聲
字
實
相
論
に
封
す
る
考
察
森 田 龍 倦 一、 聲 な る 現 象 聲 な る 現 象 が 如 何 な る 原 因 に よ つ て 生 す る か に つ い て、 大 師 は 聲 字 實 相 義 に お い て 二 繹 を 設 け ら れ て ゐ る。 そ の 第 一 繹 に 云 く、 内 外 風 氣 綾 登。 必 響 名 日 レ 聾 也。 響 必 由 レ 聲。 聲 則 響 之 本 也。 思 ふ に こ れ は 智 論 第 五 の 繹 に よ ら れ し も の で あ る。 そ れ に よ ら ば、 有 情 の 聲 は す べ て 内 外 二 風 の 和 合 關 係 に よ つ て 生 す る。 内 風 と は 梵 語 に て は 優 陀 那 ( あ と 町 ) と い ひ、 そ は 腎 臓 に お け る 丹 田 風 の こ と で あ る。 こ の 内 風 が 曇 語 意 志 に 動 か さ れ て 口 腔 に 達 す る と、 外 風 ( 塞 氣 ) の 塵 迫 に 遇 ひ 降 つ て 膀 部 を 撃 ち、 そ の 反 動 が さ ら に 昇 つ て ( 一 ) 胸、 ( 二 )咽、 ( 三 )頂、 ( 四 ) 断、 ( 五 ) 薗、 ( 六 ) 舌、 ( 七 )唇 の 七 虜 に ふ れ て 音 響 を 生 じ、 そ れ が 口 よ り い つ る と き に 始 め て 聲 て ふ 現 象 と な る と い ふ の で あ る。 云 く、 如 二 人 欲 レ語 時 一。 口 申 風 名 二 憂 陀 那 一。還 入 至 レ 膀。 鯛 レ 隣 響 出。 響 出 時 鯛 二七 庭 一退。 是 名 二 語 言 一。如 二 偶 説 一。 風 名 二 憂 陀 那 一。鯛 レ 麟 而 上 去。 是 風 七 庭 燭。 頂 及 断 歯 唇。 舌 咽 及 以 胸。 是 中 語 言 生。 順 正 理 論 (六 十 ) に は 属 身 風 に ( 一 ) 入 息 風、 ( 二 ) 出 息 風、 ( 三 ) 登 語 風、 ( 四 ) 除 棄 風、 ( 五 ) 随 轄 風、 ( 六 ) 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一聲 字 實 相 論 に 到 す ろ 考 察 二 動 身 風 の 六 種 あ り と い へ る が、 そ の 第 三 の 磯 語 風 が 即 ち こ の 憂 陀 那 の こ と で あ り、 こ れ に よ ら ば 息 風 と は 別 種 の も の と 見 ら れ て ゐ る。 し か 乃 に 金 七 十 論 ( 中 ) に は 前 と 同 様 に ( 一 ) 波 那、 ( 二 ) 阿 波 那、 ( 三 ) 優 陀 那、 ( 四 ) 婆 那、 ( 五 )裟 摩 那 の 五 風 を あ げ、 そ の ( 三 ) を ﹁ 我 欲 レ 上 レ 山。 我 勝 佗 不 レ 如。 我 能 作 レ 此。 是 風 若 多 倉 二 人 自 高一。 謂 我 勝 我 富 等。 是 優 陀 那 事 ﹂ と い へ る が、 こ は け だ し 登 語 風 の こ と で は な い。 か の 小 止 観 に ﹁ 有 師 云。 膀 下 一 寸 名 二 優 陀 那一。 此 云 二 丹 田 一 ﹂ と い ひ、 類 維 圖 翼 に ﹁ 石 門 一 名 二命 門一。 一 命 二 丹 田一。 在 二膀 下 二 寸 一﹂ こ い ふ な ぞ は そ の 所 在 で あ る。 ま つ 聲 響 の 不 圖 は 智 論 ( 六 ) に ﹁ 從 レ聲 有 レ 聲 名 爲 ン響 ﹂ と い ひ、 悉 曇 藏 ( 二 ) に ﹁ 當 レ 字 直 呼 日 レ 聲。 並 レ 字 助 響 日 レ 韻 ﹂ と い へ る と ほ り、 例 せ ば ﹁ カ ﹂ な る 本 音 に ﹁ ア ﹂ な る 末 音 を 有 し、 ﹁ キ ﹂ な る 本 昔 に ﹁ イ ﹂ な る 末 膏 を 有 す る が 如 き 本 末 禮 用 の 關 係 が こ れ で あ る。 要 之、 第 一 羅 は 別 し て 有 情 聲 の 生 因 を 明 か せ し も の で あ る。 こ れ に 封 す る 第 二 繹 は、 総 じ て 情 非 情 聲 の 生 因 を 四 大 相 撃 に 蹄 す る に あ る。 云 く、 四 大 相 鯛 音 響 必 態 名 日 レ聲 也。 こ れ は け だ し 婆 沙 論 ( 九 十 ) に ﹁ 鷹 レ作 二是 説一。 生 二 欲 色 界 一有 情 身 中 多 四 大 種。 在 二 一 身 内 頓有 二 相 撃 憐者 便 螢 二 生 聲一。 不 二 相 撃 一 即 無 二 聲 起 一﹂ と い ひ、 順 正 理 論 ( 一 ) に ﹁ 善 逝 聖 敷 成 作 三 是 言一。 聲 是 耳 根 所 取 境 界。 是 四 大 種 所 造 色 性 ﹂ と い ふ に よ り し も の で あ る。 非 情 聲 に は 内 外 風 の 和 合 て ふ こ と こ れ な き も、 四 大 相 撃 の 原 因 に よ る は 明 ら か な 事 實 で あ り、 ま つ 有 情 聲 に し て も、 そ の 生 因 つ る 内 外 風 の 自 禮 が 既 に 四 大 種
に 外 な ら の か ら、 こ の 四 大 相 撃 は 普 遍 的 の 本 因 な り と い は な け れ ば な ら 漁。 し か ら ば 以 上 の 原 因 に よ つ て 生 す る あ ら ゆ る 聲 を 如 何 に 分 類 し 整 理 し う る か と い ふ に、 婆 沙 論 ( 十 三 ) 入 阿 既 達 磨 論 ( 上 ) 及 び 倶 舎 論 ( 一 ) 等 に は、 こ れ を ま つ 有 情 性 の 四 大 種 よ り 生 す る も の と、 非 情 性 の 四 大 種 よ り 生 す る も の こ に 二 大 別 し、 次 に は そ の 各 と よ り 事 物 を 詮 表 し う る も の と 詮 表 し え ざ る も の こ に 二 別 し て 四 つ と な し、 架 に は ま つ そ の 四 つ よ り 各 と 快 戚 を 生 せ し む る も の と、 不 快 威 を 生 せ し む る も の と に、 二 別 し て 合 計 八 種 と す る の で あ り、 即 ち 左 表 の 如 く で あ る。
有
執
受
大
種
爲
因
非
有
情
名
晴
情
名
伽不 可 意 聲 ( 四 ) 可 意 聲 ( 三 ) 不 可 意 聲 ( 二 )可
意
聲
(
こ
無
執
受
大
種
爲
因
非
有
情
名
有
情
名
不 可 意 聲 (入 ) ﹁可 意 聲 (七 ) 不 可 意 聲 ( 六 ) 可 憲 撃 ( 五 ) こ の な か、 有 執 受 大 極 と は 心 法 に 執 受 せ ら る ゝ 四 大 種、 ま つ は 外 境 を 執 受 し て 苦 樂 等 を 威 し、 こ の 聲 字 實 相 論 に 封 す ろ 考 察 三竪 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 四 戚 畳 と 相 離 れ ざ る 四 大 種 と い ふ 義 で あ り、 無 執 受 大 種 と は 心 法 に 執 受 さ れ す、 ま つ は 苦 樂 等 の 戚 畳 と 件 は ざ る 四 大 種 と い ふ 義 な る が 故 に、 要 は 有 情 性 の 四 大 種 と 非 情 性 の 四 大 種 と で あ る。 次 に 有 情 名、 非 有 情 名 と は 有 詮 表、 無 詮 表 の こ と で あ り、 衣 に 可 意、 不 可 意 と は 快 威、 不 快 戚 の こ ご で あ る。 故 に そ の ( 一 ) は 有 情 の 言 語 に し て し か も 封 者 に 快 戚 を 與 ふ る も の で あ り、 ( 二 ) は そ の 不 快 戚 を 與 ふ る も の で あ る。 ( 三 ) は 有 情 聲 ば る も 無 詮 表 に し て し か も 快 威 を 與 ふ る も の で あ り、 ( 四 ) は こ れ に 反 す る。 例 せ ぱ 次 で の 如 く 拍 手 等 の 聲 の 適 否 こ れ で あ る。 ( 五 ) ( 六 ) は 非 情 聲 に し て し か も 有 詮 表 な る う へ の 適 否 な る が、 こ は 倶 舎 論 に よ つ て 考 ふ る に、 例 せ ぱ 色 界 の 天 人 が 定 力 に よ り 一 化 人 を 欲 界 に 現 じ て 登 語 せ し む る が 如 き は、 既 に 化 人 な る が 故 に そ は 非 情 性 の 四 大 種 で あ り、 し か も 現 に 登 語 す る が 故 に 有 情 名 に し て 適 否 の 別 あ る ゆ ゑ ん で あ る。 ( 七 ) ( 入 ) は か の 化 人 の 拍 手 等 の 聲 の 適 否、 及 び 山 河 草 木 金 石 等 の そ れ で あ る。 観 彌 勒 上 生 経 を 見 る に、 兜 率 天 宮 に 五 大 紳 あ り て そ の 第 一 を 寳 瞳 と い ひ、 寳 珠 を 雨 ら し て 宮 矯 に 散 す る と、 そ れ が 無 量 の 樂 器 と な つ て 塞 中 に か ゝ り、 無 量 音 を い だ し て 衆 生 の 意 に 適 す る。 ま つ 五 百 億 の 天 子 が、 五 百 億 の 天 女 を 現 じ て 妙 法 を 歌 は し む る の で あ る が、 こ の な か、 前 例 は 即 ち (七 ) に あ つ り 後 例 は 即 ち ( 五 ) に あ つ る。 以 上 は 入 聲 の 大 要 な る が、 雑 心 論 に は こ の 外 に 爾 性 四 大 種 混 合 の 聲、 即 ち 奏 樂 等 の 聲 を 別 立 す る も、 前 説 よ り し て は、 そ は 明 ら か に 非 情 性 に 属 す べ き も の と し て そ の 別 禮 を 認
め な い 。 上 述 に よ つ て こ れ を 考 ふ る に 、 総 じ て 聲 に 膿 相 用 の 三 義 が あ る。 い は ゆ る 四 大 種 は そ の 膿 で あ り 、 入 聲 は そ の 相 で あ り 、 音 響 は そ の 用 で あ る 。 二 、 聲 の 内 容 聾 字 義 に よ ら ば 、 聲 を 内 聲 の 文 字 と 外 聲 の 文 字 と に 分 け ら れ て あ る 。 い は ゆ る 内 聲 の 文 字 と は 十 界 有 情 の 言 語 で あ り 、 外 聲 の 交 字 と は 山 川 草 木 、 地 籟 天 籟 等 の 非 情 の 聲 で あ る 。 外 聲 の 交 字 も そ れ ぐ に 一 種 の 理 趣 を 詮 表 し つ ゝ あ り と 錐 も 、 そ は 極 め て 微 細 な る が 故 に 凡 夫 の 解 す べ か ら ざ る と こ ろ の も の で あ る 。 故 に こ れ は し ば ら く 措 い て 論 せ す 、 但 し 内 聲 の 内 容 を な す 文 ・ 名 ・ 句 の 三 つ に つ い て 考 察 し や う 。 凡 そ 思 想 を 機 表 し て 他 に 理 解 を 與 ふ る 聲 が 言 語 と い は れ る の で あ り 、 然 ら ざ る も の は 言 語 と は い は れ な い。 故 に 有 情 の 聲 に は 、 お の つ か ら 詮 表 と 無 詮 表 と の 二 種 が あ る 。 如 何 に し て こ の 二 種 に 分 る ゝ か と い ふ に 、 そ は 能 詮 の 定 量 法 刷 に 順 癒 す る と し か ら ざ る と に 原 因 す る 。 し か ら ば 能 詮 の 定 量 法 則 と は 何 ぞ や と い は は 、 邸 ち 交 ・ 名 ・句 の 三 つ が こ れ で あ る 。 こ の な か 、 文 と は 名 句 の 基 本 輩 位 と な る 文 字 の こ と で あ る 。 こ の 文 字 を も し 嚴 密 に 属 分 す れ ば 、 文 と 字 と は そ の 梵 語 が 別 な る と ゝ も に 義 も ま つ 別 で あ る 。 ま つ 梵 語 に つ い て い は ゞ 、 倶 舎 頚 疏 ( 五 ) に ﹁ 梵 云 二 便 繕 那 一唐 云 レ 文 ﹂ と 文 の 梵 語 を 示 し 、 大 疏 ( 十 四 ) に ﹁ 字 者 梵 云 二 嘱 刹 羅 ﹂ と い ひ 、 ま た ﹁ 字 者 梵 有 三 一音 一。 一 名 二 阿 刹 羅 一也 是 根 本 字 也 。 二 者 哩 比 碑 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 五
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 六 是 檜 撫 字 也 ﹂ ( 十 七 ) と 字 の 梵 語 を あ ぐ る こ れ で あ る。 次 に 義 別 の 瓢 を い は ゞ 、 文 と は 彰 顯 の 義 で あ り 字 とし は 不 動 の 義 で あ る 。 彰 顯 の 義 と は 、 交 に 近 く は 名 句 を 彰 は し 遽 く は 義 を 顯 は す の 力 あ る を い ひ 、 不 動 の 義 と は 、 字 に 彰 顯 の 所 依 と な つ て 自 性 を 改 め ざ る の 力 あ る を い ふ の で あ る 。 例 せ ぱ ﹁ ハ ナ ﹂ ( 花 ) と い ふ と き 、 ﹁ ハ ﹂ と い は れ ﹁ ナ ﹂ と い は る ゝ は 文 な る が 、 こ れ ら の 文 に よ つ て 名 句 が 彰 は れ 、 ま つ 名 句 に よ つ て そ の 義 が 顯 は れ る 。 し か る に ﹁ ハ ﹂ は こ こ ま で も ﹁ ハ ﹂ に し て ﹁ ナ し で は な く 、 ﹁ ナ ﹂ も ま つ ざ こ ま で も ﹁ ナ ﹂ に し て ﹁ ハ ﹂ で は な く 、 各 と 自 性 を 守 つ て 不 動 で あ る 。 こ の 不 動 の 義 あ る こ と に よ つ て は じ め て 彰 顯 の 義 が 成 立 す る か ら 、 字 は 磯 に し て 文 は 用 な る こ と こ れ で あ る 。 し か る に 禮 用 は 相 離 れ ざ る が 故 に 、 こ れ に よ ら ば 文 即 字 な る と ゝ も に 字 即 文 で あ る。 故 に 唯 識 論 ( 二 ) に ﹁ 文 即 是 字 爲 三 一所 依 こ と い ひ 、 同 述 記 に こ れ を 繹 し て ﹁ 文 者 彰 義 。 與 レ ニ 爲 レ 依 能 顯 レ義 故。 而 腱 非 レ顯 。 字 無 二 改 韓 齢義 。 是 其 字 農 文 功 能 。 功 能 即 レ 鷺 故 言 二 文 即 字 こ と い つ て ゐ る 。 次 に 名 句 の 成 立 を い は ゾ 、 文 字 が 合 し て 名 と な り 、 名 が 合 し て 句 と な る の で あ る 。 例 せ ぱ ﹁ ハ ﹂ ﹁ ナ ﹂ の 二 字 が 合 し て ﹁ 花 ﹂ な る 一 名 と な り 、 ﹁ ク ﹂ ﹁ レ ﹂ ﹁ ナ ﹂ ﹁ イ ﹂ の 四 字 が 合 し て ﹁ 紅 し な る 一 名 と な り ﹁ 花 ﹂ と ﹁ 紅 ﹂ と の 二 名 が 合 し て ﹁ 花 は 紅 ﹂ て ふ 一 句 が 成 立 し 、 こ ゝ に 始 め て 花 は 黒 き に も 非 す 青 き に も 非 す 紅 い な り と の 義 理 が 顯 は る ゝ 、 故 に 唯 識 論 に は ﹁ 名 詮 自 性 。 句 詮 差 別 ﹂ と い つ て あ る 。 以 上 の 文 ・ 名 ・ 句 を ま つ は 言 ・ 名 ・ 成 立 と も い ふ が 、 大 師 は 金 剛 頂 経 開 題 に そ の 例 を 示 し て 曰 く 、
は ぎ ら 梵 言 名 成 立 者。 一 字 日 レ 言。 二 字 日 レ名 。 多 字 成 立 亦 名 レ 句 也 。 今 言 二可 早一。 初 4 字 是 言 次 や 字 亦 言 。 う し ゆ に し や た お ぎ や た 二 言 合 表 二 一 金 剛 名一。 是 則 二 字 名 。 次 蚤 繍 鱗 。 此 亦 三 字 合 表 二 一 頂 名一。 次 苓 醍 と 苓 。 此 亦 四 字 合 顯 二 一 如 來 名一。 如 ン 此 一 字 二 字 乃 至 三 四 字 。 合 詮 二 一 物 名一。 積 レ名 成 レ句 。 聚 レ 句 爲 レ 頚 。 こ ゝ に は ﹁ 一 字 日 言 ﹂ と い つ て 名 は 二 字 以 上 に 限 る か の や う に 聞 ゆ る も そ の 實 、 現 に ﹁ キ ﹂ ( 木 ) と い ひ ﹁ ハ ﹂ (葉 ) と い ひ ﹁ ナ ﹂ ( 茱 ) こ い ふ が 如 き は 、 一 字 の 言 が 直 ち に 名 で あ る か ら 一 字 名 あ る こ と 勿 論 な る も 今 は し ば ら く 多 分 の 例 に よ つ て 二 字 以 上 を 名 と い ふ の で あ る 。 故 に ま つ 下 に 至 つ て は ﹁ 一 字 二 字 乃 至 三 四 字 。 合 詮 二 一 物 名 こ と い つ て あ る 。 ま つ 陀 羅 尼 義 ( 全 集 十 唄 ) に は 、 名 因 、 名 果 の 二 義 を 分 別 せ る が 、 そ の 要 に 云 く 、 名 因 と は 字 ( 一 字 ) と 字 身 ( 二 字 ) と 多 字 身 ( 三 字 以 上 ) と の 三 つ に し て 、 こ れ ら が み な 名 を 構 成 す る 素 因 な る を い ひ 、 名 果 と は 名 身 ( 二 名 ) と 多 名 身 (三 名 以 上 ) と 、 句 ( 一 句 ) と 句 身 ( 二 句 ) と 多 句 身 ( 三 句 以 上 ) と の 五 つ に し て 、 こ れ ら は 名 が 集 つ て 成 立 せ る 結 果 な る か ら で あ る。 そ し て 名 因 の 例 を あ げ て 曰 く 、 ﹁ ハ ﹂ ( 字 ) 、 ﹁ ハ シ ﹂ (字 身 ) 、 ﹁ ハ シ ラ ﹂ (多 字 身 ) と い ふ 風 に 次 第 に 累 加 し て ﹁ 桂 ﹂ な る 名 が 出 來 る 、 こ れ が 邸 ち 名 因 で あ る 0 次 に ﹁ 柱 ﹂ 、 ﹁ 壁 ︹ は 名 身 で あ り 、 ﹁ 柱 ﹂、 ﹁ 壁 こ 、 ﹁ 棟 ﹂ は 多 名 身 で あ り 、 ﹁ 桂 朽 ﹂ は 句 で あ り 、 ﹁ 柱 樗 ﹂ 、 ﹁ 壁 破 ﹂ は 句 身 で あ り 、 ﹁ 柱 朽 ﹂ 、 ﹁ 壁 破 ﹂ 、 ﹁ 棟 折 ﹂ は 多 句 身 に し て 、 こ れ が 即 ち 名 果 で あ る と 。 婆 沙 論 ( 十 四 ) に は さ ら に 委 し く こ の 意 昧 を 分 別 せ る が 、 左 に そ の 要 を 圖 し て 例 謹 を あ げ て 見 る 。 聲 字 買 相 論 に 封 す る 考 察 七
聲 字 實 柑 論 に 封 す る 考 察 八
(長 句 廿 六 字 以 上 こ の な か 、 六 字 以 下 の 短 句 ご は 、 喩 伽 論 に ﹁ 恭 二 三 寳一。 親 二 善 友一。 修 二 無 量一。 最 爲 レ 後 ﹂ と い ふ が 如 き は 三 字 一 句 の 例 で あ り ( 金 剛 頂 開 題 鋤 四 、 右六 ) 、 四 字 ま つ は 五 字 を 一 句 と す る は 常 の こ と で あ る。 ま つ 八 字 を 慮 申 句 と い へ る が 、 婆 沙 論 に は ﹁ 諸 維 頚 多 依 二 此 法 唱﹂ と い ひ 、 南 海 寄 蹄 傳 ( 二 ) に は ﹁ 凡 言 二 一 頚 鵯乃 有 二 四 句一。 一 句 入 字 。 総 成 二 三 十 二 言 一﹂ と い ふ が 如 く 、 諸 経 論 の 頚 の 多 く は こ の 式 に よ つ て ゐ る 。 密 家 に お け る 四 智 讃 、 心 略 讃 、 乃 至 大 疏 ( 五 ) に あ ぐ る 阿 利 沙 (歎 徳 ) の 偶 の 如 き ま つ こ れ で あ る 。 も し そ れ 十 二 字 二 句 の 普 賢 行 願 讃 や 、 十 四 字 一 句 の 吉 慶 讃 等 は 後 句 の 分 齊 で あ る 。 字 の 多 少 に 論 な く 四 句 を 一 頚 と す る こ と は 普 逸 な る も 、 し か し 眞 實 経 文 句 に ﹁ 上 代 爾 句 爲 二 一 偶一。 後 世 四 句 爲 二 一 頚 一﹂ と 判 じ て あ り 、 な ほ 寄 蹄 傳 に は ﹁ 更 有 二 小 頗 大 碩 一不 レ 可 二 具 述 一 ﹂ と い つ て 種 々 の 様 式 あ る こ と を 示 し て ゐ る 。 三 、 聲 名 句 文 の 假 實 言 語 と い は る ゝ 聲 の 内 容 は 交・ 名 ・ 句 の 三 つ な る が 、 名 ・ 句 の 本 質 は 文 で あ り 、 文 の 本 質 は 字 な る が 故 に 擶 す れ ば 輩 に ﹁ 字 ﹂ の 一 字 を も つ て こ れ を つ く す こ と が 出 來 る 。 故 に 大 師 の 聲 字 義 に は 総 じ て 聲 字 と の み い ひ 、 別 し て 聲 文 名 句 と い は れ ざ る ゆ ゑ ん で あ る 。 要 す る に 、 聲 上 の 長 短 高 下 、 清 濁 屈 曲 等 の 愛 化 が 文 で あ り 、 文 の 一 定 不 動 な る と こ ろ が 字 で あ る 。 故 に 聲 字 義 に は ﹁ 聲 登 不 レ 虚 必 表 二 物 名 一號 日 レ 字 也 ﹂ と い ひ 、 ま つ は ﹁ 五 音 入 音 。 七 例 入 轄 。 皆 悉 待 レ聲 起 。 聲 之 詮 レ 名 必 由 二 交 字 こ と い つ て あ る 。 大 聲 字 實 租 輪 に 封 す ろ 考 察 九
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一 〇 乗 義 章 ( 一 ) の 三 藏 義 に 文 ・ 名 ・ 句 の 關 係 を 明 か す 一 籔 は 、 よ く 理 を つ く す が 故 に 今 こ れ を 抄 出 す る 。 云 く 、 名 字 句 等 三 種 何 別 。 長 短 屈 曲 高 下 之 法 。 説 レ 之 爲 レ字 。 舜 字 表 レ 法 説 以 爲 レ 名 。 拘 二 攣 名 字 一共 相 属 著 。 以 成 二文一。 説 レ 之 爲 レ 句 。 直 説 音 聲 表 レ 法 便 足 何 用 学 等一。 若 直 昔 聲 不 下 與 二 字 法 一和 合 相 癒 上 不 レ 成 二 言 語一。 與 二 風 鈴 等 音 聲 無 別 。 要 與 レ字 合 方 成 三 言 語一。 錐 下 與 レ 字 合 得 占 成 一言 語一。 若 賞 寸 不 下 與 二 名 法 和 癒 よ。 不 丙 得 以 レ 此 表 乙 呼 前 法 既 良 以 與 二 彼 名 法 一相 慮 故 日 レ 表 レ 法 。 錐 レ 得 レ 表 レ 法 。 若 當 丁 不 下 與 二 句 法 一相 慮 上。 名 字 分 散 不 丙 成 乙 交 頗 頭 良 以 與 二 彼 句 法 一相 癒 故 。 揚 二 字 等 聯得 レ成 二 文 頬 偶 句 差 別一。 も し そ れ 倶 舎 、 唯 識 等 の 意 よ り こ の 文 ・名 ・ 句 を 分 別 せ ぱ 、 こ の 三 つ は 三 界 に お い て は 欲 界 及 び 色 界 の 初 繹 に の み 限 り 、 第 二 灘 以 上 に は 通 じ な い 現 象 と 見 ら れ て ゐ る 。 何 故 な ら ば 、 言 語 は す べ て 尋 ( 麓 分 別 ) 伺 ( 細 分 別 ) の 心 所 よ り 起 る も の な る が 、 第 二 藤 以 上 は 既 に 無 尋 無 伺 地 な る に よ る か ら で あ る と ま つ 曰 く 有 情 数 の 囁 に し て そ の 性 は 無 覆 無 記 な り と 。 そ は こ の 三 つ は 言 語 と 相 離 れ ざ る も の な る が 、 言 語 は つ ゾ し 有 情 の み に 限 ら る ゝ か ら で あ り 、 ま つ そ の 自 艦 が 雰 物 非 心 な る が 故 に 、 從 つ て 非 善 非 悪 な る に よ つ て ゞ あ る 。 非 物 非 心 の 法 は い は ゆ る 不 相 態 行 法 と い ひ 、 倶 舎 に あ り て は 十 四 種 を 立 て 、 喉 識 に あ り て は 二 十 四 種 を 立 つ る が 、 こ の 三 つ は そ の 何 れ に も こ れ を 撮 す る 。 倶 含 論 の 第 五 に 聲 ・文 ・名 句 の 四 つ に 封 す る 経 部 と 有 部 と の 論 孚 を 廣 述 せ る が 、 要 す る に 、 文 名 句 は 露 物 を 詮 顯 す る つ め の 約 束
と し て 聲 上 に 假 立 す る に す ぎ な い か ら 、 そ の 別 膿 の 認 む ぺ き も の こ れ な し と い ふ の が 経 部 の 所 見 で あ り 、 こ れ に 封 し て 、 こ の 三 つ は 聲 を 離 れ て は 存 立 し が つ き も 、 し か し 能 詮 力 あ る 自 髄 こ し て の 宇 宙 の 實 在 で あ る 。 つ と へ ば か の 藤 羅 の 類 が 、 松 柏 に よ ら す し て は 存 立 し が つ き も 、 し か も 松 柏 の 外 に そ の 自 騰 こ れ あ る が 如 し と の 實 在 説 を 圭 張 す る の が 有 部 宗 で あ る 。 衆 賢 の 順 正 理 論 ( 十 四 ) に は こ の 問 題 に 劉 し 、 敏 理 の 二 謹 に よ り 忠 實 に 己 が 有 部 宗 を 擁 護 せ む と つ と め て ゐ る 。 そ の 数 謹 ご は 、 経 に ﹁ 語 力 文 力 ﹂ と い ひ 、 ま つ ﹁ 如 來 獲 得 希 有 名 句 文 身 一 ﹂ ご い ふ こ れ で あ る 。 も し 語 即 文 な ら ば 語 力 以 外 に 交 力 を 立 つ る の 要 が な く 、 ま た 既 に 塞 無 の も の な ら ば 獲 得 し や う が な い 。 そ の 理 謹 と は 、 か の 聲 な く し て 密 に 脱 句 を 諦 す る が 如 き 、 こ れ 即 ち 呪 句 の 交 字 が 聲 以 外 に 別 在 す る に よ つ て 掌 あ る と。 唯 識 大 乗 の 説 は 経 部 と 詞 じ い 。 曰 く 、 聲 は 色 法 の 随 一 な る が 故 に 阿 頼 耶 識 内 の 別 種 子 よ り 生 す る 實 浩 な る も 、 文 名 句 は 別 種 子 生 に 非 ざ る 重 假 の 法 な る が 故 に 實 法 で は な い 。 名 句 の 二 つ は 文 上 に 假 立 す る が 故 に 重 假 で あ り 、 文 は 聲 ・土 に お け る 直 假 な る も 、 直 假 は 重 假 の 部 類 な る が 故 に 三 つ と も に 聲. な る 實 法 に は 母 し な い 。 故 に 唯 識 論 ( 二 ) に 云 く 、 ﹁ 然 依 二 語 聲 分 位 差 別一。 而 假 建 二 名 句 文 身 -﹂ と 。 今 案 す る に 、 経 部 の 説 は 常 識 的 に は 入 り ゃ す く 、 有 部 の 説 は い さ ゝ か 迂 遠 な る に 似 つ る も 、 聾 字 本 有 の 密 教 思 想 よ り し て は 、 む し ろ 有 部 説 の 方 が 意 味 深 長 な る も の が あ る 。 か の 二 部 が 燈 火 に つ い て 謬 ふ と こ ろ を 観 る に 、 燈 光 は 油 蛇 蓋 及 び 人 功 等 の 衆 因 縁 よ り 生 す る が 故 に 自 農 無 自 性 な り と い ふ は 経 部 の 所 見 で あ 聲 字 實 相 論 に 封 す ろ 考 察 一 一
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一 二 り 、 こ れ に 封 し て 金 石 等 本 具 の 火 性 よ り 生 す る と い ふ は 有 部 宗 の 所 見 で あ る 。 こ の 故 に 経 部 の 思 想 が 進 化 す る と 、 そ れ が 即 ち 顯 激 の 眞 動 繰 起 論 と な る の で あ り 、 有 部 の 思 想 が 醇 化 す る と 、 そ れ が 即 ち 密 教 の 六 大 縁 起 論 と な る の で あ り 、 か の 禮 大 束 聞 記 に ﹁ 古 徳 云 。 此 敷 還 同 二眺 曇 性 相 こ と い へ る は 全 く こ ゝ に 着 眼 せ し も の で あ る 。 四 、 聲 寧 と 實 相 聲 と 字 と は 巳 に 前 節 に い ふ が 如 く に し て 盤 用 關 係 で あ る 。 而 し て 聲 は 四 大 種 な る 色 法 の 撃 登 に よ つ て 生 す る 現 象 な る が 故 に ま つ 色 法 な る も 、 字 は 心 所 の 如 く に 六 識 入 識 の 心 王 と 相 慮 す る も の に も 非 す ま だ つ は 聲 上 に よ つ て の み 存 す る 非 色 の 法 な る が 故 に こ は こ れ 不 相 懸 行 法 な る も の で あ る 。 こ の 字 に 封 し て 、 経 部 及 び 唯 識 は 無 髄 の 假 法 と な す と 、 有 藻 は 有 膿 の 實 法 と な す と の 別 あ る も 、 無 常 生 滅 の 法 な り と 見 る に 至 つ て は 同 で あ る 。 ま つ 聲 が 色 法 な り と い つ て も 、 そ は 随 つ て 生 じ 随 つ て 滅 し て 些 の 痕 跡 を と ゞ め ざ る 最 も は か な き 一 現 象 で あ る 。 さ れ ば 顯 敷 の 諸 大 乗 は み な い は く 、 眞 如 の 自 禮 は 無 爲 常 住 に し て か っ 有 塞 善 悪 等 の 相 待 を 超 絶 す る が 故 に 、 も と よ り 無 常 の 聲 字 を 離 れ 相 待 の 言 説 を 離 れ る 。 言 説 聲 字 は 俗 諦 の 諸 法 に こ そ 相 癒 す べ き も 、 眞 諦 の 境 界 に は 全 然 相 慮 す べ く も な く 、 眞 諦 は 依 然 と し て 果 分 不 可 説 の 位 で あ り 鰹 妙 離 言 の 域 で あ り 言 噺 心 滅 の 境 で あ る と 。 し か る に 眞 言 密 激 の 意 は 、 俗 諦 萬 の 法 は そ の ま ゝ 六 大 法 界 禮 な る が 故 に 、 同 時 に 四 種 曼 茶 羅 で あ り 李 等 の 三 密 で あ る 。 さ れ ば 宇 宙 間
に は 見 渡 す か ぎ り 假 な る も の 儒 な る も の が 一 物 と て も 存 し な く 、 み な 悉 く 既 盧 遮 那 の 妙 盟 な ら ざ る も の が な い 。 そ の 眞 俗 二 諦 を 隔 歴 し て 實 法 と 假 法 ご を 別 覗 す る が 如 き は 、 こ れ 即 ち 妄 想 戯 論 の 所 作 つ る に す ぎ な い 。 こ の 故 に 幻 の 如 く 電 の 如 く に 極 め て は か な く 見 ゆ る 聲 字 そ の も の も 、 そ の 實 や は り 六 大 法 界 の 所 産 な る が 故 に 本 來 不 生 不 滅 の 法 で あ る 。 故 に 聲 字 義 に 云 く 、 五 大 皆 有 レ 響 。 十 界 具 二 言 語一。 六 塵 悉 文 字 。 法 身 是 實 相 。 こ れ は 、 か の 言 語 の 範 園 が 欲 界 及 び 色 界 の 初 繹 に 限 る と も い び 、 ま つ 無 覆 無 記 に し て 有 情 歎 の 囁 な り と も い つ つ や う な 眼 界 狭 き 比 で は な く 、 既 に 一 々 の 法 が 既 盧 遮 那 の 妙 醗 な る 以 上 は 、 そ こ に は も は や 非 情 と い は る ゝ も の が 更 に こ れ な く 、 す べ て が 曼 茶 海 會 の 聖 衆 な ら ざ る は な く 、 そ の 思 念 す る と こ ろ は 直 ち に 法 身 牛 等 の 意 密 で あ り 、 そ の 動 作 す る と こ ろ は 直 ち に 法 身 季 等 の 身 密 で あ り 、 そ の 言 談 す る と こ ろ は 直 ち に 法 身 李 等 の 語 密 で あ り 、 か く て 十 界 六 塵 の 當 相 が 本 有 の 文 字 で あ り 法 爾 の 経 懇 で あ る 。 從 つ て 日 月 星 辰 の 燦 燗 つ る 、 山 河 大 地 の 起 伏 す る 等 は 、 す べ て こ れ 色 塵 の 文 字 な ら ざ る は な く 、 沈 慶 梅 檀 、 好 香 悪 香 等 は 、 す べ て こ れ 香 塵 の 文 字 な ら ざ る は な く 、 甘 酷 苦 辛 等 は 、 す べ て こ れ 味 塵 の 文 字 な ら ざ る は な く 、 堅 湿 嬬 動 等 は 、 す べ て こ れ 鯛 塵 の 文 字 な ら ざ る は な く 、 時 間 塞 間 、 法 則 公 理 等 は 、 す べ て こ れ 法 塵 の 文 字 な ら ざ る は な く 、 松 風 泉 聲 、 龍 吟 虎 囎 等 は 、 す べ て こ れ 聲 塵 の 文 字 な ら ざ る は な い 。 六 塵 悉 く 文 字 な ら ざ る な し と 難 も 、 な か に お い て 聲 塵 の 文 字 は そ の 最 勝 な る も の で あ る 。 聲 字 實 相 論 に 勤 す る 考 察 一 三
聲 字 實 相 論 に 勤 す る 考 察 一 四 そ の 故 は 、 色 塵 は 本 來 質 磯 を 禮 こ な し 、 香 塵 は 本 來 蕪 習 を 膣 と な し 、 味 塵 は 本 來 周 遍 を 禮 と な し 、 鰯 塵 は 本 來 領 納 を 騰 と な し 、 法 塵 は 本 來 軌 持 を 膿 と な し, 聲 廃 は 本 來 詮 顯 を 騰 と な す を も つ て 、 も し も 鯨 の 五 塵 の 文 字 に 詮 顯 の カ を 有 す る と せ ば 、 そ は 必 す 徐 塵 に 周 遍 せ る 聲 塵 そ の も の で な け れ ば な ら の か ら で あ る 。 凡 そ 事 物 の 實 相 を 理 解 す と い ひ 、 眞 理 の 本 源 を 大 悟 す と い ひ 、 天 啓 の 幅 音 に 接 燭 す と い ふ 如 き 、 こ は み な 宇 宙 本 具 の 聲 字 を 聞 く こ ご を 意 味 す る が 、 そ の 聲 字 は 即 ち 法 身 李 等 の 語 密 に し て 、 い は ゆ る 眞 言 陀 羅 尼 こ れ で あ る 。 眞 言 陀 羅 尼 は 無 量 無 邊 な り と 錐 も 、 根 源 に 遡 つ て そ の 本 質 を 眺 む る と つ ゞ こ れ 悉 曇 の 五 十 字 門 を い で な い 。 こ の 五 十 字 門 が 縦 横 重 々 に 交 錯 し 羅 織 さ れ て こ ゝ に 無 量 の 眞 言 と な れ る も の で あ る 。 而 し て そ の 五 十 字 門 の 説 所 を い は ゞ 、 密 部 に あ り て は 金 剛 頂 経 繹 字 畢 品 及 び 大 日 経 第 五 の 字 輪 品 等 で あ り 、 顯 敷 に あ り て は 華 嚴 経 の 入 法 界 品 、 渥 繋 経 の 文 字 品 、 文 殊 問 維 、 大 集 経 等 で あ る 五 十 字 門 は 登 音 の 源 に し て 文 字 の 母 な る が 故 に 、 わ れ ら 日 常 の 言 語 文 字 も す ぺ て こ れ を い で ざ る も 、 わ れ ら は 無 始 無 明 の 騎 膜 に 閉 さ れ て 、 未 だ 曾 て そ れ の 眞 面 目 を 見 る こ と を え ざ る う へ の 誤 用 な る が 故 に 、 そ れ が 塞 し く 四 妄 の 言 語 と な つ て 自 か ら を 澱 ひ し 他 を 毒 す る の み で あ る 。 し か る に も し 非 常 の 修 養 を 働 む で 積 功 累 徳 し 、 大 畳 圓 満 者 の 域 に 達 す る に 及 ん で は 、 そ れ が 各 と 無 霊 荘 嚴 の 光 り を 放 つ て 同 時 に わ が 寳 財 と な る の で あ り 、 こ の 寳 財 を 獲 得 せ し う へ の 言 語 は 、 片 言 隻 僻 み な 悉 く 眞 言 陀 羅 尼 な ら
ざ る は な い。 故 に 聲 字 義 に 云 く 、 此 眞 言 詮 二 何 物 ↓ 能 呼 二 諸 法 實 相 一不 謬 不 妄 。 故 名 二眞 言一。 其 眞 言 云 何 呼 二 諸 法 名一。 錐 レ 云 二 眞 言 無 量 差 別 一。 極 二 彼 根 源 一不 レ 出 二 大 日 奪 海 印 三 昧 王 眞 言一。 彼 眞 言 王 云 何 。 金 剛 頂 及 大 日 経 所 説 字 輪 字 母 等 是 也 。 彼 字 母 者 梵 書 阿 字 等 乃 至 呵 字 等 是 。 此 阿 字 等 則 法 身 如 摩 一 一 名 字 密 號 也 。 乃 至 天 龍 鬼 等 亦 具 二 此 名一。 名 之 根 本 法 身 爲 二 根 源一。 從 レ 彼 流 出 租 轄 爲 二 世 流 布 言 而 巳 。 君 知 二實 義 一則 名 二 眞 言一。 不 レ 知 二 根 源 一名 二 妄 語一。 妄 語 則 長 夜 受 書 。 翼 言 則 抜 レ 苦 與 レ 樂 。 讐 如 二 藥 毒 迷 悟 損 盆 不 同一。 上 蓮 に よ つ て こ れ を 考 ふ る に 、 十 界 六 塵 は 悉 く 文 字 な ら ざ る な き も 、 そ の 文 字 の 主 膿 と い は ゞ 即 ち 聲 で あ り 、 而 し て 聲 は 直 ち に 眞 理 の 自 髄 で あ る 。 故 に 法 華 経 一 部 は 凝 の 一 字 に 脇 し 、 大 日 経 一 部 は 範 の 一 字 に 蹄 し 、 金 剛 頂 経 一 部 は 町 の 一 字 に 蹄 す る 。 理 趣 経 の 十 七 段 に お け る 般 若 理 趣 の 法 円 が 段 々 み な ・轟 字 灘 字 等 の 一 字 の 種 子 眞 言 に 露 入 す る 深 旨 や 、 ま つ 蔑 字 を 以 つ て 眞 如 能 生 の 本 源 と す る 十 住 心 論 ( 九 ) の 思 想 の 動 き 、 み な こ の 聲 字 即 實 相 の 義 趣 に 立 脚 せ る も の で あ る 。 か の 無 佳 の 沙 石 集 に ﹁ 和 歌 は 日 本 の 陀 羅 尼 な り ﹂ と い ひ 、 契 伸 の 和 字 正 濫 に ﹁ 陀 羅 尼 是 翻 二 総 持一。 其 故 揖 二 無 量 功 徳 一故 。 是 則 一 字 多 含 義 也 。 以 二 短 和 歌 一含 二 深 意一。 委 云 レ 之 四 十 七 言 即 可 レ 云 二 陀 羅 尼 一也。 是 繹 論 五 種 言 説 中 如 義 言 読 也 ﹂ と い ふ が 如 き は 、 法 界 に 遍 す る 眞 言 陀 羅 尼 の 聲 が 、 は し な く も 和 歌 て ふ 琴 線 に ふ れ て 登 し つ り と の 消 息 を 語 る も の で あ つ て 、 こ は よ く 聲 字 即 實 日相 の 精 紳 を 味 ひ え し 説 で あ る 。 故 に 大 師 の 交 鏡 秘 府 論 に 云 く 聲 字 實 柑 論 に 封 す る 考 察 一 五
聲 字 實 柑 論 に 樹 す る 考 察 一 六 ﹁ 室 中 塵 中 開 二 本 有 之 字一。 轟 上 龍 上 演 二 自 然 之 文 一 し と 。 顯 敏 は 念 慧 を も つ て 陀 羅 尼 の 膿 と な し 、 密 激 は 聲 字 を も つ て そ の 禮 こ な す が 、 か の 念 慧 の 農 は 即 ち こ の 聲 字 な り と 見 な け れ ば な ら ぬ 。 五 、 五 享 明 の 説 所 翼 言 陀 羅 尼 中 の 王 陀 羅 尼 と し て 見 る べ き も の は 、 い は ゆ る 醍 信 と 虞 藏 の 五 字 明 な る が 故 に 、 宥 快 は ﹁ 撮 二 五 十 字 門 一不 レ 可 レ 出 二 五 大 種 子 眞 言 こ (聲 字 義 抄 中 、 芯 ) と い つ て ゐ る 。 今 ま つ そ の 説 所 を 尋 漁 る に 凡 そ 左 の 如 く で あ る。 ( 口 ) 大 日 経 ( 三 ) 悉 地 出 現 品 に 云 く 、 爾 時 毘 盧 遮 那 世 尊 o 叉 復 佳 二於 降 伏 四 魔 金 剛 戯 三 昧一。 説 下 降 二 伏 四 魔一。 解 二 脱 六 趣一。 満 二 足 一 切 智 智 一金 剛 字 句 上。 な う ま く さ ま ん だ ほ だ あ な ん あ く び い ら ラ む け ん 曜 靴 刷 災 環 逐 誉 嘩 。 嚢 韻 ご 褻 宿 。 南 歴 三 曼 多 勃 駄噛一阿呼去急昧嘱帥欠呼レ之馨二欠字聲髄時金剛圭秘密主等諸執金剛。普賢等諸菩薩及一切 大 衆 。 得 二 未 曾 有 開 敷 眼一。 ( 二 )善 無 畏 繹 の 撮 大 毘 盧 遮 那 軌 ( 三 ) ま つ こ の 文 を あ げ て あ る 。 ( 三 )聖 観 自 在 菩 薩 心 眞 言 喩 伽 槻 行 儀 軌 ( 不 塞 繹 、 閏 十 、 な 二 ) に 云 く 、 次 結 二 大 日 如 來 劔 印一。 以 三 一手 一當 レ 心 合 掌 め 屈 ニ ニ 頭 指 中 節 一横 相 蹉 。 以 二 二 大 栂 指 一並 押 二 二 頭 指 上 節 一
如 二劔 形一。 結 二 銘 印 一巳 即 凱 。 露 心 中 有 二 八 葉 蓮 華 -。 於 二 蓮 華 中 一想 阿 字 放 二 金 色 光 一。 興 レ 印 相 懸 。 想 二 彼 阿 字 一了 二 繭 切 法 本 家 不 生 一。 即 諦 二 翼 言 一 日 。 鰯 莫 三 去 満 多 母 駄 引 南 引 。 悪 引 毘 引 難 噂 欠 。 議 二 翼 言 一 八 編 。 以 レ 印 如 レ 前 加 二 持 自 身 五 露 一 ( 額 ・ 右 肩 産 肩 ・ 心 ・ 喉 ) 。 於 二 頂 上 散 レ 印 。 本 就 は か の 不 動 明 王 の 立 印 軌 等 と 同 じ く 大 日 経 十 萬 頗 の 大 本 よ り 溺 出 さ る ゝ が 故 に 、 題 下 に ﹁ 出 大 毘 盧 遽 那 成 道 経 ﹂ と あ る 。 そ の 聖 親 音 を 直 ち に 胎 藏 大 臼 と 習 ふ と こ ろ に 畿 色 な 深 秘 の 旨 が あ る の で あ り 、 讃 弼 親 音 寺 所 安 の 聖 親 昔 像 ( 法 界 定 印 に 佳 す る ) の 蜘 き は 、 大 師 が 本 軌 に よ つ て 造 り 玉 ひ し も の で あ る 。 而 し て 翼 言 八 福 を 議 す る は 胎 藏 の 入 葉 を 表 し 、 印 を も つ て 五 慮 を 擁 持 す る は 金 界 の 五 藩 を 表 し 、 か く て 爾 都 不 二 の 義 を 顯 は せ る も の で あ る 。 ( 四 ) 大 日 如 來 劔 印 ( 蝕 三 、 四 ) ま つ 前 と 岡 峯 、あ る 。 こ の 書 に 廣 際 の 二 本 が あ り 、 古 來 廣 本 は 悪 果 の 作 、 略 本 は 小 野 仁 海 の 作 と 傳 ふ る が 、 今 は そ の 慶 本 で あ る 。 (五 ) 毘 盧 遮 那 五 字 翼 言 修 響 儀 軌 ( 不 塞 、 蝕 一 、 左五 六 ) に 云 く 次 結 二 毘 盧 遮 那 五 字 劔 印一。 二 手 合 掌 。 屈 二 二 頭 指 一相 著 如 二 劔 形一。 眞 言 日 那 謹 三 曼 多 渡 駄 楠 。 阿 尾 羅 吟 欠 。 ま た 云 く 、 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一 七
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一 八 即 用 二 五 字 一從 二 下 燈 一布 至 レ 頂 。 地 水 火 風 塞。 即 想 自 身 如 二金 色 眺 盧 遽 那 佛一。 遍 放 二 光 明 一頭 冠 理 路 。 身 著 二 紗 穀 衣一。 即 結 二 劔 印 一安 二 於 當 心 一佳 二 三 摩 地一。 か の 金 界 大 日 一 奪 法 の 本 軌 つ る 修 習 三 塵 地 法 に 樹 し て 、 こ れ は 胎 藏 大 日 一 尊 法 の 本 軌 で あ る 。 ( 六 ) 菩 提 場 所 説 一 字 頂 輸 王 経 ( 不 塞 、 閏 五 、 左虎 〇 ) の 第 三 に 云 く 、 二 手 内 相 叉 竪 三 一大 指一。 此 是 一 切 如 來 心 印 。 ( 中 略 )眞 言 日 鍵 莫 薩 嚇 没 駄 胃 地 薩 恒 薦 引二 合 南 一引 。 阿 引 尾 嘩 峠 欠 二 此 是 一 切 如 來 心 印 眞 言 。 秘 密 圭 茄 名 二 大 勤 勇 心 眞 言 一 切 如 來 眞 實 法一。 こ れ と 岡 本 異 謬 な る 一 字 頂 輪 王 経 ( 菩 提 流 志、 閏 六 、 右一 六 ) 第 三 の 謁 澤 字 は 、 嚢 莫 薩 麟 下 同 無 可 反 勃 駄 一 菩 地 薩 唾 南 二 〇 穣 弧 羅 三 虎 鮮 四二 合 滝 五丘 漉 反 と あ る も そ の 字 膿 は 全 同 で あ る 。 あ ら は し や た う (七 ) 三 種 悉 地 破 地 獄 軌 ( 善 無 畏 、 飴 一 ) に は 文 殊 の 嚢 ぼ 鷲 貫 4 の 五 字 眞 言 を 下 品 の 出 悉 地 と な し 、 大 あ ば ん ら ん か ん け ん 日 の 五 字 明 を 中 品 の 入 悉 地 と な し 、 同 轟 書 蓄 叢 ・冊 を 上 品 の 秘 密 悉 地 と な し 、 ま つ 次 で の 如 く 大 口 所 具 の 癒 、 報 、 法 の 三 身 の 明 と さ れ て あ る 。 就 中 、 五 字 明 下 に 云 く 、 製 阿 會 微 と 羅 爽 噂 ・欝 怯 。 是 名 二 入 悉 地一。 能 生 二 枝 葉 一遍 二 満 四 方一。 光 明 晃 腱 入 二 佛 法 界一。 若 説 一 遍 。 如 レ 輻 二 藏 経 一 千 遍一。
凡 そ 本 軌 に は さ ら に 同 じ く 佛 頂 尊 勝 破 地 獄 軌 と 題 す る 贋 略 二 種 の 異 本 こ れ あ る が 、 け だ し 二 種 の 異 本 は 未 再 治 で ゐ り 本 軌 は 再 治 で あ る 。 台 密 に あ り て は 、 最 澄 は 順 曉 よ り こ れ を 相 傳 し 、 圓 珍 は 法 全 よ り こ れ を 相 傳 し て 特 に 鴬 重 す る が 、 東 密 に あ り て 必 ら す し も さ う で は な い 。 ( 八 )金 剛 峯 縷 閣 喩 紙 纒 ( 金 剛 智 鐸 ) の 金 鰯 吉 鮮 大 成 就 晶 第 九 に 云 ぐ 、 爾 時 佛 母 金 剛 吉 鮮 。 復 説 下 成 二 就 大 悲 胎 藏 一 八 字 眞 言 王 上 曰 あ ゝ く び ら う む け ん う む 唐 り く あ く 難 悪 引ノ 愈 尾 と 羅 熱 畔 斑 欠 轟 畔 熱 纈 附 鍵 悪 短 呼 。 君 瀬 二 満 一 千 萬 遍一。 獲 二 得 大 悲 胎 藏 中 一 切 洪一。 一 時 頓 謹 。 業 印 如 二 繹 迦 牟 尼 鉢 印一。 以 レ 印 從 レ 定 鵡 。 旋 轄 便 結 二 本 三 昧 耶 印一。 以 三 一手 鵬虚 心 合 掌 。 復 當 レ 心 即 成 。 當 経 は 金 剛 頂 経 の 随 二 な る が 、 し か る に 胎 藏 の 五 字 明 を 説 く が 故 に 正 し く 爾 部 不 二 の 秘 経 と 見 る 一 傳 こ れ あ る も 、 爾 部 の 法 円 が 交 墾 す る は 常 事 な る が 故 に 、 ひ と り こ れ の み に 限 る は よ ろ し く な い 。 故 ヲ ト ハ に 快 全 の 一 経 抄 ( 中 ) に は ﹁ 依 ニ 此 説 一 一 師 今 経 不 二 心 得 也 。 此 不 レ 爾 。 大 日 経 中 説 二 金 界 法 門一。 金 剛 頂 中 説 二 胎 藏 法 門 一義 也 ﹂ と い つ て ゐ る 。 ま つ こ の 入 字 は 、 前 の 五 字 を 五 部 に 配 し 、 後 の 三 字 を 三 部 に 配 す あ び ら う む き や し や ら く だ ん る こ と は 相 承 の 師 傳 で あ り 、 か の 護 會 と 爽 翼 可 尋 倒 な る 入 字 文 殊 の 明 は 、 け だ し こ れ と 同 種 の も の で あ る 。 ( 九 )大 師 の 著 作 に つ い て 考 ふ る に 左 の 如 く で あ る 。 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 一 九
聲 字 賢 相 論 に 甥 す る 考 察 二 〇 鯖 命 娚 尾 羅 陶 欠 。 最 極 大 秘 法 界 盤 (十 佳 心 論 一 ) 。 彼 種 子 眞 言 日 。 遡 億 と 爽 欲 ・爽 ( 即 身 成 佛 義 六 大 の 繹 段 )。 次 諦 二 満 足 句 一。 金 掌。 郵 億 と 興 醤 ( 胎 藏 普 禮 五 三 次 第 、 全 集 六 、 九 九 )。 満 足 一 切 智 智 。 外 五 股 印。 塚 聯 凝 興 再 璽 馨 邸。 遭 儲 ぞ 糞 碍 (胎 藏 梵 字 次 繁 、 同 前 、 六 ) 満 足 一 切 智 智。 外 五 胎 り 澱 信 事 爽 珂 (胎 藏 賂 次 第 、 同 前 、 五 三 ) 。 以 上 は そ の 説 所 で あ る 。 穴 、 五 享 明 の 種 類 内 容 五 字 朋 の 種 類 と し て 激 ふ べ き も の は 左 の 如 く で あ る 。 あ ら は し や な う ( ー ) 交 殊 の 五 字 明 つ る 鍔 ぞ 鰐 堺 鰐。 こ れ は 交 殊 五 字 心 陀 羅 尼 品 が そ の 本 説 で あ る 。 ぽ ろ う む お ら く き り く あ く ( 二 ) 五 大 虚 室 藏 の 明 に し て ま つ は 五 智 の 明 と い は る ゝ 竈 熱 尊 論 嚢 。 こ れ は 喩 紙 経 金 剛 吉 鮮 品 が そ の 説 所 で あ る 。 云 く ﹁ 爾 時 復 説 二 成 就 富 貴 金 剛 虚 塞 藏 鈎 召 五 字 明 王 -曰 。 可 鍵 爽 噂 挙 但 洛 識 纈 曜 鍵 悪 短 ( 中 略 ) 但 調 = 五 字 明 一 千 萬 遍 一。 即 得 二富 貴 成 就 一﹂ 。 あ あ も あ ん あ く あ も く ( 三 ) 五 夷 の 明 と い は る ゝ 夷 凝 夷 嚢 難。 こ れ は 大 師 の 胎 藏 略 次 第 に 見 み へ て ゐ る 。 ( 四 ) 遜 贋 と 気 氣。 こ れ は 大 日 経 の 悉 地 出 現 品 及 び 阿 閣 梨 眞 實 智 品 等 が そ の 説 所 で あ る 。 ( 五 ) 鯛 可 蓄 硫 宿。 こ れ は 同 維 第 七 の 持 諦 法 則 品 及 び 三 種 悉 地 軌 等 が そ の 説 所 で あ る 。
( 六 ) 魂 傭 と 藤 廊 。 そ の 説 所 前 節 の 如 く で あ る 。 但 し こ の 字 膿 に つ い て は 凡 そ 六 種 の 不 同 が あ る 。 ( い ) 嚢 韻 ぞ 漁 宿 。 大 日 維 。 ( ろ ) 轄 剤 芝 爽 藏 。 聖 観 自 在 菩 薩 軌 。 ( は ) 鰐 會 ど 颪 宿 。 喩 紙 維 。 ( に ) 漣 傭 と 漁 織 。 五 輪 九 字 秘 繹 。 ( ほ ) 遜 億 蓄 爽 廠 。 浮 巖 曰 く ﹁ 先 哲 親 蹟 有 レ 書 二 蝿 債 ・ぎ 襲 癖 一﹂ ( 即 身 義 冠 註 上 、 二 九 ) 。 ( へ ) 夷 會 ぞ ・澱 ・珂 。 大 師 親 騰 、 五 字 修 習 軌 、 三 種 悉 地 軌 。 五 字 明 の 種 類 に は か く の 如 く 六 種 あ る も 、 常 に い ふ 五 字 鵬 は ( 穴 ) で あ り 、 こ れ を ま つ は 満 足 一 切 智 々 の 明 と も い ふ 。 ま つ そ の 字 膿 に 六 種 あ る も 、 ( へ ) は 八 瓢 和 傳 に よ る 深 秘 の 字 髄 と 意 得 べ き で あ る。 そ の 印 契 に 至 つ て も ま つ 六 説 が あ る 。 ( 一 )普 通 印 。 構 大 儀 軌 。 ( 二 ) 金 剛 合 掌 。 五 三 次 第 。 ( 三 ) 佛 部 心 印 。 菩 提 蕩 経 第 三 。 ( 四 ) 法 界 定 印 及 び 虚 合 。 喩 砥 維 。 (五 ) 外 五 股 印 。 梵 字 次 第 、 略 次 第 。 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 二 一
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 二 二 ( 六 ) 無 所 不 至 印 。 聖 観 音 軌 、 五 字 修 習 軌 。 こ の な か 、 (五 )を ま つ は 錫 磨 印 と も い ひ 、 (六 ) を ま つ は 剣 印 と も い ひ 、 こ の 二 印 が 深 秘 で あ る 。 次 に こ の 五 字 明 の 功 能 に つ い て は 、 大 日 経 に は ﹁ 降 伏 囚 魔 。 解 脱 六 趣 。 満 足 一 切 智 々 ﹂ と 説 き 菩 提 場 経 に は ﹁ 能 命 三 切 有 情 作 二 如 來 事 一。 揚 二 召 一 切 菩 薩 鳳﹂ と 説 き 、 三 種 悉 地 軌 に は ﹁ 是 一 切 如 來 無 生 甘 露 之 珍 漿 。 醍 醐 佛 性 之 妙 藥 也 。 一 字 入 二於 五 臓 一萬 病 不 レ 生 ﹂ と 説 き 、 ま つ は 人 圭 頂 二 戴 乎 冠 中一。 萬 國 清 泰 。 節 度 親 察 旗 施 上 書 二 篤 眞 言一。 四 方 髪 静 。 專 城 太 守 鎭 逼 総 戎。 鼓 角 上 題 レ字 。 巌 警 鼓 音 遠 聞 妖 氣 清 。 熾 盛 布 二 千 里一。 蕾 稼 洪 潤 。 人 無 二 災 疫一。 地 土 紳 鵬 。 風 悟 雨 順 。 念 議 加 持 戦 鼓 上 書 。 賊 軍 自 降 一 入 不 レ 損 。 名 二 金 剛 鼓 一 と 説 い て あ る 。 故 に 畳 鍵 は ﹁ 此 五 字 眞 言 者 〇 十 方 諸 佛 之 総 脱 。 三 壁 薩 唾 之 肝 心 ﹂ ( 五 輪 九 字 ) と い ひ 頼 寳 は ﹁ 此 五 字 眞 言 一 一 深 義 。 自 宗 源 底 也 。 更 問 レ 之 ﹂ ( 膿 大 東 聞 記 ) と い つ て ゐ る 。 七 、 五 寧 明 と 本 魑 眞 言 密 敷 よ り 諸 法 の 本 禮 を 親 る に 、 そ は 即 ち 地 ・ 水 ・ 火 ・ 風 。 塞 ・ 識 の 六 大 で あ る 。 こ の な か 、 前 五 大 は 色 法 、 第 六 の 識 大 は 心 法 な る が 、 色 心 二 法 は 本 來 無 障 無 擬 に し て 圓 融 す る が 故 に 、 色 法 の 全 禮 が 心 法 で あ り 、 同 時 に 心 法 の 全 燈 が 色 法 で あ る 冷 心 法 ご は そ の 腱 五 智 で あ り 、 五 智 の 膿 は 五 大 で あ る 。 か く て 六 大 を ま つ は 五 大 と い ひ 、 五 大 各 と 萬 徳 を 輪 圓 す る が 故 に ま つ は 五 輪 と も い ふ 。 支 那 古 代 の 五 行 思
想 も そ の 狙 ふ ご こ ろ は こ の 五 大 に 外 な ら ぬ Q か の 左 傳 ( 二 十、 六 ) に、 天 有 ニ六 氣ー 謂 陰 陽 風 雨 晦 明 也
降
生
二
五
墜
謂 金 睦 辛、 木 味 酸、 水 味 鍼、 火 瞭 苦 土 味 甘、 皆 由 二陰 陽 風 雨 一師 生。 嚢 爲 二 五 色 噛 辛 色 白、 酸 色 青、 酸 色。 黒、 苦 色 赤、 甘 色 黄 徴 爲 軸孟 馨 一 白 聲 商、 青 聲 角、 黒 聲 朋、 赤 聲 徴、 黄 聲 宮 こ い ふ が 如 き は 聯 か 密 敷 思 想 に 符 合 す る 黙 が あ る o 左 に 五 大、 五 形、 五 色、 五 智、 五 佛 等 の 關 係 を 騎 示 す る。五
大
五
行
五
昧
五
色
五
佛
五
智
五
方
五
形
五
性
五
音
地
共
骨
黄
大
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水
水
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火
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團
形
無
磯
角
か く の 如 く 五 大 の 内 容 に は 五 味、 五 色、 五 佛、 五 智 等、 要 す る に 無 量 の 五 法 を 其 し て さ ら に 漏 ら す ご こ ろ が な い、 こ れ そ の 法 界 に 周 遍 し て 諸 法 の 膿 性 こ な る ゆ ゑ ん で あ る 但 し こ の な か に お け る 五 佛 五 智 ・ 五 方 の 配 當 は 不 塞 本 有 の 傳 を あ げ し も の な る が、 も し 善 無 畏 修 生 の 傳 に よ ら ば、 こ れ を 次 で の 如 く 阿 閾 ・彌 陀 ・ 寳 生 ・ 騨 迦 ・ 大 圓 の 五 佛、 大 圓 ・ 妙 観 ・ 季 等 ・ 成 所 ・ 法 界 の 五 智 及 び 東 ・ 西 ・ 南 ・ 北・ 中 の 五 方 に 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 二 三聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 二 四 配 す べ き で あ る 。 抑 も 五 大 が 具 す る 無 量 の 内 容 を 要 約 す る と き は ( 一 ) 種 子 、 ( 二 ) 三 昧 耶 形 、 ( 三 ) 奪 形 の 三 つ と な る が 、 こ の な か 前 に 示 す は そ の 三 形 と 奪 形 で あ る 。 も し そ の 種 子 を い は ソ 、 次 で の 如 く 嚢 可 、 と 、 燭 、 慰 の 五 字 で あ り 、 そ の 字 義 は 本 不 生 、 離 言 説 、 離 塵 垢 、 離 因 縁 、 等 室 で あ り 、 こ れ 即 ち 法 身 自 謹 の 眞 理 の 五 義 で あ る 。 こ の 種 ・ 三 ・ 奪 の 三 つ は 本 騰 の 三 方 面 な る が 故 に 本 末 を 分 つ べ か ら す と 錐 も 、 も し 強 ひ て 、 れ を 分 つ ば 種 子 を そ の 根 本 と な す べ き で あ る 。 種 子 と は こ れ に 了 因 と 生 因 と の 二 義 が あ る 。 了 因 と は 、 字 膿 は 能 詮 の 法 な る を も つ て 、 こ れ に よ り そ の 所 詮 の 字 義 及 び 法 禮 を 解 了 せ し む る 因 と な る か ら で あ り 、 生 因 と は 、 か の 檀 物 等 の 微 細 な る 種 子 が 次 第 に 縁 起 し て 根 董 條 葉 等 と な る が 如 ぐ 、 か あ 如 く 五 字 が 次 第 に 緑 鵡 し て 三 形 及 び 奪 形 と な る か ら で あ る 。 し か ら ば 何 故 に 五 字 に こ の 生 因 種 子 の 義 あ り や と い 誉 、 彦 は 全 く 能 詮 の 聲 を も つ て 所 詮 の 髄 の 本 源 と す る 聲 字 實 相 論 に 立 脚 す る も の と い は な け れ ば な ら ぬ。 即 ち 一 切 の 聲 字 は 五 十 字 門 に 擁 せ ら れ 、 五 十 字 門 は こ の 五 字 に 播 せ ら る ゝ が 故 に 、 こ の 五 字 が す ぺ て の 聲 字 能 生 の 本 源 な る か ら で あ る 。 但 し 五 字 の な か で は 、 遜 字 が 能 生 の 本 音 つ る こ と に は 異 論 な か ゑ き も 、 後 の 四 字 は す ぺ て 所 生 の 末 音 で あ る 。 し か ら ば 何 故 に こ れ を も ま つ 能 生 の 本 音 に 掻 す ぺ き か ご い ふ に 、 こ は 潮 字 が 本 不 生 の 義 を 有 す る が 故 に 地 大 の 種 子 つ る と ゝ も に 、 四 字 の 宇 義 が お の つ か ら 水 火 風 塞 の 種 子 つ る が 故 に 、 そ の 丘日 を い は ゞ 所 生 の 末 音 な る も 、 そ の 義 を い 誉 能 生 の 本 源 な る が 磐 、 こ れ に よ つ て こ れ を 剥 字 の 位
に 娠 す る に よ つ て ゞ あ る 。 し か る に ま つ こ の 五 字 門 に 無 鮎 有 黙 の 二 種 あ る が 、 無 瓢 な る は 五 大 の 騰 性 を 詮 じ 、 有 黙 な る は 五 大 の 徳 相 を 詮 す る の で あ る 。 但 し 那 婁 の 二 字 の 無 黙 に し て 禽 爽 ・賀 の 三 字 の 有 黙 な る 理 由 如 何 と い ふ に つ き 、 浮 嚴 日 く 、 爵 爽 宿 加 レ 黙 者 有 二 意 冒 一也 。 何 者 傭 字 加 レ 黙 者 。 去 二 方 形 廉 一期 成 レ 圓 故 。 水 大 自 二 地 大 一生 故 。 爲 三 所 生 異 二能 生 一加 二 於 一 黙 也 。 次 三 角 雰 発 二方 形 一所 レ 成 也 。 若 例 レ 王 者 ぞ 字 亦 可 レ 加 レ 黙 故 。 先 哲 親 蹟 有 レ 書 二 鰯 傭 ぎ 熱 禽 一。今 電 字 無 レ黙 齎 。 或 疑 下 自 二圓 形 ゆ塵 耶 上 故 不 レ 加 レ 黙 。 次 ・論 字 加 二 二 貼 一者 。 風 大 年 月 形 分 二 圓 形 一而 成 。 是 二 重 所 生 故 抽 二 爾 黙 一也 。 次 脅 字 唯 潴 二 一 獣 一。嗣 塞 大 幽 形 者 。 雫 月 弦 上 累 二 三 角 一 而 成 。 孚 月 錐 三 一重 所 生 一。 三 角 却 是 三 重 所 生 也 。 若 撫 一 二 黙 二 則 似 二 全 一 一重 所 生一。 故 唯 加 二 一 識 一 也 ( 即 身 義 冠 註 上 、 二 九 ) 。 頼 寳 曰 く 、 無 鐵 五 字 詮 二 五 大 磯 性一。 有 黙 五 字 詮 二 五 大 徳一。 依 レ 之 無 黙 五 字 名 二 五 輪 法 界 種 子一。 有 勲 五 字 降 伏 四 魔 蒲 足 一 切 智 智 明 幕 レ 之 也 り 大 眺 盧 遮 那 神 愛 加 持 具 足 圓 満 徳 。 但 此 遜 愈 ぎ 蔑 宿 五 字 功 用 備 レ 之 。 ( 中 略 ) 地 水 二 大 。 本 末 義 表 レ 之 故 。 地 大 以 ご 禮 聲 一爲 二 種 子一。 水 大 以 二 業 聾 一爲 二 種 子 一也 。 (中 略 ) 次 と 字 火 大 種 子 也。 火 大 從 レ地 生 り 土 生 火 故 。 是 則 方 形 三 角 一 形 本 末 義 可 レ 思 レ之 。 傍 芝 字 同 レ 嚢 無 黙 也 。 次 墨 字 風 大 。 風 大 與 二 水 大 一同 膿 也 。 圓 形 掌 月 亦 是 本 末 形 也 。 是 故 燭 字 加 二 愚 黙一。 愚 黙 叉 入 轄 女 聾 所 聲 字 實 相 論 に 封 ず る 考 察 二 五
聲 字 實 相 論 に 樹 す る 考 察 二 六 撮 故 。 叉 加 二 塞 鮎 一事 表 二 風 大 自 在 徳一。 防 此 字 爾 重 摩 多 字 表 二 風 大 徳 一也。 已 上 四 字 。 績 ど 二 字 表 二本 不 生 上 本 末一。 其 義 一 致 故 共 以 無 黙 也 。 腱 文 諸 字 中 。 但 ど 字 帯 二 阿 聲 一則 此 義 也。 (中 略 ) 次 ・貫 字 有 二 阿 響一。 傍 議 澱 二 音 備 レ 之。 顔 字 撮 二 一 切 鵬 交一。 翼 字 撮 二 一 切 摩 多一。 此 摩 多 禮 文 二 音 合 成 二 弼 撃一。 弗 二 音 表 コ 冥 然 同 鵬 義 一安 二室 黙一。 是 故 爵 字 一 昔 具 二 足 一 切 音 聲 一之 義 也 。 是 則 塞 輪 衆 色 具 足 音 聲 也 (燈 大 東 聞 記 )。 以 上 の 二 読 を 比 較 す る に 、 後 説 の 優 長 な る こ と を 知 る べ き で あ る。 八 、 梵 享 他 寧 の 優 劣 興 言 陀 羅 尼 の 字 盤 は す べ て 梵 字 を 用 い ら れ て あ る が 、 こ は 果 し て 梵 字 に 限 る べ き も の な り や 、 ま つ は 廣 く そ の 他 の 文 字 に 通 す べ き も の な り や 否 や は よ く こ れ を 決 し な け れ ば な ら ぬ 問 題 の 一 で あ り 、 こ れ に つ い て は 疏 圭 善 無 畏 三 藏 の 説 と 宗 澱 大 師 の 説 と 一 往 異 な る 鮎 が あ る 。 ま つ 疏 圭 の 説 は 、 大 日 経 佳 心 品 に ﹁ 各 各 同 二 彼 言 吾 一佳 二 種 種 威 儀一。 而 此 一 切 智 智 道 一 味 。 研 謂 如 來 解 脱 味 ﹂ と あ る 瑞 相 三 身 説 法 の 説 文 に 封 し て 、 大 疏 ( 一 ) に ﹁ 随 類 形 聲 悉 是 眞 言 ﹂ と 鐸 し 、 ま つ 男 字 鱗 字 等 三 十 四 字 の 字 義 を 説 け る 具 縁 品 の 三 段 を 縄 日し て 、 ︻ 至 レ 論 二眞 言 法 敷一。 鷹 レ遍 二 一 切 随 方 諸 趣 名 言一。 但 以 三 如 來 出 世 之 逡 始 二 天 竺一。 傳 法 者 且 約 二 梵 文 一作 二 一 途 一明 レ義 耳 ﹂ ( 同 七 ) と い つ て あ る 。 こ の 意 の 云 く 、 聲 字 郎 實 相 な る が 故 に 一 切 の 言 語 文 字 は 法 身 李 等 の 語 密 に し て 眞 言 陀 羅 尼 の 法 髄 な ら ざ る な き も 、 そ の 梵 字 を も つ て こ れ を 示 す ゆ ゑ
ん は 、 印 度 は 大 聖 世 尊 出 現 の 地 な る が 故 に 、 傳 法 者 が 奪 重 し て 便 宜 そ の 文 字 を 用 ふ る ま で ゞ あ り 、 實 を い は 宰 随 方 諸 趣 の 言 文 に 遜 じ な け れ ば な ら ぬ と い ふ の で あ る 。 し か る に 大 師 の 秘 藏 記 、 字 母 繹 等 を 観 る に 、 大 師 は 梵 字 他 字 の 問 に は 明 ら か に 優 劣 淺 深 の 別 が あ り 、 多 含 な る 眞 言 陀 羅 尼 の 膿 は 、 他 の 文 字 に て は 到 底 顯 は さ れ な い も の と し て 、 あ く ま で も 梵 字 を 紳 聖 覗 さ れ て ゐ る 。 故 に 秘 藏 記 に 云 く 、 梵 字 從 二 本 有 理 一超 。 漢 字 從 二 妄 想 一起 。 所 以 梵 字 正 漢 字 邪 。 し か る に 梵 字 が 本 有 の 理 よ り 超 り 、 漢 字 が 妄 想 よ り 起 る と は 劾 何 な る 義 な り や と い ふ に 、 抑 も 大 日 経 (六 ) に は ﹁ 以 二 三 切 法 本 不 生 一故 顯 二 示 自 形一。 (中 路 ) 一 切 法 離 因 故 現 二 詞 字 形 こ と い つ て 、 遇 な る 字 形 は 諸 法 本 不 生 と い へ る 眞 理 そ の も の ゝ 顯 現 で あ り 、 蔵 な る 字 形 は 諸 法 因 緑 不 可 得 と い へ る 眞 理 そ の も の ゝ 顯 現 な り ご し て 、 能 詮 の 字 盤 と 所 詮 の 眞 理 と の 間 に 密 接 不 離 の 關 係 こ れ あ る 義 を 説 き 、 ま つ 三 種 悉 地 軌 に は ﹁ 山 嶋 大 地 從 二 翼 字 一出 生 。 河 海 萬 流 從 二 爵 字 一 出 生 。 (中 略 ) 秀 香 美 人 、 人 畜 長 養 。 顔 色 滋 味 。 ・ 端 疋 相 貌 。 編 徳 富 貴 。 從 ニ 珂 字 一荘 嚴 ﹂ と い ひ 、 梵 字 に よ つ て 正 し く 聲 字 即 實 相 の 理 を 説 い て あ り 、 要 す る に 、 梵 字 は 直 ち に 眞 理 そ の も の ゝ 顯 現 な る も 一 漢 字 は 蒼 頷 、 李 斯 、 程 遡 等 の 俗 士 相 踵 で い で ゝ 種 々 の 携 想 分 別 を め ぐ ら し 、 ( 一 )象 形 、 ( 二 ) 指 事 、 ( 三 )會 意 、 ( 四 ) 形 聲 、 ( 五 ) 縛 注 、 ( 六 )假 借 の 六 義 に よ つ て 造 ら れ し も の で あ り 、 梵 字 の 自 然 本 有 な る と は 同 日 の 論 に 非 す と い ふ の で あ る 。 そ れ か ら ま つ 同 書 に 、 か り に も し 梵 字 を 正 な り と し て も 、 そ れ が 中 道 眞 理 に も と る 外 道 の 経 典 に 用 い ら る ゝ 瘍 合 の 盤 字 實 相 論 に 樹 す る 考 察 二 七
聲 字 實 相 論 に 封 す ろ 考 察 二 八 如 き 、 ま つ も し 漢 字 が 邪 な り と し て も 、 漢 繹 経 典 に お い て 佛 数 の 深 旨 が 顯 は さ れ る 蕩 合 の 如 き は 、 正 邪 の 地 位 顛 倒 す る が 如 何 と 登 問 し 、 こ れ に 封 し て 所 用 の 巧 拙 と 字 鰹 の 正 邪 と は 義 門 各 別 な り と 答 へ て あ る 。 云 く 、 梵 字 錐 下 從 二 本 有 理 一趨 上。 天 竺 外 道 等 用 焉 。 是 則 悪 法 。 漢 字 錐 下 從 二 妄 想 輪起 上。 諸 維 敷 皆 用 焉 。 是 則 善 法 。 何 可 レ云 二 梵 字 正 漢 字 邪 一。 梵 字 從 下 離 二 塵 垢 一本 性 清 浮 理 上 起 而 來 。 雄 二 外 道 同 用 一而 亘 海 之 一 芥 也 漢 字 難 二 佛 敷 外 道 共 用 一。 而 從 二 妄 想 齢 韓 韓 而 來 。 彼 此 相 望 邪 正 有 レ 別 。 ま つ 字 母 繹 に 云 く 、 此 悉 曇 章 。 本 有 自 然 眞 實 。 不 愛 常 住 之 字 也 。 三 世 諸 佛 皆 用 二 此 字 一説 法 。 是 名 二 聖 語 一。自 飴 聲 字 是 則 凡 語 也 。 非 二 法 然 之 道 理 一。 皆 随 類 之 字 語 耳 。 ま つ 云 く 、 然 梵 字 梵 語 。 於 二 一 字 聲 一含 二 無 量 義 一。 改 爲 二 唐 言 一 但 得 二 片 玉 一三 隅 則 闘 。 大 師 は か く の 如 く 梵 字 を 本 有 自 然 の 文 字 と な す も 、 西 域 記 ( 二 ) に は ﹁ 詳 二 其 文 字 一梵 天 所 製 。 原 始 垂 レ 則 四 十 七 言 ﹂ と い つ て 梵 王 所 製 の 旨 を の ぶ る が 故 に こ れ と 相 蓮 す る が 、 し か し 大 師 の 意 よ り い は ゞ 、 梵 王 所 製 の 本 は 佛 説 に 存 し 、 佛 説 は 全 く 本 有 自 然 の 交 字 を 顯 は す が 故 に 、 か れ は し ば ら く 随 縁 の 一 傳 説 を あ ぐ る に す ぎ な い と 。 以 上 爾 澱 の 繹 に 勤 す る 先 徳 の 異 説 を 考 ふ べ き 要 が あ る 。 ま つ 頼 質 の 説 に 云 く 、 凡 そ 密 敷 に は 淺 略 深
秘 の 二 途 の 敷 義 こ れ あ る が 故 に 、 淺 略 門 に は 文 字 に し ば ら く 邪 正 の 別 を 立 つ る も 、 深 秘 門 に は も と よ り 李 等 に し て そ の 別 を 立 て な い 。 故 に 大 師 は 淺 略 門 に つ き 、 疏 圭 は 深 秘 門 に つ き 、 相 待 つ て 各 と そ の 一 門 を 明 か せ し も の で あ る と ( 本 母 集 七 、 梵 字 漢 字 邪 正 分 別 事 )。 澤 嚴 は 三 密 鋤 ( 上 ) に ﹁ 問 若 盤 字 全 實 相 者 。 漢 土 象 隷 。 倭 邦 俗 字 。 籔 言 夷 語 。 龍 吟 虎 囎 。 亦 是 聾 字 癒 二 皆 實 相 一。 何 猫 局 二 梵 字 一作 二斯 談 一耶 ﹂ と 問 ひ 、 こ れ に 封 し て 本 有 否 等 門 と 修 生 差 別 門 と の 二 義 を あ げ 、 疏 圭 は 本 有 門 に よ り 大 師 は 修 生 門 に よ る と 調 和 せ る が 、 こ は 全 く 本 母 集 と 同 じ い 。 果 寳 は 、 大 師 の 梵 字 法 然 説 に 封 し て 、 ( 一 ) そ れ が も し 非 有 爲 非 無 爲 な り こ せ ば 燈 用 都 無 の 難 め る べ く 、 ( 二 ) も し 無 爲 な り と せ ば 講 圖 造 作 の 難 あ る 。へ く 、 ( 三 ) ま つ も し 有 爲 な り と せ ば 難 者 に 同 す る の 難 あ る べ し と い ふ 徳 一 の 三 難 を あ げ 、 而 し て 後 か の 有 爲 と 無 爲 と の 外 に 非 有 爲 非 無 爲 の 別 禮 (所 入 の 一 心 ) あ り と す る 膵 摩 詞 術 論 の 思 想 に 依 て 、 梵 字 が 全 く 非 有 爲 非 無 爲 の 法 然 禮 な る ゆ ゑ ん を 力 説 し (私 蝕 三 、 梵 字 法 然 事 ) 。 ま つ 梵 字 に 法 爾 陥 縁 の 二 義 あ る な か 、 疏 圭 は そ の 随 縁 の 義 を 輝 し 、 大 師 は そ の 法 爾 の 義 を 鐸 す る とし い つ て 頼 寳 説 の り へ に 一 歩 を 逡 め て ゐ る (秘 藏 記 鋤 )。 疏 主 の 繹 が 随 縁 な る わ け は 、 も し 印 度 が 佛 陀 出 現 の 地 な る が 故 に こ れ に よ つ て 梵 字 を 本 と な す と い は ゞ 、 佛 陀 も し 支 那 に 現 す る に お い て は よ ろ し く 漢 字 を 本 と な す べ く 、 か く て 交 字 に 一 定 の 優 劣 な し と 見 る か ら で あ る 。 し か る に 大 師 の 意 は 字 盤 本 來 の 正 邪 を 決 す る に あ る が 故 に 、 こ れ 即 ち 注 爾 の 義 な り と い ふ の で あ る 。 宥 快 は 秘 藏 記 傳 授 鉛 に ﹁ 梵 漢 邪 正 論 議 錐 レ 有 二 邊 々 料 簡 一。 以 三 今 問 答 一爲 レ本 聲 字 實 相 論 に 封 す ろ 考 察 二 九
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 三 〇 可 レ 有 二 問 答 一也 ﹂ と い ひ、 奥 疏 傳 授 鋤 に も ま つ こ の 秘 藏 記 の 鐸 を 相 承 の 實 義 と 重 澱 す る が 如 き は 呆 寳 説 と 全 く 同 じ い。 長 淳 の 夏 中 問 答 ( 一 ) に は、 疏 圭 が 随 方 の 言 字 を 即 眞 言 と す る は 當 然 の こ と な る も、 し か し 大 師 の 意 よ り い は ゞ、 そ の 眞 言 中 に ま つ お の つ か ら 優 劣 淺 深 あ り と 見 る べ き な り と い つ て ゐ る。 こ は 自 性 上 人 が ﹁ 六 趣 言 鼠日 皆 本 有 法 然。 其 中 自 有 二 本 末 邪 正 一。錐 レ 有 二 本 末 邪 正 一宛 然 爲 二 注 曼 茶 羅 一﹂ と い へ る と 同 義 で あ る。 ま つ 秘 藏 記 傳 授 鋤 に ( 一 ) 梵 漢 倶 邪、 外 道 の 所 用 に つ く。 ( 二 ) 梵 漢 倶 正、 佛 敏 の 所 用 に つ く。 ( 三 ) 梵 正 漢 邪。 ( 四 ) 梵 漢 非 正 非 邪。 前 二 句 の 随 縁 門 な る に 封 し て こ 望 一句 は と も に 法 爾 門 な る も、 縫 し (三 ) は 相 待 に 約 し、 ( 四 ) は 絶 待 に 約 す て ふ 古 師 の 四 重 秘 繹 を 載 す る が、 し か る に こ ゝ に 大 師 の 騨 を 第 三 重 と す る は け だ し 果 寳、 宥 快 等 の 説 と は 違 ふ。 二 師 は 梵 漢 非 正 非 邪 な る 遮 情 門 の 極 に お い て、 む し ろ 却 つ て 法 爾 の 邪 正 を 見 る が 大 師 の 眞 意 な り と す る か ら で あ る。 か の 時 慮 軌 に ﹁ 所 レ 説 観 二 諸 字 馨 謄 二 於 梵 字 一。非 二 是 随 方 文 齢﹂ と い ひ、 擁 眞 實 経 (下 ) に ﹁ 心 中 観 二 想 一 一 梵 字 一。了 了 分 明 無 レ 命 二 錯 謬 一﹂ と い ふ に よ つ て 考 ふ る も、 大 師 の 繹 が 相 承 の 深 旨 な る こ と 益 と 分 明 で あ り、 ま つ 眞 言 陀 羅 尼 の 字 膿 と 梵 字 と の 關 係 も こ れ に ょ っ て 分 明 で あ る。 九、 聲 論 學 涙 と 翼 隔書 密 教 眞 言 寂 の 聲 字 實 相 論 は、 か の 六 涙 随 一 の ミ ー マ ン サ 涙 に 属 す る 聲 論 學 涙 と 至 大 の 關 係 を 有 す る も の
で あ る 。 こ の 學 派 は 如 來 滅 後 九 百 年 前 後 に お い て 印 度 の 學 界 を 大 い に 風 靡 せ し も の で 、 當 代 に 傑 出 せ し 佛 敷 界 の 論 師 つ る 陳 那 、 商 錫 羅 等 の 如 き は 、 そ の 著 因 明 論 に お い て 因 縁 無 性 の 無 我 思 想 に よ つ て 極 力 こ れ を 論 難 攻 撃 せ し は 有 名 な 事 實 で あ る 。 大 日 経 佳 心 品 に あ ぐ る 三 十 種 外 道 中 の 第 二 十 入 が こ の 聲 論 で あ り 、 こ れ と 全 く 相 反 す る も の が 第 二 十 九 の 非 聲 外 道 な る が 、 こ の 爾 者 は 聲 を 唯 一 紳 聖 澱 す る と 本 來 無 聲 の 塞 寂 境 を 眞 理 の 本 源 と す る も の な る が 故 に 、 お の つ か ら 前 者 は 密 敷 思 想 に 酷 似 す と い ふ ぺ く 、 後 者 は 顯 敷 思 想 に 酷 似 す と い ふ べ き で あ る 。 抑 も 聲 論 學 ・涙 に お い て は 大 い に 聲 顯 論 と 聲 生 論 と の 二 涙 に 分 れ 、 二 振 ま つ 各 と 四 派 に 分 れ て 入 派 と な れ る こ と は 、 慈 恩 の 義 林 章 ( 一 の 本 )、 唯 識 論 述 記 ( 一 の 末 ) 、 及 び 善 珠 の 明 燈 鋤 ( 二 の 末 ) 等 に 記 述 す る が 如 く で あ る 。 聲 顯 論 の 説 に よ ら ば 、 一 切 諸 法 は 無 常 生 滅 な る も 、 ひ と り 聲 の 禮 性 の み は 不 滅 常 佳 に し て 眞 理 の 自 燈 で あ る 。 こ の 聲 は 尋 伺 ま つ は 四 大 盤 登 等 の 衆 因 縁 に よ つ て 顯 は る ゝ も の な る が 、 こ の な か 、 か の 衆 因 縁 に よ つ て 生 す る 音 響 そ の も の は も と よ り 随 生 随 滅 の 無 常 性 な る も 、 こ の 無 常 性 に よ つ て 顯 は さ れ て 、 わ れ ら の 域 贅 理 解 の 野 象 と な る 無 盤 の 聲 こ そ は 永 遠 不 滅 の 禮 で あ る 。 つ と へ ば も し 壁 を 穿 つ に お い て は そ こ に 小 塞 聞 が 生 す る 。 こ の 小 塞 間 は ま つ 何 も の か の つ め に 密 閉 さ る れ ば 忽 ち に な く な つ て し ま う と も 、 一 旦 こ れ を と ほ し て 見 ら れ つ る 大 室 間 は 不 滅 常 佳 な る が 如 し と い ふ の で あ る o こ れ に 封 し て 、 聲 生 論 の 説 に よ ら ば 、 聲 は 本 無 な る も 衆 因 縁 に よ つ て 一 つ び 生 じ つ り し の ち は 、 聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 三 一
聲 字 實 相 論 に 封 す る 考 察 三 二 そ の 盤 性 不 磨 の 法 則 と な つ て 永 遠 に 實 在 す る 。 但 し ま つ 前 と 同 じ く 音 響 そ の も の を 常 佳 と い ふ の で は な く 、 音 響 に よ つ て 現 は さ れ つ る 法 則 と し て の 聲 が 常 佳 な り と い ふ の で あ る 。 故 に 唯 識 論 ( 一 ) に は ﹁ 有 執 一 切 聲 皆 是 常 。 待 レ 縁 顯 登 方 有 二 詮 表 一﹂ と い ひ 、 同 逓 記 ( 一 の 末 ) に こ れ を 繹 し て ﹁ 待 レ 緑 顯 者 聲 顯 也 。 待 レ 縁 獲 者 聲 生 也 。 嚢 是 生 義 。 聲 皆 是 常。 然 有 レ 時 聞 及 不 レ 聞 者 。 待 レ 縁 詮 故 方 乃 顯 登 ﹂ と い ひ 、 ま つ 義 林 章 に は こ の 二 涙 を 簡 別 し て 、 聲 顯 論 者 。 聲 盤 本 有 待 レ縁 顯 ン 之。 髄 性 常 佳 。 (中 略 )其 聲 生 論 計 。 聲 本 無 待 レ 緑 生 レ 之 。 生 巳 常 住 。 由 二 音 響 等 一所 二 登 生 -故 と い つ て ゐ る 。 由 是 観 此 、 二 派 が い ふ と こ ろ の 常 佳 の 聲 と は 常 の 音 聲 を い ふ の で は な く 、 常 の 音日 聲 に よ つ て 顯 は さ れ つ る 法 灘 と し て の 馨 な る が 故 に そ は 無 聲 の 自 禮 で あ る 。 し か ら ば こ の 無 聲 の 自 鰹 と わ れ ら が 常 に 聯 想 す る 眞 理 の 自 罐 と は 鋤 何 に 蹟 別 す が、 き や と い ふ に 、 こ は 二 涙 の 意 よ り い は ゞ 、 例 せ ば ﹁ ヤ ナ ギ ハ ミ ド り 、 ハ ナ バ ク レ ナ イ ﹂ と い ふ 蕩 合 に 、 か ぐ い ふ 言 ぱ の う ら に は 必 ら す そ の 言 語 携 成 の 文・ 名・ 句 な る 法 則 が 横 は つ て ゐ る 。 こ の 法 則 は 本 來 的 な る と 創 造 的 な る ご を 論 せ ず し て 常 佳 で あ り 二 の 法 則 を 離 れ て は 眞 理 が 存 し な い こ い ふ の で あ り 、 密 敷 の 聲 字 實 相 論 と 酷 似 す と い は れ る は 實 に こ の 黙 で あ る 。 而 し て こ の 二 涙 が 各 と 四 涙 と 分 れ る と い ふ の は 、 ま つ 内 聲 宥 情 ) に 詮 表 と 無 詮 表 と の 二 種 あ る な か の 無 詮 表 と 及 び 外 聲 ( 非 情 ) と は 、 何 も の を も 詮 す る 力 を 有 し な い か ら 無 常 な る も 、 よ ぐ こ