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第 1 事案の概要 1 当事者 (1) 原告 / 控訴人 / 上告人 ( 以下 X と記載することもある ) テバジョジセルジャールザートケルエンムケドレースベニュタールシャシャーグ (2) 被告 / 被控訴人 / 被上告人 ( 以下 Y と記載することもある ) 株式会社協和発酵キリン ここが縮合

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PBP

クレーム最高裁判決について

最判平成27年6月5日(平成 24年(受)第1204号 1 )[二小] 原審:知財高判平成24年 1月27日(平成22年(ネ)第 10043号 2 )[大合議] 第一審:東京地判平 成22年3月31日(平成19年(ワ)第 35324号)[民29] 2015年 7 月28日 弁護士知財ネット判 例 検討会 発表者 弁 護 士 平 井 佑 希 弁 護 士 西 脇 怜 史 目 目 目 目 次次次次 第 1 第 1 第 1 第 1 事 案 の 概 要事 案 の 概 要事 案 の 概 要事 案 の 概 要 ... 2 1 1 1 1 当 事 者当 事 者当 事 者当 事 者 ... 2 2 2 2 2 本 件 特 許本 件 特 許本 件 特 許本 件 特 許 ... 2 3 3 3 3 出 願 ・ 訂 正 の経 緯出 願 ・ 訂 正 の経 緯出 願 ・ 訂 正 の経 緯出 願 ・ 訂 正 の経 緯 ... 3 第 2 第 2 第 2 第 2 第 一 審 東 京地 裁 判決第 一 審 東 京地 裁 判決第 一 審 東 京地 裁 判決第 一 審 東 京地 裁 判決 の 概 要の 概 要の 概 要の 概 要 ... 4 1 1 1 1 争 点争 点争 点争 点 ... 4 2 2 2 2 争 点 に 対 す る判 断争 点 に 対 す る判 断争 点 に 対 す る判 断争 点 に 対 す る判 断 ... 5 (1) 技 術的 範囲 の解 釈につ き、 製法 を考 慮す べきか につ いて ... 5 (2) 被 告製 品の 構成 要件該 当性 につ いて ... 6 第 3 第 3 第 3 第 3 知 財 高 裁 大合 議 判決知 財 高 裁 大合 議 判決知 財 高 裁 大合 議 判決知 財 高 裁 大合 議 判決 の 概 要の 概 要の 概 要の 概 要 ... 6 1 1 1 1 技 術 的 範 囲 の解 釈 につ き 、 製 法 を 考 慮す べ きか に つ い て技 術 的 範 囲 の解 釈 につ き 、 製 法 を 考 慮す べ きか に つ い て技 術 的 範 囲 の解 釈 につ き 、 製 法 を 考 慮す べ きか に つ い て技 術 的 範 囲 の解 釈 につ き 、 製 法 を 考 慮す べ きか に つ い て ... 6 2 2 2 2 被 控 訴 人 製 品の 構 成要 件 該 当 性 に つ いて被 控 訴 人 製 品の 構 成要 件 該 当 性 に つ いて被 控 訴 人 製 品の 構 成要 件 該 当 性 に つ いて被 控 訴 人 製 品の 構 成要 件 該 当 性 に つ いて ... 9 3 3 3 3 発 明 の 要 旨 認定 に つき 、 製 法 を 考 慮 すべ き かに つ い て発 明 の 要 旨 認定 に つき 、 製 法 を 考 慮 すべ き かに つ い て発 明 の 要 旨 認定 に つき 、 製 法 を 考 慮 すべ き かに つ い て発 明 の 要 旨 認定 に つき 、 製 法 を 考 慮 すべ き かに つ い て ... 9 4 4 4 4 乙乙乙乙30303030発 明 に 基 づ く (訂 正 前 ) 本 件 特 許発 明発 明 に 基 づ く (訂 正 前 ) 本 件 特 許発 明発 明 に 基 づ く (訂 正 前 ) 本 件 特 許発 明発 明 に 基 づ く (訂 正 前 ) 本 件 特 許発 明1111の 進 歩 性 の 欠 如の 進 歩 性 の 欠 如 の 進 歩 性 の 欠 如の 進 歩 性 の 欠 如... 10 第 4 第 4 第 4 第 4 最 高 裁 判 決最 高 裁 判 決最 高 裁 判 決最 高 裁 判 決 の 概 要の 概 要の 概 要 の 概 要... 11 1 1 1 1 法 廷 意 見法 廷 意 見法 廷 意 見法 廷 意 見 ... 11 2 2 2 2 補 足 意 見 ( 千葉 勝 美裁 判 官 )補 足 意 見 ( 千葉 勝 美裁 判 官 )補 足 意 見 ( 千葉 勝 美裁 判 官 )補 足 意 見 ( 千葉 勝 美裁 判 官 ) ... 13 3 3 3 3 意 見 ( 山 本 庸幸 裁 判官 )意 見 ( 山 本 庸幸 裁 判官 )意 見 ( 山 本 庸幸 裁 判官 )意 見 ( 山 本 庸幸 裁 判官 ) ... 17 第 5 第 5 第 5 第 5 若 干 の 考 察若 干 の 考 察若 干 の 考 察若 干 の 考 察 ... 20 1 1 1 1 具 体 的 事 案 にお け る結 論 の 違 い具 体 的 事 案 にお け る結 論 の 違 い具 体 的 事 案 にお け る結 論 の 違 い具 体 的 事 案 にお け る結 論 の 違 い ... 20 2 2 2 2 補 正 ・ 訂 正 につ い て補 正 ・ 訂 正 につ い て補 正 ・ 訂 正 につ い て補 正 ・ 訂 正 につ い て ... 22 3 3 3 3 PBPPBPPBPPBPク レ ー ム の 範 囲ク レ ー ム の 範 囲ク レ ー ム の 範 囲ク レ ー ム の 範 囲 ... 24 4 4 4 4 「 物 同 一 」 の範 囲「 物 同 一 」 の範 囲「 物 同 一 」 の範 囲「 物 同 一 」 の範 囲 ... 25 1 同日付けで、平成24年(受)第2658 号事件(テバ東理事件)についても判決あり。[二小] 2 同日付けで、平成21年(行ケ)第10284号事件についても判決あり。[1部]

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第 1 第 1 第 1 第 1 事 案の 概要事 案の 概要事 案の 概要事 案の 概要 1 1 1 1 当事 者当事 者当事 者当事 者 (1) 原告/控訴人/ 上 告人(以下「X」と 記 載することもある。) テ バ ジ ョ ジ セ ル ジ ャ ー ル ザ ー ト ケ ル エ ン ム ケ ド レ ー ス ベ ニ ュ タールシャシャーグ (2) 被告/被控訴人 / 被上告人(以下「Y 」 と記載することもあ る 。) 株式会社協和発酵キ リ ン 2 2 2 2 本件 特許本件 特許本件 特許本件 特許 (1) 特許番号 特許第3737801号 (2) 発明の名称 プ ラ バ ス タ チ ン ラ ク ト ン 及 び エ ピ プ ラ バ ス タ チ ン を 実 質 的 に 含 ま な い プ ラバスタチンナトリ ウ ム、並びにそれを含 む 組成物 (3) 本件特許発明 【請求項1】 次の段階: a)プラバスタチン の 濃縮有機溶液を形成 し 、 b)そのアンモニウ ム 塩としてプラバスタ チ ンを沈殿し、 c)再結晶化によっ て 当該アンモニウム塩 を 精製し、 d)当該アンモニウ ム 塩をプラバスタチン ナ トリウムに置き換え 、そして e)プラバスタチン ナ トリウム単離するこ と 、 を含んで成る方法に よ って製造される、プ ラ バスタチンラクトン の 混入量 が0.5重量%未満であ り、エピプラバの混 入 量が0.2重量%未満で あるプ ラバスタチンナトリ ウ ム。 ここが縮合するとラクトン

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【請求項2】以下略。 いずれも請求項 1の従 属項(孫従属も含む)。 3 3 3 3 出願 ・出願 ・出願 ・出願 ・ 訂 正の訂 正の訂 正の 経緯訂 正の経緯経緯経緯 H12.10.05 優先日(US) H13.10.05 X 国際出願 H14.11.27 X 翻訳文を提出 3 H16.01.29 X 早期審査に関す る 事情説明書を提出 H16.03.17 JPO 新規性・進歩性 欠如等を理由として 拒 絶理由通知 H16.09.24 X 意見書・手続補 正 書を提出 H17.04.22 JPO 進歩性欠如等を 理由として拒絶査定 4 H17.07.25 X 拒絶査定不服審 判 請求 手続補正書を提出し て 、製造方法の記 載がな い請求項 を全て削除 H17.09.16 JPO 特許査定 H17.11.04 登録日 H20.03.27 Y→X 無効審判請 求 (無効2008-800055) ⇒ 審判請求書の副 本 は H20.04.23に発送 H20.07.22 X 請求項1について 訂正請求 H21.08.25 JPO 訂正を認めた上 で、請求不成立審決 ⇒ Y審取提起(平 成21年(行ケ)第10284号) 3 翻訳文に記載された当初請求項は、以下のとおり。 【請求項1】実質的に純粋なプラバスタチンナトリウム。 【請求項7】0.2%未満のプラバスタチンラクトン及び0.1%未満のエピプラバを含む、請求項 1に記載のプラバスタチンナトリウム。 【請求項8】次の段階:a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し、b)そのアンモニウム塩と してプラバスタチンを沈殿し、c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し、d)当該アン モニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え、そしてe)プラバスタチンラクトン及びエ ピプラバを実質的に含まないプラバスタチンナトリウム単離すること、を含んで成る方法によ って製造される、実質的に純粋なプラバスタチンナトリウム。 4 製造方法の記載がされた請求項については、拒絶理由がある請求項としては挙げられていな い。

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【訂正発明1】 a)プラバスタチンの 濃 縮有機溶液を形成し 、 b)そのアンモニウム 塩 としてプラバスタチ ン を沈殿し、 c)再結晶化によって 当 該アンモニウム塩を 精 製し、 d)当該アンモニウム 塩 をプラバスタチンナ ト リウムに置き換え、 そ して e)プラバスタチンナ ト リウムを単離するこ と 、 を含んで成る方法に よ って製造される、プ ラ バスタチンラクトン の 混入量 が0.2重量%未満であ り、エピプラバの混 入 量が0.1重量%未満で あるプ ラバスタチンナトリ ウ ム。 第 2 第 2 第 2 第 2 第 一審第 一審第 一審第 一審 東京 地裁東京 地裁東京 地裁東京 地裁 判 決判 決判 決判 決 5 の 概 要 の 概 要の 概 要 の 概 要 1 1 1 1 争点争点争点争点 (1) 被告製品が本件 各 発明の技術的範囲に 属 するか 6 。 ア 本件各発明の技 術 的範囲につき、製造 方 法を考慮すべきか。 イ 被告製品の構成 要 件充足性 (2) 本件特許は、特 許 無効審判により無効 に されるべきものか。 ア 本件各発明の要 旨 イ 乙第1号証に基づ く新規性の欠如 ウ 乙第1号証に基づ く進歩性の欠如 エ 乙第6号証に基づ く新規性・進歩性の 欠 如 オ 特許法36条6項1号違反 ①不純物の濃度、含 有 比に関するサポート 要 件違反 ・ラクトン:エピマ ー = 2:1 というサ ポートがない。 5 29部 裁判長裁判官 清水節 裁判官 坂本三郎 岩崎慎 請求棄却 6 被告製品が、「プラバスタチンラクトンの混入量が0.2重量%未満であり、エピプラバの混入 量が0.1重量%未満であるプラバスタチンナトリウム」であることは争いなし。

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・純度99.9%(不純物0.1%)までしかサポ ー トがない。 ②低純度の場合に関 す るサポート要件違反 ・ ラ ク ト ン や エ ピ マー 以 外 の 副 生 物 が 混入 す れ ば 、 結 果 的 に純 度の 低 い プ ラ バ ス タ チ ンナ ト リ ウ ム も 含 ま れ得 る こ と に な る が 、そ の ようなサポートがな い 。 (3) 本 件 訂 正 の 可 否 ( 本 件 訂 正 に よ り 、 争 点 (2)の 無 効 理 由 が 回 避 さ れ る か 。) 2 2 2 2 争点 に対 する 判断争点 に対 する 判断争点 に対 する 判断争点 に対 する 判断 (1) 技術的範囲の解 釈 につき、製法を考慮 す べきかについて ア PBPクレームの解 釈について 【 原 則 製法 同 一説 】【 原 則 製法 同 一説 】 【 原 則 製法 同 一説 】【 原 則 製法 同 一説 】 本 件 特 許 請 求 の 範 囲 の 各 請 求 項 が 、「 物 の 発 明 に つ い て 、 当 該 物 の 製造 方法が記載されたも の 」であり、いわゆる PBPクレームである認 定した上 で、PBPクレームの解 釈については、特許 法70条1項から、「原則として、 『 物 の 発 明 』 で あ る か ら と い っ て 、・ ・ ・ 製 造 方 法 の 記 載 を 除 外 す べ きで はなく、当該特許発 明 の技術的範囲は、当 該 製造方法によって製 造 された 物に限られると解す べ きであって、物の構 成 を記載して当該物を 特 定する ことが困難であり、当 該物の製造方法によ っ て、特許請求の範囲 に 記載し た物を特定せざるを 得 ないなどの特段の事 情 がある場合に限り、当 該製造 方 法 と は 異 な る 製 造 方 法 に よ り 製 造 さ れ た が 物 と し て は 同 一 で あ る と 認 められる物も、当該 特 許発明の技術的範囲 に 含まれると解するの が 相当で ある。」と判示した。 イ 特段の事情の有 無 【 特 段の 事情 を 否定 】【 特 段の 事情 を 否定 】【 特 段の 事情 を 否定 】【 特 段の 事情 を 否定 】 ・ プ ラ バ ス タ チ ン ナ ト リ ウ ム 自 体 は 、 当 業 者 に と っ て 公 知 の 物 質 で あ り、 本件特許の請求項1に記載された「物 」で ある「プラバスタ チン ラクト ンの混入量が 0.5 重量%未満であり、エピ プ ラバの混入量が0.2 重量% 未満であるプラバス タ チンナトリウム」の 構 成は、その記載自体 に よっ

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て物質的に特定され て いること ・本件特許の出願経過 において、出願 当初の 特許請求の範囲には 、製造方 法の記載がない物と 、製造方法の記載があ る 物の双方に係る請求 項 が含 まれていた 7 が、製造 方法の記載がない請 求 項について進歩性が な いと して拒絶査定を受け た ことにより、製造 方法 の記載がない請求項 を すべ て削除し、その結果 、 特許査定を受けるに 至 っていること から、本件特許 におい ては、特許発明 の技術 的範囲が、特許 請求の 範囲に 記 載 さ れ た 製 造 方 法 に よ っ て 製 造 さ れ た 物 に 限 定 さ れ な い と す る 特 段 の 事情があるとは認め ら れない(むしろ、特 許 発明の技術的範囲を 当 該製造 方 法 に よ っ て 製 造 さ れ た 物 に 限 定 す べ き 積 極 的 な 事 情 が あ る と い う こ と ができる)と判示し た 。 (2) 被告製品の構成 要 件該当性について 本 件 特 許 発 明 に お け る 製 造 工 程 「 a 」 プ ラ バ ス タ チ ン の 濃 縮 有 機 溶 液 を 形 成 し 、」 の 「 濃 縮 有 機 溶 液 」 と は 、 水 を 含 ま な い 有 機 溶 媒 で あ る と 解 し た 上 で、被告工程には水 を 含まない有機溶媒の「 プラバスタチンの濃 縮 有機溶液」 を形成する工程があ る とは認められないと し て、構成要件充足 性を 否定した。 第 3 第 3 第 3 第 3 知 財高 裁大 合議 判 決知 財高 裁大 合議 判 決知 財高 裁大 合議 判 決知 財高 裁大 合議 判 決 8 の 概 要 の 概 要の 概 要 の 概 要 1 1 1 1 技術 的範 囲の 解釈 に つき 、製 法を 考慮 す べき かに つい て技術 的範 囲の 解釈 に つき 、製 法を 考慮 す べき かに つい て技術 的範 囲の 解釈 に つき 、製 法を 考慮 す べき かに つい て技術 的範 囲の 解釈 に つき 、製 法を 考慮 す べき かに つい て (1) PBPクレームの解 釈について 【 原 則 製法 同 一説 】【 原 則 製法 同 一説 】【 原 則 製法 同 一説 】【 原 則 製法 同 一説 】 ア 特許法70条1項及び2項から、「特許 権侵害を理由とする 差 止請求又は 7 当初請求項1「実質的に純粋なプラバスタチンナトリウム。」 当初請求項7「 0.2%未満のプラバスタチンラクトン及び0.1%未満のエピプラバを含む、請 求項1に記載のプラバスタチンナトリウム。」 8 特別部 裁判長裁判官 中野哲弘 裁判官 飯村敏明 塩月秀平 滝澤孝臣 東海林保 控訴棄却

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損 害 賠 償 請 求 が 提 起 さ れ た 場 合 に そ の 基 礎 と な る 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 を 確 定 す る に 当 た っ て は 、『 特 許 請 求 の 範 囲 』 記 載 の 文 言 を 基 準 と す べ き である。特許請求の範 囲に記載される文言 は 、特許発明の技術的範 囲を具 体的に画しているも の と解すべきであり、仮 に、これを否定し、特 許請求 の範囲として記載さ れ ている特定の『文言』が発明の技術的範囲 を 限定す る 意 味 を 有 し な い な ど と 解 釈 す る こ と に な る と 、 特 許 公 報 に 記 載 さ れ た 『特許請求の範囲 』の 記載に従って行動し た 第三者の信頼を損ね か ねない こととなり、法的安 定 性を害する結果とな る 。 そうすると、本件の ように『物の発 明』に 係る特許請求の範囲 に その物 の『製造方法』が記 載 されている場合、当 該 発明の技術的範囲は 、当該製 造方法により製造さ れ た物に限定されるも の として解釈・確定さ れ るべき であって、特許請求 の 範囲に記載された当 該 製造方法を超えて、他 の製造 方法を含むものとし て 解釈・確定されるこ と は許されないのが原 則 である。 もっとも、本 件のよ うな『物の発明 』の場 合、特許請求の 範囲は 、物の 構造又は特性により 記 載され特定されるこ と が望ましいが、物の 構 造又は 特 性 に よ り 直 接 的 に 特 定 す る こ と が 出 願 時 に お い て 不 可 能 又 は 困 難 で あ るとの事情が存在す る ときには、発明を奨 励 し産業の発達に寄与 す ること を目的とした法1条等 の趣旨に照らして、そ の物の製造方法によ っ て物を 特定することも許さ れ 、法 36条6項2号にも反しないと解され る 。 そして、その ような 事情が存在する場合 に は、その技術的 範囲は 、特許 請求の範囲に特定の 製 造方法が記載されて い たとしても、製造方 法 は物を 特定する目的で記載 さ れたものとして、特 許 請求の範囲に記載さ れ た製造 方 法 に 限 定 さ れ る こ と な く 、『 物 』 一 般 に 及 ぶ と 解 釈 さ れ 、 確 定 さ れ るこ ととなる。 イ ところで、物の発 明において、特許請求 の範囲に製造方法が 記 載されて いる場合、このような 形式のクレームは、広 く『プロダクト・バイ・プロ

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セス・クレーム』と称 されることもある。前 記アで述べた観点に 照 らすな ら ば 、 上 記 プ ロ ダ ク ト ・ バ イ ・ プ ロ セ ス ・ ク レ ー ム に は 、『 物 の 特 定 を 直 接 的 に そ の 構 造 又 は 特 性 に よ る こ と が 出 願 時 に お い て 不 可 能 又 は 困 難 で あるとの事情が存在 す るため、製造方法 によ りこれを行っている と き』(本 件では、このようなク レームを、便宜上『真 正プロダクト・バイ・プロセ ス・クレーム 』という こととする。)と 、『物 の製造方法が付加し て 記載さ れている場合におい て 、当該発明の対象とな る物を、その構造又は 特性に よ り 直 接 的 に 特 定 す る こ と が 出 願 時 に お い て 不 可 能 又 は 困 難 で あ る と の 事 情 が 存 在 す る と は い え な い と き 』( 本 件 で は 、 こ の よ う な ク レ ー ム を 、 便宜上『不真正プロダ クト・バイ・プ ロセス・クレーム』と いうこ ととす る。)の 2 種類がある ことになるから、こ れ を区別して検討を加 え ること と す る 。 そ し て 、 前 記 ア に よ れ ば 、 真 正 プ ロ ダ ク ト ・ バ イ ・ プ ロ セ ス ・ ク レ ー ム に お い て は 、 当 該 発 明 の 技 術 的 範 囲 は 、『 特 許 請 求 の 範 囲 に 記 載 された製造方法に限 定 されることなく 、同方 法により製造される 物 と同一 の物』と解釈されるの に対し、不真正プロダ クト・バイ・プ ロセス・クレ ー ム に お い て は 、 当 該 発 明 の 技 術 的 範 囲 は 、『 特 許 請 求 の 範 囲 に 記 載 さ れ た 製 造 方 法 に よ り 製 造 さ れ る 物 』 に 限 定 さ れ る と 解 釈 さ れ る こ と に な る 。 ま た 、 特 許 権 侵 害 訴 訟 に お け る 立 証 責 任 の 分 配 と い う 観 点 か ら い う と、 物の発明に係る特許 請 求の範囲に、製造方 法 が記載されている場 合 、その 記 載 は 文 言 ど お り に 解 釈 す る の が 原 則 で あ る か ら 、 真 正 プ ロ ダ ク ト ・ バ イ・プロセス・クレームに該当すると主張 す る者において『 物の特 定を直 接 的 に そ の 構 造 又 は 特 性 に よ る こ と が 出 願 時 に お い て 不 可 能 又 は 困 難 で ある』ことについて の 立証を負担すべきで あ り、もしその立証を 尽 くすこ とができないときは 、不真正プロダクト・バ イ・プロセス・クレ ー ムであ るものとして、発明 の 技術的範囲を特許請 求 の範囲の文言に記載 さ れたと おりに解釈・確定す る のが相当である。」

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(2) 特段の事情の有 無 ・請求項1の記載にお ける 未満であり、エ ピプラ バの混入量が ナトリウム』の構成は ラ バ が 公 知 の 物 質 で あ る プ ラ バ ス タ チ ン ナ ト リ ウ ム に 含 ま れ る 量 を 数 値 限定したものである か ら て い る 。」 と し て 、 本 件 で は ことが不可能又は困 難 な事情は存在 示。 2 2 2 2 被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て 工程 a)の「『濃縮有 機溶液 し な い た め に 『 液 - 液 抽 出 法 することができ、比 重 の差により水層と れ 、 プ ラ バ ス タ チ ン が 濃 縮 さ れ る 有 機 溶 液 を い う も の と 認 め る の が 相 当 で あ る 造工程で用いられて い るのは、 ま う た め 、・ ・ ・『 液 - 液 抽 出 法 』 の差により水と2層 足性を否定した。 3 3 3 3 発明 の要 旨認 定に つ発明 の要 旨認 定に つ発明 の要 旨認 定に つ発明 の要 旨認 定に つ 特許「法 104 条の 上記特許無効審判請 求 手続において特許庁( 審判体)が把握すべき 請求項の具 体的内容と同様に認 定 されるべきである。」とした上で、 情の有 無 【【【【 不 可能 困難不 可能 困難不 可能 困難不 可能 困難 事 情を 否 定】事 情を 否 定】事 情を 否 定】事 情を 否 定】 の記載にお ける「『プラバスタ チ ンラクトンの混入量 が エ ピプラ バの混入量が0.2 重量 %未満であるプラバ ス タチン の構成は 、不純物であるプラバ スタチンラクトン及 び エピプ ラ バ が 公 知 の 物 質 で あ る プ ラ バ ス タ チ ン ナ ト リ ウ ム に 含 ま れ る 量 を 数 値 限定したものである か ら、その構造によって 、客観的かつ明確に記 載され 」 と し て 、 本 件 で は そ の 製 造 方 法 に よ ら な い 限 り ことが不可能又は困 難 な事情は存在せず 、不 真正PBPクレームであ ると判 被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て 被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て 被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て 被控 訴人 製品 の構 成 要件 該当 性に つい て 濃縮有 機溶液』とは、水とは 完全に混和 液 - 液 抽 出 法 』 の 抽 出 、 再 抽 出 に 使 用 することができ、比 重 の差により水層と 2 層に分離さ れ 、 プ ラ バ ス タ チ ン が 濃 縮 さ れ る 有 機 溶 液 を い う も の と 認 め る の が 相 当 で あ る 」 と し た 上 で 、 被 控 訴 人 の 製 造工程で用いられて い るのは、「水と完全 に 混和してし ・ ・ ・『 液 - 液 抽 出 法 』 に 用 い た 場 合 に 比 重 層に 分離されることがな い ものである」として、 発明 の要 旨認 定に つ 発明 の要 旨認 定に つ 発明 の要 旨認 定に つ 発明 の要 旨認 定に つ き、 製法 を考 慮す べ きか につ いてき、 製法 を考 慮す べ きか につ いてき、 製法 を考 慮す べ きか につ いてき、 製法 を考 慮す べ きか につ いて 条の 3 に係る抗弁の成否を 判断する前提となる 発 明の要旨は、 上記特許無効審判請 求 手続において特許庁( 審判体)が把握すべき 請求項の具 体的内容と同様に認 定 されるべきである。」とした上で、PBP プラバスタ チ ンラクトンの混入量 が0.5重量% 重量 %未満であるプラバ ス タチン 不純物であるプラバ スタチンラクトン及 び エピプ ラ バ が 公 知 の 物 質 で あ る プ ラ バ ス タ チ ン ナ ト リ ウ ム に 含 ま れ る 量 を 数 値 客観的かつ明確に記 載され そ の 製 造 方 法 に よ ら な い 限 り 、 物 を 特 定 す る クレームであ ると判 に 分離されることがな い ものである」として、構成要件充 に係る抗弁の成否を 判断する前提となる 発 明の要旨は、 上記特許無効審判請 求 手続において特許庁( 審判体)が把握すべき 請求項の具 PBPクレ ームの場合の 有 機溶 媒層 界 面 水 層

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発 明 の 要 旨 認 定 に つ い て は 、「 特 許 権 侵 害 訴 訟 に お け る 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 の認定方法の場合と 同 様の理由により、」「発 明の対象となる物の 構 成を、製造 方法によることなく ,物の構造又は特性に よ り直接的に特定する こ とが出願時 において不可能又は 困 難であるとの事情」の 有無により区別し、そ のような事 情の存在する真正PBP クレームについては 物 同一、そのよう な事情 の存在しな い不真正PBPクレーム については製法同一 に 解釈すべきであると 判 示した。 発明の技術的範囲 に ついて検討したよう に 、本件では不可 能困難 事情の存在 は否定。 4 4 4 4 乙乙乙乙30303030発 明に 基 づく発 明に 基 づく発 明に 基 づく発 明に 基 づく ( 訂正 前) 本件 特許 発明( 訂正 前) 本件 特許 発明( 訂正 前) 本件 特許 発明( 訂正 前) 本件 特許 発明1111のの 進 歩 性の欠 如のの進 歩 性の欠 如進 歩 性の欠 如進 歩 性の欠 如 ・工程a)からe)は一致。 ・相違点は、当該工 程 によって得られるプ ラ バスタチンナトリウ ム の濃度が、 乙30発明では「純度は HPLC分析では99.5%を越える。」ものであ るのに対 し、本件発明 1 では 「プラバスタチンラ ク トンの混入量が 0.5 重量%未満 であり、エピプラバ の 混入量が 0.2 重量%未 満であるプラバスタ チ ンナト リウム」である。 ・プラバスタチンラ ク トンが 0.02〜0.06%、 エピプラバが 0.19〜0.65%であ る プ ラ バ ス タ チ ン ナ ト リ ウ ム 製 剤 が 本 件 特 許 の 優 先 日 前 に 公 然 取 得 す る ことができた。 ・プラバスタチンナト リウムにおいてプラ バ スタチンラクトン及 び エピパラ バが低減すべき不純 物 であることは乙1文献 に記載されており、ま た、医 薬品の技術分野にお い て、より高純度のもの を製造することは、周 知の技 術課題である。 ・乙 30 発明の精製方 法を繰り返したり、 最 適化することで、よ り 高純度の ものまで精製するこ と は、当業者が容易に な し得ることである。

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などとして、本件発 明 1 は,乙 30 発明並びに乙 1 文献及び技術常識によっ て,当業者が容易に 想 到し得た発明である と 認められると判示。 第 第 第 第 444 4 最 高裁 判決最 高裁 判決最 高裁 判決最 高裁 判決 9 の 概 要 の 概 要 の 概 要 の 概 要 1 1 1 1 法廷 意見法廷 意見法廷 意見法廷 意見 (1) 原審の基準 【 原 則 製 法 同一 説】【 原 則 製 法 同一 説】【 原 則 製 法 同一 説】 について 【 原 則 製 法 同一 説】 是認できないとした 。 その理由は(2)に述べ るとおり。 (2) PBPクレームの技 術的範囲について【 原則 物【 原則 物【 原則 物【 原則 物 同一 説】同一 説】同一 説】同一 説】 「(1) 願 書に 添付 した 特許 請求 の範 囲の 記 載は ,こ れに 基づ い て, 特許 発明 の技 術 的 範 囲 が 定 め ら れ ( 特 許 法 7 0 条 1 項 ), か つ , 同 法 2 9 条 等 所 定 の 特 許 の 要 件 に ついて審査する前提 と なる特許出願に係る 発 明の要旨が認定され る(最高裁昭和6 2年(行ツ )第3号平 成3年3月8日第二 小 法廷判決・民集第45 巻3号123頁 参照)という役割 を有 しているものである 。そして,特許は ,物の 発明,方法の発 明又は物を生産する 方 法の発明についてさ れ るところ,特許が物の 発明についてさ れている場合には ,そ の特許権の効力は ,当 該物と構造,特 性等が 同一である物で あれば,その製造方 法 にかかわらず及ぶこ と となる。 したがって,物の発明 についての特許に係 る 特許請求の範囲にそ の 物の製造方法が 記載されている場合 で あっても,その特許 発 明の技術的範囲は,当 該製造方法によ り製造された物と構 造 ,特性等が同一である 物として確定される も のと解するのが 相当である。」 (3) PBP クレームと明 確性要件(特許法36 条6項2号)【 不 可 能非 実 際的 基準 】不 可 能非 実 際的 基準 】不 可 能非 実 際的 基準 】不 可 能非 実 際的 基準 】 9 第二小法廷 裁判長裁判官 千葉勝美 裁判官 小貫芳信 鬼丸かおる 山本庸幸 破棄差戻し(全員一致)

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「(2) ところで,特許 法36条6項2号に よ れば,特許請求の範囲 の記載は,「発明 が明確であること」 と いう要件に適合する も のでなければならな い 。特許制度は, 発明を公開した者に 独 占的な権利である特 許 権を付与することに よ って,特許権者 についてはその発明 を 保護し,一方で第三者 については特許に係 る 発明の内容を把 握させることにより ,その発明の利用を図 る ことを通じて,発明を 奨励し,もって 産 業 の 発 達 に 寄 与 す る こ と を 目 的 と す る も の で あ る と こ ろ ( 特 許 法 1 条 参 照 ),同 法 3 6 条 6 項 2 号 が 特 許 請 求 の 範 囲 の 記 載 に お い て 発 明 の 明 確 性 を 要 求 し て い る のは,この目 的を踏ま えたものであると解 す ることができる 。この 観点からみると, 物 の 発 明 に つ い て の 特 許 に 係 る 特 許 請 求 の 範 囲 に そ の 物 の 製 造 方 法 が 記 載 さ れ て い る あ ら ゆ る 場 合 に , そ の 特 許 権 の 効 力 が 当 該 製 造 方 法 に よ り 製 造 さ れ た 物 と 構 造,特性等が同一であ る物に及ぶものとし て 特許発明の技術的範 囲 を確定するとす るならば,これ により ,第三者の利益 が不当 に害されることが生 じ かねず,問題が ある。すなわち ,物の 発明についての特許 に 係る特許請求の範囲 に おいて,その製 造方法が記載されて い ると,一般的には,当 該製造方法が当該物 の どのような構造 若しくは特性を表し て いるのか,又は物の発 明であってもその特 許 発明の技術的範 囲を当該製造方法に よ り製造された物に限 定 しているのかが不明 で あり,特許請求 の 範 囲 等 の 記 載 を 読 む 者 に お い て , 当 該 発 明 の 内 容 を 明 確 に 理 解 す る こ と が で き ず,権利者がどの範囲 において独占権を有 す るのかについて予測 可 能性を奪うこと になり,適当ではな い 。 他方,物の発明 につい ての特許に係る特許 請 求の範囲においては ,通常,当該物 に つ い て そ の 構 造 又 は 特 性 を 明 記 し て 直 接 特 定 す る こ と に な る が , そ の 具 体 的 内 容,性質等によって は ,出願時において当 該 物の構造又は特性を 解 析することが技 術的に不可能であっ た り,特許出願 の性質上 ,迅速性等を 必要とす ることに鑑みて, 特定する作業を行う こ とに著しく過大な経 済 的支出や時間を要す る など,出願人に こ の よ う な 特 定 を 要 求 す る こ と が お よ そ 実 際 的 で な い 場 合 も あ り 得 る と こ ろ で あ る。そうすると,物の 発明についての特許 に 係る特許請求の範囲 に その物の製造方

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法を記載することを 一 切認めないとすべき で はなく,上記のような 事情がある場合 には,当該製造方法 に より製造された物と 構 造,特性等が同一で あ る物として特許 発明の技術的範囲を 確 定しても,第三者の利 益を不当に害するこ と がないというべ きである。 以上によれば,物の 発 明についての特許に 係 る特許請求の範囲に そ の物の製造方 法が記載されている 場 合において,当該特許 請求の範囲の記載が 特 許法36条6項 2号にいう「発 明が明 確であること」という 要件に適合するとい え るのは,出願時 において当該物をそ の 構造又は特性により 直 接特定することが不 可 能であるか,又 は お よ そ 実 際 的 で な い と い う 事 情 が 存 在 す る と き に 限 ら れ る と 解 す る の が 相 当 で ある。」(波線は発表 者 による) ⇒ 不可能非実際事 情 が存在し、明確性要件 に適合するか否か等 に ついて審理を尽 くさせるため、差戻 し 。 2 2 2 2 補足 意見 (補足 意見 (補足 意見 (補足 意見 ( 千 葉勝 美 裁判 官千 葉勝 美 裁判 官千 葉勝 美 裁判 官千 葉勝 美 裁判 官 )))) (1) PBPクレームの解 釈、処理の基本的な 枠 組み 10 「 平 成 1 6 年 の 特 許 法 の 改 正 に よ り 同 法 1 0 4 条 の 3 が 創 設 さ れ , 侵 害 訴 訟 に お い て 特 許 無 効 の 抗 弁 を 主 張 す る こ と が 可 能 と な り , こ れ に よ り , 同 条 に 係 る 無 効 の 抗 弁 の 成 否 ( 当 該 発 明 の 新 規 性 ・ 進 歩 性 の 有 無 ) を 判 断 す る 前 提 と な る 発 明 の 要 旨 認 定 を す る 場 面 と , 侵 害 訴 訟 に お け る 請 求 原 因 と し て 特 許 発 明 の 技 術 的 範 囲 を 確 定 す る 場 面 と が 同 一 の 訴 訟 手 続 に お い て 審 理 さ れ る こ と と な っ た 。 そ う す る と , 両 場 面 に お け る P B P ク レ ー ム の 解 釈 , 処 理 の 基 本 的 な 枠 組 み が 異 な る こ と は 不 合 理 で あ る か ら , こ れ を 統 一 的 に 捉 え る べ き で あ り , こ の こ と は 我 が 国 の 特 許 法 制 上 当 然 の こ と で あ っ て , 10 同日付の別件の最高裁第二小法廷判決(平成24年(受)第2658号特許権侵害差止請求 事件)において、発明の要旨認定について物同一説をとっていることを明らかにしている。

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多 数 意 見 は , こ の 見 解 を 前 提 に , 両 場 面 と も い わ ゆ る 物 同 一 説 に よ り 考 え る こ と に し ているのである。」(波線は発表者による。) (2) PBPクレームを認 める例外的事情の内 容 「「 不 可 能 」 と は , 出 願 時 に 当 業 者 に お い て , 発 明 対 象 と な る 物 を , そ の 構 造 又 は 特性(発明の新規性・進歩性の判断におい て 他とは異なるもので あ ることを示すも の と し て 適 切 で 意 味 の あ る 特 性 を い う 。) を 解 析 し 特 定 す る こ と が , 主 に 技 術 的 な 観 点 か ら 不 可 能 な 場 合 を い い ,「 お よ そ 実 際 的 で な い 」 と は , 出 願 時 に 当 業 者 に お いて,どちらかとい え ば技術的な観点とい う よりも,およそ特定 す る作業を行うこ とが採算的に実際的 で ない時間や費用が掛 か り,そのような特定作 業を要求するこ とが,技術の急速な進 展と国際規模での競 争 の激しい特許取得の 場 面においては余 りにも酷であるとさ れ る場合などを想定し て いる。特に ,後者につ いては,必ずし も一義的でないため ,実際上どのような場 合 がこれに当たるかは ,結局,今後の裁 判例の集積により方 向 性が明確にされてい く ことになろう。 (2) 特許 庁の 現在 の審 査実 務で 採用 され て いる とさ れて いる 「 不適 切な 場合 」と い う基準は,余りにも 価 値判断的な要素が強 く ,内容が明確でない た め範囲が広がり 過ぎ,また ,構造等で さほど困難なく特定 で きる場合であっても ,単に発明の構成 を理解しやすくする た めに製法を記載する こ とまで認める余地を 残 すこととなり, いずれにしろ,PB P クレームの概念を認 め た趣旨と齟齬しかね な い面が生じ,妥 当とはいえないとこ ろ である。 なお,発明の構成を よ り分かりやすくする た めであれば,製造方 法 については, 特 許 請 求 の 範 囲 に で は な く ,「 発 明 の 詳 細 な 説 明 」 に 記 載 す る こ と で 足 り , そ う す べきである。」(波線 は 発表者による) (3) 今後の特許実務 と 従前のPBPクレームの扱い 「(1) こ れま で, PB Pク レー ムの 出願 時 の審 査に おい ては , 不可 能・ 困難 ・不 適

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切事情を緩く解して こ の点の実質的な審査 を しないまま出願を認 め てきているが, 今後は,審査の段階 で は,特許請求の範囲 に 製造方法が記載され て いる場合には, それがPBPクレー ム の出願である点を確 認 した上で,不可能・非 実際的事情の有 無については,出願人 に主張・立証を促し,それが十分にされな い 場合には拒絶査 定をすることになる 。このような事態を避 け たいのであれば,物 を 生産する方法の 発明についての特許( 特許法2条3項3号 )としても出願してお く ことで対応する こととなろう。 (2) この 点に つき ,原 審で ある 知財 高裁 大 合議 部の 判決 が示 す 基準 によ れば ,特 許 庁 の 審 査 実 務 で は 物 の 発 明 の 範 囲 を 構 造 等 で 直 接 特 定 す る こ と が 出 願 時 に お い て 不 可 能 又 は 困 難 で あ る と の 事 情 ( 以 下 「 不 可 能 ・ 困 難 事 情 」 と い う 。) の 存 否 に関 わりなく明確性要件 違 反とはならないこと を 前提とし,PBPクレ ームの解釈につ いて,発明の要旨認 定 の場面でも特許発明 の 技術的範囲の確定の 場 面でも,原則と して,不真正P BPク レームとして製法限 定 説によるが,不 可能・困難事情が存在 する真正PBPクレ ー ムの場合に限り,物同 一説によるという言 わ ば二分論を採用 している。これ は,特 許法1条等の趣旨に 照 らし,その物の 製造方 法によって物を 特定することも許さ れ ,同法36条6項2 号 にも違反しないとす る ものであり,同 法 の 原 則 と 特 許 庁 の 審 査 実 務 と を 踏 ま え た 現 実 的 な 対 応 を 模 索 し た 苦 心 の 見 解 で あろう。 しかしながら,この 見 解は,PBPクレー ム の解釈について物同 一 説を採用した と解される当審判例( 最高裁平成9年(行ツ )第120号同 年9月 9日第三小法廷 判決・公刊物 未登載 ,最高裁平成9年(行ツ )第121号 同年9月 9日第三小法廷 判決・公刊物 未登載 ,最高裁平成10年(オ )第1579 号同年1 1月10日第三 小法廷判決・公刊物未 登載)と齟齬する 面が あり,また,そ もそも ,当該PBPク レームがこの真正, 不 真正のどちらに当た る かは裁判所の見解が 示 されない限り, 明確ではなく,真正 か 不真正かで特許請求 の 範囲は大きく異なる こ とになり,出願 人の意図と齟齬する 事 態が生じかねない 。ま た,第三者にと っても ,当該発明が真

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正か不真正かで権利 の 範囲が大きく異なる が ,その点は明確では な く,予測可能性 を奪うおそれが生ず る 。このことは ,結局,特許の範囲が不明確 で 特定されていな いことによるもので あ り,特許法36条5 項 ,6項2号等に反す る 事態であるとい わざるを得ない 。更に ,この見解に 従うと ,審査実務においても ,真正か不真正か で特許発明の範囲等 が 異なるため,この点を しっかりと区別した 上 で特許出願を認 める必要が生ずるこ と となり,その結 果,審 査は慎重にならざる を 得ず,その負担 が重くなり,審査の 遅 延を招くおそれも大 き い。 (3) 多数 意見 は, 原審 が提 起す るこ とと な った 上記 の問 題点 を 踏ま え, PB Pク レ ームが認められる事 情 を本来の趣旨を踏ま え て厳格に捉え,それに 当たらず拒絶さ れるおそれがある場 合 には,物を生産する方 法の特許として出願 さ せるという実務 を定着させる方向の 後 押しとなる解釈を示 す ものである。これは,特許出願の際の 審査が,PBPクレー ムを物質特許として 認 めるための要件を実 質 的にも審査する ことになる点でこれ ま でとは変わることと な るが,出願人に とって は,従前も ,構 造等で特定できる場 合(不可能・非実際的事 情が存在しない場合 )であるのに通常 の 物 の 特 許 で は な く P B P ク レ ー ム で あ る と し て 出 願 す る こ と が ど の 程 度 広 く 行 われてきたかは疑問 も あり,また ,本当に「 不可能であるか ,又は およそ実際的で ない」のであれ ば,こ の点は,出願人 にとっ て主張立証すること に 大きな負担とな ることはないであろ う(例えば,生命科学の 分野で,新しい 遺伝子 操作によって作 られた細胞等であれ ば ,それを出願時にお い て構造等で特定する こ とに不可能・非 実際的事情が存在し な いとして拒絶される と はいえないであろう。)。また,審査に おいても,出願人がこ れを積極的かつ厳密 に 立証することは事柄 の 性質上限界があ るので,これを 厳格に 要求することはでき ず ,合理的な疑問 がない 限り,これを認 める運用となる可能 性 が大きく,その意味 で は,さほど大きな懸 念 を抱かなくても 済む可能性が大きい 。 (4) 次に ,従 前, 出願 審査 の段 階で は原 則 とし て不 可能 ・困 難 事情 の存 否を 実際 上 チェックしないまま 既 に認められ登録され て きたPBPクレーム に ついて,今後,

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無 効 審 判 請 求 や 侵 害 訴 訟 の 過 程 で の 特 許 無 効 の 抗 弁 の 提 出 が さ れ る こ と も 予 想 さ れる。しかし ,出願時 において不可能・非実 際的事情の存在を明 ら かにできないの であれば(それ は,構 造等で特定できるの に それをせず,安 易に製 法により特定し たPBPクレームと し て出願したというこ と になる。),それが無効 とされても止む を得ないところであ る 。もっとも ,この事態 は,特許出願の 審査が 緩くPBPクレ ームを認めてきたこ と に起因するものであ り ,このことは出願人の みの責任ともい えないところであっ て ,これを避けるため に は,特許無効審判に お ける訂正の請求 (特許法134条の 2 )や訂正審判の 請求( 同法126条)等を活 用することも考 えられ,それらが現実 にどのように処理さ れ るかは今後に残され た 問題であろう。」 (波線は発表者によ る ) 3 3 3 3 意見 (意見 (意見 (意見 ( 山 本庸 幸裁 判 官山 本庸 幸裁 判 官山 本庸 幸裁 判 官 )山 本庸 幸裁 判 官))) (1) 原審差戻しには 賛 成。その理由は多数 意 見と異なる。 「本 件特 許が 無効 で ない 限り ,本 件特 許 発明 の技 術的 範囲 に 属す るも ので ある と考 えら れる もの で ある が, 果た して そ のと おり か, また , その 出願 の経 緯等 から して これ を限 定 的に 解釈 する 可能 性 はな いか 等に つい て 審理 を尽 くさ せる という意味で,本件 を 原審に差し戻すこと に 賛成するものである。」 (2) 多数意見に対す る 問題提起 ア PBP ク レー ムの ある特 許請 求の 範囲 の記載 が明 確で なけ ればな らな いと す ることについて 一般論としては正し い としつつ、次のよう に 問題提起をしている 。 「物の 発明 につ き特 許請求 の範 囲が PB Pクレ ーム 形式 で記 載され てい ない と, かえって明確でなく な る場合が多々ある。と りわけ新規性のある 物 の発明では, 出願人 がど のよ うな 方法で 作っ た物 であ るかを 記述 すれ ば非 常に分 かり やす い のに, これ を無 理や りその 物の 構造 や特 性で記 述し よう とす ると間 違い なく そ

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れは複 雑な 概念 や用 語で表 現す るこ とに ならざ るを 得な い。 それで は, 出願 人 として は無 駄な 時間 や費用 が掛 かっ て出 願する 時期 を失 する おそれ があ るだ け でなく ,そ のよ うな 記述は 審査 官に とっ ても, また 当業 者に とって もか えっ て 分かり にく いも のと なり, それ こそ 明確 性の要 件に 反す るも のにな って しま う のではないだろうか。」(波線は発表者によ る ) 具体例として、 「生命科学の分野で 新 規性のある細胞に関 す る特許請求の範囲を,「いかなる細 胞にど のよ うな 遺伝 子をど うや って 注入 する方 法に より 作成 された 細胞 」と し てPB Pク レー ムで 記述す れば 当業 者で あれば 極め て分 かり やすい 特許 請求 の 範囲と なる のに ,こ れをそ の出 来た 細胞 の構造 や特 性に 基づ いて記 述し なけ れ ばなら ない とな ると ,それ なり の時 間や 費用や 労力 をか けれ ば必ず しも 不可 能 ではな いの かも しれ ないが ,そ うい う努 力をし てや っと 記述 できた 結果 の当 該 細胞に つい ての 特許 請求の 範囲 の記 載は ,およ そ無 味乾 燥で 誰にも 分か らな い 不得要 領の もの にな ること が多 いの では ないか と思 われ る。 その結 果, 明確 性 の要件 で拒 絶等 され てしま うこ とが 容易 に看取 され る。 これ では, 発明 の保 護 及びそ の一 般の 利用 との調 和と いう 特許 法の理 念か らま すま す遠ざ かる 結果 に なると考える。 この点,多数意見は ,「出願時において当 該 物の構造又は特性を 解 析すること が技術 的に 不可 能で あった り, 特許 出願 の性質 上, 迅速 性等 を必要 とす るこ と に鑑み て, 特定 する 作業を 行う こと に著 しく過 大な 経済 的支 出や時 間を 要す る など, 出願 人に この ような 特定 を要 求す ること がお よそ 実際 的でな い場 合も あ り得る とこ ろで ある 」とし て, 一見 極め て限定 的な がら PB Pクレ ーム を認 め ようと して いる かの ごとく であ るが ,結 局のと ころ 「法 36 条6項 2号 にい う 『発明 が明 確で ある こと』 とい う要 件に 適合す ると いえ るの は,出 願時 にお い て当該 物を その 構造 又は特 性に より 直接 特定す るこ とが 不可 能であ るか ,又 は およそ 実際 的で ない という 事情 が存 在す るとき に限 られ ると 解する 」と する 。

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しかし なが らこ れで は,ほ とん どP BP クレー ムが 認め られ る余地 はな いの で はなかろうか。」(波 線 は発表者による)。 イ 【不可能非実際 的 基準】について 「こ の点 に関 し思 い 起こ され るの は, 新 しい 遺伝 子操 作に よ って 作ら れた 幹細 胞等 につ いて 出願 さ れる 最近 の生 命科 学 の分 野に おけ る重 要 な発 明で ある 。こ のよ うな 発明 を物 の 発明 とし て出 願す る につ いて は, その 特 許請 求の 範囲 は, PB Pク レー ムで 記 載さ れる こと が大 半 であ ろう と思 われ る 。そ うす ると ,上 記の 多数 意見 を基 に すれ ば, 出願 人は , 特許 請求 の範 囲の 記 載に 関し ,P BP クレ ーム であ るが ゆ えに ,そ れが 拒絶 又 は無 効理 由と なる こ とを 懸念 して ,ま ずは 構造 又は 特性 に より その 物を 直接 特 定で きな いか を考 慮 する こと とな ろう。 しか し, それ が「 出 願時 にお いて 当該 物 をそ の構 造又 は特 性 によ り直 接特 定す ることが不可能であ る か,又はおよそ実際的 でないという事情が 存 在するとき」 (以下「不可能非 実際 的基準」という。)と いう多数意見の基準 に 基づいて行う 作業 と立 証は ,決 し て容 易な もの では な く, むし ろそ のよ う な作 業や 立証 を考 える こと 自体 が現 実 的で はな いよ うに 思 えて くる が, 絶対 に でき ない とい う確 証も ない 。他 方で そ のよ うな こと に時 間 をと られ てい ては , 先願 主義 の下 で世 界の 他の 出願 人と の 熾烈 な競 争に 後れ を 取っ てし まう ので , 特許 出願 が急 がれ る。 そう いう こと で ,構 造や 特性 で当 該 物を 表現 でき ず, さ りと てこ れで よい とい う確 証も ない ま ま, PB Pク レー ム の形 式で 出願 に踏 み 切る もの と思 われ る。 そう する と次 に ,審 査・ 審判 段階 で 不可 能非 実際 的基 準 が拒 絶・ 無効 理由 にな るか どう かが 審 査等 され るこ とに な る。 しか し, この 不 可能 非実 際的 基準 とい うも のが ,と も かく 余り に曖 昧で 漠 然と した 掴み どこ ろ のな いも ので ある こと から ,私 の見 る とこ ろ, 安定 的か つ 統一 した 運用 ・解 釈 は非 常に 難し いの ではないかと考える 。しかも,「不可 能であ るか,又はお よそ実際 的でない」と いう のは ,誰 がど う いう 基準 でい かに 判 定す るか が全 く明 ら かに され てい ない 以上 は, 限り なく 「 不可 能」 と同 義で は ない かと 考え る。 そ の結 果, PB Pク

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レー ムを 含む 特許 請 求の 範囲 があ る物 の 特許 出願 のほ とん ど は, 明確 性の 要件 違反 で拒 絶さ れる の では ない かと 懸念 し てい る。 これ では , いわ ゆる 萎縮 効果 が働 いて ,我 が国 の 特許 出願 から ,本 当 に必 要な PB Pク レ ーム まで 駆逐 され てし まい ,発 明の 保 護に はつ なが らな い ので はな いだ ろう か 。さ らに 問題 は, これ が既 存の 特許 の 無効 理由 にな るこ と から ,こ れま で成 立 した PB Pク レー ムで 記述 され てい る 多数 の特 許に つい て も, その 無効 を争 う 訴訟 が頻 発す るの では ない かと 懸念 し てい る。 その 特許 が 成立 した とき には , 不可 能非 実際 的基 準というものを意識 す る余地もなかったわ け であるから,そのよう な訴訟では, こうした事情もよく よ く考慮に入れるべき で ある。」(波線は発表 者 による) 第 5 第 5 第 5 第 5 若 干の 考察若 干の 考察若 干の 考察若 干の 考察 1 1 1 1 具体 的事 案に おけ る 結論 の違 い具体 的事 案に おけ る 結論 の違 い具体 的事 案に おけ る 結論 の違 い具体 的事 案に おけ る 結論 の違 い 知財高 裁( 大合 議) 判決と 最高 裁判 決と で、具 体的 な事 案に ついて 、結 論の 相違が生じるのか。 (1) PBPクレームにあ たるか否かの判断 知財高裁 「物の発明において,特許請求の範囲に製 造 方法が記載されてい る 場合」 最高裁 「 物 の 発 明 に つ い て の 特 許 に 係 る 特 許 請 求 の 範 囲 に そ の 物 の 製 造 方 法 が記載されている場 合 」 ⇒基準として、実質 的 に差異はない。 な お 、 当 該 基 準 に 関 す る 特 許 庁 の 「 当 面 の 審 査 の 取 扱 い 」 に つ い て は 、

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資料 1の別紙1を参照。 (2) 例外事情の範囲 知財高裁 「 物 の 特 定 を 直 接 的 に そ の 構 造 又 は 特 性 に よ る こ と が 出 願 時 に お い て 不可能又は困難であ る との事情」(不可能困 難事情) 最高裁 「 出 願 時 に お い て 当 該 物 を そ の 構 造 又 は 特 性 に よ り 直 接 特 定 す る こ と が不可 能で ある か、 又はお よそ 実際 的で ないと いう 事情 」( 不 可能非 実際的事情) ⇒文言としては、「困 難」、「実際的では ない 」と異なっている が、いずれも 幅のある概念である た め、両事情の広狭は 、 必ずしも明らかでは な い。 な お 、 不 可 能 非 実 際 的 事 情 に 関 す る 特 許 庁 の 「 当 面 の 審 査 の 取 扱 い 」 に ついては、資料1の別 紙2を参照。 (3) 例外事情充足( 非 充足)の効果 知財高裁 ・特許の有効性 例外事情を欠けば即 明 確性要件違反という こ とではない。 ・技術的範囲 例外事情があれば物 同 一、例外事情がなけ れ ば製法同一 最高裁 ・特許の有効性

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例外事情がある場合 に 限り、明確性要件を 備 える。 ・技術的範囲 物同一 ⇒ 例外事情がなく 、 被告製法が同一であ る 場合、 ・知財高裁の基準に よ れば、侵害 ・最高裁の基準によ れ ば、非侵害(104条の 3の抗弁成立) ただし、他の請求項に 物を生産する方法の 発 明(2条3項3号)があれ ば、当該請求項によ る 権利行使は可能。 2 2 2 2 補正 ・補正 ・補正 ・補正 ・ 訂 正訂 正訂 正 に つい て訂 正に つい てに つい てに つい て (1) 千葉補足意見に お ける指摘 「 出 願 時 に お い て 不可 能 ・ 非 実 際 的 事 情の 存 在 を 明 ら か に でき な い の で あ れ ば ( そ れ は 、 構 造 等で 特 定 で き る の に それ を せ ず 、 安 易 に 製法 に よ り 特 定 した PBP ク レームと して出願したという こ とになる。)、それが 無 効とされ て も 止 む を 得 な い とこ ろ で あ る 。 も っ とも 、 こ の 事 態 は 、 特許 出 願 の 審 査 が緩く PBP クレーム を認めてきたことに 起 因するものであり、 こ のことは 出 願 人 の み の 責 任 とも い え な い と こ ろ であ っ て 、 こ れ を 避 ける た め に は , 特許無効審判におけ る 訂正の請求(特許法 134 条の 2)や訂正審 判の請求 (同法 126 条)等を 活用することも考え ら れ,それらが現実に ど のように 処理されるかは今後 に 残された問題であろ う 。」

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(2) 知財高判平成19年9月20日(平成 18年(行ケ)第 10494号) 11 「補正後請求 項 1 は 「…ホログラフィッ ク ・グレーティング製 作 方法」と 記 載 さ れ 、 そ の 発 明 の カ テ ゴ リ ー が 「 方 法 の 発 明 」 で あ る こ と は 明 ら か であるから、本件 補正 は、『物の発明 』であ った補正前請求項1を『方法 の発明』である補正後 請求項に補正するこ と を目的としている 12 。発明 のカテゴリーによっ て 、法律効果が異なる こ とは前記 1 のとおり である か ら 、 発 明 の カ テ ゴ リ ー を 「 物 の 発 明 」 か ら 「 方 法 の 発 明 」 に 変 更 す る ことは、「物の 発明」として請求していた 権 利とは異なる効果を 有 する別 の 権 利 を 請 求 す る こ と に ほ か な ら な い 。 し た が っ て 、 本 件 補 正 は 、 特 許 請求の範囲を変更す る ものであり、特許法17 条の 2 第 4項各号 13 のい ずれにも該当しない。」 ⇒ 物 の 発 明 か ら ( 物 を 生 産 す る ) 方 法 の 発 明 へ の 補 正 は 認 め ら れ な い と す る 知 財 高 裁 判 決 あ り 。 こ の 判 決 を 前 提 と す る 限 り 、 補 正 ・ 訂 正 はできないとも思え る 。 ただし、特許庁の「当 面の審査の取扱いに つ いて」では、製造方法 の 発明にする補正を「 明 りょうでない記載の 釈 明」(17条の 2 第5 項4 号)に該当するもの と して、認めるとされ て いる 14 そうすると訂正につ い ても、このよう な訂正 は126 条1項ただし書き 3号に該当するものと 考えられるが、126条6項 15 の要件を充足す る 11 ホログラフィック・グレーティング事件。 第4部 裁判長裁判官 田中信義 裁判官 古閑裕二 浅井憲 12 補正前の請求項1「・・・ホログラフィック・グレーティング。」 補正後の請求項1「・・・ホログラフィック・グレーティング製作方法において,(a)・・・ (b)・・・(c)・・・ことを特徴とするホログラフィック・グレーティング製作方法。」 13 現在の17条の2第5項各号。 14 ただし、侵害訴訟や審決取消訴訟の場面において、裁判所が同様の判断を行うかについては、 不明。訂正についても同様。 15 第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は 変更するものであつてはならない。

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かについては、なお 疑 問もある 16 。 (3) 訂正によりPBPク レームとなった場合 123 条1項8号により、無効理由を構成す る こととなるか。 3 3 3 3 PBPPBPPBPPBPクレ ーム の範囲クレ ーム の範囲 クレ ーム の範囲クレ ーム の範囲 最高裁 「 物 の 発 明 に つ い て の 特 許 に 係 る 特 許 請 求 の 範 囲 に そ の 物 の 製 造 方 法 が 記載されている場合 」 → 文言上は極めて 広 範。 従来、PBP だと考え ら れていなかったよう な クレームまで含まれ 得るのではないか 。ま た、最高裁判 決の PBPの定義に形式上含ま れるものでも、決して 「不明確」とは言えな いものも含まれるこ とにならないか。 eg.オール事件(最判 昭和50年5月27日(昭和50年(オ)第54 号)) 「空室1を有する合成 樹脂製水かき2の上部 に雄ネジ 3と、 その上方に凸条4を 有する嵌入部 5を設 け、合成樹脂製柄 6の下部に凸条 4と合 致する凹条 7 を設け 、該柄 6の外部 に雄ネジ3と螺合す る雌ネジ8を有する 合成樹脂製結合環 9を回動可能に取り付 け、水かき2の凸条4を柄 6の凹条7 に嵌入し、結合環9の 雌ネジ8と水かき 2の雄ネジ3を螺 合し、水かき2と柄 6を一体化してなるオ ー ルの構造。」 16 物の発明と製造方法の発明とでは、実施行為の範囲が異なり、間接侵害の成立範囲なども異 なり得る。

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4 4 4 4 「物 同一 」の 範囲「物 同一 」の 範囲「物 同一 」の 範囲「物 同一 」の 範囲 (1) 製法要件が物同 一 の範囲に影響を与え る か 「a)ないし e) を含 ん で成る方法によって 製 造される、プラバス タ チンラ クトンの混入量が0.5重量%未満であり 、エ ピプラバの混入量が0.2重 量%未満であるプラ バ スタチンナトリウム。」 → a)ないしe)を含 んでなる製法で作ら れ た物と、プラバスタ チ ンラ クトン及びエピプラ バ 「以外の」不純物の濃 度まで同じでなけれ ばならないか。 → 他の不純物を含 む 結果、プラバ スタチン ナトリウムの純度が 著 し く低かった場合はど う か。 逆に、プラバ スタチン ナトリウムの純度は 十 分に高いが、他の製 法を用いることで 、本 件特許製法では生じ な い、別製法特 有の不 純物を生じる場合は ど うか。 cf.知財高裁大合議判 決 「被控訴人は、前 記 第3,2(2)アにおいて 、被告製法がプラ バス タチンナ ト リ ウ ム の ほ か プ ラ バ ス タ チ ン ラ ク ト ン 及 び エ ピ プ ラ バ 以 外 の 多 様 な 不 純 物 を も 含 め た 組 成 物 の 構 成 内 容 が 本 件 製 法 要 件 に よ り 製 造 さ れた物と同一である こ との証明がない限り、本件特許の技術的範 囲 に 属するものというこ と はできないと主張す る 。 しかし、そも そも本件 発明 1はプラバスタチ ンラクトン及びエピ プ ラ バ以外の不純物につ い ては規定しておらず 、物の特定及び権利範 囲 が 不明確であるとはい え ない。したが って、被 控訴人の上記主張は 、本

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件特許の請求項の記 載 に基づかない主張で あ り、採用する ことがで き ない。」 (2) 製法以外に物を 特 定する構成要件がな い 場合はどうか ①「a)ないし e) を含 んで成る方法によっ て 製造される、プラバ ス タチ ンラクトンの混入量 が 0.5重量%未満であ り、エピプラバの混入 量が 0.2重量%未満である プラバスタチンナト リ ウム。」 ②「a)ないし e) を含 んで成る方法によっ て 製造される、プラバ ス タチ ンナトリウム。」 ③「a」ないしe」 を 含んで成る方法によ っ て製造される物質。」 (3) 仮に、製法が( 一 定の場合には)物同 一 の範囲に影響を与え る とした場 合、例えば訂正要件 に おける「特許請求の 範 囲の減縮」(126 条1 項1 号) に あ た る か 否 か 、「 実 質 上 特 許 請 求 の 範 囲 を 拡 張 し 、 又 は 変 更 す る も の で あつてはならない。」( 126 条 6 項)を満たす か否かの判断の際に も 考慮さ れるのか。 以上

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