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司法試験 平成 30 年司法試験出題趣旨分析会講師オリジナルレジュメ LU18846

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司法試験

平成30年司法試験 出題趣旨分析会 講師オリジナルレジュメ

LU18846

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平成30年度司法試験 出題の趣旨 分析会

今回の無 料公 開講座 で は,平成 30 年度司 法 試験の出 題の 趣旨を 分 析してい きま す。

必修7科 目の 全てを 1 20分で 講義 する都 合 上,1科 目あ たり平 均 約17分 しか 説明 できない ため ,今後 の 試験対策 に役 立ちそ う な箇所を ピッ クアッ プ して解説 して いき ます。今 回の 講座を , 是非とも ,次 年度の 試 験対策に お役 立てく だ さい。

こ の レ ジ ュ メ に 掲 載 し た 出 題 の 趣 旨 に は , 私 が , 下 線 を 付 し た り , 太 字 に し た り と 装 飾 を し て い ま す 。 ま た ,〔 注 : ・ ・ ・ 〕 又 は 〔 ・ ・ ・ 〕 と し て 私 の 言 葉 で 文 字 や 文 章 を 補 充 し た 箇 所 が あ り ま す 。 な お , こ の レ ジ ュ メ に 掲 載 し た 「関 連 知 識 」 の 一 部 は , 私 が 制 作 し て い る 「矢 島 の 速 修 イ ン プ ッ ト 講 座」 ( 2 0 1 8 年 版 ) の テ キ ストから 抜粋 したも の です。

平成30 年1 0月2 1 日

LEC専 任講 師 矢 島 純 一

・ご連絡

な お , 後 日 , 試 験 考 査 委 員 の採 点 実 感 が 公 表 さ れ た ら ,採 点 実 感 の 分 析 会 を 実 施します ので ,そち ら も是非参 加し てみて く ださい。

目 次

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 憲 法 ... 2

* 憲 法の 関 連 知 識 ... 5

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 行 政 法 ... 8

* 行 政法 の 関 連 知 識 ... 10

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 民 法 ... 14

* 民 法の 関 連 知 識 ... 20

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 商 法 ... 22

* 商 法の 関 連 知 識 ... 24

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 民 事 訴 訟 法 ... 28

* 民 事訴 訟 法 の 関 連 知 識 ... 31

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 刑 法 ... 36

* 刑 法の 関 連 知 識 ... 40

平 成 30 年 度 司 法 試 験 出 題 趣 旨 刑 事 訴 訟 法 ... 46

* 刑 事訴 訟 法 の 関 連 知 識 ... 49

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平 成3 0 年度 司 法試 験 出 題 趣 旨 憲 法

全 国 都道府 県では ,青少年 の健 全育 成を目的とし た図書類 の販 売等 に関する 規 制 が行われて いる 。本 問は, その よ うな目的 にと ど まらず, 一 般市 民がむや み に羞 恥心等 を覚 える ような卑 わい な画 像等に 触れ る ことがな いよ う にして性 風 俗に かかる善 良 な市 民の価 値観 を尊 重すると いう 観点 も併せ ,健 全 で文化的 な環 境 を保持す る とい う目的の ため に種々の 規 制 を行う架 空の 条 例案に つい て, その 合憲性の 検討 を求 めるもの であ る。従来は ,訴 訟の 場 面を想定 し, 当事 者の 主張 等にお いて 憲法 論を展 開す るこ とを求 める 出 題が通例 であ っ たが,実 務 的 には,必ず しも 訴訟 の場面に限 ら れ ず,法 令 を 立 案す る 段 階において も法 律家 とし ての 知見 が必要で ある ことから,その ような場面 で憲法 論をどのように活用 ,展開するかを 問う出 題とした。

法 律家 とし て の 助言を求 め られ てい るた め, 具体 的な条例 の文 言を指摘し つつ , 当該規定で 合憲 とい えるか どう か を答える こと が 不可欠で あ り, 違憲であ る とす る場 合 に, 条例 案の どの 部分がどのよう な憲法上の 規定との関係で問題なのか を具体的に指摘することが 期待される。

本条 例の 検討 に際 して は,問題 文の 最後 の甲の 発 言にあるとお り,図 書 類を 購 入 す る立 場と 販 売等 を する 店 舗の 立場か ら憲 法上の権 利を 検討 すること が必 要で あり ,前 者に ついては ,憲 法第 21 条の表 現の 自由 に含ま れる 「知 る自 由」 を,後者 につ いて は,憲 法第 2 2条の職 業選 択の自由に含ま れる「営 業 の自由」の観点か ら検討す る必要がある。

憲 法 第21 条に関 しては , まず ,知 る自 由 が, 憲法第 21 条第 1項に より 保障 さ れる ことに 言及 した 上で, 購入 や貸 与を受 ける こと を制限 され る青少 年につい て,そ の自 由 の制約にな る かど うか を論じる こと と なろう 。制 約に なる とし た場 合,まず ,明 確 性の 原 則と の関係で ,規 制図 書類 の定義 が適 切 かどうか ,「 衣 服の全部 又 は一 部を着け な い者 の卑わ いな 姿態 」「殊更 に性 的感 情を刺 激す る 」との文 言が 曖 昧,不明 確 でな いかどう か の検 討が必 要と なる 。一 般 に,

明確 性の 原則は, 不明 確 な法文 が表 現者 の表現 行 為に 対し て萎 縮 効 果を持 つこ と を問題に する もの であ るが, 本問 に おける条 例に よ る規制に お いて は,表現 物 の流 通過程 に位 置す る販 売者 を萎 縮さ せ, それ に 伴って 青少 年の 知 る自 由を 制 約す るこ とに な るのでは な いか という観 点か ら,明確性の原 則を論ずる ことが考えられる。

さら に, 明確 性 の原 則に 反しな いと しても ,か かる 制 約の 合憲 性判 断 につ いて ,い かなる 審 査 基 準によっ て審 査す るこ とが 妥当 かどうか を 論じ る必要 があ る。 その際 ,内 容 規制と考え る のか ,そ れとも内 容 中 立規 制と考 える のか とい う観 点 から 議論 する ことも 考え ら れるし, 規制 対象 とな る図書 類が 性 的な表現 を含 む ものであ る こと から,そ の 表現 の価値 を考 慮す るかどう か, ある いは,情 報の 受け 手が青 少 年であ るこ との考 慮が働く かど うか (岐阜 県 青 少年保 護育 成 条 例事件補 足 意 見)とい った 観点 を意 識し た 議論 をする こと が考 えら れ よう 。 その 上で ,本 件規 制図 書類の範 囲 が過 度に広 汎で はな いかと いう 点 を含め規 制の必 要性 , 合 理 性を検 討する 必要 があ る。ま た, 審 査基準の 設定 又 は当ては め にお いて,後 述 する ように ,本 条例 の目 的に つい ての 検討, すな わ ち,青少 年の 健 全育成の目 的や ,一 般市 民 がむやみ に 卑わ いな画像 等に 触れ ない ように する とい う目 的が,憲 法上の 権利 を 制約す る目 的と して ふさ わ し いも ので ある かどうかを意識 した議論を することが考えられよう。

次に ,1 8歳 以 上の 者と の 関 係では,知る 自由 の制 約にな るか どうかを まず 検討 する必要が あろ う。 規制図 書類 の 購入がお よそ で きなくな る わけ ではなく , 購入 方法の 限定 はご く一部に 過ぎ ない から知る 自由 の制 約 とま で は言 え ないと 評価する のか ,情 報の 受領 方法 に制限が 加わ る以 上, 知る自由 の制 約 とと らえ るのかの両 論が 考えられ る。 知る 自由の制 約と とらえる と,

青少 年に おける 検討 と 同様に, 明確 性 に関する 検 討が 必要とな り ,審 査基準 の設 定に つい て も,

青少 年の 場合と 同様 の 点(青少 年で あ ることを 考 慮す るかどう か を除 く。) を踏 まえ た審査基

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準の 設定 が考え られ る 。18歳 以上 の 者は,購 入 場所 が限定さ れ るに とどま るた め, 青少 年と は異 な る審 査 基 準を設定す るこ とも 考えられ る し, そうで ない 場合 でも , 審査 基 準へ の当 ては めに おい ては, 購入 が全 面的に 制約 され る青少 年と は異 な り,個々の規 制 の合 理 性を 検討 する 必要 があ ろう。 その 際 ,本条例 の目 的が,青 少年 の 健全育 成の み ならず, 一 般市 民がむや みに 卑わ いな 画像等 に触 れ ないよう にす る という点 に ある ことにつ い て, 青少 年 の場 合と 同様 ,憲 法 上の 権 利の制 約の目 的としてふ さ わ しい のか ど うかについ ても 言及する こと が 考えら れる 。 例 え ば,条例 の 目的 は,結 局の とこ ろ ,卑 わい な画 像 等を 見た くな い人を 保護 す るという こと にな るが ,見た くな い ものに触 れさ せ ないこと 一 般が 法的保護 に 値す ると は 言え ない とい う議 論や ,目 的が漠然 とし た もので 抽象 的に すぎると い っ た指摘を して ,そ の目 的 と し ての価 値が 大 き くな いと評 価す る 方向 で議 論を すること も 考え られよ う。他 方,性 的な 羞恥 心や卑わ いな もの を見 たくな い人 の 不快感は ,現 に 一般に共 有 され ている感 情 であ る以 上 ,十 分に 法的 保護 に値 する といった こと から ,制 約 目 的と して の 価値を見 出す議論 をするこ とも で きるであ ろう。

青少 年及び18 歳 以 上の者のい ず れにお いて も,目 的と規 制の対 応関 係を意識 す る必要 があ る。例 え ば,学 校 か ら 20 0 メー トル 以内にお ける販 売等の 規制 (いわゆ るゾ ー ニング )に つ いて は,青 少年の 健全 育成と結 びつ くも のであり ,日 用品販 売 店での販売 規制 と隔 壁等の義 務 付け は,青 少年の 健全 育成 と一 般 市 民をむ やみ に卑 わいな 画像 等に 触れ さ せな い という観 点の 両面を趣旨とし ていること などを意識した論述が求め られる。

憲法 第 22条に関 しては ,営業 の 自 由が憲法 上 の 権利である こと ,本 件規制が営 業の自 由の 制 約に該当す るこ とに 言及した 上で ,営 業の自 由の 制 約として どの よ うな審 査 基 準が妥 当であ るかを議論する ことが考え られる。

青少 年の 健全育 成と い う目 的と一 般市民 がむ やみ に卑 わい な画 像等に 触れ な いように する と いう目 的をどの よう にと らえ, 制約 され る権利 の 性 質,制 約 の 程 度等との 関係 で ,どのよ うな 審 査 基準を設定 する か の議論を する 必要が ある 。そ の 際, 小売 市場 許可制 判決 や 薬事法判 決等 の既 存の 営業の自 由に 関 わる判 決との対 比をす るこ とや, 積極 目的 ,消極目 的 等 の規制 目 的の 区 別に 基 づいて 審 査 基準を 立 てる べき かを議論 することが考 えら れよう。 その 上 で,当該審 査 基準に 基づ いて,日 用 品 等販売 店 舗での販売禁 止の 合 憲性,学 校 か ら 20 0メ ー トル以 内にお ける販 売等 の禁止の 合憲 性 ,隔 離 販 売規 制の合 憲性 ,青少年 へ の 販売規 制の合 憲 性につ いて 検 討する こと とな る。他 方,制約 の 程 度等の審査 基 準設 定に与 える 影 響を重 視する とすれば,各 規制ご とに 審査基準を設 定すべきことにな ろう。

営業 の自 由との 関 係で も,一般 市民 が むやみ に卑 わい な画 像等 に 触れ ないよ うに するとい う 目 的について,目 的 と して の 妥当 性を検討す るこ とが考え られ るが ,知る自 由と の関 係で 議論 した のと 同様とし て扱 って も差 し支 えな い。もっ と も,そ の目 的 の 妥 当性判 断に当た って ,制 約 され る 権利と の 関 係で,異 なる 考慮がなさ れ得 るとの立 場からは,知 る自 由の 場合と異な る 議論 をす ること もあ り 得る。な お, 規制対象 とな る 規制図 書類 の 範囲が過 度 に広 汎である かど うか は, 憲法第 22 条 の営業の 自由 と の関係で も 問題 となるが , 知る 自由に おい て検 討するの とは必ずしも同 じ問題状況 ではないことを踏まえる必 要がある。

また ,規 制の 合 理 性の検 討 に際 して は, 意 図せ ず一般 市民 が卑 わいな 画像 等に 触れな いよう にす ると いう観 点か ら すると, 隔壁 等 による隔 離 販売 の規制の み で足 りるの では ない かという 方向 で議 論する こと も できるし ,他 方,営業 の自 由 の 性格 に鑑 み ,様々な 制 約を 合憲とす る方 向で 議論 するこ とも で きると考 えら れ る。この ほ か, 表現物の 流 通過 程に お ける 書店 とい う位 置づ けに 鑑み, 通常 の 営業主体 より も その販売 等 の自 由は保護 さ れる べきで ある とい う議論も なし得る。

事業 者に とっ ては 違 反す れば罰 則も設 けら れ てい るこ とか ら,刑 罰 法 規と して の明確 性を指 摘す るこ とも考 えら れ る。刑罰 法規 の 明確性〔 注 :罪 刑法定主 義 の派 生原 理 の1 つ〕 は, 表現

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の自 由の 制約に おい て 求められ る明 確 性の原則 と は趣 旨を異に す るた め,別 の論 述が 必要であ ろう。

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*憲 法 の 関 連 知識

1 平成 30 年度の 憲 法の論文 試験 の形式 面 での特徴

→平成2 9年 度以前 の 憲法の論 文試 験では , 憲法訴訟 の場 面にお い て,法令 や処 分 の合憲・ 違憲 を争う 対 立当事者 の両 主張と , 受験者自 身の 見解を 論 じる形式 のも のであっ た。 しかし , 平成30 年度 の憲法 の 論文試験 は, 条例の 立 案段階で ,受 験者自身 が, 法律家 と して,市 の担 当者か ら 条例案に つい て意見 を 求められ ると い う 場 面 に お い て , 「 参 考 と す べ き 判 例 や 想 定 さ れ る 反 論 を 踏 ま え て 」 , 条 例 案 の 憲 法 上 の 問 題 点 を 論 じ る こ と が 求 め ら れ る と い う 形 式 の 出 題 で あ っ た 。

「 判 例 」 を 踏 ま え た 論 述 を す る に は , 判 例 の 規 範 を 正 確 に お さ え て お く こ と が 必 要 と な る た め , 憲 法 判 例 の 学 習 を し っ か り と し て お き た い 。

2 漠然 不明 確な規 制 と明確性 の原 則(漠 然 不明確ゆ えに 無効)

→刑罰法 令が 不明確 だ と予測可 能性 がなく 個 人の活動 が委 縮する た め,罪刑 法定 主 義の派生 原理 として 刑 罰法令に は明 確性が 要 求され, 明確 性のな い 規制立法 は漠 然 不 明 確 ゆ え に 文 面 上 無 効 に な る と 解 さ れ て い る ( 明 確 性 の 原 則・ 憲 法 3 1 条 ) 。 そ し て , 表 現 行 為 に 対 す る 規 制 立 法 が 漠 然 不 明 確 だ と表 現 の 自 由 に 対 す る萎 縮 効 果 を も た ら す と こ ろ , 表 現 の 自 由 の 重 要 性 に 鑑 み て , 明 確 性 の 原 則 は , 表現の自 由の 規制立 法 にも適用 され ると解 さ れている (憲 法21 条 1項)。 した が っ て , 明 確 性 の な い 表 現 の 自 由 の 規 制 立 法 は 漠 然 不 明 確 ゆ え に文 面 上 無 効 に なる。

・ 条 例 が 定 め る 集 団 示 威 運 動 の 遵 守 事 項 と さ れ る 「 交 通 の 秩 序 を 維 持 す る こ と 」 の 文 言 が 刑 罰 法 規 の 明 確 性 に 反 し て 憲 法 3 1 条 に 違 反 す る か が 争 わ れ た 事 案 で ,最高裁 は , ある刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するものと認めるべきか どうかは,通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がそ の適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうか によってこれを決定すべきであると の判 断 枠 組 みを 示 し た 。

そ の 上 で , 本条例3条が,集団行進等を行おうとする者が,集団行進等の秩序を保ち,

公共の安寧を保持するために守らなければならない事項の一つとして,その3号に「交 通秩序を維持すること」を掲げているのは,道路における集団行進等が一般的に秩序正 しく平穏に行われる場合にこれに随伴する交通秩序阻害の程度を超えた,殊更な交通秩 序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを命じているものと解されるのであり,

通常の判断能力を有する一般人が,具体的場合において,自己がしようとする行為が右 条項による禁止に触れるものであるかどうかを判断するにあたっては,例えば,各地に おける道路上の集団行進等に際して往々みられるだ行進,うず巻行進,すわり込み,道 路一杯を占拠するいわゆるフランスデモ等の行為が,殊更な交通秩序の阻害をもたらす ような行為にあたるものと容易に判断することができるというべきであるとして,条例 3条3号の規定は,集団行進等における道路交通の秩序遵守についての基準を読みとる ことが可能であり,犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠き憲法31条に違 反するものとはいえない(最 大 判 昭50.9.10・ 徳 島 市 公 安 条 例 事 件 判 決) 。

注:今回の問題でいうと,条例7条の柱書にある「殊更」という文言が,徳島市公 安条例事件判決にも登場している。

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3 最判 平元.9.19・ 岐 阜県青少 年保 護育成 条 例事件の 補足 意見

・伊 藤 正 巳 裁判官の補 足 意 見の要 旨

青 少 年も知 る 自 由 を 享 有 し , 青 少 年 は そ の 人 格 の 形 成 期 で あ る だ け に 偏 り の な い 知 識 や 情 報 に 広 く 接 す る こ と に よ っ て 精 神 的 成 長 を と げ る こ と が で き る と こ ろ か ら , そ の 知 る 自 由 の保 障 の 必 要 性 は 高 い が , 知 る 自 由 の 保 障 は , 提 供 さ れ る 知 識 や 情 報 を 自 ら 選 別 し て そ の う ち か ら 自 ら の 人 格 形 成 に 資 す る も の を 取 得 し て い く 能 力 が 前 提 と さ れ て い る 。 青 少 年 は , 一 般 的 に み て , 精 神 的 に 未 熟 で あ っ て , 右 の 選 別 能 力 を 十 分 に は 有 し て お ら ず , そ の 受 け る 知 識 や 情 報 の 影 響 を う け る こ と が 大 き い と み ら れ る か ら , 成 人 と 同 等 の 知 る 自 由 を 保 障 さ れ る 前 提 を 欠 く も の で あ り , し た が っ て 青 少 年 の も つ 知 る 自 由 は 一 定 の 制 約 を う け , そ の 制 約 を 通 じ て青 少 年 の 精 神 的 未 熟 さ に 由 来 す る 害 悪 か ら 保 護 さ れ る 必 要 が あ る 。 し た が っ て , そ の 自 由 の 憲 法 的 保 障 と い う 角 度 か ら み る と き に は , そ の 保 障 の 程 度 が 成 人 の 場 合 に 比 較 し て 低 いと い わ ざ る を え な い 。 そ し て , あ る 表 現 が 受 け 手 と し て青 少 年 に む け ら れ る 場 合 に は ,成 人 に 対 す る 表 現 の 規 制 の 場 合の よ う に , そ の 制 約 の 憲 法 適 合 性 に つ い て 厳 格 な 基 準 が適 用 さ れ な い も の と 解 す る の が 相 当 で あ る 。 そ う で あ れ ば , 一 般 に 優 越 す る 地 位 を も つ 表 現 の 自 由 を 制 約 す る 法 令 に つ い て違 憲 か ど う か を 判 断 す る 基 準 と さ れ る , そ の 表 現 に つ き 明 白 か つ 現 在 の 危 険 が 存 在 し な い 限 り 制 約 を 許 さ れ な い と か , よ り 制 限 的 で な い 他 の 選 び う る 手 段 が 存 在 す る と き が 制 約 は 違 憲 と な る な ど の 原 則 は そ の ま ま 適 用 さ れ な いし , 表 現 に 対 す る 事 前 の 規 制 は 原 則 と し て 許 さ れ な い と か , 規 制 を 受 け る 表 現 の 範 囲 が 明 確 で な け れ ば な ら な い と い う 違 憲 判 断 の 基 準 に つ い ても成 人 の 場 合 と は異な り , 多少と も 緩和 した 形 で 適 用 されると考えられる 。

関 連 問 題 :司 法 論 文 H20( 未 成 年 者 に 対 す る イ ン タ ー ネ ッ ト 情 報 の 提 供 の 制 限 ) , 司 法 論 文 H30( 未 成 年 者 に 対 す る有 害 図 書 の 販 売 規 制 )

・H20 司 法 論 文 ( 採 点 実 感 ・ 抜 粋 )

1 8 歳 未 満の 者 の保 護と い う立 法 目 的に よ っ て , 表 現 の 自 由 の 保 障 の 程 度 や 範 囲 が成 人 の 場 合 と 異 な っ て ど の 程 度 緩 和さ れ る の か と い う 検 討 が 必 要 で あ る 。 単 に 表 現 の 自 由 の 保 障 の 一 般 論 を 展 開 す る だ け で は 不 十 分 で あ る ( 以 下 略 ) 。

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4 職業 選択 の自由 ・ 営業の自 由の 審査基 準

注 : 判 例 は , 以 下 の 審 査 基 準 の う ち , 薬 事 法 違 憲 判 決 型 の 厳 格 な 合 理 性 の 基 準 や , 小売市場 事件 判決型 の 明白の原 則を 用いて い る。

・規制目 的二 分論の 修 正

憲 法 2 2 条 1 項 が 保 障 す る 職 業 選 択 の 自 由 は , 政 策 的 観 点 か ら 精 神 的 自 由 と 比 べ て , よ り 強 度 の 制 約 を 受 け る こ と を 憲 法 が 予 定 し て い る の で , 精 神 的 自 由 の 制 約 に 対 す る 厳 格 な 基 準 と 比 べ て 緩 や か な 基 準 で 審 査 さ れ る 。 ま た , 職 業 に 対 す る 規 制 は 社 会 政 策 上 様 々 な 目 的 で さ れ る こ と を 踏 ま え 審 査 基 準 を 設 定 す る 必 要 が あ る 。 具 体 的 に は , 経 済 的 弱 者 の 保 護 や 経 済 の 調 和 の と れ た 発 展 の た め の 積 極 目 的 規 制 に つ い て は , 裁 判 所 は 立 法 裁 量 を 特 に 尊 重 し , 規 制 の 目 的 が正 当 で , 目 的 と 手 段 と の 間 に合 理 的 関 連 性 が あ れ ば 合 憲 と な る 。 人 の 生 命 , 健 康 の 安 全 に 対 す る 危 険 の 防 止 の た め の消 極 目 的 規 制 に つ い て は , 立 法 裁 量 は 尊 重 さ れ る も の の 積 極 目 的 規 制 の と き ほ ど の 尊 重 は 必 要 な い の で , 規 制 の 目 的 が重 要 で , 目 的 と 手 段 と の 間 に実 質 的 関 連 性 が あ れ ば 合 憲 と な る 。 ま た , 積 極 , 消 極 の 両 目 的 を 併 有 す る 規 制 や , 積 極 消 極 い ず れ の 目 的 に も 割 り 切 れ な い 規 制 の と き は , 権 利 の 内 容 性 質や , 規 制 態 様 の 程 度 も 考 慮 し て 具 体 的 に 審 査 す る こ と と し , 新 規 参 入 規 制 の よ う に 規 制 態 様 が 強 度 な も の に つ い て は , 目 的 が 重 要 で , 目的と手 段と の間に 実 質的関連 性が あれば 合 憲となる 。

・規 制 の 目 的 の違いに着目した 場合 の審査 基 準の基 本 形は以下の も のとなる 。

・明 白 の 原則

経 済 的 弱 者 の 保 護 な ど 経 済 の 調 和 の と れ た 発 展 を 図 る た め の積 極 目 的 規 制 で あ る と き は , 立 法 府 の 政 策 判 断 を 特 に 尊 重 し , 当 該 規 制 措 置 が著 し く 不 合 理 で あ る こ と が 明 白 で あ る 場 合 に 限 り 違 憲 と す る ( 小 売 市 場 事 件 判 決 型 の 明 白 の 原 則)。

注:審査 密度 は合理 的 関連性の 基準 に相当 する 。

・厳 格 な 合理 性の 基 準

人 の 生 命 , 健 康 に 対 す る 危 険 を 防 止 す る た め の 消 極 目 的 規 制 で あ る と き は , 積 極 目 的 規 制 と 比 べ て 政 策 判 断 が 必 要 な く , 裁 判 所 の 判 断 に な じ む 。 そ こ で , 裁 判 所 は , 厳 格 に 規 制 立 法 の 合 理 性 を 審 査 す る べ き で あ る 。 具 体 的 に は , 裁 判 所 は , 規 制 の 必 要 性 ・ 合 理 性, 同 じ 目 的 を 達 成 で き る ,よ り 緩 や か な 規 制 手 段 の 有 無 を , 立 法 事 実 ( 立 法 の 必 要 性 と 合 理 性 を 支 え る 社 会 的 事 実 ) に 基 づ い て 規 制立法の 合理 性を審 査 する(薬 事法 違憲判 決 型の厳 格な 合 理 性 の基準 )。

注:審査 密度 は実質 的 関連性の 基準 に相当 す る。

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平 成 3 0 年度 司 法試 験 出 題 趣 旨 行 政法

本問 は, 「墓地 ,埋 葬 等に関す る法 律 」( 以下 「 法」 とい う。 ) 第10条 第 1項 に基づい て , 宗 教 法人 A が 墓 地 (以 下 「 本 件 墓 地 」 と い う 。 )の 経 営 許 可 を 申 請 し た場 合 (以 下「 本 件 申 請 」 と い う。 ), そ れ に 関 し て 生 じ る 法 的 な 問 題 に つ い て , 経 営 許 可 の 権 限 を 有 す る 地 方 公 共 団 体 B市 の主 張を考 慮し つ つ,検討 を求 め るもので あ る。 本問で論 じ られ るべき 第1 の問 題は,本 件申 請に 対して 許可 (以 下「本 件 許 可 処分」とい う 。)が 行わ れた 場合, 本件 墓 地の 近隣 で別 の墓 地を 経営し てい る 宗教法人 Dと , 障害福祉 サ ービ ス事業を 行 う法 人Eに ,本 件許 可処分に 対 し て取 消 訴 訟 を 提 起す る原 告 適 格が 認 め られ る か で あ る (設 問 1 (1)) 。 論 じ ら れ る べ き 第 2の 問題 は,仮 にE に原 告適格 が認 め られた場 合, 本 件許可処 分が違 法であ る と して,Eがど のよ うな 主張を する こと が考え られ るか ,また ,そ れ らの主 張が制 限を受 け るこ とはない かで あ る (設 問 1 (2)) 。 そ し て , 論 じ ら れ る べ き 第 3 の 問 題 は , 本 件 申 請 に 対 し て 不 許 可 処 分

(以 下「本 件不 許 可 処 分」 とい う。 )が行わ れ ,A が,本 件不 許可 処分 に 対し て 取消 訴訟 で争 う 場 合 , A が 本 件 不 許 可 処 分 の違 法 事 由と し て ど の よ う な 主 張 を す る こ と が で き る か で あ る

(設 問 2)。 こ れら の点 を,法 ,法 に 関し て最 小限 必 要な 許可 要件 や手続 を定 め た「B市 墓地 等の 経営 の許可 等に 関 する条例 」( 以 下「本件 条 例」 という。 ) 等の 資料を 踏ま えて 論じるこ とが求められて いる。

〔設 問 1 (1)〕 は, 取 消 訴 訟 の原 告 適 格と い う, 取 消 訴訟 の 基 本 的 な 訴訟 要 件 の 理 解 を問 う もの であ る。本 問で は, DとE は, そ れぞれ本 件許 可 処分の名 宛人 で はなく,第 三 者であ るこ とか ら, 行政事 件訴 訟 法第9条 第1 項 と同条第 2 項の 基準に基 づ いて ,原告 適格 に関 しど のよ うな 主張 がなさ れる の か,また ,原 告 適格は認 め られ るのかを , B市 から の 反論 を踏 まえ て検 討することが求 められてい る。

Dの原告 適格 の 検討 に当 たって は,既 存の墓 地 の 経 営主 体である Dが,本 件墓 地 によって経 営 上 悪影 響を受 け るこ とを 理由 に, 原告適 格が 認め られる のか を論 じるこ とと な る。法第 1条 は, 公衆 衛生や宗 教 感情 の保護 等を 法目 的とし てい る が,既 存 の 墓 地の保 護に つ いて は特 に触 れる とこ ろはな い。し か し,本 件条 例 第3 条第 1項 が 墓地 の経 営主 体を原 則と し て地方公 共団 体と して いるこ とや , 本件条例 第9 条 第2項の 経 営許 可に関す る 要件 を定 め た規 定に より ,法 や本 件条 例がその 趣旨 目 的とし て墓 地 経営 の 安 定を求めて いる と考 える こと も で きる こと から,

墓 地経 営 許可に際し て,既 存 の墓 地の利益 保 護が考慮されて いる かどうか を論 じ ること が求 め られる。

Eの原告 適格 の 検討 に当 たって は, Eは障害 福 祉 サ ービ ス事 業を行う事 業所 を運 営している こと から ,本件墓 地の 経営 によ って ,衛 生環 境や生 活 環境の悪 化を理由に 原告 適 格が認め られ るの かが 問題と なる 。 本件条例 第1 3 条第1項 や 第1 4条第1 項 等を 手掛 か りと して ,法 や本 件条 例が ,Eの 事業 所に 対して ,障 害福 祉サー ビス 事 業を行う 事業 所 として,適 切 な環境の下 で円滑 に業 務を行う利益を保護しているかを論 じるこ とが求められる 。

(11)

〔設 問 1 (2)〕 では ,Eが ,本 件 許 可 処 分に 対 す る 取 消 訴 訟 を 適法 に 提 起で き る と し た 場 合 , 本件 許可 処分が違 法で あるとし て, どの ような主 張が 可能か, また ,そ れら の主 張が制限を受 けな いか を検討す るこ とが 求め られ る。法 第1 0 条 第 1項に基づ く許 可に つい て は,公益 的見 地か らそ の許否 が判 断さ れ,行 政に一 定の裁 量が認 められ ると 考え られる が, ど のような根 拠 に基 づい て,いか な る 裁 量が認 めら れるの か, さら に,本 件許 可処 分が, どの よ うな 理由 から 裁 量権 の 範囲を逸 脱 ・濫用し,違 法とされ るの かに ついて,検 討を進める こと が 求めら れて い る。

Eが主張する違 法事由とし ては以下の2 点を論じることが求められる 。

第 1に , 本 件 墓 地 か ら 約 8 0 メ ー ト ル の 距 離 に あ るE の 事 業 所が 本 件 条 例 第 1 3 条 第 1 項 (2)の 「 障 害 福 祉 サ ー ビ ス を行 う施 設(入 所 施 設 を 有 す る も の に限 る 。 )」 に該 当し, 本 件 条 例 第1 3条 第1項 の距 離 制限に違 反す ること から ,本 件許可 処分 は違 法では ない か という点 であ る。 さら に,た とえ 距 離制限に 違反 し ていても , Eが ,Dと相 談 して ,説 明 会や 本件 申請 の後 に事 業所 を移転 して い る等の事 情か ら ,本件許 可 処分 を妨害す る ため ,意図 的に 本件 事業所を 移転 した とすれば ,権 利 濫用として ,そ のよう な違 法 事由は主 張 で きな いのでは ないかと いう 点もあわせて論 じることが 求められている。

第 2に,本件墓 地 の実 質的な経 営 者は, Aで はな く,営利 企業 のC ではない の か という,い わば Aと Cの間 で一 種 の「名義 貸し 」 に当たる 行 為が 行われた の では ないか とい う点 である。

法や 本件 条例に は「 名 義貸し」 を明 文 で禁止す る 定め は見られ な いが ,本件 条例 が, 墓地の経 営主 体を 地方公 共団 体 や宗教法 人等 に 限定し, 営 利企 業への墓 地 営業 許可を 認め てい ないこと や, 経営 主体に 一定 の 要件を求 めて い ることか ら ,仮 に,本件 許 可処 分が「 名義 貸し 」によっ て認 めら れたも ので あ るとすれ ば, 法 や本件条 例 の趣 旨を潜脱 し て違 法では ない かと いう主張 を行 うこ とが考 えら れ よう。法 や本 件 条例を踏 ま えて ,資料に 示 され た具体 的な 事実 を通 し て,

Eの主張を検討 することが 求められている。

さら に, 本件許可 処 分の 違法事 由に つい ては , Eの 「自己 の法 律 上の 利 益」に関係が あるか どうか ,す なわち,行 政 事 件 訴訟 法第10 条 第1 項による主 張 制 限につ いても 検 討する こと が 求め られ ている 。行 政 事件訴訟 法第 1 0条第1 項 の「 自己の法 律 上の 利益 」 の基 本的 な理 解に 基づ き, 上で述べ た各 違 法事 由の主張 が制限さ れ るか どうかを ,個 別に検討す る ことが求 めら れている。

〔 設問 2〕は ,Aが本 件不 許 可処 分に対 して 取消 訴訟を提 起し た場合, 本件 不許 可処分が違 法であ るとして ど のよ うな主張 がな さ れるのか を問 う ものであ る。 本 件不許可 処 分の理 由とし てB 市が 想定し てい る理 由のう ち, 本 問で論じ られ る べきもの は,( ア)本件 墓 地周辺の 住環 境が 悪化 する懸念 から ,近 隣 住民 の 反対 運 動が激し くなっ たこ と及 び( イ )Dの 墓地 を含 むB 市内 の墓 地の供 給が 過剰 となり ,そ の経 営に 悪 影 響が及ぶ こと であ るが, これ ら に関 して ,B 市の主張を踏ま えて,検討 することが求められている 。

( ア )につい て は, 単に近 隣住 民の 反対運 動が 激化 すると いう こ とを理由 とす る にとどま る ので あれ ば,本 件不 許 可処分の 根拠 と しては認 め られ ないとの 見 解も あり得 る一 方で,B市の 立場 から は,法 第1 0 条第1項 が, 墓 地の経営 許 可に つき市長 に裁 量を認め て い ることを 前提 にし て, 住環境 の悪 化 を懸念す る反 対 運動の存 在 を考 慮するこ と は適 法との 見解 もあ り得,こ れらを比 較して論じること が求められている。

( イ)につい ても ,B 市内の墓 地 の 需給を考 慮して本件不 許可 処分 を行うこ とは 許さ れな い との 見解 と,B 市の 立 場からは ,墓 地 の公共性 や 墓地 の経営の 安 定性 を求 め る法 や本 件条 例の 規定 から ,経営状 態 が悪 化しな いよ うに ,需給 状況 を考慮するこ とは ,裁量 の 範 囲を超 えるも のではないとい う見解もあ り得,これらを比較して論 じることが求められている 。

(12)

*行 政 法 の 関 連知 識

1 処分 の名 宛人以 外 の第三者 の原 告適格

〔論証例 〕 第三者 の 原告適格 (シ ョート 版

〔 矢 島 の 速 修 イ ン プ ッ ト 講 座 〕

取 消 訴 訟 の 原 告 適 格 は , 当 該 処 分 に よ り 「 法 律 上 の 利 益 」 ( 行 訴 法 9 条 1 項 ) と し て 法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 を 侵 害 さ れ 又 は 必 然 的 に 侵 害 さ れ る お そ れ が あ る 者 に 認 め ら れ る 。 処 分 の 根 拠 法 令 が , 不 特 定 多 数 者 の 具 体 的 利 益 を , 専 ら 一 般 公 益 に 吸 収 解 消 さ せ る に と ど め ず , 個 々 人 の 個 別 的 利 益 と し て 保 護 す る 趣 旨 を 含 む と い え る と き は , か か る 利 益 を 侵 害 さ れ 又 は 必 然 的 に 侵 害 さ れ る お そ れ が あ る 者 に原 告 適 格 が 認 め ら れ る 。 そ し て, 処 分 の 名 宛 人 以 外 の 第 三 者に 法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 が 認 め ら れ る か は 行 訴 法 9 条 2 項 の 判 断 枠 組 みに 則 し て 判 断する。

・ 最 高 裁 は , 行 訴 法 9 条 2 項 か ら 直 接 , 原 告 1 人 1 人 の 原 告 適 格 を 判 断 す る の で は な く , ま ず , 同 項 の 判 断 枠 組 み を 提 示 し , さ ら に , 同 項 の 判 断 枠 組 み に 即 し て , 当 該 事 案 に お い て 原 告 が 主 張 す る 利 益 に つ き ど の 範 囲 の 者 に 原 告 適 格 が 認 め ら れ る の か に つ い て , よ り 具 体 的 な 判 断 枠 組 み を 示 し た 上 で , 最 終 的 に , 原 告 1 人 1 人 の 原 告 適 格 の 有 無 を 判 断 し て い る 。 簡 単 に 言 え ば , 判 例 は , 行 訴 法 9 条 2 項 を 第 1 次 的 な 規 範 ( 判 断 枠 組 み ) に 用 い た 上 で , 当 該 事 案 の 処 理 に 適 し た よ り 具 体 的 な 第 2 次 的 な 規 範 ( 判 断 枠 組 み ) を 定 立 し , そ の 第 2 次 的 な 規 範 を 原 告 と な っ て い る 者 1 人 1 人 に 適 用 し て , そ れ ぞ れ の 原 告 の 原 告 適 格 の 有 無 を 判 断 し て い る の で あ る 。 こ の こ と に つ い て は , 後 掲 の 判 例 を 通 じ て 学 習 す る。

一 例 を 挙 げ て お く と , 小 田 急 事 件 の 最 高 裁 大 法 廷 判 決 ( 最 大 判 平

17.12.7)

は , 行 訴 法 9 条 1 項 , 2 項 を 第 1 次 的 な 規 範 と し て , 同 2 項 が 要 求 す る 考 慮 要 素 を 考 慮 し た 上 で , 都 市 計 画 事 業 の 事 業 地 の 周 辺 に 居 住 す る 住 民 の う ち 当 該 事 業 が 実 施 さ れ る こ と に より 騒 音 , 振 動 等 に よ る 健 康 又 は 生 活 環 境 に 係 る 著 し い 被 害 を 直 接 的 に 受 け る お そ れ の あ る 者 は , 当 該 事 業 の 認 可 の 取 消 し を 求 め る に つ き 法 律 上 の 利 益 を 有 す る 者 と し て , そ の 取 消 訴 訟に お け る 原 告 適 格を有 す る と の 判 断 枠 組 み ( 第 2 次 規 範 ) を 定 立 し た 上 で , そ の 判 断 枠 組 み を 原 告 1 人 1 人に適 用して 原告適 格 の有無を 判断 してい る 。

・H28 司 法 論 文 公 法 系 第 2 問 設 問 1( 出 題 の 趣 旨 ・ 抜 粋 )

〔 設 問 1 〕 に つ い て は , 行 政 処 分 の 名 宛 人 以 外 の 第 三 者 の 原 告 適 格 が 問 題 と な る 。 行 政 事 件 訴 訟 法 第9 条 第 2 項と最 高 裁 判 所 の 判 例を踏 ま え て 判 断 枠 組 みを提 示し た 上 で , 行 政 処 分 の 根 拠 法 規 の 処 分 要 件 及 び 趣 旨 ・ 目 的 に 着 目 し , 関 係 法 令 の 趣 旨 ・ 目 的 を 参 酌 し , 被 侵 害 利 益 の 内 容 ・ 性 質 を 勘 案 し ,当 該 根 拠 法 規が X ら の主 張す る被 侵 害 利 益を個 別 的 利 益と し て保 護す る趣 旨を 含 む か ,ど の 範 囲 の 者が原 告 適 格を 有 す る の か に つ い て 論 じ る こ と が 求 め られ る 。

(13)

・行訴法 9条 1項〔 A 〕と2項 〔B 〕の原 告 適格の判 断枠 組みの 概 要

〔 A 〕 当 該 処 分 の 取 消 し を 求 め る に つ き法 律 上 の 利 益 を 有 す る 者 に 取 消 訴 訟 の原告適 格が 認めら れ る(行 訴

9Ⅰ) 。

〔 B 〕 処 分 の 名 宛 人 以 外 の 者 に 法 律 上 の 利 益 が あ る か は , ① 処 分 の 根 拠 法 令 の 文 言 だ け で な く趣 旨 ・ 目 的 と , ② 処 分 に お い て 考 慮 さ れ る べ き 利 益 の 内 容 ・ 性質を考慮し て判断す る( 行訴

9Ⅱ )。

① 処 分 の 根 拠 法 令 の 趣 旨 ・ 目 的 を 考 慮 す る 際 は , そ の 法 令 と 目 的 を 共 通 に す る 関 係 法 令 が あ る と き は , そ の 趣 旨 ・ 目 的 を 参 酌 し た 上 で , 処分の根 拠法 令の趣 旨 ・目的を 明ら かにし な ければな らな い。

② 処 分 に お い て 考 慮 さ れ る べ き 利 益 の 内 容 ・ 性 質 を 考 慮 す る 際 は , 処 分 が そ の 根 拠 法 令 に 違 反 し て さ れ た 場 合 に 害 さ れ る こ と と な る 利 益 の 内 容 及 び 性 質 並 び に こ れ が 害 さ れ る 態 様 及 び 程 度 を も勘 案 し な け れ ばならな い。

・参考 原告 適格の 判 断枠組み の学 説上の 整 理の仕方

法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 説 を 採 る と , 原 告 適 格 の 有 無 は , 処 分 の 根 拠 法 令 の 解 釈 に よ り 決 ま る こ と に な る 。 こ の 解 釈 は 行 訴 法 9 条 2 項 の 判 断 枠 組 み に 即 し て す ることに なる 。具体 的 には次の とお り考え て いく。

原 告 適 格 が 認 め ら れ る た め に は , 原 告 が 主 張 す る よ う な 利 益 ( 被 侵 害 利 益 ) が , 法 律 上 保 護 さ れ た 利 益 す な わ ち , 当 該 利 益 が 専 ら 一 般 公 益 と し て だ け で な く , 個 々 人 の 個 別 的 利 益 と し て 保 護 さ れ て い る と い え な け れ ば な ら な い 。 そ う い え る た め に は , ま ず , 〔 ① 〕 被 侵 害 利 益が , 公 益 と し て 保 護 さ れ て い る だ け で な く , 処 分 の 根 拠 法 令 に よ っ て具 体 的 に保 護 さ れ て い る と い え る こ と が 必 要 と な る (保 護 範 囲 要 件 ) 。 こ こ で は 処 分 の 根 拠 法 令 を 解 釈 す る こ と で 当 該 利 益 が 法 律 上 保 護 さ れ て い る と い え る か が 審 査 さ れ る 。 そ し て , 当 該 利 益 が 法 律 上 保 護 さ れ て い る と い え る 場 合 は , 次 に , 〔 ② 〕 当 該 利 益 が , 処 分 の 根 拠 法 令 に よ り 一 般 公 益 に 吸 収 解 消 さ れ る に と ど ま ら ず , 個 々 人 の個 別 的 利 益 と し て も保 護さ れ て い る と い え る こ と が 必 要 と な る ( 個 別 保 護 要 件 ) 。 こ の 判 断 の 際 に , 処分にお いて 考慮さ れ るべき利 益の 内容・ 性 質を考慮 する 。

キーワー ド: 被侵害 利 益,具体 的保 護,個 別 的保護

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2 行政 権の 濫用に 関 する参考 判例

・行 政 権 の 濫 用

昭 和 5 3 年 判 決 の 事 案 を 簡 略 化 し て 説 明 す る と , X 社 は , 個 室 付 浴 場 を 営 業 す る こ と を 計 画 し て 山 形 県 余 目 町 に 建 設 用 地 を 取 得 し 営 業 用 建 物 の 建 築 確 認 の 申 請 と 公 衆 浴 場 営 業 の 営 業 許 可 の 申 請 を し た と こ ろ , 地 元 で 個 室 付 浴 場 の 経 営 に 反 対 す る 抗 議 行 動 が 起 こ っ た た め , 余 目 町 は 山 形 県 と 相 談 し て , 本 件 個 室 付 浴 場 の 経 営 を 阻 止 す る 方 針 を 立 て た 。 そ こ で , 山 形 県 や 余 目 町 は , 児 童 福 祉 法 に い う 児 童 福 祉 施 設 の 周 囲 2 0 0 メ ー ト ル 以 内 に お い て は ( 旧 ) 風 俗 営 業 等 取 締 法 よ っ て 個 室 付 浴 場 の 営 業 が 禁 止 さ れ る こ と に 着 目 し た 上 で , 余 目 町 は , 山 形 県 に 対 し , X 社 の 個 室 付 浴 場 の 開 業 予 定 地 か ら 約 1 3 4 メ ー ト ル の 所 に あ る 児 童 福 祉 施 設 の 設 置 の 認 可 申 請 を し , 山 形 県 知 事 は 当 該 申 請 を 容 れ て 認 可 処 分 を し た 。 そ の 後 , 公 衆 浴 場 の 営 業 許 可 ( た だ し , 児 童 施 設 が設置さ れた 場合は 性 的なサー ビス は提供 で きないも の) がされ た 。

しかし, X社 は,児 童 遊園施設 が設 置され た にもかか わら ず,性 的 なサービ ス を 提 供 す る た め の 個 室 付 浴 場 の 営 業 を 開 始 し た と こ ろ , 山 形 県 公 安 委 員 会 に 取 締 法 違 反 を 理 由 に 6 0 日 間 の 営 業 停 止 処 分 を さ れ た 上 に , 前 記 風 俗 営 業 等 取 締 法 違 反 を 理 由 に 起 訴 さ れ 被 告 X 会 社 に 罰 金 7 0 0 0 円 の 判 決 が 言 い 渡 された。

被告X会 社側 は,本 件 児童福祉 施設 の設置 認 可処分は 行政 権の行 使 の濫用で あ り , 被 告 会 社 を 規 制 す る 根 拠 に は な ら な い か ら 無 罪 で あ る と 主 張 し て上 告 した。

最 高 裁は , 本 来 , 児 童 遊 園 は , 児 童 に 健 全 な 遊 び を 与 え て そ の 健 康 を 増 進

し , 情 操 を ゆ た か に す る こ と を目 的 と す る 施 設 ( 児 童 福 祉 法 4 0 条 ) な の で

あ る か ら , 児 童 遊 園 設 置 の 認 可 申 請 , 同 認 可 処 分 も そ の 趣 旨 に 沿 っ て な さ れ

る べ き も の で あ っ て , 被 告 会 社 の 個 室 付 浴 場営 業 の 規 制 を主 た る 動 機 , 目 的

と す る 本 件 認 可 処 分 は ,行 政 権 の 濫 用 に 相 当 す る 違 法 性 が あ り , 被 告 会 社 の

個 室 付 浴 場 営 業 に 対 し こ れ を 規 制 し う る 効 力 を 有 し な い と し て , X 者 を無 罪

とした(最 判 昭 53.6.16 )。

(15)

〔 調 整余 白 〕

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平 成3 0 年度 司 法試 験 出 題 趣 旨 民 法

本問 は, 民法の 幅広 い 分野から ,民 法 の基 礎的 な 理解 とと もに そ の応用力 を 問う ものであ り , 当事 者の 主張を 踏ま え つつ法律 問題 の 相互関係 や 当該 事案の特 殊 性を 論理的 に分 析し て自説を 展開する能力が 試されてい る。

設 問 1は,種 類 債務 の特定 と危 険負 担(民 法第 53 4条第 2項 ) ,(狭義 の) 履 行補助者 の 過失 ,弁 済の提供又 は受 領遅滞 若し くは 受領義務 違反 の効果(債 務者 の目的 物 保 管 義務の 軽減 及びそ の軽 減後の義 務の 内 容,対 価 危 険 の債権 者 への 移転等)等と いっ た債 権 法の複 数の制 度

・規 定に ついて ,基 本 的な理解 がで き ているか , その 理解を具 体 的な 事実関 係に 基づ いて各制 度・ 規定 の相互 の 関 連 性を 含め て適 切に展 開す るこ とがで きる かを 問うも ので あ る。 典型 論点 とも いえ るもの ばか り ではある もの の ,複数の 論 点の 検討を要 す る問 題を通 して ,事 案に即し て論理を着実に 展開する能 力が試されている。

設問 1の 事実 関係 の 下で は,危 険 負 担の適 用が ある か否か が問 題となる が, その前提として , 種 類債 権 の特定とそ の 後の 目 的物 の滅 失が必要 となる 。そこ で, 民法第4 01 条 が定め る「 債 務者 が物 の給付 をす る のに必要 な行 為 を完了し 」 たこ ととは, 例 えば ,債務 者が ,給 付の 完了 のた めに 債権者 がす る 必要のあ るこ と を除き, 自 らす ることが で きる ことを 全て した 状態 をい うと ころ ,Bの債 務は取 立 債 務である ことか ら, Bが 目的物を分 離し て引渡準 備を完了し ,そ の旨 をA に通知す るこ とに より 目的 物の特定が認 め られる こと など を述べ た上 で ,設 問1 の事 実関 係か らこの特 定が 認め られ ,そ の特定 した 目的 物 が盗 難に より滅 失した と 認 められる こと を述べる必要が ある。

目的物 が特 定後に滅 失した場合の 売主 Bの売買 代 金 請 求権の帰 趨について は,① 双 務契約上 の相 対 立する 二つ の 債 務は互い に 対 価関係に立つ ため牽連 関 係が認められる とし て,一 方の債 務の消 滅により 当 然に他 方 の 債務も消 滅す るこ とを前 提としつ つ, 本件 にお いて は目的物 が特 定してい たとして 民法第5 34条 第 2 項の適用に より Bの代金 請 求が認 めら れ得 るとする立場 ,

②同じ 前提に立 ちつ つ も,民法 第5 34 条第2 項の適 用を否 定又 は制 限す る立 場 などが考 えら れる 。こ れらの いず れ の立場に よっ て も構わな い が, 自己の採 用 した 立場か ら一 貫性 のある法 律構 成を するこ とが 求 められる 。な お ,①②と 異 なり ,双務契 約 上の 相対立 する 二つ の債務は 互い に独 立のも ので あ り,一方 の消 滅 により他 方 が当 然に消滅 す るこ とは な いと する 立場 もあ り得 るが ,その 場合 に は,特殊 とい っ てよい立 場 であ るため, そ のよ うに解 する 理由 を明確に 示すことが必要 である。

上記の① の立場からは,以 下の事柄につい て論ずるこ とになる。

①の 立場 は, 民法 の 規定 の文 理 に素 直なも ので あ るとい え るが,①の 立場 に対 しては 公平で はな いと いう批判が極 めて 有 力であり,ま た ,こ の立場を とる こと を明言 する 判 例がある わけ でも ない 。そこ で, 民 法第53 4条 第 2項の文 言 に素 直な解釈 で ある という 指摘 をす るだけで なく,公平に反 するという 批判説にも応接した理 由付 けをすることが望ましい 。

その 上 で,民法 第5 3 4条が適用 され るのは目 的物の 滅失が「債 務 者 の責め に 帰 する ことが で きな い 事由」に よる 場合 であ るた め,設問 1の 事実 関係の下 で盗 難による松 茸 の滅 失がこれ に当たるかを論 ずべきこと になる。

その 際に は, 「債 務 者の 責めに 帰す るこ とが で きな い事由」の意 味をまず明 ら か にする 必要 があ る。 これにつ いて は, 例え ば,特 定 物の売主 は目 的物 の善 良 な 管 理者の 注 意をもって 目的 物を保 管する義務を 負う ところ,そ の 義 務を尽 く し たこ とが上記事 由に当 た ると する考 え方 が 考えられる。

さら に, 設問 1 では ,B は保管 のた めに( 狭義 の)履 行補 助者に 当たる( 【 事実 】3)C を 使用 して いるた めC の主 観的態 様が信 義 則上B の主 観的態 様と同 視され ると した 上で,C が近

(17)

隣に おい て盗難 事件 が 頻発し警 察が 注 意喚起し て いる との状況 下 でB の指示 に従 わず に簡易な 錠に よる 施錠しか せず に 乙倉庫 を離 れた こと(【 事 実 】5及び 8) は善 管注 意 義 務違 反に当た ると解 され るた め, 目的 物 として 特定 した 松茸の滅 失 はB の責 めに 帰 す るこ と が で きない 事由 による ものということは基 本的にでき ないことになる。

も っと も,松 茸の 盗難 は,Bによ る弁 済の 提 供があっ た後,又 はAに よる受 領 遅 滞 中に若し くは Aの 受領義 務違 反 後に起き たこ と である。 そ こで ,弁済の 提 供又 は受領 遅滞 若し くは 受領 義務 違反 の効果と して Bの保 管 義務の軽減が 問題 にな る。 これ らの いずれの 構 成 によって も構 わな いが ,その 構成 に より保管 義務 が 軽減され る 理由 を明らか に し, 設問1 の事 実関 係の 下で 保管義務の軽減 が認められ るかを論ずる必要がある。

そして ,債 務者 は自 己 の 財産 に対 す るのと 同 一 の注意をもっ て目 的物を保 管する義務を負う,

ある いは ,債務 者は 故 意又は重 大な 過 失による 目 的物 の滅失又 は 損傷 の場 合 にの み責 任を 負う など と軽 減さ れた義 務の内 容を明 らか にし た上 で, 設 問1 の事 実関 係に即 して , Cの行っ た簡 易な 錠で の施錠が 「普 段 どおり 」の 施錠 方法であ った こと を踏 まえ てそ の軽減 さ れ た注意 義 務 に違反 しな いかどうかを論 ずべきことにな る。

次に,上 記の②の 立場をとる場合には,以 下の事柄に ついて論ずるこ とになる。

まず ,自 説の 立 場か ら, 民法第 53 4条 の適用 を否 定 又は制 限す る理 由を 述 べる 必要があ り,

その 理由 と整合的 にど の よう な場 合には適用が 認め られる のか を明 らか に し,設 問1 の事 実関 係の下では民法 第5 34 条 が適用され る場 合に当たら ないことを述べるこ とが求 められる。

も っと も,B によ る弁 済の 提 供又 はAの受 領 遅 滞若し くは受 領義 務違反が 認め ら れるこ とか ら, その効 果と して対 価 危 険 の 移転が認め られ 得る 。そこ で, その 旨の 指摘 と設 問1の事 実関 係の 下で これが認 め られ ること を述 べ た上 で,目 的物の滅 失が〔 目的物 の引 渡債 務の債務 者で あ る 〕B の 帰 責 事 由によ る も ので あ る と き はそ も そ も 危 険 負 担の適 用 が な いこ と を 述 べ て

〔注: 目的物の 滅 失に つき債務 者の 帰 責事由が あ ると きは,危 険 負担 の問題 では なく ,債 務不 履行 の問 題とな り, 目 的物の引 渡債 務 は損害賠 償 債務 に転化し て 存続 する。 〕, 松茸 の滅 失が B の 帰責 事由によ るも のか 否か を検 討すべ き こと にな る。 そし て, ここでは , 上 記の①の 立場 と同 様に ,債務 者に 課 された善 管注 意 義務と債 務 者の 責めに帰 す るこ とがで きな い事 由との関 係,弁済 の提供等による善 管注意義務の軽 減の有無などを検討すべき ことになる。

設 問 2は,所 有 権に 基づく 妨害 排除 請求の 相手 方は 現に妨 害を し ている者 であ る ことを前 提 とし て, 所有権 留保 売買 契約の 売主 とし て留保 所有 権 を有する 者は こ れに当た る か(小 問1) , 仮に これ に当た らな い と判断す べき こ とを前提 と した としても , その 者が 妨 害物 とな って いる 自動 車を 以前所 有し て おり,自 己の 意 思に基づ い て登 録名義人 と なっ た者で あっ て, その 自動 車 を 譲 渡 し た 後 も 登 録 名 義 人 に と ど ま っ て い る 場 合 は 別 に 考 え る こ と が で き な い の か (小 問 2)を,それぞれ問うも の である。

小 問 1では判 例 によ っても 承認 され ている 所有 権留 保売買 を題 材 に非典型 担保 物 権の意義 と 留保 所有 権の内 容を ,小 問 2では 不動 産と 同 様の 法的規制 に服 する 自動車 につ い ての権利 の得 喪に 係る対 抗要 件 制 度の意 義と いう ,基本 的な 問題 に対す る理 解力 を測る こと を 狙いとす る。

また,小 問 1には最 判 平 成21 年 3 月10 日民集第 63巻3 号3 85 頁,小 問 2には最 判平 成 6 年2 月 8日民集第 48巻 2号 37 3頁とい う重 要 な関 連判 例があ り, 設問 2は ,日頃の 学習 において重要判 例について 表層的でない理解を心掛け ているかをみようとするも のでもある。

小問 1では,E の 請 求が所有権 に 基 づく請 求であるこ と,こ の請 求の相 手方は所 有権 の行 使 を現 に 妨げて い る 者である こと を前 提とし て, 甲ト ラック の所 有権 留保売買 にお ける留 保売 主 Dは, 甲トラッ ク が丙 土地上に 放置 さ れている こ とに よってE の 丙土 地所有 権の 行使 を妨 げて いることになり ,したがっ て,甲トラックの撤 去義 務を負うかどうかが問われている。

(18)

まず ,物の所有 者は ,その 物が 他人 の土地 上に ある 場合に は, 権原 がなけ れば ,通常,その 物 の撤 去の義 務を負 う。と ころが ,Dは,A との 間で所有権 留 保 売買契 約をし た ことに より , 通常の 所有 権を有す る者 で はなく ,債 権 担 保の 目的 で 所有権を有 するに すぎ な い。そこで, こ のような立場に あるD が所 有者一 般と同様に扱 われる のか否 かを論ずべきこと に なる。

Dが 甲ト ラック の 撤去 義務を負 うか 否 かに つ いて の結 論は いず れ でも構 わな いが ,そ の結 論 を導 く理 由につ いて の法 的な構 成 力が問われ てい る。 その理 由に 関し ては,例 え ば,次の よう な事情を考慮す ることが考 えられる。

すなわ ち, ①A D 間 の契 約におい て,被 担保 債 権 の不 履行 が あ るま では,甲ト ラ ックの占 有

・ 処分 権 能を有 する のはAであ り,Dはこれ を有 し ないとされ てお り,Dは, 甲 トラック の交 換 価値 し か把握 し て いないとみる こと がで きる こと で ある。 これ によ ると,Dは ,形 式的には 甲ト ラ ッ クの所 有者であ るが,実 質 的には抵 当 権 者と変わ り が ないとみ るこ とが でき, 抵当権 者であれば抵当 目的物によ る妨害排除請求の相 手方にはなら ないと考えられる 。

他 方で,②上記 ①の よう なD の地 位は,AD 間 の 契 約によ って 創設され たも ので あることで ある。 した がって,Dの甲 トラッ クの占 有 ・処 分 権 能は,A との 契約 によりA と の 関係 で制約 され てい るにすぎ な いとみ る余 地が ある。 実際 にも ,例え ば甲 トラ ックを 不法 占 有する者 があ る場 合, その者 との 関 係では, Dは 所 有権に基 づ く返 還請求を す るこ とがで きる とさ れる可能 性がある。

こ の ほか, ③Dは, 甲トラ ック に抵 当権(自 動 車抵 当権) を設 定す ること もで き たのにあ え て 所 有権 留保とい う担 保手 段を選 ん だもので あっ て,所有 者と 同様 に扱われ るこ とは Dの 選択 の結果であるに すぎないと いえることなどを指摘する ことが考えられる。

なお, 前掲平成 2 1 年 3月 1 0日 最高 裁判 決は所 有権 留 保という社会的 に重 要な非典型 担保 の基 本的 内容の 一部 を 明らかに する も のである こ とか ら,法律 実 務家 となる こと を志 す者 が知 って いる べき判決 で ある という こと がで きるが ,単 に 同判 決がある ことや, そ の 内容を指 摘し ても十分 な解答にはなら ず,理由付け の内 容が問われ るものである。

小 問2では,下 線 部 ㋐のD の発 言が正 当と 認め られ るとい う前 提で解答す るこ と が求められ てい る。 これは ,甲 ト ラックの 通常 の 所有権を 有 して いたDが, Aと の所有 権留 保売 買契約に より 甲ト ラックの所 有 権を実 質的 に 喪 失した こと を前提として ,設 問2を 考え る べきこと を意 味するから,ま ずこの点を 押さえる必要がある。

そし て, 登録自動 車の所 有 権の喪 失はその登 録をし なけれ ば「第 三 者」 に対 抗す るこ とがで きない (道 路運 送 車両 法第 5条第 1項 )ことが問 題 文に示さ れて い ることを踏 ま えつつ,設問 2の 事実 関係の下 で,Eは,そ の「 第 三者 」 に該 当し,又 は「 第三 者に 準ず る者 」として 扱わ れるのかを,論 ずべきこと になる。

道 路 運 送 車 両 法第 5 条 第 1 項 は ,民 法 第 1 7 7 条と同 趣 旨の 規 定 で あ る こ と か ら , 「第 三 者」とは ,登録 の 不 存 在を主 張する正 当な 利 益を有する者 をい い, 隠れ た物 権変 動により 第三 者が害 され ることを 防ぐ と いう同 条の趣 旨から,当 該 物 件につき登 録 名 義人 との 間で法律 上の 利 害関 係を有 する に至 ったこと が,第 三 者性を基 礎付 ける「正 当 な 利益」に当 た ると解さ れる。

これ によ ると ,Eは ,第 三者には基 本 的に 該 当 しないこと とな る。Eが 甲ト ラッ クにつき有 する 利害 関係は ,甲 ト ラックの 所有 者 が判明し な けれ ば丙土地 の 所有 権に対 する 妨害 を排除す るこ とが できない とい う不 利益 を被 るこ とであり ,E は,甲 トラ ッ クにつき,権 利 を取得 す べ き地位にあるなど何 ら かの 法律上の利 害関 係を有する わけで はな いか らである。

もっ と も,判例(前掲平 成 6年 2 月8 日最高 裁 判決)上,土 地 所有 権の行 使が建 物の存 在に よっ て 妨 害されてい る場 合におい て,登 記に 関 わ りな く建物 の 実質 的所 有者をも って妨害排除 の義 務 者を決 すると す れば,土 地所 有者はそ の探 求の 困難を強 いら れる など の不 合 理を生ずる おそ れが あること から ,そ の建 物の所 有 権を譲 渡に よ り喪失した が自 ら得 た 登記 名 義をなお保

(19)

持す る 者は,土 地 所有 者と の関 係については建 物 に ついて の 物権 変 動における対 抗関係にも似 た 関 係にある とし た上 で,土地 所有 者の 請求によ り 建 物を収去 し土 地を 明け 渡 す義 務があ ると されて いる 。登録 自 動 車について は不 動 産と 同 様の 法的 扱いがさ れること が多 い ことから, D についても同 様の立論が可 能であるかどう かが問 題になる。

この 問題 につい ても ,結 論はい ずれ で も構 わな いが , その 結論 を 導く理由に つ い ての法 的な 構成力が問われている。

検 討の 筋道として は, 前掲平 成6 年 2月8 日 最 高裁判 決が地上 建物によ る土 地所 有権の妨害 の場 合に土 地所 有 者を例外 的に保 護してい るこ と から,そ の例 外的 保護の理 由を 明らかに して,

それと の比 較を するこ とが 考えら れる が,こ れに 限 ら れ るも の で はな く,次 に述 べるよ うな必 要な考 慮要 素に触れられて いることが必要 である。

地上 建物 によ る 土地 所有 権の妨 害の 場合に 土地 所有 者 の例 外 的 保 護が認 めら れる理由として は,① 建 物の 存 立は, 敷地 の全 面的 ・固定 的占 有を 当然に 伴う ため ,土地 所有 者 は土地の 占有 という土 地 所有 権 の 本質的 内容に属 する権能 を奪 わ れた状 態 が 継続する こと が挙 げられる。他 方で,登 録自 動 車に よ る土 地 所有 権の 妨害は, 全面的 なもの でも ,固定的 なも の でもな く, 土 地所有 者は ,その妨 害に よ り土 地 所 有権 の本 質的 内 容に属す る権 能を奪 われ た 状 態になる とま で評価することはで き ないともいえる。

また,②一般に,民 法第1 77 条 の 第三 者とは登 記 の 欠缺 を 主 張する正当 な 利益を有する者 をいう など とされ,第 三 者とされ るた めに は,当 該 物 権変動 の 主 張が認め られ る と当該 不 動産 に関 す る 権利 を 失 い,又は負担 を 免 れるこ と がで きな くな ることが必要 であ ると ころ, 本件で は,土 地 所有者は,登 記を移転 し てい ない前 建 物所 有 者による建 物 の所有 権 喪失 の主張が認め られ ると ,建物所 有権 の隠 れた 移転 によ りその建 物所 有権 の負担(土 地 所 有権 を 妨 害さ れた 状 態が 継 続 する と いう 負 担)を実 質 的に 免れる こ とが できな い 地 位にあると みるこ とができると もい える 。他方で , 土地 所有者 は土 地 所有 権の 本 質的 内容 に属 す る権能を 奪 われ た状態に なる とま で評 価する こと は できない と反 論 をすれば こ の指 摘は当た ら ない し,そ もそ も違 法な状態 に対 する 責任の 追及 の 問題を対 抗問 題 と類似す る と扱 うことは 適 切で はない とい うこ とも でき る。

さら に,③ 建物 を 譲 渡 した 元 所有 者は, その 建物 を所有す る旨 の登 記を自 らし た のであれ ば,

その名 義 の移 転をする ことも当然 にで き たは ずであり ,登記 懈 怠の責めを問わ れ ても仕方が な いこ とを 指摘する こと が できる 。他 方で,所有 権 留 保 売 買は,被 担保 債権 の 弁済 まで 登記 又は 登録 を売 主名 義 のま まにし てお くこ とが当然 の前 提で あり ,そ のこ とも含め て判 例 上承認され てい るこ とから ,売 主 に登記懈 怠の 責 めを負わ せ るこ とは適当 で はな いとも いえ ると 考えられ る。

こ の ほか,建 物の 撤去と は ,通 常, 建物 の 取壊 しであ るこ とか ら,そ の費 用を 負 担し さえす れば 誰で もする こと が できるた め, 建 物所有権 を 有し ない登記 名 義人 に負わ せる こと も可能で あるが,自動 車につ い ては ,前 登録 名義人 は真 の所 有者の 所在 が判 明する まで 自 動車を保 管し 続け なけ ればな らな い という負 担を 負 い続ける こ とに なりかね ず ,そ の金銭 負担 も重 いも のと なる可能性があ るという事 情も指摘することができる 。

以上 を踏 ま えれ ば,Eを 「 第三 者」 に準ず る者 と 認め て例 外的 に 保護すること は適当では な いと理解 するこ とに相 当 の 理 由があ ると考 えら れるが,上 記の とお りい ずれ の結 論でも許 容さ れる。

解答 に当 たって は ,以 上に例示 した 事 情の 全 部を 挙げ るこ とが 求 められ るも ので はなく,根 幹 的と思われる理 由を 挙げて結 論 を 正当化する こと で十分 であ る。も っと も,結 論を正当 化す る際 には ,その結 論を 根拠 づけ る方 向に 働く事情 を挙 げる だけでな く,反 対の 結 論 を根拠 付 け る方向 に働 く事情も考慮し,それに応接す ることが望 ましい。

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