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中年期女性の運動経験が更年期症状に及ぼす影響

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

中年期女性の運動経験が更年期症状に及ぼす影響

上田, 真寿美

Graduate School of Human-Environment Studies, Kyushu University

https://doi.org/10.11501/3180795

出版情報:Kyushu University, 2000, 博士(人間環境学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第4章 更年期の運動行動 運動に対する態度 及びQOLと更年期症状

1.研究目的 2.研究方法

3.結果

1)

Kupperman指数とQOLの関連 2)運動行動とQOLの関連

3)運動行動と運動に対する態度の関連 4.考察

5.要約

63

(3)

1 .研究目的

健康教育の有名な 理論の一つであるPRECEDE-PROCEEDモデル(Green 企 Kreuter,

1991)によると, 健康教育 の最終目的 はQOLの 向上であると述べられている. この理論 から更年期世代の健康教育を考えると, QOLの評価は重要な視点である. しかし, QOLの 概念は研究者によって 多様であり, その構成要素も学問分野によって様々である. 更年 期の女性には身体上 , 女性 ホルモンの変化といった他集団と は異な る特徴がある. i._. 、, '-占、,

では, 杉山(1996b)が更年 期世代の身体の変化や生活環境などを考慮して定義づけた QOLの概念, r身体的, 精神的並びに社会的側面からみた主観的健康」を参考とした.

更年期症状とQOLの関連について, 後山(1997)は更年期女性を取り巻く多くのスト レスが心身の主観的健康に影響して自律神経系中枢のホメオスターシスを破綻させた結 果, 更年期症状が発症するとしている. 一方, QOLの精神的な主観的健康 と運動について は, 更年期以外の対象者でその関連が報告されている(Stewart & King, 1991;財満,

1998) . これらのこと から, 運動はQOLの主観的 健康を向上し, その結果として更年期 症状が軽減すると推測される. しかしながら, この運動, QOL及び更年期症状の関連に つ いて検討した報告は少ない(木村, 1996;木村と永井, 1999) . また, 運動の実施及び その継続率は運動に 対する態 度(感情)が好ましいほど高い可能性が ある(徳永ら,

1985) . しかし, 更年期女性を対象 とした, これらの関連については明らかにされ てい ない. したがって, 本章では更年期女性を対象に, 運動行動, 運動に 対する態度及びQOL

と更年期症状の関連について検討すること とした.

(4)

2.研究方法

1 )調査対象

対象者は, 福岡県在住の40----6 0 歳(平均49.5土5 .8 歳)の女性3 0 9名とした . 表4- 1

に対象者を年代及び月経 状 態別に区分し, 区分毎の対象者数を示した.

表4-1 対象者の年齢及び月経状態の区分と人数

年齢区分 人数(人) 月経状態

閉経前 閉経中 閉経後 不明

40�45歳未満 79 66 6 7 0

45----50歳未満 82 51 18 13 0

50�55歳未満 76 14 26 35 1

55----60歳未満 72 0 0 70 2

合計 309 131 50 125 3

2)調査方法友び内容

調査は, 質問紙法により 個別自記式で以下の項目について調査した.

①年齢

②QOL

これは, Q 0 Lの構成要素を身体的な健康の意識, 精神的な健康の意識, 生活の満足感 及び社会的参加 ・ 支援とした, 杉山(1996b)のQOL質問票(表4 - 2 )を使用した.

これは更年期世代を対象とした質問票であり, 産婦人科領域でもよく使用されてい る(菊池ら, 1997) . 採点方法については , 身体的な健康の意識及び精神的な健康 の意識は, それぞ れの項目について「月に1回以下」が 3点, I週に1----2 回jが2点,

[週に3---4回」が1点及び「ほとんど毎日」がO点とし, 身体的な健康の意識は0--- 27点, 精神的な健康の意識はo� 3 6点となる. 生活の満足感は, それぞれの項目に ついて「全くそう感じ ていない」が0点, Iあまりそう感じていないJがl点, Iま

65

(5)

う 感じている」 が2 点及び「そう 感じている」 が3点 合 計は0---15点 る. 社会的参加 ・ 支援では, 27及び28 項目は 「全くそう 感じていない」が0 点,

「あまりそう感じていないJが1点, rま あそう感じている」が2点及び「そう感じ ている」が3点とする. また2938項目は, íはい」が1点, íいいえJが0点とし , 合計はo1 6点となる. したがって得点が高いほどがQOLは高いと 評 価する.

③運動行動

これは, 橋本 (19 9 5) の質問票 (表3- 3 ) を用いて, その運動の 強度, 時間及び頻 度を調査し, 運動量を算定した.

④運動に対する態度

これは, 徳永ら (19 85) の スポーツ行動診断検査 (DISC.4) の中の, スポーツ意識 に関 する調査項目 (表4 - 3) を使 用して, スポーツに対する感情 (態度) , スポーツ の効果(信念) , 規範信念の3因子を測定し, 運動に対する態度とした. 採点方法は,

「非常に当てはまるJが4点, íかなり当てはまる」が3点, rあまり当てはまらな いJが2点及び「全く当てはまらない 」 が1点とする. 但し, 2, 4, 6及ぴ8項目は逆 の得点, すなわち「非常に当て はまる」カ{1点, rかなり当てはまるJ治宝2点, rあ

まり当てはまらない」が3点及び「全く当てはまらないJが4 点とする. スポーツに する 態 度は8---32点, スポツの 効 果は1560点及び規範信念は312点となり 点数 がほど スポーツに対する態度は高いと評 価する.

⑤更年期症状

更年期症状はKupperman指数 (表2-1b) を使用して評価した.

3)統計処理

Kupperman指数とQOLの関連は, Kupperman指数を従属変数に, Q 0 L (総得点, 身体的 な健康の意識得点 , 精神的な健康の意識得点, 生活の満足感得点及び社会的参加 ・ 支援 得点)を独立変数とする重回帰分析 (ステップワイズ法)を実施した. 重回帰分析への独立 変数の投入基準は従 属変数と の偏相 関 係数のF値が4.0を 越えることとした. Q 0 Lと 運動 の関連及び運動と 運動に対す る態度の関連については, 運 動の有無によるt検定を実施 し た . ず れも 有水 準を5%満とした .

(6)

ほとんど毎日口口口口口口口口口

週に

3 1

4回口口口口口口口口口

週にli2回口口口口口口口口口

(杉山、 1996) 更年期のQOL質問票

表4-2

-回以下口口口口口口口口口

1)最近のあなたの心身の健康状態はいかがですか?

(身体的な健康の意識, 0�27点) 1. むかつき, 吐き気がある.

2. めまいがする

3. 手足がしびれたり 感覚がに ぶったりする

4. 腰痛, 肩こり, 手足の節々(ふしぶし)の痛みがある 5 疲れやすい.

6. 頭痛がする 7. 尿の回数が多い

8. 顔があっくなる(ほてる) 9. 寝汗を かきやすい.

(精神的な健康の意識, 0�36点)

10. 物事への興味が持てない . 11. 何をしても楽しい気持ちがしない . . 12. 生き 生きしない. やる気がお きない. 13. 晴れやかな気分がしない. 14. 物忘れしやすい. 15. 集中できない. 16. ちょっとしたことで驚いたり 気が動転すみ . 17. ちょっとしたことで緊張する. - 18. 性関係(夫婦関係も含みます)に不満を感じる. . . . 19. 夜, なかなか寝つかれないで困る. 20 熟睡感がなくて困る. 2し 自分が魅力がなくなったように感じる.

全て あじ まてそい くいまて あいうる そなりいそる感 ういそなう うい感

(生活の満足感, 0�15点)

22. 毎日の仕事(家事)に満足している . 23. 気力(活力)に満ちている. 21 将来に希望をもっている 25. 生きること(人生)はおもしろく毎日が新鮮である. 26. 生きること(人生)は価値がある. 2)最近, あなたは生活や 人生に対して

どう感じていますかっ

67

(7)

3)人間関係, 社会参加についてどう感じていますか?

全てあじ まてそい く い まて あい うる そな りいそる感

ういそな う うい 感

(社会的参加・支援, 0�16点)

27. いろいろな活動(例えば, PTA, 同窓会, カルチャー センター, 婦人会)などに参加するこ とは大切である 28. 社会的な関わり (仕事を含めた)を持つことに意義を

感じている

4)あなたの, 日常の人間関係, 社会関係 についてはいかが ですか?

29. 日常生活のなかで , あなたの持っている技術や知識を 役立てていますか?・

30. 自分が, 他の人々にとって大切な存在であるとか,

社会的に役立っていると思いますか?

31. 何か活動をともにする組織とか, クラプに所属して

v、

、、 \t、

いますか?(例えばPTA, 同窓会, カルチャーセンターなど)口 32. そのような組織とかクラブで責任のある立場にありますか? 33. この一年間に, ボランテイア活動をしましたか?・ ・ ・ ・ ・ 34. この一年間に, 政治運動, 市民運動, 消費者運動などに

参加しましたか? . 35. この一年間に, 友人, 親類, 隣人との集まりに参加しましたか?口 36 この一年間に, 環境保護運動に参加したこ と がありますか?・ 37 あなたの身近には, ちょっとした手助けをしあうよう な

人がいますか? . . 38. あなたの身近には, 病気になったとき力になってくれる

人がいますか? . 採点)J法

1 �21項目は「月に1回以下」が3点, I週に1�2回」が2点, I週に3�4回Jがl点,

「ほとんど毎日」がO点とする. 22�28項目は「全くそう感じていない」が0点,

|あまりそう感じていないJがl点, Iまあそう感じている」が2点, ["そう感じ ている」が3点とする. 29�38項目は「はいJが1点, Iいいえ」が0点とする.

(8)

表4-3 スポーツに対する態度尺度(DISC.4) (徳永ら, 1985)

非は かは あは全は 常ま なま まま くま にる りる りら 当ら 当なでな てい はい 1 スポーツに対する1)運動やスポーツをしたら 下のような気持ちはどれくらい当てはまりますか。

感情(態度) l.スポーツの後は満足感が得られるだろう . .

特定状況の設定 質問項目

2.何となく心配で落ち着いていられない.

3.考えるだけでうきうきした気持ちになる 4.みじめなことにあいそうな気がする 5.楽しいことがあるに違いない.

6.はずかしいことが起こりそうな気がする

7.スポーツ後は快い気持ちになるだろう. . . 8.こわいめにあいそうな気がする . . 2 スポーツの効果 2)もし, I今後, スポーツを何ヵ月か続ける」としたら,

(信念) 下のようなことは, どれくらい当てはまりますか.

9.忍耐力の強い性格になる. . . 口 10.思いやりのある協力的な性格になる. 1l.胃や腸の調子がよくなる. . .口 12.競争する楽しさを味わうことができる . . 13.グループの連帯感(むすびつき)が増す. 14.ぐっすり眠るのに役立つ . . 15.将来, 役に立つ特技が得られ . . . 16.エチケットやマナーがよくなる. . . 17.素早い動きができるようになる 18.自分の可能性(実力や限界)をためすことになる. 19.毎日の生活がいきいきとし 充実したものになる .

.

20.身体の余分な脂肪がとれる. 2l.自分の能力を他人に認めてもらえる . . 22.明るい性格になる . .口 23.ふとりすぎの予防になる.

3 規範信念 3)次のようなことは, どれくらい当てはまりますか.

24.私の家族は, 私が「スポーツをすること」を

期待している

25.私の友人は, 私が「スポーツをすること」を

期待している

26.私の周囲には(家族や友人以外で), 私が「スポーツを

すること」を期待している人がいる 保点方法:

「非常に当てはまる」は4点, Iかなり当てはまる」は3点, Iあまり当てはまらない」は2点, I全く当 てはまらないJは1;点とする. 但し, 2, 4, 6, 8項目は逆の得点, すなわち「非常に当てはまるjが1点,

「かなり当てはまる」が2点, Iあまり当てはまらない」が3点, I全く当てはまらないjが4点とする.

(9)

3 .結果

1) Kupperman指数とQOLの関連

表4・4に対象者のKupperman指 数と QOLの平均値及び標準偏差を示し た. 対象者の Kupperman指数は12.94土9.0点 であり, 平均的には日常生活に支障をきたすとされる 15点より低かった. また, QOLの総得点, 身体的な健康 の意識得点, 精神的な健康の意 識得点, 生活の満足感得点及び社会的参加 ・ 支援得点については杉山ら (1996) の調査 結果と同じであり, この世代の女性の平均値とほぼ一致していた.

Kupperman指数とQOLの関連を検討するため, Kupperman指数 を従属変数に, Q 0 L総 得点, 身体的な健康の意識得点, 精神的な健康の意 識得点, 生活の満足感得点及び社会 的参加・支援得点を独立変数とする重回帰分析(ステップワイズ法) を実施した (表4- 5) . その結果, steplで身体的な健康の意識が投入され, R 2値は0. 533で有意であった . step2ではQOL総得点が投入され, R 2値は0.607 と増大し有意であった. step3では精神 的な健康の意識が投入され, R2値はO.61 3とさらに増大し有意であった . ただし, 生活 の満足感と社会的参加 支援 は本分析において投入の基準とした偏相関係数のF値(4.0) を越えていなかったため, 分析はstep3で終了された. このようにKupperman指数には 身体的な健康の意識, Q 0 L総得点, 精神的な健康の意識の有意な寄与が認められた. また この係数の符号はすべて負であったため, 身体的な健康の意識, QOL総得点及び精神的 な 健康の意識の得点の高い者では, Kupperman指数は低下することが示された.

(10)

表4・4 対象者のKupperman指数とQOL

Mean SD

Kuppcrman指数 12.94 9.00

QOL総得点 75.56 10. 70

身体的な健康の意識 23.48 3.64 精神的な健康の意識 32.35 5.01 生活の満足感 9.05 3.18 社会的参加・支援 10.69 2. 74 (n=309)

表4・5 Kupperman指数とQOLの重回帰分析

Beta Fイ直

step 1 身体的な健康の意識 -0.730 349.690

step 2 身体的な健康の意識 -0.437 69.406

QOL総得点 ー0.401 58.313

slep 3 身体的な健康の意識 ー0.453 74.089

QOL総得点 ー0.261 10.109

精神的な健康の意識 ーO.150 4.819 (n=309)

71

R2

0.533 * 0.607*

0.613 *

* p<.0001

(11)

2)運動行動とQOLの関連

表4-6には, 運動行動の有無とQOLの関連を示した. 運動の有無は, 橋本(1 9 9 5 )の質

問票で調査した運動強度, 時間及び頻度を参考にして, 運 動を有 りと無 しの2群に分類し た. QO L総 得点は, 運動をしていた者では7 6 . 8 ::t10 . 5点であり, していない 者の7 3 . 4 ::t

10. 7点より有意に高かった. 下位因子である生活 の 満 足 感及び社会的参 加 ・ 支援でも有 意な差が認められ, 運動をしている 者の方が高かった. また , 精神的 な 健康の意識で も 同様の傾向が認められた.

このように運動行動とQOLの関連では, 運 動を実施している者はQOLが高く, 特に生活

の満足感及び社会 的参加 ・ 支援でその傾向が顕著であった. また, 健 康の意識に関して は7 身体的よりは精神的 な 健康の意識で運動の有無に差が認められた.

表4-6 運動行動とQOLの関連

運動の有無

QOL 有り (n=196) 無し(n=113) 有意性 Mean::t SD Mean::tSD

QOL総得点 76.8土10.5 73.4::t 10. 7 **

身体的な健康の意識 23.6::t3.8 23. 2::t3. 3

精神的な健康の意識 32.8土4.7 31.6::t5.4 T 生活の満足感 9.5::t3.1 8. 3::t3. 1 **

社会的参加・ 支援 11.0::t2.6 10.2::t2.9 *

料p<.Ol, * p<. 05, t p<O.l

(12)

3 )運動行動と運動に対する態度の関連

表4・7には, 運動行動 の 有 無と運動に対する態度の関連を示した. 運動に対する態度総

得点は, 運動をしていた者では7 4.8 土 1 0. 3 点であり, していない者の7 1 . 8土1 0. 4点よ り有意に高かった. また, 下位因子であるスポーツに対する感情及び規範信念で有 意な 差がみられ, 運動をしている者の方がしていない者より得点が高かった.

このように運動行 動と運動に対する態度の 関連 では, 運動実施者の 方が運動に対する 態度が高く, 特にスポーツに対する感情や規範信念でその傾向が顕著であることが認め

られた.

表4-7 運動行動と運動に対する態度の関連

運動に対する態度

総得点

スポーツに対する感情 スポーツの効果 規範信念

** p<. 01, * p < . 05

運動の有無

有り(n=196) 無し(n=113) Mean士SD Mean土SD 74.8土10.3 71. 8::f:: 10.4

26.9::f::3.1 24. 9::f::3. 9 40.5土7.0 40.2::f::7.1 7. 4::f::2. 3 6. 8::f::2. 4

73

有意性

*

**

*

(13)

4. 考察

Kupperman指数とQOLの 関連では, Kupperman指数に対してQOL総得点 , 身体 的な 健 康の意識, 精神的な健康の意識が寄与していた. これまで, 更年期症状とQOLの関連につ いて詳細に検討した 報告はない. しかしながら, 臨床では中年期女性の健康, ひいては

QO Lに対して, 更年期症状が大きく影響してい る(麻生 , 199 4)ことは周知の事実で あ り, 症状の軽減やQOLの向上 を評価基準とする様々な治療が検討され ている(菊池ら,

1997) . Kupperman et al. (1953)が開発したKupperman 指数の症状と, 杉山

(1996b)が開発したQOLの質問票の身体的及び精神的な健康の意識の項目も同様の内容

が多くみられた. これらのことから, 更年期症状はこの世代のQ0 L, 特に心身の主観的健 康に負の影響を与える重大な問題であることが改めて確認された.

運動行動とQOLの関連では, 運動をしてい る者でQOL総得点, 精神的な健康の意識, 生 活の満足感及び社会的参加 ・ 支援が高かった. これは第3章の運動経験と更年期症状の関 述で, 運動をしている者の精神神経系症状が低かったことと一致して いた. また, 規則 的運動者は生活の満足感が高いとする先行報告(木村, 1996;木村と永井, 1999)とも 一致していた. これまで身体活動とQOLに関して, 身体活動は「生活についての個人の満 足度jに影響することが示唆 されている(サリスとオーウェン, 2000). この「生活に ついての個人の満足度」を評価することのできるセルフエスティーム(自尊感情)は , 身体的に活動的な人の方が高いことが報告されている(McAuley and Rudolph, 1995) .

前述したように, 更年期は「喪失と否定の時期J (Fedor-Freybergh, 1977)であり,

閉経によって女性でなくなるといった自己を否定的に見る者も少なくない. 本研究の運 動をしている者は , 運動をすることによって身体的な体力の保持 ・ 増進はもちろんのこ

と, セルフエスティーム, 心理的安寧及び体力への有能感の向上などの効果も享受して いたものと考えられる. これらことから, 更年期世代の運動は, QO Lの精神面の主観的健 康や生活の満足感といった側面を向上する可能性が示唆された. また 社会的な活動に

(14)

参加することに積極的な者, また身近かに支援してくれる人がいる者ほど運動をしてい ることから, 女性が家から外出できる環境づくりも重要と考えられる.

運動と運動に対する態度の 関連 では, 徳永ら(1985)の研究と同様に 運動に対す る

感情や周囲の期待に対する信念の高さが運 動実施に影響を与えていた . このこ とから,

更年期症状の予防や軽減に は運動に対して苦手意識を持たずに楽しめ る運動を見つけ , 運動に対する好意的態度を形成することが必要である. さらに周囲からの期待の高さ,

すなわち仲間 ・ 家族や医師などから 運動を勧められて実施し ている者が多いことから , 周囲の期待はこの世代の運動をして いない 者にとっ て運動を始めるき っかけになりえる ことも示唆された.

以上のように, 更年期症状はこの世代のQOLと密接に関連していること, また運動は精 神面の主観的健康, 生活の満足感及び社会的な支援といったQOLの側面に貢献しているこ と, さらに運動に対する感情が好ましいほ ど運動を していることが明らかとなった. こ のことから, 中年期の運動は更年期症状の軽減, さらにはQOLの向上が期待できることが 示唆された.

75

(15)

5 . 要約

本章では, 運動行動, 運動に対する態度及びQOLと更年期症状の関連について検討した.

更年期症状とQOLの関連では, QOL総得点, QOLの下位因子である身体的な健康の意識及 び精神的な健康 の意識がKupperman指数に有意に寄与していた . また, QOLと運動行動 の関連では, Q 0 L総得点, 精神的な健康度, 生活の満足度 及び社会的支援度と運動行動の 有無の聞に有意な関連がみられ, 運 動をし ている者ではそれ らの得点 が高かった. さ ら に, 運動と運動行 動に対する態度の 関連では, 運動の有無と運動に対 する態度 , その下 位因子であるスポーツに対する感情及び規範信念の聞に有意な関連がみられ, 運動をし ている者では それらの得点が高かった. これらのこと は, 更年期症状 はこの世代のQOLと 密療に関連し, 運動は精神面の主観的健康, 生活の満足感及び社会的な参加 ・ 支援といっ た側面に貢献しており, 運 動に対す る感情が好まし いほど運動をしているとい った関係 であることを示している .

以上のことから, 中年期の運動は更年期症状の軽減, さらにはQOLの向上が期待できる ことが推察された.

(16)

第5章 更年期症状に対する運動の介入指導

1. 3か月の運動教室による更年期症状の変化 1)研究目的

2)研究方法 3)結果

(1)介入前後の運動群と非運動群の更年期症状 (2)介入前後の運動群と非運動群のQOL

(3)介入前後の運動群と非運動群の運動に対する態度 4)考察

5)要約

2. インタビューによる事例研究 1)研究目的

2)研究方法 3)事例報告 4)考察

(1)インタビューによる「発症要因」の分析

(2)インタビューによる「更年期症状の知識や情報」の分析 (3)インタピューによる「運動に関連した知識や情報」の分析 (4)インタビューによる「更年期症状の対処法」の分析

5)要約

(17)

1. 3か月の運動教室による更年期症状の変化

1 )研究目的

これまでの更 年期症状に 対す る 運動介入 で は, 1 0---12週間の低強度 の運動によって

Kupperman指数や血管運動神経 系の症状が軽減したと報告されている(進藤ら1976 :川

久保と本木, 199 5) . しかし, 本研究の調査(第3章 )では精神神経系症状にも運動の効 果が認められたこと から, 神経質や憂うっと いった精神神経系 症状に対する運動介入の検 討が必要である.

本章では更年期症状への運動の有効性を検証するため, 第3章及び第4章の調査研究の結

果を参考にして, 更年期女性を対象に3か月間の運 動介入を実施し, 更年期症状に及ぼす 運動の効果をKupperman指数, QOL及び運動に対する態度の変化から 検討することを目的 とした.

2)研究方法

( 1 )調査対象

対象者は, 福岡県内に居住する40---60 歳 未 満(平均48.4:i:9.8歳)の女性35名であっ た. 対象者は規則的運動をしていない更年期 症状を持つ女性で, 更年期症状について何ら かの処方を受けていない者 さらに閉経をしている者は自然閉 経であった者とした. 表

5. 1に対象者を年代及び月 経 状 態別に区分し, 区 分毎の対象者数を示した.

表5・1 対象者の年齢及び月経状態の区分と人数

年齢区分 人数(人) 月経状態

閉経前 閉経中 閉経後

40�15歳未満 6 6 0 0

45�50歳未満 10 5 5 0

50�55歳未満 13 0 8 5

55�60歳未満 6 0 0 6

合計 35 11 13 11

(18)

( 2)調査方法及び調査内容

対 象者は, 3 か月間の運 動教室を実施 する群(以下, 運動群とする)と運 動教室及び運 動を実施しない群(以下, 非運動群とする)の2群とした.

対象者には質問紙法により個別自記式にて以下の項目を, 運動教室の開始前(第1回目) と3か月後の運動教室終了時(第2回目)に調査した.

①年齢

②現在の月経状態

③更年期症状についての通院や処方歴

④QOL

これは, 杉山ら(1996)の更年期のQOL質問票(表4・2)を使用した.

①運動に対する態度

これは, 徳永ら(1985)のスポーツ行動診断検査(DISC.4)(表4・3)を使用した.

⑤更年期症状

症状については, Kupperman (表2-1 b)指数を用いて調査した.

( 3 )運動内容

運動群には, 3か月間の運動教室を実施した. それは更年期症状に関する講義を 30分 と 有酸素運動を約60分の内容を週にl回, 計12回実施するものであった. 運動教室の内容の 詳細については表 5-2に示し た. 運動内容は 第3章の 調査研究で得られた結果, すなわち 運動が神経質や不眠などの精神神経系症状に有効であったこと, その運動は適度なきっさ で約60分, 週に3回程度であったこと, またサークルなどの集団で運動を行なうことによっ て仲間作りなどの心理的効果が望めることを考慮した. 具体的な運動としては, 症状の軽 減が示唆(杉山, 1995)され, 怪我の予防にもなるストレ ツチ体操を毎回, また, 2回に

79

(19)

l回の割合で低強度の有酸 素運動としてソフトエアロピックダンスを取り入れた. また,

更年期症状の一種である骨粗懇症の予 防 のための負荷運動としてダンベル体操を2回実 施 した. さらに , 生活習慣病の予防や軽減に最も有効とされているウォーキングを3回実施 しg 教室以外の運動を促すような運動プログ ラムとした. このような運動プログラムに加 えて, 更年期症状についての基本的な知識や情報の提供とグループ形式による症状の対処 法などの意見交換を実施した. これは更年期世代への健康教育 すなわち更年期症状に 対

する知識や情報を提供する機会が少ないと の指摘(読売新聞 1996)や悩みを共有す る 仲間づくりなどの観点から採用した.

また, 対象者には教室以外に週に 2回程度, 同様の有酸素運動を実施することを目標設 定して貰い, その 実施程度 をレポートの 提出によ って確認した. 一方, 非運動 群には, 3 か月間, 運動をしていないことをレポートにて確認した. なお 具体的な講義内容や運動 内容は資料編に示した.

( 4 )統計処理

第l回目と第2回目の調査におけるKupperman指数, QOL得点及びDISC.4は, 平均値土 事準偏差で示した. そしてKupperman指数, QOL得点及びDISC.4は, 介入前後(第1回 目 と第2回目)と運動の有無(運動群と非運動群)の二元配置分散分析を実施した. そしてF 値が有意な場合, 平均値の差の検定は多重比較検定を行なった. 有意水準は5%水準未満

とした.

(20)

表5・2 運動教室の実施内容

-会場:r市保健福祉センター

・時間: 10: 00 ---11 : 30

-内容

回数 講義内容 運動内容

l 調査, 更年期症状とは? ストレッチ, ソフトエアロピックダンス 2 更年期症状と運動① ストレッチ, ソフトエアロピックダンス

3 更年期症状と運動② ストレッチ, ウォーキング

4 更年期症状と栄養 ストレッチ ソフトエアロピックダンス

5 更年期症状と環境 ストレッチ ウエイトトレーニング(ダンベル体操等) 6 更年期症状と性格 ストレッチ, ソフトエアロピックダンス

7 この分野の最近の情報紹介ストレッチ, ウォーキング

8 情報交換 ストレッチ, ソフトエアロピックダンス

9 更年期症状全般のまとめ ウエイトトレーニング(ダンベル体操等) 10当施設の運動教室の紹介 ストレッチ, ソフトエアロピックダンス 11座談会, 調査 ストレッチ, ウォーキング

12調査結果の説明, 質疑応答ストレッチ, ソフトエアロピックダンス 注)具体的講義及び指導内容は資料編に示した.

81

(21)

更年期教室の様子

ソフトエアロビクス

更年期症状の対処法などの意見交換

(22)

ストレッチング

運動器具の使用説明

(23)

3 )結果

( 1 )介入前後の運動群と非運動群の更年期症状

表5・3には, Kupperman指数について介入前 後と運動群, 非運動群による二元配置分散

分析の結果を示した. その結果, K u p'p e r m a n指数, 症状系では精神神経系症状, 症状別 では「神経質J, I憂うつ」及び「倦怠Jに有意な運動の主効果が認められた. 特に平均 値の多重比較検定の結果, これらすべての得点について運動介入前では運動群と非運動 群 で有意差はなかったが, 運動介入後では運動群が非運動群よりも有意に低くなった.

このように, 運 動介入によって, Kupperman指数, 精神神経系 症状, I神経質J ,

「憂うつJ及び「倦怠」の症状は改善された.

表5-3介入前後の運動群と非運動群のKupperman指数

運動群 非運動群 分散分析の結果

更年期症状 Pre Pos t Pre Pos t 主効果 交互作用 Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD 運動 介入前後

Kllpperman指数 15.80 9.44 12.25 7.12 18.20 8.62 18.73 5.39 * 症血管運動神経系6.75 3.84 6. 10 4.05 7.53 4.22 8.20 4.06 状運動神経系 1.50 0.89 1.15 0.93 1.73 1.16 1.33 0.98 系精神神経系 7.55 5.95 5.00 4.80 8.93 5.30 9.20 2.18 *

血管 6.20 3.55 5.80 3.78 6.93 3.85 7.47 3.96 知覚異常 1. 70 2. 08 1. 00 1. 21 1. 07 1. 67 1. 33 1. 45 不眠 1.40 1.73 0.80 1.51 1.33 1.95 1.20 1.27 11神経質 1.70 1.75 0.90 1.52 2.13 1.60 2.40 1.35 * 症憂うつ 0.90 0.85 0.60 0.68 1.13 0.74 1.20 0.68 * 状めまい 0.15 0.37 0.20 0.52 0.67 0.90 0.33 0.49

倦怠 1.10 0.91 1.00 0.73 1.80 1.01 1.93 0.70 * 関節痛 1. 50 0.89 1. 15 0.93 1. 73 1. 16 1. 33 0.98 頭痛 0.60 0.68 0.45 0.61 0.80 0.78 0.73 0.70 動惇 0.55 0.69 0.30 0.57 0.60 0.74 0.73 0.70 蟻走感 0.00 0.00 0.05 0.22 0.00 0.00 0.07 0.26

* p<. 05

(24)

( 2)介入前後の運動群と非運動群のQOL

表5-4には, QOLについて介入前後と運動群 , 非運動群による二元配置分散分析の結果 を示した. その結果, QOL総得点と生 活の満足感に有 意な運動の主効果が認められた. 特 に平均値の多重比較検定の結果, 下位因子の生活の満足感は運動介入前 では運動群と非 運 動群で有意差はなかったが, 運動介入後では運動群が非運動群よりも有意に高くなった.

このように運動介入によって, QOL総得点, 特に下位因子の生活の満足感は向上した.

表5・4 介入前後の運動群と非運動群のQOL

運動群 非運動群 分散分析の結果

QOL Pre Pos t Pre Pos t 主効果 交互作用

Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD 運動 介入前後

QOL総得点 72.75 9.15 73.95 8.33 68.67 9.80 68.73 10.99 * 身体的な健康の意識21.75 4.09 22. 35 4. 12 20.40 3.54 21. 07 2.60 精神的な健康の意識31.35 5.09 31. 35 5.72 29.93 5.48 29.60 4.90 生活の満足感 9.10 2.25 9.65 1.76 8.07 3.17 7.87 3.70 *

社会的参加・ 支援 10. 55 3.05 10. 60 3.25 10.27 2.34 10. 20 2.60

* p( 05

85

(25)

( 3 )介入前後の運動群と非運動群の運動に対する態度

表5-5には, 運動に 対する態度について介入前後と運動群, 非運動群による二元配置分 散分析の結果を示した. その結果, 総得点, スポーツに対する感情及び規範信念に有意な 運動の主効果が認められた. 特に平均値の多重比較検定の結果, 総得点は運動介入前で は 運動群と非運動群で有意差はなかったが, 運 動介入後では運動群が非運動群よりも有意に 高くなった.

このように運動介入によって , 運動に対する態度は向上した.

表5ー5 介入前後の運動群と非運動群の運動に対する態度

運動群 非運動群 分散分析の結果

運動に対する態度 Pre Pos t Pre Pos t 主効果 交互作用 総得点

Mean SD Mean SD Mean SD Mean SD 運動 介入前後 75.55 10.29 77.50 11. 06 71. 07 11. 49 70.40 10.10 *

スポーツに対する感情 26.80 3.76 27.20 3.24 24.20 4.07 23.20 4.07 *

スポーツの効果 規範信念

* P<' 05

40.75 7.35 42.90 7.25 40.87 7.91 41. 33 6.83 8.00 2.53 7.40 0.83 6.00 1. 60 6.87 1.10 *

(26)

4 )考察

3か月間の運動介入 後, Kupperman指数に運動の有意な主効果が認 められた. 特に, 症 状系では精神神経系症状, 症状別では神経質, 憂うつ及び倦怠において 運動介入後の 運

動群の得点は非運動群よりも有意に低かった. その理由として運動の心理的効果の他に , 今回の運動教室では更年期症状に対する情報を提供したことが考えられ る. 前述したよう

に更年期世代への健康教育は他の世代のそれよりも充実していないため, 突然の身体の不 調に戸惑ったりする者が少なくないという指摘(読売新聞, 1996)から, 今回の運動教 室では更年期症状の原因や対処法に関する講義を約30分間, 運動前に行なった. これには 運動を実施する際には, その運動に対する認識, すなわち意図や効果を理解して実施し た 場合, その運動の継続や効果など に好影響があると示唆されてい る(岡, 1998)ことも 意図したためである. また今回の講義の中には栄養, 運動及び休養など生活習慣の改善 が 生活習慣病や更年期症状の予防や軽減に有効であるとの内容も含まれており, 目的意識 を 持って運動を実施したことが, 症状に対する知識を得たという精神的な安定を含めて, こ のような結果に結び付いた可能性が推測された. このように更年期の健康 情報と運動を組 み合わせた健康教室形式は, 運動のみの教室より有効である可能性が考えられる.

QO Lでは, 3か月の運動介入後, 運動の有意な主効果が認められ, 運動群のQOLの総得点 は非運動群よりも有意に高かった. またQOLの下位因子の中では, 生活 の満足感に運動 の 有意な主効果が認められ, 運動介入後に運動群は非運動群よりも有意に高かった. これは 第4章の調査結果やこ れまでの調査研究(木村, 1996 ;木村と永井, 1999)と一致し て いた. 第4章で述べたよう に, 運動は生活の満足感と有意な関連があるセルフエスティー ムや心理的安寧を向上させることが示唆されている(McAuley and Rudolph, 1995) .

しかも疾患を持つ者や高齢者など, 当初の制約が大きい者ほど改善の度合いが大きいこ と も示されている(Stewart et al., 1994) . 本対象者も更年期症状を持っていたこと

(27)

から, 生活の満足感は運動によって顕著に向上したのかもしれない. また, これまでの介 入研究では対象は異なる が肥満女性 に3か月の運動 介入を実 施 したところ QOLの精神的 健康が有意に改善されている(Rippe et al. , 1998) . このように, 3か月という期間 は運動の生理学的効果と同様, QOLに対する運動介入を評価する上で一つの目安と成り得 る期間かもしれな い. 以上のことから, 3 か月 の運動介入は更年期女性のQOL, 特に生活 の満足感を向上させる ことが示唆された.

一方, 運動の実施に影響を与えるとされる運動に対する態度は, 運動の有意な主効果が 認められ, 運動介入後の運動群は非運動群 より有意 に高かった . これは, 第4章の調査結 果や徳永ら(1985)の報告とも一致していた . このことから, 今回の運動教室のように 競争がなく, 自身の身体状態に焦点を合わせ た低強度の有酸素運動を中心とした教室形式 による運動は, 運動に対する嫌悪感や苦手意識, 不安といったネガテイブな感情を持つこ となく実施でき, 態度変容に好影響を与えたと推察できる.

(28)

5 )要約

本章では, 前述した更年期症状への運動の有 効性を実証するため, 更年期女性を対象に

3か月間の運動介 入を実施し, 更年 期症状に及ぼす運動の影響を検討した. 対象者は, 40

60歳未満の運動教室に参加する運動群と参加しない非運 動群の35名であった. 3か月 の 運動介入前後の更 年期症状, QOL及び運動に対する態度を検討した. その結果, 更年期 症 状については, Kupperman指数, 症状系では精神神経系症状, 症状別で は神経質, 憂う つ及び倦怠に運動の有意な主効果が認められ, 運動 群は3か月後の再調査で非運動群より 有意に低かった. 同様に, QOLについても運動の有意な主効果が認められ 運動群では総 得点及び生活の満足感が介入後で非運動群よ り有意に高くなった. さ らに 運動に対す る

態度においても運動の有意な主効果が認められ, 介入後で運動群は非運動群よりも有意 に 高かった. このように, 3 か月の運動介入は更年期 症状の軽減及びQOLや運動に対する 態 度の向上に有効であることが示唆された.

89

(29)

2 . インタビューによる事例研究

1 )研究目的

更年期症状は, その発症要因が複雑であることから 個人差が大きい. したがって運動 による影響も個人差が大きいことが推測される.

ここでは3か 月の運動介入に参加した対象者にインタビューを行ない, 発 症要因とさ れ ている心理的要因や環境的要因について考慮、しながら, 症状に与える運動の影響について 詳細に検討することとした.

2 )研究方法

( 1 )調査対象と内容

対象者は、 3か月の運動教室に参加した4060歳未満の女性11名とした.

インタピユ}は1対1の面接法を用いた. インタビュー内容は、 下記の項目とした.

①氏名

②年齢

③職業

④家族構成

①月経状態

⑤Kupperman指数

⑦症状の発症要因について

(30)

これは自身が症状を発症した要因として, 内分泌, 生活環境及び心理的要因のいずれ が強く影響していると思うか, またその状況について質問した.

③更年期症状についての知識や情報について

これは更年期症状以前からそれらの知識や情報を持っていたか否か またその情報 を どこから得たか, またそれらが役に立ったかなどについて質問した.

①運動について

これは運動が更年期症状と関連があることの知識を持っていたか否か また運動をす ることによって症状に変化が現れたかについて質問した.

⑩更年期症状の対処法や考えについて

これは自分の体験を通して更年期症状の対処法などについて質問した.

91

(31)

3

)事例報告

主盟L

〈対象者〉

52歳 パート勤務

〈更年期症状〉

介入前 . Kupperman指数-16点, 主たる症状-不眠, 不安 介入後 . Kupperman指数-10点

〈月経状態〉

閉経中

発症要因について, 生活環境が強く影響していると感じている. 4人家族で, 本人, 夫,

子供2人(娘, 息子)であるが, 約1年前に娘が結婚, 息子が就職のため同時に家を出て,

夫と2人にな った. 夫は無口で会話が少なく , 寂しくてたまら なかった. ま た, 近くに住 んでいる夫の親の介護とパート勤めの両立も精神的に苦しかった. その頃から息苦しさや 不眠といった症状が現れたが, 夫に 症状の辛さを打ち明けることができなかった. また , それまで気にもと めなかった夫の行動が気に なり, 夜遅くなると浮気をしたのではない か など, 気分が落ち込むことがよくあった. そこで, コレステロール値が高いことから か かっていた内科の医師にこのことを相談したところ, たぶん更年期障害の一種だろうと言 われ, 症状から神経内科を紹介された. その 病院は夫も同伴しなければならないため, 夫 に症状を打ち明けた. 夫は彼女が苦しんでい たことを知らなかったらしく , 一緒に病院へ 行き, 自分の趣味であるクラッシック音楽の鑑賞も勧めてくれた. そのことから共通の 会 話も増え, 夫婦2人の生活にも慣れてきた. 現在は1年前より症状も軽くなってきている.

更年期症状について の知識や情報について は , 仕事仲間, 書物(新聞, 本など)及びテ

(32)

レピなどから得ていた. また, 更年期症状に運動が良いことを相談した内科の医師より聞 いており, コレステロール値の点からもウオ}キングを勧められている. しかし, 実際に は運動をすることによっての更年期症状の変化は感じていない.

更年期症状の対処法については, 自身の体験を通して, 精神面を安定させることが必要 だと感じたそうだ. 自分にエネルギーを与えてくれるような友人や趣味(生きがい)を 持 つこと, そのためには若い頃から打ち込める何かを持つことも大切であろうと思うと語っ

ている.

93

(33)

型�

〈対象者〉

54歳 自営業の手伝い

〈更年期症状〉

介入前: Kupperman指数-26点, 主たる症状-筋肉痛, 神経質

〈月経状態〉

閉経後(2年経過)

発症要因について, 加齢と性格が影響していると感じている. 現在, 家族は夫と社会人

の娘の3人家族であ り, 息子は結婚し て近くに住ん でいる. 家族及び息子夫婦とはとて も 上手くいっており幸せである. 自身の性格が神経質であると感じており, 狭心症の発作へ の不安などから十二指腸漬蕩を患ったり, 今もニトログリセリンを常時携帯している. し かし娘が看護婦であることから更年期障害の知識や情報を持っており, それに対する不安 は全く無かった. 症状も右肩の筋肉痛が主であり, その他の症状はほとんど感じていない.

運動が更年期症状に良いことも娘から聞いていた. 今回, 運動することによって右肩の筋 肉痛がかなり改善され, 痛 み止めの注射を打つことがなくなった. また, 運動教室に参加 することがとても楽しみで生活のはりにな り精神面でも良か ったような気がするとのこと だった.

自身の体験を通した更年期症状への対処法については, 夫や友人など話をする相手が い ること, また趣味(生きがい)を持つことが大切であろうと思うと述べている.

(34)

記lユ

〈対象者〉

51歳 主婦

〈更年期症状〉

介入前: Kupperman指数-34点, 主たる症状-ほてり, 疲労感 介入後: Kupperman指数-22点

〈月経状態〉

閉経前

発症要因について, 生活環境が強く影響していると感じている. 家族は6人家族で, 本 人, 本人の父母, 夫, 子供3人(娘, 1人は結婚して 現在は2人同居)である. 高齢の父 母 は介護が必要で家から出ることが全くできない状態である. そのためストレスを発散す る ことができず精神的に苦しい状態である. 尿失禁が現在の一番の悩みであるが, 頭痛, 耳 鳴り, 吐き気もあり, ひどい時は処方された薬を飲むこともある.

更年期症状についての知識や情報については, まわりの人, 書物(新聞, 本など)及び テレビなどから得ており, 運動が更年期症状 に良いことも知っていたが, 介護のために運 動する時間がないので実施できなかった. 今回, 父の 体調がこ こ数か月良いことから, 教 室に参加することができた. 運動をすることによって, 身体が軽くなった. また家から 出 ることによって, 気分転換ができて精神面でも爽快感を感じている.

自身の体験を通した更年期症状への対処法については, 気分転換をすること, 特に家か ら出ることが一番だそうだ. 帰宅すれば現実が待っているが, 外に出て新しい空気に触れ ることによって, またがんばれるそうだ. 運 動教室以外にも童謡サークルに入っている が 運動の方が心身両面で効果が感じられる.

95

(35)

型�

〈対象者〉

47歳 主婦

〈更年期症状〉

介入前: Kupperman指数-22点, 主たる症状-筋肉痛 手足のしびれ 介入後: Kupperman指数- 1 7点

〈月経状態〉

閉経前

発症要因につ いて, 生活環境が強く影響していると感じている. 家族は4人家族で, 本 人, 夫, 子供2人(息子, 娘)であるが夫は単身赴任, 息子は就職のために独立し現在は2 人暮しである. 夫は若い頃から無口であり会話が無かったが, 子育てに忙しくさほど 気 に はならなかった. しかし年齢を重ねるに従いそのことが気になり始め, 現在は娘さんがい ろいろ話を聞いてくれたりしているのでどうにか元気にしている.

更年期症状についての知識や情報は, 仕事仲間の体験談を聞いていた. 更年期症状と運 動の関連についての情報は全く持っていなかったが, 肩こりや視力の低下があったため運 動教室に入会した. 運動をすることによって肩こりに改善がみられた.

自身の体験を通した更年期症状への対処法については, 体面を気にせずに自分のことを 話せる人が身近かにいることが大切ではないかと思っている. 娘に夫との問題などをすべ て話せるので精神面での安定にとても助かっている.

参照

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