候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすの か : 二〇〇七年参院選データによる分析
その他のタイトル Do Candidates' Websites Have an Impact on the Votes ? : Empirical Evidence from the 2007 Upper House Election in Japan
著者 岡本 哲和, 石橋 章市朗, 脇坂 徹
雑誌名 關西大學法學論集
巻 59
号 3‑4
ページ 593‑627
発行年 2009‑12‑18
URL http://hdl.handle.net/10112/1525
脇 石 岡
坂 橋 本
: 哲
徹 朗 和
候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすのか
二 0
七年参院選データによる分析 0
次 問 題 の 所 在 ウェプサイトの有無と選挙結果 ウェプサイトヘのアクセス数 アクセス数が選挙結果へ及ぼす影響 結 論 補遺
l ニ ︱
0 0
七年参院選における候補者ウェブサイトの開設状況 補遺
2 益向票率を従属変数とする重み付け最小 二
乗法の結果 補遺
3 こ
Iクセス数分析の対象となったかどうかを従属変数とするロジスティック回帰分析の結果 補遺4芦疾補者ごとのアクセス数
一 覧
五 四 目
候補者によるウェプサイトは得 票 に
影響 を及ぼす
の か
ての研究は︑
も っ
と も
︑
現時点ではさほど多くはない インターネットの普及に伴って︑政治とインターネ ッ トに関する研究はこの 一 0 年間で急増した
Ho
wa
rd
2008 2 , :
3)
︒
タタくの研究者がこれまで主に対象としてきたのは︑情報の発信手段としてのウェブサイトであ
る ︒
たとえば︑政党や政治家︑あるいは候補者によるウェブサイトに焦点を合わせた上で︑
にどのような要因が影響を及ぼしているのかを扱った研究はかなり蓄積されてきた
︒
アメリカをはじめとする先進諸国では︑政治家や候補者によるウェブサイトの利用は成熟段階に達しつ
つあるといわれる (
D a
v i
s ,
B a
u m
g a
r t
n e
r ,
F r
a n
c i
a ,
a n
d M
o r
r i
s
20 08 :
15)
︒ 国政レベルあるいは地方レベルを問わず︑
選挙における候補者の大半はウェブサイトを開設するようになっている
︒ どのような基準で測定するかによって判断
も異な
っ てくるが︑内容に関しても︑多くのサイトのそれが洗練されたものとなってきている
︒
このような状況の進行は︑単にウェブサイトの有無やその内容だけではなく︑
ぼす効果へと研究者の関心を向かわせている ︒
な か
で も
︑
検証することは︑インターネットの政治的影響を考察する上で最も重要な課題となる
138)
︒
えば
F a
r n
s w
o r
t h
a n
d O
we
n (
20 04 )
は ︑
問 題 の 所 在
ニ 八 サイトの有無やその内容
サイトの開設が人々の政治行動へ及
ウェブサイトが投票率および投票意思決定に及ぼす効果を
しかしながら︑
i G
b s
o n
a n
d M
c A
l l
i s
t e
r (
02 06 : 24 3)
が指摘するように︑インターネ ッ トと投票行動との関係につい
( G
i b
s o
a n
n d
M c
A l
l i
s t
e r
2006243)
数少ない研究の 一 っとして︑たと
:︒
オ ン ラインによる情報入手が有権者による投票先の決定に影響を 与 えている
︵ 五
九
三 ︶
(
Bi m
b e
r a
n d
D a
v i
s
2003
(
Ch a
d w
i c
k a
n d
田 二
0
0 六︑岡本弘基 二
0 0 三 ︶
︒
第五九巻三•四号
ニ 八 二
︵ 五 九 四
︶
ことを明らかにした︒
Ka id an d P o s t e l n i c
u (
20 05
)
は︑インターネットをとおした候補者情報への接触が︑有権者に
よるその候補者への評価に影響を及ぼしていることを示している︒政治情報をインターネットで獲得した人々のうち︑
その情報が投票先を決める要因となった人の割合は三分の一に達するとの調査結果もアメリカで報告されている ( H a y n e s
an d P i t t s2
00 9)
︒選挙で選ばれる側の政治家もまた︑インターネットの効果を評価しつつある︒東京大学と
朝日新聞とが二
0
七年に実施した参議院議員および参院選立候補予定者への調在では︑﹁有権者が投票先を決める 0
判断に︑インターネットは影響を与えていると思いますか﹂という質問に対して︑回答者の約八七パーセントが何ら
(2)
かの影響があると回答している︒
一方で︑インターネットの影響に否定的な見方も提示されている︒
H u
an
nd P e r r y(2 00 8)
は︑候補者ウェブサイ
トヘのアクセスが投票を促す効果は限定的なものにとどまると指摘する︒さらに︑
Bi mb er an d D a v i s
(
20 03 )
は︑そ もそも投票先が未定の有権者が候補者サイトヘアクセスすることは少ないことを示した︒候補者サイトヘアクセスす
るのは︑その候補者へ投票しようとあらかじめ決めている有権者なのであって︑
に影響を及ぼすわけではないと彼らは主張する︒同様の知見は︑日本を対象とした分析によっても得られている︵池
本 稿
で は
︑ 一 ︱ 0
七年七月 0
二 九日に実施された参議院議員通常選挙のデータを用いて︑インターネットと投票行動
との関係についての分析を行う︒その目的は︑候補者によるウェブサイトの開設が得票にどのような影響を及ぼした
かを明らかにすることである︒日本の選挙データを用いて︑この種の問題に取り組んだ研究はきわめて少ない ︒
こ の
点で︑本稿はインターネットと政治に関する研究の発展に一定の貢献をなし得ると考えられる︒
関法サイトヘのアクセス自体が投票意思
せないとする ︒ 構成は以下のとおりである ︒ 最初に︑候補者がサイトを開設していることが選挙結果に与えた影響について︑当落
および得票に焦点を合わせて検討する ︒ 次に候補者サイトヘのアクセス数に注目し︑それと選挙結果との関連を検証
する ︒ アクセス数データの調査方法とその概要について説明を行った後︑候補者サイトヘのアクセス数が得票にどの
ような影 響 を及ぼしていたのかを ︑ 多変量解析の手法を用いて明らかにする予定である ︒
当落との関係
候補者ウェブサイトが選挙結果に及ぼす影響を検証するために︑まず選挙での当落区分に注目し︑それとウェブサ
イトの有無とがどのような関係にあったのかを検討する ︒ ギリシャの地方選 挙 を分析対象とした Y
a n n a s a n d L a
' p
p a s
(2
00
6)
で は
︑
サイトを開設していた候補者の当選率は開設していない候補者のそれよりも高かったことが 示 され
ている ︒
G i b s o n
,L u s o l i
,a n d W a r
d
(20
07
はイギリスの下院選挙においても同じ傾向が見られることを明らかにして
)いるが︑その 一 方でオーストラリアの下院選挙を対象とする分析では︑
それでは︑日本ではどうなのか
︒ 二
0
て確かめたい 候補者がウェブサイトを開設し 0 七年参院選のデータによ っ ︒
ているかどうかの確認作業は︑ 立 候補予 定 者が確定しはじめた 二
0
0 ︱ 七年七月八日から七月 二日までの間に︑各政
党のウェブサイトや各種検索エンジンなどを用いて行 っ た ︒ その結果︑全候補者 三 七七名のうち七八・七七パーセン
トにあたる 二 九七名がサイトを開設していたことが明らかになった
ー候 補
者 に
よ る
ウ ェ ブ
サ イ
ト は
得 票
に 影
響
を 及
ぼ す
の か ウェブサイトの有無と選挙結果
サイトの有無と 当 落との間には関連は見いだ
︵ 二
0
0 七年参院選での候補者ウェブサイトの開
ニ 八 三 ︵
五 九 五
︶
表
1:当落におよぼすサイト開設の影響:ロジスティック回帰分析の結果 独
JL ̲, —変 数 係数
(B) Wald p値
Exp (B)ウェブサイト開設 2 . 2 6 8 8 . 0 8 5 . 0 0 4 9 . 6 5 9 所属政党(自民党)
民 主 党 1 . 5 8 7 1 7 . 7 6 2 . 0 0 0 4 . 8 8 8 公 明 党 . 3 9 0 . 4 1 6 . 5 1 9 1 . 4 7 6 共 産 党 ‑2.213 1 0 . 9 3 7 . 0 0 1 . 1 0 9 社 民 党 ‑1.313 2 . 5 9 3
.107. 2 6 9 国 民 新 党 ‑1.472 3 . 3 0 8
.069. 2 3 0 無所属・諸派 ‑1.196 6 . 3 0 7 . 0 1 2 . 3 0 3 現 職 1 . 1 6 7 1 0 . 4 8 6 . 0 0 1 3 . 2 1 1
年 齢 ‑. 0 3 6 5 . 9 0 6 . 0 1 5 . 9 6 5
,
=
子歴 ( 4 年制・伺大卒以外) . 2 5 5
.340 .5601 . 2 9 0 性 別(女性) ‑. 1 8 6 . 2 6 3 . 6 0 8
.830占疋
数 ‑1.210 . 9 9 9 . 3 1 8
.298N
3 7 7
Nagelkerke
R2 . 5 0 5
関法 第五九巻―――•四号
* 括弧内は参照基準
していない候補のそれと比べて約九・七倍高くなってい 設状況については︑補遺
1 を参照︶︒その二九七名のう
をコントロールした上でも︑候補者によるサイトの開設
(3
)
は一パーセント未満の水準で有意な影響を及ぼしている︒
サイトを開設している候補者が当選する蓋然性は︑開設 属政党︑候補者の地位︑候補者の個人的属性からの影響 回帰分析を行った︒表 l の結果が示しているように︑所 ︵開設の場合は一︑非開設は
0 )
とするロジスティック を一︑落選を
0 )
と し
︑
ウェブサイトの有無を独立変数 に検証してみよう︒そのために︑当落を従属変数︵当選 も考慮することによって︑ サイト開設の影響をより厳密 当落に関係していると考えられる諸要因からの影響を か二名︵ ニ
・ 五
0
パ ー
セ ン
ト ︶
で あ
っ た
︒
設していなかった八 0 名の候補者中︑当選したのはわず パーセントを上回っている︒それに対して︑ いる。これは、候補者全体の当選率である 一 ――― -•O 九 ち︑四
O ・
O 六パーセントにあたる
ニ 八 四
一九名が当選して
︵ 五
九 六
︶
サイトを開
(4)
る︒当落区分との関係では︑
しかし︑単なる当落の区分に注目するだけでは︑
得票率とでは規定要因が一致しないことを指摘している︒
ニ 八 五
サイトの開設が何らかの影響を及ぼしている可能性が示されたことになる ︒
サイトの開設によって﹁どれだけの﹂影響があったのかという問
題を十分にとらえきれない︒選挙の結果が圧勝であっても︑もしくは大接戦であっても︑同等に当選したと見なされ
るからである ︒ さらに︑当落は他の候補者の強さとの相対的な関係にも依存している ︒ 小林︵二
0 0 八 ︶
は︑当落と
そこで︑各候補者の得票に注目して︑サイト開設がそれに及ぼす効果を検証することにする︒候補者ウェブサイト
と得票との関連については︑ D ' A l
e s s i o
(1 99 7)
がアメリカにおける一九九六年連邦議会議員選挙の得票数データを用
いて検証を行っている ︒ そこでは︑候補者がウェブサイトを開設することは︑得票数を約九︑ 三
0
0 増やす効果が
あったことが示されている︒
G i b s o n a n d M c A l l i s t e
r
(20 06
もまた︑二
)0
0 四年のオーストラリア連邦議会選挙を
扱った分析によって︑候補者サイトの開設が得票数に有意な正の影響を及ぼしていたことを明らかにしている
︒
二 0
0 七年参院選では︑
八 ニ
・ 九
二 ︶ であったのに対し︑非開設者のそれは 三
七 ︑
八 八
八 ・
三 0
( 標準偏差は七五︑九九七︶
サイトを開設していた候補者の平均得票数が二四八︑一 三
五 . ︱
二
︵ 標
準 偏
差 は
二 五
0 ︑ 五
(5)
となっている ︒
サ イ
トを開設している候補者の方が︑明らかに多くの票を獲得している ︒ さらに︑候補者名だけではなく政党名での投票
(6
)
も可能な比例代表における候補者よりも︑選挙区の候補者の方が多くの票を獲得するという傾向が見いだせるため︑
選挙区候補と比例候補とを分けた上で︑それぞれにおいてサイトの有無と得票数との関連について検討を行った︒表
候補者によるウェプサイトは得累に影響を及ぼすのか 2 ウェブサイトの有無と得票との関係
︵ 五 九 七
︶
表 3 は︑通常最小二乗法による分析結果である︒まず︑ 区での候補者数を独立変数に含める︒
︵川人二
0 0 四
ニ ︱
︱ 二
四 ︶
︒ そ
の 影
響 を
表
2:立候補タイプごとに見たサイトの
有無と得票数との関連
サイト有り サイト無し
選挙区候補
310,202.56 73,730.14 (N=183) (N‑35)比 例 候 補
148,500.55 10,011.31 (N = 114) (N‑45)関法
*
数字は平均得票数
その指標として用いることによって分析を行う︒ 第五九巻三•四号
︵ 五 九 八
︶
2 はその結果である︒サイト開設候補が非開設候補と比較して多くの票を得たことは︑
どちらの立候補タイプにおいてもあてはまっている︒しかも︑選挙区では開設者は非
開設者の四倍以上︑比例代表では一 0 倍以上と票数自体にも大きな差がある︒
多変量解析を用いて︑ サイトの開設が得票に及ぼす影響をより厳密に検証してみよ
う︒ここでの従属変数は︑各候補者の得票力である︒ここでは︑各候補者の得票数を
検証すべき仮説は︑﹁ウェブサイトを開設することは︑候補者の得票数を増加させ
る効果がある﹂である︒各候補者の得票数はきわめてばらつきが大きく︑分布は右に
(7)
歪んでいるため︑分析には自然対数変換を施したデータを用いた︒独立変数は︑当落
の区分を従属変数とする前節での分析と基本的に同様のものであり︑それらに選挙区
候補変数︵選挙区候補を一︑比例候補を 0 とするダミー変数︶を加えている︒また︑候補者の得票力に対しては︑選
挙区での候補者数も 一 定の影響を及ぼす可能性があることが指摘されている
考慮するために︑選挙区候補と比例候補とを分けた分析も行うことにして︑前者を対象とする分析モデルには各選挙
コントロール変数の影響について簡単に見ておく︒ 三
つ の
分析モデルのいずれにおいても︑民主党もしくは公明党候補であることが得票数に及ぼす影響は︑ここでの参照基準
である自民党候補であることの影響と比較して有意な違いは見いだせない︒その一方で︑共産党︑社民党︑国民新党︑
ニ 八
六
表
3: 得票数
(In)を従属変数とする OLS の結果 候
補 者 に よ る ウ ェ プ サ イ ト は 得 票 に 影 響 を 及 ぼ す の か
モデル
I(全候補者)モデル
2(選 挙 区 ) モデル
3(比例)
独 立 変 数
非標携化係数
p値 非標準化係数
p値 非標準化係数
p値
ウェブサイト開設
1.171 .000 .414 .016 1. 941 .000所属政党(自民党)
民 主 党 ダ ミ ー
.067 .650 .259 .149 ‑.284 .228公 明 党 ダ ミ ー
‑.259 .262 .418 .295 ‑.150 .638共 産 党 ダ ミ ー
‑1.171 .000 ‑1.340 .000 ‑.967 .004社 民 党 ダ ミ ー
‑.767 .001 ‑1.017 .000 ‑.534 .160国 民 新 党 ダ ミ ー
‑.905 .000 ‑1.190 .000 ‑.921 .005無所属・諸派ダミー
‑1.659 .000 ‑1. 736 .000 ‑1.395 .000現職(現職以外)
.620 .000 .621 .000 .546 .011選挙区候補者数
.014 .293比例候補 ( 選挙区候補)
‑1.226 .000年 齢
‑.006 .244 ‑.017 .004 .002 .822、子、立
歴
(4年制・短大卒以外)
.104 .430 .192 .227 .066 .756性 別 ( 女性)
‑.426 .000 ‑.573 .000 ‑.497 .007r
疋
ら数
11. 968 .000 13 .157 .000 9.860 .000 N 377 218 159F 値
59 .112 .000 30.077 .000 24.670 .000 AdjustedR 2
.650 .617 .622* 括弧内は参照基準
ニ
八 七
︵ 五
九 九
︶ サイトの開設は候補者の得票を約 一
・ 一
七
えば︑候補者全体を対象とした分析では︑ 従属変数の百分率変化を表している ︒
た と
独立変数における 一 単位の変化がもたらす 然対数変換を施しているため︑回帰係数は︑ れにおいても見いだされる ︒ 従属変数に自 る ︒
こ の
傾 向
は ︑
三 つの分析モデルのいず に有意な正の影響を及ぼしていることであ ロールしてもなお︑
サイトの開設は得票数 注目すべきは︑
これらの影響をコント
得する傾向が示されている ︒ 方が男性候補よりも相対的に多くの票を獲 補者の個人的属性に関しては︑女性候補の 得票数を増やす効果をもたらしている ︒ 候 くさせる効果がある︒現職であることも︑ 補であることと比べて有意に得票数を少な 無所属・諸派候補であることは︑自民党候
のような見方を支持する結果が示された ︒ 第五九巻―
――•四号
パーセント増加させる効果があることになる ︒ 選挙区候補のみを対象とした分析モデル 2 と︑比例代表候補を対象と
する分析モデル 3 とを比較すれば︑ サイト開設は前者において
0•四一四パーセントの得票の増加をもたらしている
のに対し︑後者では 一 ・九四一パーセントとかなり大きな効果を及ぼしていることになる ︒ 多数の人々に対して比較
的安いコストで情報を発信できることは︑
インターネットの特質の
一
48 2‑ 48 3)
︒ 全国を ︱ つの選挙区とし︑多くの有権者を抱える比例代表選挙においてサイト開設の影響が大きかったこ
(
8
)とは︑そのようなインターネットの特質がよく現れた結果であったと推測できる ︒
ウ ェ ブ サ イ ト ヘ の ア ク セ ス 数
つ で あ る と い わ れ て い る
候補者ウェブサイトの開設が有権者の行動に影響を 与 えているのならば︑その影響はまず有権者がそのサイトヘア
クセスすることを介して及ぼされていると考えられる ︒ すなわち︑まず有権者がある候補者のサイトにアクセスする
ことによって︑候補者あるいは選挙について新たな情報や知識を得る ︒
B i m b e r a n d D a v i s
(
20 03
:
13 1)
によれば︑イ
(
9
)ンターネ ッ トを介して有権者が選挙についてより多くの知識や情報を得る可能性がある ︒ そして︑その情報や知識に
(
1 0
)
基 づいて︑投票先の決定もしくは変更が行われる ︒ サイトの開設と得票との関連についてのわれわれの分析では︑こ
以上のことが現実に当てはまるならば ︑ ウェブサイトを開設していても︑そこへのアクセスがほとんどないような
候補者にと っ ては︑サイトが得票に及ぼす効果はほとんどないことになるだろう ︒ 逆に︑多くの人がそのサイトヘア
ーアクセス数と得票との関連についての予想
関法 ニ
八 八
︵ 六
0 0
)
( K l o
t z
19 97
2
調 査 方 法
ニ 八
九
クセスしている場合には︑それがより多くの得票へとつながる可能性が高くなる ︒
そ れ
ゆ え
︑
︵ 六 O
I)ウェブサイトの効果を
分析する際には︑単なるサイトの有無ではなく︑そこへのアクセス状況と得票との関連についても注目せねばならな
サイトヘのアクセス数と得票との関連についての先行研究はほとんどない ︒
例外的な
D
'A
l e s s i o
(1
99
7)
および
V o
e r m a a n n d B o o g e r s
(2
00
8)
は 浬
盆 竿
g 罪
間中'における候補者サイトヘのアクセス数を扱
っ ているが︑得票との関連を
問題としていない ︒ これに対し︑得票とアクセスとの間の関係を分析した境家︵二
0
0 六 ︶
な関係は見いだせないとする ︒ ただし︑そこで扱われているのはアクセスの頻度ではなく︑ は︑両者の間には明らか
一 定期間におけるアクセ
(1 1
)
ス数の伸び率である ︒ また︑分析対象となっているのは現職候補のサイトのみであることにも留意せねばならない ︒
アクセス数と得票数とのより直接的な関係に焦点を合わせた研究としては︑岡本・石橋・脇坂 ︵ 二
0
0 六 ︑
二 0 0
八︶がある ︒
そ れ
ら は
︑ 二 0
0 四年参院選および二
0
五年衆院選データの分析結果から︑候補者サイトヘのアクセ 0
ス数の増加が得票数に正の影響を及ぼしていたことを示している ︒
ここでは︑候補者サイトヘのアクセス数と得票との間には正の関係があると予想して︑﹁候補者ウェブサイトヘの
(1 2
)
アクセス数が多いほど︑その候補者はより多くの票を獲得する傾向がある﹂との仮説を検証する ︒
ま ず
︑
︑ ︒ し
サイトヘのアクセス数の調査方法について説明する ︒ われわれの用いる方法は︑ ウェブサイトに設置されて
(1 3
)
いるアクセスカウンターを利用して︑各サイトヘのアクセス数を計測するというものである︒二
0
0 七年参院選の候
候補者によるウェプサイトは得 票 に影 響
を及ぼす
の か
主党候補者数の割合は︑ ニ
︱ . ニ ︱
‑ パ
ー セ
ン ト
補者の中でサイトを開設していた二︑九七名のうち︑
確認できたのは七八名︵サイト開設者中の二六・ニ六パーセント︶
を 行
っ て
︑
第五九巻三•四号
公示日の前々日である 二
0
0 七年七月一
0 日から︑投票日の四日後にあたる八月二日までの二四日間に毎日アクセス
( 1 5 )
アクセスカウンターの数値を 一 日ごとに記録する作業を行った︒結果として︑ 二 四日間の全調壺期間にわ
たって数値が記録できたウェブサイトの数は六八︑公示期間および投票日︵七月︱二日から七月
二 九日まで︶の一八
( 1 6 )
日間すべてで記録できたサイトの数は七二であった︒これ以降の分析では︑後者の公示期間および投票日におけるア
われわれのサンプルが︑どのような候補者のサイトによって構成されているかについて検討しておく必要がある︒
アクセス数データは︑
︵二九・四九パーセント︒サ
︵ 補
遺
1 参照︶︑そしてアクセス
ウェブサイト内にアクセスカウンターが設置されていることが
( 1 4 )
であった︒これら七八のウェブサイトに対して︑
アクセスカウンターを設置しているサイトからしか得られない︒これは︑このデータに一定の
問題があることを示している︒さらに︑分析対象となったサイトを開設している候補者に属性などの偏りが存在する
( 1 7 )
場合には︑データおよび分析の信頼性が損なわれることになる︒
( 1 8 )
図 1
は︑分析で用いるサイトを開設している候補者の︑所属政党ごとの割合を示したものである︒公明党および国
民新党がそれぞれ 一 ケースだけになっているが︑主要政党からの候補者はすべて含まれている︒民主党の占める割合
が三 0 ・五六パーセントと最も高くなっており︑自民党が二六・三九パーセントとそれに続く︒全候補者数に占める民
︵自民党候補は
二 二
・ O
ニ
パ ー
セ ン
ト ︶
になっているのは︑同党候補者のウェブサイト開設率が他党候補者よりも高いこと
カウンターの設置率︵サイト開設候補者数に占める割合︶も他党と比べて高かったこと クセス数のデータを用いる︒
関法
であった︒民王党の割合が高目 二九〇 ︵
六0
二 ︶
図
1:サンプルに占める各政党の割合
社民
5. 56%□ 民 自 民 主 公 明
□ 共 産
■ 社 民
□ 国民新党
□ 無所属・諸派
公明
1. 39%
二 九
︵ 六 0
三 ︶
八六%︵二八六名︶︑女性候補が二四・一四%︵九
一 名 ︶
であった ︒
サ ン
プ
(
1 9
)
イト開設者は七八名︶が原因の 一
部と推測できる︒
候補者の地位について見れば︑七ニケースのうち現職が 二 二名︵ 三
O ・
五六パーセント︶︑それ以外が五 0
名︵六九・四四パーセント︒このうち︑
三名の元職を含む︶
︵ 二
九 三
名 ︶
となっている ︒ 候補者全体では︑現職候補の占める割
であった︒立候補タイプ別では︑選挙区からの立候補者が四
三名︵五九・七二%︶︑比例代表からは
二 九名︵四
O ・
ニ八%︶がそれぞれ
含まれている ︒ 候補者全体に占める割合では︑選挙区候補者が五七・八
り︑サンプルの構成は候補者全体をよく代表しているといえる ︒ 性別につ
いては︑男性候補が六 0 名︵八 三 ・ 三 三パーセント︶︑女性候補が︱二名
︵ 一 六 ・ 六 七
% ︶
ルでは男性候補者の割合がやや高くはなっているが︑違いはわずかである ︒
さらに︑候補者がアクセス数データ分析の対象となったかどうかを従属
変数︵サンプルとなる七二のサイトを開設していた候補者を一︑それ以外
の候補者を
) 0
候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすのか となっている︒候補者全体の割合では︑男性候補が七五・ とするロジスティック回帰分析を行った︒独立変数は︑所
︱‑%︵ニ︱八名︶︑比例代表候補者が四ニ・一八%
︵ 一 五 九 名 ︶
となってお
合は︱ニ︱・ニ八パーセント
︵八四名︶︑それ以外は七七・七ニパーセント
3 第五九巻三•四号
る︒他の分野においても同様︶
一日あたりの平均アクセス数は三三︑四四 ぼしている以外︵定数を除く︶は︑有意な変数は存在しないことが明らかになった
二 九 二
属政党︵民主党ダミー︑公明党ダミー︑共産党ダミー︑社民党ダミー︑国民新党ダミー︑無所属・諸派ダミーの六つ︒
参照基準は自民党候補︶︑候補者の地位︵現職を一︑それ以外を 0 とするダミー変数︶︑立候補タイプ
︵比例代表候補 を一︑選挙区候補を
0 とするダミー変数︶︑候補者の個人的属性︵年齢︑性別︑学歴の三つ︒性別は男性を一︑女性
を 0 とするダミー変数︑学歴は四年制・短大卒以上を一︑それ以外を 0 とするダミー変数︒中退は卒業と見なしてい
である︒結果として︑公明党ダミー変数が 一 0 パーセント水準で有意な負の影響を及
以上のことから︑民主党候補者︑現職候補者︑男性候補者をやや多めには含んでいるものの︑われわれのサンプル
には特に顕著なバイアスは含まれていないと考えられる︒
データの概要
アクセス数データについての記述的検討からはじめよう︒七月︱二日から七月二九日までの一八日間に︑七二の候
補者サイトに対して総計で六
0 1
︑ 九
六
三 件のアクセスが記録された︒
三八︑候補者 1 人あたり平均では八︑ 三 六
O ・
五九となる︒図 2 は︑過去の選挙におけるアクセス数を時間順に並ぺた
ものである 関法
︵岡本・石橋二
0 0
1
︑岡本・石橋・脇坂二
0 0 四︑二
0 0 六 ︑
二 0
0 八︶︒選挙によって調査日数お
よびサンプル数が異なるため︑ 一 日あたりの一人平均アクセス数を示した︒二
0
0 二 四年参院選から
0
0 五年衆院選
( 2 0 )
にかけては減少しているものの︑全体的に候補者サイトヘのアクセスが増加傾向にあることが明らかである︒
アクセス数の最大値は五四︑五七三︑最小値は四四 0 であった︒標準偏差は一 ︱
0
三 0 .一三であり︑候補者間で ︵詳細な結果は補遺 3
を 参
照 ︶
︒
︵ 六
0
四 ︶
図
2 :候補者サイトヘのアクセス数の推移
(1人あたり
1日平均)(アクセス数)
500
450 400 350
300 250 200 150 100 50
゜
464.47
162.21
2001年(参) 2003年(衆) 2004年(参) 2005年(衆) 2007年(参)
︵ 六
0
五 ︶
については︑特に目立った傾向は見いだせない︒ つ
い て
は ︑
アクセス数の上位および下位ランクの両方で新人候補
アクセス数のばらつきが大きいことがわかる︒ アクセス数の上位
マスコミなどをとおして知 名度が高い候補が無所属・諸派に含まれていることが︑このよう
な結果をもたらした一因と考えられる︒その一方で︑ アクセス数
の下位にも無所属・諸派候補が多くなっている︒候補者の地位に が多くなる傾向が見られる︒選挙区か比例代表かの立候補タイプ
次に︑諸要因ごとにアクセス数の検討を行う︒候補者の所属政 党からはじめたい︒図
3
は主要政党ごとの候補者一人あたり一日
(2 1 )
平均アクセス数を︑過去の選挙と比較したものである︒ 二
0 七 0
年参院選で最もアクセス数が多かったのは無所属・諸派であった︒
先述のように︑知名度の高い候補がそこに含まれていたことが︑
このような結果をもたらした一因だろう︒続いてアクセス数が多 かったのは民主党候補であり︑社民党候補︑共産党候補の順でそ れに続く︒自民党候補については︑共産党との差はわずかではあ 候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすのか
二九三 ス数については︑補遺4で示した︶︒
こま︑
︐̲ー
i(
無所属・諸派候補が比較的多く並ぶ
︵候補者ごとのアクセ
(アクセス数)
1,000 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0
9 8 7 6 5 4 3 2 1
図
3 :政党別
1f : : I
1人あたりアクセス数の推移‑+‑無所属・諸派
‑‑‑‑社民党
‑Ir‑共産党
_ 公 明 党 ー←民主党
‑‑0‑自民党
関法 第五九巻―
――•四号
2001参 2003衆 2004参 2005
衆
2007参
四︶となっている︒
マスコミなどで知名度の高い新人候補が
そ れ
以 外
の 候
補 の
そ れ
は 五
︱ ︱
1 0
・ 0
四︵標準偏差は七三一・ 候補者の地位に目を向ければ︑現職候補の一人あたり一日
自 民
党 を
上 回
る ︶
および二
0
0 五年衆院選︵自民党が解散時 二
0
0 五年参院選︵民主党が五 0 議席を獲得し︑四九議席の であったのに対して︑自民党は三 獲得議席は︑民主党が六 0
七にとどまった︒両党のアクセス数の差に︑選挙の結果が 一
定程度反映されているのかもしれない︒このような傾向は︑
の ニ
︱ 二議席から二九六議席へと議席数を大きく増やした 一
方で︑民王党は一七七議席から︱
一 三
議 席
へ と
激 減
︶
る 特
徴 で
あ る
︒
に お
い
ても見いだせる︒また︑共産党と社民党のアクセス数が相対
的に少ないことは︑二
0
0 七年参院選以前の選挙にも見られ
平均アクセス数は三一
O ・
ニ四︵標準偏差は二四九.
o ‑
︶ ︑
サンプルに含まれていることと︑関連があると考えられる︒
立候補タイプについては︑選挙区での候補者における平均ア るが︑さらにその下であった︒二
0
0 七年参院選での両党の
二九四︵ 六
0 六 ︶
クセス数︵一人あたり一日平均︶
差は八三
O ・
二 三 ︶
も見いだせた。(岡本・石橋二
00四~― 二 五
I―二六)。
最初に︑候補者サイトヘのアクセス数と︑その候補者の当落との間に何らかの関連があるかどうかを検討しておこ
う ︒ サンプルとなったサイトを開設している七二名の候補者のうち︑当選したのは二八名︵そのうち選挙区での当選
者が 一
八 名
︶
次 に
︑
二 九
五
︵
六 0
七 ︶
は 四
三 0 ・四七︵標準偏差は四一五.︱‑︶︑比例代表のそれは五 一
四 ・
八 八
であった︒比例代表候補のアクセス数が相対的に多いという傾向は︑ 二
0 0
一年参院選において
であった︒そのアクセス数の平均は八︑
一 五
0 ・ 三 六︵標準偏差は一 0
︑ 二
ニ ︱
・ 七
八 ︶
し︑四四名の落選者︵そのうち二五名が選挙区での候補者︶
︱ ‑
︑ 六
二
八 ・
九 八
︶ であった ︒ 落選候補へのアクセスが多かったのは︑
である
︒ それに対
における平均アクセス数は八︑四九四・三九︵標準偏差は
アクセス数の多さが得票につながるとの予想
アクセス数と得票数との関係に注目しよう︒図 4 は︑両者の関係を散布図に示したものである︒どちらにも
自然対数変換を施している ︒ この図からは明確な関係は見出しがたいが︑全体としては正の関係があることをうかが
わせる形となっている︒両者の相関係数は 0
・ ニ
八
0 であり︑相関自体は強くはないものの︑五パーセント水準で有
意 で あ っ た ︒ 候 補 者 に よ る ウ ェ プ サ イ ト は 得 票 に 影
響 を
及 ぼ
す の
か
間のアクセス数には有意な差はなかった︒ に反する結果である︒ただし︑ マン・ホイットニーの検定では︑
1 0
パーセント水準においても当選者と落選者との
四 ア ク セ ス 数 が 選 挙 結 果 へ 及 ぼ す 影 響
セス数の方が多くなっていた ︵岡本・石橋・脇坂二
0
六は四九ー五 0
0 )
︒
一 方 で ︑ 二 0
0 四年参院選では選挙区での候補者のアク
︵ 標
準 偏
図
4:候補者サイト ヘの アクセス数と得票数との関係
14 1‑13 ,....
↑ ト ト
2 1 0 l l l
の
候補者 /. ,
得票数
1︑
し
9 I‑
8
. ー
. .
. `
ー ・ ・ . . . ・ .
• • . . . . . . ' . I . . . .
.
. . . . 関法
. . . . .
. ~,,
. •• .
. . .
第五九巻三 •四 号
.
.
. . .
上6
.
i7
. .
上8 .L,
アクセス数
(In)..L
10
...L
11
.L
12
しかし︑それだけではなく︑逆方向の因果関係︑すなわち候補者 得票数との間に同様の正の関係が見出しうるかどうかを確かめた い︒すなわち︑ここで検証すぺき仮説は﹁候補者が開設している ウェブサイトヘのアクセス数が多いほど︑その候補者は多くの票 ルモゴロフ
Iスミルノフの検定により︑得票数の分布が正規性を
持つとの帰無仮説は
O ・
︱ パーセント未満の水準で棄却される
︒
以上のことから︑分散の不均一性の問題を回避するために︑ここ
分析において最も重要な独立変数は︑候補者ウェブサイトヘの
アクセス数となる ︒ ここで︑分析方法に関わる問題として︑
サ イ
トヘのアクセスと得票との関係に注意せねばならない ︒ すでに述
べたように︑われわれの目的はサイトヘアクセスすることが候補
者の得票に及ぼす影響を検証することである ︒
そ れ
ゆ え
︑
ス数から得票への因果関係が存在すると考えて分析を進めている ︒
の得票がアクセス数へ及ぼす影響が存在する可能性についても考 では自然対数変換を施したデータを用いる ︒ を獲得している ﹂ となる ︒ 従属変数は候補者の得票数である ︒ 他の要因からの影響をコントロールした 上
で も
︑
二 九六
︵
六 0 八 ︶
ア ク
セ コ
アクセス数と
得票との関連についての分析を行う ︒
が 意 識 さ れ て き た
二 几
七
︵ 六 0 九 ︶
操 作 変 数
慮しておく必要がある︒インターネット・ユーザーが候補者サイトヘアクセスする理由は︑投票意思を決定するため
だけとはいえない ︒
Bi
mb
er
an
d D
a v
i s
(
20 03
)
は︑多くの有権者がアクセスする候補者サイトは︑あらかじめ自分が
投票しようと決めている候補者によるものであると指摘した ︒ そうであるならば︑多くの票を獲得できる候補者のサ
イトほど︑より多くのアクセスを集めていることになるだろう ︒ また︑選挙についての 一 般的な関心だけから︑有権
者が候補者サイトヘアクセスすることもあり得る︒
D'A
l e s s i o
(1 99 7)
はこのような有権者のアクセス行動を︑
﹁ニュース収集型﹂と呼んだ︒選挙前の予想等によって︑ある候補者が多くの票を集める可能性が高いほど︑その候 補者への関心は高まる︒そして︑それがその候補者によるサイトヘのアクセスを増加させることにつながる︒
こ の
よ う
に ︑
サイトヘのアクセスと得票との間には︑双方向の因果関係が存在している可能性がある ︒ 両者はいず
れも内生変数となって他の外生変数からの影響を受けるので︑独立変数と誤差項との間の相関が 0 であるという通常
最小二乗法
( O L S )
の前提は成り立たない
︒そ
れ ゆ
え ︑
行っても︑その結果は信頼が置けないものになってしまう ︒ 得票︵についての予想︶がアクセス数に正の影響を及ぼ
しているのならば︑通常最小 二 乗法による分析はアクセス数の影響を過大に推定した結果をもたらすことになる︒政
治学では︑選挙費用と得票との関係をめぐる研究や︑ 二 国間の軍拡競争についての分析などにおいてこの理論的問題
( J a c k s o n 2 00 8:
4
06
‑4 07
︒この問
I顆
0)を 卸
E
辻
い す
る ノ
た め
の
一 般的な方法の︱つは︑
(2 2 )
( i n s t r u m e n t a l
v a r i
a b l e
)
を用いた
︱ 一
段階最小二乗法である︒ここでも︑同様の手法によってサイトヘのアクセス数と
ま ず
︑
アクセス数を従属変数とし︑それに影響を及ぼすと考えられる外生変数および候補者の得票数を独立変数と
候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすのか 一方を従属変数として通常最小二乗法を用いた回帰分析を
︵参照基準は自民党候補︶︑候補者の地位に関する変数として現職候補ダミー変数︵現職候補を 一
︑ そ
れ以外の候補を
0 )
︑候補者の個人的属性に関する変数として︑﹁年齢﹂﹁学歴︵四年制・短大卒以上を一︑それ以外
を 0
) ﹂﹁性別︵男性を一︑女性を
0 )
﹂ の 三 つを︑独立変数として分析に投入する ︒
二段階最小 二 乗法による分析結果は︑表4に示されている ︒ 最も注目すべき変数である得票数︵推定値︶
も︑有意な影響を及ぼしていなかった︒さらにいえば︑回帰式自体が一 0 パーセント水準においても有意とはなって
ミ ー
﹂
表 4: ア クセ ス数
(I n
)を従属変数 と する 二段階最小二乗法の結果
の 六 つ
独 立 変 数 非標準化係数
p値 得票数 ( ] )
.1 6 0 . 3 9 3 所属政党 ( 自 民党)
民 主 兄
,>'4. 0
48
.8 8 3
公 明 兄
平‑. 7 6 3 . 4 5 1
北
ノ産 兄
平‑. 3 7 2 . 4 1 0 社 民 党 ‑. 1 7 4 . 7 7 7 国 民 新 党 . 7 4 4 . 4 9 8 無所属・諸派
.5 3 4 . 3 7 5 現職 ( 現職以外)
‑.0 6 3 . 8 3 4 年 齢
.0 1 0
.4 3 7
逆
子 歴
(4年制・短大卒 以外) . 7 1 5 . 0 6 6 性 別 ( 女性) ‑.447 . 1 9 0 定 数 5 . 8 1 7
.0 1 8
N
7 2
F 値 1 . 0 4 . 4 2 2
AdjustedR
20 . 0 8 5 9
関法 第五九巻
――-•四 号
(
1
) 得票数は推定値* 括弧内は参照基準
について 党ダミー﹂﹁国民新党ダミー ﹂
﹁ 無
所 属
・ 諸
派 ダ
︑ ー
﹂ ﹁
公 明
党 ダ
ミ ー
﹂
﹁共産党ダミー
﹂
﹁ 社
民 それ以外に︑所属政党変数として
﹁ 民
主 党
ダ
す る
︒ 参照基準は比例代表での立候補である ︒ に分けて︑それぞれについてダミー変数を用意 ﹁
四 ー
六 人
﹂ ︑
﹁ 七
人 以
上
﹂ の 三 つのカテゴリー 用いる︒具体的には︑候補者数を﹁ ニ ー 三
人 ﹂ ︑
ぶ必要がある ︒ ここでは︑選挙区の候補者数を
つ つ
︑
アクセス数との関連を持たないものを選 る︒操作変数としては︑得票数に影響を及ぼし いては︑それに代えて操作変数を分析に投入す する分析モデルを考える ︒ ただし︑得票数につ 二
九 八
︵ 六 一
0 )
表
5:得票数 ( I n ) を従属変数とする
OLSの結果
(アクセス数を独立変数)
候 補 者 に よ る ウ ェ プ サ イ ト は 得 票 に 影 響 を 及 ぼ す の か
独 立 変 数 非標準化係数
p値
ウェプサイトヘのアクセス数 ( I n )
.340 .003所属政党(自民党)
民 主
序兄
.155 .593公 明
邑>!'.. 1.351 .132.:I±:
ノ
産 党
‑.705 .067社 民
平兄
‑.445 .389国 民 新 党
‑1.011 .281無所属・諸派
‑2.176 .000現 職
.548 .046選挙区候補(比例候補)
1.171 .000年 齢
.005 .668、
匹子 歴
(4年制・短大卒以外)
‑.105 .762性 別(女性)
‑.381 .200定 数
8.474 .000N 72
F
値
12.040 .000 Adjusted R2 .651* 括弧内は参照基準
二 九 九
ては議論の余地がある︒
︵ 六
︱‑
︶
あるいは取るに足らないものと考えるかについ も︑この効果を無視できないものと考えるか︑ 約一四六票の得票増につながっている︒もっと を例にとれば︑ アクセス数の約六四五の増加は︑ した天木直人候補︵無所属・諸派︑比例代表︶ なる︒サンプル中で最も多くのアクセスを記録 得票は約
O ・
五 0
‑
パーセント増加することに
ス数が 一 パーセント増加すれば︑その候補者の る変化を表している︒候補者サイトヘのアクセ セントの変化に対する従属変数の百分率におけ るため︑ここでの回帰係数は独立変数の一パー いない︒得票およびアクセス数のそれぞれを従属変数とする二つの分析モデルの同時性を考慮する必要はないことに なる︒それゆえ︑得票数を従属変数として︑通常最小
二 乗法を用いてアクセス数の影響を推定する︒その結果が表
5
で あ
る ︒
アクセス数については︑自然対数変換したものを用いている︒明らかなように︑所属政党や候補者の地位︑
候補者数などの諸要因からの影響をコントロールしてもなお︑候補者サイトヘのアクセス数は
O ・
一パーセント未満
(2 3
)
の水準で得票数に対して有意な正の影響を及ぼしている︒得票数およびアクセス数のどちらにも対数変換を施してあ
て﹂︑そして﹁どれだけ﹂
れゆえに︑個人のレベルでどのようなメカニズムが働いて︑
第 二
は ︑
第五九巻三•四号
︱ ︱ 1 0 0
本稿では︑候補者ウェブサイトが選挙結果に影響を及ぼしているかどうかを︑二
0
0 七年参院選のデータを用いて
明らかにすることを試みた︒我々が得た結果は︑
補者によるサイトの開設は︑当選の確率を高めるとともに︑候補者の得票数に有意な正の影響を及ぼしていた︒さら
に︑候補者ウェブサイトヘの選挙期間中におけるアクセスに注目してみれば︑
その候補者の得票数は多くなる傾向があるとの結果が示されている︒
もっとも︑得票に対しては︑選挙キャンペーン以外の様々な要因も影響を及ぼしている
7 5
7 )
︒ さ
ら に
︑
ウェブサイトの影響を基本的に肯定するものである︒すなわち︑候
サイトヘのアクセス数が増えるほど︑
サイトヘのアクセス数に注目した我々の研究には︑すでに指摘したデータ自体の信頼性とともに︑次
のような問題が含まれる︒第 一 は︑十分に多くのサンプルが確保できなかったことである︒アクセスカウンターから
のデータを用いる限りは︑調査を行う側の努力によってサンプル数を増やすことには限界がある︒注
( 1 3 )
で指摘した
ように︑インターネット関連企業によって提供されたトラフィックデータを用いて︑政治関連サイトヘのアクセスを 分析することも行われつつある︒このような手段によって大量かつ確実性の高いデータを確保することも︑今後の検
討課題となるであろう︒
アクセスに関するデータとして︑集計データを用いていることである︒明らかであるのは﹁だれに対し
関法
五 結
アクセスがあったかということであり︑﹁だれが﹂ 論
アクセスしていたのかはわからない︒そ
ウェブサイトが投票者に影響を及ぼすのかは十分にはわ
(S ch mi tt
,
Be ck
2
0 0
7
︵
六
︱二 ︶
一 四名︵七一・六九パーセント︶が開設していた︒ る
( 2 4 )
からない ︒ この問題については別稿を用意し︑ サーベイデータを用いた分析を行う予定である︒それにより︑本稿で
補遺ーニ︱
0
七年参院選における候補者ウェブサイトの開設状況 0
二 0
0 七年参院選では︑候補者によるウェブサイトの開設率は七八・七七パーセント
開 設
︶
であった ︒ 過去の参院選における開設率は︑二
0 0
一年参院選では五 ︱
・ 0
0 パーセント
( N
I I
三 二
0 )
︒ 二
0 0 年 一 か ら 二 0
0 四年にかけては開設率に大きな上昇
が見られたが︑
二 0
四年から二 0
0
0 七年にかけては︑さほど大きな変化は見られない︒参院選では開設率が七〇
(2 5
)
パーセントを超えて︑比較的高いレベルで安定しているようである︒
所属政党ごとに見れば︑自民および民主の二政党における開設率が︑他の政党のそれを引き離している
( 2 6 )
照 ︶
︒ こ
れ は
︑
二 0
0 一 年
参院選以降︑衆院選あるいは参院選を問わず︑国政選挙で一貰して見いだされる傾向であ
︵岡本二
0 0 二︑二
0 0 五︑二
0 0 六︑二
0 0 七 ︑
O k a m o t
0
20 08
)
︒
候補者の地位ごとでは︑ サイトを開設していた現職候補が九六名中九四名︵九七・九
一 パ
ー セ
ン ト
︶
対して︑それ以外の候補者では二八一名中二 0
三名︵七ニ・ニ四パーセント︶
︵ 六
一 三 ︶
であったのに
であった ︒ 現職あるいは前職の開設率
がそれ以外の候補者よりも高くなっていることも︑これまでの国政選挙で見られた特徴の ︱
つである
︒立候 補タイプ
別に見れば︑選挙区の候補者ではニ︱八名中一八 三 名︵八 三 ・九四パーセント︶が開設︑比例代表では一 五 九名中 一
候補者によるウェブサイトは得票に影響を及ぼすのか 0 四年では七四
・ O
六パーセントであった 得られた結果を再検証することとしたい︒
︱ ︱ 1
0 1
︵ 図
5 参
( N
I I
四九六︶︑二〇
︵ 三
七七名のうち 二 九七名が
(%) 100 ̲98 7
0 0
0 0 0 0 0 0
0 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1
' 91. 4
I•
97.6
I
図 5: 政党ごとの開設率(参院選)
叩.5 95. 9"
93. 7~ —←一
' □
2001年参院選
□
2004年参院選
□
2007年参院選
50. 0 50. 0 '''
5, 9. I
四
□
□
ロ
56.3
~52.4
62. 5
巴 戸
'
'
87.0
戸 口
54.2
一
6, 7. 5