国際コミュニケーション研究科 博士論文審査報告書
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(2) 2018 年. 1 月 30 日. 大学院国際コミュニケーション研究科長 殿. 審査委員. 竹田 青嗣. 主 査. 印. (所属・職位: 国際教養学部教授. ). 勝方 恵子. 副 査. 印. (所属・職位: 国際教養学部教授. 西 研. 副 査. 印. (所属・職位: 東京医科大学教授. 学位論文審査および口頭試験の結果を以下のとおり報告いたします。 1.学位の種類. 博士(国際コミュニケーション学). 2.課程博士 3.審査年月日. 学位論文審査. : 2017年11月17日. 口 頭 試 問. :. 4.学位論文審査および口頭試問の結果. 2018. ). 年. 1 月. ~ 2018 年. 16 日. *合格,不合格 を記入. 学位論文審査: 合格 (2 箇所修正) 口 頭 試 問: 合格 5.学位論文の要旨 別紙に記載のとおり 6.論文目録 別紙に記載のとおり. 2. 1 月 30日. ).
(3) 7.学位論文審査および口頭試問結果の要旨. (和文 3,000 字程度、英文 1,000 語程度). ((1)(2)とも、別紙記載のとおり) (1) 評価と審査結果の要旨(論文の概要を含む). (2) 口頭試問結果の要旨(各種質疑応答も含む). 以 上. 3.
(4) ★岩内章太郎博士論文 審査報告 (別紙掲載の項) (1) 評価と審査結果の要旨(論文の概要を含む) *論文概要 第一章 Husserl's Phenomenological Reduction この章は、フッサール現象学の根本構想および「エポケー」「現象学的還元」「本質観 取」「ノエシス―ノエマ[「内在-超越」といったその基礎方法の再確認が行なわれた上で、 この方法が単に認識論的動機を超えて、人間的、社会的事象の諸主題まで及ぶ射程を もつことを説く。 第二章 Defending Cartesianism in Phenomenology 一般的に、意識主義、独断主義として批判されることの多い「デカルト主義」が、現象 学的見地から擁護される。論者によれば、デカルトの中心動機は、近代社会が必要とす る人間理性への信頼を哲学的に建て直すことであり、多くの誤解にもかかわらず、認識 における動かしがたい確実性を基礎づけねばならないというデカルト主題が、まさしくこ の動機とともにフッサールの方法に受け継がれているとされる。 第三章 General and Transcendental Eidetic Science : The Case of Martin Heidegger ここで論者は、フッサールの構想による「本質学」の概念を、「一般本質学」と「超越論 的本質学」とに区分する。「一般本質学」は、十九世紀後半から二十世紀前半にかけて 伝統的哲学がおしなべて探求しようとした人間的、社会的事象の諸本質、すなわち諸主 題の意味・価値的探求を指すが、これに対して「超越論的本質学」は、フッサールによる 方法的原理化、すなわち「本質観取」の方法をともなう「本質学」を指す。この区分は本 論文を貫くライトモチーフといえるものであり、哲学における「一般本質学」を、「超越論 的本質学」として立て直すことが重要な課題として想定されている。 第四章 Miscommunication of Phenomenology: The Case of Martin Heidegger ハイデガーによるフッサール現象学の継承にかかわる諸問題が論じられる。論者によ れば、ハイデガー哲学は、フッサール現象学の存在論的発展と展開という重要な意義を もつが、一面で、普遍的認識の可能性の探求、あるいは信念対立の克服というフッサー ル現象学の根本動機を看過し、むしろこれを覆い隠すことになったという重要な欠陥を ももつ。 第五章 Max Scheler's Essentialism and Metaphysics as General Eidetic Science マックス・シェーラーもまたフッサール現象学の継承者の一人であり、「善」「道徳」「聖 なるもの」といった人間的諸価値の問題を探求した。しかしここでもやはり、フッサールの 方法化された「超越論的本質学」は見過ごされ、その本質学は「一般本質学」にとどまる。 ここでは人間学的諸主題が探求されるが、認識の普遍性の問題が見過ごされるゆえに、 諸価値についての信念対立を避けることができない。現象学の「本質学」を超越論的本 質学として立てなおすことの重要性が強調される。 第六章 Eidetic Seeing and the Teleology of Monads. 4.
(5) フッサールの後期著作(フッサリアーナ)における「モナドの目的論」という概念について の考察。「モナドの目的論」の概念は、しばしば『危機』書における「理性の目的論」とい う概念とあわせて、フッサール現象学の絶対認識への目論見を示す概念として批判さ れることがあるが、むしろこの概念は、とくに暴力原理を中心とする人間世界の諸矛盾 を克服してゆくべき哲学の歴史的課題を表現するもの、として論じられる。フッサール現 象学の根本動機について論じた章である。 第七章 The Phenomenological Language Game: The Original Contract of Goodness 現象学の「本質観取」および「本質学」の方法の可能性を、ウィトゲンシュタイン由来の 「言語ゲーム」の概念から考察する試み。現象学の「本質観取」の方法は一般にみなさ れているような主観主義的独断論ではなく、諸主題についての間主観的共通了解を探 求する開かれた「言語ゲーム」として見なすべきことを説く。ここで、論者は現象学の「本 質学」の方法は、間主観的共通了解(合意)を導く言語ゲームとみなされるかぎり、その 出発点には、言語ゲームに参加する者の間の暗黙の「善の原始契約」が存在しなけれ ばならないとする。ここは、つぎの第八章、第九章と並んでこの論文の中核をなす箇所 である。 第八章 The Confrontation between Essentialism and Constructionism ここでは、現象学的な「本質主義」と、“反本質主義”の立場をとる社会構成主義との連 関が考察される。一般に社会構成主義は、社会的諸事象についての「本質主義」を、被 差別者、弱者に特定の規定を与えることでこれらの人々の抑圧や排除に加担するもの として排撃する。論者は、伝統的な抑圧的制度や差別に対抗する社会構成主義の反本質主義を認めるが、現象学的な「本質主義」は、この一般的「本質主義」とはむしろ反 対に、社会的な抑圧や差別に対抗するための本質的な論拠、すなわち人権や弱者擁護 の正当性についての哲学的根拠を創出する「言語ゲーム」であることを主張する。 第九章 Essentialism and the Other: Two Vectors of Imagination 第八章の続きとみなされる。想像力の二つのベクトルというタイトルが示すように、哲 学や思想が社会問題に射程を伸ばすとき、他者への想像力ということがきわめて重要 な契機となる。ここでは、エマニュエル・レヴィナスの「超越的他者」と、ガヤトリ・スピヴァ クの「サバルタン」が主題とされ、その意義と問題点が考察される。両者は現代の社会 批判思想として重要な役割を果たしたが、レヴィナスの「他者」は、哲学的には独断的な 形而上学的性格を帯びており、「サバルタン」の概念は、社会構成主義につきまとう相対 主義的批判の弱点から現われた戦略といえる(戦略的本質主義)。論者によれば、現象 学の「本質主義」は、抑圧的に働く本質主義とは異なって、むしろ現代の批判思想が帯 びる形而上学的傾向と相対主義的性格の弱点を補いつつ、批判思想の正当性の根拠 づけへと展開される可能性をもつものである。 結論 The Idea of Phenomenology in the Present フッサール現象学における「本質観取」および「本質学」の概念の方法論的総括と、本 論文の中心動機の再確認。すなわち、哲学的方法としての現象学が、認識問題のみな らず、とくに社会的諸問題について、多様な人々の間の相互承認にもとづく間主観的合. 5.
(6) 意を創出する開かれた言語ゲームとしての意義をもつこと。またそのために、哲学と現 象学の領域における、現象学の本義についてのさらなる議論の深化が必要であること が主張される。 *評価および審査結果 本論文は、三つの大きな方向性をもっている。第一に、現象学の領域における新しい 現象学解釈の可能性の提示。第二に、これにもとづく「本質観取」「本質学」の方法の認 識論的意義の再確証。第三に、再解釈された現象学的方法を基礎として、これを社会 的実践的諸分野への応用という問題領域を開くこと。 この三つの中心主題のいずれについても、本論文は多くの文献を読み込んだ上でき わめて説得力ある議論を展開している。第一の現象学解釈だが、一読、フッサール、ハ イデガー、シェーラーなどきわめて難解とされる現象学領域の諸哲学者についての理解 の確かさと深さが読み取れるだけでなく、その読解が、広範な哲学史上の基礎教養の 上に支えられていることが分かる。 現象学の方法についての新しい解釈の提示については、指導教員の現象学説を基礎 としているとはいえ、本論の中でこの説を詳しく検証しつつ、「一般本質学」「超越論的本 質学」という自らのキーコンセプトによってこれをさらに推し進めており、その独創性には 疑えないものがある。現象学の本質観取の方法を「言語ゲーム」のアイデアと結びつけ るだけでなく、これに「善の原始契約」という概念を与えることで、現象学の意義を、間主 観的な共通合意の創出の哲学的方法として新しい角度から照らした点も、高く評価され ねばならない。 しかしなにより注目されるべき点は、フッサール現象学の「本質学」の構想を、認識論 的動機からさらに引き延ばし、現代の社会批判思想のもつ諸問題、とくに社会構成主義 の問題領域に関係づけることで哲学の新しい主題の圏域を提示した点である。その主 題の提示の独自性と重要性については、とくにこの問題領域を専門とする委員からも高 い評価が示された。 この論文の弱点を上げるなら、いくつかの箇所で議論がやや難解となり、それに応じ て考察が明快さを欠くところがあった。本質観取と本質学の解釈と解読についても、重 複が多く議論が冗長となる箇所もある。とくに「モナドの目的論」の箇所は、フッサールの 記述自体が晦渋をきわめるためもあり、おそらく一般読者にとっての説得力を十分にも つとは言い難い。しかしこの主題は、まだ英訳も邦訳もない後期フッサリアーナの箇所 から選ばれたものであって、その積極的意欲は評価に値する。 だが、全体を通読するなら、本論文の根本的な動機とその考察の独自性はきわめて 明快であり、かつ強い印象を与える。現象学研究を、伝統的な認識理論の枠内で論じる のではなく、現代の認識理論と社会理論における信念対立の問題に一石を投じるような 仕方で提示した点に、本論文の大きな功績がある。このことで本論考の議論は、単なる 哲学的議論の領域にとどまらず、社会学、政治学、現代思想の諸領域を横断しており、 それらの領域間の本質的な繋がりに明確な輪郭を与えることに成功している。とくにこ. 6.
(7) の点に、本論文が国際コミュニケーション学科の博士論文として意義をもつことが認めら れる。. (2) 口頭試問結果の要旨(各種質疑応答も含む) 本論文の口頭試問は、哲学、現象学および社会思想を専門とする三委員が精読した 上、2018 年 1 月 16 日、10:30 より一時間半にわたって行なわれた。まず主査から、論文 の中心をなすと思われる「超越論的本質学」「モナドと目的論」「言語ゲーム」などの重要 概念について説明が求められ、そのあと各委員から、領域の専門用語の理解度や論文 の中心動機などについて、さまざまな角度から質問がなされた。事前の論文精読におい て、各委員から本論文の動機と説得力について高い評価が与えられていたが、これに ついて本人から直接その理解度の感触をうるべく質問がなされた。とくに社会構成主義 と本質主義の関係については、この論文の核心点の一つでもあり、踏み込んだ議論が 行なわれたが、問題領域についての上述したような論者の着実な理解と明確な動機が よく伺われるものであった。 委員から二点修正の要請があったが、これに応じた論文の修正が行なわれたことは すでに確認されている。また、ithenticate による確認もなされている。 以上のような口頭試問の結果、三委員ともに、本論文が博士学位請求論文としての水 準を十分に満たしているという判断で一致し、これを受理することに全員一致で合意し た。. 7.
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