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電気光学効果を利用した電磁界計測技術の動向

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(1)

電気光学効果を利用した電磁界計測技術の動向

永妻 忠夫

a)

久武信太郎

Trends in Electromagnetic-Wave Measurement Technologies Using Electro-Optic Effect

Tadao NAGATSUMA

†a)

and Shintaro HISATAKE

あらまし 電気光学効果を利用した電磁界計測技術は,光技術を応用した様々な電磁界計測手法の中で最も歴 史が長く,また様々な周波数帯の計測に利用されている.本論文では,まず,基本的な動作原理と典型的な応用 に向けたシステム構成例について述べる.つぎに,1980年代から現在までの研究開発の経緯を俯瞰した後,最近 の技術の進展や注目すべき研究動向について紹介する.

キーワード 電気光学効果,電磁界計測,レーザ,マイクロ波,ミリ波,テラヘルツ波

1.

ま え が き

光技術を利用した高速・高周波電気信号の計測技術 の研究の最初のブームは,

1980

年代に遡る.フェム ト秒パルスレーザ光の出現によって,それを用いたピ コ秒〜サブピコ秒の電気信号の発生と検出技術が大き く進展した.

1990

年に発行された単行本「

Measure- ment of High-Speed Signals in Solid State Devices

(Marcus

編,

Semiconductors and Semimetals

シリー ズ

) [1]

では,

80

年代に確立された数々の電気信号

(

電 磁界

)

計測技術がまとめられている.その中で,四半 世紀を過ぎた今日にいたるまで応用研究が続けられて いるものは,電気光学

(Electro-Optic: EO)

効果を有 する光学材料

(EO

材料

)

を電界センサとして利用する 計測技術である.

EO

効果を利用した電磁界計測技術に関する研究が このように息が長い最大の理由は,

EO

効果が,直流 からマイクロ波,ミリ波

(30 GHz

300 GHz)

,そして テラヘルツ波

(0.1 THz

10 THz)

領域におよぶ極め て広い周波数応答性を有することから,電磁波開拓や 周波数利用技術の進展とともに,常に新たな測定対象 やニーズが存在してきたことにある

[2]

[4]

.本論文

大阪大学大学院基礎工学研究科,豊中市

Graduate School of Engineering Science, Osaka University, 1–3 Machikaneyama, Toyonaka-shi, 560–8531 Japan a) E-mail: [email protected]

では,

EO

効果を利用した計測技術

(

以後,

EO

計測技 術と呼ぶ

)

について,これまでの技術動向や最近の新 たな展開に関して解説する.

2.

レーザ光を利用した電磁界計測の分類 光技術による電磁界計測においては,電磁波

(

電 気信号

)

のより光波の変調を引き起こす様々な物理 現象

(

1)

が基礎となる.同図に実用的な観点から 選んだ変調手法とそれを支える物理現象をまとめる.

電界によって複屈折率が変化する現象

(

ポッケルス効 果

)

を使った電気光学

(Electro-Optic: EO)

変調

[5]

1 光技術を用いた電磁界測定技術の原理と分類 Fig. 1 Principles of electro-magnetic field measure-

ment using optical techniques.

(2)

2 EO計測による電気信号計測の原理.図では光パル スを用いたサンプリング計測の例を示している Fig. 2 Principle of electrical signal measurement

based on EO effect.

[10]

,光を照射すると導電率が変わる現象を利用する 光伝導

(Photo-Conductive: PC)

変調

[11]

[13]

,電 界によって光の吸収係数が変化する現象を利用する 電界吸収

(Electro-Absorption: EA)

変調

[14]

[16]

, 磁界による光の偏光面の回転などを利用する磁気光学

(Magneto-Optic: MO)

変調

[17]

[19]

が代表的なも のである.いずれの場合もこれらの諸現象を引き起こ す特殊な材料が重要であり,電界あるいは磁界センサ としての感度や帯域は,材料の種類や形状などに大き く依存する.

これらの計測手法の中で,電磁波計測として最も 広く利用され実用化が進んでいる手法は

EO

計測で ある.

EO

計測は,光信号強度の変化から未知の電 気

(

電界

)

信号を測る手法である

(

2)

.光信号とし てはパルスレーザ光と連続レーザ光を用いる

2

とお りがある.光パルスを用いた

EO

計測は,

EO

サンプ リング

(Electro-Optic Sampling: EOS)

と呼ばれる.

EOS

では,上述のように電界が加わるとその強さに 応じて複屈折率が瞬時に変化する

EO

材料

(

応答速度 は

0.01

0.1 ps

のオーダ

)

が電界センサになる.図

2

に示すように,電界によって屈折率が変化した

EO

材 料中に光を通過させると,材料に入る前と出た後で偏 光状態が変わる.この偏光状態の変化は,

EO

材料を 通過した光を更に偏光板に通すことで,光の強さ

(

光 量

)

の変化に変換することができる.パルス光を用い ることで,時間的に変化する電気信号波形を,ほぼ光 パルスの幅の分解能で測定することが可能となる.光 パルスと被測定波形とのタイミングをずらしていくこ

オードで電気信号に変換したのち,電気的なサンプリ ングオシロスコープやスペクトラムアナライザーでそ れぞれ波形や周波数を計測することも可能である

[8]

[10]

.この場合,帯域はフォトダイオード及びそれ以 降の電気的な計測機器の性能で決まる.また,測定帯 域を広げると光のショット雑音が増えるため感度が劣 化する.したがって実用的には数

GHz

程度の測定に 適している.

EO

材料に要求される重要な項目は,

1 n

3

r (n:

屈 折率,

r:

ポッケルス定数

)

が大きい,

2

抵抗率が高い,

3

誘電率

ε

が低い,

4

特定方向の電界に対してのみ 感度を有する,

5

使用するレーザ光の波長で大きな吸 収がない,研磨・切削加工やミラー等の膜蒸着が容易 である,などが挙げられる.

1

は感度,

2

は低周波数 での応答特性,

3

は容量的な負荷あるいは擾乱,

4

は 空間分解能あるいはクロストーク特性にそれぞれ関連 する.一般に電界に対する

EO

材料の屈折率の変化が

n

3

r

に比例することから,この値が感度の目安として 使われる.また,誘電率が高いと,電界の

EO

材料へ の侵入を妨げるため感度が低下する.そこで材料の感 度指数として

n

3

r/ε

を用いることもある.更に,

4

に 関連して,レーザ光の伝搬方向と検出される電界の向 きが平行となる縦型の材料と,レーザ光と電界の方向 が垂直な横型の材料のどちらを選択するかが重要であ る.自由空間を伝搬する電波の計測においては,横型 を用いるのが一般的である.これらを満足する

EO

材 料としては,

LiTaO

3

(

)

LiNbO

3

(

)

KTP (

)

CdTe (

横・縦

)

ZnTe (

横・縦

)

BSO (

横・縦

)

など の酸化物結晶や半導体結晶が代表的である.その他の 高感度材料として,高分子ポリマ

[20]

や有機結晶

(

例 えば

DAST [21])

への期待度も大きい.

3. EO

計測技術の変遷

EO

計測は,

1980

90

年代に,半導体電子デバイ スや半導体集積回路

(IC)

の評価

/

診断のためのテス ト技術として発展した

[7]

[9]

.文献

[1]

に見られるよ うに,

1980

年代の同技術の牽引役は米国の研究機関

(Bell

研,

IBM

,ロチェスター大学等

)

であった.我が 国や欧州の機関における研究開発が活発になったのは,

(3)

3 EO材料を用いた電気(電界)信号計測の形態.(a) 配線からのフリンジ電界を非接触で検出.(b)微小 金属電極を配線にコンタクトして電界を検出.(c) 電波放射体からの電界を検出

Fig. 3 Configuration of electric-field measurement using EO materials. (a) Noncontact detection of fringing electric filed. (b) Detection of elec- tric field via a metallic needle. (c) Detection of electric field emitted from a radiator.

1980

年代の後半からであったが,

1990

年代以降,

EO

計測技術を実用的な

IC

テストシステムや電界計測シ ステムにまで発展させてきたのは我が国であったと言 える.実際に,国内の複数の計測メーカーから

EO

計 測を利用した

IC

テスタや高周波プローブが登場した.

3

は,

EO

計測の原理を使った,

IC

や回路基板の 配線を伝わる電気信号測定や,アンテナなどの放射体 からの電界

(

電波

)

計測の例である.図

3 (a)

では,

EO

材料を配線に近づけ,配線からもれた電界

(

フリンジ 電界

)

によって材料の屈折率を変化させる.

EO

材料 の底面にはレーザ光を反射させるための誘電体ミラー が施されている.同図

(b)

EO

材料に小さな金属針 を取り付け,この針を配線に接触させて材料の底面を 配線と同電位にすることにより感度を増加させるもの である.この形態では,配線の電位を正確に知ること ができる.被測定対象がアンテナなどの放射体の場合 は,図

3 (c)

のように電波が伝搬する経路に

EO

材料 を置くことで電波の波形や強度を測ることができる.

EO

計測は,従来の電気的手法による計測に比べ,

高時間分解能性

(

広帯域性

)

と低擾乱性において優って いるだけでなく,電位の基準となるグランド線に測定 端子を接続する必要がないという特徴を有する.

3 (a)

及び

(b)

の形態は,

IC

チップや回路基板の 内部の電気信号波形を一点一点計測することで故障や 動作不良の診断に利用できる.また,

IC

チップ内のダ イオードやトランジスタの応答を直近で測定すること ができ,伝送線路やコネクタによる波形歪や損失の影 響を受けない真の波形測定が可能となる.テラヘルツ 帯のフォトダイオードやフォトコンダクタの光応答は 現在でも

EO

計測が標準である

[2], [3]

4 空間電磁波を測定するためのファイバ型計測システ ムの構成例.(a) EO材料と偏光検出光学系の分離 構造.(b) EO材料と偏光検出光学系の一体構造.

(c)集積化導波路型構造

Fig. 4 Fiber-based measurement system for free- space electromagnetic waves. (a) EO mate- rial and polarization detection optics are sep- arated. (b) EO material and polarization de- tection optics are packaged. (c) Integrated de- tection system with optical waveguide.

3 (c)

の形態は,アンテナ測定はもちろん,

EMC

計測にも有用であり,図

4

に示すように,光ファイバ を用いたより実用的なシステム構成が報告されてい る

[22]

[25]

.図

4 (a)

は,

EO

センサ部と偏光検出部 を光ファイバで切り離した構成,同図

(b)

は,偏光検 出までの光学部品をモジュールとして集積した構成,

同図

(c)

は,

LiNbO

3基板上に金属アンテナと光導波 路による光干渉計を設けた構成である.

(a)

の構成で は,

EO

電界センサの位置決めに伴って光ファイバが 動き,それによって偏光が変化するため,信号強度が 大きく変動するという問題がある.これを解決するた めに,ファラデー回転子と偏波保持ファイバを用いる 手法が提案されている

[24]

.図

5

は,この安定化

EO

センサを用いて,ダイポールアンテナの近傍電界を測 定した例である.図

4 (b) (c)

の構成ではこのような 問題がない.図

4 (c)

の構成では,アンテナにより電 界を捉え,更に基板に形成された光導波路と金属電極

(

微小ダイポールアンテナ

)

によって,電界による光の 変調効果を大きくし,測定感度を大幅に向上されるこ とができる.同図では微小ダイポールアンテナを用い ているが,外部アンテナと併用する場合もある.また,

ループアンテナを用いることで磁界計測を行うことも

(4)

5 ファイバ型EO電界センサを用いてダイポールアン テナを測定した例[24].(a)測定の様子.(b)電界 分布の測定例と計算結果

Fig. 5 Example of electric-field distribution near a dipole antenna. (a) Experimental setup. (b) Measured and calculated results.

できる

[25]

いずれの場合も,電磁界信号検出を行った後は,信 号を光ファイバで運ぶ形態となっていることから,同 軸ケーブルで信号を運ぶのに比べ,被測定電磁界の伝 搬の乱れが圧倒的に抑制される

[26]

.この

EO

電界セ ンサの低擾乱性を生かした応用例として,人体ファン トム内の電界強度を計測することで,携帯電話から の電波が頭部で吸収される電力

(Specific Absorption Rate: SAR)

をより精密に測定する手法が提案されて いる

[27], [28]

一方,マイクロ波集積回路

(MMIC)

や平面アンテ ナの研究開発においては,単点の信号だけでなく,

2

次元的な電磁界分布を把握することが極めて重要であ る.そこで,図

4 (a)

に示したような光ファイバ型の

EO

電界センサを電動メカニカルステージに固定し,

測定ポイントごとに移動させて逐次計測する電界マッ ピング法が提案されている

(

6 (a))

.更に測定時間 の短縮化を目的として,図

6 (b) (c)

に示すように,プ レート状の

EO

材料を被測定対象に対向させてビーム をスキャンする方法

(EO

電界スキャナ

) [29]

,レーザ 光を面上に拡大し照射し,フォトダイオードアレーを 用いて空間分布を一挙に取得する方法

(EO

電界カメ ラ

) [30]

が開発されている.見えない電磁波像をリア ルタイムで観測できる電界カメラは,長年待ち望まれ ていた技術であり,その意義は大きい.

6 2次元電界分布計測の形態

Fig. 6 Configuration of two-dimensional electric-filed measurement.

1 感度向上のためのアプローチ

Table 1 Two approaches toward sensitivity improve- ment.

4.

最近の進展

4. 1

性 能 向 上

EO

計測の性能向上に関する最近の進展について,

高感度化,高ダイナミックレンジ化,高機能化の観点 からまとめる.

4. 1. 1

高 感 度 化

光技術に基づく

EO

計測の手法は,従来の微小アン テナを用いた手法に対して,被測定電界に対する擾乱 が少なく,また帯域が広いという利点がある.一方,

電気光学結晶のポッケルス効果は小さいため,従来手 法に比べて感度が低いという問題がある.そこでこれ までに感度向上のための様々な手法が検討されている.

ここでは,表

1

に示す

(1)

プローブ光と被測定電界 との相互作用長拡大と,

(2) EO

結晶内部電界増強の 二つのアプローチを紹介する.

プローブ光に対する共振器構造を

EO

結晶に導入す ることで,等価的に被測定電界とプローブ光との相互 作用長を拡大する効果が得られ,検出感度が向上する.

1993

年に

Fabry-Perot

共振器型の

EO

電界センサが 提案され

[31]

,最近では

THz

波帯でのサブ波長分解 イメージングのためのマイクロ共振器型センサが検討

(5)

7 ε’の結晶長L依存性(KD2PO4) [35]

Fig. 7 Calculatedε’ for KD2PO4crystal [35].

されるに至っている

[32]

.共振の

Q

値が高いほど電界 検出の感度が高くなるが,高い反射率の反射膜を

EO

結晶の両端に施す必要があり,作製コストが高くなる.

高反射率膜を

EO

結晶端面に施さなくても,変換効率 を高める手法が最近提案されている

[33]

.本手法では,

EO

結晶と,

EO

結晶とは屈折率が異なる誘電体とを 交互に積層するもので,ブラッグ反射の導入に等価で ある.

3

層構造とするだけで,

6 dB

の感度向上が確認 されている.

高い周波数の被測定電界に対して相互作用長を拡大 するためには,プローブ光と被測定電界との位相整合 をとる必要がある.最近では,広帯域なテラヘルツパ ルス検出のためのチェレンコフ位相整合型

EO

計測法 が提案され

[34]

0.5 mm

厚の

LiNbO

3結晶を用いて

4 mm

厚の

ZnTe

結晶と同程度の検出効率が実証され ている.

一方,

EO

結晶の内部電界強度が強くなれば,検出 の感度が向上する.通常,内部電界強度は外部電界強 度の

1

となるとの考えから,

2.

で述べたようにこ れまでは

EO

結晶の感度指数を

n

3

r/ ε

と定義してい た.ここで,

ε

EO

結晶の被測定電界に対する比誘 電率で,

n

3

r

は被測定電界による屈折率変化に直接寄 与する量を表している.静電界中に置かれた誘電体内 部の電界を考える場合,本来は誘電体形状に依存する 脱分極係数を考慮した実効的な比誘電率

ε

を分母に とる必要がある.

Garzarella

等は,この効果に基づく 検出感度向上の可能性を指摘するとともに,

LiTaO

3

KD

2

PO

4 を用いてこれを実証した

[35]

.彼らの計 算によれば,図

7

中に示す細長いロッド状の

EO

結晶

(KD

2

PO

4

)

ε

は,

L=0

におけるバルク値から

L

に 反比例して小さくなる.立ち上がり時間

3 ns

程度の電 気パルス

(

帯域換算で

100 MHz

程度

)

を対象に実験的

8 高ダイナミックレンジ化のための三つのアプローチ Fig. 8 Three approaches toward higher dynamic

range.

に求められた検出感度の

L

依存性は,従来の感度指数 の定義から予想される「

L

に比例する」ではなく,図

7

に示す

ε’

低下の効果を考慮して説明される「

L

2に 比例する」という結果が得られている.

大きなポッケルス定数

r

を有する結晶の誘電率は一 般に大きいため

[36]

EO

結晶の内部電界強度の減少 を補償する本アプローチは,電界検出の感度向上に効 果的である.

被測定電界に対する共振構造の導入

[37]

により,

EO

結晶内部の電界強度を増強させ,検出感度を向上させ ることも可能であるが,この場合はもちろん検出帯域 幅が犠牲になる.

4. 1. 2

高ダイナミックレンジ化

EO

センサを高電界強度計測に適用する場合には,

高い線形ダイナミックレンジが要求される.図

4 (c)

に示した

Mach-Zehnder

干渉型の

EO

センサの場合,

プローブ光に誘起される位相変化量を光強度変化量へ と変換する関数は正弦関数であるため,ダイナミック レンジは大きくなかった.

8

に示すように,高ダイナミックレンジ化のため に,より線形性の高い位相変化

強度変化変換関数を もつセンサの構成が提案されている.なお,それぞれ

(6)

図っている.アクティブ領域の長さが

10 mm

のセン サにより,

1 GHz

において

60 dB

のダイナミックレン ジを実証している.

8 (b)

に示す

Y

分岐方向性結合器型変調器を利用 した

EO

センサでは,

EO

ポリマを基板とし,

1 GHz

において

70 dB

のダイナミックレンジが達成されてい

[39]

最近

Lee

等は,比較的厚い

LiTaO

3

(0.5 mm)

結晶を 用いた干渉型

EO

センサで,

100 dB

を超える線形ダイ ナミックレンジを実現し,

1 GHz

において

1 V/m

から

100 kV/m

までの計測を実証している

(

8 (c)) [40]

4. 1. 3

高 機 能 化

(i)

単一

EO

結晶による直交

2

成分検出

これまでの

EO

計測では,電界の

1

成分を測定す ることが一般的で,独立な直交成分の測定は,複数の

EO

結晶あるいは複数のプローブ光を用いることで実 現されていた.

等方性

EO

結晶を用いれば,直交する電界成分を単 一の

EO

結晶,単一のプローブ光により独立に測定可 能であることが,

2002

年に理論的に示され

[41]

,最近 になって実証された.バルクの

ZnTe

を用いた初の原 理実証

[42]

2007

年に行われ,

2011

年にはより実用 的なファイバマウント型のセンサに対しても実証され ている

[43]

.被測定電界の方向推定確度は

2

,交差偏 波識別度

(

直交する電界成分間の強度比

)

30 dB,

電 界振幅の確度は

5%

以内であることが示されている.

(ii)

磁界・電界の同時計測

従来は,電界と磁界をそれぞれ個別に電気光学結晶 と磁気光学結晶を用いて測定し,それらからポイン ティング・ベクトルを計算する手法,あるいは,電界の 直交

2

成分から,ファラデーの法則により磁界を求め,

これらからポインティング・ベクトルを計算する手法 が一般的だった.前者の手法は,電気光学結晶と磁気 光学結晶の被測定電界に対する誘電率が一般には異な ることに起因する誤差を含む問題がある.後者の手法 は,電界と磁界が直交していない状況では適用できな いという問題がある.最近,ポッケルス効果とファラ デー効果を示す

110 cadmium-manganese-telluride

(CdMnTe)

結晶を用いることで,磁界と電界を同一結

9 偏光変調を用いないEO計測の実験系[45]

Fig. 9 Experimental set up for non-polarimetric EO measurement [45].

晶により計測する手法が提案され,ポインティング・

ベクトルの可視化に応用された

[44]

.開放端マイクロ ストリップ線路と

50 Ω

終端マイクロストリップ線路 を対象に,それぞれについてポインティング・ベクト ルの振幅と位相を可視化している.

CdMnTe

結晶は 少なくとも

2 THz

以下の周波数領域において利用可 能であり,今後はメタマテリアルやプラズモニクスの 研究が盛んに行われているテラヘルツ波帯でのポイン ティング・ベクトルの可視化に有用であろう.

(iii)

偏光変調を用いない

EO

計測

被測定電界によりプローブ光に誘起される偏光状態 の変化量を検出する従来の手法

(

4 (a)

に示す構成 等

)

では,検出感度が外乱によるプローブ光の偏光変 動により低下する問題があった.最近,光技術により 被測定電界を発生・検出するホモダイン型

EO

計測の 手法において,図

9

に示す偏光変調を利用しない手法 が提案され,マイクロ波帯で実証された

[45]

検出の原理は,被測定電界とプローブ光との相互作 用により生じた変調サイドバンドの光領域でのホモダ イン検出である.図

9

に示すように,二波長光源によ り生成される光強度ビートが光電変換され,被測定電 波として放射される.光ビート信号は,検出のための プローブ光としても利用される.プローブ光を構成す るそれぞれの光周波数成分は,被測定電波により位相 変調され変調サイドバンドを生成する.生成されたサ イドバンドの周波数は,他方のレーザ周波数とそれぞ れ正確に一致するため,片方の周波数成分を波長フィ ルタにより選択することで,ホモダイン検出が実現さ れる(両方の周波数成分を検出するとキャンセルされ てしまう).本手法は,プローブ光の偏光を

EO

結晶 と偏波保持ファイバの固有軸に合わせて利用でき,外 乱による偏光変動の影響を受けない特長を有する.

(iv)

周波数領域法における振幅・位相の同時計測 パルス電磁波に対するサンプルの応答を計測する時 間領域法に対して,単一周波数の電磁波に対する応答

(7)

10 ホ ー ン ア ン テ ナ か ら の 放 射 パ タ ー ン の 測 定 例 (125 GHz) [46].(a)振幅分布,(b)位相分布 Fig. 10 Electric field distributions emitted from a

horn antenna (125 GHz) [46]. (a) Normal- ized amplitude and (b) phase.

を計測する手法は周波数領域法と呼ばれ,高周波数分 解能計測が可能という特長を有する.図

9

に示した 光電変換による単一周波数電磁波の発生の手法では,

広帯域な周波数掃引が容易に実現でき,広帯域性を有 する

EO

計測との組み合わせに相性が良い.この組 み合わせにおいて,これまでの光技術に基づく手法は 全てホモダイン検出に基づいており,被測定電磁波の 振幅と位相の同時計測ができなかった.最近光技術に 基づく周波数領域法で,振幅と位相を同時計測する技 術が提案され,

F

バンド

(125 GHz)

で実証された

(

10) [46]

.被測定電磁波の発生・検出に利用される光 強度ビートは,図

9

と同様に二波長光源により生成さ れるが,検出用の光ビートの周波数を光周波数シフタ によりコヒーレントにシフトさせることでヘテロダイ ン計測とする点に特徴がある.ホモダイン計測と同様,

光源の位相雑音はキャンセルされ,高精度な位相計測 が可能となる.

4. 2

テラヘルツデバイスへの応用

近年,テラヘルツ波領域において,プラズモニクス

11 サブ波長空間分解能での近接場計測[47]

Fig. 11 Near-field EO measurement with sub-wavelength spatial resolution [47].

やメタマテリアルに関連した研究が急速に進展してき ている.

EO

計測の空間分解能は,

EO

結晶中のプロー ブ光の大きさ程度となる.

10 μ m

程度の空間分解能は 容易に得られ,テラヘルツ波領域においてもサブ波長 の空間分解能での電磁界の可視化が可能となる.低擾 乱で偏光分離・周波数分解・時間分解計測がサブ波長 空間分解能で可能となる

EO

計測は,波長オーダでの 電磁界の振舞いが本質となる現象に対して重要な知見 を与えるものとして期待されている.以下では,この 特徴を活かした計測例について紹介する.

Adam

等は,サブ波長程度の大きさの金属開口のテ ラヘルツ近接場を,サブ波長の空間分解能かつ,サブ 周期の時間分解能で初めて観測した

[47]

.図

11

に示す 系において,

EO

結晶として用いた

GaP

の軸を適切に 選ぶことで,金属開口に垂直な電場成分のみを観測し ている.直径

150 μ m

の金属開口近傍においける

EO

結晶中のスポット径は

5 μm

である.各点でテラヘル ツパルスの時間波形を測ることで,時間・周波数分解 の近接場応答をサブ波長空間分解能で明らかにした.

このようなサブ波長の空間分解能での近接場の観察 結果は,テラヘルツ波帯フォトニック結晶デバイスの 設計と評価にも有益な情報を与えると考えられてい る.例えば

Nielsen

等は,低損失テラヘルツ波帯フォ トニック結晶ファイバを提案しているが,彼らは実際 に作製したファイバが広い周波数帯域にわたってシン グルモード動作することと,伝送に不都合な高次の モードが高い周波数で発生し始める様をこのファイバ 端面における電界分布

(

振幅と位相

)

のサブ波長分解 計測により確認している

[48]

効率的なメタマテリアルデバイスをデザインするた めには,従来のような

LC

共振のアナロジーに基づく

(8)

能で明らかにされている

[49], [50]

.これらは,共鳴現 象であるため,より高い周波数分解能での測定が望ま れているが,テラヘルツ波パルスを用いる時間領域の 手法では,基板での多重反射によるエコーが周波数分 解能を制限しており,今後の課題となっている.より 高い周波数分解能が実現可能な周波数領域法とサブ波 長分解

EO

計測との融合が期待される.

このように,最近進展が目覚ましいテラヘルツ波領 域でのプラズモニクスやメタマテリアルの研究分野に おいて,

EO

計測の手法は貴重な手段としての地位を 確立している.一方,この領域で利用されている

EO

計測は,いわゆるオーソドックスな偏光変調方式によ る時間領域法に基づいている.今後は,電界と磁界の 同時観測やポインティング・ベクトルの可視化,周波 数領域法との融合による高周波数分解計測など,最近 の

EO

計測を取り巻く研究成果を応用し,ますます発 展していくものと考えられる.

5.

む す び

本論文では,

1980

年代から今日に至るまでの

EO

計測の発展の歴史を俯瞰するとともに,性能向上や新 たな応用に向けた最近の研究動向について解説した.

EO

効果を利用した電磁界計測技術は,現状では感度 の点で,従来の電気的な手法に基づく計測技術を凌駕 できていないが,少なくとも低擾乱性や広帯域性に 関しては圧倒的なアドバンテージがある.近年,国内 メーカーから

EO

計測を利用した電界プローブも販売 されており,実用計測技術に向けた更なる進展が期待 される

[51], [52].

本論文で述べた光技術による電磁界計測は,光通信 で言えば,変調素子とレーザ光源を分離した間接変調 方式である.最近では,レーザ光源そのものを被測定 電磁界によって直接変調する方式も実用になりつつあ り,そこではレーザ光源のための給電も光により行わ れている

[53]

EO

計測を含め,次世代の光電磁界計 測技術は,センサーヘッドに光電気部品の集積化技術 を導入していくことが重要になると思われる.

文 献

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永妻 忠夫 (正員:フェロー)

56九大・工・電子卒.昭61同大学院 博士課程了.同年NTT入社.平19大阪 大学大学院基礎工学研究科教授.マイクロ 波フォトニクス,テラヘルツ波フォトニク スの研究に従事.工博.

久武信太郎 (正員)

15同志社大学大学院博士課程了.平 15大阪大学大学院基礎工学研究科助手.平 19同助教.THz波フォトニクス,超高速 光エレクトロニクスの研究に従事.工博.

図 2 EO 計測による電気信号計測の原理.図では光パル スを用いたサンプリング計測の例を示している Fig. 2 Principle of electrical signal measurement
図 3 EO 材料を用いた電気 (電界) 信号計測の形態.(a) 配線からのフリンジ電界を非接触で検出.(b) 微小 金属電極を配線にコンタクトして電界を検出.(c) 電波放射体からの電界を検出
図 5 ファイバ型 EO 電界センサを用いてダイポールアン テナを測定した例 [24].(a) 測定の様子.(b) 電界 分布の測定例と計算結果
図 7 ε’ の結晶長 L 依存性 (KD 2 PO 4 ) [35]
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参照

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