政治犯罪概念の国際法的考察
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(2) 政治犯罪概念の国際法的考察. 二. 一般国際法上庇護権の概念が明確にされていない点に︑その主要な原因があるように思われる︒一九五〇年九月にイ. ギリスのバス︵閃薗夢︶で開催された国際法学会︵﹃ω葺暮8穿o津冒8彗讐凶9巴︶の会議で採択された﹁国際公法. 上の庇護﹂に関する決議第一条は︑庇護を次のように定義した︒すなわち︑庇護とは﹃国家が︑保護を求めている個. ロ. 人に︑自国の領土内において︑または自国の領土外にある自国の国家機関が所轄する地域において与える保護﹄であ. る︒右のような定義に従えば︑庇護は︑まず︑平時国際法におけるいわゆる政治的庇護と戦時国際法における庇護と. に分けられる︒さらに︑政治的庇護は︑領土的庇護と外交的庇護とに区別されるが︑国家の外交的庇護権は︑現在の. ︑ ︑ ︑ ︑. ︵5︶. 国際慣習法上原則として認められていない︒したがって︑現在の一般国際法上︑庇護権とは︑訴追された外国人に︑ ヤ その保護のもとでその領域に入ること︑およびそこに留まることを許し︑それによって彼に庇護を与えるすべての国 家の権利にほかならない︑と理解されている︒. 政治犯不引渡とは︑政治犯については逃亡犯罪人の引渡を行わないということであって︑この理念は︑ようやく最 ︵6︶. 近の一世紀の間に発展してきたものにすぎない︒一九世紀の前半には︑まだ政治犯を引渡しうるとする条約が存在し. ていたし︑それ以前には︑政治犯が主要な引渡の対象と考えられることが多かった︒フランス革命を契機として登場. したこの政治犯不引渡の原則の国際法上の性質については︑いまだに一致した見解が見出されていない︒しかし︑政. 治犯を逃亡犯罪人の引渡から除外することは︑明らかに政治犯に与えられる一種の保護である︒一方︑庇護は︑前述. のように︑国家が外国人の入国を許したり︑その保護を庇護というかたちで認めたり︑引渡を拒否したりする方向に. あるもので︑その本質上︑各国の有する基本的な権利義務︑すなわち︑その領土主権から導かれる諸権限の活動にほ.
(3) ︵7︶. かならない︒したがって︑両者の関係を整理してみると︑政治犯不引渡と庇護とは︑それぞれ次のような異なる内容 をもつものであることが明らかとなる︒. まず︑その対象については︑政治犯不引渡は原則として政治犯のみに限られる︒一方︑庇護は︑たとえば︑政治亡 ハ ゾ 命者︑政治難民︑政治犯ーーいずれも惨︑の概念については問題があるが〜ー−などを含みうる︒つまり︑政治犯だけに 限られないのである︒. また︑その保護作用については︑政治犯不引渡の場合には︑たとえば引渡が行われたときに政治犯罪について裁判 も. ヤ. されるおそれがあるため引渡が行われず︑結果的に︑不引渡という消極的な保護が与えられるにすぎない︒一方︑庇. 護の場合には︑被庇護者に避難所を提供するという不引渡にくらべてより積極的な保護の姿勢が見られる︒言いかえ. れば︑政治犯不引渡は︑引渡請求国に政治犯の引渡を行わないという保護作用にすぎないのであって︑理論的には︑ ヤ 引渡請求国以外の第三国へ政治犯を追放ないし強制退去させることは自由である︒庇護の場合は︑この点についてよ ヤ. レ. り厳格であって︑保護を積極的に与えるという観点に立っているため︑本人が希望する場合︑またはやむをえない事. 由がある場合には他国へ赴かせることも自由であるが︑政治犯不引渡の場合のようには︑それが︑国家の一方的な処 断に委ねられることはないのである︒. 両者を法律行為としてみた場合には︑庇護は︑国際法上の単独行為であって︑相手国を必要としない︒つまり︑庇. 護は︑庇護国が被庇護者に庇護を与えることを内容とする法律行為である︒一方︑政治犯不引渡は︑逃亡犯罪人の引. 三. 渡請求国が存在する点で庇護と異なる︒つまり︑政治犯不引渡は︑A国に逃亡した犯罪人につき︑B国よりA国に対 政治犯罪概念の国際法的考察.
(4) 政治犯罪概念の国際法的考察 ︵10︶. して引渡の請求があり︑A国がこれを拒否することを内容とする法律行為である︒. 四. いわゆる政治亡命裁判︵東京地裁︑昭和四四年一月二五日判決︶では︑この点について﹃不引渡の原則は決して庇護権を与. 以上のように︑政治犯不引渡と庇護とは︑理論上峻別される︒ ︵1︶. えることと同じではない︒国が不引渡の政治犯に国の権利として庇護権を与えることは︑もとより自由であるが︑不引渡とは. 単に本国には引渡さないというにすぎないものであって︑不引渡の政治犯を他の国へ任意出国させることも退去強制すること も国は自由なのである﹄とされた︵判例時報第五四三号三二−三三頁︶︒. ︵誓三℃マωo岳8げ帥仁①び≦O旨oき8ゲユ8<臼貯o畦9耳9. ド>βO帥ひq⑦一・ω鎖昌ρ. >仁巴富富歪昌oqりω・. たとえば︑﹃ドイッ連邦共和国基本法第一六条第二項後段の庇護は︑ドイッ逃亡犯罪人引渡法第三条の不引渡による庇護を. ︵2︶ 詳しくは︑拙稿研究ノート﹁庇護権についての史的考察﹂国際法政研究第一〇号五一頁以下︒. ︵3︶ こえるものである﹄. ︒・. Z窪導彗亭害署段号零ω魯窪器ン豆①. 一一〇︶︑﹃この時までドイッ法は︑ドイッ逃亡犯罪人引渡法第三条に含まれている︑政治犯を外国の権力へ引渡すことより保護す. ρ9呂oo︶などである︒. る庇護権しか知らなかった﹄︵謡●O益9琴ン>5一冨8﹃毯賜話39自&>亀犀9ゴ O﹃醒昌ユ80犀ρ一8♪目︒切. ︵4︶≧︒まく号ω<臼ぎ畦9げ件9︒︒●田邑︾一︒目占︒認植oo・刈︒︒.. ︒9田三︒コマ零︒ O署9冨首.ω一暮o導&8巴富ヨ<︒一︒ご︒. たとえぱ︑一八三三年にプロシヤ︑オーストリアおよびロシアの間で締結された条約は︑反逆罪︑大逆罪を犯した個人︑も. ︵5︶=り一窪冨∈8算 ︵6︶. しくは帝権および合法的政府の安全に対して陰謀を企てた個人︑もしくは反乱に参加した個人は︑関係国に引渡されなければ. ●鋤. O. >亀犀09♪ψO一●. ならないと規定した︵第一西三〇壱8ゲ計oマo一fマ刈8︶︒ ︵7︶ω賃唇マωo竃8冨5び.
(5) ︵8︶. たとえば︑フランス第四共和国憲法︵一九四六年一〇月二七日︶は前文で︑. ﹃自由のためになした行為のゆえに迫害された. 者﹄を︑イタリア共和国憲法︵一九四七年︸二月二七日︶第一〇条は︑﹃イタリア憲法によって保障されている民主的な諸自. 由の有効な行使を自国で妨げられている外国人﹄を︑またドイツ連邦共和国基本法︵一九四九年五月二三日︶第一六条は︑﹃政. お田︶第三二条は︑国家. 治的に迫害された者﹄をそれぞれ庇護の対象として規定している︒また世界人権宣言︵一九四八年一二月一〇日︶第一四条は︑ ﹃迫害﹄された者を庇護の対象としている︒. ︵9︶ ﹁亡命老の地位に関する条約﹂︵08お馨δ⇒園9暮宣αq一〇90ω貫ヨω9菊①注鴨09冒ぞNo︒. したがって︑国家が政治犯不引渡の原則を適用する場合には︑その逃亡犯罪人が政治犯であることを何らかの方法て引渡請. の安全または公共の秩序という理由に基づく場合に限り︑亡命者の追放を許している︒ ︵10︶. 求国に明らかにすることが必要であるが︑国家が庇護を与える場合には︑そのようなことは必ずしも必要とはされない︒. 二 政治犯罪の概念. ︵11︶. 五. 一般国際法上の原則とされている政治犯不引渡の原則に言われる政治犯とは︑いかなる犯罪を犯した人たちと考え. 学説. るべきであるか︑が次に問題となる︒. 一. 不引渡または庇護の対象となると考えられる亡命者は︑次のように分類できる︒. ①本国において政治犯罪を犯し︑その処罰を免れるために外国へ逃亡した者 政治犯 罪 概 念 の 国 際 法 的 考 察.
(6) 政治犯罪概念の国際法的考察. 六. 政治的迫害も身体への危険もないが︑政治的志操を異にするなどの不自由さを理由に外国へ逃亡した者. ②本国において政治的迫害をうけ︑身の危険を感じて外国へ逃亡した者 ③. 右の分類においては︑①に属する人たちが政治犯不引渡にいう政治犯であって︑かれらは本国において政治犯罪を犯 しているという点で︑②および③に属する人たちと明らかに区別される︒. 政治犯不引渡が国際法上の問題となって以来︑さまざまな方法で政治犯罪の概念を定義しようとする試みがなされ. てきた︒たとえば︑一は︑犯罪人の動機をとりあげ︑二は︑犯罪の目的に着目し︑三は︑犯行の際の事情に注目し︑. 四は︑大逆罪︑大逆未遂罪のごとき特別の犯罪にその意味を限定するなどである︒確かに政治犯罪の概念は定義しや ︵12︶. すいものではないが︑今日の支配的な見解によれば︑少なくとも﹃国家の権力関係︑および国家の機構に対する攻撃﹄. は︑すべて政治犯罪であるとされている︒この点については︑ローターパクト︵頃富葺①∈8鐸︶が政治犯罪の概念 ︵13︶ を定義することの困難さを指摘し︑不可能であると結論づけているように︑右のような純粋な政治犯罪についての困 ヤ ヤ 難さは︑実際にはその概念自体についてではなく︑その概念を定義するときにあらわれるだけである︒したがって︑ ︵14︶. 政治犯罪の概念の困難さは︑純粋な政治犯罪について生ずるのではなく︑まさに相対的政治犯罪についてのみ言われ るべきである︒. 相対的政治犯罪とは︑絶対的政治犯罪︑すなわち︑純粋な政治犯罪が︑国家に対して向けられたものであって︑普 ︵15︶. 通犯罪の要素を全く示さないのにたいし︑それが政治的行為と密接に関連しているため︑通例政治犯罪とみなされる. 普通犯罪であるとされている︒したがって︑相対的政治犯罪は︑政治犯罪の要素と普通犯罪の要素のいずれをも含む.
(7) ︵16︶. ︵17︶. ことになる︒問題は︑この両方の要素のどこに一線を画して︑政治犯罪であると普通犯罪であるとを判断し分けるか. にあるのであって︑その際の規準が︑相対的政治犯罪の概念を定義する問題と密接に関わり合っているのである︒実 ︵18︾. 際︑相対的政治犯罪については︑その概念の定義のみならず︑その概念自体についてさえもなかなか見解が一致して. 実定法. いないのが現状である︒. 二. ﹃引渡を求められている犯罪が︑被請求国により政治犯罪または混合犯罪と認められる場合には︑引渡は許されな. い︒﹄︵ヨー・ッパ逃亡犯罪人引渡条約第三条第一項︑一九五七年一二月一三日︶実定法上︑政治犯不引渡の原則は︑. たとえば右のように政治犯罪の概念について全くふれないで用いられることが多い︒. ﹁政治犯罪とは︑国家の存立または安全︑元首あるいはこれに準ずる政府の構成員︑憲法上の機関︑選挙または投. 票に関する公民権︑もしくは外国との友好関係に対して直接向けられる可罰的な攻撃である︒﹄︵ドイツ逃亡犯罪人引 ︵19︶. 渡法第三条第二項︑一九二九年二一月⁝二日︶これは政治犯罪の概念を定義しようと試みた数少ない実定法上の規定. の一つである︒このように︑実定法上政治犯罪の概念についての規定がきわめて少ないのは︑その概念を定義するこ. とが事実上困難であるという理由以上に︑いったん実定法上政治犯罪の概念について規定してしまうと︑以後必要以 ︵20︶. ︵21︶. 上にそれに拘束されることになり︑ひいては︑実際の法の運用にも支障をきたすようになるのを恐れているからであ ろう︒政治犯罪についての問題を含む事件は︑ことほどさように多種多様なのである︒. 七. 相対的政治犯罪についてのこのような困難な問題に対して大きな解決への手がかりを与えているのは︑いわゆるス 政治犯罪概念の国際法的考察.
(8) 政治犯罪概念の国際法的考察 八 ︵羽︶ イスの優越理論︵↓冨o蔓oh犀aoB冒§8︶である︒この理論は︑スイスが一八九二年に第一〇条で政治犯不引渡. を規定している逃亡犯罪人引渡法を制定したが︑同時に︑その犯罪の主要な特徴が政治犯罪の要素よりも普通犯罪の. 要素をより強くもっている場合には︑その政治犯は引渡される︒そしてそのような犯罪人の引渡についての判決は︑ ︵23︶ 連邦裁判所が行う︑との規則を定めたことに帰せられるのである︒この理論の相対的政治犯罪の問題に対する解決方. 法としての意義は︑ベルギー加害条項などが︑本来政治犯罪であるものを便宜的に政治犯罪とみなさないとしている. 点︑すなわち︑政治犯不引渡の原則の適用を制限しようとしている点にあるのにたいし︑この優越理論は︑いかなる. 判例の検討. 普通犯罪も政治的性格をもちうるとの原理に基づき︑両方の犯罪の要素を十分に比較考量する点にあるといえる︒. 三. 政治犯罪の概念を明らかにする問題は︑学説上も︑実定法上も︑有効な解決を見出しえなかった︒しかし︑不引渡. という一種の保護をうける政治犯の概念が︑国際法上曖昧であったり︑各国によってその解釈がまちまちであってよ. いはずがない︒政治犯罪であるか否かの判断が︑最終的には国家の裁量に委ねられているとしても︑少なくとも︑そ. の判断の規準となるべきものは︑各国に共通した何らかの方向性を見出しうるものでなければならない︒. 次に︑すでに判決のあった事件において︑各国が政治犯罪の概念をいかに解釈しているかを検討することにしたい︒. それは︑具体的な事件について判決が下される時には︑その根本に現実的な考え方が存在するので︑政治犯罪につい. てのこの見かけ上の困難さも︑国家の慣行︑すなわち︑その判例を検討することによって容易に除去されうると考え. られるからである︒各国の裁判所は︑法の運用の上からも政治犯罪についての統一的な解釈の必要を感じ︑それを示.
(9) ︵別︶. ︵%︶. そうと努めている︒ここでは︑優越理論を採用しており︑かつ︑数多くの判例のあるスイスと︑政治犯不引渡の原則. スイスの判例. の最初の支持者であったイギリスの判例を検討することにする︒ ︵閣︶. スイスは前述のとおり優越理論を採用しているのであるが︑一八九二年の逃亡犯罪人引渡法の採択の時に長い論議. の末︑相対的政治犯罪の概念を定義しないこと︑およびあらゆる事情を関連させながら間題となっている犯罪の性質. を正しく判断する権限を連邦裁判所に与えることが決定された︒したがって︑連邦裁判所は︑事件が生ずるたびにそ ︵26︶. の一つ一つについて︑犯行に伴ったすべての状況を考慮しつつ問題を解決しなければならないのである︒. 一九〇六年一月に・シア帝国の一都市ペンザ︵勺窪き︶で・シア社会革命党の党員ワシリエフ︵譲器巴−. ー ワシリエフ事件 ︵スイス連邦裁判所︑一九〇八年七月;百判決︶ ︽事実V. 一一&︶は︑同党の決定を実行に移すためペンザ警察署長のカンダウロフ︵内㊤民き震o名︶を射殺︑スイスに逃亡した. ︵27︶. が捕えられた︒一九〇八年二月にロシア政府は︑カンダウロフを計画的に殺害した罪につきワシリエフの引渡を求め. 連邦裁判所は︑ワシリエフの行為は政治犯罪に当らないとし︑正規の裁判所において︑死刑による処罰. たが︑ワシリエフは︑彼の行為が政治犯罪であることを理由として引渡に異議を唱えた︒. ︽判決V. のない故殺のためにのみ裁判を行うことを留保して︑彼の引渡を認めた︒. 当該事件で連邦裁判所は︑スイス逃亡犯罪人引渡法第一〇条の趣旨を次のように説明した︒﹃連邦裁判所は︑その. 九. 実践において︑常に次の事実に基づいている︒すなわち︑それは︑逃亡犯罪人引渡条約︑特に・シアとのそれは︑純 政治犯罪概念の国際法的考察.
(10) 政治犯罪概念の国際法的考察. 一〇. 粋な政治犯罪の場合のみならず︑同条約第三条に列挙されており︑したがって︑それ自体普通犯罪としてその性質を. 示されるべきものであるにもかかわらず︑それがなされた際の事情によって政治犯罪の特性をおびている犯罪の場合. にもまた︑引渡の拒否が規定されているという事実である︒このような広範な解釈にはいずれにせよ限界があるの. で︑連邦裁判所は︑右のような複合犯罪が生じた時は︑いつもその事情を自由に評価しつつ︑問題となっている犯罪. の普通的要素と政治的要素とのいずれを重視すべきであるかという問題を吟味してきた︒﹄言いかえれば︑その行為. が相対的政治犯罪であるためには︑その政治犯罪的要素が普通犯罪的要素を凌駕していなければならないとしたので. ある︒これが︑いわゆる優越理論と言われる所以である︒同裁判所は︑さらに︑この理論について次の三つの要件に 分けて説明している︒. 右のような相対的政治犯罪の要件を備えるためには︑まず第一に﹃その行為が︑純粋な政治犯罪︑つまり︑国家の. 政治的秩序または社会的秩序に対して向けられた犯罪を準備し︑もしくはその成功を惹起する目的で行われ﹄たもの. でなければならない︒第二に﹃国家機関の変革に向けられた党の最終目的と問題になっている犯罪との間に︑直接的. な関係が存在﹄しなければならない︒第三に﹃このような狭義の政治的最終目的が存在する場合であっても︑その行. 為は︑選ばれた手段の忌わしさに応じて政治犯罪の性質よりも普通犯罪の性質を優越的に︵<oH毛一£o且︶有しうる. という︑それ以上の制限が加えられなければならない︒﹄︑﹃﹁人間性にとって︑個人の生命よりも価値のある利害関係. が賭けられている﹂という前提のもとにおいてのみ︑連邦議会は︑優越的に政治犯罪であるとの︑暗殺の法律関係の 性質決定を正当とみなしたのである︒﹄.
(11) ・. ︑. ︑. ︑. ・. ︑. ︵28︶. 以上を整理すると︑普通犯罪が相対的政治犯罪であるとみなされるための︑すなわち︑犯罪の政治的要素が普通的. ︑. 要素をうわまわるための要件は︑次のようになる︒ ︑. ・. ︑. ︑. ︑. ︑. ︵29︶. ① その行為が︑純粋な政治犯罪の成功を準備または確保する目的で行われたものであること. ︵30︶. 行われた犯罪は︑追求された政治目的との釣合いを失した残虐行為を含むものではないこと. ⁝. ②行われた犯罪とそれによって追求された目的との間に直接的な関係が存在すること ③. 当該事件で連邦裁判所は︑ワシリエフの行為はこれらの要件をみたしていないと判断した︒ここで確立された三つ. の要件は︑連邦裁判所がこれ以後政治犯罪が問題となる事件について判決する際にしばしばとりあげられており︑・!︑. ︒ハバン事件. ︵31︶. ︵スイス連邦裁判所︑一九二八年六月一五目判決︶. の意味で︑スイスの優越理論を構成する三本の柱であるといえる︒ 2. ︽事実V 一九二八年三月にイタリァ人ファシストのサボレリ︵留<oお≡︶は︑パリで反ファシストの︒ハバン ︵32︶ ︵評く碧︶によって射殺された︒パバンはスイスで逮捕されたが︑フランスの引渡請求に対して︑その犯罪の政治的. 性質を理由として異議を唱えた︒彼は︑サボレリを殺害したのは政治的動機からであり︑ファシストのあおった内乱. 一一. 連邦裁判所は︑パバンが犯したと申し立てられている行為は︑疑いなく言葉の通例の意味での政治犯罪. の数多くの出来事の一つにすぎず︑ファシズムの終りを準備し︑かつ促進するために意図されたものである︑と主張 したQ. ︿判決V. ではない︑と判決した︒ 政治犯罪概念の国際法的考察.
(12) 政治犯罪概念の国際法的考察. 一二. なぜなら︑﹃彼の行為は︑国家または国家の基本的な政治制度に対して直接向けられた攻撃ではない﹄からであ. る︒ここでまず︑彼の行為が純粋な政治犯罪であることが否定された︒さらに﹃殺人は︑必ず個人の生命に対する侵. 害を含む︒したがって︑それ自体は普通犯罪である︒しかし︑それがもし普通犯罪のすべての特徴を示しながら︑そ. の動機︑目的︑または犯罪が行われた際の事情によって政治的性格をおびている行為であるならば︑相対的政治犯罪. となりうる︒⁝パバンがサボレリを政治的理由で︑たとえば︑イタリアにおける現在の政治体制を覆し︑彼の選. ぶその他の体制をそれにとって代らせるがごとき政治目的をもくろんで殺害したのか否かを決めることは必要でな ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. い︒なぜなら︑たとえ主観的要件がみたされたとしても︑引渡を命ずる裁判所の権限にたいする異議は︑普通犯罪に. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 政治的色彩を印象づけるために必要なその他の客観的要件が欠けていれば︑認められることはないとされているから. である︒﹄そして︑右の客観的要件について︑﹃連邦裁判所の判例によれば︑犯罪は︑それが政治目的と直接的な関係. がある場合にのみ︑政治的性格がより強く賦与されるのである︒このような直接的な関係は︑その行為がその目的を. 達成するのにそれ自体効果的な手段である場合︑または少なくともそれが望ましい目的に至る諸行為の不可欠の一部 ︵33︶. である場合︑またはその行為が同じような手段が双方で用いられるような一般的攻治闘争における付随事件である場. 合だけに認めることができる︒﹄当該事件では︑右のような直接的な関係は存在しないとされた︒最後に︑もしサボ. レリが実際にス︒ハイ︑または反ファシストの挑戦スパイ︵富8冨け詑①旨・胃oぎS措貫︶であったとしても︑彼を殺害. ヤ. ヤ. ヤ. ﹃殺人. することは︑︒ハバンの目的を達成するための適切な手段とは考えられないとし︑裁判所はこの点を次のように説明し ヤ. た︒すなわち︑行われた行為によって惹起された損害は︑目的とされた結果に不釣合いであってはならない︒.
(13) ー暗殺および謀殺ーは︑最も凶悪な犯罪の一つである︒したがって︑人間性についての最後の権利を守るために. 他のいかなる方法も存在しない場合にのみ︑殺人は正当化されうる︒﹄当該事件におけるパバンの行為は︑このよう. な場合に当らず︑彼がサボレリを殺害したことは︑右の要件を欠く一種のテロ行為にすぎぬ︑とした︒ ︵34︶. 当該事件では︑先のワシリエフ事件で確立された三つの要件について考察が行われ︑パバンの犯した犯罪の政治的. 性質が吟味されている︒ここで注目されるのは︑相対的政治犯罪についての新しい概念の登場である︒すなわち︑相. 対的政治犯罪とは︑﹁普通犯罪の特徴を示してはいるが︑その動機︑目的︑または犯罪が行われた際の事情によって政. 治的性格をおびている犯罪である﹂とされている点である︒従来︑相対的政治犯罪とは︑ワシリエフ事件においても. そうであるように︑必ず純粋な政治犯罪と何らかの関わり合いを有する普通犯罪であると考えられてきた︒右の概念. は︑従来のものと較べて︑純粋な政治犯罪について全く言及していない点が特徴的である︒当該事件であらわれたこ. の変化は︑純粋な政治犯罪の概念が何らかの変化をきたしたためとみるより︑相対的政治犯罪の概念自体が拡張され. たと考えるべきである︒このような概念上の変化を惹起した要因としては︑政治犯罪を含む事件の多様化が︑第一次 ︵35︶. 世界大戦後の社会情勢︑政治情勢などの変化に伴って一層促進されたこと︑ならびにスイス逃亡犯罪人引渡法第一〇. 条の規定がそのような情勢の変化を許容しうるものであったことを挙げなければならない︒しかしながら︑右のよう. な相対的政治犯罪の概念が純粋な政治犯罪について何らふれていないとはいえ︑純粋な政治犯罪と全く無関係に存在. する普通犯罪が︑相対的政治犯罪とみなされるということは理論的にも不可能である︒相対的な意味ではあっても政. 一三. 治犯罪である以上︑その行為が︑その動機︑目的︑またはその行為が行なわれた際の事情などによって︑国家の権力 政治犯罪概念の国際法的考察.
(14) 政治犯罪概念の国際法的考祭. 一四. 関係および国家の機構に対する何らかの積極的な企図を指向していることは︑不可欠の条件であると思われる︒当該 ︵36︶. オケルト事件. ︵スイス連邦裁判所︑一九三三年一〇月二〇日判決︶およびフィコリリ事件. ︵37︶. ︵スイス連邦裁. 事件で連邦裁判所が客観的要件として﹁政治目的﹂に言及しているのもこの点を考えてのことであろう︒. 3 判所︑一九五一年二月一四日判決︶. 一九三三年二月にドイツ社会民主党の準軍事組織﹁帝国国旗団﹂のメンバーであったオケルト. パバン事件で登場した新しい相対的政治犯罪の概念を適用した実例を調べてみよう︒. ︽オケルト事件V. ︵Ooぎ旨︶は︑フランクフルトで国家社会主義党の党員数人を襲った︒彼は︑その中の一人ブレーザi︵田8震︶を ︵38︶. 殴打︑逃走したが追跡されたので発砲︑その弾丸が当りブレーザーが死亡した︒プ・イセンの司法大臣はオケルトの. 引渡を求めたが︑彼は︑背後からブレーザーとその仲間に撃たれたので逃走し発砲したが︑ブレーザ!が彼の撃った. 弾丸で殺害されたとの証拠はないことを理由として引渡の請求に異議を唱えつっ︑政治犯不引渡の利益を主張した︒. 連邦裁判所は︑オケルトの引渡は認められない︑と判決した︒いくつかの従来の判例を検討した結果︑同裁判所は︑. これが﹃政治的争いの事件﹄であるとの結論を得たからである︒当該判決で︑相対的政治犯罪とは﹃普通犯罪の性質. を有してはいるが︑付随する事情︑特に動機と目的のゆえに政治的外観をより強くもっている行為﹄である︑と説明 されている︒. ︵39︶. ︿フィコリリ事件V 一九四四年二一月にネオファシストのサンマルコ組のメンバーであったフィコリリ︵国8−. 三εは︑彼の部下に指揮官ジャネリ︵冒器≡︶を裏切者として処刑させた︒イタリア政府の引渡請求に対して︑彼.
(15) は︑その行為は政治犯罪である︑と主張した︒. 連邦裁判所は︑フィコリリの犯罪はその性質上政治的なものなので︑彼の引渡は拒否される︑と判決した︒ここで︑. 相対的政治犯罪とは︑パバン事件と同様に﹃普通犯罪の特徴をもってはいるが︑その犯罪の遂行を鼓吹した︵ぎω覧器︶. ﹃連邦裁判所は︑以前に次のように判決し. 動機︑その犯罪がなされた目的︑またはその犯罪が行なわれた際の事情によって政治的性格をより強く有する犯罪で ある﹄とされた︒この点について︑同裁判所は次のように説明している︒. たことがある︒すなわち︑諸政党間の異常な騒動︵甜凶鼠二9︶または緊張の結果︑およびその発露︵ヨ窪瀞ω鼠瓜o巳. たる犯罪︑ならびに当事者をして︑混乱と多くの暴力犯罪とを生ぜしめるところの暴力的方法をその敵対者に対して. 行使せしめるに至る騒動︵象ωεき碧8︶の結果︑およびその発露たる犯罪は︑政治犯罪とみなされなければならな. い︑と︒しかし︑それは孤立していると考えられるにしても︑一般的政治暴動および一般的権力闘争における報復の. 結果であるとみなされなければならない行為の場合であって︑個人的動機から︑ならびに私的目的を実行に移すもの. として行われる場合は除かれる︒﹄そして当該事件においては︑その犯罪が行われた事情︑および追求された目的を 考慮するならば︑ジャネリの処刑も明らかに政治的行為とみなされる︑とした︒. 以上で明らかなように︑ここで示されている相対的政治犯罪の概念は︑純粋な政治犯罪の存在を前提としていない︒. しかし︑ここで説明した二つの事件は︑ともに一国内において政治的に相争う二つのグループの間に起った事件であ. った︒そこでは︑前述のとおり相対的政治犯罪の概念が拡張されている一方で︑当然のことながら︑いくつかのその. 一五. 他の条件も付されている︒たとえばその一つは︑両グループ間の闘争が﹁内乱﹂の様相さえも示していなければなら 政治犯罪概念の国際法的考察.
(16) 政治犯罪概念の国際法的考察 ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 一六. ないことの指摘である︒これは︑二つのグループ間の争いが︑政治目的をもつための︑つまり︑一国の政治的権力関. 係をめぐる争いであるための客観的必要条件である︒連邦裁判所がふれているこの要件からは︑社会政治情勢の変化. による新しい相対的政治犯罪の概念の発展に︑本来の意味での政治犯罪の概念の色合いを保たせ︑従来の政治犯罪の. ユーゴスラビア旅客機乗取り事件. ︵40︶. ︵スイス連邦裁判所︑一九五二年四月三〇日判決︶. 概念との混乱をできるだけ避けようとする努力がくみとれるのである︒ 4. ヤ. ヤ. ︽事実V ユーゴスラビア旅客機の乗務員であった三名のユーゴスラビア人が︑その旅客機の正規の行先を変更し︑ ︵41︶. スイスで庇護を求めた︒ユーゴスラビアは︑この三名の引渡を︑他の乗務員の自由を奪った罪︑公共輸送機の安全を. 危険にさらした罪︑および財産を違法に私用した罪について請求した︒右三名は︑その犯罪は政治的なものなので引. 連邦裁判所は︑問題となっている犯罪は政治的性質を有するので︑引渡は許されない︑と判決した︒. 渡は拒否されなければならない︑と主張した︒. ︿判決V. ヤ. その際に︑連邦裁判所は︑相対的政治犯罪とは﹃普通犯罪の遂行中に行われるが︑その際の事情によって︑特にそ ヤ. の動機によって政治的色彩を獲得する犯罪﹄であるとした︒さらに﹃それら自体の目的のためにではなく︑純粋な政. 治犯罪の成功を準備または確保するために行われる普通犯罪︑ならびに︑同時に純粋な政治犯罪を構成する普通犯罪. が存在する﹄と︑従来の相対的政治犯罪の概念をもつけ加えている︒当該事件の犯罪については︑﹃被告人たちが告. 発されている犯罪の目的および動機は︑かれらがその政治体制に同意せず︑しかもそこでかれらが監視抑圧されてい. ると感じた国から逃亡することを可能にするものであった︒⁝この事実は︑逃亡およびそれを可能とするために.
(17) 犯された犯罪に明白に政治的色彩を与えるものである﹄と説明した︒同裁判所は︑相対的政治犯罪の概念を右のよう. に拡張したことについて︑第二次世界大戦後の政治情勢を考慮しつつ︑次のように述べた︒従来の相対的政治犯罪の. 概念は︑﹃全体主義国家の成長のごとき最近の歴史的発展を考慮に入れたものではない︒このような国においては︑. あらゆる政治的反対勢力は抑圧されるので︑権力闘争は︑その出発点から不可能ではないにせよ︑少なくとも実際上. いかなる成功の機会ももちえない︒したがって︑その政治体制に服することを欲しない人たちには︑外国へ飛行する. ことによってそこを脱出する以外にいかなる他にとりうる方法も残っていないことになる︒⁝裁判官の気持とし. ては︑疑いなくこのような外国への飛行に政治的性格を与える︒﹄さらに︑追求された目的と惹起された損害との釣合. いについては︑﹁目的と目的達成のためにとられた手段との関係には︑その目的との理念的関係が︑私有財産に対す. る侵害を正当化しないまでも︑その口実となり︑かつ犯罪者を庇護するために相応しくみせるために十分強力なもの. でなければならないとの原則が適用されうる﹄とし︑当該事件においては︑必要とされた関係は疑いなく存在する︑ とした︒. 当該事件で連邦裁判所の説明した相対的政治犯罪の概念は︑全く新しい政治犯罪の登場を意味する︒それは︑右の. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. 概念が純粋な政治犯罪と全く無関係に存在しうる点︑および普通犯罪に政治的性格を与えるに際して︑特に動機と目. 的︑すなわち︑主観的要素を重視している点が斬新である︒当該事件で旅客機を乗取って庇護を求めた人たちは︑先. の分類に従えば︑③の政治的迫害もうけず︑身体への危険もないが︑政治的志操を異にするなどの不自由さを理由に. 一七. 逃亡した者にあたり︑従来の見解によれば︑政治犯にも︑また庇護を享有しうる者の範疇にも含まれていなかった︒ 政治犯罪概念の国際法的考察.
(18) 政治犯罪概念の国際法的考察. ヤ. ヤ. 一八. 右のような新しい政治犯の概念は︑世界観の鋭く対立する二つの大きな陣営の存在する第二次世界大戦後の国際社会. の政治情勢を如実に反映したものにほかならず︑その意味で︑政治犯不引渡の原則により今日的な意味を与えるもの といえる︒. スイスの判例を整理しながらスイスの優越理論をまとめてみると︑ワシリエフ事件で指摘された要件が︑半世紀の 間に次のように変化していることが分かる︒. ①の要件について︑相対的政治犯罪の概念は︑次のようにまとめることができる︒ Ob 純粋な政治犯罪の成功を準備または確保する目的で行われた普通犯罪. 図 犯行の動機︑目的︑または犯罪が行われた際の事情によって政治的性格をおびている普通犯罪. ⑥ 身体への危険はないが︑政治信条を異にするため住み心地が悪いので︑外国へ逃亡する際に犯された普通犯罪. ②の要件については︑最初︑追求された目的と行われた犯罪との直接的な関係を意味するものとして客観的な要素. が決定的な要件となるとされていた︒最近では︑この原則が崩れ︑特にユーゴスラビア旅客機乗取り事件においては︑. 主観的な要素が重視されるようになった︒つまり︑相対的政治犯罪の概念が前述のように幅広く解釈されるようにな. ヤ. ヤ. ったため︑右の直接的な関係を吟味する際に︑主観的要素を重視せざるをえなくなったのである︒しかし︑主観的要. 素の重視といったところで︑逃亡犯罪人引渡法第一〇条の制約があるため︑従来よりも主観的な要素がより尊重され ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. るようになったにすぎない︒これは︑政治犯不引渡についての規定を変えずに相対的政治犯罪の概念を右のような範. 囲にまで拡張したことの必然的結果である︒この直接的な関係は︑三つにまとめられた相対的政治犯罪の概念を︑連.
(19) 邦裁判所が実際に運用する際にきわめて重要な働きをするので︑相対的政治犯罪についての困難さは︑実にこの要件 の判断にあると言っても過言ではない︒. ︵42︶. ③の要件︑すなわち︑追求された目的と惹起された損害との釣合いの原則は不変であった︒この釣合いの問題は︑ 主として︑殺人を行なった政治犯に関して問題とされるだけである︒ ︵二︶ イギリスの判例. 一八七〇年八目九日に制定された逃亡犯罪人引渡法︵国図#呂三2︾9︶は︑同法第三条第一項にいう﹁政治的性. 質を有する犯罪﹂︵讐&窪89帥2一三8一9貰鋤9霞︶について何ら規定していないので︑この概念の解釈の問題. ︵女王座裁判所︑一八九一年判決︶. 一八九〇年九月にスイスのベリンツォナ︵切o≡養自鎚︶の町でツィチノ︵︑一︑§8︶州政府に不満をもっ. カスチオニ事件. ︵43︶. は︑全く裁判所に委ねられている︒ ー ︽事実V. た多くの市民が︑州政府に反抗して立上がり︑州政府のメンバー数名を逮捕し︑兵器庫を襲い︑茅︑の武器で武装し︑. 市役所を襲撃占拠した︒さらに︑かれらは︑憲兵から武器を奪って政府のメンバー数名を投獄し︑臨時政府を樹立し. た︒市役所に押入る際に︑この騒乱中ずっと積極的な役割を演じていたカスチオニ︵O器菖〇三︶は︑ピストルで政府. のメンバーであった・ッシ︵閃8忽︶を射殺した︒彼は︑イギリスに逃れたが捕えられ︑殺人罪を理由とする引渡のた ︵必︶. 一九. めに拘留されていた︒カスチオニは︑スイス政府の引渡請求に対して︑この件につき人身保護令状︵9冨器8∈蕊︶ を申請した︒. 政治犯罪概念の国際法的考︑察.
(20) 女王座裁判所は︑カスチオニの犯罪は政治的性質を有するものであると︑判決した︒. 政治犯罪概念の国際法的考察. ︿判決V. 二〇. 当該事件まで︑イギリスの裁判所は﹁政治的性質を有する犯罪﹂という概念について何ら判示していなかった︒し. たがって︑当該事件で︑裁判所は︑カスチオニの犯した犯罪が政治犯罪であるか否かについて判決する一方で︑﹁政. 治的性質を有する犯罪﹂の概念をも明らかにする必要があった︒ラッセル勅選弁護人︵ω嘗ρ閑臣器FO琴窪.ω. Oo⁝器一︶は︑この点について︑﹃カスチオニが告発されている犯罪が︑政治的性質を有する犯罪であることは明らか. である︒なぜなら︑証拠によって︑政治的反抗が存在したこと︑およびロッシの死を招いた発砲は︑例の暴動が最高. 潮に達した時になされたこと︑さらに︑その発砲がカスチオニによってなされたと仮定するならば︑彼がその反抗で. 積極的な役割を演じていたことが︑全く明白に示されているからである﹄とカスチオニの犯罪の政治的性質を認めた. あとで︑﹁政治的性質を有する犯罪﹂の概念について次のように述べた︒﹃政治的性質を有する犯罪という表現は全く. 曖昧であるが︑恐らく︑故意にそうなされたのであろう︒立法府は︑完壁な定義をなす試みをわざと差控え︑例外的. 適用の問題が生じた時に︑その一つ一つについての判断を裁判所に任せているように思われる︒﹄けだし︑政治犯罪を 含む事件の性質を 十 分 に 理 解 し た 発 言 と い え よ う ︒. ﹁政治的性質を有する犯罪﹂に関して︑当該事件では二つの概念が対立していた︒一は︑ミル︵9ψ竃∈︶のもの. で︑右の犯罪を﹃内乱︑暴動または政治的騒動の経過中︑もしくは遂行中に犯された犯罪﹄︵.︑>昌oR窪88目ヨー. #冨含ぎ些08自器9eh霞葺Rぎ閃99ユ一≦帥び凶話ロ畦9江o旨︶自℃O一三〇巴8ヨヨo識oロ.︑︶であるとした︒. 他は︑スチーブン︵ωヰい鶉8冨旨︶当該事件の判事︶の著書﹁刑事法制史﹂︵田90量9岳09ぎ一き一雷名︶の.
(21) 中に見出されるものである︒すなわち︑﹃逃亡犯罪人は︑もしその犯罪が政治的騒乱に付随して起り︑かつその一部を. なす場合には︑引渡犯罪のために引渡されるべきではない︒﹄︵︑.⁝2咀二<oRぎぎ巴ω貰oまけε富巽旨o区震oα. 臨o﹃o答旨島菖oロR一目①ω賦葺oの①R一ヨ①ω薫震oぎo誌①日巴ε蝉ロα団o﹃ヨ&帥℃薗旨o騰℃o=菖8一&¢言旨餌旨8ω︒..︶. 結局︑女王座裁判所は︑スチーブンの定義を採用した︒すなわち︑﹁政治的騒乱に付随して起り︑かつその一部をな. す犯罪﹂を政治的性質を有する犯罪としたのである︒裁判所の見解は︑ミルの定義が全く広すぎるという点で一致し. ていた︒なぜなら︑犯罪者は︑少なくとも政治的動機をもっていなければならないからである︒デンマン判事︵∪窪︐. ヨき﹂︒︶は︑これに関連して︑﹃もしミルによって与えられた叙述が︑実際にその目的や意図︑およびそれと関連あ. るその他の事情に全く関係なく︑政治的反抗の経過中に起ったすべての行為を意味すると解釈されるならば︑それは. 誤った定義である﹄と述べ︑さらに﹃殺人のごとき行為を逃亡犯罪人の引渡から除外するためには︑少なくとも︑そ. の行為が︑政治的問題における行為︑政治的反乱︑もしくはそれについては政府をその手中にすべき一国内における. 二つの党派の闘争などの遂行中に行われたものであること︑あるいは助成の意図を以て︑一種の公然たる行為として ︵45︶. その経過中に行われものであることが示されなければならないと思う﹄とつけ加えた︒これは︑政治犯罪を政治権力. の源の支配のために抗争する党派の闘争に関連させようとする考え方であった︒女王座裁判所はスチーブンの定義を. 採用したが︑それは︑相対的政治犯罪の概念については︑普通犯罪と政治的行為との関係を判断する規準が︑その困. 難さのもとになっていると考えたからである︒ミルの定義が採用されなかったのも︑実は︑この関係の説明が曖昧だ. 一二. ったからである︒﹁攻治的騒乱に付随して起り︑かつその一部をなす犯罪﹂という概念において︑﹁政治的騒乱﹂とは 政治犯罪概念の国際法的考察.
(22) 政治犯罪概念の国際法的考察. ヤ. ヤ. ︵46︶. ︵女王座裁判所︑一九五四年一二月一三日判決︶. 一二一. 純粋な政治犯罪を示し︑それに﹁付随して起り︑かつその一部をなす﹂関係とは︑実際︑前者とのきわめて直接的な ︵47︶. 関係を示すものである︒. ヤ. 一九五四年九月に北海でト・ール船を用いて漁業を営んでいた七名のポーランド人水夫が︑イギリスで. 2 ポーランド水夫事件. ヤ. ︿事実V ヤ. 政治的庇護を求める目的で︑船長およびその他の船員に暴行を加えてその自由を奪い︑トロール船を乗取り︑イギリ ︵48︶ スの港に入港したが︑逮捕された︒ポーランド政府は︑かれらの引渡を求めたが︑右七名は︑人身保護令状を申請し. た︒治安判事は︑ト・ール船の中で政治職員が多分その政治的意見を理由としてかれらを告発する目的で︑コルシジ. ンスキー︵内o一身昌の獣︶たちの会話をメモしていた事実を認めた︒彼は︑水夫たちがト・ール船を奪った目的は︑た. だそこでかれらが欲求不満と圧制とに苦しめられていた本国を去ることであり︑しかもかれらは︑この目的を人また. は財産に対する損害を最小限度に抑えつつ達成したのである︑とした︒治安判事は︑当該事件において七名の水夫が. 告発されている犯罪が﹁政治的性質を有する犯罪﹂であるか否かの判断を高等法院︵=蒔げ02ユ︶に委ねた︒. ︿判決V 女王座裁判所は︑人身保護令状の申請者たちは︑引渡の請求が政治犯罪のためにかれらを裁判または処. 罰する目的でなされていることを同裁判所の納得のいくように明らかにしたので︑申請は許される︑と判決した︒. カッセル判事︵O器器すい︶は︑﹃﹁政治的性質を有する犯罪﹂という表現は︑常にそれらが考慮されるべき時に. 存在する事情にそくして考慮されなければならない︒現在は︑カスチオニ事件の判決のあった一八九〇年代とは全く. 異なっている︒当時は︑市民が本国を去り︑外国で新しい生活を始めることは︑反逆罪とはならなかった︒各国は︑.
(23) 戦争がない時には︑敵国とはみなされなかった︒現在︑世界のある部分には全体主義国家が広がっている︒そして︑. ユ︑のような国においては︑市民が国を去ることは犯罪となるのである︒当該事件の場合︑漁業に従事していたト・ー. ル船の船員たちは政治的に監視されていた︒申請者たちは︑かれらが自由に利用できた手段によって反乱を起したに. すぎない︒かれらは政治的性質を有する犯罪を犯したのであるから︑もしポーランドに引渡されるならば︑疑いなく︑ ︵49︶ 一定の犯罪につき裁判される一方で︑政治犯罪についての処罰もうけるであろう﹄と述べた︒ムニエ事件以後当該事 ︵50︶. 件まで︑ ﹁政治的性質を有する犯罪﹂の概念を改めて吟味する試みが︑イギリスの裁判所によって︑ほとんど︑ある. いは全く行われなかったということは意外なことであるが︑いずれにせよ︑当該事件において︑裁判所が従来もって ︵駐︶. いた政治的性質を有する犯罪についての概念が拡張されたことは明らかである︒そして︑それはかなりの程度におい てであった︒. イギリスの判例では︑以上二つが代表的なものである︒全体の事件数をみても︑スイスと較べるとはるかに少ない︒. したがって︑その細目にわたって決して確定的な要素が多いとは言えないのであるが︑内容的にはスイスの優越理論. で示された原則がほとんど指摘されており︑相対的政治犯罪の概念についても同じ傾向があらわれている︒つまり︑. スイスの判例の検討で明らかとなった相対的政治犯罪の判断の規準が︑イギリスの判例においても同様に受け入れら. れているのである︒その意味で︑相対的政治犯罪の問題に対する解決策としてのスイスの優越理論の長所が︑実証さ. れているといえる︒確かに︑スイスの判例で示された優越理論の三つの要件は︑スイス逃亡犯罪人引渡法上のもので. 二三. はあるが︑政治犯不引渡が︑対引渡請求国の問題を含んでいる点︑および国際慣習法上の原則であるとされている点 政治犯罪概念の国際法的考察.
(24) 政治犯罪概念の国際法的考察. 二四. を考慮すれば︑優越理論を採用しているスイスの判例で示された先の規準は︑国際法上政治犯罪の概念を定める際に. は︑一つの指針以上の重要な役割を果すに相違ない︒また︑右の理論がかたちを変えてではあれ︑イギリスの判例で も認められていることは︑その可能性を十分に裏付けるものである︒. 最後に︑その手段は異なるが全く同一の性質を有する事件がスイスとイギリスでそれぞれ起り︑いずれも政治犯罪. であるとの見解が述べられている点に注意してみよう︒それはユーゴスラビア旅客機乗取り事件とポーランド水夫事. 件である︒両事件の亡命者は︑前述の分類に従えば︑③の政治的迫害も身体への危険もないが︑政治的志操を異にす. るなどの不自由さを理由に外国へ逃亡した者にあたる︒この場合︑かれらが逃亡の際に犯した犯罪を政治犯罪とみな. すことは︑政治犯罪の概念をあまりに拡張することになり︑かえってその曖昧さを助長する結果になりはしないだろ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. うか︒ここでは︑引渡されない政治犯と庇護を与えられる人たちとを区別すべきである︒したがって︑外国の引渡請 ︵52︶ 求があれば必ず政治犯不引渡の原則を適用するというのは︑両者を混同ないし誤解に導くもとである︒実際︑先の亡 ︵53︶. 命者たちは︑外国において庇護を求めるため︑すなわち︑政治的庇護を求めてスイスおよびイギリスに逃亡をはかっ. ほかに政治犯罪の概念を定義したものを若干あげてみよう︒. たのである︒かれらは政治犯ではなく︑かれらには庇護が認められるべきである︒ 香西︑太寿堂︑高林︑山手﹁国際法概説﹂︵有斐閣︶一五九頁︒. o 貸后℃−誓圧09鶴葛び釣薗︒O o ︾易=鉱o暑昌鯨oo・=刈.. ︵11︶ ︵12︶. 一九三〇年に国際連盟主催の国際法典編纂会議に呼応して検討作成されたハーバード大学﹁逃亡犯罪人引渡条約草案﹂第五. 条B項は︑﹃政治犯罪は︑一名またはそれ以上のいずれかによって行なわれたかを問わず︑反逆︑騒擾およびスパイを含む︒右.
(25) は︑引渡請求国の安全または政治制度に向けられた組織グループの活動に関係ある一切の犯罪を含む︒かつまた右は︑政治目. 一■と略す﹀ω自℃三〇目Φ旨v<〇一︒NOvおω0︶℃マ=甲=ω︶︒. 的を有するその他の犯罪を除外しない﹄と規定した︵=貰く四巳閑oの①貰畠ぎ富8醤舞δ岩一ピ餌ぎ国図茸呂三〇P︾目Φユo彗 冒貫昌巴9冒宕旨辞ご昌斡一い餌≦︿以下︾﹂﹄. また︑一九三五年にコペンハーゲンで開催された第六回刑法統一国際会議において︑﹃政治犯罪とは︑国家の機構および機能. 目p冒霞岩一9日冨ヨ碧一8巴9ヨ巨︒︒巴89一仁ユ馨即望目導巽一8♪<o一﹄︶29. に向けられた犯罪行為︑ならびに国家がその国民に与えている権利に向けられた犯罪行為をいう﹄と定義された︵旨国099器・. ↓ぎ勾蒔耳9>亀ピ目ぢ宰 ポマ一もoN︶Q. 9認oo︶︒. グッゲンハイムは﹃国家の存在および独立に対して︑国防に対して︑ならびに市民の政治的権利に対して向けられた犯罪が︑. 政治犯罪とみなされる﹄としている︵型O仁騎αqo昌﹃①一目︸いoげ旨犀07ユ霧<O一犀①旨8窪9り切9昌辞這蒔oo. 日本では︑先の東京地裁の判決で︑﹃政治犯罪の概念は︑純粋の政治犯罪と相対的な政治犯罪とに分けられる︒純粋の政治. 犯罪とは︑専ら政治的秩序を侵害する行為である︒相対的な政治犯罪とは︑政治的秩序の侵害に関連して︑道義的または社会. 彼は︑その原因は相対的政治犯罪にあるとする︵山ト帥葺o壱碧鐸︶oP9. 的に非難さるべき普通犯罪が行なわれる場合をいう﹄とされた︵判例時報第五四三号三四頁︶︒ ︵13︶. ﹃純粋な政治犯罪の概念については一般に一致しており︑かつ︑困難さを全く惹起していない︒間題は︑相対的政治犯罪に. ℃P8ア刈Oo ︒︶︒. ︵14︶. ある︒﹄︵﹃Uo9ρ℃巳詳8巴O融①霧窃ぢ些①ピ¢毛節昌ユ℃轟O菖89国蓉轟島菖OP︾︒︸●一r一<O一.ミ︶一8もo︶戸認Qo︶︒. ヤ. ヤ. ヤ. ︵15︶. 相対的政治犯罪には︑単一の行為であって︑それが政治犯罪と普通犯罪の両者を同時に構成する複合犯罪と︑二つ以上の犯. O貰o貯・一≦o寅︾一暮o旨舞凶o昌亀ピ餌毛餌昌α︾契冨ヨ器餌自縄旨帥昌勾蒔耳︶一〇㎝ρマ蕊︑. ヤ. ︵16︶. 二五. 罪であって︑各々が政治犯罪と普通犯罪とを構成し︑両者が関連している結合犯罪の二つの類型がある︵判例時報第五四三号. 政治犯罪概念の国際法的考察.
(26) 政治犯罪概念の国際法的考察. い●U8吋ρo戸ユ梓. 三四頁︶︒ ︵17︶. 相対的政治犯罪の概念について︑西欧には次の三つの解決方法があるとされている︒. マまO●. ︵18︶. ①. 二六. 一八三三年一〇月一日のベルギ. ーの﹁逃亡犯罪人引渡に関する法﹂第六条は︑政治犯罪と関連ある犯罪を理由とする引渡を禁止している︒このいわゆる客観. 的理論は︑普通犯罪は政治犯罪と密接な目的関係になければならないとする︒この考え方は英国法律圏で採用されている︒. ︒︶. ②いわゆるスイスの優越理論︵本稿七頁以下︶︒この考え方は︑スウェーデン︑フィンランドでも採用されている︒③政. るか︑もしくは政治犯罪を準備︑確保︑隠蔽または保護する︵魯毛Φぼ魯︶という方法で政治犯罪と関連を有する場合には︑そ. さらに︑ドイツ逃亡犯罪人引渡法第三条第一項は︑﹁もし逃亡犯罪人の引渡請求の原因となった行為が︑政治的なものであ. 治的動機のみが︑普通犯罪を政治犯罪となすとする主観的理論︒︵ω件歪忍・ω9一8訂器びρ鉾ρ℃︾5凱9R巨撃ψ目o ︵19︶. の引渡は許されない﹄と規定している︒ほかには︑たとえば︑一九三〇年一〇月一九日のイタリア刑法典第八条は︑ ﹃この刑. 法の枠内においては︑国家の政治的利害関係︑または国民の政治的権利を侵害する犯罪はすべて政治犯罪である︒⁝全部. または一部が政治的動機によって規定されている普通犯罪も政治犯罪とみなされる﹄と規定する︒. ドイツの通説は︑前記逃亡犯罪人引渡法第三条第一項に規定されている行為は︑純粋な政治犯罪の亜種たる牽連犯罪︵N苧. βoン帥︐鉾O. ︾ロω一一9霞G昌ひQ. ψ目Qo︶︒. ︵冨8お︶は︑﹃特別の行為がその範疇に入るか否かの問題は︑主としてその時の事情によるもので 毒︶oマユ〜℃●=ω︶Q. 政治犯罪についてのこの困難な問題を実定法上解決する手がかりとしては︑そのほかに次のようなものがある︒. ある﹄と述ぺている︵= ミ碧含幻80醇oげご冒言﹃昌母6昌亀い. この点についてモーア. れている︵ ω 賃 ロ ℃ づ ー ω 〇 三 〇 〇 げ. 器目ヨ窪げき騎曾讐︶であって相対的政治犯罪を含まないとする︒したがって︑しばしば運用上妨げとなっていることが指摘さ. ︵20︶. ︵21﹀. ︵22︶.
(27) ①. いわゆるベルギi加害条項⁝一八五六年三月二二日にベルギi議会は︑フランス皇帝ナポレオン三世暗殺未遂事件を. 契機に︑逃亡犯罪人引度法に次の一項を追加する二とを承認した︒ナなわち﹃外国政府の首長またはその家族の人身に対する. 侵害は︑それが謀殺︑暗殺︑または毒殺の行為を構成する場合には︑政治犯罪とも︑政治氾罪に関連する行為ともみなされな いものとする︒﹄. 一九二九年のドイツ逃. ②いわゆる絶対的加害条項・・二般的に謀殺または謀殺未遂−国家元首または政府の首長に対するものであるか否かに. 関係なく!は︑公戦で︵ぎo℃①昌げ魯二〇︶行なわれた場合を除いて︑政治犯罪とみなさないとする︒. .・. 亡犯罪人引渡法第三条第三項は︑﹃逃亡犯罪人の引渡は︑その行為が生命に対する予謀犯であるときには︑それが公戦でなさ. れた場合を除いて許される﹄と規定する︒絶対的加害条項を含む提案を審議するために︑・シアは一八八一年にブラッセル. れたが︑これも実らなかった︒︵=ト帥暮o壱8ザ計oP9什4℃PきO−譲O︶. 国際会議を開催しようと試みたが不成功に終った︒また︑一九三四年にフランスによってテロ行為二対する国際条杓が提案さ. ③無政府主義的活動および共産主義的活動は︑政治犯罪とみなさないとするもの⁝中華民国逃亡犯罪人引度法︵一九五. 四年︶第三条は︑﹁共産党の反乱活動﹂を政冶犯罪とみなしてはならない︑とする︒また︑一八九二年の国際法学会の逃亡犯. 罪人引渡に関する修正決議第四条は︑﹃⁝特定の国家または特定の政府の形態のみに対して向けられたものではなく︑す. べての社会的組織の基礎に対して向けられた違法行為は︑政治犯罪とはみなされない﹄としている︵︾昌昌轟ぼo号一.ヲ馨津葺 α①Uδ淳一艮①旨讐凶oロ巴︶国象餓o昌Zoq︿Φ一一Φ︾耳聲似ρ一旨oo P一思︶o. ④残虐性および戦争法規違反の吟味⁝フランスの一九二七年三月一〇目法第五条第二項は︑政治犯不引渡を規定したあと︑. ﹃反乱または内乱の経過中に︑闘争に参加した当事者のいずれかによって︑その目的達成のためになされた行為については︑. 二七. それらが憎むべき野蛮行為を構成する場合︑および戦争法規によって禁止されている破壊行為を構成する場合でなければ︑逃. 政治犯罪概念の国際法的考察.
(28) 政治犯罪概念の国際法的考察. 二八. 一八九二年一月二二日のスイスの﹁外国への逃亡犯罪人引渡に関する連邦法﹂第一〇条は︑﹃政治犯罪については︑引渡は許. 亡犯罪人引渡の理由となりえない︒そして︑それは︑内乱がすでに終っている場合に限られる﹄と規定する︒ ︵23︶. されない︒行為者が︑政治的動機または政治的目的を主張する場合であっても︑引渡請求の対象となっている行為が︑普通犯. たとえば︑ドイツ大審院は︑ファビヤン事件で︑政治犯罪とは﹃大逆罪︑反逆罪︑国家の対外的安全に対する行為︑反乱︑お. いて︑その構成要件に基づき︑目由な裁量に従って︑判決を行なうものとする﹄と規定する︒. 罪の性質を優越的に︵︿a三£o呂︶有する時には︑引渡は許される︒連邦裁判所は︑それぞれの場合に︑可罰行為の性質につ. ︵24︶. ︵O器oω︿以下︾U㌔﹄︒U︒ρと略すV︾K9お一8㌣一〇〇︒♪マω8︶︒ベルギーの控訴院は︑バラチニ事. よび内乱煽動﹄をいうとした︵冒冨閃︾ゆご>7U窪房昌霧切口昌ユ3鴨﹃8耳︶竃弩昌P一旨oo︸︾昌昌仁巴U蒔Φ曾9℃5三言 冒8舅讐δ昌巴ピ. 件で︑﹃政治犯罪とは︑本質的に政治体制に対して向けられている犯罪︑もしくは正しく普通犯罪を構成してはいるが︑行為. o占罐ρマ合N︶︒スイス連邦裁判所は︑ 国o薗ご日鳩08旨9︾唱℃8どピ5碗ρ言曽︾淺︸一旨9>・戸℃﹂嚇ピ.ρ矯嘱$お這ωo. 者の目的が政治体制を侵害することにあるがゆえに政治犯罪の性格をおびている犯罪である﹄とした︵日おω︾菊男>↓一2ご. ︵℃><>ZO>ω国vω毛一霧問oO巽包Oo偉誹︶一仁昌o一斜一8Qo︾︾・U・℃﹄・rρKo巽の一8刈占8Qo︶P認qo︶︒フ. パバン事件︵本稿一一頁以下︶で︑政治犯罪とは︑大逆罪のごとき﹃国家またはその基本的な政治制度に対する直接的な攻撃﹄ であるとした. ランスの控訴院は︑ジョバンニ・ガッチ事件で︑﹃政治犯罪とは次のものをいう︒すなわち︑政治組織体を侵害する犯罪︑政. 府の機構および主権に対して向けられた犯罪︑国家の基本法によって確立されている秩序を乱す犯罪︑ならびに権力の分配. ︵鎌の賃尋9凶8︶を妨げる犯罪など︒そして︑主たる国家機関の機構を転覆または変革すること︑もしくはこれらの当局の一を. 破壊︑弱体化︑または悪評に導くこと︑もしくは主たる国家機関の機構の活動またはそれらへの一般的な国家の監督権に対し. て違法な圧迫を加えること︑もしくはその一ないし全部の要素において憲法によって個人のためにつくられている社会的条件.
(29) を変更することなどを目的とする行為もまた政治犯罪である︒手短に言えば︑政治犯罪と普通犯罪とを分けるのは次の事実で. ある︒すなわち︑政治犯罪は︑国家の政治機構︑つまり国家の固有の権利に影響を与えるだけであるが︑普通犯罪は︑専ら国. 家の権利以外の権利に影響を与えるものである﹄と述べている︵一昌3臼O<︾2呂O>↓↓一︶司轟蓉ρ02旨9︸薯窪一9. ︵25︶. 一八七三年一一月五日および七目の瑞露逃亡犯罪人引渡条約に基づいて求められた︒. 国糞ωoげo崔q昌西o昌αoωωoげ毛o厨oユの90昌切ロ昌号茜R一〇犀09謹●ω僧昌ρ一〇〇〇〇︾一●目o芦ω q零−Ooo㎝.. 国●一m箕o巷碧算 oマo博 マ刈8●. 0おき三P冒昌仁餌蔓一〇〇︾一〇ミ︶︾U池﹄.び6・吋8﹃一〇ミ︸マ一ま︶︒. ︵26︶. 言いかえれば︑純粋な政治犯罪が存在することである︒このような純粋な政治犯罪の存在を前提とする相対的政治犯罪の概. ︵7 2︶. 冒昌犀帥q鴇. ω&907. 宅勾書o旨︿以下一・い・零と略すVくo畦一3鉾マωおあoo一︶においても引用. お認︸一・ピ・客K①貰お認り℃層ω胡−oo8︶においても強調されている︒. 冤一評一〇①ごH■︒勾. <〇一・ω♪. 戸一命ω占躰刈︶では︑. この追求された目的との釣合いは︑パバン事件でも強調されているが︑クティール対連邦共和国政府事件︵国目知§寓莞−. 冨昌辞問o傷震箪↓ユげ昌昌巴. この行なわれた行為と追求された目的との間の直接的な関係は︑パバン事件およびナッピ事件︵一昌おZ︾℃℃ン. されている︒. ユ鋤瓢鼻問&R巴日ユぴqβ9 0ン一韓①ヨ讐δ昌巴一. 念は︑のちにユーゴスラビア旅客機乗取り事件︵本稿一六頁以下︶およびウィ・ブニク事件︵冒お≦K菊Oω呂Fω&言?. ︵28︶. ︵29︶. ︵30︶. 一ω日け幻国℃d国ピ同O男bU協菊>ピ︸ω毛津器ユ曽づρ蜀oα①穫包日﹃陣げ仁昌巴︶︼≦. さらに詳しく説明されている︒同事件は︑フランスが︑アルジェリア独立運動のメンバーであったクティールが一九六〇年十. 一月に同独立運動の他のメンバーを殺害したことを理由に︑スイスにその引渡を求めたものである︒連邦裁判所は︑彼の引渡. 二九. を認め︑次のように述べた︒ ﹃惹起された損害は︑追求された目的と釣合っていなければならない﹄︑﹃謀殺が問題となってい. 政治犯罪概念の国際法的考察.
(30) 政治犯罪概念の国際法的考祭. 一八六九年七月九日の瑞仏逃亡犯罪人引渡条約に基づいて請求された︒. 勺><>20>ω国︾︾ ご︒コ岡・い O●K9誘一旨下一800︸℃℃︒ω劇﹃6お. にのみ存在するのである︒﹄. 三〇. る場合には︑そのような関係は︑殺人がより以上重要な利益を保護したり︑または政治目的を達成する唯一の手段である場合. ︵31︶. してみよう◎ ︵ZO切いO↓O>ωFω類一ωω男a震包Oo弩. Zo<o目げo甚器.一旨o o.︾Uも︒一rO.K9おお鴇占露oo.℃マ. パバン事件は︑スイスの優越理論を典型的に適用した事件である︒この理論の長所を探る意味で︑さらに若干の事件を概観. パバン事件と全く同一の説明がなされている︒. ナッピ事件︵註︵29︶参照︶では︑相対的政治犯罪︑すなわち普通犯罪に政治的性格が与えられるそれぞれの場合について︑. ︵32︶. ︵33﹀. ︵4 3︶. ︿ノブロ事件V 詔06目︶︒. これは︑フランス人ノブ・が︑デュッセルドルフで砂糖輸送のための船荷証券を偽造した罪につき︑ドイツが彼の引渡をス. イスに請求した事件である︒この引渡請求に対し︑彼は︑金銭利得の動機から船荷証券を偽造したのではなく︑ただ政治的動. 機から偽造したのであることを理由に異議を唱えた︒連邦裁判所は︑彼の引渡を認める︑と判決した︒同裁判所は︑相対的政. ﹃この問題に関する連邦裁判所の以前の判決に従えば︑この種の犯罪の. 治犯罪を﹃国内法上の犯罪のすべての要素を示すが︑その動機︑およびそれが行なわれた際の事情のごとき︑ある付加的な理 由から政治犯罪の性格を賦与されている﹄ものとし︑. 政治的性格を認めるためには︑問題となっている行為が︑国家における権力を確保せんとする努力としてか︑あるいはこのよ. うな闘争における孤立した付随事件としてのいずれかとして︑国家の政治体制に直接向けられていることが必要である﹄と説. 明した︒しかし︑ノブロは︑船荷証券の偽造によるドイッヘの経済的侵害とドイッの政治体制の変革との関係を︑納得のいく.
(31) ように明らかにすることに成功していない︑とした︒. ︵一昌お℃閏閃¢NNρω&9震宣昌F閃aR包Ooξ﹃冒づ信餌︻望曽・一3ごがr葬K①巽一〇鵠・℃℃﹄O㌣. 当該事件では︑パバン事件で登場した新しい相対的政治犯罪の概念がそっくりそのまま借用されている︒ ︽ペルツォ事件V. o︒謡︶. これは︑イタリア政府が︑カペロ︵O巷℃o一〇︶という男の殺害につき煽動または共謀したことを理由に︑スイスにペルツォ. の引渡を求めた事件である︒彼は︑その犯罪は政治的なものであると主張したが︑連邦裁判所は︑それを認めず︑引渡を許可. した︒当該事件でもパバン事件と全く同一の相対的政治犯罪の概念が示されているが︑同裁判所は︑﹃追求された目的とカペ. ﹃当時︑イタリアには正規の裁判所が存在した︒. ⁝このような事情においては︑殺害は︑政治. ⁝もし︑カペロが国家にとって危険なファシストであると実際に考え. ・の殺害との関係が︑この殺害を政治的なものと叙述することを可能にするほど十分なものであったとは認められえない﹄︑. られていたとしても︑彼を暗殺する以外の方法がとられえたはずである︒. 目的を達成するための最後の手段ではなかった﹄として︑その方法が不適当であり︑追求された目的との釣合いを欠いている︑ と判断した︒. この判決は︑第二次世界大戦後の国民主権国家︑すなわち︑民主主義国家の増加をもとにして考えてみると︑裁判制度の利. 用を指摘している点で︑きわめて意義深いものである︒本来裁判で解決しうる政治目的と政治犯罪とは︑現在もはや直接的に. は結びつきえないと考えられるのではなかろうか︒その意味で︑これは今日の政治犯罪の概念の新しい発展の方向を示すもの である︒. 三一. 5︶ ちなみに︑前掲ドイッ逃亡犯罪人引渡法第三条第一項の規定はこのような意味での相対的政治犯罪を含まず︑きわめて制約. ︵3. 的な規定であることが分かる︒. 政治犯罪概念の国際法的考察.
(32) ︵38︶. ︵7 3︶. ︵6 3︶. 一八六八年七月ニニ日の瑞伊逃亡犯罪人引渡条約に基づいて請求された︒. 一八七四年一月二四日の瑞独逃亡犯罪人引渡条約に基づいて請求された︒. 一昌お国OO勾目び一︶一︒■︒閃・<o一!N♪唱戸ooホーoo3・. 〇 ♪薯︒oo86謡. 冒おOO閑国勾↓︶︾U︒ア一︒ピ6●くgお一〇〇︒ω−一〇︒. 三二. ︵39︶. 日3囚><一Pω一国い>20<一〇>ZU︾菊ω国Zご国<一ρ一︒い︒国●閃O醇一3N︶bマ零一1ω謹︒. 政治犯罪概念の国際法的考察. ︵40︶. 連邦裁判所は︑この点について︑﹃ユーゴスラビア王国と現在のユーゴスラビア連邦共和国は︑セルビア王国の継承者であ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ﹃逃亡犯罪人の引渡を請求されてい. り︑かつセルビア王国が締結した国際条約を引き継いでいる﹄ので︑両国間には一八九七年一一月二八日の逃亡犯罪人引渡条. ︵41︶. ヤ. イギリスの逃亡犯罪人引渡法第三条第一項は︑逃亡犯罪人の引渡に対する制限として︑. 約が有効である︑とした︒ ︵42︶. る事件の犯罪が︑政治的な性質を有するものであるか︑もしくはその者が︑警察裁判所判事︑または人身保護令状によってそ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. の面前に連行された裁判所の納得のいくように︑あるいは国務大臣︵留Ro富蔓9ω鼠富︶に対して︑その者目身で︑その者. に対する引渡請求が︑実際には政治的性質を有する犯罪についてその者を裁判または処罰することを目的としてなされている. ︵44︶. ︵43︶. この考え方は︑後にムニエ事件︵竃8三国q2宙界O器9.ω望昌9∪一鼠急o戸一〇〇〇♪目 唱℃﹂嵩−鵠O︶の判決で採用さ. 一八八○年一一月二六日の英瑞逃亡犯罪人引渡条約に基づいて求められた︒. ヨ80︾ω↓一〇2一りO仁8昌.の切o昌oげU凶く一巴oP一〇 〇〇ど一︶bマ一おー一①oo︒. ものであることを立証した場合には︑これを引渡してはならない﹄と規定する︒. ︵45︶. ﹃政治犯罪を構成するためには︑それぞれ自ら選んだ政府を他方に押しつけよ. れた︒この事件は︑フランスがムニエの引渡を︑カフエーおよび兵営爆破という無政府主義的暴動を惹起したことを理由にイ ギリスに求めたものである︒女王座裁判所は︑.
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