2 0 0 5 ( 平 成 1 7 ) 年3 月
財団
法人
光産業技術振興協会 2004FY−009−1
光技術応用システムのフィージビリティー調査報告書
−光集積技術Ⅱ−
序 文
2004(平成16)年度の光産業国内生産額は,当協会が行っている光産業動向調査委員会の調査結果によると,
金額にして約8.4兆円,前年比13.8%という高い伸びが見込まれている。光技術は社会インフラからオフィス,
家庭など社会生活の全てに係わる基盤・基幹技術と位置づけられ,ユビキタス社会実現に向けてその果たす べき役割は大きい。特に,急激な産業構造の変化と東アジア生産拠点の存在感が増している現在,新たな発 想を持った新技術・新製品ならびに新市場の創造が強く望まれている。
当協会は,光技術の普及促進と光産業の発展,ならびに光技術分野における新規事業創造に寄与するため に,平成8年度より[新規事業創造プロジェクト推進委員会]を設置し,新規事業創造の一環として光技術 を応用した新デバイス・新システム実用化の可能性を調査する「フィージビリティ調査」,並びに新規事業の 具体例としての光技術を応用したシステムや機器等の委託開発等を実施してきた。
本報告書は,このような背景のもとで,昨年度に設置した「光集積技術フィージビリティ調査委員会」の 2年目に当たる調査研究結果について取りまとめたものである。当委員会は,光集積技術についての最新の 技術動向を調査すると共に,その要素技術・システム応用などの技術開発と市場性,ファウンドリーなど商 用化に向けての問題点と課題,今後の研究開発の展開・方向性についても調査,検討を行った。
近年,シリコンLSIの微細化は一段と進んでいるが,微細化によりゲート遅延時間は短縮されるものの,
逆にゲート間をつなぐ配線遅延時間が増大してトータル性能を落とすという問題が生じている。この解決策 として並列処理が求められているが,この処理には光集積技術,光の高速性と無誘導性を生かした光配線・
光実装技術が最適である。実用に供するためには越えなければならないハードルは高いが,期待も高い。光 ネットワークシステムの基本構成である光デバイス/装置への要求はミニチュアリゼーション・集積化の方向 に向かっており,この傾向はコストダウン,高機能・多機能発現の上からも強く求められている。また,高 密度・省スペース化と電力消費削減の上からも,O-E-O変換を伴わない光集積O-O機能・装置への期待も高 い。光実装と光MEMS技術,これらの技術,あるいは両技術が一体化した新機能素子・システムが新たなる 市場創造に結びつくことを期待したい。
本報告書は本調査委員会の水本哲弥委員長をはじめ16名の委員各位の熱心な調査研究討議に基づき,最先 端の研究開発でリーダーシップを取っておられる方々のご協力を得て作成されたものであり,厚く御礼申し あげる次第である。また,本報告書の第7章として,本調査委員会での活動も含め「新規事業創造プロジェ クト推進委員会」全体の今年度の活動状況がまとめられているので参考にしていただければ幸いである。新 規事業創造プロジェクト推進委員会・矢嶋弘義委員長,委員各位,さらには関係官庁,諸機関,関係企業の 各位の多大のご支援とご協力を賜ったことを,ここに記して深く感謝の意を表す次第である。
2005(平成17)年3月 財団法人 光産業技術振興協会 会 長 金杉 明信
平成 16 年度 光集積技術フィージビリティ調査委員会名簿
(敬称略,順不同)
委 員 長 水本 哲弥 東京工業大学 大学院理工学研究科 電気電子工学専攻 教授 主 査 茨 木 修 独立行政法人 産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門
光・電子SI連携研究体 研究副体長
主 査 澤田 廉士 九州大学 大学院工学研究院 知的機械システム部門
システム生命科学府生命工学講座 ナノマイクロ医工学研究室 教授 委 員 諫本 圭史 Santec(株) マネージャー
委 員 蔵田 和彦 日本電気㈱ 中央研究所 システムプラットフォーム研究所 研究部長 委 員 佐々木 実 東北大学 大学院工学研究科 ナノメカニクス専攻 羽根研究室 助教授 委 員 宍倉 正人 ㈱日立製作所 中央研究所 ULSI研究部 主任研究員
委 員 高原 秀行 日本電信電話㈱ 知的財産センタ 企画部 担当部長(統括)
委 員 高 森 毅 沖電気工業㈱ 研究開発本部 シリコンレンズベンチャーユニット ユニットリーダー 委 員 成瀬 誠 独立行政法人 情報通信研究機構 情報通信部門
超高速フォトニックネットワークグループ 主任研究員 委 員 日暮 栄治 東京大学 先端科学技術研究センター 助教授
委 員 尾藤三津雄 アルプス電気(株) 事業開発本部 企画部
委 員 平田 隆昭 横河電機㈱ 技術開発本部 先端技術研究所 通信技術研究室長 委 員 三 川 孝 ファイベスト(株) チーフデザイナー
委 員 村上 賢治 オリンパス(株) 研究開発センター MEMS開発本部 MEMS事業推進部 応用開発G 課長代理
委 員 吉村 徹三 東京工科大学 工学部バイオニクス工学科 教授
事 務 局 田口 剣申 財団法人 光産業技術振興協会 開発部 主幹 (主担当)
事 務 局 北山 賢一 財団法人 光産業技術振興協会 開発部 主査 (副担当)
委員以外の執筆者名簿(役職・敬称略,順不同)
太田 淳 奈良先端科学技術大学院大学 物質創成科学研究科 教授
今西 大介 ソニー(株) マイクロシステムズネットワークカンパニー コアテクノロジー開発本部 アドバンストレーザテクノロジー部
片白 雅浩 オリンパス(株) MEMS開発本部MEMS事業推進部 部長
清倉 孝規 日本電信電話(株) NTT マイクロシステムインテグレーション研究所 ネットワーク装置インテグレーション研究部 マイクロシステム研究グループ
審議経過概要
第 1 回委員会
・ 平成16年 7月20日(火)13:30~16:00,於:(財)光産業技術振興協会
・ 審議:
① 自己紹介と委員長選出
② 今年度活動方針の検討・審議
第 2 回委員会
・ 平成16年 9月28日(火)13:30~17:00,於:(財)光産業技術振興協会
・ 特別講演:「ルーター/サーバ高度化に向けた実装課題とOEICへの期待」
講師;西村信治 氏(日立製作所 ネットワークシステム研究部)
・ 特別講演:「回折型MEMSを用いたGrating Light Valveプロジェクター」
講師;久保田重夫 氏(ソニー株式会社 業務執行役員常務CTO)
・ 審議:
① 光複合技術の調査範囲,調査項目の抽出と提言に向けて
② 光MEMS技術の調査範囲,調査項目の抽出と提言に向けて
第 3 回委員会
・ 平成16年11月 9日(火)13:30~15:30,於:(財)光産業技術振興協会
・ 特別講演:「DLPTM光学系の特徴について」
講師;小川潤 氏(NECビューテクノロジー(株)開発本部)
・ 審議:
① 報告書目次-光複合技術(案)の検討
② 報告書目次-光MEMS技術(案)の検討
第 4 回委員会
・ 平成16年12月13日(月)10:00~14:00,於:(財)光産業技術振興協会
・ 特別講演:「コンピュータグラフィクスの最近の進展:肌再現とGPUを主に」
講師;津村徳道 氏(千葉大学工学部情報画像工学科 助教授)
・ 審議:
① 報告書作成に係わる目次,執筆者の選定他
第 5 回委員会
・ 平成17年 2月15日(火)13:30~16:30,於:(財)光産業技術振興協会
・ 審議:
② 報告書原稿の内容について検討
③ 報告書の提言について検討・審議
総 目 次
1. まえがき 1. まえがき...1
2. 光電子複合集積化技術 2.1 はじめに ...3
2.2 光電子複合集積化技術の応用...5
2.3 形態別の光電子複合集積化...29
3. 光MEMS技術 3.1 はじめに ...71
3.2 通信関連MEMSデバイス...72
3.3 MEMSミラー関連...96
3.4 バイオMEMSにおける光集積技術...111
3.5 フォトニック結晶...113
3.6 レーザ光源の現状と課題...123
3.7 微小原子時計...130
3.8 光MEMSパッケージング...136
3.9 ファンダリサービスの実情と課題...139
3.10 光MEMS製品化に向けた課題...146
4. 光電子複合集積化技術と MEMSとの融合 4.1 光電子複合集積化技術とMEMSとの融合...155
5. 課題および将来に向けた提言 5.1 チップレベル光電子複合集積化技術の 国家レベル開発への期待 ...161
5.2 光MEMS技術 ...170
6. あとがき 6. あとがき...171
7. 新規事業創造事業 7.1 新規事業創造事業の概念...173
7.2 平成16年度 事業活動の結果...175
7.3 2004(平成16)年度 新規事業創造プロジェクト推進委員会名簿...177
7.4 2004(平成16)年度 新規事業創造事業の委員会構成及び事務局...178
更新日: 2005/04/23 現在
目 次
序文 委員会名簿
1. まえがき...1
2.光電子複合集積化技術...3
2.1 はじめに...3
2.2 光電子複合集積化技術の応用...5
2.2.1 まえがき...5
2.2.2 光通信機器...5
(1) ルータの基本構成 ...5
(2) 次世代ルータへの要求条件...6
(3) 次世代ルータ実現のためのボトルネック...7
(4) 光電子複合集積化技術のルータへの導入...7
(5) まとめ ...9
2.2.3 光コンピューティング ...11
(1) 階層型光電子融合並列処理システム... 11
(2) 応用システム ...13
(3) 光領域処理 ...14
2.2.4 ビジョンチップ...17
(1) はじめに ...17
(2) 広ダイナミックレンジ化 ...17
(3) 3次元距離計測 ...18
(4) ID認証 ...19
(5) 今後の展開:医療・バイオ応用...20
(6) おわりに ...22
2.2.5 LSIテスタ...23
(1) メモリテスト・システムの基本構成...23
(2) LSIメモリの開発動向と,メモリテスト・システムの測定スピードに対する要求条件 ...23
(3) テスタ高スループット化のためのボトルネック...24
(4) 光電子複合集積化技術のメモリテスト・システムへの導入 ...24
(5) まとめ ...26
2.2.6 セキュリティ...27
2.2.7 あとがき...28
2.3 形態別の光電子複合集積化...29
2.3.1 まえがき...29
(1) モノリシック集積(OEIC) ...30
(2) ヘテロジニアス集積 ...30
(3) ハイブリッド集積 ...30
2.3.2 モノリシックOEICの適用分野...31
(1) 適用分野 ...31
(2) Optical Clocking...32
(3) Silicon Photonics...34
2.3.3 ヘテロジニアスOEICの応用分野...37
(1) ELO集積素子 ...37
(2) 直接接合型集積素子 ...44
2.3.4 ハイブリッドOEICの応用分野...51
(1) ハイブリッド集積技術 ...51
(2) Scalable Film Optical Link Module(S-FOLM) ...62
2.3.5 あとがき...69
3.光MEMS技術 ...71
3.1 はじめに...71
3.2 通信関連MEMSデバイス...72
3.2.1 通信用コンポーネントへの応用...72
(1) 光通信用コンポーネントの市場について...72
(2) MEMSを用いた光通信用コンポーネントの開発動向 ...72
(3) MEMSを用いた光通信コンポーネントの抱える問題点 ...75
(4) まとめ ...75
3.2.2 光スイッチ...77
(1) フォトニックネットワークと光スイッチ...77
(2) 光スイッチの概要 ...77
(3) 光スイッチの動向 ...78
(4) 光MEMS技術の応用としての光スイッチ開発の方向と今後の課題 ...84
3.2.3 Lucent Technologies社 光クロスコネクト...86
(1) はじめに ...86
(2) 背景 ...86
(3) 3D-MEMS OXCの位置づけ...88
(4) Lucent社ミラーデバイス ...89
(5) Lucent社OXCの光学系...91
(6) まとめ ...93
3.3 MEMSミラー関連...96
3.3.1 ミラーの設計方法 ...96
(1) はじめに ...96
(2) MEMSミラーデバイスの設計 ...96
(3) まとめ ...102
3.3.2 GLVのプロジェクタ応用...104
(1) はじめに ...104
(2) GLV開発の歩み ...104
(3) デバイス構造 ...104
(4) 高速応答 ...105
(5) プロジェクタ光学系 ...106
(6) アナログ諧調表示 ...107
(7) 広色域再現 ...107
(8) スペックル低減 ...108
(9) まとめ ...110
3.4 バイオMEMSにおける光集積技術...111
3.5 フォトニック結晶...113
3.5.1 はじめに...113
3.5.2 フォトニック結晶とは ...113
3.5.3 フォトニック結晶技術の進展と応用...114
(1) 2次元フォトニック結晶 ...114
(2) 3次元フォトニック結晶 ...117
(3) 2次元フォトニック結晶レーザ ...119
(4) 光バッファメモリ ...120
(5) その他の応用 ...120
3.5.4 まとめ...121
3.6 レーザ光源の現状と課題...123
3.6.1 ディスプレイ用レーザ光源...123
(1) プロジェクター光源に求められる半導体レーザ特性について ...124
(2) まとめ ...126
3.6.2 通信用レーザ光源 ...127
(1) InP基板上に結晶成長する方法 ...127
(2) GaAs基板上に結晶成長する方法...128
(3) GaAs系DBR層とInP系活性層を直接接合する方法 ...128
3.7 微小原子時計...130
3.7.1 概要...130
3.7.2 動作原理...130
3.7.3 作製・組立方法 ...131
(1) ガスセル ...131
(2) ガスセルヒータ ...131
(3) 光学組立部品 ...132
(4) 全体の組立構造 ...132
(5) ウエハーレベルでの加工・組立...133
3.7.4 性能...134
(1) 物理的特性 ...134
(2) 周波数安定度 ...134
3.7.5 応用分野...134
(1) 通信ネットワークの同期 ...134
(2) GPS受信機の耐電波妨害 ...135
3.8 光MEMSパッケージング...136
3.9 ファンダリサービスの実情と課題...139
3.9.1 はじめに...139
3.9.2 MEMS技術における接合技術の重要性...139
3.9.3 接合技術のMEMSへの応用例 ...140
(1) Fusion Bonding...140
(2) 陽極接合 ...143
(3) その他の接合 ...143
3.9.4 MEMSにおける接合技術の今後の発展性...144
3.10 光MEMS製品化に向けた課題...146
3.10.1 マイクロミラー応用デバイス ...146
(1) デジタル駆動マイクロミラー...146
(2) 表面マイクロマシニング技術で作製したアナログ駆動マイクロミラー ...147
3.10.2 マイクロ分光装置...148
(1) マイクロFTS (Fourier Transform Spectrometer )デバイス ...148
(2) エタロン応用 ...149
3.10.3 アクチュエータ...150
3.10.4 LIGAの光学分野への適用...150
3.10.5 技術以外で製品化されていない例...151
3.10.6 パッケージング...152
3.10.7 まとめ...153
4.光電子複合集積化技術とMEMSとの融合...155
4.1 光電子複合集積化技術とMEMSとの融合...155
4.1.1 はじめに...155
4.1.2 光―電子―MEMSハイブリッド集積の研究例...155
(1) Smart Dust:光MEMSによる低電力通信 ...155
(2) Micro-robot: MEMSチップ上の光電子ハイブリッド集積と光による給電...156
4.1.3 MEMS-光-電子複合集積化が期待される例...156
(1) バーコードリーダ ...156
(2) 光入力により動作するMEMSカンチレバー ...157
(3) マイクロ光計測器 ...158
4.1.4 MEMS-光-電子複合モノリシック集積が期待される例 ...158
4.1.5 むすび...159
5.課題および将来に向けた提言...161
5.1 チップレベル光電子複合集積化技術の国家レベル開発への期待...161
5.1.1 メモリボトルネック緩和へ向けての提言...161
5.1.2 物理-デバイス-システム-アプリケーションのインタラクション...163
5.1.3 民生適用に向けた超並列・光結合低コスト化技術の提言...164
5.1.4 LSI内/間光インタコネクトに向けたナノ光集積3次元システム開発の提言...165
5.1.5 シリコンテクノロジーとコンシューマテクノロジーとの融合...167
5.1.6 光電子複合技術への一技術者の思い...168
5.1.7 冷却及び省電力化技術開発の提言...169
5.2 光MEMS技術...170
6.あとがき ...171
7.新規事業創造事業...173
7.1 新規事業創造事業の概念...173
(1) 技術指導事業 ...173
(2) フィージビリティ調査事業 ...174
(3) 委託開発事業 ...174
7.2 平成16年度 事業活動の結果...175
(1) 光スモールビジネス委員会 ...175
(2) 技術アドバイザ制度 ...175
(3) フェムト秒超加工技術フィージビリティ調査委員会 ...175
(4) 光集積技術フィージビリティ調査委員会...175
(5) 開発プロジェクト審査・評価委員会...175 7.3 2004(平成16)年度新規事業創造プロジェクト推進委員会名簿...177 7.4 2004(平成16)年度 新規事業創造事業の委員会構成及び事務局...178
1.まえがき
1. まえがき
日本国内の状況を見ると,インターネットをはじめとするデータ通信の伸びによって,通信トラフィック
は毎年200%にものぼる増加傾向を示している。ITバブル崩壊後の光産業の回復傾向がなかなか見えてこな
いが,このようなトラフィック増加傾向は衰える様子はなく,通信ネットワークのいっそうの大容量化に対 する強い要求がいずれ発生するものと考えられる。
通信ネットワークの大容量化は,ネットワークを構成する機器の高性能化によって支えられる。基幹系の 伝送手段として確固たる地位を築いている光ファイバ通信においては,ネットワークを構成する光伝送装置 の高性能化のためには,光部品単体の高性能化はもちろんのこと,複数の機能部品を集積化することも重要 である。いくつかの光部品の集積化や光部品と電子部品の集積化によって,小型化,低消費電力化,高速動 作の実現など,様々なメリットがもたらされ,これらが伝送装置全体の高性能化につながる。また,MEMS 技術に代表される可変制御可能な小型光部品の開発とその大規模集積化は,新しい応用分野の開拓に有効な 手段であり,今後の発展が大いに期待される。
光集積技術フィージビリティ調査委員会は,平成15年度に発足し,委員会活動を開始した。2年間の委員 会活動でオプトエレクトロニクス分野の集積技術の動向を調査し,将来の技術開拓につながる提言をまとめ ることが本委員会活動の目的である。平成16年度は,光電子複合集積化技術と光MEMS技術に焦点をあて,
技術動向を調査した。本報告書は,本年度の調査結果をまとめたものである。
第2章「光電子複合集積化技術」では,光デバイスと電子デバイスのチップレベル光電子複合集積化技術 の開発状況を調査した結果をまとめている。2.2 節において,まずチップレベル光電子複合集積化がどのよ うな応用分野で有効であるか,最も期待されている光通信情報処理装置のルータやサーバへのチップレベル 光集積デバイスがどのように寄与できるか述べている。さらに,この技術の応用の一つとしてビジョンチッ プやスマートピクセルを用いた人口視覚への適用,高速処理が求められるロボットやアミューズメント,セ キュリティ分野への応用可能性などを調査した結果を報告している。2.3 節ではモノリシック集積,ヘテロ ジニアス集積,ハイブリッド型集積についてそれぞれの技術開発動向と期待される応用分野について調査・
検討した結果を述べている。
第3章「光MEMS技術」では,MEMS技術の応用,MEMSデバイスの製品化への課題であるパッケー ジングの現状,ファウンドリーの実状について調査した結果を述べている。応用については,通信分野で利 用されるMEMSデバイス(3.2節),MEMSミラーの応用(3.3節),バイオへのMEMS応用(3.4節),フォト ニック結晶(3.5節),ディスプレイおよび通信用のレーザ光源への応用(3.6節),微小原子時計へのMEMS技 術の応用(3.7節)について調査した結果をまとめている。さらに,3.8節では光MEMS のパッケージングに ついて実状とMEMSデバイスの製品化に向けて解決すべき課題を述べ,3.9節でファウンドリーの実状を報 告している。
第4章「光電子複合集積化技術とMEMSとの融合」では,二つの集積化技術の融合によって新しい応用 が生まれるという観点から,MEMS-光-電子複合集積化で可能となった応用例,将来の集積化が期待され る研究例が述べられている。
第5章「課題および将来に向けた提言」では,2年間の調査結果をふまえ,光電子複合集積化技術とMEMS
技術の今後の技術展開と応用について現状の課題をまとめ,将来のこの分野の発展のために提言を述べている。
第6章「あとがき」では,諸言として報告書のまとめを述べている。
平成17年度3月
光集積フィージビリティ調査委員会 委員長 水本哲弥
2.光電子複合集積化技術
2.1 はじめに
LAST1m の領域即ち筐体内伝送にも光伝送が実用化されるだろうと言われながらなかなか実現にいたっ
ていない。その原因が,光実装が故の精密実装が要求され,所謂,光でつなぐコストが導入を阻む大きな要 因となっている。このコストを劇的に改善する技術として,一気に光および電気デバイスをチップレベルで 集積する,所謂OEICの開発が注目されている。一方,シリコンの微細化技術によってエレクトロニクスが 発展してきたが,微細化してもLSIの機能としては向上しない領域にはいってきている。それは,90nm,
45nmと微細化することにより,ゲート遅延の改善はもたらせるが,ゲート間をつなぐ配線遅延が大幅に増 加することにより,トータル的には微細化することが返ってトータル性能を落すということになってきてい る。従って,デバイスレベルでも機能向上のためには,並列処理化することが求められ,この並列処理伝送 に光の高速性と無誘導性に期待が集まっており,国内外を問わず多くの機関で研究開発が進められている。
このような背景を基に本調査委員会では,これらのチップレベル光電子複合集積化技術の開発状況を調査 し,このような技術がどのような応用分野で有効であり,商用化が期待されているか,また商用化するため にはどのような技術開発,ブレーククスルー技術が必要であるかを提言する目的で調査検討を進めてきた。
昨年度は主にチップレベル光電子複合集積の要素技術調査を主体に調査をした。今年度は応用面からもスポ ットを当て,どのような分野にこの有効性が活かせるかについて調査し,所謂シーズとニーズの縦横の視点 から見て,今後の研究開発の方向性の提言に寄与できればと思い,本報告書にまとめた。
本報告書では最初に,チップレベル光電子複合集積化技術についてその応用面からの調査検討について述 べる。即ち,最も期待されている光通信情報処理装置のルータやサーバに光実装が採り入れられるための要 求条件に対して,チップレベル光集積デバイスがどのように寄与できるかについて述べる。次いで,光コン ピューテングについてその現状と技術課題をのべ,またRWCなどで手がけたことのあるビジョンチップや スマートピクセルを用いた人口視覚などへの適用,さらに比較的高速な処理が求められるロボットやアミュ ーズメント及びセキュリティなどの分野への応用可能性について言及する。さらに,光実装を取り入れ,ケ ーブル断面積を1/30,消費電力を1/6という効果を発揮したLSIテスタについても調査の枠を拡げ,将来さ らに光集積化する効果について推測した。
次に,チップレベルでの光電子複合集積化技術の最新動向及びその応用可能性についての調査結果を述べる。
光実装技術の応用展開は緩やかではあるが着実に進んでおり,このための研究開発もコスト低減,信頼性向上に 向け進められている。前述したようにLSIは微細化による能力向上の限界が見えてきている。RC積による配線 遅延が増大するからである。Low K材料等の開発が進められているが,現状では180nm程度が最適値である との試算報告もある。このため,チップ内をマルチプロセッサー構成にして,そのクロック分配に光導波路が有 効であるとの報告もある。このようにチップレベルの光化についての報告が注目されている。
光伝送の実用的な適用領域が高速領域へとシフトしているため,光デバイスの高速動作およびこれを実現 するための実装技術の開発も注目されている。未だ信号の高速変調には電子回路の力を借りなければならな い。この電気光変換部も高速にするためには,駆動電子回路から光素子への高速信号伝達に適した配線接続 部の工夫も必須である。高速化には何といっても有効なのが,光デバイスと電子デバイスの近接実装である。
理想的には,モノリシックなOEICであるが,Siデバイスに化合物半導体デバイスを積層し一体化したヘテ ロジニアスOEIC ,さらにチップサイズの基板にSi-LSIと光デバイスを集積実装したハイブリッドOEIC がこの高速実装に有効である。現状では,ASETで開発したAIPや日本電気社のPETITモジュールのよう
なハイブリッド OEIC が実用的ではあるが,DARPA‐TERABUS プロジェクトでは CMOS-LSI に直接
PD,LDチップをフリップチップ実装したヘテロジニアスOEICで20Gbpsの変調を実現するなど,徐々に
よりコンパクトにして高速化する実装形態へと移行しつつある。これらの実装形態を商用化するためには,
その組立て,接続,冷却,信頼性など実装技術の開発が必須となるが,これらの問題を克服し,安定な製品 が供給できるようになれば,光電気デバイスの大幅なコストダウン,省電力化も期待される。そして,超小 型の情報処理装置の実現や,現状では不向きといわれている携帯機器やパソコンへの光伝送導入も夢ではな くなる。形態別のチップレベル光集積技術の章では,前年度報告と同様に,モノリシックOEIC,ヘテロジ
ニアスOEIC,ハイブリッドOEICに分類して,これらの技術開発動向と期待される応用分野について検討
した結果を述べる。
(茨木 修)
2.2 光電子複合集積化技術の応用
2.2.1 まえがき
化合物半導体とシリコン・テクノロジーを基盤とする,光電子複合集積化技術の応用は,通信から情報処理分野 まで多岐に亘るが,その大半は光インタコネクション技術との,関わりの範疇で議論出来るものと言えよう。実装 階層でいうと,VSR(Very Short Reach)といわれる筺体間(Box-to-Box),さらに筺体内部のボード間 (Board-to-Board),ボード内のチップ間(Chip-to-Chip),究極にはチップ内(On chip)の光伝送技術である。
これらの内,VSR領域では,コンピュータ間の光伝送が,既に実用化されている。しかしながら,実装階 層がより内部に及ぶほど,光電子複合集積化技術の応用ニーズが見えてこなくなっているのが現状である。
距離が短くなればなるほど,近年の高速電気伝送技術と,光伝送技術の競合が厳しくなり,両者の棲み分け がどの辺にあるのかが,不明確になってくるからである。光電子複合集積化技術の応用ニーズを考える場合,
伝送スループットに代表される性能面と,製造原価は無論のこと,装置サイズや消費電力,保守,環境への 影響といった,ランニング・コスト面からの電気との比較検討が,常に厳しく問われる所以である。
本節では,光電子複合集積化技術の応用を,上述のような実装階層別ではなく,むしろ応用分野から記述 した。すなわち,通信領域の代表として,ルータ,情報処理への応用としては,光コンピューティングや,
ビジョンチップ技術を取り上げた。特に,これらの情報処理技術は,ロボット・アミューズメントへの応用 など,産業から情報家電までの,広範な領域に関わるものである。計測分野では,LSIテスタや,近年とみ に関心の高いセキュリティ分野への適用例についても触れた。これらの中には,メモリテスト・システムの ように,かなり応用ニーズも明確で,実用化に比較的近いと思われるものも存在する。しかし,大部分は,
実現のために光電子複合集積化技術を,前述のボード間,チップ間光伝送の領域にまで,浸透させていくも のであり,本集積技術の応用への適用可能性を探る,研究的段階にあるものといえる。以下,2.2.2 節より
2.2.7節まで将来の動向も含め,これらの研究開発現況について記す。
(三川 孝)
2.2.2 光通信機器
本節では通信分野での代表例として,インタネット網に使用される,通信用ルータを取り上げ,光電子複 合集積化技術の応用について記す。
(1) ルータの基本構成
ルータの1ユニットの基本構成を図2.2.2.1に示す1)。複数枚のラインカード,バックプレーンおよび,
スイッチカードが,その主な構成要素である。各ラインカードでは,外部のネットワークと,バックプレー ンの間での信号の入出力を,スイッチカードでは,各ラインカードからの信号の集約,分配をおこなう。こ れらのラインカードと,スイッチカードの組み合わせにより,ネットワーク上での信号の伝送経路の切り替 えが可能になる。
各ラインカード上には,外部のネットワークや,バックプレーンとの信号の受け渡しをおこなう入出力
(I/O)部および,信号処理用の CPU,バックプレーンには送受・信号配線,スイッチカードには,I/O 部 および,N x Nの信号切り替え用の,マトリックス・スイッチLSI,さらにCPU等が搭載されている。ま
た,各カードボードと,バックプレーン間は,多チャンネル・コネクタにより接続されている。
図の構成からわかるように,スイッチカードでは,全てのラインカードからの信号の入出力を司るため,
信号の総スループットに応じた多数の信号線が,高密度に輻輳することになる。
図2.2.2.1 ルータの基本構成1)
(2) 次世代ルータへの要求条件
図 2.2.2.2 はルータにおける伝送容量,すなわち処理すべき信号の総スループットの伸びを,年代に対し
て予測,プロットしたものである1)。情報量の飛躍的な増大にともなう,ラインカードI/Oの増加に応じ,
SW容量は約2倍/年で伸張することが予測されている。この推移からすると2007-2008年頃には,1Tbps 以上の大きなSW容量が求められることになる。
図2.2.2.3にSW容量も含め,2007年ごろに必要とされるルータの,主要な目標諸元をまとめて示す1)。
本表で注目すべき点は,2007年においてSW容量,すなわち情報処理量が増大しても,1つのI/Oのパッケ ージの大きさは,10mm2□,トータルのI/O消費電力は12 Wと,2004年の現状値と殆ど変わらない値が 要求される点である。現状と同程度のサイズや,消費電力で,一桁近く大きな情報が扱えることが求められ ている。パッケージ単位面積あたり,あるいはGbpsあたりに換算すると,信号密度やI/O消費電力への要 求値は,かなり厳しいものとなることがわかる。また,2007年での伝送距離が15m以上と,飛躍的に大き くなっているのは,ルータシステムの拡張性を目指したものである。ユーザサイドからみてシステム導入時 には,例えば単一の架のみのルータであっても,将来,複数架のシステムを,同一の管理体制下で構築でき る余地を見込むものである。この際,架間の総配線長は,15m以上が望まれる。
図2.2.2.3 ルータの目標諸元@2007年1)
図2.2.2.2 信号容量の予測推移1)
(3) 次世代ルータ実現のためのボトルネック
次世代ルータでは,大容量化に伴う信号の輻輳に起因する,種種の問題を回避して,如何にコスト・パフ ォーマンスの良い装置を実現するかが,大きな技術的課題である。この課題を克服して上述の次世代ルータ の諸元目標値を達成するための,大きなボトルネックとして,先ずI/Oボトルネックが挙げられる。
図2.2.2.4にSW容量に対する,SW-LSI信号I/O数の算定結果を示す1)。SW容量が1Tbpsを超えた点 で,例えば10Gbps/chの電気差動配線の場合,SW-LSI信号I/O数は250本程度となる。このとき,差動ペ ア配線,給電線,CPUなどのコントロール用配線の総数は1600ピン程度に及び,SW-LSIの1チップ化は もはや困難と考えられる。まして現状規格化されている,XAUIなどの電気3.125Gbps/ch差動配線などで は,LSIピン数は膨大なものとなる。SW-LSIの1チップ化が不可能となり,複数個のLSIがもし必要とな ると,ボード上でのLSIパッケージの占有面積の増大や,LSIのトータルの消費電力増加を招き,これらの 問題もTbps化のためのボトルネックとなってくる。
図2.2.2.5にSW容量に対する,バックプレーンのコネクタ幅の算定結果を示す1)。電気I/Oのピッチを 1mmと仮定すると,1 Tbps以上では10Gbps/chの高速の電気差動配線を用いたときでも,配線本数の増加 により,コネクタ幅が500mmより大きくなり,標準的な19 インチラック構成には対応できなくなる1)。 以上述べたように, Tbpsクラスのルータでは, SW-LSIやバックプレーン・コネクタのI/Oボトルネック および,パッケージサイズ,消費電力等が深刻な問題となる。
(4) 光電子複合集積化技術のルータへの導入 (a) 光導入ルータの構成:メリットと課題
(3)項に述べたI/Oボトルネックを解決するためには,1チャンネル,または配線1本あたりの伝送速度を
上げることが,有効な手段と考えられる。そのためには,高速性に優れる光技術の導入が,1 つの有力な鍵 となる。図2.2.2.6に,光I/Oや光配線を用いた>1 Tbpsルータの構成を示す1)。チャンネルあたりの伝送 速度を,10-40 Gbpsと高速化することにより,Tbpsクラスの大容量を確保しつつ,I/O数ひいてはLSIの ピン数やボードの配線本数を,大幅に減らすことが可能となる。LSIも1チップ化が可能になり,複数個の 場合に比べて,LSIパッケージの占有面積が低減される。また,光配線では,隣接する導波路間隔が100-250 μmと狭ピッチであり,且つ上記のように配線数も低減される。従って,図 2.2.2.5の白丸に示すようにコ ネクタ幅も小さくなり,>1 Tbpsにおいても十分,19インチラック内への収容条件が満たされることがわ かる1)。
図2.2.2.4 SW-LSI信号I/O数のSW容量 依存性1)
図2.2.2.5 バックプレーン・コネクタ
幅のSW容量依存性1)
消費電力の観点では,光化の場合,光I/O送受信部のドライバや,レシーバ ICの消費電力増加分が問題 となる。一方,光の替わりに10 Gbps/chの高速電気信号を適用することも考えられるが,電気信号の場合 は,誘電損や表皮効果による信号波形の劣化を補正するための,プリエンファシスやイコライズ機能等が必 要であり,これらの付加回路により消費電力が増加する。装置のランニングコストや環境問題の視点からも,
低消費電力化は極めて重要である。光化によりI/Oボトルネックが解消できたとしても,電気に比べて消費 電力が増加したのでは意味がない。光導入にあたっては,光I/O送受信部の消費電力増加分を,上記の電気 付加回路の消費電力分と,同等以下に抑えるためのドライバ,レシーバICの開発が必須である2)。併せて,
CMOSテクノロジによる10-40 Gbps高速SW-LSIの,開発・実用化も同時に必要である。さらにはSW-LSI にとってかわるべき,低消費電力な光スイッチの導入を視野に入れた電気,光双方からの取り組みが必要で あろう。
(2)項,図2.2.2.3のルータシステム拡張のための,伝送距離の伸張>15mについては,光の優位性は云う
までもない。
図2.2.2.6 光I/Oや光配線を用いた>1Tbpsルータの構成例1)
(b) 光導入ルータの要素技術事例
光導入ルータの要素部品としては,光関連ではI/O部の光送受信モジュール,光コネクタ,光配線ボード,
光スイッチ等が挙げられる。ここではこれらの中で,I/Oモジュールと光スイッチについて言及する。
I/Oモジュールは,限られたI/O実装面積から最大限のスループットを得ること,すなわち,Gbps/サイズ の最大化がポイントである。この観点から面発光レーザ(VCSEL)や,フォトダイオード等の光素子と,ドラ イバ,レシーバIC,LSI等を平置きの2次元配置ではあるが,1つのLSIパッケージ内に,できるだけ高密 度に実装した形態や3-4),これらの諸素子を3次元スタック実装した形態のモジュールが開発されている。
図 2.2.2.7 は DARPA プロジェクトにおいて,アジレント社が主導で開発した MAUI(Multiwavelength Assemblies for Ubiquitous Interconnects)プログラムにおけるモジュールである5)。ドライバやレシーバIC 上に,4波長(4λ)x12チャンネルの4波のCWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)用光素子,
合分波器等をスタックしたコンパクトな構成となっている。フットプリント8x5mm2 の1個の小型モジュ ールにおいて,1Tbps に手の届く 900Gbps/cm2の高密度スループットと,360 Gbps/W すなわち,<10
mW/Gbps の低消費電力化が達成されている。光モジュール低価格化のボトルネックである,組み立てコス
トも視野に入れて,図 2.2.2.8 に示すような本モジュールの組み立て自動機を,開発していることも注目す べき点である6)。
低消費電力な光スイッチのルータへの応用としては,米Chiaro社の事例がある1)。GaAsの光偏向素子を 介して,送受光ファイバ・アレイ間の64x64のスイッチングをおこなうもので,25ns の実用レベルの高速 スイッチング速度が得られている。図2.2.2.9および,図2.2.2.10に,同社の光スイッチの構成模式図およ び,ルータへ適用するために,光スイッチをモジュール化した例を示す7)。
(5) まとめ
図2.2.2.11は光配線を用いたルータ諸元の各目標値を,電気配線の現状値と比較して,まとめたものであ
る1)。今までコストについては触れなかったが,光を用いた場合のコスト目標は,現状の電気に比べ半分,
大きくても同程度であることが望まれる。この程度まで厳しくコストを抑えないと,光導入の出番はないと もいわれている。光部品の組み立てコストが大きなボトルネックであり,(4)(b)項に紹介したような,組み立 て用実装機も開発していく必要があろう。また,光導入にあったっては,ラインカードとスイッチカード相 互間での,光信号の分配,集約方式や,光スイッチ使用等により,電気のルータとは異なる,新たなアーキ テクチャの構築が不可欠である。光電子複合集積化技術を適用したルータは,次世代ルータの1つの有力な
図2.2.2.9 光スイッチの構成模式図7) 図2.2.2.10 ルータ用光スイッチ・モジュール7)
図2.2.2.7 MAUIプロジェクトにおける 光送受信モジュールの構成5)
図2.2.2.8 MAUIプロジェクトにおける モジュールの組み立て自動機6)
形態ではあるが,実現のためにはハードとソフト両者からの,なお一層の開発が必要である。
(三川 孝)
図2.2.2.11 光配線を用いたルータ諸元の目標値1)
参考文献
(1) 西村, “ルータ/サーバ高度化に向けた実装課題とOEICへの期待,” 光集積技術フィージビリティ調査委 員会 講演資料, 2004年9月28日
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(3) K.Kurata,I.Hatakeyama,K.Miyoshi,T.Shimizu,J.Sasaki,M.Kurihara,K.Yamamoto,”Opto-Electronic s Packaging Techniques for Interconnection”, Proc. of 16th LEOS, TuW1,Tucson, Arizona, USA,pp.364-365,2003.
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(6) G.Panotopoulos, ” MAUI High-Density Low-Power Optical Interconnects,” 15th Annual Workshop on Interconnections Within High Speed Digital Systems,MA1, Santa Fe New Mexico, USA, 2004.
(7) http://www.chiaro.com.
2.2.3 光コンピューティング
VLSI 回路技術と光集積デバイス技術を融合した光電子融合型システムの例として,スマートピクセルと
光インターコネクションの融合による階層型光電子並列処理システムを紹介し,その後,ロボットシステム やアミューズメントなどの最近の応用システム展開報告例を示す。最後に,光コンピューティングの本来の 含意である光領域での処理に関する最近の研究事例を簡単に紹介する。
(1) 階層型光電子融合並列処理システム
超高速の画像処理を可能とするビジョンチップでは,原則として 1 チップで並列画像処理機能を実行し,
その結果を上位システムへ受け渡す構造が想定されるが,パターン情報のままで次段の並列処理チップに並 列配線する方法も考えられる1)。ここにおいて,並列配線を従来の金属配線で実現するのではなく,光を情 報の媒体とし,その高密度・高速性を利活用することを意図して,光インターコネクションの導入が検討さ れた1-3)。また,そのための光電子回路モジュールとして処理回路と光入出力デバイスを組み合わせたデバイ スはスマートピクセルと呼ばれる。
このような考え方は並列処理アーキテクチャとして,階層型の構造,すなわち2次元並列処理チップをパ イプライン状に並べたものと考えることができ,1 チップに格納が不可能な大規模な処理のスループットを 高めるために不可欠の技術である。このような階層型光電子並列処理システムの概念図を図2.2.3.1に示す。
2 次元状の並列入力情報に対し多段の処理が施され,原則的には各段の集積度の限界による処理の制限をな くすことが可能となる。
このようなシステムの実現のための基本的な技術が光電子集積化技術ならびに光インターコネクション技 術になる。図 2.2.3.1 に示すような自由空間伝搬型のチップ間光インターコネクションでは,高速性と同時 に配線密度の向上が利点のひとつとなる。また,インターコネクションパターンは,固定のパターンよりは 再構成可能なものを利用した方がシステム全体の汎用性が高まる。
2D Optical
Input
Output Optical
Interconnection
Photo Detector Array Processing Element Array VCSEL Array
図2.2.3.1 階層型光電子ハイブリッドシステム
一方,図2.2.3.1を実現するモジュールとして,図2.2.3.2に示すような汎用のスマートピクセルを実現す る必要がある。高い空間密度を実現するためには,回路構成にも工夫が必要であり,十分な機能性を実現可 能としながら,回路面積の低減を可能とする回路アーキテクチャが重要になる。こうした設計思想を踏まえ たアーキテクチャとしてKomuroらによりS3PEアーキテクチャが示されている4)。また,フリップチップ ボンディング等の電子回路と光回路の高密度一体化技術5-7)や,並列性に対応するための一様性や省電性確保
8)などがデバイス構成上の重要な論点となる。
PE PD
Optical output channels Optical input
channels
図2.2.3.2 汎用スマートピクセル
こうした階層型並列処理システムの実例として,面発光レーザアレイと液晶光空間変調素子を用いた再構 成可能な光インターコネクションを導入したOCULAR-II (Optoelectronic Computer Using Laser Arrays with Reconfiguration-II)システムを図2.2.3.3に示す9)。このシステムは図2.2.3.3(a)に示すように光入出 力を有するプロセッサモジュールと光インターコネクションモジュールをモジューラーなビルティングブロ ックとして構成しており,図2.2.3.3(b)のような2 層構造システムが実験的に示されている。さらにこのシ ステムでは,再構成可能なインターコネクションを実現するため,層間のインターコネクションを計算機ホ ログラム(CGH)により構成し,これを書き換え可能とするため位相変調型の空間光変調器(浜松ホトニク ス(株),PAL-SLM)が採用されている10-11)。
Prism
Laser Diode Module
LCD FOP PAL-SLM Optical
Interconnection Module
VCSEL PD PE
Processor Module
(1st layer) (2nd layer) (3rd layer)
Processor Module (2) Processor Module (1) Optical Interconnection
Module
(a) (b)
図2.2.3.3 光インターコネクションを用いた階層型並列処理システム OCULAR-II
上記の OCULAR-II システムではモジュールを 3 次元方向に積層する構造を有しているが,回折光学素 子等を用いることで平面型の構成とすることもできる。Kawaiらは石英基板上に構成したマルチレベルの回 折光学素子をスマートピクセル上に搭載することで,図 2.2.3.4 に示すような平面構造のパイプラインシス テムを示した12)。
図2.2.3.4 回折光学素子による階層的並列処理システムの平面型構成12)
(2) 応用システム
階層型光電子融合並列処理システムでは,これに適したアプリケーションやアルゴリズムの構成も重要で ある。前記のOCULAR-IIシステムやその前世代システムであるSPE-IIシステムでは,行列ベクトル演算 の並列実行などいくつかのアルゴリズムが実現されているほか,画像データベースの構成・検索アルゴリズ ム13),画像符号化アルゴリズム14)などが示されている。またプロセッサモジュールやインターコネクション モジュールへの負荷分散など並列アルゴリズムの構成方式が論じられている15)。
また,超高速画像処理システムとして東京大学石川研究室等で様々な展開が示されている。特に,従来の ビデオ信号の速度では不十分な画像処理応用に対しての効果が非常に高く注目を集めている。たとえば,① 製品検査・故障解析などにおいて,高速の対象物のパターンをリアルタイムで解析しようとする用途,②工 作機械やロボットの視覚フィードバックなどにおいて,特徴パターンの位置制御を高速に行おうとする用途 などがある。前者の場合,ビデオ信号を用いた従来装置に比べて100倍から1000倍の処理が可能となり,
従来対象物を静止させる必要があった検査行程で,ラインを止めることなく処理するなども可能とされてい る。また,後者の例では,現在のモータの制御装置のフィードバックのサイクルタイムが1msから100μs 程度であることに鑑み,それに合ったフィードバック信号が視覚情報を元に高速に生成されることになる。
すなわち視覚情報の直接フィードバックが可能となる。こうした超高速性に注目し,松下電器らはアミュー ズメントへの展開としてエアホッケーロボットを示した(図 2.2.3.5(a)16)。また,超高速アクチュエータシス テムと融合したバッティングロボット(図2.2.3.5(b))17),マイクロシステムへの展開18)などが示されている。
また,NICTらはフェムト秒のスイッチング速度を有する面型超高速光制御光スイッチと融合し,超短パル スのタイミング揺らぎ(ジッター・スキュー)計測システムを示した(図2.2.3.5(c))19)。
(a) (b) (c)
1 ms 33 ms
Time
Timing difference Timing difference Space Space
図2.2.3.5 (a)アミューズメントへの展開例:エアホッケーロボット16)
(b)超高速アクチュエータシステムのリアルタイム制御:バッティングロボット17)
(c) 超短パルスのジッター・スキュー計測システム19)
(3) 光領域処理
以上に示されているシステム例では,電子回路によって処理機能の大半を実現していることにひとつの大 きな特徴がある。すなわち,波動光学等の古典的な光学の原理における並列性を直接的に計算に対応づける ことを目指した古典的な光コンピューティングの合理性が成立し得ないことを受けて,VLSI 技術に立脚し た電子技術による計算能力を活かしながら,インターコネクションにおいて光の意義を最大限に活用するこ とが意図されている。こうしたインターコネクションの光化では,完成度の高いインターコネクションモジ ュールが最近では様々に示されているほか,電気配線に対する原理的・技術的比較論やコスト評価,ビジネ スモデルなどに関して,広く興味深い議論が展開されている20)。そのため,本節ではこうした議論の詳細に は言及せず,議論を光に関する根本的な方向に若干戻し,光コンピューティングの本来の含意である「光領 域での処理」の観点から,最近の研究報告例を簡単に紹介する。
まず,ネットワークトラフィックの急激な増大に対応するための光ネットワーク技術において,ある種の 究極的な目標のひとつとして,パケットスイッチング機能を全光学的に実現する技術開発が世界的に展開さ れているのは近年の特徴のひとつと言える。論理演算などの処理機能をも光領域で実現することを目指す研 究は萌芽的状況にあると言えるが,たとえば光通信技術の最先端の国際会議であるEuropean Conference on Optical Communication (ECOC)やOptical Fiber Communications Conference(OFC)では,Optical Packet
Switching に関するセッションが存在し,光符号分割多重技術21)をベースとして用いる技術など,関連の技
術の積み上げは着実に進んでいると見ることができる。他方,半導体のサブバンド間遷移,電磁誘起透明化 (Electromagnetically induced transparency (EIT)),近接場光を用いるナノフォトニクス技術など,光と物 質の相互作用をより一層高度に活用する技術に関して原理的な検討が進み,一部は上記のECOCやOFCに おいても議論され始める状況になっている。このように,光領域での機能性実現に関する試みは,ネットワ ークトラフィックの急増などの応用の要求や新しい実現技術の萌芽を受けて新しい局面に入りつつあるとも 言え,今後の展開が注目される。
(成瀬 誠)
参考文献
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(14) A.Cassinelli, M. Naruse, M. Ishikawa, “Quad-tree image compression using reconfigurable free-space optical interconnections and pipelined parallel processors,” Proc. of the Optics in Computing conference 2002, 23-25.
(15) 成瀬 誠, 石川 正俊, “光インターコネクションを用いたシステムのための並列アルゴリズムの構築,”
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(17) T. Senoo, A. Namiki, and M. Ishikawa, “High-Speed Batting Using a Multi-Jointed Manipulator,”
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(18) 奥 寛雅,石井 抱,石川 正俊, “マイクロビジュアルフィードバックシステム,” 電子情報通信学会誌
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(19) M. Naruse, F. Kubota, H. Mitsu, I. Iwasa, S. Tatsuura, Y. Sato, M. Tian, and M. Furuki,
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(20) 例えば,エレクトロニクス実装学会, 実装技術ロードマップ(03 年度版) -光インターコネクションの 実現への展望-
(21) H. Sotobayashi, W. Chujo and K. Kitayama, “Optical Code Division Multiplexing (OCDM) and Its Application for Peta-bit/s Photonic Network,” Information Sciences Special Issue of Photonics, Networking & Computing, 149, 171-182 (2003).
2.2.4 ビジョンチップ (1) はじめに
ビジョンチップとは,CMOSイメージセンサの例えば画素内に信号処理回路を集積化することで,並列化 による処理の高速化や機能付加による柔軟な処理を目指したデバイスである。ビジョンチップの概念は C.
Meadにより提案されたものであり,生体の有する視覚情報処理機能をSi-VLSI技術を用いて模倣するSi網 膜を発表した1)。Si網膜は主としてアナログ演算をベースとし,近傍結合がその特徴であった。近年はビジ ョンチップという言葉自体は,生体視覚情報処理系にとらわれずに広くチップ内に処理回路を集積化し高機 能化を図ったイメージセンサを指すことが多い。そのため高機能イメージセンサやスマートセンサなどとも 呼ばれている2)。
このC. Meadらにより始まったビジョンチップは,現在CMOSイメージセンサ技術の発展を取り入れ,実
用的な光感度やばらつき補正等を導入した,実フィールドで応用可能な研究開発のフェイズに入っている。
従来のビジョンチップでは画素内に処理回路を入れ画素並列による高速化・柔軟化を図っている報告例が多 かったが,画質を重視するアプリケーションでは,画素内には精々数トランジスタ程度の増加に留め,列並 列で処理を行う方式が主流となりつつある。列並列処理は画質と機能・速度を両立させる一つの解決方法と いえる(図2.2.4.1)。
イメージセンサ ディスプレイ
ノイズ処理 増幅・ADC等
ビジョンチップ
(列並列処理型)
ビジョンチップ
(画素並列型)
出力結果
(例:ID認識)
PD Signal proc.
画素構造
列並列処理
出力結果
(例:ターゲット トラッキング)
2003年XX社製 http://www...
2003年XX社製 http://www...
被写体
図2.2.4.1 ビジョンチップの方式
ビジョンチップは機能を集積化しているという点から,明確にアプリケーションを想定している場合が多 い。そのため本節ではこのビジョンチップの最近の動向と今後の展開について主としてアプリケーション別 に概説をする。最近のアプリケーションターゲットとして,車載,セキュリティ,ID認証,医療バイオ応用 などがある。本節では,まず最近の動向として,車載応用としての広ダイナミックレンジ化や3次元距離計 測を取り上げる。また最近注目されている ID 認証への応用について述べる。最後に今後の展開として,医 療バイオ分野への応用について述べる。
(2) 広ダイナミックレンジ化
車載応用ではITS(Intelligent Transportation System)の進展に伴い様々な状況でのイメージングが要求され,
1 台の車に複数のイメージセンサが搭載されるようになってきた。その中で特に強く要求される仕様として 広ダイナミックレンジ化がある。通常のイメージセンサは60-70dB程度のダイナミックレジンしかないが,
車載の場合100dB以上が要求される。ビジョンチップではオンチップに回路を集積化しているため信号処理
等による広ダイナミックレンジ化への取り組みが比較的容易である。但し,車載では低照度側での感度つま り高感度化も夜間走行などを考えると極めて重要であるため,実用化は困難といわれている。
広ダイナミックレンジ化の手法は図2.2.4.2に示すように大きく2種類に大別される。一つは受光特性に飽 和特性(非線形特性)を持たせるもの,もう一つは複数回露光を行うものである。前者では例えば対数的な 応答特性を示す受光回路を導入してダイナミックレンジを100dB以上確保している報告例がある3)。これは トランジスタがサブスレッショルド領域ではゲート電圧がドレイン電流に対して対数的に応答することを利 用している。フォトダイオードで発生する光電流のオーダはサブスレッショルド電流程度であるため,ドレ イン電流を光電流とすれば対数応答が実現できる。但しダイナミックレンジ自体は広いが,低照度側でのノ イズが大きくSN比が余り良くないことや,低照度側では対数変換の応答特性が悪いため残像が発生するこ とが指摘されている。車載用には速い応答速度が要求されるためにこの点も好ましくない。これらの問題が 解決され今後ITS搭載用カメラとして有力な候補となると期待される。
Illumination
Output Signal
Multiple Exposure Illumination
Output Signal
Nonlinear Response
Saturation Level Illumination
Output Signal
Conventional
Iph PD
VPD
図2.2.4.2 広ダイナミックレンジ化の手法
複数回露光方式は古くから様々なバリエーションが提案されている。長時間露光と短時間露光を組み合わ せ後段で合成することによりダイナミックレンジを広げることができる。最近この複数露光時間信号読出し において短時間読出し時間の一部を更に短時間の蓄積時間信号読出しを行い,更にその読出し中にそれより も短時間の蓄積時間信号読出しを行うといったバースト読出しを行うBROMEという方式が提案実証されて いる4)。この方式により12bit出力で117dBのダイナミックレンジを得ている。画素内は余り手を加えず埋込 PD などの低ノイズ性能を生かしたまま列並列信号処理回路で広ダイナミックレンジ化を図る手法が高画質 を維持した広ダイナミックレンジ化を実現する上でトレンドとなるであろう。
(3) 3次元距離計測
ビジョンチップの応用として3次元距離計測に関するものが幾つか発表されている。画像と同時にその距 離がわかるセンサシステムが実現できればFAやITSなど適用範囲は広い。距離計測方法には,視差を利用 するもの,光切断法,TOF (Time Of Flight)法などがある(図2.2.4.3)。