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高等学校英語授業における4技能統合化の試み

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Academic year: 2021

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高等学校英語授業における4技能統合化の試み

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 池田 誠喜 教職実践力高度化コース 実習指導教員 西村 公孝 広瀬 真太郎

キーワード:4技能統合型授業,第二言語習得,アクティブ・ラーニング

Ⅰ.はじめに:高校英語教育の実態と今日的 教育課題

2008年,中教審答申において,今後の英語指 導には4技能を総合的に育成することが必要と 示唆された。しかし,実際の高校英語教育では

「大学に受かるための英語」が求められており,

言語習得の観点に基づく授業実践は多くの学校 で困難をきたしている。

しかし,現在, 大学入試は変化しつつある。

金谷(2012)は,近年の入試問題が,「速読力,

まとまった英文を書く文章力,日常会話を超え るリスニング力」が求められるなど変化してき ていることを理由に挙げ,本格的な英語力を試 そうとしている大学側の意図を指摘している。

また, 文部科学省(2014)は,入試での英語力の 測定について,4技能での評価が必要とし,2020 年度より「大学入学希望者学力評価テスト(仮 称)」を段階的に実施することを示した。もし このテストが開始されれば,生徒はより実践的 な英語運用能力が求められるであろう。

実践的な英語運用能力獲得ための授業デザイ ンについては第二言語習得理論が参考になる

が,白井(2008)は,外国語の習得には学習者が

十分に理解できる外国語のインプットとその中 で蓄積された知識のアウトプットによる自動化 への促しが重要とし,インプットとアウトプッ トの必要性を述べている。これらの点を踏まえ ると,今後大学入試に対応し,実践的な英語運

用能力を育成していくためには,授業を4技能 統合型からデザインすることが求められるであ ろう。

「話す」活動を中心とした授業への取組とし

て金谷(2012)は,英語教育の本来あるべき姿を

言語習得の観点に基づく授業展開ととらえ,

「Speak Out方式」という「話す」活動を中心

とした授業形態を考案し成果を上げた。金谷 (2012)によると,「Speak Out方式」とは,学年 をまたいで同じ教科書を2度使い,英語の定着 を目指す方式で,1 年目は主にテキストの内容 理解に費やし,2 年目には理解した内容を用い て,英語による表現活動をすることをゴールに した指導を行う形式としている。ただし,1 年 目と単に同じことを2度繰り返すということで はない。「Speak Out方式」は「アクティブラー ニング」を主眼に置いた授業展開であり,個人

・ペアでのスピーチ,ディベート,グループ・

ワークを中心に行う。「講義形式の教育とは異 なり,学習者の能動的な学習への参加を取り入 れた教授・学習法」という点からも理想的な授 業実践と言える。

本研究では,4技能統合型の授業展開として,

前述の「Speak Out方式」を実習校の英語授業に 導入し,「聞くこと」,「読むこと」,「書く こと」の3技能のスキルの充実を図りながら,

「話すこと」を主体とした授業を展開して,生 徒の英語に対する意識を肯定的に変容させ,英

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語運用能力の向上を図ることを目的とした。

Ⅱ.学校課題フィールドワークⅠ 1.実習校の概要

実習校は,徳島県の中心部に位置する,進学 重視型単位制の普通科高校である。

2.研究対象及び期間

学校設定科目「英語理解基礎Ⅰ」を履修する 生徒(138名)。実施期間は平成27年4月から6 月である。

3.研究方法

「英語理解基礎Ⅰ」において,「発表活動」

を主とする授業を2年次の全クラスで展開し,

英語に対する意識の変容や話す力の向上への効 果について検証する。

4.調査方法

研究対象生徒全員に,英語での発表活動に関 する意識調査とスピーキングテストを行った。

また,授業内では,各単元終了時に振り返りシ ートへのコメント欄に自由記述をさせた。

5.使用教材

オリジナルで作成したプリント「Introduction」 と『New One World Communication Ⅰ』(教育出 版株式会社)を使用した。

6.授業の実際

1学期間(4月~6月)14回の授業で, 2回の 原稿提出と3回のプレゼンテーションによる発 表を実施した。調査期間中に扱った単元は,

「Introduction」と『New One World

Communication Ⅰ』から「Lesson 1 : English as a Global Language」である。

Ⅲ.Ⅳ.結果と考察

1.「英語での発表活動に関する意識調査」

の結果と考察

プレゼンテーションに対する肯定的な意識や 必要性は,4月の調査に比べ向上したが,「絶 対にやりたくない」が微増したり,英語でのプ レゼンテーションの必要性に20%の生徒が「ど ちらともいえない」を選んでいることから,更 なる改善が必要と考えた。

プレゼンテーションの授業で身についたスキ ルでは,「英語を話す力」,「人前で話す自信」

が上位2項目にを占め,「英語を読む力」,「英 語を書く力」と回答した生徒も,4月に比べ増 加した。しかし,他の技能では今回顕著な効果 が見られなかった。それぞれのスキルを強化す るために,授業内での工夫が必要になると考え る。

今回の授業実践に対し,概ね生徒は満足感を 示し,英語に対する肯定的な意識,授業の理解 度,英語の必要性を向上させた。しかし,学力 面=成績向上という実感には至らなかった。学 力面の向上には授業内でのインプットや発表な どのアウトプットの更なる経験が必要であり,

時間がかかるものと考える。

2.単元終了後の振り返りシートの自由記述 の結果と考察

「Introduction」終了後の記述では,今後の英 語学習に対する意欲を示す意見は多かったが,

具体的な目標は見られず,発表ができないこと へ の 困 難 ば か り が 綴 ら れ て い た 。 し か し ,

「Lesson 1」「FWⅠ終了後」となるにつれて,

生徒一人ひとりが発表に対して,個々の課題を 設定しはじめ,発表の経験から達成感による英 語への自己効力感が認められはじめた。結果,

自律的学習者として成熟した様子が見られた。

3.スピーキングテストの結果と考察

4月のテストと比べ,6月のテストでは,「分 量(2.10点)」,「内容(2.15点)」と得点が上昇し

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た。発表活動を3回経験したことで,生徒一人 ひとりの人前で話す自信が高まり,英語で使用 できる表現が増え,話す分量の増加や内容の深 まりが促進されたと考える。だが,2単元分(11 時間程度)では授業でインプットした内容をう まく引き出し,活用できない生徒も多い実態も 明らかになった。授業における継続したインプ ットとアウトプットの必要性を感じた。

Ⅴ.学校課題フィールドワークⅠの成果と課題 成果として,①発表の成功体験から達成感を 得て,生徒自身が4技能の向上に役立ったと考 えていること,②英語に対しての自己効力感が 高まり,英語に対する意識の肯定的な変容や興 味・関心の高まりが見られたこと,③英語学習 に自律的に取り組む意欲が高まったこと,④自 分の将来に英語が必要と自覚しはじめたこと,

⑤話す英語の絶対量が増加し,内容についても 深まりを持たせて話せるようになってきたこと が挙げられる。課題として,①人前に出るのが 極度に苦手な生徒にとっては大きな不安になり 授業に対して積極的になれないこと,②英語に 肯定的でない意識を持つ生徒も半数近く存在す ること,③この形態の授業が自身の英語運用能 力の向上に本当に繋がっているのか,その必要 性について実感できない生徒が見られることが 挙げられる。発表活動をペアにすること,教科 担任から授業中の生徒への印象や様子を聞き取 ることや生徒に直接インタビューすることを通 して,課題を明確にし,改善策に活かすこと,

授業内でのインプット量の増やしながら,長期 的,かつ,継続的に授業を行うことが今後必要 と考えた。

Ⅵ.学校課題フィールドワークⅡ 1.学校課題フィールドワークⅠの課題から

FWⅡでは,「Ⅴ.」の改善点に留意し,

4技能統合型授業を長期的・継続的に実践して,

生徒の英語に対する意識の変容や英語運用能力 の更なる向上を図ることを目的とした。

2.実践計画

スピーキングテストを含め,計19時間の授業 を実施し,プレゼンテーション活動とロールプ レイ活動の2種類を計画した。

3.授業の実際

2学期間(9月~11月)19回の授業で, 2回の 原稿提出と4回の発表を実施した。

Ⅶ.Ⅷ.結果と考察

1.「英語での発表活動に関する意識調査」

の結果と考察

発表の成功による達成感が増したことで,プ レゼンテーションやロールプレイに対する積極 性への肯定的な意識は約60%,必要性は約70%

となり,生徒は,「人前で話す自信」や「英語 を話す力」だけでなく,他の技能の向上につい ても実感しはじめた。また,英語を人前で話す ことへの抵抗感の減少と英語の必要性の増加,

言語としての英語を捉えようとする姿勢の高揚 など成果が見られたが,英語に対する肯定的な 意識や授業理解度の増加が見られず,授業に対 する満足度も下がった。扱う題材がFWⅠに比 べ,長文化・難化したことに加え,今回から採 用したロールプレイが多くの生徒にとって難し いタスクになったことが原因と考えられる。生 徒の習熟の度合いを考慮し,題材と活動内容を 精選して,定期的に改善することが必要である。

2.単元終了後の振り返りシートの自由記述 の結果と考察

「Lesson2」では,ペアによる発表に変更し てから,より学習意欲が増し,自律的学習態度

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も更に発展し,生徒の発表に対する課題が具体 的,かつ,重要な項目に絞られ,学習者として の質も上がってきたが,話すことへの強い拒絶 感をもつ生徒も存在していた。「Lesson3」で は,発表の成功による達成感がますます増加し たことで,英語に対する興味・関心・意欲が内 発的に高められ,英語の読解力や理解力の向上

や「Lesson2」で感じた課題の解決が促進され

た。さらに,英語に対する拒絶感が学ぼうとす る姿勢に変わった。「FWⅡ終了後」では,英 語を話すことへの否定的なコメントは減り,英 語に対する向上心の高揚や「人前で話す自信」

の向上,成長に対する生徒自身の実感を表すコ メントが大半を占めた。このことから,4技能 統合型授業を長期的・継続的な実践は英語運用 能力を総合的に高めるだけでなく,英語に対す る肯定的な意識も高め,英語の生涯学習を促進 する点で有効であったと推測される。

3.スピーキングテストの結果と考察

11月時のテストでは,「分量(2.47点)」,「内 容(2.41 点)」と両項目で,得点がさらに上昇し た。過去のテストで評価の伸び悩んだ生徒がよ く話せるようになっていただけでなく,ほぼ全 ての生徒で使用できる表現が増え,話す内容の 説明に対するバリエーションが増えた。

Ⅸ.プログラム評価

授業実践者にこの研究を終えた段階でどのよ うな感想を持ったのか尋ね,その内容の共通点 を抽出し,成果と課題に分けて構造化し,「① スキルの向上」,「②学習意欲の向上」,「③ 授業形態」,「④教師・生徒の変容」,「⑤人 前に出るのが嫌な生徒や4技能統合型授業形態 に適応しづらい生徒への指導法への示唆」とい う5つの項目にカテゴリー化した。そして,4

技能統合型授業実践の成果と課題の分析と考察 をした。成果として,授業改善の突破口となっ たことや生徒の英語で話す自信や自律的学習の 向上に加え,教師自身の授業に対する省察に繋 がり,教材研究の質が向上したことが挙げられ た。しかし,教材作成の負担感や評価法の統一 の困難さ,英語科内の協働不足などが指摘され,

課題も見られた。今後の取組としては,グルー プ活動による発表活動の活用や発表をしやすい 雰囲気作り,生徒一人ひとりの英語に対する自 信を高めるための個別指導や声かけの重要性に ついて示唆がなされた。

Ⅹ.まとめ

本研究では,授業実践を長期的・継続的に行 ったことで生徒が発表活動にさらに前向きにな り,「話すこと」を主体とする4技能統合型授 業への理解がさらに深まったと考える。本研究 の成果と課題を踏まえ,今後は1年間の目標だ けでなく3年間での到達目標を立て,その目標 を達成するための指導計画をバックワードデザ インで構成し,系統的,長期的に指導するため の体制を構築することが望まれる。またこの体 制をシステムとして残し,継続していくために は,「4技能統合型授業プロジェクトチーム」

を英語科内で作ることが必要となるであろう。

文献一覧

金谷憲(2012)『高校英語教科書を 2 度使う!山形スピークアウト方式』

アルク

文部科学省(2015)『今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバ ル化に対応した英語教育改革の五つの提言~』

白井恭弘(2008)『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』,岩波新書

参照

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