リン脂質抗原固定化粒子による自己抗体の検出
日大生産工(院) ○中島 周作 日大生産工 小森谷 友絵,神野 英毅
【緒論】
自己抗体の一種である抗カルジオリピン 抗体(anti-CL)とは、「抗リン脂質抗体症候 群」(APS:anti phospholipid syndrome)を定 義する上でその出現や挙動が注目される抗 体の一つである。
全身性エリマトーデス(SLE)の代表的な症 状である各種血栓症、習慣流死産等の出現と 血中のanti-CLやループス抗凝固因子(LAC:
lupus anti coagulant)等の抗リン脂質抗体 の存在との間の関連性が指摘され、これらの 病態が名付けられた。さらにSLE等の自己免 疫疾患のない患者においてもanti-CLやLAC が一定の頻度で検出されることが報告され、
その疾患概念は拡大している。よって、APS の診断には、その定義から抗リン脂質抗体の 高度な検出が必須のものとなっている1)。
現在の臨床検査の場では、1980 年代初めか ら確立された、固相抗原として β2-GPI-CL複 合体を用いるELISA法および酸化(あるいは 酸素原子を付加した)ポリスチレンプレート に直接 β2-GPIを固相化して行うELISA法が汎 用されている2)。
【目的】
前述したような、現在普及している脂質抗 原に対する自己抗体検出方法は、操作が煩雑 であり迅速性や簡便性には難があると思わ れる。そこで我々は、検体試験液をそのまま 使用し、光学的に定量測定できるラテックス 凝集法に着目した。
本研究では、ラテックス凝集法の利用によ る迅速・簡便性に優れた高感度臨床検査法の 研究開発を目的として、以下の検討を行った。
【実験方法】
1.新規脂質抗原固定化方法の検討
新規脂質抗原固定化方法として、まずカル ジオリピン、レシチンをエタノールに溶解し ラテックス粒子に混合した。これを減圧乾燥 しリン酸緩衝溶液により再懸濁を行うこと で固定化した。さらに未吸着抗原を洗浄しラ テックス試薬とした。この新規脂質抗原固定 化方法における超音波処理の有無、減圧乾燥 固定化時の方法、温度など固定化方法を変化 させ固定化を行った。
2.新規脂質抗原固定化条件の検討
上記の新規脂質抗原固定化方法において、
補助脂質であるレシチンの種類やラテック ス粒子の種類、粒径などの固定化条件を変化 させ固定化を行った。
3.リン脂質抗原固定化粒子の評価
新規脂質抗原固定化粒子の評価のために、
スライド板上で凝集反応を確認した後、LPIA 200 によりラテックス近赤外比濁法による凝 集反応を測定し、その反応性を従来の感作方 法と比較検討した。
【結果・考察】
1.固定化温度の最適化
Fig.1 に新規抗原固定化方法における減圧 乾燥時の温度検討の結果を示す。この結果よ り固定化時の温度が反応性に大きく影響を 与えている事がわかる。通常、生体物質の固 定化は 37℃以下で行うのが通例だが、脂質抗 原においても常温程度の固定化が最適であ ると思われる。これは、加熱による脂質構造 やリポソーム形成過程の影響が原因である と考察される。
Study on Detection of Autoimmune Antibody Using Phospholipid Coated Particles.
Shusaku NAKAJIMA, Tomoe KOMORIYA and Hideki KOHNO
2.固定化担体粒子の最適化
Fig.2 に新規抗原固定化方法における担体 粒子検討の結果を示す。最も感度の良好な担 体粒子 3 種類と従来の感作方法によるラテッ クス診断薬とを比較している。(ここで従来 の方法というのは抗原をラテックスに混合 する作業のみで固定化したものを指す。)
結果を見ると高濃度領域での反応性が向 上しただけではなく、低濃度領域においても 反応性の向上が確認できる。カットオフ値は 1.0 R.U.とされているので、新規のラテック ス診断薬は臨床検体においても陰性陽性判 断に十分な反応性を有していると言える。
3.補助脂質種類の最適化
Fig.3 に新規抗原固定化方法における補助 脂質種類の検討結果を示す。レシチンなどは 補助脂質として作用することが知られてい るが、結果をからその種類によって反応性に 影響を与えることがわかる。今後、その組成 と反応性との関連性を検討する必要がある。
【まとめ】
1.新規抗原固定化方法により低濃度領域で は従来の方法に比べ3倍以上に高感度な ものとなった。2.新規 Latex 試薬はカット オフ値(1.0 R.U.)付近でも反応性が良好で あり、実際の臨床においての陰性陽性判断 に十分な反応性を有し、実用可能である3)。
【参考文献】
1)保田 晋介,渥美 達也,笠原 秀樹,松浦 栄 次 , 「 抗 リ ン 脂 質 抗 体 」 臨 床 免 疫 No.34,(2000),pp.470〜474
2)Matsuura E, et al, “ Anticardiolipin antibodies recognize β2-GPI structure altered by interacting with an Oxygen modified solid phase surface.” J Exp Med No.179,(1994),pp.457〜462
3)小森谷 友絵,中島 周作,神野 英毅,佐藤 邦則,有村 国明, 「特許願 2004-286679 脂質抗原感作ラテックス試薬の製造方法」
0 10 20 30 40 50 60 70
0 5 10 15 20 25
抗Treponema pallidumウサギ血清濃度(%)
V(Abs/min)×10
420℃ 37℃ 50℃ 60℃
0 10 20 30 40 50 60 70
0 2 4 6 8
標準血清濃度(R.U.)
V(Abs/min)×10
4従来 300nm 450nm 460nm
0 10 20 30 40 50
0 2 4 6 8
標準血清濃度(R.U.)
V(Abs/min)×10
4①
②
③
④
⑤
⑥