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平成 28 年度の北海道地区スモン検診結果

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Academic year: 2021

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A. 研究目的

平成 28 年度の北海道地区スモン検診の結果から、

北海道のスモン患者の現況を明らかにする。 また、 病 院・集団検診群と訪問検診群とで検診結果の比較を行っ て訪問検診の意義を確認する。

B. 研究方法

「スモン現状調査個人表」 に基づいて問診と診察を 実施した。 研究班員または協力研究者が常勤あるいは 非常勤の病院で 21 名の検診を行った。 また公益財団 法人北海道スモン基金と地域保健所の協力により、 道

内 3 か所で集団検診を実施した (20 名)。 長期入院中 あるいは施設入所中の患者と身体的あるいは地理的な 問題で病院・集団検診に参加できない在宅患者には訪 問検診を実施した (16 名)。 集団検診・訪問検診には 理 学 療 法 士 も 参 加 し 、 リ ハ ビ リ 指 導 を 行 っ た 。 平 成 28 年度の検診場所を図 1に示した。

C. 研究結果

平成 28 年度検診開始時点の北海道のスモン患者総 数 は 64 名 で あ っ た 。 平 成 28 年 度 の 検 診 受 診 者 は 57 名で、 検診受診率は 89%である。 検診場所での内訳

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平成 28 年度の北海道地区スモン検診結果

藤木 直人 (国立病院機構北海道医療センター神経内科) 矢部 一郎 (北海道大学医学研究科神経内科学)

佐々木秀直 (北海道大学医学研究科神経内科学) 森若 文雄 (北祐会神経内科病院)

津坂 和文 (釧路労災病院神経内科) 高橋 光彦 (日本医療大学保健医療学部)

大原 宰 (北海道保健福祉部健康安全局地域保健課) 松本 昭久 (渓仁会定山渓病院神経内科)

丸尾 泰則 (市立函館病院神経内科) 川島 淳 (さっぽろ神経内科クリニック) 橋本 修二 (藤田保健衛生大学医学部衛生学講座)

研究要旨

平成 28 年度検診開始時点での北海道内のスモン患者は 64 名であり、 検診受診者は 57 名、

検診率は 89%である。 57 名の検診場所での内訳は病院受診検診が 21 名、 集団検診が 20 名、

訪問検診が 16 名 (入院中の病院または入所中の施設:10 名、 在宅:6 名) である。 例年と同 様に病院・集団検診群と訪問検診群とで検診結果の比較を行った。 訪問検診群では病院・集 団検診群と比べて高齢者・歩行不能例が多く、 重症度はほとんどが重度以上であった。 歩行 状態については、 一本杖または独歩が 57 名中 25 名と約半数であったが、 外出が一人で可能 と答えたのは、 57 名中 14 名のみで、 一本杖で歩行、 と答えた患者 13 名中、 一人で外出が可 能なのは 2 名のみで昨年の 4 名と比べてもかなり減少した。 外出可能な患者が年々急速に減 少しており、 今後の検診においては訪問検診の比重が増していくと思われる。 介護保険は 35 名が判定を受けているが、 そのうち 8 名が自身の状態に比べて判定結果が低いと訴えている。

(2)

は研究班員または協力研究者が常勤あるいは非常勤の 病院での検診が 21 名、 集団検診参加者が 20 名、 訪問 検診 16 名である。 訪問検診での訪問先は入院中の病 院または入所中の施設 10 名、 在宅 6 名であった。

受診者の年齢構成は全体では 64 歳以下が 3 名 (5.3

%)、 65-74 歳が 9 名 (15.8%)、 75-84 歳が 23 名 (40.4

%)、 85 歳以上が 22 名 (38.6%) であったが、 訪問検 診群では 75-84 歳が 4 名 (25.0%)、 85 歳以上が 11 名 (68.8%) と大半が 75 歳以上であった (図 2)。

身体状況のうち歩行に着目すると、 病院・集団検診 群では一本杖がもっとも多く、 41 名中 21 名 (51.2%) と半数が杖歩行か独歩であるが、 訪問検診群では 16 名 中 10 名 (62.5%) が 不 能 あ る い は 車 椅 子 で あ り 、 杖歩行または独歩は 4 名 (25.0%) のみで両群間で大 きな差がみられた (図 3)。

外出については、 「車椅子で独力」 「近くまで」、 「遠 く ま で 」 を 合 わ せ て 外 出 が 一 人 で 可 能 と 答 え た の は 57 名中 14 名であった (図 4)。 歩行状態による外出の 可否を調べたところ、 検診の際に一本杖で歩行した患 者 13 名 (訪問検診群では 1 名のみ) 中、 一人で外出 が可能と答えたのは 2 名のみであった。 昨年の 4 名と 比べても急速に減少しており、 スモン患者の多くは室 内で一本杖歩行をしていても大半が外出に介助を要し ている。 (図 5)。

診察時の重症度に関しては、 全体では極めて重度 8

名 (14.0%)、 重 度 が 29 名 (50.9%)、 中 等 度 が 16 名 (28.1%)、 軽度が 4 名 (7.0%) であったが、 中等度と 軽度のほとんどは病院・集団検診群であり、 訪問検診 群では極めて重度が 5 名 (31.3%)、 重度が 6 名 (37.5

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0 5 10 15 20 25

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図 2 年齢分布

0 2 4 6 8 10 12 14

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図 3 歩行障害

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図 4 外出

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図 5 一本杖歩行の方の外出 㞟ᅋ᳨デᐇ᪋ᆅ༊

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図 1 平成 28 年度スモン検診実施地区

(3)

%) と大半が重度以上であった (図 6)。

Barthel Index については、 全体および病院・集団 検 診 群 で は 80-90 点 に ピ ー ク が あ り 、 41 名 中 34 名 (82.9%) が 60 点以上であるが、 病院・集団検診群で は 55 点 以 下 が 7 名 (17.0%) で あ る の に 対 し て 訪 問 検診群では 60 点以上が 5 名 (31.3%) のみで、 11 名 (68.8%) が 55 点以下であり、 訪問検診群での顕著な ADL低下が示された (図 7)。

介護保険の認定を受けているのは、 57 名中 35 名で 要支援 1 が 1 名、 要支援 2 が 6 名、 要介護 1 が 7 名、

要介護 2 が 7 名、 要介護 3 が 7 名、 要介護 4 が 5 名、

要介護 5 が 2 名であった (図 8)。 「認定の結果につい て 、 あ な た は ど う 考 え て い ま す か 」 の 設 問 に は 、 20

名 が 「お お む ね 妥 当 」 と 回 答 し た が 、 8 名 の 患 者 が

「認定の結果は自分の状態に比べて低いと思う」 と答 えた。 この 8 名の認定結果は要支援 2 が 3 名、 要介護 1 が 1 名、 要介護 2 が 3 名、 要介護 3 が 1 名であった。

図 9に介護判定結果と Barthel Index の比較を示した。

D. 考察

北海道では昭和 56 年度からスモン検診が開始され、

公益財団法人北海道スモン基金の全面的な協力により 高い検診率を維持してきた。 訪問検診も初期から実施 されている。 図 1 に示した通り北海道では広域に患者 が点在しており、 地理的な問題で集団検診に参加でき ない患者の自宅を訪問することが初期には多かったと 思われるが、 平成に入ってからはスモン患者の高齢化 と重症化が進行し、 都市部での長期入院患者、 施設入 所患者に対する訪問検診が増加し、 病院検診の患者数 が 減 少 し て い る1) 2)。 検 診 患 者 数 を 過 去 5 年 間 で 比 較 すると、 病院検診、 集団検診、 訪問検診の受診者がほ ぼ 3 分の 1 で 5 年間大きな変化はない (図 10)。 本年 に関しては昨年と比べて訪問検診の患者数は減少して いるが、 北海道スモン基金の検診協力により、 かなり 無理をして病院検診、 集団検診に参加して頂いている 患者も多く、 長期的にみて集団検診の維持が困難になっ

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図 8 介護保険申請者の認定区分

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18

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図 7 Barthel Index の比較

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BI 0-20 1 2 2

BI 25-40 1䠄1䠅 1䠄1䠅 2

BI 45-60 1 2䠄1䠅 3 1

BI 65-80 2(1) 3 4(2) 2

BI 85-100 1 3䠄2䠅 3 1

図 9 介護判定と Barthel Index

0 5 10 15 20 25 30

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図 10 検診数内訳 (5 年間の比較)

0 5 10 15 20 25 30 35

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図 6 診察時の重症度

(4)

てきている。

昨年までの研究で訪問検診群と病院・集団検診群と の比較を行い、 訪問検診群での高齢化、 障害度の重症 化、 移動能力の低下、 Barthel Index の低下を明らか にしてきた1) 2)。 本年も同様に訪問検診群と病院・集 団検診群との比較を行った。

検診結果は先に示した通りであり、 訪問検診群では 高齢者の割合が多く、 歩行不能あるいは車椅子がほと んどで重症度は 「極めて重度」 と 「重度」 が大半であっ た。 外出に着目したところ、 一人で外出が可能と答え たのは 57 名中 14 名のみであった。 歩行状態との比較 を行ったところ、 検診時に一本杖で歩行できた 13 名 のうち、 一人で外出が可能と答えたのは 2 名のみであ り、 患者の大半は介助者がいなければ外出不能と答え た。 室内では一本杖でなんとか移動できても、 スモン 患者が屋外で杖歩行を単独で行うことは困難であると いう結果である。 昨年は 1 本杖歩行の患者のうち 4 名 が外出可能であり、 外出困難な患者の減少が急速に進 行している。 また Barthel Index では 55 点以下は大半 が訪問検診群、 60 点以上の大半が病院・集団検診群 ときわめて顕著な解離が示された。

北海道のスモン患者の歩行状態の悪化、 外出不能患 者の増加、 ADL の低下、 障害度の重症化は明らかで あり、 今後も病院検診、 集団検診が可能な患者の減少 は続くと考えられる。 今後のスモン検診は訪問検診の 比重がさらに大きくなると予想される。

介護保険の認定区分についてであるが、 全体的な傾 向は昨年までと大きな変化はなかった。 しかし認定を 受けているのは 57 名中 35 名と少なく、 この判定結果 がスモン患者の全体像を反映しているとは言い難い。

要介護 1、 2、 3 の患者が 7 名ずつで、 要介護 4 が 5 名、

要介護 5 は 2 名と少ない。 スモン患者の重症化と矛盾 するような結果であるが、 重症であっても家族介護の みで介護保険を申請していない患者もおり、 長期入院・

入所患者のなかにも申請していない患者がいることか ら、 このような結果になっていると思われる。 判定結 果が 「自分の状態に比べて低い」 と答えた患者が 8 名 おり、 要支援 2 と要介護 2 と判定された患者に多かっ た。 図 9に示した通り、 Barthel Index と介護判定結 果にはある程度の相関が認められるが、 Barthel Index

が 65 以上でも要介護 3 と判定されている患者がいる 一方で、 40 未満でも要介護 1、 また 60 未満で要支援 2 の判定となった患者もいた。 65 歳になって障害者支 援サービスから介護保険サービスに移行した結果、 サー ビスの質・量が低下した事例で障害者支援サービスの 利用が認められた事例があり、 これについては公益財 団法人北海道スモン基金に委託した調査で報告してい る3)

E. 結論

北海道のスモン患者 57 名のスモン検診を実施した (検診率 89%)。 うち 16 名には訪問検診を実施して、

訪問検診群と病院・集団検診群とで結果を比較した。

自力歩行可能な患者、 一人での外出が可能な患者が毎 年減少しており、 今後ますます訪問検診の意義が重要 になってくると思われる。

H. 知的財産権の出願・登録状況 なし

I. 文献文献

1 ) 松本昭久ほか:北海道地区のスモン検診 (平成 21 年度) ―集団検診例と訪問検診例での療養現状の比 較―, 厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服 事業) スモンに関する調査研究班・平成 21 年度総 括・分担研究報告書, p 33-36, 2010

2 ) 藤木直人ほか:北海道地区のスモン検診の総括, 厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服事業) スモンに関する調査研究班・平成 20〜22 年度総合 研究報告書, p 15-18, 2011

3 ) 藤木直人ほか:スモン総合対策が担う介護への役 割, 厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服事 業 (難治性疾患等政策研究事業 (難治性疾患政策研 究事業))) スモンに関する調査研究・平成 27 年度 総括・分担研究報告書, p 225-230, 2016

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参照

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