特別受益と遺留分減殺に関する一考察(一): 評価 基準時を中心として
その他のタイトル Une etude sur le rapport successoral et la reduction des liberalites : en matiere de la date de l evaluation du bien (1)
著者 千藤 洋三
雑誌名 關西大學法學論集
巻 32
号 1
ページ 91‑116
発行年 1982‑04‑05
URL http://hdl.handle.net/10112/1787
特 別 受 益 と 遣 留 分 減 殺 に 関 す る 一 考 察 (
‑ )
目 次 ー は じ め に 二評価基準時が問題となる四つの場合 三現物的平等主義と価値的平等主義 日特別受益の持戻し方法の変遷
⇔遺留分減殺を受けた贈与・遺贈物の返還方法の変遷 四価値的平等を実現する手段としての評価基準時 日持戻し財産の評価基準時
⇔現実に分割の対象となる財産の評価基準時︵以上本号︶
臼遣留分算定の基礎となる財産の評価基準時 固価額弁俄額算定のために減殺を受けた目的物の評価基準時 五 私 見
ー 評 価 基 準 時 を 中 心 と し て
1
特別受益と遺留分減殺に関する一
千
藤
考 察
︵ 一
︶
九
︵ 九
一 ︶
洋
第三二巻第一号
一定範囲の遺族である遺留分権利者に遺留分減殺
︵九 二︶
わが国では︑近時︑相続人間の実質的衡平化をはかることを目的とした相続法改正論議が活発である︒例えば︑
配偶者の相続権の強化や︑
を 目 的 と し つ つ ︑ いわゆる寄与分制度の導入等は既に立法上実現し︑民法の改正対象からはずされたが︑非
嫡出子の相続分増加も検討された︒今回︑民法にとり入れられた寄与分制度と同じく相続人間の衡平を確保すること
しかも異なる方法をもってこれを実現しようとする制度として︑特別受益の持戻しが昔から存在し
ている︒これは︑被相続人が生前に贈与で︑もしくは遺言で︑特定の相続人に特別な授益を行なった場合︑それら特
別受益財産を遣産に取戻すことによって︑相続人間の衡平化をはかろうとするものである︒
しかし︑わが国ではこうした特別受益の持戻し制度は︑戦前における家督相続法の下ではなんらその役割を果たす
(1 )
ことなく等閑視されてきた︒戦後においても︑特別受益証明書による事実上の相続放棄にみられるような形で︑均分
(2 )
相続を潜脱する手段として持戻し制度が用いられてきた︒だが︑今日では︑相続人問の衡平化のために︑本来の持戻
(3 )
し制度の十分な活用が望まれるものであり︑現に裁判例にもこの活用例が近時︑とみに増加してきている︒このよう
に︑寄与分制度の導入を契機として︑相続人間の衡平化手段を総合的に検討し直す必要が急務であるように思われ︑
(4 )
その一環として特別受益の持戻し法の検討が要求されよう︒
特別受益の持戻し以外に相続人間の実質的な衡平化をはかる手段の︱つに︑遣留分制度がある︒
遺留分は︑被相続人死亡後の遺族の生活を保障するためなどの理由で︑相続財産の一定割合を一定範囲の遺族のため
に留保しておくとするものであり︑この遺留分を保全するために︑
関法は じ め に
九
い う
ま で
も な
く ︑
請求権が与えられている︒そして︑この遺留分減殺請求権の相手方は︑まったくの第三者よりも︑共同相続人である
(5 )
場合の方がはるかに多い︒したがって︑遺留分減殺制度も︑特別受益の持戻し制度と同様︑共同相続人の衡平のため
(6 )
に︑被相続人が贈与・遺贈によって処分した財産を取戻す一方法であるといえよう︒
元来︑特別受益財産が現物で持戻されたり︑遺留分減殺を受けた財産が現物で返還されるならば︑評価基準時は
問題とされることもなく︑共同相続人間の衡平も完全にはかれるといえる︒しかし︑現物交換から価値交換へと発展
してきた資本主義社会において︑取引の法的安定が極めて強く要請され︑金銭的処理が可能であれば︑それを最優先
(7 )
させているので︑相続財産の分割に際しても︑現物持戻しあるいは現物による減殺のいわゆる現物的平等主義
1分
割の対象となった相続財産を現物分配することにより︑相続人問の衡平化をはかるものーから︑価額持戻しあるい
(8 )
は価額による減殺のいわゆる価値的乎等主義—|l分割の対象となった相続財産をその物的構成の如何を問わずに自由
に価値分配することによって相続人間の衡平化をはかるものーヘの移行は︑当然のことであるといえる︒そして︑
この価値的平等︑
の評価基準時の求め方如何で相続人間に不平等を生じる︒贈与時から相続開始時まで︑あるいは相続開始時から遺産
分割時までの期間が長くなるとともにインフレ等による物価︑
要なものにする︒評価基準時として︑贈与時︑相続開始時︵遣贈効力発生時︶︑
終結時等︶が考えられる︒そこで︑
つ い
で ︑
特 別
受 益
と 遺
留 分
減 殺
に 関
す る
一 考
察 ︵
一 ︶
九 一
遺産分割時︵協議分割時︑ ロ頭弁論 いいかえれば金銭による平等を実現するために相続財産をある時点で評価しなければならない︒そ
とりわけ土地価格の上昇は評価基準時のもつ意味を重
まず評価基準時の確定が具体的に如何なる場合に必要になるかをみていきたい︒
フラソス法における現物的平等主義と価値的平等主義について概親し︑その後で︑価値的平等を実現する手
段としての評価基準時をわが国とフランスについて考察してみたい︒最後に︑この問題について私見をつけ加えるこ
︵ 九
三 ︶
野において︑ ととする︒四 本 稿 は
︑ 右 に 述 べ た よ う に 特 別 受 益 と 遺 留 分 減 殺 に 関 し て 主 と し て 評 価 基 準 時 を
︑ わ が 法 の 源 流 で あ る と い わ れ
(9 )
︵1 0
)
て い る フ ラ ン ス 法 に 遡 っ て 検 討 し よ う と す る も の で あ る
︒ 近 時 学 界 で は
︑ 法 体 系 の 相 違
・ 歴 史 的 社 会 的 基 盤 を 無 視 し て︑論者がたまたま研究した外国法の法理を︑
の意味から以下の叙述は︑短絡のきらいがなくはない︒
評 価 基 準 時 の 検 討 を 通 し て み た 日 本 の 既 存 法 理 の 問 題 点 の 指 摘 で あ り
︑ 評 価 基 準 時 と い う 極 め て 技 術 的 要 素 の 濃 い 分
( 1 )
有地亨﹁特別受益者の持戻義務⇔﹂民商法四
0
巻三号︵昭三二︶ニニ頁︒( 2 )
太田武男﹁いわゆる﹃特別受益証明書﹄についてー遣産分割に関連してー﹂ケース研究一六八号︵昭五三︶一頁︑糟谷忠
男﹁相続放棄の類似手続﹂判タニ五
0
号︵昭四五︶一六三頁︑他参照︒太田教授によれば︑特別受益証明書は︑明治民法下 の昭和八年︱一月ニ︱日付民事局長回答で公認され現在に及んでおり︑相続放棄申述受理証明書もしくは遣産分割協議書に
代るものとして︑相続登記の際︑法務局に提出されている︒
このような特別受益証明書がよく用いられる理由について︑太田教授は︑﹁これによれば︑家庭裁判所に申述して︑調査 や審問をうけるわずらわしさもないのみならず︑登記官には実質的審査権がないので︑その記載内容が真実に反するもので あっても︑登記の際の添付書類としては有効に機能しうるので広く利用され︑最近の家庭裁判所における相続放棄事件件数 の減少傾向も︑この制度の普及によるものであるとさえいわれている﹂と述べている︵太田・前掲一頁︶︒なお︑特別受益 証明書による相続放棄をめぐる最近の裁判例については︑千藤﹁無相続分証明書の有効性が否定された事件例﹂法時五三巻
三号︵昭五六︶一三九頁以下参照︒(3)
大阪家審昭五一・一―・ニ五家月二九•六•五二、他多数。
(4 )
本文の趣旨で︑千藤﹁フランス法に於ける特別受益の持戻しに関する一考察ーー相続人間の衡平化手段としてー│(‑︶ 関法
一私見を述べることは許されるであろう︒ 第三二巻第一号
日本の解釈論に短絡することについての反省が強調されているが︑こ
しかし︑これはあくまで︑
フラソス法における遺産をめぐる
九四︵九四︶
特別受益と遺留分減殺に関する一考察︵一︶
九五
︵九五︶ ︵二︶︵未完︶﹂関大法学論集二九巻六号︵昭五五︶三
0
巻二号︵昭五五︶が出されている︒( 5 )
加藤永一・叢書民法総合判例研究⑱
I
︵昭 五五
︶四 三頁
︒
( 6 )
フランスでも︑遺留分減殺制度は相続人間の衡平化手段の一方法であると考えられている︒たとえば︑
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16 33 , p . 82 5.
( 7 )
稲本教授は︑現物的平等主義と呼ばず︑物的均分主義とよび︑﹁価値的な平等の実現を物的な均分によって補強する﹂と
定義される︵稲本﹁農地所有と相続・フランス﹂比較法研究二九号︵昭四一︱‑︶八三頁︒本稿では︑価値的平等主義に対比さ
せた形で︑現物的乎等主義と呼ぶことにしたい︒
( 8 )
稲本教授は︑価値的乎等主義のことを﹁各具体的相続分の価値的平等をそれらの物的構成の如何をとわず自由に追求す
る﹂と定義されている︵稲本・注
( 7 )論文八二頁参照︶︒私の価値的平等の概念もこれと同じである︒
( 9 )
わが現行民法九
0
三条及び九0
四条の原始規定である明治民法一00
七条 及び 一
00
八条の二条文制定時に︑とくにフランスにおける持戻し制度が委細に亘って検討されたことが明らかである︵日本学術振興会版・法典調査会議事速記録六一巻
一三 七頁 以下
︶︒
特別受益の持戻し制度の継受については︑有地亨﹁特別受益者の持戻義務︵一︶︵二︶﹂民商法四
0
巻︵昭三1一︶ 一号
・三 号︑
とくに三号一七頁以下が詳しく︑また遺留分減殺制度については︑高木多喜男﹁近代的遣留分制度序説ー│遣留分の価値化
を中心としてー│﹂神戸法学六巻三号︵昭三二︶二五九頁以下が詳しい︒なお︑千藤﹁フランス法に於ける特別受益の持戻
しに関する一考察︵一︶ー相続人間の衡平手段として││﹂関大法学論集二九巻六号︵昭五五︶三五頁注
( 1 0
注 頁以下︑四
0
) ( 4 )以下 参照
︒
( 1 0 )
本稿作成のために参照したフランスの主な文献は︑次のようなものである︒
︹体
系書
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(なお︑両者は︑出版年によづて区別
窓瓶撼l1111~撼1ロド ...'l.f.! :,) 共
1
く(共1
く)Georges Ripert et Jean Boulanger, Traite de droit civil d'apres le traite de Planiol, t. iv, 1959.
Louis J osserand, Cours de droit ci vii positif fran1,ais, t. iii, 1930.
Marcel Planiol et Georges Ripert, Traite pratique de droit civil fran1,ais, t. v, par Andre Trasbot et Yvon
Loussouarn, 1957.
Ambroise Colin et Henri Capitant, Cours elementaire de droit civil fran1,ai̲s, t.. 3, dixieme edition par Lもon
Julliot de la Morandiere, 1950.
〔岩娯蜘・1~早l母舒肖瓶眺器緯〕
Pierre Catala, Des reglements successoraux depuis les reformes de 1938 et l'instabilite economique, 1954.
Pierre Catala, La reforme des liquidations successorales (formules d'application de Georges Morin) 1975.
(終.W'匡押述'王逃叶且サP\J凶哀..:i~:,)
Jean Alibert, De I'epoque d'evaluation des biens dans les partages d'indivision, 1928.
George Morin, La Joi du 3 juillet 1971 sur !es rapports a succession, la reduction des liberalites et !es
partages d'ascendants, 1972.
Michel Dagot et Andre Precigout, Le nouveau droit des successions, la loi successorale du 3 juillet 1971,
application pratique, 1972.
Andre Ponsard, Liquidations successorales Rapport‑Reduction Partage d'ascendant Commentaire de la Joi du 3
juillet 1971, 1977.(怜蜘ざD.1973, Chron. I, p. 1‑37,如悩4公共如Qや硲心)゜
Andre Raison, Reglement des successions, partages d'ascendants, Journal des Notaires et des Avocats et
journal du notariat 164'Annee, 1971‑n°23.
〔纏択•s-\.JQ華〕
Jean‑Pierre Arrighi, Observations sur le rapport et la reduction des liberalites (A propos de la Joi success‑
orale du 3 juillet 1971). D.!1972, Chron, XVI, p. 85‑90.
特 別
受 益
と 遺
留 分
減 殺
に 関
す る
一 考
察 ︵
一 ︶
ればならない︵日民法九
0 1 1
一 条 ︶ ︒
評 価 基 準 時 が 問 題 と な る 四 つ の 場 合
九 七
︵ 九
七 ︶
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フ ラ
ン ス
法 に
言 及
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主 な
邦 語
文 献
に は
︑ 次
の よ
う な
も の
が あ
る ︒
加 藤
一 郎
・ フ
ラ ン
ス に
お け
る 農
地 相
続 ︵
昭 ニ
︱ ︱
︱ )
稲本洋之助「農業経営資産と相続嶋~フランス民法典におけるその解決ー」内田力蔵11渡辺洋三編・市民社会と私法
︵ 昭
三 八
︶ ︑
同 ・
近 代
相 続
法 の
研 究
︵ 昭
四 一
︱ ︱
) 他
多 数
︒
伊 藤
道 保
・ フ
ラ ン
ス に
お け
る 農
家 相
続 制
度 の
変 遷
︵ 昭
三 八
︶
原 田
純 孝
・ 近
代 土
地 賃
貸 借
法 の
研 究
︵ 昭
五 五
︶
共同相続人が被相続人の残した遺産を実際に取得するまでには︑わが民法上︑
要である︵日民法一 0
二 九
条 ︶
︒
まず第一に︑特別受益がある場合︑
特別受益者の具体的相続分算定のために︑民法九
︱一条的にいえば持戻し贈与並びに相続開始時の財産を評価しなけ 0 1
第
1一に︑現実に分割の対象となる遺産を評価しなければならない︒第三に︑遺留
分侵害の有無を判断するために︑遺留分算定の基礎となる財産を評価しなければならない︒なお︑この基礎財産は︑
相続開始時の財産の価額に贈与財産の価額を加え︑そこから債務額を控除して算定するから︑三つの財産の評価が必
第四に︑遺留分減殺請求がなされた場合︑返還義務者は減殺を受ける限度で目的物
(1 )
現物的乎等主義と価値的平等主義 第三二巻第一号
一 八
0 四年の民法典制定 の価額を弁償し︑現物返還を免れることができるが︑その際に︑目的物の価額を評価しなければならない︵日民法一 0
四 一
条 ︶
︒
以上の四つの場合以外にも︑民法九一 0 条の︑遺産分割後の被認知者による価額支払請求の算定基準時
(1 )
なども問題となる︒しかし︑この制度は︑戦後の新設であり︑わが国独自の制度なので検討の対象から一応はずすこ
とにしたい︒また︑昭和五五年に新設された寄与分︵九 0 四条の二︶の評価基準時も当然問題となるが︑制度が新設
されて間もないことであり︑ またフラソスでは寄与分制度は民法中に明規されていないことでもあるので︑本稿では
ところで︑このような評価基準時が問題となる四つの場合のいずれも︑特別受益の持戻し並びに遺留分減殺の両
(2 )
制度の源流といわれているフランスで︑わが国と同様︑問題とされているので︑
た い
︒ な
お ︑
フランスでは︑評価基準時を論じる前に︑持戻しや減殺に服する物の返還方法が問題となっているので︑
( 1 )
ご く 最 近 の 判 例 研 究 と し て ︑ 永 田 真 三 郎 ﹁ 死 後 認 知 さ れ た 者 に よ る ︑ 遣 産 分 割 後 の 価 額 支 払 請 求 に お け る 遺 産 評 価 の 基 準
時 ﹂
判 時
九 八
二 号
︵ 判
例 評
論 二
六 一
一 一
号 ︶
︵ 昭
五 六
︶ 一
九 六
頁 以
下 が
あ る
︒
( 2 )
前注
( 9 )
参照
︒
フランスでは︑特別受益を現物または価額︵具体的には差引き︶のいずれで持戻すかという持戻し方法と︑遺留
分の減殺を受けた贈与・遣贈物を現物または価額のいずれで返還するかという返還方法が︑ あらかじめこれについて簡単に触れておく︒ 取扱わないこととする︒
関法フランスでの議論をこれから紹介し
九 八
︵ 九
八 ︶
特 別
受 益
と 遣
留 分
減 殺
に 関
す る
一 考
察 ︵
一 ︶
果すために︑現物的平等主義︵持戻し及び減殺の場合の現物返還︶から価値的平等主義︵持戻し及び減殺の場合の価
額 返
還 ︶
へ の
移 行
が み
ら れ
︑
物的平等主義の採用︑並びに評価基準時の修正が幾度かに亘って行なわれてきたのである︒このようなフラソス法に
フ ラ
ソ ス
で は
︑
し か
し な
が ら
︑
以後︑常に論じられてきた︒
財産の細分化を促進し︑
求の結果として生じたものであった︒
九 九
︵ 九
九 ︶
一 八
0 四年の立法時には︑現物的平等主義がほぼ全面的に採用されたが︑これは︑相続
しかも共同相続人間の徹底した衡平化に役立たせようとするもので︑当時の政治的社会的要
一 八
六 0 年代からの産業資本主義の興隆とともに︑相続財産︑とりわけ農業︑経営資産の細分化が
生産性の低下をもたらし︑対諸外国との競争力という面で︑国民経済上極めて問題となり︑結局︑農業用経営資産の
よ う
や く
︑
細分化防止のために︑現物的平等主義から価値的平等主義への移行という現象となって現われてきた︒この価値的平
(2 )
一九三八年二月法及び六月命令法 等主義は当初︑判例によって押し進められ︑立法上の解決をみたのは︑
(d ec re t, lo i)
によってである︒さらに一九六一年法によって︑農業経営資産のみならず︑中小企業菩営資産にも︑こ
の細分化防止という面からの拡大がはかられた︒そして︑この傾向は︑
と こ
ろ で
︑
フランスでは︑こうした相続財産の細分化防止という動きと同時に︑相続人間の衡平化を求める根強
い欲求がある︒両者はいわば相矛盾するともいえる理念で︑両者を妥協もしくは調整させるべく努力が一般法である
民法の中で払われてきたところに︑ フランスの遺産分割法の特徴が見られるといえよう︒そして︑その調整手段とし
て︑評価基準時が問題となってくる訳である︒これをまとめていえば︑次のようになろう︒
一般法である民法において︑農業経営資産等の相続財産の細分化を防ぎ︑かつ相続人間の衡平化を
しかも価値的平等主義のもとにおける不都合・不公乎を排除する手段として部分的に現 一九七一年法でも基本的には維持されている︒
1961年法
I
1971年法I
備 考左 に 同 じ
扇臼均
左 に 同 じ
但る左現し
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贈還同者可 じ(
,物受返 によ)
左 に 同 じ
I
左 に 同 じI
1い89て8持年戻法でし遺免言除者が要求した場合を除
左 に 同 じ 左 に 同 じ 1手方による971年法の差民設現注異物け典返でて改は正な委く員贈会与では与か価,迫額相障返
還か,で追区別贈を= 還い)た ( 贈, =
価業嘔額・返手虞還工業を商に
T
業も拡・エ大)([弁価債伽金額鰐を分返割穀時燭腐の)
別喜しな留かがさ=提れ分i
し9,権額唱た障議者返さ遼会れ与に,でな・最遣従さ賠終れ来の相手方第的=には還返によ る区三者等にた贈現物
与•一部の追
関法
第三二巻第一号
設け価額持戻しに服せしめた︶︒
Jのような区別を設 金銭の贈与についてはへ その特殊性から特に一ケ条を
う 理
由 で
︑ いずれも価額持戻しに︶服せしめた︵なお︑
在しているときには︑同一物の分配が可能であるとい 中に贈与不動産と同一性質・価額・品質の不動産が存 現物での持戻しが容易でないという理由で︑ また遺産 動産が相続開始前に第三者に譲渡されていたときには 贈与不動産を現物持戻しに︵極めて例外的に︑贈与不 け︑贈与動産と遺贈を価額持戻し︵差引き持戻し︶に︑ しに服せしめ︑そこでの贈与財産を動産と不動産に分 るために贈与と遺贈とで区別を設けず︑両者共に持戻
一 八
0 四年の立法者は︑相続人問の衡平をはか
(3 )
け 持 戻 し 方 法 の 変 還
説明を加えたい︒
( 1
0 0
)
おける特別受益の持戻しによる返還方法並びに遣留分
とめれば︑上のようになろう︒以下︑この表について 減殺を受けた贈与・遣贈物の返還方法の変遷を表にま
1 0
0
〔返還方法に関するフランスの立法変遷)
特 別 受 益 と 遣 留 分 減 殺 に 関 す る 一 考 察
( 一
)
I
1804年立法 1938年2月法I
1938年6月命令法価 額 返 還 左 に 同 じ 左 に 同 じ
動 産
持 贈
戻
( 例現外①亨物譲渡返『蓋
) 9
(但る左改し,良に受費贈を同者償還にじよ)
(但蘊価し物額贈返与還返者可に還よ)
し 不 動 産
の
場 与
ノロ
金 銭 価 額 返 還 左 に 同 じ
l
左 に 同 じ遣 贈 価 額 返 還
I
の 第相手三方者相共同手相方続がが人 (但現 物 返 還茫価し,額現存讐返財産還中) 左 に 同 じ左 に 肘 じ (但左 に 同 じ『価し,彎額不動返産場と還農)閂
み に
︑
1 0
わが国では贈与・遣贈につき︑ いずれも持戻し
( 1
0 一
︶
で︑原則的に遣贈を持戻しの対象からはずした︒ちな そ
こ で
︑ 持戻しに服せしめるのは適切でないというのである︒
一八九八年法は︑遺贈者に特別授益意思が認
められない場合には遺贈を持戻させるという留保つき 与えようとする意思があると推測されるので︑遣贈を 贈を行なうときは︑ 一般的に︑受遺者に特別な利益を 贈の持戻しについて批判が生じてきた︒
Jれら一八 0
四年立法に対して︑まず第一に遣
けた理由は︑次章で述べる持戻し財産の評価時とも絡 むが︑動産は贈与時から価値が低下し︑しかも譲渡の
︵ただし︑所有権は︑遺言者の死亡と同時に受遣者に
相続人間の衡平化に︑ をきたすことが少なく︑これを現物で持戻させる方が
(4 )
より適うということによる︒
つまり︑贈与
の場合には相続分の前渡しと解されるが︑遺言者が遣 移る︒仏民七︱一条︶のに対して︑ 不動産は価値低下
可能性が高く︑また遣贈は遣産の中に含まれている
四
第三二巻第一号
に服せしめているので︑結局フランスのこの一八九八年法︵現行八四三条も同じ︶と違っている︒わが国では︑遺贈
者の意思が特別授益にあるか否かについてあまり深く議論されていないが︑わが国でも︑遺贈者の意思を推測して︑
次に贈与の持戻しについて︑ とりわけ贈与不動産の現物持戻しについて批判が強くなった︒
物持戻しに服せしめることは︑価額持戻しよりも相続人間の衡平化に役立ちうるけれども︑経済・産業の発展に伴い︑
持戻し義務者に不便・不都合を強いることになった︒
割により再び義務者に戻ってくるという保証は何らないわけであるから︑義務者が営業者である場合など非常に困る︒
(5 )
一九三八年二月法が小さな手直しをし︑ そこでまず︑判例が不動産の現物持戻しを緩和し︑
(6 )
一九三八年六月命令法が本格的に︑贈与者の意思による不動産の現物持戻しの可能性を残しつつ︑
価額持戻しに改めた︒その結果︑動産・不動産のいずれも価額持戻しによることになった︒さらに︑
不動産についてと同様に動産についても贈与者による現物持戻しの要求を許し︑
を破るという理由で強い反対があったにもかかわらず︑契約自由の原則を理由に︑受贈者の側にも現物持戻しの自由
を認めた︒このように︑持戻し方法の選択を受贈者に委ねたのは︑価額持戻しによる金銭の補償額が支払能力を超え
る場合の受贈者の立場を考慮したものであり︑
るためでもある︒ ついで立法的解決として︑ とくに持戻しの対象が不動産である場合︑この不動産が遺産分
また受取った財産そのものを返還したいという受贈者の意思を尊重す
いずれにせよ︑この持戻し方法についてのわが国のやり方は︑明治民法及び現民法とも動産と不動産との間で区
別を設けることなく︑贈与・遺贈物のすべてを価額持戻しに服せしめているので︑非常に簡単なものである︵明治民 遺贈は持戻さないという方向で検討すべきではないか︒
関法1 0
一 九
七 一
年 法
は ︑
( 1
0
二 ︶つ ま
り ︑
不動産を現
不動産についても
しかも︑共同相続人間の衡平の原則
維持されている︒ ⇔ に 思 わ れ る ︒
法 一
00 七条︑現民法九
0 ‑ ︱ 一
条 ︶ ︒
一 八
0 四年立法当時より︑共同相続人間にお 明治民法制定時に︑立法者が当時のフランス民法の動揺を的確に把握し︑かつ現
物持戻しが有する不合理さを理解し︑価額持戻し主義を採用したのは極めて卓見であったといえよう︒しかし︑
フ ラ
ンスでは︑もともと現物持戻しが素直に共同相続人間の衡平化に最も適切であるという歴史的経緯があるためか︑今
日でも現物持戻し方法を用いることにより︑評価基準時とともに︑価値的平等主義がもたらす不平等を修正していこ
うとする姿勢が見受けられる︒このことは︑遣留分減殺を受けた贈与・遣贈物の返還方法についてもあてはまるよう
遺留分減殺を受けた贈与・遣贈物の返還方法の変遷
一 八
0 四年フラソス民法典の立法者は︑遺留分を財産の一部とするいわゆるローマ
1 1
ドイッ型遺留分制度を斥け︑
遺留分を法定相続分の一部とするいわゆるゲルマン
1 1
フランス型遺留分制度を採用し︑遺留分減殺請求を受けた場合
の減殺物の返還方法については︑減殺を受けた者︵相手方︶が共同相続人であるか第三者であるかにより区別を設け
た︒まず相手方が共同相続人の場合には︑現存財産︵遺産総体︶の中に贈与財産と同一種類の財産が存在しているこ
となどを条件として価額返還主義が用いられた︒しかし︑この場合︑条件が充たされることはあまり期待されず︑む
しろ原則的には現物返還主義であったといえよう︒つぎに相手方が第三者の場合には︑現物返還主義が用いられた︒
そして︑この第一一一者への現物返還要求は︑後述するように一九七一年改正の際にも結局修正されることなく現在でも
ところで︑このように相手方により返還方法に差異を設けた理由は︑
いては︑経営資産︑とりわけ農業経営資産の維持という面から︑相続人と第三者間におけるほど明白な形で贈与・遺
特 別 受 益 と 遺 留 分 減 殺 に 関 す る 一 考 察 ︵ 一 ︶
1 0
三
( 1
0 三 ︶
別を設けようとした︒
フランス法では︑
一 八
0 四 贈財産の返還を請求しえないと解されたからである︑ には︑価額返還主義が認められる範囲が狭く農業経営上︑問題が多いという理由で︑次第に批判がたかまり︑結局一 九三八年六月命令法は︑贈与不動産・農業経営資産及び追贈に限ってではあるが︑価額返還主義を拡大することにし 手工業の各経営資産の贈与にも拡大した︒なお︑同法は︑価額弁償金を分割時に支払う旨︑ ︱
︱ 五
頁 参
照 ︶
︒
第二次大戦後︑民法典改正委員会は︑ はじめて明規した︵後述
まず最初は︑追留分減殺物の返還方法を抜本的に改めるべく︑これまでの
条文のような減殺請求の相手方が相続権者であるか第三者であるかによる区別を設けることなく︑贈与か遺贈かで区
つまり︑遺贈の場合には︑遣贈が効力をもつときである相続開始時から容易に遺留分侵害の有
無を知りうるので︑当事者の利益が簡単に明らかにされるからという理由で︑現物返還に服せしめ︑贈与の場合には︑
受贈者である相続権者や第三者︑ さらには贈与財産の譲渡をうけた第三者の立場が一方的に危険に瀕するからという
理由で︑価額返還主義に服せしめようとした︒ しかし︑諭会において︑このような改革案よりも従来の減殺請求の相
手方 1 相続権者か第三者かーーーによる区別が提唱され︑結局︑相続人への贈与及び遺贈は︑被相続人が特別受益相
続人に利益をもたらすことを望んでいるというという理由で︑価額返還主義に︑これに対して第三者への贈与及び追
(7 )
贈は︑現物返還主義に服せしめられることになったのである︒
以上の点をまとめていえば︑遺留分減殺を受けた贈与・遺贈物の返還方法について︑
年以降︑現物返還主義から価額返還主義への移行がみられ︑こうした移行は︑ た︒なお︑同命令法は︑価額弁償の諸要件も明らかにした︒
つ い
で ︑
とくに一九三八年六月命令法及び一九 一九六一年法は︑価額返還主義を商業・工業
関法第三二巻第一号
という点に求められよう︒
1 0
四
( 1
0
四 ︶しかも︑相手方が共同相続人の場合
フランス相続法において︑財産法の一般的な発展に対応する側面として︑相続財産の分割に関する現物的平等主義
e ga l i te en na tu re
(物的均分主義とも訳される︶から価値的平等主義
e ga l i te en a v le ur (価値的均分主義とも訳される︶への転換 に示される傾向は︑基本的な特徴の一っになっているのである︵稲本洋之助﹁農業経営資産と相続ーーフランス民法典にお け る そ の 解 決
﹂ 内 田
11渡辺編・市民社会と私法︵昭三八︶二九一頁︶︒(2)デクレ・ロワ(decret,loi)は、命令法(木村健助•仏蘭西民法〔II
〕財産取得法切(昭三一復刊版)一六四頁)、あるいは 委任立法︵山口俊夫・概説フランス法上︵昭五三︶九六頁︶などと訳されている︒本稿では︑命令法と訳す︒なお︑一九三 八年六月一七日改正が︑命令法という形式で行なわれた理由については︑稲本洋之助﹁農業経営資産と相統ー1フランス民 法典におけるその解決ー﹂内田
11渡辺編・市民社会と私法︵昭三八︶二九七頁以下が詳しい︒
( 3 )
フランス法における贈与・遺贈財産の持戻し方法の変遷については︑千藤﹁フランス法に於ける特別受益の持戻しに関す る一考察︵一︶ー相続人間の衡平手段としてー﹂関大法学論集二九巻六号︵昭五五︶五
0
頁以下︑五八頁以下参照︒(4 )M az ea ud , o p . c i t . , 19 71 , n ° 16 63 , p . 77 9.
( 5 )
一九三八年二月法は︑現物持戻しの場合︑受贈者が持戻される物を改良するために支出した費用を︑分割時にその物の価
額が増加した点を考慮して︑償還すべきである︑と改正した︵旧仏民八六一条︶︒
( 1 )
特別受益と遺留分減殺に関する一考察︵一︶
するための努力も払われたが十分でなかった︒
そこ で︑
1 0
五
共同相続人間の利害の調整をきめこまかには 一九七一年法は︑細分化防止を持続させつつ︑相続人間の衡
六一年︱︱一月法で顕著にみられ︑
そこでの改正趣旨は︑持戻しの場合と同様︑小規模農業経営資産及び家族的性質を 有する商業・工業等の経営資産の分割を防ぐことが主たる目的であった︒それと同時に︑共同相続人間の衡平を維持 平を考慮して︑価額弁償額の算定時を分割時とするなど︵次号参照︶︑
かっている︒これに対して︑この問題に関するわが国のやり方は︑減殺請求権の相手方を相続人か第三者かで区別せ ず︑現物返還主義を原則としている︒
しかし︑受贈者・受遺者は価額弁償を許されている︵日民法一
0
四一条︶ので︑例外規定である価額返還主義がむしろ原則的な役割を果している︒
( 1
0
五 ︶( 6 )
稲本教授によれば︑産業資本主義確立期(‑八六
0
年代︶には︑﹁農業人口の流出を前提として︑国際競争力をもつ大農経営への要求が主張されたにかかわらず︑民法典のレベルでは︑特殊11農業政策的理由による修正は︑非プルジョア︵法︶的であるとして排斥され︑もっとも抽象的な相続法体系としての価値的平等主義のみが肯定された︒二大戦間の世界的な資本主義の危機の時代において︑国内農業生産の維持のための方策の立法化が強く望まれるに至り︑一九三八年にはじめて︑
民法典上に特殊11農業政策的理由による修正が導入された︒同時に判例法上確立した価値的乎等主義を法文化することもお
こなわれたが︑それはもはや︑物的不均分強制の例外的承認のための論理的前提を明確にする修正にすぎなかった﹂といわれる︵稲本﹁農地所有と相続・フランス﹂比較法研究二九号︵昭四三︶八二頁以下︶︒
(7 )P on sa rd , op . c i t . , ng 88 e t s , pp .
1 1 5
e t
s .
本章では︑相続財産の評価基準時をめぐるフランスでの議論を紹介したい︒なお︑評価基準時の問題とは︑
えれば︑評価の対象となった財産価額の上昇分もしくは下降分を相続人間にいかに分配すべきかという問題に他なら
(1 )
ない︒本章で述べようとする点をあらかじめまとめれば︑次の表のようになろう︒
次頁の表から明らかなように︑フランスの立法・判例・通説は︑四つの評価基準時のうち︑遺留分算定の基礎財産
(2 )
のみ相続開始時で評価し︑他は全て遣産分割時︵具体的には︑共同相続人が遺産を分割し所有権を取得する日にでき
る限り接近した日︶で評価し︑これに対してフランスの少数説は︑全て遺産分割時で評価している︒
これに比してわが国では︑相続財産の評価基準時に関する立法はまった<欠落しており︑
まで評価基準時を何時に求めるかについて︑総合的に深く検討することはなかったように思われる︒
関法
四
第三二巻第一号
価 値 的 平 等 を 実 現 す る 手 段 と し て の 評 価 基 準 時
また︑判例・学説もこれ
しかし︑近時︑
1 0
六
( 1
0
六 ︶し、
し、
か
特 別
受 益
と 遣
留 分
減 殺
に 関
す る
一 考
察 ︵
一 ︶
評価した︵旧仏民八六 0
条 ︶ ︒
け持戻し財産の評価基準時︵仏民法八六
0
条 ︶
1 0
七
相続財産︵とりわけ不動産︶価額の上昇︑.並びに遺産分割をめぐる紛争の長期化に伴って︑評価茎準時に関する争い が多くみられるようになってきた︒そして︑今日のわが国の判例・通説は︑持戻し財産並びに遺留分算定の基礎財産 を相続開始時に︑分割の対象財産並びに価額弁償額の算定基準時を遺産分割時に評価しており︑これに対してわが国 の少数説は全て遣産分割時に評価しようとする︒
まず第一に︑持戻しに服する特別受益財産の評価基準時について︑贈与と遺贈に分けて述べることとする︒
フランス革命(‑七八九年︶前のフランス古法では︑持戻しに服する贈与財産は︑遺産分割時に
① 贈 与 財 産
( 3 )
評価されていたが︑一八 0 四年立法は︑贈与財産を動産と不動産に区別し︑動産については一般的に価額持戻しに服
せしめて贈与時で評価し︑不動産については原則は現物持戻しに︑例外的には価額持戻しに服せしめ︑相続開始時で
この当時の動産とは有体動産のみで︑使用により贈与時から価値が低下し︑しかも譲
渡の可能性が高いので︑贈与時で評価させ︑不動産については︑原則は現物持戻しで︑例外的に価額持戻しに服する
場合には贈与時から価値が高騰することが通常であるからという理由により︑相続開始時に評価するほうが共同相続
(4 )
人間の衡平をはかれると考えたからである︵なお︑この当時は相続開始時と遺産分割時との時間的隔りが十分に認識
されていなかった点については︑後述︱︱四頁参照︶︒しかし︑動産に関して︑その後の判例が︑無体動産である有価
証券や公債等を贈与日で評価したので︑贈与時から相続開始時ないしは分割時までの価額の上昇分を特別受益者が取
得することになり︑分割の価値的平等をくつがえしてしまった︒さらに︑破毀院は︑
(6 )
と 判
示 し
た ︒
戻しに服する贈与不動産を遺産分割時に評価する︑ 一九三七年一月︱︱日に価額持
( 1
0
七 ︶1961年法 1971年法
I
備 考左 に 同 じ
} 遺 産 分 割 時 1971年法で分割時に譲渡されれば,譲
左 に 同 じ 渡時の価額,代位財産があれば,その
分割時の価額。
なお,贈与者の意思優先。
左 に 同 じ 贈 与 時
1
1説997採170年年用。前7の月学16説日破は毀院 始決時は説,。分割時
遺 産 分 割 時
年時事認か価に服す説情つめ1にるすて月る1。のるなよ,1贈判お日とり倣与判,例197五不示一は1。般,屁動年刊謡相産的統沃こをに遺,清開はは始,産古分算価貯分割金く額割後祗かの持時増の,ら
戻 闘
で1減937評をし 左 に 同 じ(農業経営資産等)
左 に 同 じ 左 に 同 じ
左 に 同 じ 相 続 開 始 時 1のば971譲相渡年続時法開始ので,価時相額の続,価代額開位。始前財産に譲が渡あれさればれそ
遺 産 分 割 時
(フランス法の場合)
I 立 法 (1971年法) I 判 例 1 通 説 1 少 数 説
①匠遺産分割時 1遺産分割時 1遺産分割時 1遺産分割時
③ │ ' '
(農業経営資産等) I // I, ,
I' '
③
相続開始時(?) (!彗骨胄贔つ) 相続開始時 相続開始時 /I④ I 遺産分割時 1遺産分割時 l遺産分割時 I
関法第三二巻第一号
1 0
八
( 1 0
八 ︶※金銭については,原則は贈与時
(詞価基準時に関するフランスの立法変遷)
特別受益と遺留分減殺に関する一考察︵一︶
1 0
九
I
1804年立法│
1938年2月法 11938年6月命令法動 産 贈 与 時 ! 左 に 同 じ 左 に 同 じ
① 贈
{(意原但則思し),優贈贈先与与者の時
}
持
不 動 産 (例外)相続開始時 ( 例 外 ) 贈 与 時戻
与し 金 銭 贈 与 時(i')
I
左 に 同 じ 左 に 同 じ財 産
遺 贈
③分割の対象財産
③ 遣 留 分 現存財産 相続開始時(?) 左 に 同 じ 左 に 同 じ
算 定 の
基礎財産 贈 与 相 続 開 始 時 贈 与 時 左 に 同 じ
④ 価 額 弁 償
(評価基準時に関する現在の日本法及びフランス法の立法・判例・学説)
(日本法の場合)
( 九 1 0
)
│
判 例 通 説I
少 数 説①
I 相続開始時(新潟家審昭36·12•21他)
匠相続開始時 1 遺産分割時③
l
遺産分割時(福岡高決昭46• 8 • 18他)I
遺産分割時I
//R I
相続開始時(最判昭51,3 • 18) 秤相続開始時I
叫遺産分割時(口頭弁論終結時,昭最5判1 • 8•30) 遺産分割時 ,I
※金銭については,贈与時説が通説であった。
第三二巻第一号
しかしながら︑判例のこうした動きを適確に把えることなく︑
八年二月法は︑これまで例外的に相続開始時で評価されていた不動産を贈与時で評価すると改め︑
令法は︑動産・不動産のいずれも贈与時に評価することに改めた︒このような一九三八年法の改正趣旨は︑相続人間
の衡平を犠牲にしても︑贈与財産の経済的効率化︵農地の細分化の防止等︶を確実にすべく︑受贈者の法的安定をは
かることにあったといわれている︒
ので︑受贈後︑当該財産を現物で返還させられる恐れもなく︑
受贈財産になしうることができるからである︒たとえば︑受贈者は︑贈与された不動産を相続開始時もしくは遺産分
(8 )
割時までに売却して︑贈与時の価額との差額を得ることができた︒
ところで︑評価基準時を贈与時に改めた点について︑この改正法は︑
当時はまだ貨幣価値が安定していた時期でもあって︑その後の貨幣価値の不安定な動きを予測することはできなかっ
(9 )
たからであるという批判が加えられていた︒いずれにせよ︑この一九三八年の両改正法は︑受贈者の所有権の安定を
確実にするなどそれなりの効果をもたらしたけれども︑共同相続人間の衡平を著しく損なうものであった︒そこで猛
らなかったフラソの急速な︑ 烈な一九三八年改正法反対キャンペーンがもちあがったのである︒このキャソペーソは︑当時のとどまるところを知
( 11 )
しかも慢性的な下落の繰返しと一致していた︒戦後︑
割時での財産評価という原則を採用することにしたが︑
と で
あ る
︒
その結着がつくのは︑ようやく一九七一年になってからのこ
( 12 )
一九七一年改正法の趣旨を一言で述べれば︑主にインフレ等の経済情勢を考慮しながら︑受贈者・受遺者
の地位の安定にも配慮を加えつつ︑共同相続人間の実質的な衡平化をはかるために︑持戻しに服する財産の評価基準
関法フラソス民法典改正委員会は︑分
一 九
一
0 年代の法案から生まれたものであり︑ また返還すべき価額も明白なので︑ いかなる処分をも つまり︑受贈者は︑贈与時で評価された財産の価額を遺産分割時に持戻せばよい ついで同年六月命
一 九
一
0 年代に提案された立法案に基づいた一九 ︱
1 0
(
︱
1 0 )
しに服せしめられたが︑その評価基準時は明規されなかった︒その後︑ 一八九八年法は︑被相続人は一般に︑贈与と
遺贈を行なうことにより受遺者に特別の恩恵を与えようとしたもの︑と
(1 6)
推定されるからという理由で︑原則として遺贈を持戻しの対象からはずした︒ただ遺言者が反対の意思を表明した場
合には︑遣贈にも持戻しか課せられる︒この場合︑遣贈を現物で持戻すことは︑遺贈物が遣産の中にまだ含まれてい
るので明らかに意味をもたず︑受遺者は自己の相続分と差引きでなければ遺贈を主張することができない︒ところで︑
一八九八年法も︑例外的に遣言者の要求によって持戻しが課せられた場合の評価基準時を明規しなかった︒そこでフ
ランスの通説は︑贈与規定を類推適用して︑遣贈の評価基準時を遣贈が効力を生じた時︑すなわち相続開始時と解し
特 別
受 益
と 遣
留 分
減 殺
に 関
す る
一 考
察 ︵
一 ︶
異なり︵贈与は︑相続分の前渡しである︶︑
@ 遺 贈 財 産 遺 贈 は
︑ 贈 与 と 異 な り
︑
一 八
0 四年立法では動産と不動産に区別されることなく︑全て価額持戻 産について︶の分化から︑ 一九三八年の贈与時への統一を経て︑ 一九七一年に遺産分割時に改められた訳である︒ いずれにせよ︑持戻しに服する贈与財産の評価甚準時は︑ なお︑金銭の贈与については︑ 時その他を見直そうとするものであった︒それは︑特に︑遣産分割時で評価すること︑また贈与財産が遣産分割前に 譲渡されたならば︑その譲渡時の価額を持戻させ︑さらに受贈者が新たな財産を取得していたならば︑その新財産を
( 13 )
遺産分割時で評価することなどに現われている︵現仏民八六 0
条 ︶ ︒
一 九
七 一
年 法
は ︑
一 八
0 四年の贈与時︵動産について︶相続開始時︵不動 そして︑このような一九七一年改正は︑実務上の要請に答えようとすること
一 八
0 四年立法と同様に贈与時の額をそのまま持戻させ︑また一
八 0 四年立法とは異なり金銭が他の財産の取得のために用いられた場合には︑取得財産の分割時における価額を持戻
( 14 )
させることにした︵現仏民八六九条︶︒
にあったといわれて芦呼
( ‑
︱ 一
︶
関 法
( 17 )
てきた︒しかし︑破毀院は︑
( 18 )
して通説を斥けた︒なお︑ 第三二巻第一号
( ‑
︱ 二
︶
一 九
七 0 年七月一六日判決で︑持戻しに服する遺贈の評価は分割時に行なわれると判示
一九七一年法も︑持戻しに服する遺贈の評価基準時について明文規定を置かなかったが︑
一 九
七 0 年判決を是認したものと解され︑
さ れ
て い
︵ 廷
゜
またそのように解することが贈与の場合の新規定とも完全に調和すると解
以上︑結局︑持戻しに服する財産は︑現在では︑贈与・遺贈にかかわりなく︑遺産分割時に評価されることになっ
た︒このことは︑相続分の前渡しを受けた特別受益者が︑贈与時から遺産分割時までの間の受益財産価額の増減分を
他の共同相続人と共に分配しなければならないことを意味している︒したがって︑もしも︑被相続人がある特定の相
続人に︑受益財産価額の増減分を独占的に取得せしめようと望むならば︑持戻しを免除して︑あるいは持戻し免除と
同じ扱いを受ける先取分として相続分外の贈与を行なうことにより︑その目的を達することになる︒なお︑持戻しに
服する財産が遺産分割時に評価されることに改められたことは︑持戻し制度が従来の相続人間の衡平を促進する手段
( 20 )
と同時に︑遺産分割を促進する機能をより備えてきたと評価できるであろう︒
この持戻しに服する財産の評価基準時に関するわが国のやり方は︑明治民法起草時に起草者は︑贈与時説に立った
案を提出したが︑反対意見が多く︑修正案として相続開始時説による考えをもち出したものの︑遂に明文規定になる
ことはなく︑現在の通説・判例は相続開始時説を採用している︑ というものである︒
( 1 )
瀬川信久﹁具体的相続分算定のための遺産評価の基準時﹂現代家族法大系
4相 続
I
︵ 昭
五 五
︶ 三
七 六
頁 以
下 参
照 ︒
( 2 )
マ ゾ ー は ︑ ﹁ 分 割 が 確 定 す る 日 に 評 価 す る こ と は 不 可 能 で あ る ︒ そ の 理 由 は ︑ 分 割 に 達 す る た め に 必 要 な 色 々 な 作 業 が あ る 時 間 継 続 す る か ら で あ る ﹂ と 述 べ て い る
(M
az
ea
ud
, op . c it . , 19 80 . p . 82 3)