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康有為『康子内外篇』の思想史的意義――「天欲」 と「人理」――(上)

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(1)

康有為『康子内外篇』の思想史的意義――「天欲」

と「人理」――(上)

著者 冨田 昇

雑誌名 東北学院大学論集. 一般教育

号 89

ページ 103‑140

発行年 1987‑11‑30

URL http://id.nii.ac.jp/1204/00024093/

(2)

目次

︵上︶

一一

-- -

子内外

- 9の

l-

的構造

C :0基的意

西:

- :

-

為の

l- :

の受

西の受

西の受 子内外

103

1

康 有 為 ﹃ 康 子 内 外 篇 ﹄ の 思 想 史 的 意 義 l ﹁ 天 欲 ﹂ と ﹁ 人 理 ﹂ 1 ︵ 上 ︶

冨 田

(3)

b---- f西の受

1

︶ 一

般的

2

的文

- 9﹂の

一 一

:

-

a

b

-忍人之

104

2

-

はじめに

1︶近年ようやくその全体が

︿一るようになった康有為

︵ 一

-一九

︶ ﹁

康子内外篇

十五篇は︑康の自編

年譜従えば︑光緒十二年

︵ 一

から翌十三年にかけて著述された

内外康子篇

知為の期思想形成上康最有力資料で考れ有初当在す思現れえでなるある︑ろまわを相

のでらととるもるとこ ︶︶︵ 23

同書は︑自編年譜

内篇は天地人物の理を言い︑外篇は政教藝樂の事を言う

とあるよう︑内外篇の区

別は明瞭ではないが

何より世界観の書である︒特注意されるのは︑その執筆時期

︵ 一

;七︶が変法論

(4)

の嚆矢として知られる康の第

上書

︵ 一

とほぼ対応し︑しかもその内容が同上書失敗を契機とする今

文経学説導入以前の

初期思想形成の原像を示していることである︒

小論の日的は︑同書の世界観を検討し︑康の初期思想形成おける特質を考察することあるが︑さしあた

り第

上書を分析し︑内外篇執筆の思想的背景を明らかしておきたい︒

さて︑康有為を布衣上書踏み切らせたのは︑

強隣外四逼し︑教

民内乱を蓄う

とあるよう

琉球・安南等の旧朝貢国喪失後

とく清仏戦争︵一 ;︶敗北後顕在化してくる外国資本主義列強の

中国本土対する侵略の企図

の対

一 一

︶︑及び教民

会党

窮民らよる内乱

-

農民蜂起再発の可能性対する切迫した危機感であった

- 3

-

しかし康は︑内憂外患対処し得ぬ内政の細紀弛緩よりはむしろ︑その頂点立つ皇太后︵西

と皇上︵

の政治対する意欲と関心の欠如︑

まり天下万民の保全対する責任感︑自覚の甘さを間題の本源と捉

え︑その責任をきびしく追求した上で︑

聖心

の密起による変法自強︑即ち内

一 一

外患を克服すべき富強の実現

とその陣害となっている伝統的政治制度の変革を強く迫るのである

このよう

上書は

変法

・通

を提言した点で画期を成すが︑その本質的意義は︑変

篇﹂の

l 0 5

(5)

法の政治的主体として皇太后

皇上

u

皇帝権力を明瞭に提示し︑また上書-

1

直言極諌による

聖心

の覚醒を

布衣たる自己の責務として康が明確に自覚したことにあった

即ち︑第

上書

︵ 一

おいて日清戦

-

以後の上書活動の原型と変法思想の基軸が形成されたのである

ところでこうした康の士人

1

経世済民意識の形成注目する時

︑ ﹁

自編年譜

﹂ ︵

後年の回想で全面的には信用

できない

の記述が参照されよう

それによれば︑注目すべき転機が郷試失敗

︵ 一

九才

後より従学

していた朱次琦の門を光緒四年

︵ 一

辞去する際に訪れている

即ち康は

靜坐養心

たおり

忽ちして天地萬物皆我と

體︑大いに光明を放つを見て

自ら以て聖人と爲せば則ち欣喜して笑う︒忽 ちして蒼生の困苦を思えば則ち悶然として哭す

経験をした旨を記しているが︑ここで康は︑宇宙生命と自 己との本来的

体性に覚醒することにより

万民の困苦を救済し︑その生々を保全することを自己の責務と自

覚したのである

そしてこの万物

体観に基づ︿経世済民意識の噴出が

実践的契機欠ける考拠

八股等の

伝統的学間

の不満を爆発させ

同時に香港

︵ 一

七九

︶ ・

上海

︵ 一

遊覧を機︑西洋の文物制度に対

する関心を高め

自然科学を中心とする西学の精力的学習を促す所以となる

そして光緒十年

︵ 一

七オ

に至り

西学の成果を通して得られた万物斉同観

-大小

1

に基づき

相対差別苦悩する衆生を︑平等至公の極楽太平の世界

救済すべく志した旨が記

され

ここに大同的意識の萌芽的形成が

指摘されている通り

後年の仮託であろうが

告げられる

-

-

l06

(6)

小論は

ほぽ以上のような見通して︑以下に内外篇を分析し

康の初期思想形成にける特質を明ら

f 9﹂の思

107

まり

康は︑万物

体観に基づく経世済民意識の喊出

︵ 一

促され

独り思想的棋索を

続けていたが

清仏戦争

︵ 一

-五

敗北に強い衝撃を受け

更に四年を経て第

上書の提出

︵一

に踏み切たのである

その課題は

農民蜂起を防ぎ外列強の侵略に対抗すぺく

富強の実現 よって王朝体制の再建強化を図ることにあったが

その際︑伝統的政治制度の改革

及び伝統的思想学間の

転換

を正面掲げ︑その主体として皇帝権力を明示し

︑ ﹁

聖心

の覚醒を

布衣たる自己の責務と自覚するこ

とによって

大官僚層に主導され西洋軍事技術の導入模倣にとどまった洋務運動の枠を︑明らか越えたので

ある

即ち

ここに西洋政治制度に範をとる制度変革とその主体を明示する変法自強論の骨子が

先駆的

成されたのである

とするなら︑第

上書の成立を背景とし

それに先行する

康子内外篇

いかなる思想的課題を負

思想形成の起点に位置しているのであろうか

西洋自然科学と政治制度の導入︑体制教学批判

万物

体観の

展開- :・等々︑

西学の受容と伝統思想の転換を通して

救国

1

富強の実現をもたらすぺき変法それ自体の正当

化根拠

いいかえれば個々の具体的政策論を根底で統

し支持する変革の基本的理念

I

新たな秩序原理が︑旧

来の聖人観︑伝統秩序観の転換を軸︑模索されたことであろう︒

-

5

-

(7)

することを通して︑

察したい︒ その思想史的意義-先駆的変法論の基礎をなす伝統的秩序原理転換の構造と意味を考

108

'

i

用﹂︑- ll-貴願﹁

一一

H稿﹂︵-

- l -

ll l

a

﹁覺

九-lf︑﹁

五︑七︑fl l l

︵一 l

一 一

氏︵

1﹁察1﹂

中 西

国大

近学

i

思学1

!論

同三

i1 :

l

合一1ljl

出 。 版第

i

fし 、

̲

三九年 八

11i

収年

'

﹁康

M

g

稿

n基づ

整時一上﹂︵︑廖

一 一

:

-︑そ通しし︑ 孔子し︑

ど見︑少

- l l-

: l

一 一 一

- ll-時

一-l -

-於地球︑矣︒

一 一

:i

'

;

ll-之

︑維王一︑'一時也︒︵- f

- l l-

-

-

(8)

章﹃康子内外篇﹄の世界観H基本的構造

康有為は︑

天地の理︑陰陽の

︵温

一 一一 一 ︶

:・天下氣質を舍きて豈異物有らんや

﹂ ︵

一 一 一 ︶

天地の若き

1 0 9

一 一一 一

:

一 一

︑その

-法之之︑月之

之内︑︑以

︵っ

︑し

-︒以上- l-- l l-

︑一

-︒﹁草堂通稿を示﹂﹁︒﹁民功篇﹂︑人し︑-l- r同之﹂︵

一一

一︶E

a

理公-l 9

﹂︵ -︶1大1

l- r西巴黎-

︑し

M

一 一

と思︑﹁

-

7

-

(9)

は則ち光電熱重相摩し相化すのみ

何ぞ所調る理あらんや

﹂ ︵

と述べるよう︑明らか所調る気の哲

学の立場に立ち

天を気

=

自然とみなしている︒それ故︑

夫れ性とは

氣質の發する所:::響えば附子の性は

大黄の性は涼

氣質の之れを爲すが如きなり

﹂ ︵

愛悪︶とあるよう

性を気質に規定された人物の天

性自然の素質として捉える

人も

陰陽之氣

を票けて生まれ︑自然の所与

である血気と心知から

構成されるが︑この血氣

形・

︶ っ

まり肉体を有するため

︑ o

凡そ血氣爲るの倫︑必ず欲有り-

-故欲とは

天なり︒

︶ o

人性の自然とは

食色なり:

とあるょうに

生物生命体として必然自然生存

欲をもっ︒

-これ対し︑人のもう

一 っ

の自然である心知

1 1 ﹁

は︑

心の

内に無形で存まっているが

肉体

の司

る生命作用

・別

おいて

なものは

み︑

不宣

なものは

うとぃう︑プ

l on :

プな反応を

︑ ︵

心の

外に発す

いいかえると

愛悪の発動根拠が

心の

内なる

︑即ち

で あり︑その

外における発動状態が

である

以上

愛悪

﹂ ︶ ︒

このように愛惡の情は︑本来生理的な反

感覚のにあるが︑

欲とは

愛の徴なり

喜とは︑愛の至りなり︒樂とは︑又た其の極至なり︒哀とは

愛の極至して得ざる

-

1i0

(10)

即ち所謂る仁なり

皆陽氣の發なり︒怒とは︑悪の徴なり

とは

悪の極至して得ざる

即ち所謂る義

なり

皆陰氣の發なり

︒ ︵

愛悪

とあるょう︑その発動状態に

︑ ﹁

喜欲樂哀

﹂ =

愛之

﹁ 一

﹂ - 1

惡之一屬と措定されるような

複雑な起伏

リェが生ずる段階になると

それは哀躍-

1

仁義をピクとする高度な人間的感情のベルに達する

要孩は沌純にして

愛悪有るも哀

なし

故に人の生まるるや惟だ愛惡有るのみ

一 一

mの生ずるや

人の

l-智自り出ずるなり

︒ ︵

愛悪

︶ っ

まり

人間は︑智

の発達段階や

後述するょうな智の生来的な資質程度応じて︑情の発動に相対的

な段差を生じるのである︒人の初生より固有なより生理的

感覚的な情の発動を愛悪

知能の発達伴うょり

ルな情の発動を哀Mn

一1 1

仁義とよび

この両者は︑

人の生有る︑愛悪仁義是れなり

﹂ ︵

愛悪

一 一

とあるよう

に︑人の智的営為の全体を覆うのである︒

さて

以上明らかなょうに︑天

-

自然の

物とされた人間は︑その智的側面おいても︑性

愛惡

の体用関係が

気の自らなる

として機能的に把握されることで︑依然として天の領域あった︒

それ故︑性情自体は︑

所調る善悪無き

ものとあるように

人為的な価値の領域から分離され

善悪の価値判

断に関らぬ無記性なものとされる

のみならず

この人間固有かに見えた智

愛悪の体用関係は

﹁康子内外

一 一

想史

lii

-

9

(11)

o

然りと雖も︑愛悪仁義は惟だ人心之れを有するのみあらず

禽獸の心と雖も亦た有す︒ :-豈徒だ

禽獸のみならんや

草木も亦た愛悪有り︑特だ愈々徴なるのみ

愛悪

︶ o

蓋し氣質窮する有れば

智も亦た窮する有り

而して哀體も亦た窮する有るなり︒

︶ o

智無ければ則ち愛悪無し

︒ ︵

とあるよう︑禽獣

愛悪

︑草木

愛惡

︶ ︑

から無生物

愛惡

をも含め︑万物普遍的な個別性の原理とし

般化される︒

112 いいかえれば︑万物共通し共有される究極の構成要素である気

が︑個々物々智を限定することを

通して︑物の個別性を決するということである︒こうして個物からすれば︑個別性の直接的根拠となる智

悪は

その万物

の遍在が確認される時︑人と物︑人と人とを平等視する契機となるが︑その反面︑

其の愛悪

大なる者は︑其の智の大なるを見︑其の愛悪少なる者は

其の智の少なるを験す

皆氣質之れを爲すなり:・

﹂ ︵

とあるように︑気質限定された相対的格差の発生が承認される時

万物に種別区分を与える差別性の根

拠ともなるのである

それ故︑人と禽獣が異なるのは

其の智おいて異なるのみ

とされるのは︑人の智が気質に限定されて

-

10

-

(12)

強大であり︑万物隔絶した秀逸性をも

ことをとらえてのことである

だから︑

o

其の智愈々推して愈々廣ければ

則ち其の愛惡愈々大して愈々節有り︒是に于て政教禮義文章生ず

皆智

の推なり︒

愛悪

--惟だ智無し

禽獸安ずるのみ

人惟だ智有れば

能く飲食宮室衣服を造作し︑之れを飾るに禮樂

政事文章を以てし

之れを條する倫常を以てし︑之れを結する義理を以てす

皆智の來なり

︒ ︵

とあるよう︑人は票受した強大な智

即ち理智の所産として︑人のみ固有可能な作為

価値の世界︑っま

り物質文明と社会秩序を形成するのである

いいかえれば

︑ ﹁

若し欲無ければ︑則ち惟だ死するのみ

﹂ ︵

とあるよう︑天与の自然である食色の

本来禁絶不能であり

むしろそれは遂げさせるべきもので

あるが

人のみ︑智の所産として

1 ︵ っ

まり自然を変容加工し

新たな物的価値を創造する固有の生産能力の所

産として

︶ 1 ﹁

飲食

宮室

衣服

等の物質文明を開花発展させ

個体の生命的欲求をより積極的充足させう

るのである

他方︑

欲有れば

則ち之れを縱いまませざるは莫し

﹂ ︵

忍爲

とあるように︑人性の自然である食色の欲

本来きゎまりなく︑人情の自然である喜怒哀楽は

本来むきだしのままであるが

人のみ︑智の所産とし

この内なる自然本性に

らい︑それを

制し︑情欲秩序を与える固有の自制能力

即ち

備えており︑人はこの

を方途として︑

禮樂

政敎

倫理

等の規範

秩序を設定遵守することによって

li3

-

1i

-

(13)

C :-

基本的意義

彼の基本的世界観とは大体このようなものである︒ここで

その思想史的意味をひとまず整理しておく︒康

自らも︑例えば

-程朱は則ち以て性は本善

其の悪なる者は情なりと爲す

皆性情を知らざる者なり︒

愛惡

等というように︑本書を通読するとその世界観が程朱の所調る理学を意識し

それ対抗して構築されたこと

社会秩序を形成するのである︒

夫れ人の形有りて而る後に智有り

智有りて而る後理有り︑理とは

人の立つる所なり

︒ ︵

人は︑智を根拠

人の作為において自然を加工し︑己の内なる自然をょり積極的遂げっつ

しかもその

欲望追求節度を生じ

人倫秩序

- 1 ﹁

を形成する︒しかし

それは

天理

即ち天与の先験的規範ではなく︑

人の智基づく後天的作為の結晶としての

人理

であった

︑人間本性は︑本来相近く

善悪の価値判断関らない自然の素材であるが︑

即ち後天的

人為属する修養と反復習慣のいかんに規定されて︑相違き度量の格差を生ずるのである

また後者の

まり人為

人事の積み重ねの結果として︑人の価値領域おいて善悪の相違が生ずるが︑

とはもとより

天理

はあらざる

人事之宜

であった︒

愛悪

-

12

-

1i4

(14)

性として読み換えられ

むしろ積極的に肯定された︒

子内外﹂の思想的意 は明らかである

この理学は︑形而上の理を万物の構成要素である形而下の気優位させ︑理を気の主宰とす

るが︑人間観においても

天の権威に保証された本来性としての

義理之性

︑っまり天の道徳賦命として先天

的に人間本性に組み込まれた

仁義礼智

︐ T

封建倫常を

先験的

至善

とする

またそれは︑気質と結合した

現実態としての

気質之性

及びそれ固有の

情欲

﹂ ︑ っ

まり道徳本性の発現を阻害し倫常秩序もとる私的

欲望

の契機を認めていた︒即ち

人間の道徳根拠を求め︑気

情欲規範秩序からの逸脱の不可

避的可能性をみ

気質の変更是正よる本性

の復帰を説くところ

理学的特色があるが

︑ ﹁

天理を存して人

欲を去る

とは

その口号であった

これに対して康は︑まず天を気

u

自然と提え直すことで︑道徳規範の根源とされた天の理法的権威性を否定

した

これと表要して︑性は気質規定された個物の天性自然を意味することなり︑かくてそれは先天的な

道徳賦命としての意味を失い

先験的な善の価値規定から自由となり

総じて機能ないし素材自体として無記

的に把握されるに至る

こうして

程朱理学において最も基本的な構造をなしていた

天理

1

人性

の結合が

根底から分断され

人は気=自然の

物として

天理の束縛から解き放たれるのである︒ここに︑この新しい

世界観を支える哲学的基軸が︑気を拠点として

性情の構造的意味転換を図ることによって構築された

即ち︑

従来︑気の所成として悪

の契機をはらむとされた人欲

1

情は

自然必然の人間本然の発露

っまり天欲

1

-

13

(15)

そしてこの性

u

智の発動状態を示すのが

であるが︑その意味内容っいても転換が図られている

目すべきは︑

愛惡

という個物とっての適・不適を属性形成の根本的契機とみなす即物的観点立脚し︑こ

れまで封建倫常の要位置づけられていた仁義を

それを愛悪連動させることよって︑気

=

性=智の発動

である

のうちに吸収したことである

こうして仁義は愛悪と対を成して情の内容を構成し

更にこの両

者は︑万物の属性を包括する最も基本的な範時となり

人間にあっては感覚

愛悪

感情

など︑心身作

用に関る機能を意味し

それ自体はルなものとして把握されていた︒そして人間の万物対する秀

逸性の根拠とされたのが︑気

1 1

自然の所為として人間高度に発達した強大な知能

I

総じて

であっ

具体的は︑人の自然本性である欲望をより積極的充足させる

外の

自然対する能動性としての生

-

14

-

次いで︑天理

1

人性の内実である四徳

五常の

一 っ

として︑仁統轄

別︶される過ぎなかった

気質

=

性の究極唯

の内容として規定し直された

即ち

恰も原子が分子を構成し︑分子が物性を決定す

るように︑元来層位

厚薄・明・

の措定されていない無記なる気質が︑個々物々内在する智

相対大小のパおいて規定し

ここ万殊の発生が保証されると同時に︑この気質限定さ

れた個物内在の智が︑

道徳本性ではない

機能素材としての個別性を直接決定するのである

こうして気質

=

性=智

大小

←個別性

u

万殊という気の

貢したが組み上げられる︒

1i6

(16)

産能力と︑欲望追求を節制する

内の

白然対する規制力としての秩序形成能力とを意味する︒その所産が

文明と社会であるが

それは人為︑作為の後天的世界

善悪の価値的世界の中核をなし

またその作為性故に︑

人理

と表現されるに至るのである

'

-

﹂うして︑自然の

物とされた人間は︑天の道徳賦命依拠することなく︑あくまで気

u

自然の

一 一

の中で

天性自然の秀逸な資質である

を根拠に︑天

対し人理を主張するのである

しかし︑ここ

でむしろ注日すべきは

以下の点である

t智なる者は︑外人世積み︑内人聰溶し

其の然る所以を知らず︑所調る天受けて自ら已

改む

む能わざるなり

︒ ︵

理學

:⁝・而して此の四者

1筆

有る所以の者は

皆智由る

人の大腦小腦有るや

腦氣筋の靈有る

都其の然るを知らざるなり

::

里人

萬億人の腦を合して智日に生ず

億萬世の人の腦を合して智日 に益々生ず︑是於て理出ず

︒ ︵

︶ o

・- :故に惟だ智のみ能く萬理を生ず︒

即ち

康は︑気

=

自然の立場から

︑ ﹁

人理

形成の根拠である

理学のように道徳本性として抽象化す

るのでも

その存在の場を心臓に求めるのでもなく

まだ脳の発達や機能を生物進化の

一 一

として十分

説明しえてはいないが

正に人の頭脳

1

智の自然的物理的実体的根拠として把握しようとした

﹁康子内外﹂の思

1 l 7

-

15

(17)

総じてi'

o

夫れ天の始め︑吾得て知らざるなり

氣を積みて天と成爲り︑摩

の久しくして︑熱重の力生じ︑光電生じ︑

原質變化して成るが若し︒是於て日を生じ︑日地を生じ

地物を生ず︒

a

︶ o

天地の理

陰陽のみ︒其れ氣に發して︑陽は温熱と爲り

陰は乾冷と爲る

濕熱は則ち生發︑乾冷は則ち枯

摘--諸天は皆な此の濕熱の氣を得て︑展轉して相生ず︒近天濕熱の氣を得て︑乃ち諸日を生ず

日濕熱の

氣を得て︑乃ち諸地を生ず

地濕熱の氣を得て︑蒸鬱して草木生ず︒而して禽獸生ず

已にして人類生ず

濕熱の氣を得て︑上其の腦を養い︑下其の心を養う︒濕なれば則ち仁愛生ず︑熱なれば則ち智勇出ず

仁愛

智勇を積みて宮室飲食衣服以て其の身を養う有り︒仁愛智勇を積みて禮樂政敎倫理以て其の治を成す有り︒

-

16

-

のである︒

いえば

恐らく康は︑人間及び動物等︑現脳を内蔵するものっいては

︑ ﹁

の具在

人之

張而弱也

︶ ︑

及び愛悪

感覚

ないしは仁義

感情

の発動を考え

植物や無生物ついては︑むし

愛悪

という原初的な属性の顕現から

逆に個別性の根拠である無形の

の潜在を推定する

也︑

之于愛悪

︑という段差を考えていたよう思われる

ここで万物遍在する

大小

﹂ ﹁

強弱

おける脳の無有ないしはその発達程度差として読み換える時︑康が

応の合理性をもって智及びその差等

段差

愛惡

を設け︑個別性

n

万殊の物理的根拠として脳を意識していたことが︑推測される

︒ ︶

118

(18)

1とあるよう︑康は︑宇宙を物理現象とみなし︑地質︑生物等ける進化の基本的︑とく人類 おける智-脳の特異な発達とその意味をある程度認識していたのである︒そしての理解の上て︑自

然進化の到達点を示すと同時︑社会進化の起点をなす︑換言すると

- 1

自然と

=社会文明を結びっ

けるとして︑自然的物理的実体である頭脳︑ないしその機能を意味する

﹂ 1

つまり人類進化の

-

を見出したのであろう︒

ここに︑清末気の哲学は︑西洋自然科学の成果を背景︑主初歩的進化論の洗礼を通して︑性-

1

天性自然

を智

と規定し︑気

1 1

1 1

︶ 1

人理という大枠を組み︑性情の構造的意味転換を図ることて︑

o

所謂る性情無きなり

︒ ︵

E

一 一 ︶ o

所調る善悪無きなり

︒ ︵

何ぞ所調る理あらんや

︒ ︵

とあるよう

程朱理学の基本的構造である天理

1

人性

っまり道徳根拠としての天から脱却したのである

言すれば康は︑なぉ伝統的依拠しながらも

その思考の基軸いて︑自然科学的人間理解

顕著な

接近を示しっっ︑その論理的帰結︑即ち気の哲学の清末的展開の帰結を

蓋し天欲して人理なり

︒ ︵

子内篇﹂

119

-

l 7

(19)

という

集約し

天理

1

人欲の程朱理学の構造を百八十度顯倒せしめ︑とりわけて人

﹂ -

脳を根

拠とする

人理

=人倫秩序の後天的作為性を關明したのである

1

m

l

︵ l︶地球之盛︑近︒近︑︑人之︑西-ilili -

調大木也︒︑大

西也︒球之︒⁝

e

-

第二章西洋自然科学の受容

本章では︑前章での検討の結果予想される康有為の西洋自然科学受容の問題︑とく生物進化っき︑彼自

身の著作や同時代の関連資料を通して︑更掘り下げて検討したい︒

-

18

-

-康有為の他の著作

まず康有為自身の他の著作を検討してみると︑第

上書

︵ 一

失敗後の蟄居中の研究成果であり︑特

色ある書論として知られる廣藝舟雙福

原書第

(20)

文字は何を以て生ずるや︒人の智より生ずるなり︒虎豺の張

龍風の奇も文字を造爲する能わざる

而る 人獨り能く之れを創るは︑何ぞや

其の身峙立し︑首函清陽にして

血氣の濁の照ずる所と爲らざるを以

てなり

智獨り靈なり︑凡そ物の中

倒植の身︑横立の身は

則ち必ず大愚︑必ず文字無し

血氣其の

首を

ずるを以てなり

聰明弱きなり

- :・故凡そ峙立の身爲る

人體と日う者は︑必ず文字有りと

調うなり︒其の智萬物首出し

自ら能く制造し︑自ら已む能わざるを以てなり︒

と見えているのが︑注意される︒

ここでは

人類にのみ普通的文字創造をもたらした直接的根拠とされる人間の

力が

何故それを

可能とする程の傑出した霊妙な機能を生じ得たのかが

動植物との比較おいて考察されている

かくて︑地

っこみ逆さに生ずる植物

とも︑横だぉしなって地を這う動物

とも異なる人

0- '1

類に国有の形態上の特質として直立

時立

が注意される︒更に

直立歩行と人間の頭蓋の特異な発達と

の因果関係をある程度意識した上であろうか

人間の頭蓋

西

に秘められた清逸な機能が

動植物とは異

なって生命的欲望に翻弄されることを抑止し

ひとり人類に靈妙な智力の結実をもたらした究極的根拠と見な

されている

また

執筆年次は不明であるが︑人類の進化に

いて考察している

民功篇

無極の始︑氣を積みて熱を生じ︑熱を積みて金を生じ︑金

を積みて

土石を生じ

土石を積みて草木を生

-- 9﹂の史的意

l21

-

19

(21)

草木を積みて蟲を生じ︑蟲を積みて禽獸を生じ

禽獸を積みて人を生じ

人を積みて聖哲を生ず

草木

は側生して無知

蟲は横生して能く動く

禽獸は形體を節する人と同じ︑蓋し遠く草木蟲魚に別つ︑而

横生に滞れば︑血氣之れ灌し

其の靈明を濁す

惟だ人のみ天を載き地を履み

︑一 一

然翹立し︑萬物の

絶出し

然る後出でて最智︑以て萬物に君たる者なり

とある︒

動植物の分類が明細となっているが

それらの包括的な分類基準が︑生物の基本的な形態上の特質である側

︑横生

一岡

一 一 ︶

一 一

然組立

1 1

直立歩行

の三者おかれている点は︑前引資料と変ていない

ここでは︑素朴ながらも

進化の観念が明示されていること注日しておきたい

即ち︑宇宙ないしは地球進

化の過程で生命が発生し

しかも後生のものほど発達進化が著しく︑人類が最後出でか

最智と位置づけられ

ている点である︒

最も注目すべき資料は

十年来の収集になる日本書の密目であり

変法論形成の f

一 一 一

たる知的源泉と

しても興味深い

日本書目誌

﹂ ︵

九七

見える次の

︑生理門

である

夫れ天の物を生ずる︑機人の機を製するが如︿︑其の精粗の異因りて

以て靈蠢の殊と爲る︒倒生の者は

直生の者は智︑横生の者は愚智半ばす

腦の國會の者は智︑點綫の者は愚︑小國の者は點蚩半ばす

を製する

人の腦國至りては︑電機の大にして繁多︑機の物して奇巧

天地の内自り

未だ之れに比す

20

-

li

m

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