国際関係論
国内政治と国際政治 伊藤 岳 富山大学 経済学部 2018 年度前期 Email: [email protected] July 19, 2018Agenda
1 戦争の交渉モデル:整理 2 国内政治と国際紛争:単一主体の仮定と国内政治 二層ゲーム 陽動戦争論 利益団体 3 国内政治と国際紛争:政治体制の役割 「民主主義の平和」:民主主義体制と紛争の蓋然性 「民主主義の平和」:戦争の交渉モデルと政治体制の役割戦争の交渉モデル:武力による威嚇
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再掲
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戦争という外部機会 (武力行使の威嚇) を加える 1 0 Propose x Reject q, 1− q (現状維持) Accept x, 1− x (交渉による解決) Attack p1− c1, p2− c2(戦争) S1 S2 問い:次の 2 つの場合,武力による威嚇によって,S2が S1から「現状より好ま しい,交渉による譲歩」を引き出すことは可能か? 1 1− q ≥ p2− c2, すなわち q≤ p1+ c2: S2にとって,現状⪰ 戦争 2 1− q < p2− c2, すなわち q > p1+ c2: S2にとって,戦争≻ 現状戦争の交渉モデル:コミットメント問題
交渉論における戦争原因は,3 つに分類できる 1 情報の問題 (information/informational problem) 2 コミットメント問題 (commitment problem) 3 争点の分割不可能性 (issue individuality) 「戦争が生じないモデル」の含意と仮定 ▶ 戦争の不合理:戦争は事後的に非効率的であり,効率的な交渉可能領域が存 在̸= 交渉による解決が「常に」事前に達成・合意可能 ▶ さらに, ▶ 武力による威嚇:武力による威嚇は,(正確に相手に伝われば)自らの交渉上の 立場を有利にすることもある ▶ 時間の不在:時間的なパワーの変動や「先手(奇襲)必勝」は考えない ▶ 争点の分割可能性:争点あるいは係争対象の「パイ」(e.g.,領土)は自由に分 割・配分することができると仮定戦争の交渉モデル:整理
交渉論における戦争原因は,3 つに分類できる 1 情報の問題 (information/informational problem) 2 コミットメント問題 (commitment problem) 3 争点の分割不可能性 (issue individuality) それぞれの論理は,前掲の 3 点に対応 ▶ 武力による威嚇:武力による威嚇は,(正確に相手に伝われば) 自らの交渉 上の立場を有利にすることもある ▶ 情報の問題 ▶ 時間の不在:時間的なパワーの変動や「奇襲必勝」は考えない ▶ コミットメント問題 ▶ 争点の分割可能性:争点あるいは係争対象の「パイ」(e.g., 領土) は自由に 分割・配分することができると仮定 ▶ 争点の分割不可能性国内集団
単一主体の仮定 (unitary actor assumption)
▶ ここまでのモデルは,いずれも国家 (あるいは武装勢力) を一枚岩的な主体 と捉えてきた ▶ しかしながら,現実には,国家の意思決定は国内主体の選好・相互作用の 帰結 ▶ 政治家 ▶ 官僚組織・軍部・利益団体 ▶ 国民
▶ 国益 (national interest) と国内の個別利益 (particular interest) が一致するな
ら,単一主体の仮定に問題はない
▶ 一致しないなら,単一主体の仮定を緩め,その帰結を検討することも必要
例 「戦争のコストを支払う国内主体」と「開戦の意思決定をする国内主体」の不 一致と戦争の蓋然性?
二層ゲーム
野党の「妥協範囲」 S1の「国内での」合意可能範囲 S1(与党) の「妥協範囲」 S2の「妥協範囲」 0 S1の理想点 1 S2の理想点 国際政治と国内政治の相互連関 ▶ 2 つの交渉: ▶ 国際政治における他国との交渉:青と緑 ▶ 国内政治における国内集団との交渉:青とオレンジ ▶ 政府・政治指導者は,2 つの交渉を「同時に」行なう (二層ゲームtwo-level game 論, Putnum 1988) ▶ それぞれの政治交渉は,他の政治交渉に影響を与える ▶ 国際政治の国内政治的帰結:国際政治の動向が,国内政治に影響する ▶ 国内政治の国際政治的帰結:国内政治の動向が,国際政治に影響する ▶ シェリングの直感:政府が直面する国内政治的制約が大きいほど,その交渉 力は大きくなる二層ゲーム
シェリングの直感 もし行政府が,最善の協定を自由に交渉することができるならば,固定した態度をとるこ とができず,それゆえ争点となっている交渉について譲歩せざるをえなくなってしまう. なぜなら,相手国政府は,アメリカが交渉を打ち切るよりも譲歩しようとすることを知っ ている,あるいはそう固く信じるからである.しかし,もし行政府が立法府の監督下で交 渉を行なっており,その立場が法律によって制約されているのであれば,また,その法律 を変えるために必要な期間ないに議会を再招集することができないならば,行政府は交渉 相手に対して目にみえるかたちで確固たる立場をとることができるようになる(シェリン グ2008[1960]: 28–29).国内集団
国内集団と戦争 ▶ 陽動戦争 (diversionary war) 論:政治指導者の国内政治的誘因 ▶ 官僚組織・軍部の誘因 (FLS で自習, 重要な論理は共通) ▶ 利益団体の誘因 =⇒ いずれも,特定の国内主体の利益と戦争を結びつける「第二イメージ」的 議論 陽動戦争 ▶ 陽動 (戦争):自国民の政権に対する不満・不支持を顕在化させないように, あるいは支持を喚起するために国際危機を醸成すること,あるいはその危機 から生じる戦争 ▶ 国際危機を醸成することで,自らの国内政治的権力を確保するという誘因 (diversionary incentives)陽動戦争の論理:旗下結集効果
The Rally Effect and the Diversionary Incentive Source: FLS, 137 旗下結集効果 (rally-round-the-flag effect) ▶ 国家の危機において,政権に対して国民の支持が高まる傾向 ▶ 政治家個人からすれば,国際危機を醸成することで支持率の上昇・政治生命 の延長を望める (かも知れない) ▶ 例:スキャンダルから国民の目を逸らす ▶ 例:「国家存亡の危機」によって国内問題の責任を他国やテロリストに「押し付 ける」(スケープゴート)
陽動戦争の論理:陽動の誘因とその帰結
交渉可能領域 0 S2の理想点 1 S1の理想点 p p+r1− c1 p + c2 S1の戦争 の期待利得 S2にとって交渉≻ 戦争の範囲 S2の戦争 の期待利得 S1にとって交渉≻ 戦争の範囲 ▶ 国内政治的問題を「解決」する「起死回生のギャンブル (gambling for resurrection)」としての国際危機が生じ得る (?) ▶ 選好への影響:(政治指導者にとって) 戦争の期待利得が,p1− c1から p1+r1− c1へ変化 (r1> 0) ▶ 交渉(=二以上の主体の相互作用の類型) の帰結への影響:(各自考える) ▶ ポイント:r1が加わると,交渉可能領域はどのように変動する?陽動戦争:事例としてのフォークランド紛争
(1982)
www.westpoint.edu ▶ 英国・アルゼンチン間の戦争 ▶ 1833 年の無血占領以降,英国が支配 ▶ 1980 年代のアルゼンチンの軍事政権による弾圧 と経済的失策 (インフレ) ▶ 領有権紛争の継続を経て,全面的な武力衝突へ ▶ 他の事例: ▶ 米英によるイラク空爆やテロリスト根拠地攻撃 (1998)と米国大統領(当時) C氏の女性スキャ ンダル ▶ タイの国内政治的混乱とカンボジアとの国境紛 争(2008)陽動戦争の論理:陽動の誘因とその帰結
直感的論理の非直感的な実証結果 ▶ 陽動戦争論は,直感的にアピーリングで,「何となく」首肯できる ▶ 計量分析を主体とした実証分析は大量に蓄積 ▶ しかしながら,実証結果は陽動戦争論を支持しないものが大半 ▶ 旗下集結効果については,支持する実証結果が蓄積(特に米国) ▶ むしろ,「政治的に安全な (権力基盤の比較的強い) 政治指導者」や,「選挙直 前ではなく直後の政治指導者」による開戦の方が多い傾向陽動戦争の論理:陽動の誘因とその帰結
交渉可能領域 0 S2の理想点 1 S1の理想点 p p+r1− c1 p + c2 S1の戦争 の期待利得 S2にとって交渉≻戦争の範囲 S2の戦争 の期待利得 S1にとって交渉≻戦争の範囲 解釈 1: 相互作用・交渉の帰結という視点 ▶ 前提:戦争は,ある主体が「単独で」行なう意思決定ではなく,複数の主体 の相互作用・交渉から生じる政治的帰結 ▶ p1+r1− c1, r1> 0 ならば,S1の戦争の期待利得は確かに増加する ▶ しかし,r1によって範囲が小さくなるとはいえ,交渉可能領域は依然存在 ▶ 情報の問題・コミットメント問題のような,交渉という相互作用の論理を踏 まえた戦争原因論とは言い難い陽動戦争の論理:陽動の誘因とその帰結
The Political Costs of WarSource: FLS, 141 解釈 2: 戦争の国内政治的コスト ▶ 旗下結集効果という「利益」もあるものの,国際危機や戦争は国内政治的な 「コスト」もかかる ▶ 戦死者の増加に反比例して,政治指導者の支持率は低下する傾向 ▶ 他の可能性:政治体制,他の政策手段.戦略的相互作用の帰結として「相手 の陽動の誘因を分かっているから,戦争にならないよう譲歩する」可能性
利益団体
国内集団と戦争 ▶ 陽動戦争 (diversionary war) 論:政治指導者の国内政治的誘因 ▶ 官僚組織・軍部の誘因 (FLS で自習, 重要な論理は共通) ▶ 利益団体の誘因 =⇒ いずれも,特定の国内主体の利益と戦争を結びつける「第二イメージ」的 議論 利益 (ロビー) 団体と対外政策 ▶ 利益団体:特定の経済的・民族的動機・利益に基づき組織され,行動 ▶ 経済的動機と民族的動機 ▶ 自らの利益が他国の情勢や自国の対外政策にリンクされるなら,特定の対外 政策をとるよう政府に働きかけるはず ▶ 例:多国籍企業,イスラエル・ロビー ▶ 利益団体ではないが注意:「軍部」「軍人」「軍国主義」の違い,(元)軍人の武力 行使への「慎重さ」利益団体
Source: FLS, 129
「典型例」としての軍産複合体や帝国主義
▶ 軍産複合体 (軍部と武器企業の「同盟」) と攻撃的な対外政策 (Eisenhower)
利益団体
交渉可能領域 0 S2の理想点 1 S1の理想点 p p− c1 p + c2 S1の戦争 の期待利得 S2にとって交渉≻ 戦争の範囲 S2の戦争 の期待利得 S1にとって交渉≻ 戦争の範囲 利益団体の影響という神話? 1 そもそも,「利益団体の影響」をいかに操作化し,実証するのか? 2 異なる政策を選好する複数の利益団体の存在 3 戦争は,ある単一の主体 (e.g., 国家) の意思決定・選好ではなく,複数の主 体間の相互作用から生じる政治的帰結 =⇒ では,攻撃的な政策を好む国内主体の「タカ派」的選好が戦争の期待利得を 左右するとして,交渉の帰趨はどのように変化する?(各自図を書く)整理
国内集団と戦争 ▶ 陽動戦争 (diversionary war) 論:政治指導者の国内政治的誘因 ▶ 官僚組織・軍部の誘因 (FLS で自習, 重要な論理は共通) ▶ 利益団体の誘因 共通の限界 ▶ 国内集団の利益と国家の対外政策をつなぐ因果経路が不明瞭 (なことが多い) ▶ 確かに,タカ派的な国内集団が影響力をもてば,「新たな戦争のリスク」あ るいは「交渉が失敗する余地」を大きくするかも知れない ▶ しかし,交渉可能領域は依然存在 (大きさは変わるかもしれないが) ▶ 情報の問題・コミットメント問題のような,交渉という相互作用の論理を踏 まえた「交渉失敗の論理」を提供できない国内政治と国際紛争:
「民主主義の平和」論
「民主主義の平和 (democratic peace)」 ▶ 主要命題 (1) 民主主義国間の戦争の不在 ▶ 主要命題 (2) 民主主義国の不戦傾向の不在 ▶ 主要命題 (2a) 民主主義国と非民主主義国との戦争発生傾向 ▶ 関連命題: ▶ 民主主義国間の同盟形成・維持傾向 ▶ 民主主義国の戦勝傾向 ▶ (より一般的な)「政治体制の平和」▶ IR に希有な「経験的法則性 (empirical law)」(Levy, 1988)
▶ M. Doyle, B. Russet らによる先駆的研究
「民主主義の平和」論:カントの期待
『永遠平和のために』 共和体制は,その根源が純粋であり,法概念の純粋な源泉から生じたものであるが,それだけではな く,さらに望ましい結果である永遠平和への期待に沿った体制であって,その理由は次の点にあ る.—— すなわち,戦争をすべきかどうかを決定するために,国民の賛同が必要となる (中略) 場合 に,国民は戦争のあらゆる苦難を自分自身に背負いこむ (中略) のを覚悟しなければならないから, こうした [戦争という] 割に合わない賭け事をはじめることにきわめて慎重になるのは,あまりにも 当然のことなのである.これに反して,臣民が国民ではないような体制,つまり共和的ではない体制 においては,戦争はまったく慎重さを必要としない世間事であるが,それは元首が国家の成員ではな くて,国家の所有者であるからである.かれは戦争によって,かれの食卓や狩りや離宮や宮中晩餐会 などを失うことはまったくないし,そこで取るに足らない原因から戦争を一種の遊戯によって決定 し,ただ体裁を整えるために,いつも待機している外交使節団に戦争の正当化を適当に委ねることが できるのである. カント (1985[1795]: 32–33)「民主主義の平和」論:経験的観察
経験的パターン (1816–2001)
非民主主義国ダイアド 民主主義国ダイアド
戦争に至らなかった紛争 2,409 132
戦争に至った紛争 125 2
Source: Bueno de Mesquita (2010: 182)
「経験的法則性 (empirical law)」(Levy, 1988)
▶ 約 200 年,特に WWII 後において頑健な (robust) 結果
▶ 経済的相互依存,地理,勢力バランス,同盟等の戦争の相関因子 (correlates of war) の影響を統計的に統制 (control) しても同様
「民主主義の平和」論:理論的説明
問い:民主主義国,あるいは民主主義国間関係の特殊性は何か? 第一世代の議論 (B. ラセットら) ▶ 民主主義体制の規範的制約—— 平和的規範・文化 ▶ 民主主義体制の制度的制約 —— 法制度上の拘束 注意 FLSでの「制度」の定義との差異 第二世代の議論 ▶ 「権力支持基盤 (selectorate)」論:国内政治的権力を保持するために支持が 必要な集団の違い ▶ 非民主主義国における「小さな」権力支持基盤集団と,民主主義国における 「大きな」集団 ▶ 戦争から被る(被り得る)政治的コストは,民主主義国において大きい ▶ 戦争の交渉モデル:情報の問題と政治体制の役割理論的説明:戦争コスト
権力支持基盤論 ▶ カントの洞察:「意思決定を下す主体」と「戦争の被害を被る主体」の一致 と不一致 ▶ あるいは,治者と被治者の一致と不一致 ▶ 非民主主義体制では,「小さな」権力支持基盤集団を満足させればよい ▶ 政治体制を分けるのは,「支持基盤の相対的サイズ」(BdM) ▶ 他方,民主主義体制では,「大きな」権力支持基盤集団を満足させなくては ならない ▶ 戦争の勝敗と政治生命が強く相関する民主主義国の政治指導者 例 湾岸戦争(1991)後も,権力の座に留まったサダム・フセイン 例 ベルギー国王レオポルド二世(在位:1865–1909) ▶ 戦争コストは,説明責任を求められる民主主義体制において大きくなる ▶ 民主主義体制においては,下野するだけかもしれないが理論的説明:戦争コスト
経験的観察への示唆 ▶ 民主主義国にとって,戦争の期待利得が相対的に小さい:p1− c1A> p1− c1D ▶ 交渉可能領域の範囲はどうなる? ▶ 民主主義国間では,相互の制度的制約が平和的関係につながる ▶ 非民主主義国・民主主義国間では,非民主主義国にとって「魅力的な (tempting) 威嚇の対象」という信念 (誤認) を抱かせる余地が生じる▶ “Yours is a society which cannot accept 10,000 dead in one battle” (Saddam Hussein)
理論的説明:交渉論
情報の不確実性:政党間競争と透明性 (transparency) ▶ 政党間競争 = 民主主義体制の特徴の一つ ▶ 野党の反対や自由な言論空間が,武力行使への決意やコストについての私的 情報の秘匿を難しくし,情報の不確実性を小さくする ▶ 野党による「開戦への支持」もある種のシグナルとして働く ▶ 政府・与党 (e.g., S1) は私的情報を秘匿する誘因をもつ場合でも,野党は別 の誘因をもつから ▶ 国民の支持が高いとき,あるいは与党の決意が強いとき(かつ「上手くいく」 なら),与党に「賛成」すれば自らの得点にもなる ▶ このとき与党に反対してしまえば,外交上の業績を与党にもっていかれる =⇒ (政府・与党と)異なる誘因をもつ国内主体の行動が,他国(e.g., S2)にとって はシグナルとなる理論的説明:交渉論
情報の不確実性:(国内) 観衆費用 ▶ 有権者への説明責任が求められる民主主義体制では,コミットメントの撤回 に伴う (国内) 観衆費用が相対的に大きい ▶ 国内世論・有権者の動向が「制約」として働くため,コミットメントの信憑 性が高くなる ▶ 観衆費用が大きいほど,コミットメントの撤回が「高くつく」から ▶ Tying-hands signal ▶ 事例としてのキューバ危機 ▶ Schellingの直感 ▶ 異なる政治体制における観衆費用の「相対的な大きさ」は,(指導者の生命 線を握る層への) 説明責任・撤回への懲罰がどの程度制度化されているかに 依存する情報の問題:交渉ゲーム
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再掲
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Choose cH 2 (S2is Sheep) 1− l Choose cL 2 (S2is Wolf ) l 1 0 Propose x Reject q, 1− q (現状維持) Accept x, 1− x (交渉による解決) Attack p1− c1,p2− cL2(戦争) 1 0 Propose x Reject q, 1− q (現状維持) Accept x, 1− x (交渉による解決) Attack p1− c1,p2− cH2 (戦争) N S1 S1 SH 2 SL 2Note: p2= 1− p1. N は偶然手番/自然 (nature), 点線は情報集合 (information set)
情報の問題:交渉ゲーム
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再掲
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SL 2 との交渉可能領域 SH 2 との交渉可能領域 0 Sk 2の理想点 1 S1の理想点 p1 q0 p1− c1 q1 p1+ cL2 q2 p1+ cH2 q3 S1の戦争の期待利得 SL 2 の戦争の期待利得 SH 2 の戦争の期待利得 S2H にとって交渉⪰戦争の範囲 SL 2 にとって交渉⪰戦争の範囲 S1にとって交渉⪰戦争の範囲私的情報の信憑性のある伝達:
Tying-Hands (
再掲
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Send signal m Don’t challenge v1, 0 (現状維持) Challenge Don’t fight −m1, v2(撤回・宥和) Fight p1v1− c1, p2v2− c2(戦争) S1 S1 S2 観衆費用の論理 ▶ m1が大きくなるほど,S1にとって “Don’t fight” (威嚇の撤回) が困難にな る (利得が小さくなる) ▶ m1を「大きくしやすいかどうか」は,S1の特徴・属性に依存する? ▶ たとえば,政治体制:民主主義体制と選挙による指導者への懲罰行動の「不自由」と民主主義体制
シェリングの直感 もし行政府が,最善の協定を自由に交渉することができるならば,固定した態度をとる ことができず,それゆえ争点となっている交渉について譲歩せざるをえなくなってしま う.なぜなら,相手国政府は,アメリカが交渉を打ち切るよりも譲歩しようとすることを 知っている,あるいはそう固く信じるからである..... 実現可能性のある協定がある一定の幅をもって存在していること,そしてその結果が交 渉に依存することを知る各国の代表者は,しばしば国際交渉において公の声明を出すこと で,譲歩を許さない世論を意図的に作り出し,それが相手に明らかとなるならば,最初に とった立場を目に見えるかたちで「最終」的なものにすることができる...... 民主的な政府が世論によって自らの手を縛る力は,全体主義的な政府がそのようなコ ミットメントを生み出す力と同じではない......[他方で,コミットメントの信憑性を高め る手段はすべて,]交渉の行き詰まりや破綻の可能性を生み出してしまう危険性をもって いる.なぜなら,相手が譲歩できる限界以上のものを絶対に譲れない要求として出してし まうかもしれないからである(シェリング2008[1960]: 28–29).理論的説明:交渉モデルとの関連
民主主義体制と情報の問題 1 民主主義という政治体制が,情報の不確実性を払拭する「処方箋」となり 得る 2 他方で,「副作用」をも同時に高めてしまうかも知れない 民主主義体制とコミットメント問題 1 民主体制の透明性は,先制攻撃の不安から生じるコミットメント問題も緩和 し得る 2 より一般的に,威嚇と同様に「約束のコミットメントの撤回に伴うコスト」 も大きくなるならば,コミットメント問題全般も緩和し得る いずれの「交渉の失敗」の原因も,民主主義国間では緩和される...?政治体制と国際関係:残る疑問
Conventional wisdom ▶ 民主主義体制による平和 ▶ 要因としての民主主義体制,国内の政治体制 (と他の要因に着目する反論) ▶ 民主主義国間の戦争の不在と制度形成・維持傾向 Remaining puzzles ▶ 国内政治体制も国際制度 (次回) も,情報の問題やコミットメント問題を払 拭する機能をもつ ▶ そもそもそうした効果をもつ政治体制にもかかわず,なぜ民主主義国の間で 国際制度 (e.g., 同盟) が形成されるのか? ▶ 政治体制それ自体が上記の意味で「役に立つ」なら,わざわざ追加的なコス トを伴う国際制度は不要では? ▶ 民主主義体制の「情報効果」と「コミットメント効果」次回の内容と課題文献
▶ 同盟(国際制度)の役割,内戦 ▶ 課題文献(必須):FLS (教科書)の第4–5章 ▶ 副読本・論文(推奨) ▶ 砂原・稗田・多湖,第 10 章 ▶ 河野 勝.2001.「『逆第二イメージ論』から『第二イメージ論』への再逆転? 国際関係と 国内政治との間をめぐる研究の新展開」『国際政治』第 128 号: 12–29.▶ Brett Ashley Leeds. 2003. “Alliance Reliability in Times of War: Explaining State Decisions to Violate Treaties” International Organization 57(4): 801–827.
▶ James D. Morrow. 2000. “Alliances: Why Write Them Down?” Annual Review of Political Science 3: 63–83.
▶ シェリング,第 2, 5, 8 章
▶ Glenn H. Snyder. 1984. “The Security Dilemma in Alliance Politics” World Politics 36(4): 461–495.