しい。どの程度までなら許容でき
るかは押さえておく必要がある。
⑤β割り増しの規定について
筋かいの応力負担による応力のβ割り増しについては、履歴によるエネルギー吸収の違い
を考慮した鉄骨造での考え方が元になっているようであり、木造建築物の地震時挙動を踏
まえた修正提案が必要と思われる。許容耐力の設定において Ds の考え方を盛り込んで靱性
による低減を加えた設定を行っても、β割り増しが不要とはならない。解析的検討に基づ
く記述が必要。
13.2.2 構造種別ごとの検討結果
1) 引きボルト式接合を用いたラーメン構造
1)-1 引きボルト式モーメント抵抗柱脚-基礎接合部の回転剛性と降伏モーメントの設計法
引きボルト式モーメント抵抗接合部の回転剛性や降伏モーメント等の設計式については、日本建
築学会「木質構造接合部設計マニュアル」に掲載されている。ただし柱梁接合部のみが掲載され
ており、柱脚
-基礎接合部については設計式が示されていない。そこで、ここでは引きボルト式柱
脚
-基礎接合部の回転剛性や短期許容モーメントの設計式を誘導した。以下にその抜粋を示す。
1)-2 中立軸位置 xp と回転剛性 Kθの算定式
中立軸位置 xp は、
1
1
10
9
3 2 0.
K
K
E
y
a
p c
+
+
⋅
=
、
b
=
5
.
45
d
−
31
.
6
、
c
=
63
.
2
d
とおくと、
a
ac
b
b
x
p=
±
+
∴
2・・・式(8)
応力中心間距離
j
d
x
p3
1
−
=
・・・式(9)
これより、回転剛性K
θ(
)
+
−
=
3 21
1
K
K
j
x
d
K
θ pは、下式で与えられる。
・・・式(10)
ここで、引きボルトの引張剛性K2
l
A
E
K
2=
t tは、
・・・式(11)
梁の定着金物のすべり剛性K
3(
b)
c b b b bx
.
.
E
k
k
y
x
K
9
10
6
31
0 0 0 3+
=
⋅
⋅
=
は、
・・・式(12)
1)-3
短期許容モーメントの算定式
接合部の終局モーメントは、①引きボルトの引張破壊、②定着金物の面圧降伏(に伴い割裂を
誘発)、③定着金物から柱木口へのせん断破壊、④柱の曲げ破壊、のいずれかの最小値で決まる。
靱性型の接合部設計とするためには、このうち①に誘導することが必要となる。そこで、ここで
は、引きボルトが降伏→塑性変形→引張破壊 となるよう、①の引きボルトの引張破壊時モーメン
トが②、③、④より小さくなることを検定する設計式とする。
②定着金物の面圧降伏時モーメント:
M
yb=
x
b⋅
y
b⋅
F
e⋅
j
・・・式(14)
③定着金物から柱木口へのせん断破壊が生じるときのモーメント:
M
us=
A
s⋅
F
s⋅
j
・・・式(15)
④柱の曲げ破壊時モーメント:
M
cu=
Z
c⋅
F
bc式(18)
①引きボルトの引張による降伏モーメントM
y2および終局モーメントM
j
F
A
M
y2=
t⋅
ty⋅
u2・・・式(19)、
j
F
A
M
j
F
A
M
tu t u tu t u⋅
⋅
=
⋅
⋅
=
上 上 下 下 2 2・・・式(20)
①の引きボルトの引張で破壊させるようにするための検定式
M
u2上≦
min
(
M
yb,
M
us,
M
cu)
・・・式(21)
引きボルトが降伏するときの降伏変形角
θ
yは、
θ
y=
M
y2K
θ・・・式(22)
引きボルトが塑性化し伸びきって破断直前のときの終局変形角
θ
uは、
θ
u=
η
⋅
l
2j
・・・式(23)
これより、引きボルトで降伏→破断する場合の柱脚接合部の塑性率
µ
は、
µ =
θ
θ
・・・式(24)
d
py
y
b bx
N
S
x
p3
= ax
1l
l
t t tu tyF
F
A
E
引きボルト 引張強度: 降伏応力度: 断面積: ヤング係数:x
pM
b c s e 0 cF
F
F
E
x
bT
中立軸y
bx
b × 定着座金: 基準せん断強度: 基準曲げ強度: 繊維方向の基準支圧強度: 繊維方向ヤング係数: 柱材図
1 引きボルト式柱脚接合部力学モデル
2)接着接合(グルードインロッド)を用いたラーメン構造
グルード・イン・ロッドは、木材に鋼棒を挿入し、それを樹脂系接着剤で包埋して鋼棒の引き
抜き抵抗によって接合する接合方法である。
モーメント抵抗接合部においては、図
1 のように圧縮側を木材、引張り側を GIR とすることが
できるほか、圧縮側に配置した
GIR の圧縮抵抗を加算することができる。接合部に生じるせん断
力に対しては、複合応力を考慮しないですむように、せん断キーとしてダボなどを別途配置する
ことが望ましい。
GIR による接合では、木質材料と鋼材を接着接合しており、この接着接合部は高耐力・高剛性
を確保することができるが破壊性状が脆性的なため、靱性を確保するためには工夫が必要である。
通常の
GIR では、変形が数 mm で木破による脆性的な破壊を生じてしまう。これに対して、図 2
のように、接着接合部より先に鋼材部が降伏するように接合具の断面形状を変化させると、図
3
のように接合部での靱性を確保することができる。
図
1 グルード・イン・ロッド接合
図
2 靱性確保型 GIR
P-A1-300 : 均一断面 GIR
P-B1-250,P-B2a-250 : 靭性確保型 GIR
図
3 GIR 断面による性能の違い
3)ラグスクリューボルト接合を用いたラーメン構造
ラグスクリューボルト(以下、LSB)は、形式的には引きボルトを用いたラーメン構造やグル
ードインロッド(以下、GIR)を用いたものと同様であり、違いは、柱脚接合部では柱、柱はり
接合部でははりの材軸方向のボルトの定着方法である。LSB 接合はこの定着強度がほかの方法と
同等で圧縮方向にも抵抗力があり、さらに施工もある程度容易であるがゆえに現在のところ多用
されていると考えられる。そこで、平成 24 年度には定着部の強度比較をまずは実施した。図
13.2.2-3)-1 には一例として、繊維方向別の定着部の強度を比較し示した。径が大きいほど強度が
大きいことがわかる。繊維方向の図中にはせん断により定着したいわゆる引きボルト型の強度も
併せて示した。引きボルト型は平均的な強度を有している。図
13.2.2-3)-2 は LSB、GIR につい
て縦軸を最大耐力をボルト周長で除したものである。
GIR で高い結果もあるものの概ね周長で整
理することにより強度の予測が可能と考えられる。
繊維平行方向 繊維直角方向
図
13.2.2-3)-1 埋め込み長さボルト径と最大耐力の関係
繊維平行方向 繊維直角方向
図
13.2.2-3)-2 最大耐力/ボルト周長と埋め込み長さの関係
ついで、式
13.2.2-3)-1 を用いて、許容曲げモーメント
M
を幅
120mm、1 段筋と 2 段筋を想定
した接合部について求め、母材最大曲げ耐力と比較したものが表
13.2.2-3)-1 である。集成材の曲
げ強度は
Fb=300N/mm
2として計算し、
1 段目のボルトは縁から 50mm、ボルト間距離も 50mm
として、
2 段筋の場合には引き抜き強度を 0.8 倍した。また、引き抜き強度は図 13.2.2-3)-1 にお
13.2.2-3)-2 を用いた。
式
13.2.2-3)-1
:LSB、GIR の許容耐力
n
tj
:柱端部、はり端部の応力中心距離。ボルト間距離とすることができる。
:引張側ボルトの本数
[kN] 式 13.2.2-3)-2
:ボルトの埋め込み長さ
表
13.2.2-3)-1 部材断面とモーメント抵抗性能
埋め込み長さ=300mm
はりせい
300mm
400mm
500mm
600mm
700mm
800mm
1 段
21.6(0.40)
32.4(0.34)
43.2(0.29)
54.0(0.25)
64.8(0.22)
75.6(0.20)
2 段
25.9(0.48)
43.2(0.45)
60.5(0.40)
77.8(0.36)
95.0(0.32)
112.3(0.29)
埋め込み長さ=400mm
はりせい
300mm
400mm
500mm
600mm
700mm
800mm
1 段
28.8(0.53)
43.2(0.45)
57.6(0.38)
72.0(0.25)
86.4(0.29)
100.8(0.26)
2 段
34.6(0.64)
57.6(0.60)
80.6(0.54)
103.7(0.48)
126.7(0.43)
149.8(0.39)
埋め込み長さ=500mm
はりせい
300mm
400mm
500mm
600mm
700mm
800mm
1 段
36.0(0.67)
54.0(0.56)
72.0(0.48)
90.0(0.42)
100.8(0.37)
126.0(0.33)
2 段
43.2(0.80)
72.0(0.75)
100.8(0.67)
129.6(0.60)
158.4(0.54)
187.2(0.49)
単位:
kNm カッコ内は母材に対する強度比
はりせいが
300mm程度では母材最大曲げの 80%程度まで接合部強度が達し、母材の断面欠損
などを考慮すると効率の良い接合が実現できている。一方、はりせいが
800mm になると母材の
最大曲げ耐力の
50%程度となっており、効率良いとは言えない範囲となった。
また、回転剛性や許容耐力の計算ルール試案を示し、後、実験、解析等に式の検証が必要であ
ることを述べた。
4) 合わせ梁式モーメント抵抗接合を用いたラーメン架構
4)
-1 合わせ梁式モーメント抵抗接合部の概要
合わせ梁式モーメント抵抗接合は、柱または梁の一方を2丁合わせとし、もう一方の材を挟み込
んで、パネルゾーンに木
-木2面せん断の接合具を多数打ち込むことによってモーメントに抵抗す
る接合部である。合わせ梁式モーメント抵抗接合部の回転剛性や降伏モーメント等の設計式は、
日本建築学会「木質構造接合部設計マニュアル」
4.3 節に記載されている。これによると、接合
具1本あたりのすべり剛性
Ksと降伏せん断耐力
Pyが与えられれば、回転剛性
K
θ=Σk
s・R
2、降
伏モーメント
My=Σ
(Py・
R
2/
Re
) と簡単な式によって設計できる。合わせ梁式モーメント抵抗接
合部のバリエーションとして、2丁合わせの材ともう一方の材を相欠きして挟み込むことにより、
通し貫接合と同様に嵌合部のめり込み抵抗が加わるようにしたタイプがある。通し貫接合につい
ても回転剛性や降伏モーメント等の設計式は、日本建築学会「木質構造接合部設計マニュアル」
4.6 節に記載されている。ここでは相欠き嵌合方式による合わせ梁式接合部のモーメント加力実
験を行って、パネルゾーンの接合具によるモーメント抵抗と相欠き嵌合部のめり込みモーメント
抵抗の加算則について検証した。
4)
-2 合わせ柱-梁式接合部のモーメント加力実験
接合部パネルゾーンの仕様を変えて試験を行ったが、うち
4 種類は相欠き嵌合部のめり込みの
みの試験体で、パラメータは柱梁のせいを
h=300mm、450mm、600mm、750mm の 4 種類と
した。残りの
8 種類は母材の樹種と木栓の樹種・径・本数をパラメータとし、母材カラマツ、木
栓シラカシ、径φ
24、本数 8 を標準として、母材樹種にスギ、木栓の樹種にケヤキ、木栓の径に
φ
18、木栓の本数を 4,12,16、を追加した。以下に、木栓なし h=600 の試験結果を示す。
引き切り後全景
パネルゾーン上部
0 50 100 150 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2 M om en t( kN m )5)鋼板挿入接合を用いたラーメン構造
接合部の設計方法及び設計の考え方は、
「木質構造接合部設計マニュアル」
(日本建築学会、2009
年)や「通直集成材を用いたラーメン構造の設計法」(日本住木・木材技術センター、1996 年)
等に記載されている。オープンな工法であり、施工実績も多い。しかい、鋼板挿入タイプの接合
形式については、以下の課題が挙げられる。
1)弾塑性挙動、破壊モードの把握:荷重変形関係の予測方法に関する技術資料が極めて少ない。
2)破壊性状:鋼板挿入タイプの破壊性状は接合具に起因する木部の割裂である。割裂現象は十分
には解明されておらず、また脆性的な破壊現象であるため、鋼板挿入ドリフトピン接合であっ
ても割裂を生じさせない接合方法とすべきである。
3)回転中心とモデル化:柱側及び梁側の両方に回転中心があるためにモデル化が複雑となる。
H24 年度は、上記の課題を満足する接合方法として、鋼板挿入ドリフトピン接合部分を剛な接
合とし、かつ柱梁接合面または柱脚端部をフランジ型接合方式とし、その部分で破壊をコントロ
ールする接合形式を考案し、実験的検討を行い、従来の接合形式と比較を行った。
その結果、
「フランジ型接合部分で破壊をコントロールする」方法を概ね実現したものの、大変
形に至る前(1/75rad.程度)に金物と木部のディテールに起因すると考えられる割裂が生じ、終
局モードも木部の割裂で決定した。
そこで、H25 年度は、木部の割裂を生じないディテールとした仕様に改良した接合方法による
実験を行った。併せて、昨年度実施した従来型 2 種類についても改良した 4 仕様について実験的
検討を行った。
表 13.4-1 試験体各部仕様
柱断面
(mm)
梁断面
(mm)
鋼板厚
(mm)
使用
ボルト
ドリフトピン
仕様
破壊モード
試験
体数
タイプ 1 120×450 120×450
9
-
φ12,
L=118mm
ドリフトピンの
曲げ降伏
1
タイプ 2 120×450 120×450
9
8-HTB
M20
φ12,
L=118mm
ドリフトピンの
曲げ降伏
1
タイプ 3 120×450 120×450
9
4-SNR490
M16
φ12,
L=118mm
接合ボルト
引張破壊
2
タイプ 4 120×600 120×600
9
4-SNR490
M20
φ12,
L=118mm
接合ボルト
引張破壊
2
実験の結果、改良型(タイプ 3、タイプ 4)は、従来型に比べ木部の割れをある程度低減するこ
とを確認した。
荷重変形関係の予測について、剛性・降伏モーメントに関しては従来型も計算値は実験値を概
ね予測できている。終局モーメントについては、タイプ 1 及びタイプ 2 の終局モーメントを計算
するためには、ドリフトピン降伏後の応力再分配を考慮した逐次計算が必要となる。タイプ3は、
鋼材が引張強さに達した時と仮定する(図中の点線)と、実験値の最大値は平均値を用いた計算
値より約 1.2 倍大きい結果となった。
以上、接合部の木部損傷を低減する鋼板挿入型接合を提案し、実験的その性能を確認した。提
案する接合方法は、従来型に比べ大変形領域まで損傷を抑制できることを確認した。一方、荷重
変形関係の予測については、降伏後の 2 次勾配を予測する方法について引き続き検討する必要が
ある。
写真 従来型(左:1/8rad.)と改良型(右:1/10rad.)の終局時の損傷状況の比較
表
各接合形式のモデル化の方法と剛性、降伏モーメントの計算値
接合形式
タイプ
1
タイプ
2
タイプ
3
モデル化
回転剛性
(kNm/rad.)
K
m1= K
m2=1.13×10
K
4 m1= Km
2=1.13×10
*K
4 m3K
:剛と仮定
m1= Km
2=1.13×10
K
4 m3= 4.50×10
4降伏モーメント
M
y(kNm)
M
y1= M
y2=43.8
M
y1= M
y2M
=43.8
y1= M
y2M
=43.8
y3M
=42.8(公称値)
y3=51.3(平均値)
終局モーメント
M
u-
(kNm)
-
M
u3M
=64.5(公称値)
u3=69.8(平均値)
Km1
Km2
Km1
Km2
Km1
Km2
Km1
Km2
Km1
Km3
*Km2
Km1
Km3
Km2
40 60 80 100 120 M (k N m) タイプ1 タイプ2 calc 30 40 50 60 70 80 90 100 M (k N m) タイプ3-1 タイプ3-2 cac6)ブレース架構の構造特性
集成材構造におけるブレース架構は、はり間方向をアーチやラーメン架構とした場合の桁行き
方向に用いられる場合の他、柱・梁架構を始め、床構面、屋根構面等の水平構面に用いられるこ
とが多い。集成材構造におけるブレース架構では、在来軸組構法による筋かい等と比べて一般に
大きな応力を負担するため、大径の部材が用いられるとともに、ブレース端部は、ボルト、ドリ
フトピン、ラグスクリュー、木ねじなどと金物を併用して柱、基礎、横架材と緊結される場合が
多い。木質ブレース架構における変形性能は一般にブレース端部の接合部に依存するため、この
部分に特に大きなじん性を期待できる構法をとらない限り、架構の靱性は乏しい。従って、ブレ
ース架構の設計に当たっては、
① 終局時にブレースが座屈および破断しないようブレースの断面を決める
② ブレース端部が脆性的に破壊することを避け、ある程度のじん性をもたせる構造とする、
③ ブレース端部接合部が2次応力などにより脆性的に破断しないディテールとする
などの留意をすることが肝要である。
図2は、各種ブレースにおける荷重―変形関係を示したもので、150cm角のペイツガ集成
材の柱、15×25cmの梁およびブレースより成る集成材構造骨組で、ブレースの形式および
端部接合方法により図2に示す6種類に分類さる。すなわち、F R、は柱;梁のみの骨組、KI
およびKSは10.5cm×13cmおよび9cm角のK型ブレースを有する骨組、BI およびB
Sは10.5cm×13cmの集成材ブレースを有する骨組、STは 16φ丸鋼ブレースを有する
骨組で、ブレース端部を2本のM16(STでは M20)を用いて図に示す方法(KI、BI は鋼板
挿入式、KS、BSは添え板式)で緊結している。なお、接合に当たって集成材および鋼板のボ
ルト孔径はボルト径+1mm(17φ)とている。
集成材ブレースを有する骨組の破壊は全て引張側プレース端部のボルト接合部における木材の
せん断破壊でありブレース端部の接合が骨組の耐力に大きく影響を及びしている。集成材ブレー
スを有する骨組の最大変形角は約 1/120 程度で(BSでは 1/50)小さな変形角で破壊に至ってい
る。一方、丸鋼ブレースを有するものでは約 1/13 の変形でも破壊に至っていない。KI、KS、B
I、BS の最大荷重は許容設計耐力の約3~5倍で、設計荷重時の層間変形角は 1/500~1/1000 で
ある。これより、集成材プレースをボルトを用いて骨組に緊結した構造は一般に剛性が高く、ま
た耐力の余裕が大きい構造となっていることを示している。各試験体における履歴特性は図に示
ようにスリップ型を合む特性(FR以外)でループの面積は比較的大きい(heq=15%程度)が、
接合部の破断に伴い急激に耐力が減少し、じん性に乏しい構造であることがわかる。
参考文献:
1. 鈴木、安村:集成材アーチ架構の水平加力実験、日本建築学会秋季講演梗概集、1992年
8月
2. 安村、坂井:集成材構造ブレース付骨組の水平加力実験、日本建築学会秋季講演梗概集、1
986年8月
表1 湾曲部の最小曲率半径(
JAS)
7)アーチ架構の構造特性
アーチは、集成材構造で従来一般に使われてきた架構で、特に体育館、倉庫、などの大架構に
用いられることが多い。アーチ架構には一般に湾曲集成材が用いられることが多く、大架構では
比較的曲率半径の大きな湾曲材が用いられることが多いが、わが国では鉛直部分および登り梁部
分を通直とし、軒の部分のみを湾曲とする場合が多く、この場合は湾曲部分の曲率半径が極めて
小さくなることが多い。
湾曲部分の曲率が大きいと製造時に内部応力が蓄積されるばかりでなく、
湾曲部分に曲げモーメントが作用した場合、繊維直交方向の引張りまたは圧縮応力が働きこの半
径方向の応力により部材が破壊する可能性がある。このため、構造用集成材の日本農林規格では
湾曲部分の最小曲率半径を表1に示すように制限している。
日本建築学会「木質構造設計規準・同解説」
では、湾曲部分の許容曲げ応力度f
bf
’を
ラミナ厚tと曲率半径ρをもとに低減す
ることとしている。
b’= k・f
bk = 1 – 2000(t/ρ)
…(1)
2また、湾曲部にモーメントMが作用する
場合の繊維直交方向の最大応力度σ
…(2)
Rσ
を
(3)式で与えている。
Rb : 材幅、h : 材せい
= 3M/(2ρ・b・h)…(3)
湾曲部分が開く方向にモーメントが作
用する場合の繊維直交方向の許容引張り応力度は、建築基準法告示には示されていないが、設計
規準では許容せん断応力度の1/3をとることとしている。
図1は、各種3ヒンジアーチにおける荷重変形関係を示したもので、試験体はラミナ厚8mm
のスプルース集成材を用いたスパン8m、高さ3.2mの3ヒンジアーチで、試験体AおよびB
は10cm×30cmの断面の湾曲集成材の3ヒンジアーチで、試験体Aは梁部分に継ぎ手を有
さず、試験体Bでは梁を図に示すように厚さ9mmの鋼板および直径12mmのボルト10本で
接合したものである。試験体Cは幅10cmの梁部材を幅5cmの柱材2枚で挟み込み、図に示
すように直径12mmのドリフトピン13本及び直径12mmのボルト4本で接合したものであ
る。実験は、架構の梁部分に1m当り2 0 0kg (計1.4t)の積載荷重を加え、軒部分に
水平力を加えておこなっている。
試験体Aでは、水平荷重が3tの時加力側の湾曲部分が半径方向応力により破壊し、その後、
変形の増加に伴って荷重は3.48tまで増加したが、-4.8tの加力時に反対側の湾曲部分
が横引張り応力により破壊している。試験体Bでは、水平荷重が3.9tの時に加力側の湾曲部
が半径方向応力により破壊し、-3.5tの加力時に反対側の湾曲部が破壊した。試験体Cでは、
変形が1/20近くまで目立った損傷は見られず荷重は3.55tまで漸増したが、最終的に柱、
梁接合部において集成材に横引張りによる亀裂が生じている。3者の破壊荷重は概ね同様である
が、初期剛性は試験体 A がやや高く、終局変位は、試験体 A は B,C と比べて小さい。
湾曲を有する3
8)ボルト接合を用いた方づえ構造
ボルト接合を用いた方づえ構造については、既存木造の校舎等で用いられている方づえ架構を
対象に進めてきた。本課題は新築が対象であるが、検討内容は参考になろう。対象は柱とはりに
突きつけとなる方づえと柱とはりを挟み込むタイプの方づえ架構である。平成 24 年度までに突き
つけタイプについては架構実験を実施し、層の荷重変形関係を求められるところまでを示した。
挟み込むタイプは接合部の性能を求める方法までを示し、
平成 25 年度に突きつけタイプと同様に
層の荷重変形を求められるように整理した。
降伏モードの例として、突きつけタイプの結果を図 13.2.2-1 示した。比較の前提条件は、柱の
方づえが取り付く部分からはり端までの長さを 807.5mm とし、部材の曲げに関しては、はりより
柱が先行して許容耐力に達すると仮定した。架構の高さ h は 2,700 から 4,000mm とした。ここで、
柱及び方づえの等級は無等級材であり、樹種もマツを代表的とするもののさまざまなものが考え
られるが、ここでは仮に後述する実験と合わせて強度等級 E105-F345 の同一等級構成集成材とし
た。接合ボルトなどの詳細はこれまでの報告書を参照願いたい。例えば、小屋組の仕様で方づえ
端部のボルトが M16 であれば、降伏モード(短期許容)は柱の曲げとなるというようなことを示
した。
同様の検討を挟み込み型についても実施している。その結果を図 13.2.2-2 に示した。
図 13.2.2-1 突きつけタイプの許容耐力 図 13.2.2-2 挟み込みタイプの許容耐力
13.3 ラ グ ス ク リ ュ ー ボ ル ト を 用 い た ラ ー メ ン 架 構
13.3.1 は じ め に
本 年 度 は 大 規 模 木 造 建 築 物 を 想 定 し た 断 面 の 部 材 を 用 い て 図
13.3-1 に 示 す よ う
な モ ー メ ン ト 抵 抗 接 合 部 を 提 案 し 、実 験 に よ り そ の 接 合 部 の モ ー メ ン ト 抵 抗 性 能 を
示 し 、 一 例 と し て デ ー タ を 蓄 積 す る こ と を 目 的 と し た 。 加 え て 、 モ デ ル 化 に よ る 回
転 剛 性 、 降 伏 モ ー メ ン ト 、 最 大 モ ー メ ン ト の 計 算 方 法 を 示 す こ と で 、 柱 座 金 の 大 き
さ や ボ ル ト の 鋼 材 種 と い っ た パ ラ メ ー タ に 変 更 が 生 じ た 際 に も 、接 合 部 の 性 能 を 計
算 に よ り 求 め る こ と が で き る よ う に す る 。ま ず 、接 合 部 の モ デ ル 化 に よ る 計 算 方 法
を 示 し 、次 に 、計 算 で 必 要 と な る
LSB 群 の 最 大 引 張 耐 力 、剛 性 と 柱 材 の め り 込 み 剛
性 、 め り 込 み 降 伏 耐 力 を 計 算 や 実 験 に よ り 求 め る 。 最 後 に 、 モ デ ル 化 に よ る 計 算 の
結 果 と 接 合 部 の 実 験 結 果 を 示 し 、 計 算 結 果 の 妥 当 性 を 検 証 す る 。
13.3.2 接 合 部 の モ デ ル 化
13.3.2.1 接 合 部 の 概 要
本 接 合 部 は そ の 目 的 上 、一 般 に 流 通 し て い て 比 較 的 簡 単 に 入 手 で き る 材 料 に よ っ
て 構 成 し 、 木 材 に 国 産 の ス ギ 、 カ ラ マ ツ の 木 質 材 料 を 使 用 し た 。 多 様 な 用 途 に 対 応
で き る よ う ス パ ン や 開 口 部 を 大 き く す る こ と が で き る モ ー メ ン ト 抵 抗 接 合 と し 、繊
維 平 行 方 向 に ラ グ ス ク リ ュ ー ボ ル ト ( 以 下 、
LSB と 呼 ぶ )を 埋 め 込 む い わ ゆ る 引 き
ボ ル ト 式 の 方 法 を 採 用 し た 。LSB は 少 量 の 接 合 具 で 高 い モ ー メ ン ト 抵 抗 性 能 が 発 揮
で き 、 ま た 、 金 物 部 分 を 木 材 中 に 埋 め 込 ん で 使 用 す る た め 、 あ ら わ し と し た 場 合 に
も 見 栄 え が 損 な わ れ な い た め で あ る 。
図
13.3-1 本 項 で 扱 う 接 合 部
支 圧 プ レ ー ト
t=16
6 0 0 2 4 0 1 8 0 600φ19 丸 鋼
φ67 シ ア プ レ ー ト
φ25LSB×4
φ25LSB×6
M12 両 ネ ジ
丸 鋼
×4
(SCM435H)
柱 脚 金 物
柱 座 金
t=16
強 力 六 角 ボ ル
ト
×6
ス ギ 集 成 材
E65-F255
カ ラ マ ツ 集 成 材
E95-F315
木
め 、二 段 配 筋 の 中 心 位 置 と し た 。図
13.3-2 に 柱 は り 接 合 部 の 計 算 方 法 を 示 す 。こ こ
で 、 柱 座 金 の め り 込 み 剛 性
K
Zは め り 込 み 基 準 式 を 用 い て 式
1 に よ り 、 ボ ル ト の 引
張 剛 性
K
Bは 式
2 に よ り 、LSB 群 の 引 張 剛 性 K
Lは 式
3 に よ っ て 算 出 す る 。図 13.3-3
に 柱 脚 接 合 部 の 計 算 方 法 を 示 す 。柱 脚 金 物 は 剛 体 で あ る と 仮 定 し て 計 算 し 、ボ ル ト
の 引 張 剛 性
K
Bは 式
2 に よ り 、LSB 群 の 引 張 剛 性 K
Lは 式
3 に よ っ て 算 出 す る 。圧 縮
側
LSB の 圧 縮 剛 性 K
Cは
LSB の 引 張 剛 性 K
Lと 同 じ 値 と し た 。 降 伏 モ ー メ ン ト お よ
び 最 大 モ ー メ ン ト の 決 定 要 因 は 後 述 す る 。 た だ し 、 柱 脚 接 合 部 は 、 め り 込 み の よ う
に 靱 性 の あ る バ ネ 要 素 が あ る わ け で は な い た め 、降 伏 モ ー メ ン ト の 計 算 は 省 略 し た 。
・ ・ ・ 式
1
: め り 込 み 基 準 式 に お け る め り 込 み 増 大 係 数 ( 文 献 5 )) : 柱 材 の 全 面 横 圧 縮 ヤ ン グ 係 数 [ N / mm2] ※ 実 大 の め り 込 み 実 験 (4 章 ) に よ り 値 を 定 め る 。・ ・ ・ 式
2
: 引 張 側 ボ ル ト 本 数 : ボ ル ト の ヤ ン グ 係 数 [ N / mm2] : ボ ル ト 軸 断 面 積 [ mm2] : ボ ル ト 有 効 長 さ [ mm]・ ・ ・ 式
3
: L S B 群 の 計 算 式 に よ る 剛 性 : L S B 群 引 張 実 験 で 定 め た 低 減 係 数 ( カ ラ マ ツ 、 LV L 0 .6 )引 張 側 と 圧 縮 側 の 力 の つ り 合 い と 引 張 側 の 力 と 変 形 の 関 係 か ら 、 ま た 、 稲 山 の め り 込 み 基 準 式 か ら 、 三 角 形 め り 込 み の 合 力 ΣN は 引 張 側 バ ネ 剛 性 KTは 、 引 張 側 各 要 素 の 直 列 バ ネ と し て 以 下 の 式 で 表 せ る 。 な お 、 柱 座 金 の め り 込 み 剛 性 KZは 式 1 よ り 、 引 き ボ ル ト の 引 張 剛 性 KBは 式 2 よ り 、 L S B 群 の 引 張 剛 性 KLは 式 3 よ り 求 め た 。 以 上 よ り 、 中 立 軸 位 置 xpが 以 下 の 2 次 方 程 式 の 解 と し て 求 ま る 。 中 立 軸 位 置 xpか ら 三 角 形 め り 込 み の 合 力 位 置 が 以 下 の よ う に 求 ま る 。 以 上 よ り 、 接 合 部 の 回 転 剛 性 Kθは 、 降 伏 モ ー メ ン ト M y は 、 バ ネ 要 素 の 降 伏 耐 力 P y と 応 力 中 心 間 距 離 か ら 、 最 大 モ ー メ ン ト M ma x は 、 バ ネ 要 素 の 終 局 耐 力 Pu か ら 、
図
13.3-2 柱 は り 接 合 部 の 計 算 方 法
柱 座 金 の 等 変 位 め り 込 み 引 き ボ ル ト の 伸 び L S B の 引 き 抜 き 中 立 軸 は り 木 口 の 三 角 形 め り 込 み 合 力 Σ N引 張 力
引 張 力
圧 縮 力
Z0= 6 0 600 d = 51 0 xp xa x1 x0 =176 y0 =176 y2 =32 y2 =32 240 yp =180 y1 =30 y1 =30柱
は
り
引 張 側 と 圧 縮 側 の 力 の つ り 合 い と 引 張 側 の 力 と 変 形 の 関 係 か ら 、 圧 縮 側 柱 木 口 面 で の 面 圧 合 力 ΣN は こ こ で 、 繊 維 方 向 面 圧 常 数 kW 0は 平 井 ・ 小 松 ら の 提 案 4 )を 用 い て 、 引 張 側 バ ネ 剛 性 KTは 、引 張 側 各 要 素 の 直 列 バ ネ と し て 以 下 の 式 で 表 せ る 。な お 、ボ ル ト の 引 張 剛 性 KBは 式 2 よ り 、L S B 群 の 引 張 剛 性 KLは 式 3 よ り 求 め た 。 以 上 よ り 、 中 立 軸 位 置 xpが 以 下 の 2 次 方 程 式 の 解 と し て 求 ま る 。 中 立 軸 位 置 xpか ら 面 圧 合 力 の 中 心 位 置 xaが 以 下 の よ う に 求 ま る 。 以 上 よ り 、 接 合 部 の 回 転 剛 性 Kθは 、 接 合 部 の 最 大 モ ー メ ン ト M ma x は 、 回 転 剛 性 Kθに 各 ク ラ イ テ リ ア の 終 局 回 転 角 θu の 最 小 値 を 乗 じ て 、 こ こ で 、 終 局 回 転 角 θ u は 、 引 張 側 バ ネ 要 素 の 終 局 耐 力 Pu か ら 、