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Phormidium tenueの糸状体の強さについて

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Academic year: 2022

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Phormidium tenue の糸状体の強さについて

東北工業大学大学院 学生会員 ○佐藤正浩、吉田陽二 正会員 今野 弘

1.はじめに: 水道水源における藻類繁殖の進行に伴い、浄水過程においては藻類起因の浄水障害が発生している。S 市では、水源において藍藻類の Phormidium tenue(以下 P.tenue)が大量に繁殖した際、浄水でザラザラした食感を受け、

その水を検査したところP.tenueの藻体が検出された。P.tenueは直径1~8μm、長さが直径の2~3倍の細胞が連なって糸 状体を形成しており、細胞の分裂または図1のような連鎖体(ホルモゴン)の形成によ

り生殖し1)、濾過池から漏出しやすい藻類種であることが知られている2)。著者はこの

P.tenue の糸状体が、物理・化学的作用を受けて、数μmの糸状体に破壊されること

により、濾過池から漏出されやすくなったと考えた。そこで今回は、薬品注入点での急速攪拌に着目し、希釈した P.tenue 培養液を攪拌させることにより、攪拌の強さと糸状体の破壊の程度を、凝集過程でのフロック衝突の基本式である攪拌強 度(G値)を用いることにより考察した。また、増殖期や生死といった生物活性によっても糸状体

P.tenueの不活化との関係についても同時に考察した。

連鎖体(ホルモゴン)

母体

図1 P.tenueの生殖

の破壊状況は変わると考え、

図4 P.tenueの増殖傾向 培養日数(d)

個数濃度(個/mL)

106 105 104 103 102

対数増殖期 9日目

0 10 20 30 40 50 60 70

定常期 55日目

死滅期 69日目

し 2.実験方法および条件: 全体の実験フローを図2に示す。

1) P.tenueの増殖期の把握:今回使用したP.tenueはS市水道局より頂戴した培養株を用い

た。培養条件は培地CT培地、水温20℃、照度1000Lux、12時間明暗サイクルとし、静置培 養を行った。計数は標準計数板法を採用した。

2) P.tenueの塩素による不活化実験:実験条件はP.tenueの個数濃度を約100個/mLにした

試料水250mLを塩素注入率0、0.1、0.2、4、5、6、7、8mg/Lに設定し、回転数40rpmで13 分間攪拌を行った。不活化の確認方法として、P.tenue の光合成色素の自家蛍光を利用した 落射蛍光顕微鏡による判別3)と再培養による判別を採用した。落射蛍光顕微鏡の励起波長 はB励起とし、使用したフィルターの組合せを表1に示す。光合成色素の自家蛍光の退色を 防ぐため実験中は暗照明とし、作製したプレパラートはアルミホイルで包み、作成後は迅速に

蛍光観察を行った。また、再培養は塩素処理したP.tenueを吸引濾過し、その濾紙をCT培地に浸し、

遠心分離器(1500rpm)にかけ濾紙からP.tenueを剥離させ、上記の1)と同じ培養条件下で行った。その 後、標準計数板法で計数を行い、増殖の有無を確認した。

攪拌機を用いて7段階の回転数で攪拌 G値と糸状体分布の関連性の考察

MF法で糸状体数を計数 対数増殖期、定常期、死滅期の培養株

不活化となる塩素濃度の決定 8段階の塩素濃度で接触

無処理 蛍光顕微鏡による蛍光観察

塩素処理 再培養による増殖の確認

図2 実験フロー P.tenueの増殖期の把握

P.tenueの塩素による不活化実験

2)

1)

G値によるP.tenueの糸状体破壊特性実験 3)

表1 フィルターの組合せ 励起フィルター BP460-490 ダイクロイックミラー DM505

吸収フィルター BA515IF

73.3

16.8

70.1

単位:mm 64.7

図3 攪拌装置概略図

3) G値によるP.tenueの糸状体破壊特性実験:実験に使用した攪拌装置の概略図を図3に示す。また、

G値(1/s)は以下の式により算出した4)

ここで、ρ:密度(kg/m3)、C :攪拌翼抵抗係数( - )、a :攪拌翼面積(m2) u :攪拌翼平均速度(m/s)、μ:粘性係数(kg/m・s)、 V :攪拌槽容量(m3) 攪拌機の回転数を 0、100、200、300、400、500、600rpm に設定し、各々の攪拌 翼平均速度を算出し上記の式に適用させた。攪拌時間は 300s で行った。攪拌終了

ンフィルター法によりランダムに選んだ 20 視野内の全糸状体の長さを測り、記録 た。

V u a G C

µ ρ

2

3

=

後、個数濃度も確認するためメンブラ

3.実験結果および考察: 各実験結果とその考察を以下に示す。

1) P.tenue の増殖期の把握:P.tenue の増殖傾向を図4に示す。この図から、急激

に増殖する培養開始から10日目までを対数増殖期、50 日目までを直線増殖期、

65 日目までを定常期、71 日目以降を死滅期とした。また、3)の実験に使用した培養 株は、対数増殖期は9日目、定常期は55日目、死滅期は69日目のものを使用した。

キーワード:攪拌強度(G値)、Phormidium tenue、生物活性、濾過漏出、糸状体破壊、蛍光顕微鏡

連絡先:〒982-8577 仙台市太白区八木山香澄町35-1 東北工業大学大学院土木工学専攻今野研究室,Tel.022-229-1151(647),Fax.022-229-8393 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

‑203‑

VII‑103

(2)

2) P.tenueの塩素による不活化実験: 対数増殖期のP.tenueを塩素処理し落射蛍光顕微鏡

で観察した結果を表2に示す。ここで、主要光合成色素がフィコシアニンの場合は暗赤色、フ ィコエリトリンの場合は橙色、クロロフィルの場合は鮮赤色であることが分かっている。また、黄 色はこれら3種の光合成色素がない状態と考えられる。このことから、今回実験に用いた

P.tenueは、塩素濃度が0mg/Lのとき暗赤色であったため、主要光合成色素としてフィコシア

ニンを持ち、この暗赤色が鮮赤色に変わった濃度が細胞壁の破壊が生じた塩素濃度、すな わち不活点であると考えた5)。次ぎに、塩素処理を行った P.tenue を再培養した増殖傾向を 図5に示す。この図から、塩素注入率0mg/L以外のP.tenueは増殖しておらず

活 性 が 無 く な っ たこ と を 示 し て い る。 こ れ ら の 実 験 結 果 か ら 、 塩 素 注 入 率

0.2mg/Lを3)の実験で用いる不活化塩素濃度とした。

3) G値によるP.tenueの糸状体破壊特性実験: 図6に各活性段階

における全 株

め、図7に各

ら G

個数が増加し、それが2≦L<24μmの範囲の糸状体に 著しく生育速度が速いことから塩素の影響を強く受け、2

対数増殖期

図5 P.tenueの再培養増殖傾向培養日数(d)

0 0.1 0.2 4

5 6 7 8

104

103

102

101

100

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

塩素注入率(mg/L)

個数濃度(個/mL

対数増殖期 定常期 死滅期

対数増殖期(塩素) 定常期(塩素) 死滅期(塩素)

1mL糸状体個数(個)

1600

1200

800

400

0 0 500 1000   1500 G値(1/s)

図6 各活性段階における全糸状体個数

2≦L<24 24≦L<48 48≦L<96 96≦L

図7 各活性段階におけるG0を基準とした個数倍率

( - )

101

100

10-1

個数倍率 ( - )

101

100

10- 1

( - )

101

100

10- 1

0 500 1000 1500

無処理 塩素処理 G値(1/s)

0 500 1000 1500

表2 塩素処理後の蛍光観察

0 暗赤色

0.1 暗赤色と鮮赤色

0.2 鮮赤色

4-6

7-8 黄色

(m

増加 塩素濃度の に伴い

鮮赤色から黄色に移行 素濃度

g/L)

105

)

糸状体個数の変化を示した。この図から分かるように、塩素処理した対数増殖期 や、無処理と塩素処理した死滅期株については、G値の上昇に伴い全糸状体 個数が増加していることが分かる。

次ぎに、どの程度の長さの糸状体が増加しているかを知るた 活

6での塩素処理した対 数

性段階におけるG値0を基準とした個数倍率を、4種の糸状体長範囲で 示した。この図から糸状体長:L が2~48μmの比較的短い糸状体、特に2

≦L<24μmの糸状体はG値の上昇に伴って増加し、逆に48μm以上の 比較的長い糸状体は減少傾向にある。

これら二つの図を比較検討すると、図

増殖期株、無処理と塩素処理した死滅期株がG値の上昇に 伴い急激に上昇している原因として、2≦L<24の範囲の糸状 体が卓越して増加しているためと考えられる。これは、増殖活性 が著しく代謝が早い対数増殖期においては、より塩素と反応 糸状体の破壊を促進しているものと考えられる。また、対数増 殖期では生育速度が速いため連鎖体(ホルモゴン)が数多く形 成され、その連鎖体は形成されたばかりで細胞自体が弱いた めに、より破壊が進行したものと考えられる。

4.おわりに: 今回は薬品注入点での急速攪拌に着目し P.tenue

定常期

死滅期

、 の糸状体が破壊されることにより濾過漏出しやすくなっ

体 が

いく。なお、本研究は東京都水道局受託研究

(代

:こまった生物、上水試験方法2001年版、添付CD(2001)

巻第7号(第646号)、pp.21-32(1987) たものと想定し、その形状変化を6パターンの生物活性の面か

値を用いて考察した。結果として、G 値の上昇に伴い全糸状 起因していることが分かった。また、対数増殖期株は増殖活性

≦L<24μmの範囲の糸状体が大幅に増加することが分かった。

今後は自然水を濾過させた水に各増殖期のP.tenueを混和させた原水を用いて、着水混薬過程から濾過過程までの模 型実験を行い、濾過漏出現象を含めた P.tenue の処理性の検討を行って

表・真柄北大教授:代替凝集剤に関する研究)から一部費用の補助を受けて実施したことを付記し、感謝する。

<参考文献>

1)廣瀬弘幸、山岸高旺編:日本淡水藻図鑑、pp.2-100、内田老鶴圃(1977) 2)日本水道協会

3)中村寿子:落射螢光顕微鏡を用いた水道生物試験、水道協会雑誌、第57 4)日本水道協会:水道施設設計指針2000年版、pp.186-190(2000)

5)金子光美編:水質衛生学、pp.258-259、技報堂出版(1996)

土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)

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参照

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