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(1)

問 題

  社 交 不 安 症(Social Anxiety Disorder;  以 下,

SADと す る ) は 他 者 の 注 視 を 浴 び る 可 能 性 のある1つ以上の社交場面に対する,著しい 恐怖または不安を特徴とする精神疾患である

(American Psychiatric Association, 2013)。 社 交 不安を示す者に対しては,認知行動療法に基づ く支援が主流とされている(Heimberg, 2002)。

社交不安に対するエクスポージャーにおける刺激呈示手続きの 差異が介入効果に及ぼす影響

―少人数の健常学生を対象としたパイロットスタディ―

増田 悠斗* 前田 駿太*, ** 佐藤 友哉*** 千先 純****

嶋田 洋徳

*****

要 約

 本研究の目的は,社交場面に対するエクスポージャーにおいて,脅威度の低い刺激から漸進的に曝露 を行なう「漸進的曝露」と,曝露する刺激の脅威度の変化をランダムにする「変動的曝露」の効果の 差異について,そのメカニズムとして想定される「脅威度の予測可能性」を考慮して比較することで あった。成人大学生および大学院生13名のデータを分析対象とした(女性3名,男性10名,平均年齢 22.2±1.2歳)。データ分析の結果,時期の主効果のみ有意であった。また,群間に統計的に有意な差は 見受けられなかったものの,脅威度の予測可能性が高い状態で行なわれた漸進的曝露において最も大き な効果が得られた。変動的曝露においては,脅威度の予測可能性による効果の差異は見受けられなかっ た。以上の結果から,エクスポージャーにおける刺激の呈示方法と,それぞれの呈示方法における適切 な教示について考察した。

キーワード:社交不安,エクスポージャー,パイロットスタディ

<資 料> 

*    早稲田大学大学院人間科学研究科

**  日本学術振興会特別研究員

***   新潟大学人文社会・教育科学系

****  特定非営利活動法人銀杏の会御茶ノ水発達セ ンター

***** 早稲田大学人間科学学術院

その中でもとりわけ,認知行動的技法の一つに 分類されるエクスポージャーの効果が広く報告 されている。エクスポージャーとは実際の不安 喚起場面に曝露することによって,不安の減衰 を図る方法である(城月・笹川・野村,2009)。

実際に社交不安症患者における現実場面へのエ クスポージャーの効果は大きい(Hedge’s g  =  -.83, 95% CI:  [-1.07,  -.59])ことが近年のメタ分 析によって明らかにされている(Mayo-Wilson,  Dias, Mavranezouli, Kew, Clark, Ades,  & Pilling,  2014)。しかしながら,それでもなお,治療効 果が十分に得られていない者の存在は指摘され ており(Mayo-Wilson et al., 2014),支援方法の さらなる洗練が必要とされている現状にあると 考えられる。

(2)

 このような背景をもとに,近年,エクスポー ジャーの効果の向上をねらった基礎研究が多く なされつつある。たとえば,不安症に対するエ クスポージャーの分野において,曝露刺激の脅 威度に変動性をもたせたエクスポージャー(以 下,変動的曝露とする)の効果が検討されてい る。Craske, Liao, Brown, & Vervliet(2012)は,

いわゆる「従来の」エクスポージャーは,不安 階層表において最も低い脅威度を持った刺激へ の曝露から開始する点と,十分に不安反応が減 少するまで同じ刺激への曝露を何度も繰り返し た上で次の刺激レベルへと移る,漸進的な曝露 を行なう点に特徴がある(以下,これを漸進的 曝露とする)としている。一方,変動的曝露は,

不安階層表からランダムに選ばれた脅威刺激に 対し曝露を行なう手続きを繰り返し,不安や恐 怖の減少には注目しない。不安症に対する複数 の研究において,エクスポージャーにおける刺 激の変動性が,自発的回復に好ましい影響を 与えることが示された(Rowe  & Craske, 1998) ほか,変動的曝露が,日常への般化をより生起 させやすくする(Tsao  & Craske, 2000)可能性 も示唆されている。また,エクスポージャー手 続き中に感じる恐怖が変動した場合,不安反応 の減少が大きいことが示されており(Kircanski,  Mortazavi, Castriotta, Baker, Mystkowski, Yi,  & 

Craske,   2012),刺激を変動させることで知覚 される恐怖が変動し,結果的に不安の低減が起 こる可能性も考えられる。このように,変動的 曝露は不安症に対し高い効果を持つ可能性が示 されているものの,社交不安に及ぼす影響を検 討した研究は行なわれていない。

 また,この変動的曝露が高い効果を示す機序 についての実証的検討に関する検討もほとんど なされていないのが現状であると考えられる。

具体的に想定される機序として,変動的曝露に おける刺激の脅威度の予測可能性の低さが挙げ られる。すなわち,変動的曝露においては漸進

的曝露と比較して,クライエントが次に曝され る刺激の脅威度を予測することが困難であるこ とが,変動的曝露独自の作用機序として,治療 効果を高める可能性があると考えられる。しか しながら,変動的な曝露が漸進的な曝露と比較 して高い効果をもつか否かの検討はなされてお らず,また両者の作用機序の違いは実証されて いない。そこで本研究では,変動的曝露の作用 機序を明らかにするため,予測可能性を操作す る手続きが,漸進的曝露および変動的曝露の不 安低減効果に及ぼす影響を検討する。

 本研究における仮説は以下の2点とした。

 1.曝露の対象となる刺激が教示によって予 測可能である場合,曝露の対象となる刺激の脅 威度を漸進的に高めていく「漸進的曝露」条件 と,刺激の脅威度に関わらず無作為な順番で曝 露させる「変動的曝露」条件の間でエクスポー ジャーによる不安の低減効果に差はみられない だろう。

 2.曝露の対象となる刺激が予測不可能であ る場合,「漸進的な曝露」条件よりも「変動的 な曝露」条件においてエクスポージャーによる 不安の低減効果が大きいだろう。

 なお,本研究では健常な大学生や大学院生を 研究参加者として計画しており,直接的には臨 床群における社交不安を扱っていない。しかし ながら,社交不安症においては,臨床群におけ る社交不安と健常者における社交不安の間に 連続性があることが示唆されており(Stopa  & 

Clark, 2001),非臨床群を対象として社交不安 の検討を行なうことは,社交不安の心理的プロ セスを明らかにする方法としてある程度有用で あると考えられる。

方 法 実験参加者

 早稲田大学に所属する成人大学生および大学

(3)

院生14名に対して実験を行ない,実験手続き に不備があった1名を除外した13名(女性3名,

男性10名,平均年齢22.2±1.2歳)を最終的 な分析対象とした。実験前に(a)病気やけが がないこと,(b)服薬をしていないこと,(c)

極度の疲労や睡眠不足がないこと,(d)心理療 法やカウンセリング経験がないこと,(e)トラ ウマティックな体験がないこと,(f)複数日に わたる他の実験への参加をしていないことを確 認した。

実験計画

  群2( 漸 進 的 曝 露, 変 動 的 曝 露;between)

×予測可能性2(高,低;between)×時期2(pre,

post;within)の3要因混合計画であった。

調査材料

社 交 不 安 傾 向 Liebowitz Social Anxiety Scale  日本語版(LSAS-J;朝倉・井上・佐々木・佐々 木・ 北 川・ 井 上・ 博 田・ 伊 藤・ 松 原・ 小 山 ,  2002)を用いて測定した。LSAS-Jは,24項目 の社会的行動について,恐怖感・不安感を0(全 く感じない)〜3(非常に強く感じる)で,回 避するかを0(全く回避しない)〜3(回避する;

2/3以上)で回答する質問紙であった。本研 究においては,実験参加者の記述的特徴として の社交不安傾向の評価のために用いた。

スピーチ時の主観的不安 VASを用いて測定 した。スピーチが終了した直後に実施し,ス ピーチ中に感じた不安について0〜100点で得 点化することを求めた。本研究では,エクス ポージャーを実施した前後で,スピーチ中の不 安がどのように変化するかを測定する目的で使 用した。

手続き

 実験は個別に行なわれた。参加者は健康アン ケートおよびLSAS-Jへの記入を行なった後,

発汗計の装着と10分間の安静期間を経て,pre 測定としての3分間のスピーチ課題を行ない,

スピーチ中の主観的不安について回答した。な

お,本実験で用いたスピーチ課題においては,

予め以下の6つスピーチのテーマを用意し,参 加者間でカウンターバランスをとった。用意し たスピーチのテーマは,「あなたの学業につい て」,「あなたの大学での課外活動について」「あ なたの高校生活について」,「あなたの中学校生 活について」,「あなたの将来について」,「あな たの得意なことについて」,であり,各スピー チの直前に口頭にて教示した。スピーチの準備 時間は1分間とした。また,より効果的に不安 を喚起することを意図して,スピーチ中の様子 はビデオで撮影した。その後,社交状況に関連 するGo/ No-go Association Task(GNAT;大月・

松下・井手原・中本・田中・杉山,2008)を実 施した。GNAT終了後に,各条件に対応するエ クスポージャーを実施した。その後,post測定 として3分間のスピーチ課題を行ない,スピー チ中の主観的不安について回答し,再度 GNAT を実施した。最後にリラクセーションおよびデ ブリーフィングを行なって実験は終了した。

 本研究では,エクスポージャーとして5分間 のスピーチを連続して3回行なう課題を実施し た。3回のスピーチでは,スピーチごとに聴衆 の人数を変化させた。Sawyer & Behnke (2002) において,聴衆の人数を10人から30人までの 間で5人ごとに増やした際に,聴衆の人数が多 いほどスピーチに伴う状態不安得点が高まるこ とが明らかにされている。このため本研究で は,スピーチ中の脅威度を操作するために,聴 衆の人数を変化させることとした。漸進的曝露 条件では,曝露刺激の脅威度を漸進的に高める ため,聴衆の人数を1回目のスピーチで1人,

2回目のスピーチで3人,3回目のスピーチで 5人とした。変動的曝露条件では曝露刺激の脅 威度を非漸進的に変化させるため,聴衆の人数 を1回目のスピーチで5人,2回目のスピーチ で1人,3回目のスピーチで3人とした。また,

エクスポージャーにおける曝露刺激の予測可能

(4)

性を操作するため,予測可能性高群では,上記 の聴衆人数の変化スケジュールを,スピーチ課 題実施前に口頭および図示により教示した。一 方予測可能性低群では,聴衆人数の変化スケ ジュールを教示しないことで予測可能性を低め た。

データ解析

 スピーチ時の主観的不安のVAS得点を従属 変数とした,群2(漸進的曝露,変動的曝露)

×予測可能性2(高,低)×時期2(pre,post)

の3要因分散分析を行なった。統計的解析は IBM SPSS Statistics 23によって行なった。加え て,本研究は少人数データによるパイロットス タディであり,十分な検定力が確保できていな い可能性が考えられるため,補助的指標として 群内の変化に関する効果量(Cohen’s d)を併 せて算出した。発汗データおよびGNATデー タに関しては,測定不備による欠損が多く見受 けられたため,本論文における分析からは除外 した。

倫理的配慮

 本研究は第1著者の所属機関における「人を 対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承 認を得て行なった(承認番号:2013-143)。対 象者には,実験参加は自由意思によるものであ り,不参加や中断によって一切の不利益な対応 を受けることがないことについて十分な説明を

行なった。そして,実験の実施に際しては書面 によるインフォームドコンセントを得た。

結 果

実験参加者に関する記述的特徴

 各群における参加者の記述的特徴はTable  1に示した。なお,社交場面へのエクスポー ジャーの効果に影響を及ぼしうる社交不安の程 度については,群間で有意な差は見受けられな かった(F (3, 9) = .58, p = .64)。

参加者全体におけるエクスポージャーの効果  まず,参加者全体において,本研究における エクスポージャー手続きによってスピーチ中の 不安が軽減したことを確認するために,スピー チ中の主観的不安を従属変数,時期を独立変 数とした対応ありのt検定を行なった。その結 果,エクスポージャー手続きの前後で,スピー チ中の主観的不安は有意に低減していた(t 

(12) = 4.34, p  =  .00)。このことから,本研究 におけるエクスポージャー手続きは主観的不安 を軽減する効果を有しているものと判断した。

各条件におけるエクスポージャーの効果  次に,各条件間のエクスポージャーの効果 の差異を検討するために,不安VAS得点につ

いて,群2(漸進的曝露,変動的曝露)×予測

可能性2(高,低)×時期2(pre,post)の3 Table 1  

各群における参加者の記述的特徴

予測可能性高 予測可能性低 予測可能性高 予測可能性低

( N = 3) ( N = 4) ( N = 3) ( N = 3)

年 齢 22.33(.58) 21.75(1.25) 22.67(.58) 22.33(2.52) 性 別

男 性 1 3 3 3

女 性 2 1 0 0

LSAS 47.67(8.58) 52.25(36.81) 26.33(13.02) 32.33(23.34)

漸進的曝露 変動的曝露

(5)

要因混合計画の分散分析を行なった。その結 果,時期の主効果のみ有意(F (1, 9) = 9.00, p 

= .004)であり,preにおける不安VAS得点が,

postにおける同得点と比較して有意に高いこと が示された(Figure 1)。このように統計的に有 意な群間差はみられなかったものの,本研究は 少人数によるパイロットスタディであるため,

十分な検定力を確保できていない可能性がある ことも考慮し,各群におけるエクスポージャー 前後の不安の変化量に関する効果量(Cohen’s  d)も算出した。その結果,予測可能性高条件 の漸進的曝露群において,最も大きなスピーチ 中の不安の低減がみられた(d = 2.22)。この値 は予測可能性低条件の漸進的曝露群における値

(d  =  .99)よりも大きなものであった。変動的 曝露群においても同様に効果量を算出したとこ ろ,予測可能性の条件にかかわらず,ほとんど 効果の大きさに差は見受けられなかった(予測 可能性高:d = 1.47;予測可能性低:d = 1.57)。

考 察

 本研究の目的は,社会的場面へのエクスポー ジャーとして漸進的曝露と変動的曝露を実施し

た際に,スピーチ中の不安に与える効果の差異 を検討すること,および,その効果の差異に脅 威度の予測可能性が及ぼす影響を検討すること であった。

 実験の結果として,本研究におけるエクス ポージャーは総体としてスピーチ中の不安反応 を低減させたものの,エクスポージャーにおけ る刺激の呈示方法や教示による脅威度の予測可 能性の操作による,統計的に有意な介入効果の 差異は見受けられなかった。それぞれの手続き 別の効果の大きさとしては,予測可能性が高い 漸進的曝露条件において最も大きな効果がみら れ,次いで変動的曝露条件における効果が大き く,予測可能性の低い漸進的曝露条件における 効果はもっとも小さかった。このことから,予 測可能性が高い場合,漸進的曝露条件と変動的 曝露条件に効果の差異はないという仮説1は支 持されなかった。また,予測可能性が低い場 合,変動的曝露条件は漸進的曝露条件よりも大 きな効果が得られるという仮説2に関しても,

統計的に有意な差が観察されるには至らず支持 されなかった。

 本研究におけるこのような結果は,不安階層 表を作成して,最も低い脅威度を持った刺激へ Figure 1.  各条件におけるエクスポージャー前後のスピーチ中の不安の変化。     

**p<.05 

不安VAS得点

          post     

10 

0 20 

30 

40 

50 

60 

70

       

漸進,予測可能性高  漸進,予測可能性低  変動,予測可能性高  変動,予測可能性低 

**

pre       

(6)

の曝露から漸進的に曝露を進めていく,いわゆ る「従来の」エクスポージャーに相当する手続 きが最も大きな効果を有すると解釈できるも のと考えられる。従来このようなエクスポー ジャーの手続きが臨床実践において代表的に用 いられてきた背景の1つとしては,負荷の低い 刺激から漸進的に進めていくことによって対象 者の治療に対する動機づけを維持し,対象への 能動的な曝露を十分に達成するという狙いがあ ると考えられる。このことをふまえると,漸進 的に曝露を進めていくにあたっては,その手続 きに関する事前の十分な説明が必要であると考 えられる。実際に,漸進的曝露を行ないつつも 刺激の変化スケジュールについての教示を行な わなかった予測可能性低条件においては,その 不安低減効果は予測可能性高条件と比較して著 しく小さいものとなった。本研究の手続きで は,それぞれの段階における呈示刺激が各参加 者においてどのような脅威度を有しているのか を必ずしも評価できてはいないものの,これら の結果は,単に脅威度を漸進的に増加させてい く手続きが単独で効果の高さにつながるわけで はなく,その手続に関する理解と動機づけが効 果の向上に繋がる可能性を示唆するものである と考えられる。

 以上のように,本研究における群間の比較の 結果としては,従来代表的に行なわれてきた漸 進的曝露の手続きの有効性が裏づけられたもの と考えられる。しかしながら,心理臨床場面に おける適用を視野に入れた場合,それでもなお 変動的曝露の手続きが有用となるケースは存在 すると考えられる。たとえば,社交不安症を示 す患者において,同じ基礎的不安を惹起し,目 標に関係した不安を引き起こすような多様な難 易度のステップを作ることはとりわけ難しいと いう指摘が存在する(Andrews, Creamer, Crino,  Hunt, Lampe, & Page, 2002 古川監訳 2003)。す なわち,このような場合,不安階層表に基づく

漸進的曝露は適用することそのものが困難とな る。このような場合においては,変動的曝露の 観点に基づく手続きは一定の有効性を示す可能 性がある。特に,変動的曝露が効果を示すメカ ニズムとして想定される,場面に共通する中核 的特徴を意識させながら曝露することを意図し た,心理教育を導入するなどの工夫を取り入れ ることによってその効果を促進できる可能性が ある。

 なお,変動的曝露の効果を実証的に検討した 研究はいまだほとんど見受けられないため,本 研究は少人数によるパイロットスタディという 形態で実施された。したがって,有意性検定の 結果として群間差を検出できなかったことも含 めて,知見の一般化には限界があると考えられ る。また,社交不安の程度による対象者のスク リーニングを行なっていないという点も限界点 として挙げられる。本研究においては,カット オフ値を超えているかどうかにかかわらず,ス ピーチ場面における不安をベースラインからい かに減じることができるかに焦点を当ててい た。しかしながら,この点に関しては,不安症 の臨床像を適切に記述できていない可能性が残 る。加えて,群間で社交不安の程度に統計的に 有意な差は見受けられなかったものの,この群 間差がみられなかったことも検出力の低さに起 因している可能性は否定できない。実際に,漸 進的曝露群における平均値のみが健常群と臨床 群を弁別するカットオフポイント(42点;朝 倉他,2002)を超えており,このことが効果に 影響している可能性も否定できない。本研究の 知見を一般化するために,今後は十分なサンプ ルサイズを確保し,参加者のスクリーニングを 行なった上で追試を行なうことが望ましいと考 えられる。さらに,脅威度を操作するために用 いた手続きが必ずしも十分に妥当性が高いとは 言えないことも,本研究の限界の一つである。

本研究ではスピーチの脅威度を操作するための

(7)

手続きとして,スピーチの聴衆の人数を1人か ら5人までの間で変動させた。この点に関して は,聴衆が多いほどスピーチの際の脅威度が高 まることを示す先行研究(Sawyer  & Behnke, 2002)にもとづいて当該の手続きを用いたが,

聴衆の具体的な人数と脅威度との関係性が直接 的に明らかにされているわけではないことか ら,今後の検討の余地が残る。

 以上のような課題を有しているものの,社交 不安を対象として,漸進的曝露と変動的曝露の 効果を比較した知見として本研究は一定の意義 を有していると考えられる。今後の研究におい ては,上述のようにより頑健な研究デザインの もとに本研究の知見を裏づけるとともに,変動 的曝露の実際の臨床場面への取り入れも視野に 入れた検討が有用となると考えられる。特に,

変動的曝露を実践するにあたって,曝露対象の 設定や,その際の心理教育などについてはほと んど体系化がなされていないのが現状である。

このような方法論の整備を経て,最終的には対 象者の臨床像や介入への動機づけも加味しなが ら,より対象者にマッチした曝露手続きを行な うことが介入効果の向上につながると考えられ る。

引用文献

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American Psychiatric Association. 

Andrews, G., Creamer, M., Crino, R., Hunt, C.,  Lampe, L., & Page, A. (2002).The treatment of anxiety disorders: Clinician guides and patients manuals. 2nd ed. United Kingdom:  Cambridge University Press.

       (アンドリュース,G.・クリーマー,M.・

クリーノ,R.・ハント,C.・ランプ,L.・

ペイジ,A.・古川  壽亮(監訳)(2003).

不安障害の認知行動療法(2)社会恐怖<

不安障害から回復するための治療者向けガ イドと患者さん向けマニュアル>)

朝倉  聡・井上  誠士郎・佐々木  史・佐々木  幸 哉・北川 信樹・井上 猛…小山 司(2002).

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(9)

Effect of Exposure Techniques Using Different Stimulus Presentation Procedures on Social Anxiety:

A Pilot Study with a Small Healthy Student Sample

Yuto MASUDA*, Shunta MAEDA*

,

**, Tomoya SATO***, Jun SENSAKI****, and Hironori SHIMADA*****

*Graduate School of Human Sciences, Waseda University

** Research Fellow of Japan Society for the Promotion of Science

*** Institute of Humanities, Social Sciences and Education, Niigata University

**** NPO Ginnan Ochanomizu Development Center

***** Faculty of Human Sciences, Waseda University

Abstract

 The present study compared the effects of two different types of exposure techniques: “gradual

exposure” where the level of threat gradually increases, and “random and variable exposure”

where the level of the threat varies randomly and does not follow along sequence. We also considered the effect of threat predictability, which potentially moderates the effect of these two exposure techniques. The data of 13 university students(3 females, 10 males, mean age = 22.2

±1.2) was subjected to analysis. Statistical analysis provided only signifi cant main effect of time.

However, the most profound effect was observed in “gradual exposure” condition with high level of threat predictability. The effects in “random and variable exposure” were similar regardless of threat predictability. Based on these results, the optimal way of stimulus presentation and instruction in exposure was discussed.

Key words:

social anxiety, exposure, pilot study

(10)

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