図19 に L18 直交表による寄与解析の結果を示す.分散分析 の精度を上げるため,寄与が極めて微小であった一般面オフ セットと嵌合部肉厚はプーリングした.分散分析表における 誤差の寄与率は2.7%であり,クリープ速度に対して寄与の高 い設計因子は選択していると判断できる.寄与解析の結果, 今回の水準の範囲では外輪径,転動体の数の2 つの因子の寄 与が約85%を占めている.ケースの設計因子の寄与は約 15% と小さいことがわかった.よって,クリープ速度はベアリン グの外輪径(外輪肉厚)と転動体の数によりほぼ決定される.
Fig.19 Result of contribution analysis to creep speed
4.寄与解析結果の実機検証
図8 に示す試験機で寄与の高い外輪径,転動体の数,およ
び,寄与の低かったリブパターンを抽出して寄与解析につい て検証を行った.設計水準の範囲は加工や試験機の剛性を考 えて調整を行った.
図20-22 に Deep groove ball bearing 6208 を基準とし,外輪径, 転動体の数,リブパターンのそれぞれの設計因子の水準に対 するクリープ速度の関係を試験した実測結果を示す.各設計 水準に対するクリープ速度の変化の範囲を破線で示している. 寄与が大きいとされた外輪径,転動体の数に対するクリープ 速度の変動の範囲と比べて,リブパターンに対するクリープ 速度の変動の範囲は明らかに小さく,今回得られた寄与解析 結果は妥当と判断できる. 0 1 2 3 78 79 80 81 82
Outer ring diameter [mm]
Cre
ep s
pe
ed ra
tio
Fig. 20 Creep speed ratio on Outer ring diameter
0 1 2 3
7 9 11
Number of bearing element
Cre
ep s
pe
ed ra
tio
Fig. 21 Creep speed ratio on Number of bearing element
0 1 2 3 Rib pattern Cre ep s pe ed ra tio
Non rib Rib pattern1 Rib pattern2
Fig. 22 Creep speed ratio on Rib pattern 5.ま と め 2D の解析モデルにてクリープ発生のメカニズムの検証を 行った.検証の結果,外輪のひずみに起因する進行波が発生 している根拠となる外輪表面の楕円運動を観測した.また, 転動体と外輪の間の接触による摩擦力の引き摺りがない状態 を模擬し,進行波のみでも外輪の移送が発生しクリープが起 こることを確認した. 任意のベアリングの使用条件を基準とした,相対的なクリ ープ速度を予測できる3D の解析モデルを確立した.この解析 モデルと実験計画法を用いて,クリープ速度に対する設計因 子の寄与解析を行った結果,ベアリングの寄与が大きく,ケ ースの寄与が小さいことがわかった.実機による評価により, 寄与解析の結果の妥当性について確認できた. 参 考 文 献 (1)展 健軍, 坂尻 義晃, 武村 浩道, 湯川 謹次 :軸受外輪クリ ープの発生メカニズム, NSK Technical Journal, No.680, p.13- 18 (2006) (2)丹羽 健:転がり軸受のクリープメカニズム:日本トライボ ロジー学会トライボロジー会議予稿集, p.253-254 (2012)
Pt フリー液体燃料電池の電極触媒開発
*
岸 浩史1) 坂本 友和2) 朝澤 浩一郎3) 田中 裕久4)松村 大樹5)田村 和久6)西畑 保雄7) セロフ アレクセイ 8)アタナソフ プラメン 9)Development of Electrocatalysts for Platinum-free Liquid-feed Fuel Cells
Hirofumi Kishi Tomokazu Sakamoto Koichiro Asazawa Hirohisa Tanaka Daiju Matsumura Kazuhisa Tamura Yasuo Nishihata Alexey Serov Plamen Atanassov
The performance of fuel cells depends on catalytic activity strongly. The interaction between catalytic activity and iron chelate (Fe-N-C) structure applying Rotating Ring-Disk Electrode (RRDE), evaluation of MEA performance, Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy (HAXPES) and in-situ X-ray Absorption Spectroscopy (XAS). From the results of the investigations, it is confirmed that Fe is one of the active sites and find that the pyrrolic nitrogen structure enhances the catalytic activity.
KEY WORDS: EV and HV systems, liquid fuel cell, hydrazine hydrate, platinum-free, cathode catalyst (A3)
1.ま え が き 高効率なエネルギー変換技術として燃料電池の研究開発が 進められており,水素燃料電池車は2015 年の市販を間近にし ている.我々は低コストでコンパクトな燃料電池の実現を目 指し,国内外の大学・研究機関と連携し,貴金属フリー液体 燃料電池(PMfLFC)の研究開発を進めている(1).従来の水素 燃料電池との違いを図1 に示す.
Fig.1. Schematics of conventional fuel cell and PMfLFC (2)
このPMfLFC の特長として電解質膜がアルカリ性であるた め,ニッケル(Ni),コバルト(Co),鉄(Fe)などの安価 な電極触媒を使用できる.燃料である水加ヒドラジンは常温 常圧で液体であるため,エネルギー密度が高い.また,ガソ リン同様に容易な方法でタンクへの燃料充填が可能と考えら れ,既存のインフラを活用できることが期待される. それぞれの燃料電池の反応式を以下に示す.水加ヒドラジ ン燃料電池は1.61V と高い理論起電力を有する. 水加ヒドラジン燃料電池(アニオン形) 理論起電力:1.61V アノード反応 : N2H4 + 4OH- → N 2 + 4H2O + 4e- カソード反応 : O2 + 2H2O + 4e-→ 4OH- 全反応 : N2H4 + O2 → N2 + 2H2O 水素燃料電池(プロトン形) 理論起電力:1.23V アノード反応 : H2 → 2H+ + 2e- カソード反応 : 2H+ + 1/2O2 + 2e- → H 2O 全反応 : H2 + 1/2O2 → H2O 我々はこれまでにアノード,カソード共に貴金属フリー触 媒の開発に取り組んでおり,今回はカソード電極触媒の開発 について述べる. 2.貴金属フリーカソード電極触媒の開発の歴史 貴金属フリーカソード電極触媒は,酸化物(3)や窒素ドープカ ーボン(4),カーボンナノチューブ(5)など,様々な検討がなされ てきた.我々が注目している窒素配位した金属キレート電極 触媒は1964 年の Jasinski らによる活性の発見(6)を起点として 様々な研究がなされてきた.我々は金属キレート電極触媒の 一種であるコバルトキレート電極触媒(コバルトポリピロー ル:CoPPyC)(7)をアニオン形に応用し,飛躍的に発電性能が 向上することを報告した(8, 9).さらに,その酸素還元反応のメ カニズムについて解析し,プロトン形では溶解してしまうコ バルト粒子が反応を促進していることを見出した(10, 11). *2014 年 3 月 31 日受理.2014 年 5 月 21 日自動車技術会春季学術講演会におい て発表. 1)・2)・3)・4) ダイハツ工業㈱(520‐2593 滋賀県蒲生郡竜王町大字山之上 3000 番地) 5)・6)・7) 日本原子力研究開発機構(679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都 1-1-1)
8)・9) The University of New Mexico (MSC011120, 1 University of New Mexico, Albuquerque, NM 87131-0001)
本研究では,さらなる電極触媒の活性向上を狙った鉄キレ ート電極触媒の開発に取り組んできた(12, 13).その鉄キレート 電極触媒について放射光解析を用いた反応メカニズムの解明 と性能発現に有効な化学構造の解明を行った. 3.実験方法 3.1. 電極触媒の合成方法 キレート構造は金属原子が窒素原子などに配位している. 今回用いたキレート構造は鉄を窒素に配位させるため,窒素 を含んだ前駆体を用いた.前駆体としては,アミノアンチピ リ ン (Aminoantipyrine ) お よ び フ ェ ナ ン ト ロ リ ン (Phenanthroline)を用いた.合成した電極触媒は以降,それ ぞれFeAAPyr,FePhen と記載する.
FeAAPyr は硝酸鉄(SIGMA-ALDRICH 製,Fe(NO3)3·9H2O),
アミノアンチピリン(SIGMA-ALDRICH 製,C11H13N3O), シリカ(Cabot 製,M5)を混合し,窒素雰囲気下で 600℃,800℃, 900℃の 3 水準で焼成した.焼成後,余分な鉄成分およびシリ カはフッ化水素水溶液で除去した(14). FePhen は酢酸鉄(東京化成工業製,C4H6O4Fe),1,10-フ ェナントロリン(東京化成工業製,C12N2H8),カーボンブラ
ック(Cabot 製,BLACK PEARLS)を混合し,窒素雰囲気下
で800℃,900℃,1000℃の 3 水準で焼成した. 3.2. 電極触媒の活性測定
回転リングディスク電極(Rotating Ring-Disk Electrode: RRDE)を用いて酸素還元の活性を測定した.電極触媒とアイ オノマーを有機溶媒中に分散し調製したインク(①1次イン ク:触媒10mg,超純水 0.8mL,2-プロパノール 0.2mL ② 2次インク:1次インク0.1mL,超純水 0.75mL,2-プロパ ノール0.1mL,0.5w%ナフィオン溶液 0.05mL として混合した ②2次インクを使用)をグラッシーカーボン上に滴下し,測 定電極(担持量0.51μg/mm2)とした.測定電極は酸素で飽和 した1mol/L 水酸化カリウム(KOH)水溶液を入れた 3 電極型 セルで酸素還元電流を測定した.参照電極には水銀-水銀酸 化物電極(Hg/HgO),カウンター電極には白金線を用いた. 測定温度は 30℃で,回転数は 1600rpm とした.走査速度は 0.01V/s とし,高電位から低電位に向けて走査した.リファレ ンスとしてPt/C 電極触媒(田中貴金属製,TEC10V50E)を用 いた. 3.3. 発電性能測定 電極触媒(カソード:FeAAPyr または FePhen,アノード: Ni)とアイオノマー(トクヤマ製,AS-4)からなる触媒イン クを電解質膜(トクヤマ製,A201)に直接スプレーし,膜電 極接合体 (電極面積:4cm2)を形成した.電極触媒の担持量 はカソード:1mg/cm2,アノード:2.6mg/cm2とした.カソー ドにはエアを500 mL/min,50℃で供給し,アノードには 1M KOH と 1M N2H4・H2O の水溶液を 2mL/min,50℃で供給した. セル温度は80℃とし,背圧はカソード 60kPa,アノード 10kPa とした. 3.4. HAXPES による電極触媒の組成分析 高エネルギーの X 線を利用した硬 X 線光電子分光(Hard
X-ray Photoelectron Spectroscopy : HAXPES ) は ラ ボ XPS
(1.5keV)に比べて検出深さが深いことが特徴である(15).サ ンプルの固定には,銅版に直径2mm の穴をあけて,そこに電 極触媒粉末を押し込むことでサンプルを形成した.入射エネ ルギーは7.94keV,光電子出射角度は 80°で,電極触媒中を構 成する鉄,窒素,炭素,酸素についてSPring-8 の BL46XU で 光電子スペクトルを測定した. 3.5. in-situ XAS による反応メカニズムの解析 反応中の鉄原子の配位数・価数変化を測定するため,その 場X 線吸収解析(in-situ X-ray Absorption Spectroscopy:XAS)
(16)をSPring-8 の BL14B2 で行った.FeAAPyr および FePhen は
アイオノマー(トクヤマ製,AS-4)と混合したインクを作製 し,それをカーボンペーパー上に塗布し電極を形成した.電 極をセットするセルは3 電極型であり,リファレンス電極に はHg/HgO,カウンター電極には白金線を用い,ポテンシオス タットで電位を制御した.電位は0.324 V,0.524 V,0.724 V, 0.924 V,1.174 V(vs RHE)の 5 水準とした.触媒の初期状態 を電解液供給前に把握した後に酸素を電解液中にバブリング し,溶存酸素として供給した.19 素子 SSD 検出器を使用した 蛍光法によりFe-K 端の測定を行った. 4.結果と考察 4.1. 電極触媒の活性測定
RRDE による FeAAPyr の測定結果を図 2 (a),FePhen の測定
結果を図2(b)に示す(電位は RHE に換算した).この測定結
果から電流値:10-5A の電位を反応開始電位(Kick off potential)
とし,電流変化が半分起こった電位である半波電位(Half wave potential)についてまとめた結果を図 3 に示す. 焼成温度で比較すると,600~900℃の範囲においては FeAAPyr,FePhen ともに高温で焼成することで反応開始電位 および半波電位の向上がみられた.これは前駆体のグラファ イト化が進み,キレート構造周辺の電子伝導性が向上したた めと考えられる.FePhen の 900℃と 1000℃は同程度の性能で あったため,900℃以上の熱処理ではそれ以上グラファイト化 が進んでいないと考えた.前駆体の影響は大きく,FeAAPyr は反応開始電位が1.01V と,リファレンスの Pt/C 触媒の 0.98V を大きく上回る活性を示した.それぞれの前駆体において, 最も活性の高い 900℃の結果で比較したところ,FeAAPyr (900℃)は FePhen(900℃)よりも高活性であった.半波電 位についてもFeAAPyr(900℃)は Pt/C 触媒と同程度の性能 を示した. 図2 (a)における限界電流の勾配,(b)における限界電流のば らつきはそれぞれ電極触媒活性種の状態変化および電極触媒 表面構造の違いに由来すると推察するが,より詳細な解析が 必要である.
Fig. 2. Linear sweep voltammetry profiles
0.70 0.76 0.82 0.88 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05
FeAA
(900℃
FeAAPyr
(800℃)
FeAAPyr
(600℃)
FePhen
(900℃)
FePhen
(1000℃)
FePhen
(800℃)
Pt/C
4.2. 発電性能測定 発電性能測定の結果を図4 に示す.最大出力密度はFeAAPyr (900℃)と FePhen(900℃)でそれぞれ 355,301mW/cm2で ありFeAAPyr(900℃)が 54 mW/cm2高い結果となった.OCV はそれぞれ0.83,0.78V と FeAAPyr(900℃)の OCV が 0.05V 高い結果となった.FeAAPyr(900℃)の高い触媒活性が OCV に現れ,発電性能の向上に寄与しているといえる. 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0 200 400 600 800 1000 1200 1400Current density (mA/cm2)
Vo lt ag e ( V ) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 P o w e r de ns it y (m W / cm2) FeAAPyr (900℃) FePhen (900℃)
Fig. 4. I-V and I-W curves 4.3. HAXPES による電極触媒の組成分析 FeAAPyr(900℃)と FePhen(900℃)の測定で得られた N1s スペクトルを図5 (a) および (b)に示す.活性に寄与する構造 は五員環の窒素構造(Pyrrolic),六員環の窒素構造(Pyridinic) ということがこれまで示されている(17).高活性な FeAAPyr (900℃)は FePhen(900℃)に比べて Pyrrolic が多いことが 分かった.高活性な触媒に Pyrrolic の割合が多い傾向は FeAAPyr の焼成温度(600℃,800℃,900℃)の違いにも現れ ており Pyrrolic な窒素構造が触媒活性の向上要因のひとつで あると推察される. 395 397 399 401 403 405 395 397 399 401 403 405 △:FeAAPyr(600℃) ○:FeAAPyr(800℃) □:FeAAPyr(900℃) ○:FePhen(800℃) □:FePhen(900℃) ◇:FePhen(1000℃) Pyrrolic
Binding energy (eV) (a) FeAAPyr(900℃)
Binding energy (eV) (b) FePhen(900℃) Fig. 5. N1s spectra In te ns it y ( a. u. ) In te ns it y ( a. u. ) Quaternary Graphitic Nx-Me Pyridinic Nitrile Pyrrolic Quaternary Graphitic Nx-Me Pyridinic Nitrile
Kick off potential (V vs RHE)
Fig. 3. RRDE results of FeAAPyr, FePhen and Pt/C
C
ur
re
nt
/ 1
0
-4A
C
ur
re
nt
/ 1
0
-4A
H
al
f w
av
e
po
ten
tial
(V v
s R
H
E)
Potential (V vs RHE) (b) FePhen Potential (V vs RHE) (a) FeAAPyrC
urren
t(
10
-4A
)
C
urren
t (
10
A
-4)
Current density (mA/cm2)
Pow
er densit
y
(m
W
/c
m
2)
)
(V
ge
Vo
lta
FeAAPyr (600℃) FePhen (800℃) FeAAPyr (900℃) FePhen (1000℃) Pt/C FeAAPyr (800℃) FePhen (900℃)本研究では,さらなる電極触媒の活性向上を狙った鉄キレ ート電極触媒の開発に取り組んできた(12, 13).その鉄キレート 電極触媒について放射光解析を用いた反応メカニズムの解明 と性能発現に有効な化学構造の解明を行った. 3.実験方法 3.1. 電極触媒の合成方法 キレート構造は金属原子が窒素原子などに配位している. 今回用いたキレート構造は鉄を窒素に配位させるため,窒素 を含んだ前駆体を用いた.前駆体としては,アミノアンチピ リ ン (Aminoantipyrine ) お よ び フ ェ ナ ン ト ロ リ ン (Phenanthroline)を用いた.合成した電極触媒は以降,それ ぞれFeAAPyr,FePhen と記載する.
FeAAPyr は硝酸鉄(SIGMA-ALDRICH 製,Fe(NO3)3·9H2O),
アミノアンチピリン(SIGMA-ALDRICH 製,C11H13N3O), シリカ(Cabot 製,M5)を混合し,窒素雰囲気下で 600℃,800℃, 900℃の 3 水準で焼成した.焼成後,余分な鉄成分およびシリ カはフッ化水素水溶液で除去した(14). FePhen は酢酸鉄(東京化成工業製,C4H6O4Fe),1,10-フ ェナントロリン(東京化成工業製,C12N2H8),カーボンブラ
ック(Cabot 製,BLACK PEARLS)を混合し,窒素雰囲気下
で800℃,900℃,1000℃の 3 水準で焼成した. 3.2. 電極触媒の活性測定
回転リングディスク電極(Rotating Ring-Disk Electrode: RRDE)を用いて酸素還元の活性を測定した.電極触媒とアイ オノマーを有機溶媒中に分散し調製したインク(①1次イン ク:触媒10mg,超純水 0.8mL,2-プロパノール 0.2mL ② 2次インク:1次インク0.1mL,超純水 0.75mL,2-プロパ ノール0.1mL,0.5w%ナフィオン溶液 0.05mL として混合した ②2次インクを使用)をグラッシーカーボン上に滴下し,測 定電極(担持量0.51μg/mm2)とした.測定電極は酸素で飽和 した1mol/L 水酸化カリウム(KOH)水溶液を入れた 3 電極型 セルで酸素還元電流を測定した.参照電極には水銀-水銀酸 化物電極(Hg/HgO),カウンター電極には白金線を用いた. 測定温度は 30℃で,回転数は 1600rpm とした.走査速度は 0.01V/s とし,高電位から低電位に向けて走査した.リファレ ンスとしてPt/C 電極触媒(田中貴金属製,TEC10V50E)を用 いた. 3.3. 発電性能測定 電極触媒(カソード:FeAAPyr または FePhen,アノード: Ni)とアイオノマー(トクヤマ製,AS-4)からなる触媒イン クを電解質膜(トクヤマ製,A201)に直接スプレーし,膜電 極接合体 (電極面積:4cm2)を形成した.電極触媒の担持量 はカソード:1mg/cm2,アノード:2.6mg/cm2とした.カソー ドにはエアを500 mL/min,50℃で供給し,アノードには 1M KOH と 1M N2H4・H2O の水溶液を 2mL/min,50℃で供給した. セル温度は80℃とし,背圧はカソード 60kPa,アノード 10kPa とした. 3.4. HAXPES による電極触媒の組成分析 高エネルギーの X 線を利用した硬 X 線光電子分光(Hard
X-ray Photoelectron Spectroscopy : HAXPES ) は ラ ボ XPS
(1.5keV)に比べて検出深さが深いことが特徴である(15).サ ンプルの固定には,銅版に直径2mm の穴をあけて,そこに電 極触媒粉末を押し込むことでサンプルを形成した.入射エネ ルギーは7.94keV,光電子出射角度は 80°で,電極触媒中を構 成する鉄,窒素,炭素,酸素についてSPring-8 の BL46XU で 光電子スペクトルを測定した. 3.5. in-situ XAS による反応メカニズムの解析 反応中の鉄原子の配位数・価数変化を測定するため,その 場X 線吸収解析(in-situ X-ray Absorption Spectroscopy:XAS)
(16)をSPring-8 の BL14B2 で行った.FeAAPyr および FePhen は
アイオノマー(トクヤマ製,AS-4)と混合したインクを作製 し,それをカーボンペーパー上に塗布し電極を形成した.電 極をセットするセルは3 電極型であり,リファレンス電極に はHg/HgO,カウンター電極には白金線を用い,ポテンシオス タットで電位を制御した.電位は0.324 V,0.524 V,0.724 V, 0.924 V,1.174 V(vs RHE)の 5 水準とした.触媒の初期状態 を電解液供給前に把握した後に酸素を電解液中にバブリング し,溶存酸素として供給した.19 素子 SSD 検出器を使用した 蛍光法によりFe-K 端の測定を行った. 4.結果と考察 4.1. 電極触媒の活性測定
RRDE による FeAAPyr の測定結果を図 2 (a),FePhen の測定
結果を図2(b)に示す(電位は RHE に換算した).この測定結
果から電流値:10-5A の電位を反応開始電位(Kick off potential)
とし,電流変化が半分起こった電位である半波電位(Half wave potential)についてまとめた結果を図 3 に示す. 焼成温度で比較すると,600~900℃の範囲においては FeAAPyr,FePhen ともに高温で焼成することで反応開始電位 および半波電位の向上がみられた.これは前駆体のグラファ イト化が進み,キレート構造周辺の電子伝導性が向上したた めと考えられる.FePhen の 900℃と 1000℃は同程度の性能で あったため,900℃以上の熱処理ではそれ以上グラファイト化 が進んでいないと考えた.前駆体の影響は大きく,FeAAPyr は反応開始電位が1.01V と,リファレンスの Pt/C 触媒の 0.98V を大きく上回る活性を示した.それぞれの前駆体において, 最も活性の高い 900℃の結果で比較したところ,FeAAPyr (900℃)は FePhen(900℃)よりも高活性であった.半波電 位についてもFeAAPyr(900℃)は Pt/C 触媒と同程度の性能 を示した. 図2 (a)における限界電流の勾配,(b)における限界電流のば らつきはそれぞれ電極触媒活性種の状態変化および電極触媒 表面構造の違いに由来すると推察するが,より詳細な解析が 必要である.
Fig. 2. Linear sweep voltammetry profiles
0.70 0.76 0.82 0.88 0.85 0.90 0.95 1.00 1.05
FeAA
(900℃
FeAAPyr
(800℃)
FeAAPyr
(600℃)
FePhen
(900℃)
FePhen
(1000℃)
FePhen
(800℃)
Pt/C
4.2. 発電性能測定 発電性能測定の結果を図4 に示す.最大出力密度はFeAAPyr (900℃)と FePhen(900℃)でそれぞれ 355,301mW/cm2で ありFeAAPyr(900℃)が 54 mW/cm2高い結果となった.OCV はそれぞれ0.83,0.78V と FeAAPyr(900℃)の OCV が 0.05V 高い結果となった.FeAAPyr(900℃)の高い触媒活性が OCV に現れ,発電性能の向上に寄与しているといえる. 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 0 200 400 600 800 1000 1200 1400Current density (mA/cm2)
Vo lt ag e ( V ) 0 50 100 150 200 250 300 350 400 P o w e r de ns it y (m W / cm2) FeAAPyr (900℃) FePhen (900℃)
Fig. 4. I-V and I-W curves 4.3. HAXPES による電極触媒の組成分析 FeAAPyr(900℃)と FePhen(900℃)の測定で得られた N1s スペクトルを図5 (a) および (b)に示す.活性に寄与する構造 は五員環の窒素構造(Pyrrolic),六員環の窒素構造(Pyridinic) ということがこれまで示されている(17).高活性な FeAAPyr (900℃)は FePhen(900℃)に比べて Pyrrolic が多いことが 分かった.高活性な触媒に Pyrrolic の割合が多い傾向は FeAAPyr の焼成温度(600℃,800℃,900℃)の違いにも現れ ており Pyrrolic な窒素構造が触媒活性の向上要因のひとつで あると推察される. 395 397 399 401 403 405 395 397 399 401 403 405 △:FeAAPyr(600℃) ○:FeAAPyr(800℃) □:FeAAPyr(900℃) ○:FePhen(800℃) □:FePhen(900℃) ◇:FePhen(1000℃) Pyrrolic
Binding energy (eV) (a) FeAAPyr(900℃)
Binding energy (eV) (b) FePhen(900℃) Fig. 5. N1s spectra In te ns it y ( a. u. ) In te ns it y ( a. u. ) Quaternary Graphitic Nx-Me Pyridinic Nitrile Pyrrolic Quaternary Graphitic Nx-Me Pyridinic Nitrile
Kick off potential (V vs RHE)
Fig. 3. RRDE results of FeAAPyr, FePhen and Pt/C
C
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FeAAPyr (600℃) FePhen (800℃) FeAAPyr (900℃) FePhen (1000℃) Pt/C FeAAPyr (800℃) FePhen (900℃)4.4. in-situ XAS による反応メカニズムの解析
図6 (a) および (b) に,XAS で得られた FeAAPyr(900℃)
およびFePhen(900℃)の各電位のXANESスペクトルを示す. 電位による XANES スペクトルのシフトがみられ,低電位か ら高電位になるにつれ,XANES スペクトルが高エネルギー側 にシフトしている. 0 0.5 1 1.5 7100 7110 7120 7130 7140 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.4 0.5 0.6 7118 7120 7122 1.15eV この価数の違いについて考察したモデルを図8 に示す.組 成分析の結果からFeAAPyr(900℃)は Pyrrolic が多いモデル, FePhen(900℃)はそれ以外の成分(例えば Pyridinic)を含む モデルとした.初期状態において酸素が吸着している状態は 高価数,OH が吸着している状態は低価数に相当することから FeAAPyr(900℃)は FePhen(900℃)に比べて多くの酸素を 吸着した状態であると推察できる.このことが,FeAAPyr (900℃)の反応開始電位の高さに寄与していると考えられる. 0 0.5 1 1.5 7100 7110 7120 7130 7140 ( ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.4 0.5 0.6 7118 7120 7122 0.64eV XANES スペクトルの強度:0.5 における電位変化とエネルギ ー位置の関係を図7 に示す.高電位(0.924~1.124V)におい てFeAAPyr(900℃)は FePhen(900℃)に比べて高エネルギ ー,つまり初期状態において FeAAPyr(900℃)は FePhen (900℃)に比べて高価数であることを示す結果となった. 7119.6 7119.8 7120.0 7120.2 7120.4 7120.6 7120.8 7121.0 7121.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 Potential (mV vs RHE) E ner gy ( eV ) FeAAPyr(900℃) FePhen(900℃)
Fig. 7. Energy shift during potential sweep @ intensity = 0.5
Fig. 8. Initial structures
図 9 (a) および (b) に FeAAPyr(900℃)および FePhen
(900℃)の EXAFS スペクトルから得られた動径構造関数 (R:Fe の原子核と配位子間の距離、|χ(R)|:配位子の存在比) の変化を示す.電位の低下に伴いピーク強度,つまり配位数 の減少が見られ,活性の高い FeAAPyr(900℃)は FePhen (900℃)よりも配位数の変化が大きいことが分かった. 0 0.5 1 0 1 2 3 4 5 |χ (R) | (Å ‐3) R (Å ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.10Å-3 (a) FeAAPyr(900C) 0 0.5 1 0 1 2 3 4 5 |χ (R )| ( Å ‐3) R (Å ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.03Å-3 (b) FePhen(900C) Fig. 9. EXAFS spectra O Fe Fe Fe O O (a) FeAAPyr(900℃) OH Fe Fe Fe O OH Fe Fe Pyrrolic Pyridinic
>
Valence (b) FePhen(900℃) Potential (V vs RHE) En er gy (eV ) N or m al iz ed inte ns ity (a . u.) N or m al iz ed inte ns ity (a . u.) Energy (eV) Energy (eV) (a) FeAAPyr(900℃) (b) FePhen(900℃) Fig. 6. Fe-K spectraこの配位数の変化の違いについて考察したモデルを図10 に
示す.初期状態で吸着している酸素は還元反応によってOH-
として脱離する.(a)は初期状態で酸素の吸着が多いため,配
位数の変化が大きい.一方で,(b)は初期状態で酸素の吸着が
少ないため,配位数の変化が小さいと考えられる.
Fig. 10. ORR process during shift of potential 5.ま と め カソード電極触媒で起こる酸素の還元反応には,鉄と窒素 を配位させたキレート構造が機能する.このキレート構造の 制御には,窒素を含んだ前駆体と触媒製造条件が大きく影響 する.FeAAPyr と FePhen で焼成条件を変えたところ,ともに 高温になるにつれ触媒活性が向上した.特に900℃で焼成した FeAAPyr は反応開始電位において、同条件で測定した白金の 0.98V を超す高い電位(1.01V)を示した.この触媒の高活性 化によりOCV は0.05V 向上しており,出力の向上(54mW/cm2) に大きく寄与することをMEA 性能評価により確認した. 放射光を用いた反応メカニズムの解析を行い,FeAAPyr (900℃)は Pyrrolic な窒素構造を多く含んでおり,鉄の価数・ 配位数の変化が大きいことが分かった.これは酸素が吸着し やすく,スムーズにOH-へ還元されることを示しており,触 媒活性の向上に寄与することが分かった. 6.今後の予定 本稿では,触媒活性の評価,成分分析,価数・配位数の変 化から反応モデルを提案し,触媒活性に影響を与える要因を 検討した.触媒活性向上のメカニズム(窒素構造の影響や初 期状態での吸着物の差異)の解明には,解析の高度化(価数・ 配位数の定量的評価等)により現象を解明するとともに,理 論的アプローチから触媒反応の原理を理解する必要があると 考える.第一原理計算のように経験的パラメータを用いない 理論計算は原理の理解に有効であり,解析と計算から得られ た知見を触媒設計に反映することで研究開発のスピードアッ プを図る.また,本稿における解析は初期状態にとどまって おり,今後,発電前後における成分変化の解析を行うことで 耐久性の向上指針を検証する. 謝 辞 触媒構造について大阪大学大学院工学研究科の笠井秀明教 授,中西寛助教,Saputro Adhitya Gandaryus 氏に理論解析の観
点からご助言頂きました.本研究の一部はCREST, JST の助成 を受けて実施しました.また放射光による実験はSPring-8 の 重点産業化促進課題(2011B1802,2012A1774,2012A1775, 2012B1731,2013A1643,2013A1644)により実施しました. ここに感謝の意を表します. OH- OH- OH- 参 考 文 献
(1) K. Yamada et al.,: Potential application of anion exchange membrane for hydrazine fuel cell electrolyte: Electrochem. Commun., Vol. 5, p.892-896 (2003)
(2) 朝澤浩一郎ほか: ヒドラジンを燃料とする自動車用燃料 電池の開発: 燃料電池, vol. 7, p.99-101 (2008)
(3) J. H. Kim et al.,: Catalytic activity of titanium oxide for oxygen reduction reaction as a non-platinum catalyst for PEFC: Electrochim. Acta, Vol. 52, p.2492-2497 (2007)
(4) K. A. Kurak et al.,: Nitrogen-Treated Graphite and Oxygen Electroreduction on Pyridine Edge Sites: J. Phys. Chem. C, Vol 113, p.6730-6734 (2009)
(5) J. Yang et al.,: Carbon foams with high compressive strength derived from mesophase pitch treated by toluene extraction: Carbon, Vol. 45, p.2843-2845 (2007)
(6) R. Jasinsky: A New Fuel Cell Cathode Catalyst: Nature, Vol. 201, p.1212-1213 (1964)
(7) R. Bashyam et al.,: A Class of Non-precious Metal Composite Catalysts for Fuel Cells: Nature, Vol. 443, p.63-66 (2006)
(8) K. Asazawa et al.,: A Platinum-Free Zero-Carbon-Emission Easy Fuelling Direct Hydrazine Fuel Cell for Vehicles: Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 46, p.8024-8027 (2007)
(9) H. Tanaka et al.,: The Platinum-freee Anionic Fuel Cells for Automotive Applications: ECS Transactions, Vol. 16, p.459-464 (2008)
(10) K. Asazawa et al.,: XAFS analysis of unpyrolyzed CoPPyC oxygen reduction catalysts for Anion-Exchange Membrane Fuel Cells (AMFC): ECS Transactions, Vol. 33, p.1751-1755 (2010) (11) T. S. Olson et al., : Anion-Exchange Membrane Fuel Cells: Dual-Site Mechanism of Oxygen Reduction Reaction in Alkaline Media on Cobalt-Polypyrrole Electrocatalysts: J. Phys. Chem. C, Vol. 114, p.5049-5059 (2010)
(12) M. Lefèvre et al.,: Iron-Based Catalysts with Improved Oxygen Reduction Activity in Polymer Electrolyte Fuel Cells: Science, Vol. 324, p.71-74 (2009)
(13) H. Meng et al.,: pH-effect on oxygen reduction activity of
O O O Potential decrease Fe Fe Fe Fe Fe Fe (a) FeAAPyr OH- O Potential decrease Fe Fe Fe Fe Fe Fe OH OH OH OH (b) FePhen
4.4. in-situ XAS による反応メカニズムの解析
図6 (a) および (b) に,XAS で得られた FeAAPyr(900℃)
およびFePhen(900℃)の各電位のXANESスペクトルを示す. 電位による XANES スペクトルのシフトがみられ,低電位か ら高電位になるにつれ,XANES スペクトルが高エネルギー側 にシフトしている. 0 0.5 1 1.5 7100 7110 7120 7130 7140 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.4 0.5 0.6 7118 7120 7122 1.15eV この価数の違いについて考察したモデルを図8 に示す.組 成分析の結果からFeAAPyr(900℃)は Pyrrolic が多いモデル, FePhen(900℃)はそれ以外の成分(例えば Pyridinic)を含む モデルとした.初期状態において酸素が吸着している状態は 高価数,OH が吸着している状態は低価数に相当することから FeAAPyr(900℃)は FePhen(900℃)に比べて多くの酸素を 吸着した状態であると推察できる.このことが,FeAAPyr (900℃)の反応開始電位の高さに寄与していると考えられる. 0 0.5 1 1.5 7100 7110 7120 7130 7140 ( ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.4 0.5 0.6 7118 7120 7122 0.64eV XANES スペクトルの強度:0.5 における電位変化とエネルギ ー位置の関係を図7 に示す.高電位(0.924~1.124V)におい てFeAAPyr(900℃)は FePhen(900℃)に比べて高エネルギ ー,つまり初期状態において FeAAPyr(900℃)は FePhen (900℃)に比べて高価数であることを示す結果となった. 7119.6 7119.8 7120.0 7120.2 7120.4 7120.6 7120.8 7121.0 7121.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 Potential (mV vs RHE) E ner gy ( eV ) FeAAPyr(900℃) FePhen(900℃)
Fig. 7. Energy shift during potential sweep @ intensity = 0.5
Fig. 8. Initial structures
図 9 (a) および (b) に FeAAPyr(900℃)および FePhen
(900℃)の EXAFS スペクトルから得られた動径構造関数 (R:Fe の原子核と配位子間の距離、|χ(R)|:配位子の存在比) の変化を示す.電位の低下に伴いピーク強度,つまり配位数 の減少が見られ,活性の高い FeAAPyr(900℃)は FePhen (900℃)よりも配位数の変化が大きいことが分かった. 0 0.5 1 0 1 2 3 4 5 |χ (R) | (Å ‐3) R (Å ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.10Å-3 (a) FeAAPyr(900C) 0 0.5 1 0 1 2 3 4 5 |χ (R )| ( Å ‐3) R (Å ) 1.174 V 0.924 V 0.724 V 0.524 V 0.324 V 0.03Å-3 (b) FePhen(900C) Fig. 9. EXAFS spectra O Fe Fe Fe O O (a) FeAAPyr(900℃) OH Fe Fe Fe O OH Fe Fe Pyrrolic Pyridinic
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Valence (b) FePhen(900℃) Potential (V vs RHE) En er gy (eV ) N or m al iz ed inte ns ity (a . u.) N or m al iz ed inte ns ity (a . u.) Energy (eV) Energy (eV) (a) FeAAPyr(900℃) (b) FePhen(900℃) Fig. 6. Fe-K spectraこの配位数の変化の違いについて考察したモデルを図10 に
示す.初期状態で吸着している酸素は還元反応によってOH-
として脱離する.(a)は初期状態で酸素の吸着が多いため,配
位数の変化が大きい.一方で,(b)は初期状態で酸素の吸着が
少ないため,配位数の変化が小さいと考えられる.
Fig. 10. ORR process during shift of potential 5.ま と め カソード電極触媒で起こる酸素の還元反応には,鉄と窒素 を配位させたキレート構造が機能する.このキレート構造の 制御には,窒素を含んだ前駆体と触媒製造条件が大きく影響 する.FeAAPyr と FePhen で焼成条件を変えたところ,ともに 高温になるにつれ触媒活性が向上した.特に900℃で焼成した FeAAPyr は反応開始電位において、同条件で測定した白金の 0.98V を超す高い電位(1.01V)を示した.この触媒の高活性 化によりOCV は0.05V 向上しており,出力の向上(54mW/cm2) に大きく寄与することをMEA 性能評価により確認した. 放射光を用いた反応メカニズムの解析を行い,FeAAPyr (900℃)は Pyrrolic な窒素構造を多く含んでおり,鉄の価数・ 配位数の変化が大きいことが分かった.これは酸素が吸着し やすく,スムーズにOH-へ還元されることを示しており,触 媒活性の向上に寄与することが分かった. 6.今後の予定 本稿では,触媒活性の評価,成分分析,価数・配位数の変 化から反応モデルを提案し,触媒活性に影響を与える要因を 検討した.触媒活性向上のメカニズム(窒素構造の影響や初 期状態での吸着物の差異)の解明には,解析の高度化(価数・ 配位数の定量的評価等)により現象を解明するとともに,理 論的アプローチから触媒反応の原理を理解する必要があると 考える.第一原理計算のように経験的パラメータを用いない 理論計算は原理の理解に有効であり,解析と計算から得られ た知見を触媒設計に反映することで研究開発のスピードアッ プを図る.また,本稿における解析は初期状態にとどまって おり,今後,発電前後における成分変化の解析を行うことで 耐久性の向上指針を検証する. 謝 辞 触媒構造について大阪大学大学院工学研究科の笠井秀明教 授,中西寛助教,Saputro Adhitya Gandaryus 氏に理論解析の観
点からご助言頂きました.本研究の一部はCREST, JST の助成 を受けて実施しました.また放射光による実験はSPring-8 の 重点産業化促進課題(2011B1802,2012A1774,2012A1775, 2012B1731,2013A1643,2013A1644)により実施しました. ここに感謝の意を表します. OH- OH- OH- 参 考 文 献
(1) K. Yamada et al.,: Potential application of anion exchange membrane for hydrazine fuel cell electrolyte: Electrochem. Commun., Vol. 5, p.892-896 (2003)
(2) 朝澤浩一郎ほか: ヒドラジンを燃料とする自動車用燃料 電池の開発: 燃料電池, vol. 7, p.99-101 (2008)
(3) J. H. Kim et al.,: Catalytic activity of titanium oxide for oxygen reduction reaction as a non-platinum catalyst for PEFC: Electrochim. Acta, Vol. 52, p.2492-2497 (2007)
(4) K. A. Kurak et al.,: Nitrogen-Treated Graphite and Oxygen Electroreduction on Pyridine Edge Sites: J. Phys. Chem. C, Vol 113, p.6730-6734 (2009)
(5) J. Yang et al.,: Carbon foams with high compressive strength derived from mesophase pitch treated by toluene extraction: Carbon, Vol. 45, p.2843-2845 (2007)
(6) R. Jasinsky: A New Fuel Cell Cathode Catalyst: Nature, Vol. 201, p.1212-1213 (1964)
(7) R. Bashyam et al.,: A Class of Non-precious Metal Composite Catalysts for Fuel Cells: Nature, Vol. 443, p.63-66 (2006)
(8) K. Asazawa et al.,: A Platinum-Free Zero-Carbon-Emission Easy Fuelling Direct Hydrazine Fuel Cell for Vehicles: Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 46, p.8024-8027 (2007)
(9) H. Tanaka et al.,: The Platinum-freee Anionic Fuel Cells for Automotive Applications: ECS Transactions, Vol. 16, p.459-464 (2008)
(10) K. Asazawa et al.,: XAFS analysis of unpyrolyzed CoPPyC oxygen reduction catalysts for Anion-Exchange Membrane Fuel Cells (AMFC): ECS Transactions, Vol. 33, p.1751-1755 (2010) (11) T. S. Olson et al., : Anion-Exchange Membrane Fuel Cells: Dual-Site Mechanism of Oxygen Reduction Reaction in Alkaline Media on Cobalt-Polypyrrole Electrocatalysts: J. Phys. Chem. C, Vol. 114, p.5049-5059 (2010)
(12) M. Lefèvre et al.,: Iron-Based Catalysts with Improved Oxygen Reduction Activity in Polymer Electrolyte Fuel Cells: Science, Vol. 324, p.71-74 (2009)
(13) H. Meng et al.,: pH-effect on oxygen reduction activity of
O O O Potential decrease Fe Fe Fe Fe Fe Fe (a) FeAAPyr OH- O Potential decrease Fe Fe Fe Fe Fe Fe OH OH OH OH (b) FePhen
Fe-based electro-catalysts: Electrochem. Commun. Vol. 11 p.1986-1989 (2009)
(14) A. Serov et al.,: Highly active and durable templated non-PGM cathode catalysts derived from iron and aminoantipyrine: Electrochem. Commun., Vol. 22, p.53-56 (2012)
(15) 藤田学ほか: 硬 X 線光電子分光法による状態分析への新 たなアプローチ-「より内部」や「埋もれた界面」の非破壊 分析を目指して-: The TRC News, No. 112, p.23-25 (2011) (16) J. M. Ziegelbauer et al,.: Direct Spectroscopic Observation of the Structural Origin of Peroxide Generation from Co-Based Pyrolyzed Porphyrins for ORR Applications: J. Phys. Chem. C, Vol. 112, p.8839-8849 (2008)
(17) M. H. Robson et al,.: A mechanistic study of 4-aminoantipyrine and iron derived non-platinum group metal catalyst on the oxygen reduction reaction: Electrochim. Acta, Vol. 90, p.656-665 (2013)
短距離走行・高頻度充電型電動バスの性能評価
(第 1 報)
*―開発車両の長期営業運行中に得られた非接触給電装置に係る各種データの詳細分析― 紙屋 雄史1) 高橋 俊輔2) 大聖 泰弘3)
Performance Evaluation of Short Range Frequent Charging Electric Bus (First Report)
- Detailed Analysis of Inductive Charging Performance over Long-term Operation of Development Bus -Yushi Kamiya Shunsuke Takahashi Yasuhiro Daisho
A long-term operation test of a specially developed electric bus has been performed as part of a project organized by the Japanese Ministry of the Environment. The following information related to the inductive power supply (IPS) system was obtained. (1) One practical issue of the IPS system is misalignment between the transmitting coil and receiving coil when the vehicle is parked outside the optimum position. After measuring and evaluating this issue over a period of five months using the developed mini bus, it was found that misalignment tended to be greater in the longitudinal direction than the lateral direction. After the driver became fully accustomed to parking the mini bus, the evaluation found that the maximum misalignment was approximately 6.5 cm. (2) The degree of misalignment measured in the test had virtually no adverse effect on the efficiency of the adopted IPS system (86% when the coils are aligned directly opposite each other). (3) The feasibility of moderating the system performance was examined, principally to help reduce costs. Specifically, a new system design theory was proposed that moderated the design requirement for the reduction in the coupling coefficient that occurs when misalignment increases. After studying and adopting the proposed method, it was found that, even with a large moderation in coupling coefficient performance, it could be possible to realize a system with only a comparatively small drop in efficiency.
KEY WORDS: EV and HV systems, Onboard charging system, Filling infrastructure, Electric bus (A3)
1. は じ め に 環境・エネルギー問題への対応として,著者らは2002 年か ら電動バスの環境調和性と実用性の向上に向けた研究・開発 に取り組んできた(1).電動バスは,低炭素効果が高くゼロエミ ッションであり,騒音や振動も少なく環境調和性に優れてい るが,実用的な車両として普及させていくためには,バッテ リの性能向上と充電の煩わしさを改善する必要がある.この 課題への対応として,短距離走行・高頻度充電をコンセプト とし,大きく・重たく・高価なバッテリの搭載量を大幅に削 減すると同時に,航続距離や充電の問題の改善を図る方式(2), (3) について検討を進めてきた.また,充電の煩わしさを改善す る手段として非接触充電装置の研究開発にも取り組み,実用 性の高い電動バス“WEB (Waseda Electric Bus)”シリーズの研 究開発を精力的に続けてきた.開発対象としては,既定ルー トを走行する,小型もしくは中型の路線バスが車格や運用方 法の観点から実用化しやすく最も適していると考えている. *2014 年 10 月 24 日受理.2014 年 10 月 24 日 自動車技術会 秋季学術講演会において発表. 1)・2)・3)早稲田大学大学院環境・エネルギー研究科(169-8555 東京都新宿区大久保3-4-1-S55-704)
本論文は,電磁誘導型非接触給電(Inductive Power Supply: IPS)システムを対象としている.当システムは,送電コイル と受電コイルが正対する際に最高効率となるが,両コイル間 の位置ズレによって特性悪化が生じてしまう.近年,乗用車 用IPS システムの研究が盛んになっているが,この場合,運 転手の技量差を予測するのが難しく,十数センチ程度のズレ を想定した機器設計が検討されている.しかし,筆者らが対 象とする電動バスは,プロの運転手が扱うため位置ズレを比 較的狭い範囲に収めることができる.そのため,機器の位置ズ レ許容性能を乗用車用機器より若干低めに設定することで,設 計上の制約が緩和されて機器の小型化やコスト削減等につなが ると考えている. このような背景のもと,本論文では,IPS システムを搭載し た電動バス“WEB3”(4)の長期営業運行中に得られた各種デー タに基づく研究成果を報告する.はじめに,充電時の停車位 置ズレに起因する送受電コイル間の位置ズレについて,5 か月 間にわたり実測評価した結果を報告する.つぎに,実運用時 における充電装置の効率位置ズレ特性の実測結果を報告する. 最後に,位置ズレを狭い範囲に収めることが出来る電動小型 バス用の機器を対象として,機器の小型化やコスト削減等を 目的とした位置ズレ性能緩和方策についてまとめる.