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☐津波対策は失敗だったのか 特集Ⅰ 東日本大震災(1)

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消防科学と情報 1993年北海道南西沖地震津波の後、津波対策に

関連する7省庁が「地域防災計画における津波対 策強化の手引き」に合意した。其の要点は次の二 つである。

まず、計画対象津波の選び方である。信頼でき るデータが数多くある最大の過去の津波、それと 地震地体構造論などで予想される最大地震で発生 する津波とを比べ、大きな方を計画対象とする。

第二の要点は、対策の方法である。防災構造物、

津波に強いまちづくり、防災体制の三つを組み合 わせる。防潮堤などで対象津波を完全に防ぐこと はしないと明記されている。構造物のみで防ぐと すると、巨大なものが必要となり、経費も建造時 間もかかり、さらに次の巨大津波までの間、機能 強度を維持することが出来るのかに不安が残る。

したがって構造物のみに頼らないとしたのである。

しかし、人命だけは守り抜かねばならない。最 後の、しかも最良の手段は早期避難である。予警 報に従って逃げる、いかに避難するかを訓練する、

なぜ避難しなくてはならないかを学ぶ、などから 防災体制は成り立っていた。

津波は頻繁には来ない。その間に沿岸地帯は変 貌する。住居を高地に移転し、または耐浪建築と する。開発する時にちょっと立ち止まって、これ

で津波に強くなるか否かを考えながら進もうとす るのが、津波に強いまちづくりの意味するところ であった。

以上の対策手法は、今回の大津波を経験しても 変える必要はない。だが、修正すべき重要な問題 が浮き彫りとなった。この対策手法が、防災対策 従事者以外の他部署と共有されて居なかった状況 は変えなくてはならない。たとえば、ライフライ ン機能の安全性向上の項には下水道終末処理場へ の言及があるが、ほとんど守られて居なかった。

防潮堤の海側に作られた処もある位である。危 険な物品への対策として、石油タンクの地下埋設 などが勧められて居るが、実現例は極めて稀であ った。

対策手法そのものは出来上がっていたが、その 実現手法には大きな欠陥があったのだ。

さらに、実現には経費がかかる。200年に1度 と想定される洪水から首都を守る施設が、愚かな 事と仕分けられる時代に、不測事態への備えを必 要と認める国民的な合意が成立するであろうか。

万一の事態で人命が失われ、地域社会が消滅し、

歴史が終焉をむかえる危険への備えを、費用便益 の言葉のもとに顧みないままで良いのか。

特集Ⅰ 東日本大震災(1)

☐津波対策は失敗だったのか

東北大学名誉教授

首 藤 伸 夫

参照

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