日 本 言 語 政 策 学 会 ニ ュ ー ズ レ タ ー
N o v e m b e r 2 0 1 3 , J a p a n e s e A s s o c i a t i o n f o r L a n g u a g e P o l i c y
2 0 1 3 年 1 1 月 1 2 日 第 2 1 号
【 1 . 政 策 動 向 ・ 展 望 エ ッ セ イ 1 】 外 国 人 看 護 師 と 介 護 士
河 原 俊 昭
こ こ 数 年 、 高 齢 の 母 親 の 体 調 が 思 わ し く な く 、 い ろ い ろ な 介 護 施 設 や 病 院 へ の 入 退 院 を 繰 り 返 す よ う に な っ た 。 2 0 1 2 年 の 秋 に は 、 脳 梗 塞 の 治 療 の た め に 京 都 市 の あ る 病 院 に 入 院 す る こ と に な っ た 。 何 人 か の 看 護 師 が 母 の 面 倒 を 見 て く れ た が 、 そ の 中 に 、 フ ィ リ ピ ン 人 の 看 護 師 が い た 。 多 忙 な 彼 女 で あ っ た が 、 時 間 を 少 々 さ い て も ら い 、 い ろ い ろ な 話 し を 聞 く こ と が で き た 。
彼 女 は 、マ ニ ラ の 病 院 で 5 年 ほ ど 看 護 師 を し て い た そ う で あ る 。 日 ・ フ ィ リ ピ ン 経 済 連 携 協 定 を 切 っ 掛 け に 、 こ の 病 院 に 来 て し ば ら く 看 護 助 手 と し て 働 い て い た と い う 。 そ の 間 、 日 本 の 看 護 師 の 国 家 試 験 の 準 備 を し て 、 2 0 1 2 年 の 3 月 に 合 格 し て 資 格 を 取 る こ と が で き た と い う 。 試 験 で の 最 大 の 問 題 点 は や は り 日 本 語 の 読 み 書 き で あ っ た よ う だ 。 だ が 熱 心 に 勉 強 を し た こ と と 、 理 解 あ る 同 僚 達 の 助 け で 無 事 合 格 と な っ た 。
試 験 問 題 は 、 日 本 語 の 問 題 だ け で な く て 、 両 国 の 文 化 の 相 違 も 問 題 と な る よ う だ 。 た と え ば 、 患 者 の 入 浴 に 関 す る 問 題 で 、「 浴 槽 を ま た ぐ 」と い う 表 現 が あ っ た が 、フ ィ リ ピ ン で は 浴 槽 に 浸 か る 習 慣 は な く て シ ャ ワ ー を 用 い て い る 。 フ ィ リ ピ ン 人 に は「 浴 槽 」と い う 概 念 が な く て 、そ れ を「 ま た ぐ 」 と な る と 一 層 分 か ら な く な る 。 こ の よ う に 試 験 の 質 問 の 内 容 自 体 が 把 握 で き な く て 困 っ た 場 合 も 結 構 あ っ た と こ の 号 の 内 容
1 . 政 策 動 向 ・ 展 望 エ ッ セ イ ( 3 ) 2 . 研 究 大 会 を ふ り か え っ て 3 . 委 員 会 か ら の 報 告 ・ お 知 ら せ
発 行 : 日 本 言 語 政 策 学 会
務 局 : 〒 2 2 7 - 8 6 8 6 千 葉 県 柏 市 光 ヶ 丘 2 - 1 - 1 麗 澤 大 学 外 国 語 学 部 山 川 研 究 室
T E L / F A X : 0 4 - 7 1 7 3 - 3 4 2 7 E - m a i l : j a l p . j i m u @ g m a i l . c o m U R L : h t t p : / / j a p l . j p / w p
い う 。 し か し 日 本 文 化 を 実 際 に 体 験 し て 、 少 し ず つ 理 解 が 深 ま っ た そ う で あ る 。
経 済 連 携 協 定 に 基 づ き 、 日 本 は イ ン ド ネ シ ア と フ ィ リ ピ ン か ら 介 護 福 祉 士 と 看 護 師 の 候 補 者 を 受 け 入 れ て い る 。 数 年 の 滞 在 の 内 に 試 験 に 合 格 す る 必 要 が あ る 。 2 0 1 3 年 の 国 家 試 験 は 、 両 国 か ら の 介 護 福 祉 士 候 補 者 3 2 2 名 が 受 験 し て 1 2 8 名 が 合 格 し た 。 ま た 、 看 護 師 の 国 家 試 験 は 3 1 1 名 が 受 験 し て 3 0 名 が 合 格 し て い る 。 日 本 人 の 合 格 率 と 比 べ る と か な り 低 い 数 字 に な る 。 こ の 受 け 入 れ の 制 度 は ま だ う ま く 機 能 し て い な い 。
外 国 か ら の 介 護 福 祉 士 や 看 護 師 の 受 け 入 れ が 、 今 後 ど の よ う に な る の か 予 測 は む ず か し い 。 介 護 施 設 な ど で は 、 多 く が 外 国 人 の 介 護 福 祉 士 と い う こ と も あ り う る だ ろ う 。 言 葉 が お ぼ つ か な く な っ た 高 齢 者 を 、 日 本 語 は ま だ 不 十 分 な 外 国 人 が 世 話 を す る 事 例 が 増 え る か も し れ な い 。 入 居 費 の 安 い 特 別 養 護 老 人 ホ ー ム で は 、 外 国 人 の 介 護 士 や 看 護 師 が 多 く 働 き 、 入 居 費 の 高 い 有 料 老 人 ホ ー ム で は 、 日 本 人 の 介 護 士 や 看 護 師 が 多 く な る か も し れ な い 。 そ の 場 合 、 利 用 者 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 取 り や す い の は 、 日 本 人 介 護 師 や 看 護 師 の ほ う に な ろ う 。 い ず れ 、 病 院 や 介 護 施 設 で の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 問 題 に 大 き な 関 心 が 寄 せ ら れ る 時 代 が 来 る だ ろ う 。
今 年 ( 2 0 1 3 年 ) の 8 月 の 中 頃 、 1 0 日 ほ ど マ ニ ラ 郊 外 の サ ン タ ロ サ 市 に 滞 在 し た 。 い く つ か の 書 店 を 巡 っ て 、 語 学 書 の コ ー ナ ー に 寄 っ て み た 。そ こ で 、J a p a n e s e N u r s i n g M e d i c a l D i c t i o n a r y と い う 小 さ な 語 彙 集 を 見 つ け た 。 看 護 の 日 本 語 の 語 彙 集 に 一 定 の 需 要 が あ る よ う だ 。 ふ と 思 っ た こ と だ が 、 日 本 で 医 療 業 務 に 就 く こ と を 希 望 す る 人 が 、 こ の 語 彙 集 を 購 入 し て 猛 勉 強 し て も 、 日 本 語 の ハ ン デ ィ ゆ え に 国 家 試 験 に 不 合 格 と な っ た ら 、 そ れ は 残 念 な こ と で あ ろ う 。 外 国 人 の 言 語 ハ ン デ ィ に 配 慮 し た 国 家 試 験 を ど の よ う に 行 っ て い く か 今 後 の 課 題 で あ ろ う 。
河 原 俊 昭 ( か わ は ら ・ と し あ き )
★ 京 都 光 華 女 子 大 学 ・ 教 授 。専 門 は 英 語 教 育 。 編 著 書 に 『 世 界 の 言 語 政 策 』( く ろ し お )、『 ア ジ ア ・ オ セ ア ニ ア の 英 語 』( め こ ん ) な ど が あ る 。
政 策 動 向 ・ 展 望
エ ッ セ イ 1
【 1 . 政 策 動 向 ・ 展 望 エ ッ セ イ 2 】 日 本 に お け る 留 学 生 教 育
鈴 木 洋 子
日 本 に 留 学 生 が 初 め て 来 た の は 1 8 8 1 年 、 朝 鮮 半 島 ( 現 韓 国 ) か ら と さ れ て い る 。 一 方 、 日 清 ・ 日 露 戦 争 経 過 後 、 台 湾 ・ 朝 鮮 半 島 ・ 満 州 を 植 民 地 化 し た 日 本 は そ こ で 皇 民 化 政 策 の 一 環 と し て 日 本 語 教 育 を 実 施 し て い た 。 し か も 日 本 は そ れ ら の 国 か ら の 留 学 生 を 受 け 入 れ 、 第 二 次 世 界 大 戦 時 に は 東 南 ア ジ ア の 若 者 も 日 本 側 の 軍 人 に す る た め 留 学 生 と し て 受 け 入 れ 、 留 学 生 に 対 す る 日 本 語 教 育 研 究 も 緒 に つ い た 。 日 本 留 学 は 母 国 で の 教 育 環 境 が 整 っ て い な い た め 日 本 で 教 育 を 受 け る と い う ケ ー ス も 多 か っ た 。 日 本 語 だ け で は な く さ ま ざ ま な 科 目 が 留 学 生 の カ リ キ ュ ラ ム に 組 ま れ た が 、 日 本 語 自 体 を 習 得 す る こ と は 必 至 で あ り 留 学 生 教 育 ほ ぼ イ コ ー ル 日 本 語 教 育 で あ っ た 。 即 ち 当 時 は 文 型 中 心 の 直 接 法 に よ る 日 本 語 教 育 が 留 学 生 教 育 の 主 流 で あ っ た 。
1 9 7 2 年 に 中 国 と の 国 交 が 回 復 し 、 中 国 か ら 帰 国 し た 残 留 孤 児 、 ベ ト ナ ム 戦 争 後 は ベ ト ナ ム 等 か ら の 政 治 難 民 、 1 9 9 0 年 代 の バ ブ ル 期 に は 南 米 か ら の 日 系 人 を 受 け 入 れ 、 彼 ら に 対 す る 日 本 語 教 育 支 援 も 盛 ん に な っ た 。 学 習 者 の 母 語 別 指 導 法 や 教 材 も 開 発 さ れ た が 、 次 第 に コ ミ ュ ニ カ テ ィ ブ ・ ア プ ロ ー チ が 主 流 と な っ た 。
1 9 8 3 年 に 当 時 の 中 曽 根 首 相 が 「 留 学 生 1 0 万 人 計 画 」 を 打 ち 出 し た こ と も あ り 留 学 生 数 が 増 え 、2 0 0 3 年 に は 1 0 万 人 を 突 破 し た 。 日 本 が 経 済 的 に 急 成 長 し た 時 代 に “ 日 本 に 学 ぼ う ” と い う 留 学 生 が 増 え た と さ れ て い る 。 近 年 は 、 英 語 に よ る 留 学 生 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 、 ダ ブ ル デ ィ グ リ ー 授 与 制 度 の 推 進 、 留 学 希 望 者 が 日 本 留 学 試 験 を 母 国 で 受 け ら れ る 制 度 な ど 留 学 生 を 増 や す 施 策 が と ら れ て い る 。 日 本 の 労 働 力 人 口 減 少 を 補 う 意 味 で も 留 学 生 を 2 0 2 0 年 ま で に 3 0 万 人 に す る 「 留 学 生 3 0 万 人 計 画 」 が 進 行 中 で あ る 。
留 学 生 の 日 本 語 教 育 は 留 学 生 の 日 本 語 の レ ベ ル や 大 学 教 育 で 極 め る 専 門 、 留 学 目 的 に よ っ て 千 差 万 別 で あ る 。 昨 今 は 言 語 的 正 確 さ よ り も 日 本 語 で 何 が で き る か と い う こ と が
鈴 木 洋 子 ( す ず き ・ よ う こ )
★ 昭 和 女 子 大 学 大 学 院 文 学 研 究 科 教 授 。 専 門 は 応 用 言 語 学 。 英 語 教 育 、 日 本 語 教 育 ( 日 本 語 教 師 養 成 講 座 を 含 む ) に も か か わ る 。 著 書 に 『 日 本 に お け る 外 国 人 留 学 生 と 留 学 教 育 』( 春 風 社 ) な ど が あ る 。
政 策 動 向 ・ 展 望
エ ッ セ イ 2
重 要 視 さ れ る 傾 向 で あ る 。 ま た 、 日 本 で 就 職 を 希 望 す る 留 学 生 が 増 加 し て い る た め に 日 本 で の ビ ジ ネ ス 場 面 を 中 心 に し た 教 科 書 ・ 教 材 の 利 用 が 増 加 し 、 そ れ ら の 研 究 も 盛 ん に な っ て い る 。 教 師 が 主 導 権 を 握 っ て 学 生 を 教 育 す る 型 か ら 学 習 者 が 活 動 し な が ら 学 習 者 同 士 で 学 び あ う 協 働 型 の 留 学 生 教 育 、 あ る 課 題 を 解 決 す る た め に 日 本 の 実 社 会 に 出 て 日 本 人 を 相 手 に 活 動 を し て デ ー タ を 集 め そ れ を も と に プ レ ゼ ン を す る と い う 総 合 的 な 力 を 養 育 す る ア ク テ ィ ブ ラ ー ニ ン グ 型 の 留 学 生 教 育 も 進 ん で い る 。
母 国 で 日 本 語 関 連 の 教 員 あ る い は 日 本 文 化 の 研 究 者 に な る に は 学 位 が 必 要 だ か ら と い う 理 由 で 学 位 取 得 の た め に 留 学 し て く る 研 究 留 学 生 が 増 加 し て い る 。 日 本 の ポ ッ プ カ ル チ ャ ー を 極 め た い と 留 学 し て く る ケ ー ス も 多 々 あ り 、 留 学 生 の 多 様 な ニ ー ズ に 応 え ら れ る 日 本 の 高 等 教 育 の 向 上 、 拡 張 が 急 が れ る 。
【 1 . 政 策 動 向 ・ 展 望 エ ッ セ イ 3 】 言 語 政 策 の 周 辺 ─ 日 本 の た め の グ ロ ー バ ル 人 材 と い う 矛 盾
牲 川 波 都 季
文 部 科 学 省 の 「 平 成 2 6 年 度 概 算 要 求 主 要 事 項 」 に は 、
「 意 欲 と 能 力 の あ る 若 者 全 員 に 留 学 機 会 を 付 与 し 、 世 界 に 勝 て る 真 の グ ロ ー バ ル 人 材 を 育 て る 」 と の 記 述 が あ る
( 2 0 1 3 年 8 月 、 p . 1 0 )。 ま た 自 由 民 主 党 教 育 再 生 実 行 本 部 「 成 長 戦 略 に 資 す る グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 部 会 提 言 」
( 2 0 1 3 年 4 月 ) の 部 会 名 か ら し て 、 そ し て グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 推 進 会 議 「 中 間 ま と め 」( 2 0 1 1 年 6 月 ) で も 示 さ れ て い る よ う に ( p . 6 )、 現 在 の グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 は 、 国 際 的 な 経 済 競 争 に お け る 日 本 の 勝 利 を 目 標 の 一 つ と し て い る 。
し か し そ こ で 勝 っ た と こ ろ で 、 人 材 と 呼 ば れ た 人 々 一 人 ひ と り の 生 活 に 安 定 と 充 実 は も た ら さ れ る の だ ろ う か 。
国 際 化 拠 点 整 備 事 業 ( グ ロ ー バ ル 3 0 ) や グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 推 進 事 業 と い っ た プ ロ ジ ェ ク ト が 施 策 と し て 予 算 化
牲 川 波 都 季 ( せ が わ ・ は づ き )
★ 秋 田 大 学 国 際 交 流 セ ン タ ー 教 員 。 言 語 表 現 教 育 お よ び 教 育 言 説 分 析 を 専 門 と す る 。 主 著 は 『 戦 後 日 本 語 教 育 学 と ナ シ ョ ナ リ ズ ム ─
「 思 考 様 式 言 説 」 に 見 る 包 摂 と 差 異 化 の 論 理 』( く ろ し お 出 版 、 2 0 1 2 )。
さ れ る た び に 、 そ れ に 必 要 な 言 語 教 育 や 国 際 協 力 の 専 門 教 職 員 の 雇 用 は 一 時 的 に 増 え る 。 上 記 の 「 中 間 ま と め 」 は 、 グ ロ ー バ ル 人 材 に 必 要 な 能 力 と し て 、 高 い 外 国 語 運 用 能 力 を 挙 げ 、 そ の 能 力 育 成 の た め に は 、 若 い 間 の 海 外 経 験 が 有 効 だ と し て い る ( p . 7 - 8 )。 グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 事 業 に 携 わ る 教 職 員 の 多 く は 、 ま さ に こ れ を 備 え た グ ロ ー バ ル 人 材 そ の も の だ と 言 え る だ ろ う 。 し か し 日 本 の 経 済 状 況 ・ 政 策 と と も に 文 教 政 策 が 動 き 、 そ れ に と も な っ て プ ロ ジ ェ ク ト の 規 模 も 内 容 も 流 動 す る の で 、 こ う し た 人 材 の 雇 用 は 安 定 し な い 。 最 も 身 近 な グ ロ ー バ ル 人 材 で あ る 教 職 員 が 自 ら の 生 活 に お い て 不 安 定 で あ る の を 見 て 、 一 体 学 生 は 自 分 も 将 来 そ う し た 人 材 に な り た い と 希 望 す る だ ろ う か 。 ま た 、 グ ロ ー バ ル 人 材 の 要 件 を 外 国 語 運 用 能 力 と 海 外 経 験 と す る な ら ば 、 先 の プ ロ ジ ェ ク ト 従 事 者 の よ う に 、 そ れ を 満 た し て い る 人 材 は す で に 多 数 い る 。 そ の 力 を 安 定 的 に 活 用 す る 仕 組 み づ く り に こ そ 予 算 を 投 じ る べ き だ ろ う ( こ の こ と は 、 今 年 5 月 の 平 畑 奈 美 ら に よ る 日 本 語 教 育 学 会 で の 発 表 「「 グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 」 手 段 と し て の 日 本 語 教 師 海 外 派 遣 ─ そ の 意 義 と 課 題 を 日 ・ 米 ・ 仏 の 取 り 組 み か ら 考 え る 」 で も 指 摘 さ れ て い た )。
し か し 一 方 で 、 グ ロ ー バ ル 人 材 に 必 要 な 要 件 が こ れ で よ い の か と い う 疑 問 も 浮 か ぶ 。
グ ロ ー バ ル 化 時 代 に 生 き る 新 し い 世 代 に は 、 地 球 社 会 を 担 う 責 任 あ る 個 人 と し て の 自 覚 の 下 に 、 学 際 的 ・ 複 合 的 視 点 に 立 っ て 自 ら 課 題 を 探 求 し 、 論 理 的 に 物 事 を と ら え 、 自 ら の 主 張 を 的 確 に 表 現 し つ つ 行 動 し て い く こ と が で き る 能 力 が 必 要 と さ れ る 。 さ ら に 、そ の 根 底 に は 、深 く 広 い 生 命 観 や 人 生 観 の 形 成 、 自 ら の 行 為 及 び そ の 結 果 に 対 す る 深 い 倫 理 的 判 断 と 高 い 責 任 感 を 持 っ て 行 動 す る 成 熟 度 が 求 め ら れ る 。 2 0 0 0 年 1 1 月 に 発 表 さ れ た 、 大 学 審 議 会 「 グ ロ ー バ ル 化 時 代 に 求 め ら れ る 高 等 教 育 の 在 り 方 に つ い て( 答 申 )」か ら の 引 用 で あ る 。 管 見 で は 、 教 育 の 文 脈 で グ ロ ー バ ル 人 材 像 が 示 さ れ た は じ め て の 公 的 文 書 が こ の 答 申 だ っ た と 思 う 。 当 時 、 少 な く と も 大 学 審 議 会 は 、 地 球 社 会 の メ ン バ ー と し て 探 求 的 に 問 題 解 決 し う る 、 倫 理 性 と 責 任 感 を 備 え た 世 界 市 民 の 育 成 を 提 案 し て い た 。 日 本 の 経 済 に 益 す グ ロ ー バ ル 人 材 と い う 現 在 の 像 と 比 べ た 時 、 私 に は こ の 1 3 年 前 の 提
政 策 動 向 ・ 展 望
エ ッ セ イ 3
案 の 方 が よ ほ ど 困 難 で 深 い 教 育 目 標 の よ う に 思 え る 。 世 界 を 念 頭 に 考 え 問 題 解 決 を 図 り う る 人 材 の 育 成 が か な う な ら 、 そ う し た 人 材 は 日 本 へ の 利 益 を も た ら す 主 体 に な る と は 限 ら な い 。 目 標 の 実 現 に 向 か っ て 、 国 境 を 越 え て 生 活 し 国 籍 を 変 え る こ と も 厭 わ ず 、 日 本 の 政 策 に 批 判 的 な 人 材 に も な り う る だ ろ う 。
世 界 市 民 の 育 成 か 、 一 国 主 義 的 な 人 材 の 育 成 か 。 人 々 は 世 界 で 共 通 し て 言 語 を 使 っ て き た の だ か ら 、 言 語 政 策 と そ の 研 究 は 、 一 国 の そ の 時 々 の 経 済 政 策 に 規 定 さ れ る の で は な く 世 界 を 見 晴 ら し た 提 案 を 行 う こ と が で き る 。 言 語 教 育 者 に 求 め ら れ て い る 能 力 と 見 合 わ な い 雇 用 状 況 、 こ の こ と が も た ら す 学 生 へ の 影 響 と い っ た 面 で の ミ ク ロ な 教 育 政 策 批 判 、 あ る い は 、 言 語 教 育 の め ざ す 新 し い 理 念 と 、 そ の 実 現 の た め の 世 界 規 模 で の 政 策 的 提 案 な ど 、 言 語 政 策 の 周 辺 を ウ ォ ッ チ す る こ と で 研 究 課 題 は 広 が っ て い く 。
* 今 号 は「 研 究 動 向・政 策 エ ッ セ イ 」は お 休 み い た し ま す 。
【 2 . 2 0 1 3 年 研 究 大 会 報 告 】 2 0 1 3 年 研 究 大 会 を ふ り か え る
杉 野 俊 子 ( 大 会 委 員 会 理 事 、 工 学 院 大 学 )
2 0 1 3 年 J A L P の 大 会 が 6 月 1 - 2 日 に 桜 美 林 大 学 で 開 催 さ れ ま し た 。 桜 美 林 大 学 と い え ば 、 1 0 年 以 上 前 の 2 0 0 2 年 1 2 月 に 第 一 回 大 会 が 同 大 学 で 開 催 さ れ た こ と を 懐 か し く 思 い だ し ま し た 。 当 時 は ま だ 「 言 語 政 策 」 と い う 用 語 や 概 念 自 体 が 、 他 の 研 究 者 た ち の 誤 解 を 受 け る 時 代 で し た 。
今 大 会 の 、 田 中 慎 也 前 会 長 ・ 大 谷 泰 照 前 理 事 ・ 森 住 会 長 に よ る 「 日 本 言 語 政 策 研 究 の 誕 生 か ら 現 在 ま で 」 の 基 調 パ ネ ル や 「 言 語 政 策 研 究 の 現 在 か ら 未 来 」 を 論 じ た 全 体 シ ン ポ ジ ウ ム を 始 め 、 第 1 か ら 第 5 ま で の 興 味 深 い 問 題 提 起 を し た 分 科 会 ほ か 、 多 く の 若 手 研 究 者 に よ る 多 彩 な 一 般 研 究 発 表 は 、 ま さ に 1 5 回 大 会 を 記 念 大 会 と 呼 ぶ の に ふ さ わ し い 大 会 だ っ た と 感 慨 深 い も の が あ り ま し た 。 先 達 者 た ち の
2 0 1 3 年
研 究 大 会 報 告
学 会 設 立 趣 旨 と 研 究 成 果 を さ ら に 定 着 さ せ て い く こ と が 私 達 の 使 命 だ と 、 新 た に 感 じ た 大 会 で も あ り ま し た 。
【 3 . 委 員 会 か ら の 報 告 ・ お 知 ら せ 】
◆ 大 会 委 員 会 よ り
東 北 地 区 研 究 会 の 報 告 (2012.9.23)
日 時 2 0 1 2 年 9 月 2 3 日 ( 日 ) 1 3 : 0 0 – 1 7 : 0 0 場 所 岩 手 大 学 学 生 セ ン タ ー B 棟 2 階 G B 2 1
F プ ロ グ ラ ム の 詳 細 は 後 日 学 会 ホ ー ム ペ ー ジ を ご 覧 く だ さ い 。( h t t p : / / j a l p . j p / w p / )
中 部 地 区 研 究 会 の 報 告 (2012.10.28)
日 時 2 0 1 2 年 1 0 月 2 8 日 ( 日 ) 1 3 : 0 0 - 1 7 : 0 0
場 所 名 城 大 学 名 駅 サ テ ラ イ ト ( 名 古 屋 駅 前 桜 通 ビ ル 1 3 F )
F プ ロ グ ラ ム の 詳 細 は 学 会 ホ ー ム ペ ー ジ を ご 覧 く だ さ い 。 ( h t t p : / / j a l p . j p / w p / )
関 西 地 区 研 究 会 の 報 告 ( 2013.1.12)
委 員 会 か ら の
報 告 ・ お 知 ら せ
2 0 1 3 年 1 月 1 2 日 ( 土 ) 1 3 : 3 0 - 1 7 : 3 0
場 所 : 京 都 大 学 吉 田 南 構 内 総 合 館 1 階 共 南 1 1 講 義 室 F プ ロ グ ラ ム の 詳 細 は 学 会 ホ ー ム ペ ー ジ を ご 覧 く だ さ い 。
( h t t p : / / j a l p . j p / w p / )
九 州 地 区 研 究 会 の 報 告 ( 2012.12.8)
シ ン ポ ジ ウ ム : 観 光 と 言 語 政 策 —― 言 語 政 策 と 国 際 交 流 観 光 を 考 え る —―
日 時 : 2 0 1 2 年 1 2 月 8 日 ( 土 ) 1 3 : 0 0 - 1 7 : 0 0 場 所 : 宮 崎 大 学 教 育 文 化 学 部 第 一 会 議 室
F プ ロ グ ラ ム の 詳 細 は 学 会 ホ ー ム ペ ー ジ を ご 覧 く だ さ い 。 ( h t t p : / / j a l p . j p / w p / )
◆ 広 報 委 員 会 よ り
学 会 、 研 究 会 情 報 等 の 投 稿 を 受 け 付 け ま す 。 ご 希 望 の 方 は 事 務 局 ( j a l p . j i m u @ g m a i l . c o m ) に 、 氏 名 、 所 属 を 添 え て ご 連 絡 下 さ い 。 原 則 と し て 添 付 フ ァ イ ル は 送 信 で き ま せ ん の で 、 詳 細 が 掲 載 さ れ て い る H P な ど あ り ま し た ら 、 そ ち ら の ア ド レ ス に リ ン ク を 貼 る よ う に ご 指 示 下 さ い 。
* ニ ュ ー ズ レ タ ー の 記 事 を 学 会 や 著 者 の 許 可 な く 引 用 ・ 転 写 す る こ と は 禁 止 さ れ て い ま す の で 、 ご 注 意 く だ さ い 。