東京都 における地球温暖化対策をめ ぐる 政策過程に関する予備論的考褒
一 地方レベルの先進的施策に見る政策的動態の意義とその含意一 青木 ‑益 ・元木 悠子
キー ワー ド ・地球温暖化 問題 自治体 政策過程
CO2総量削減義務化 排 出権 取引制度 再生可能エ ネルギ ダ 権型エ ネルギ ̀ガバ ナ ンス
Ⅰ は じめに
1
本研究の背景
1990
年代 以降の地球温 暖化 問題へ の対応 を契機 に, わが 国地方 レベ ルにお いて従来 にない政策 的動態
(policydynamics)が顕在化 しつつあ る。それは, これ まで中央政府の専管事項 と考 え られて きた,エ ネルギー問題への 自発 的な 対応 を志 向す る,地方 自治体 ( 以下, 自治体) に よる一連 の施策展 開であ る。
具体 的 には,風力,太陽光,バ イオマスな どの再生可能エ ネルギーの導入,エ ネルギー使用の抑制 ・ 効率化,森林再生のための課税 といった各種対策 に よ り, 二酸化炭素 ( 以下,CO
2)排 出量の削減 とともに,域 内エ ネルギー需給 の最適 化や地域 ネ ッ トワーク化が 目指 されている。す なわち,そ こでは,基幹的社会 イ ンフラであるエ ネルギ‑ ・システムに係 わる問題 に対 して,地方政府 た る自 治体が独 自の コ ミッ トメン トを見せ は じめてい るのである。
この ような,新 たな政策動向の背景的要 因 としては,大要.以下の
3点 を指 摘す ることがで きる。
a)折 か らの地方'
j l権改革の流 れの中.京都議定書 の 目標 達成 に必要 とされ J
‑131(247)‑
る政策対応の中央政府 に よる不作為 を受け,環境保全 に纏 わるエ ネルギー問題 に対す る一義的責任 は,国にではな く, む しろ 自治体 にあ るとす る理解が醸成 された‑ 統治要 因。
b)風 力や太陽光 な どの小規模分散型のエ ネルギー源や,燃料 電池やマ イク ログ リッ ド
(microgrid)とい った新 たなエ ネルギー ・システムは,エ ネルギー 需給 の近接 を可能 とす るため,その導入 ・普及策 は,個 々の需要家 に よ り近 い 存在 であ る自治体 に親和 的な政策課題 とされた‑ 技術要 因。
C)1995
年以降の電力 自由化 の進展 に よ り,既存電力 1 0社 に よる地域独 占体 制が流動化す る中,新規発電事業者,環境 NPO/ NGO,大手 シンクタンクなど の新 たなアクターが 自治体政策過程 に登場 し,「 エ ネルギーの地産地消」や 「 域 内エ ネルギー ・セキュ リテ ィーの向上」 といった,かつてないアイデアの実践 を求めた‑ 市場要 因。
統治 ・技術 ・市場 に纏 わる‑ そ して,それ故 に構 造的 ともいえる‑ 以上 の要 因変化 は, ひいては,温暖化問題 をめ ぐるエ ネルギー ・ガバ ナ ンスのあ り 方 に変化 を促す ものである。つ ま り,地方 レベ) i ,におけるエ ネルギー をめ ぐる 新 たな政策的動態 に よ り,従来の大規模集 中型のエ ネルギー ・システムに対応 した中央集権型の ガバ ナ ンス構造が,分散化 ・分権化 を遂 げる とい う.かつて ない変化 の招 来が予期 され るのであ る。
事実,近年では,知事選の ロー カル ・マニ フェス トに 「 域 内エ ネルギー 自給 率の改善」が公約 と して掲 げ られた例があ る他,バ イオマスや風力 といった再 生可能エ ネルギーの普及 を通 じた まちお こ しや.既存 の電力系統 に依存 しない 地域 国有 のエネルギー ・マ ネー ジメン ト・システムの構築 に取 り組 む複数の基 礎 的 自治体 を見 ることがで きる。 これ らの動向は,そのいずれ もが, エ ネルギー をめ ぐる地方 自治の拡充 を通 じて,地域社会 ・経済の中央依存か らの脱却 を模 索す る ものであ り‑そ こでの施策展開には,エ ネルギー ・ガバナ ンスの分権化 とよ り自律 的な まちづ くりとが共振す る.新たな作用の胎動が看取 されるので あ る。
‑ 132(248)‑
2
本稿 における基本的な問題関心
この ように,温暖化問題 に取 り組 む 自治体が数多 く見 られ る中,本稿が分析 対象 とす る東京都 の一連 の施策 は,他 の 自治体 のみ な らず, 国 を も凌 ぐ先進 性 と実効性 を兼 ね備 え る もの と して,対策推進 を唱 道
(advocate)す る環 境NPO
な どか ら,高い評価 を受 ける傾 向にあ る。
た とえば,都 は,2 0 0 0年以降.その必要性 が多 くの論者 に よって指摘 され なが ら,国 レベルでの導入が困難 とされている,C 0
2の排 出規制策や排 出権取 引市場 の創 設 を掲 げ,来年 ( 2 00 8年)庚 申の条例改正 において,その実現 を はか る としている。 また,政策遂行の中核 を担 う都行政 として も,石原知事 の リー ダーシ ップの下,世界で最 も環境負荷 の少 ない都市づ くりを目指す ととも に,本来国がや るべ き対策 を国に代 わって都が実行す ると して, 国への対抗意 識 を露 わに し,む しろアグ レッシブ ともい える姿勢 を全面 に打 ち出す感があ る。
そ して, この ことが.国 レベルの政策的停滞 に よ り京都 議定書の 目標達成が危 ぶ まれる中, 自らその打破 を掲 げる東京都 の動向 にポジテ ィブな期待が寄せ ら れ る所以 となっている
。また.都の施策展 開に対す るこの ような期待 は,今 日,中央政府 に よる都 の 施策の後追いに よる模倣 とい う事態 に よ り.その域 を超 え現実の もの とな りつ つある。 た とえば,国は, 2 0 0 5年の 「地球温暖化対策の推進 に関す る法」( 以下,
「 温対法
」)の改正 に よ り
,「 温室効果 ガス排 出量 の算定 ・報告 ・公表制度」 を 導入 したが. これに先立つ こと5 年.都 は既 に類似 の 「 地球温暖化対策計画書 制度」の導入 を果た していた。かつ.最近の報道 によれば,同計画書制度の延 長線上の施策 として企図 され る.C
0 2の排 出規制策 をも追随 ・模倣 しようとす る.国 レベ ルの政策動 向が指摘 されてい る。
さ らに,都 が実施 す る先進 的 な対 策 は.他 の 自治体 よって も模 倣 され る傾 向 にあ
声。 た とえば,2 0 0 7年.都 は,都有施設で実施す る電力入札 において, 購入電力 の省CO
2化 (グ リー ン化) をはか る と した 「グ リー ン電気購入制度」
を開始す る と したが,お よそ
10の 自治体 において本制度の導入が検討 され よ
‑ 133(249)‑
うとしている。あたか も,そ こには,都行政の政策立案機能 をシンクタンクの それに見立て,都 か ら発信 される先進的 なアイデアを,顧客 たる国や他の 自治 体が採用 の上,自らの政策決定 に役立てるかの ごとき状況が見 られ るのである。
したが って.以上 か らは,都 にお け る施 策展 開 には,東京 とい う一地域 の み な らず一国や他 の 自治体 にお け る温 暖化対 策 のあ り方 を も規定 す る とい う 意 味 において, 自治体 間及 び中央 一地方 間 にわた る作用 が看取 され るので あ り, そ こでの政策 的動態 に見 出 され るべ き意義 は.‑ 自治体 の枠 を越 え, わ が 国全体の温暖化対策の帰趨 とい う, よ り大 きな政策的 コンテクス ト
(policy contexts)の下で把握 ・理解 される必要がある, との指摘が可能 となる
。しか しなが ら,その一方で.東京都 とい う自治体 において, なぜ ,そ して, どの ように実際の施策展 開が可能 とな り,そ こには如何 なる課題や問題点が見 出 され得 るのか とい う, よ りク リテ ィカルなイシューに考察 を加 えた研 究 は, 寡聞に してその例 を見 ない。既 に触 れた ように.かつて,エ ネルギー をめ ぐる 政策課題への対応が 中央政府 の専管事項 と見 なされていた点 に鑑みれば,国に 先 ん じるかの ごとき都 の動 向に対 して, この ようなパースペ クテ ィブか ら接 近 す ることは, わが国におけるエ ネルギー ・ガバ ナ ンスの変化‑ つ ま りは,分 権化‑ のあ り方 を占 う上で,重 要かつ不可欠な営為 といえよう。
そ こで, 目下,筆者 らは,都 における温暖化対策 をめ ぐる一連の政策過程 を 分析 の盛上 にのせ,これ らイシューの解明に取 り組 んでいる。本稿 においては, 以上 で見 た問題関心の下,現在進行形の研 究課題 を遂行す る中で得 られた,現 時点 における調査成果 を報告す るとともに,そ こでの知見 に若干の予備論 的考 察 を加 えることと したい。
I
I 調 査 方 法
本研究の主たる調査方法 は,東京都 における温暖化対策 を題材 と した事例研
一 134(250)‑
究 (casestudies)の手法 に依 ってい る。具体 的 には,対策が本格化す る端緒 となった2000年の条例制定以降,お よそ7年 にわたる当該政策過程の実際 を把 握す るために.筆者 らは,関係各位へ の対面 による聞 き取 り (ヒア リング)調 査 を実施 して きた (その概要 については,以下 の表ⅠⅠ‑1を参照)0
表tH 東京都 における ヒア リング調査の概要 (2007年9月18日現在 )
また,本研究では, ヒア リング調査 に加 えて,行政 ・議会 ・企業 関連の公 開 ・ 非公 開の文書 資料 .一般公 開 され る都主催 の意見交換 会やセ ミナーへ の出席, あ るいは,都庁 ホームペ ー ジとい った ウェブサ イ トか ら得 られ る情報か らも;
研究遂行上必要 となる知見の収集 をはかった。
ヒア リング調査 にあたっては.匿名 による実施 を前提 に して,対象者 に協力 を求めた。 これは,過去 の経緯 のフィー ドバ ックの上 に,.将来 にわたる対応が 求め られる政策課題 に当事者 として関与す る関係各位が, 自らの見解 や事実 関 係 を脚色や 1寸度 な く語 るための必須の条件 になる, との筆者 らの考 え方 を反映 してい るO.事実,ほぼ全ての ヒア リング対象者が,筆者 らの意見聴取 に応 じる にあた り.氏名 を非公表 とす ることを求めた。 この ような,匿名 に よる ヒア リ ングか ら得た知見 には,上記 の メリッ トが期待 で きる反面,描写の客観性 や真 偽 を事後的 な検証 に伏す ことがで きないデメ リッ トがあ る点は,あ らか じめ指 摘 され るべ きこととい えよう。
なお, ここで改 め て確 認 す る まで もないが,以下 の
I
IIに述 べ る事 例研 究 の知見 やⅠVにお け る考 察 の 内容 は, ヒア リング調 査 に応 じた各位 の了承 す る ところで は な く, そ こにあ り得べ き誤 りは,全 て筆者 らの責任 に帰すべ き‑ 135(251)‑
ものであ る。
I l
】 都 に お け る温 暖 化 対 策 をめ ぐる政 策 過 程 ‑ 事 例 研 究 で 得 た 知 見 報 告本章では,事例研 究で得 た知見 を基 に,時系列 に沿 った3つの時期 区分 にお いて,都 における温暖化対策 をめ ぐる政策過程 を概観す る。
1 温暖化対策の政策的端緒 と野心的構想
(1
)
「環境確保条例」における 「地球温暖化対策計画書制度」の導入 2000年12月制定の 「都民 の健康 と安全 を確保す る環境 に関す る条例」(以下,「環境確保 条例」)1においては,都 が新 た に取 り組 むべ き政策課題 と して, 自 動車公害対策 とともに地球温暖化対策が位置づ け られ,都 の法体系上
CO
2排
出量 の抑制 に係 わる措置が は じめて条文化 された。都 は.同条例第2章 「環境 へ の負荷 の低減の取組」の下,当該条項 を設 けるにあた り,可能な限 り先駆 的 な仕組 み .枠組 を導入す る との観点か ら, 自動車利用,事業活動,施設建設 な どに伴 う環境負荷 の低減 を促す措置 と して,当該責任者 に対す る計画書 の作 成 と提 出の義務づ け をはかることと した2。一万,回 レベ ルの温暖化対策 に関 しては,「エ ネルギー使用の合 理化 に関す る法律 」 (以下
,
「省エ ネ法」)の下,エ ネルギーの有効利用 の観 点か らCO
2排 出削減 をはか る 目的で.工場 ・事業場 (事業活動),建築物,機械器具 の3つ に係 わる措置が既 に制度化 されていた。そ こで,都行政担 当部課 (環境保全局1 本 条例 は.
2000年
12月
22日の 「東京都 公害 防止条 例」
(1969年
7月制定) の 全面改 訂 に よ り成立 し, その後
.2001年
.03年
,04年.
05年
.06年 に改正 されている。
2
第
14回東京 都 環 境 審 議 会 議事 録
http://www2kankyo.metro.tokyo.Jp/klkaku/singlkai/14kai.htm (2007
年
9月
5日)参照0
‑ 136(252)‑
総務 部企画課 (当時), その後2000年4月 に環境保全 局 は環境 局 に改組 ) と し I
て も, これ を参考 に.事業活動 及 び建築物 のエ ネルギー消費抑制 に係 わ る措置 の導 入 をはか った3。具 体 的 には, 同条例 施行 規則 (2001年3月制 定) にお い て,事 業 活動 に関す る措 置 を 「地球温 暖化対策 計画書制度」(2002年4月施行), 建築 物 に関す る措 置 を 「建 築物環境 配慮制度」(2002年6月施行) と して, そ の詳細 が規定 され た。
当時 の 「省 エ ネ法
」
(1998年改正) は,年 間電 力使 用量 が1,200万kWh 以上 また は熱 ・燃料 使 用量 が3,000kl以上 (原油換 算 ) の 「第一種 エ ネ )i,ギ ー管 理 指定工場 」 に該 当す る工場 ・事業場 の うち,5業種 (製造業 .鉱業 ,電気供給 業 , 熱供給業 , ガス供給業) に属 す る もののみ に対 し,エ ネルギー使 用量 の定期報 告 ,エ ネルギ‑使用合理化 マ ニュアルの作 成,及 び,エ ネルギー使用 の合理化 に関す る中長期 計画 (3‑5年) の作 成 ・提 出 を義務 づ けていた。 また,取 り 組 みの内容 が著 し く不 十分 と判 断 された場合 には.国が合理化計 画 の作 成 を指 示 し,それ に従 わない事業者 には,公 表,命令 ,罰則 (罰金) の措 置 を講 じる こ とが で きる と した。 ただ し,事業者 の定 め る 目標 や具体 的内容 (管理 ,計測 ・ 記録 ,保守 ・点検 な ど)が個 々の 自主判 断 に委 ね られ,事業 者 に よる計 画書 の 公表義務 は課 されてい なか った。加 えて,「省エ ネ法」の下 で は,年 間電力使用量 が600
万
kWh以上 また は熱 ・ 燃 料 使 用 量 が1,500kl以上 (原坤換 算 ) の 「第二種 エ ネル ギ ー管理 指 定 工 場」に対 す る措 置 は,エ ネルギ‑使用状 況 な どの記録 義務 のみ とされ, エ ネルギー 使用合 理化が著 しく不 十分 と判 断 された際 も,国か らの勧 告 に止 まっていた。
これ に対 して,都 は. オ フ ィス ・ビル な どが 多 数 立 地 す る地域 特性 や . これ ら業 務 部 門か らのCO2排 出量 が運輸 部 門 に次 い で多 い現状 に鑑 み (以下 の表
ⅠⅠⅠ‑1を参 照 ), 当該 事 業 者へ の対 策 強化 をはか る と して,「地 球温 暖化 対 策計 画書 制度」 の下 ,エ ネ)t'ギ‑使用 にかか る計画 の作 成 ・提 出義務 の対象事業 者
3
同上
。」137(253)‑
の該 当基準 を 「 省エ ネ法」 のそれ よ りも厳 しい もの と した4 。具体 的 には,辛 間電力使用量が
600万
kWh以上 または熱 ・燃料使用量 が
1,500kl以上 ( 原油換 質) の事業所‑ つ ま り
,「 省エ ネ法」の 「第二種 エネルギー管理指定工場」 ‑
‑ を
,「 地球温暖化対 策計画書制度」 にお けるエ ネルギー使用量 の多 い大規模 事業所 として規定 し,当該事業者 に対 して 「地球温暖化対 策計画書」 の提 出を 義務づ けることと した。
表
ITI‑1東京都 における二酸化炭素排出量の伸 びと構成比 ( 単位
.干t)ビ ゴ ̲ 、 小 . 、 . . . ミ 琵 : 芸 ; j 去 等 . ; 1 : ㌢ ' / ‑ / < n = / i /
委棄■
闇 /@華麗薄幸. 婆
産 業 門
9,700 6,800 30%減少 業務部 門
16,000 19,000 ‑ 17%増加 家庭部 門
13,000 . .14.0009%増加 運輸部門
18.000 21,000 19%増加
その他
830 1,100 37%増加
出典 東京都環境審議会第
1回企画政策部会資料
2,1頁 を基 に作 成 。
同時 に
,「 地球温暖化対策計画書制度」では
,「 省エ ネ法」の ように,単 に事 業活動全般 に係 るエ ネルギー使用状況 を報告 させ るのみ な らず
,COZな ど温室 効果 ガスの排 出抑制のための今後
3年 間の措置 と目標 ( ただ し, 目標数値 は 自 主的 に設定),及 び,その結果の報告 も義務づ けた。 また
.「 省 エ ネ法」 には規 定の ない計画書や報告書 の公表義務 について も,計画書 については
3年 間,報 告書 については
90日間, 事業者 自らが公表 ( 閲覧やホームページ‑ の掲載 など) す ることと した。 さらに. これ らの義務 を事業者が履行 しない場合 には,都が 勧告 の上,事業者名 を公表す る措置 を導入 した。
なれ 本施策の実施 にあた り,都行政は,自らが実施 していた 「ばい煙調査J を基 に
.「地球温暖化対策計画書 制度」の導入 に よ り新 たに計画書提 出義務 を
・ 4東京都環境 局都市地球環境部職員‑ の ヒア リング
,2004年
3月 11日実施O
‑ 138(254)‑
負 う都 内事業者 を探索 していった. この調査 は,都■ 内のボイラーや乗物焼却炉 な どを有す る工場や事業場 を対象 に,施設の稼働状況,規制基準遵守状況,樵 料 ・原料 の使用状況,窒素酸化物 ・硫黄酸化物 ・ばい塵の排 出状況 な どを調査 す る ものであるが,都 は, ここで得 られた情報 を基 に,エ ネルギ‑使用量 の多 い事業者の特定 を進めた
。「ばい煙調査」の提 出 自体が任意であ ることや
,「ば い煙調査」の対 象事業所 以外 は探索す ることがで きない点 を踏 まえれば , 「 省 エ ネ法」上 の提 出義務 は ないが,条例 で新 た に義務 の対 象 とな る事 業者 の捕 捉 ・特定 には制約が あったが,都行政 は, ダイ レク トメール,広報誌, ホーム ペ ージな どの各種媒体 を通 じて , 「地球温暖化対策計画書制度」の内容 や開始 日の周知 ・徹底 をはか り,で きるだけ多 くの事業者が計画書 を提 出す る よう試 みた
5。「 環境確 保条例」で は,以上の ような事業者対策の他 に,建築物 に関す る措 置 と して 「 建築物環境計画書制度」 を規定 した。「省エ ネ法」の下 で は,政令 で定 めた規模
(2,000m2以上) に該 当す る住宅以外 の建築物 ( 特定建築物) の 建築主 に.所管官庁 の長 ( 経済産業大 臣 と国土交通大 臣)‑ の省エ ネルギー措 置の届出義務 を課 していた。 それ に対 して,都 は,建築物の多 くがマ ンシ ョン な どの住 宅で ある点 を踏 まえ,延床面積 が 1
0,000m2を超 える全 ての大規模 建 築物の新築 または増設時 に,建築主 に対 して,建築物 の環境配慮 の項 目を記述 した 「 建築物環境計画書」の提 出 を義務づ けること と した。 また,当該計画書 を都が公表 ・評価す る措置 によ り,制度の実効性 を担保す る仕組 み を設 けた。
(2)
「 地球温暖化阻止 !東京作戦」
2001年
1 0月の第7 回締 約 国会 議
(cOP7)で 京都 議 定書 の運 用細 目 (マ ラ ケ シュ合意)が決定 し,批准 に向けた 日本 国内の関心 も高 ま りつつ ある中で,
2002年1月,都 は新 た な環 境 基本 計画
(「東 京都 環境 基 本計 画
」)を策 定 し,
5
東京都環境局都市地球環境部環境配慮事業課 耽貝への ヒア リング
,2007年
7月
13日実施。
‑139(255)‑
その第
2章 「 都市 と地球の持続可能性 の確保」 において, ヒー トアイラ ン ド対 策及 び地球温暖化防止 を都 の重要 な施策 と して位置づ けた。 ここでは,具体 的 かつ実効性 ある温暖化対策が必要 である との認識か ら,普及啓発や都 の率先行 動 とい った啓蒙策 に傾斜 した 「 地球環境保全東京 アクシ ョンプラ ン
」(1998年
3月制定) を見直 し,都 の削減 目標量 に?いて
,「2010年度 まで に
1990年度対 比 で東京の温室効果 ガス を6%削減する」
6ことを明文化 した。 国が 6%の削減 目標 の達成 を第一約束期 間内
(2008‑12年の
5年 間)に行 うとしたのに対 して,
2010年度 を達成年度 とした点 において,都 の 目標 はよ り意欲的であ った。
そ して
,「東京都環境基本計画」 か ら間 もな くの
2002年
2月,石 原知事 は, 都 議会定例会の所信表明において,「 温暖化対策 は,地球規模 で実行段階 に入 っ ていなが ら.我が国は,効果の高い施策の導入 を先送 りし,極 めて立 ち遅れた 状況 にあ る。 国が 自らの役 割 を果た さない中,東京 には行動す る責任が あ る。
地球温暖化 を防 ぐ取組 み に も,早速.行動 を開始す る」7 と述べ
,「地球温暖化
阻止 !東京作戦」 ( 以下
,「 東京作戦
」)の開始 を宣言 した。
① デ ィーゼル車対策の ノウハウの活用
担 当職員の 「キ ャンペ ー ンや施策の展 開の仕方 についてはデ ィーゼル車
NO作 戟 を意識 した」
8との発言 に もあ る よ うに
,「東 京作 戦」 を遂行 す る際 には,
1999年 に同 じ環境保全局総務 部企画課 で考案 ・実施 された, デ ィーゼ ル車対 策で得 られたノウハ ウの活用が念頭 に置かれた。
「デ ィーゼル車
NO作戦」では,国の 「自動車
NOx法」 に よる対 策が不十分 だ と して
,「すす入 りペ ッ トボ トル」 を振 りか ざす知事 のパ フォーマ ンスが話 題 を呼 び,その様子 はマスメデ ィアによって大 き く報 じられた。また, 都行政 は, イ ンター ネ ッ ト討論会 「デ ィーゼル
,YESorNO」に寄せ られた 「デ ィーゼル
6「東 京 都 環 境 基 本 計
画」.http・J/www2kankyo.metro.tokyo.Jp/klkaku/klhon‑kelkaku/new‑masterpd〝042‑052.par(2007
年
9月17日)
6頁参照。
7
石 原 知 事 施 政 方 S
t http.//wwwmetro.tokyo.jp/GOVERNOR/HATSUGEN/SHOUSAI/ 30C2KIOOHTM (2007年
8月
15日)参照0
8 前掲注 4 参照。
‑140(256)‑
NO」の多 くの声 を糧 に,民間 と協力 しての粒子状物質 ( PM) ・除去装置 ( DPF) やサ ル, ファー ・プ リ‑ ( 硫黄分 を
10ppm以下 とした)軽油 の開発. さらには, 不正軽油排斥運動 などを精力的に展開 した。
同時に,中小企業が多い トラック業界の意向を代弁す る都議会議員の理解 を 得 る必要 もあ り,中小企業対策 を所管す る都産業労働局 と連携の上,デ ィーゼ ル車の買い替 え とDPFの装着な どを補助す るために
.「デ ィーゼル車対策の前 倒 し」 として 11億 円
(2002年度)
,「 都独 自のデ イ‑ゼル車対策」 として85億 円
(2003年度)
,「 実効性 あるデ ィーゼル車対策の実施」として
21億 円
(2004年度) をそれぞれ予算計上 し,被規制事業者 に対す る手厚 い支援策 を設けた
9。この ように して都 は
,「 環境確保条例」の下,PM排 出基準 を満 た さない 自 動車の走行 を禁止す るとい う厳格 な規制策の導入に至 ったが,この時の施策展 開は.環境省な どの対策 を促 し,結果的には国全体の規制強化 につながった と され,都庁 内において も高 く評価 される わの となったoそのため,都行政は, 温暖化対策の遂行において も,いわば 「デ ィーゼル・ モデル」の踏襲 を企図 し, まず は 「 東京作戦」 とい うア ドパル‑ ンを打 ち上げ,都民の関心 と支持 を喚起 す ることにより,事業者の反発 を抑 えて,国が導入で きずにいる施策の導入 を はかろうとしだ1 0 。
② 「 東京作戦」ステー ジ1
「 東京作戦」は,以下の表
ⅠⅠⅠ・2に示す ように
,3つの 目標
.5つの提案
,7つのアクシ ョンか ら構成 され,大要.世論喚起,省エネルギー,新エ ネルギー の
3つの対策推進が詣 われた。
9
東京 都
2002年 度最 終 補 正予算 案 の概 要
,http://www metro.tokyoJp/INET/KEIKAX
U/
2003/ 01/70dlhlOO.h上m (2007年
8月
15日).同
2003年 度重 点事 業 一 覧
,http.A//www chijihon.metro. tokyojp/juyoshisaku/pdLhonbuIJhonbun̲sankoushiryou.pdf(2007年
8月
15日) 及 び同
2004年
鼠 http://wwwchl]ihon.metrotokyojpnl16JutenJsmr̲dlhtm#ref5(2007年
8月
15日)参 照0
10 前 掲注
4参照 。
‑ 141(257)‑
表
I I I ⊥2
「地球温暖化 阻止 !東京作戦」、の 内容( 2 0 02
年2
月)・、⊃汚毒‡、;.㌔ 1∴活発な議論 を巻 き起こ し.我が国の地球温暖化対策の強化 を実 現する
2.先駆的な事業者やNGOとの連携 を進めて,実効性の ある施東 を .開始 し,■東京 を先進の省エネルギー型都市に変えてい く
3̲ 自然エネルギー.省エネルギー製品 .技術の開発普及で,環境
・産業の拡大 をめ ざす
1̲オ フィスなど大規模事業所へ.CO2排出削減義務 を導入 .
2̲「CO2削減証書」市場の創設で,風力発電や森林再生を促進
3.新築建築物に,太陽光発電など自然エネルギー利用 を義務付 け 4.1自動車の燃費基準 を強化,拡大
5.電力多消費型製品は,買わない.売 らない,作 らない.
上‑>I1:エ 1.イ ンターネ ッ ト討論会 「地球温暖化対策 :今.始めなけれ ば!」
̲の実施l■
皇:オ フライン討論会 「激論 ‑.地球温暖化をどうする !」の開催 3.「討論ベーパ‑」q)連続発行
4.「地球温暖化対策計画書」制度 .「建築物環境計画書」希り度の本 格実施
5.
「CO2削減証書」市場創設 プロジェク トの実施6
.省エネ,新エネ商品市場拡大キャンペ‑ ンの実施出典 .東京都報道発表資料 ( 2 0 0 2 年
2月掲載).h t t p/ /
vw me tr otok y o」 p /F NET /C H OU S A/
2 00 2 / 02 /6 0C 2し 2 0 0HT M ( 2 007 年 9 月 5 日参照) を基 に作成。
まず,世論喚起対 策 と して,都 は,温暖化 問題 を都 民 が よ り身近 な もの にす るための議論 の場 や素材 の提供 を 目的 とす る, イ ンター ネ ッ ト討論会 や オ フラ イ ン討論会 の実施 や討論 ペ ーパ ーの発行 に着手 す る\と した。 これ らの施 策 は,
7つ の ア ク シ ョンの 1か ら
3
に対 応 す る もので,2 002
年3
月 か ら9
月 にか け て実施 され た。省 エ ネル ギー に関 して は
,20 02
年4
月 と6
月 に施 行 を控 えて い た 「地球 温 暖化対 策計画書制度」 と 「建築物環境 計画書制度」 の本格 実施 に止 まるこ とな く, 5つ の提案 の 1及 び2と して,国 レベ ルで も取 り組 まれていない大規模 事 業所 へ のCO
2削減 義務 化 や,「 C
O 2削減証書 」市場 (排 出量取 引 市場 ) の創 設 に取 り組 む姿勢 を明 らか に した。また,新エ ネルギーに関 しては,化石燃料 に依存 しない都市 づ くりの観点 か ら,風 力 な どの再生 可 能エ ネルギー利用 を促 進 してい くと した。 ここでは,「お
‑142(258)‑
金 をかけず に,で きるだけ大 きなインパ ク トを得 られ る事業 を選ぶ
」一 一とい う 方針の下で事業及び事業実施者の選定が進め られ,民間 と連携 しての東京湾臨 界風力発電の建設や,国の補助金 を活用 しての水素供給 ステー シ ョンの建設, 燃料電池バスの走行が,2
002か ら03 年 度にかけて実施 された。
③ 「 東京作戦」ステー ジ2‑
‑‑‑‑.
‑⊥「 都市 と地球の温暖化阻止に関す る基本方針 」
「東京作戦 」の提案後,都行政 は,イ ンターネ ッ ト討論会や企業 との意見交 換の機会 を通 じ, 自らの専 門的知識 を獲得することで,政策の中身についての 議論 を漸次深めていった。た とえば, ■提案 1
(「オフィスな ど大規模事業所へ,
CO2排 出削減義務 を導入
」)について甘 「 東京作戦」の提案当初,義務化の具 体的な内容が検討 されていたわけではな く. 排 出削減の基準 を総量 ( 総量削減)
とす るのか,ある いは. 「 経団連環境 自主行動計画」(日本経済団体連合会 ( 以下, 日本経団連)によ り1
997年 に策定√200
0年以降 「 環境 自主行動計画」 に改称 . 以下 , 「自主行動計画」
)で採用 され てい るような生産量や床面積当た りの排 出量 ( 原単位削減) とす るの̲ かが,未定の状態 にあった。 また,排 出量取引市場 の創設 を企図 した提案
2について も,当初,その具体的な手法や導入スケジュー ルは未定であ り , 「京都議定書」の連用ルールに記載があ ることか ら,効果が 期待で きるとされ.作戦 に盛 り込まれた程度であった
12。しか し,その後,郡行政 は,200
2年
3月末か ら8 月にかけて,監査法人や 金融機関などと行 った取引市場 に関す る意見交換 を経 ることによ り,以下の よ うに理解 を深めていった。
まず,現状では.都 内に排 出権の売 り手は多数いて も買い手はお らず,単 に 市場 を創 設 しただけでは取引 は成立 しない。 そ こで,個 々の企業 にC
0 2の排 出枠 ( 排 出量の上限) を設定 し,削減義務 を課す ことで. これを満 た さない企 業が排 出権の買い手 とな り,ようや く市場の需給バ ランスが とれる。そのため, 採用すべ き政策 として , 「 総量削減義務化」 と 「 排 出量取引制度」 との抱 き合
11 東京都環境 局郡市地球環境部職貞1、の ヒア リング
,2006年
4月
26日実施0
12
東京都環境局都 市地球環境部耽貝へ の ヒア リング
.▲200
4年
5月17日実施。
一 143(259)‑
わせ による 「キャップ ・アン ド ・トレー ド」の導入が必要 となる。1 3
なお,これ と並行 して,都が直面す る実際の問題 として も,義務化 な どの規 制策 を導入す る必要性が高 まっていた。 この時.既 に都 は
,「地球温暖化対策 計画書制度」の運用 を開始 してお り
,2002年
8月に公表 された初年度の速報 値 によると.計画書 の対象 となる事業所 における今後
3年間の
CO2排 出削減率 は,約
2%の低 い レベルに止 まることが判明 していた。すなわち,今後,事業 者の 自主的な取 り組みだけでは
,「 東京都環境基本計画」で掲 げた
「2010年度 6%削減」の達成は困難であ り, 都行政 としては,より厳格 な措置 としての 「 総 量削減義務化」策が必要だ と. の理解 を深めていった】 4 0
2002
年 11月,都 は 「 東京作戟」の基本方針 である 「 都市 と地球の温暖化 阻 止 に関す る基本方針」 を策定 した。 ここでは,都 の地域特性 に応 じた独 自の温 暖化対策の推進 に向けて.「オフィスな どの大規模事業所 に
CO2排 出量削減 を 義務化」など
6つの挑戦 を掲 げた ( 以下の表
ⅠⅠⅠ‑3を参照)。
13
同上 0
14
東 京 都 報 道 発 表 資料
(2002年
9月掲 載 )
,http://www.metrotokyoJp/INET/CHOUSA/
2002/09/60C94300.HTM (2007
年
7月
22日)参照。
‑ 144(260)‑
表111‑3都市 と地球の温暖化阻止 に関す る基本方針 (2002年11月)
++
鷲
jp弐<s 1.2つの温暖化の進行を阻止するため,環境配慮が内在化された新 たな社会システムを構築する2.
都は,国の施策にのみ頼 ることな く,東京の地域特性に応 じた 独 自の温暖化対策を推進する3.温暖化対策の推進により.東京の経済の活性化を図る 1.オフィスなどの大規模事業所にCO2排出量削減を義務化 2̲新築建築物に対 し.より高い省エネルギー性能の達成を義務化 3.消費者に省エネルギ‑情報が確実に伝わるしくみづ くりを推進 4̲自動車に起因するCO2排出量削減対策を強化
5.再生可能エネルギーへの利用転換を促進
6
,まちづ くりと‑体 となった ヒー トアイラン ド対策を推進 タiご′ ;1.実効性ある温暖化対策のあ り方について東京都環境審議会で検討開始≦2.全庁をあげた七一 トアイラン ド対策に関する取組方針の策定
…3‑温暖化阻止に向けた都庁の率先行動の強化
4.持続可能な社会システムづ くりに向けた.臨海部での新たな普 及啓発活動の展開 .
出典 東京都環境局 「 都市 と地球の温暖化阻止 に関す る基本方針
」ト1
9頁 を基に作 成。
翌12月 には,挑 戦1か ら3について,2004年度 中の条例改正 に よる対 策強 化 を視野 に,東京都環境審議会 (会長 ・横 山栄二氏 ・国立公衆衛生院顧問) に
「実効性 ある温暖化対策 について」諮問が行 われた。 同審議会 は これ を企画政 策部会に付 託 し.今 後1年 間かけて議論す ることと した。都 はまた,環境局の 組織改編 に も着手 し, これ までの環境評価部 を発展 的に解消 し,地球温暖化対 莱, ヒー トアイラ ン ド対策,環境 影響 評価 な どを所 管す る組織 と して,2003
年4月 1日付 で都市地球環境部 を新設 した。
④ 「総量削減義務化」案
「都市 と地球の温暖化 阻止 に関す る基本方針」で示 された6つの挑戦の中で, 特 に注 目を集めたのが
,
「オフィスな どの大規模事業所 のCO2排 出量 削減 を義 務化」す る案 であ った。 この方針が公表 された直後 には,
「東京都 は,都 内 に あ る約 1千箇所 の大規模事業所 に対 し,地球温暖化 の原 因 となってい る二酸化‑145(261)‑
炭素の排 出削減 を条例 で義務付 ける方針 を固めた」 1 5との報 道が な されてい る。
「オ フィス な どの大規模事業扉 の
CO2排包 量 削減 を義務i EJ についての具体 的検討 は. 2 0 0 3年 5月諸β 環境審議会 ・ 第 3回企画政策部会で始 まった。この時, 事務局である都行政 ( 環境局都 市地球環境部計画調整琴) は,オ フィスな ど大 規模事業所が多数集 中す る地域特性 を跨 まえ,都が独 自に大規模事業所 に 「 実 効性 ある対策」 を取 る ことには合理性があ り,かつ,都 がその一歩 を踏み出す
ことに よ り,国や他の 自治体 の動 向 をも牽引で きると した。
同部会 において
,「 実効性 ある対策」 に関 して事務局が示 した要点 は,a)一 定量 以上 の
C0 2を排 出す る大規模事業所 は,都が定 め る基準 に従 い,CO
2排 出 量 の削減 に取 り組 む,b)当該制度 甲実効性 を確保す るため に 「立 ち入 り検査 の実施」や 「 罰則」 ( 課徴 金) な どの規制的な手法 を設 ける‑C
)自己努力 に よ る削減が困難 な場合 の代替措置,あるいは,基準以上 を達成す る削減 インセ ン テ ィブ として.削減量 を事業者間で取 り引 きで きる 「 排 出権取引」 を取 り入れ る, の
3点 であ った1 6 。 この 中で特 に重 要 と考 え られた
a)の削減 目標 の設定 につ いては
,「原則 的 には何年度比何 %削減 とい う,総量 の削減の考 え方 を導 入」1 7 す る と した。 また,都行政 は,対策の実効性 を高 め るため に,計画書 や 報告書 を都 のホームページ上で公表す ることで,対象事業者の取 り組 み を都 民 が チ ェ ックす る仕組 み を導入 し,事業者 に よる取 り組 みが不十分 な場合 には, 何 らかの制裁措置 を講 じること目指す と した1 8 。
以上の ような事務局の意向 を受 けた企画政策部会 であ るが,座長 には,地方 分権や財政改革 を推進す る立場 の神野直彦氏 ( 東京大学大学院教授)が就任 し, 委員 には,中央環境審議会委員で国 とのパ イプを持づ小早川光郎氏 ( 同大学数
15
「 読売新 聞
J2002年
11月1
3日参照。
16
第
3回企画政策部会 資料 「 都市 と地球 の温暖化対策制度化 スキーム ( 秦)
」,http://www2 kankyo.metrotokyo.Jp/klkaku/slnglkai/klkakuJO30526bukaiJ3.pdf(2007年
9月5 日)参照.
17
第
3回企画政策部会議事録
,http〟www2kankyometrotokyo.jp/klkakuノslnglka〟kikakuノ 030526bukaiノ030526pdf(2007年
9月5日)
22頁参照。
18
同上。
‑146(262)‑
揺 ) に加 え, 国立環境研究所所属 の森 田恒幸氏や松 本泰子氏
,NPO法 人環境 エ ネルギ‑政策研究所 ( 以下
,ISEP)所長の飯 田哲也氏 といった新エ ネルギー ・ 省 エ ネルギーの専 門家が選任 され た1 ㌔ 都 は, こ う した委員の後 ろ盾 を得 るこ
とに よ り, 自らの政策案の実現 をはか ろうとした2 0 。
2
野心的構想の断念 と将来に向けた施策・
(1
) イ 総量削減義務化」‑の反発
しか しなが ら,企画政策部会 において,産業界 を代表す る2 名の委員 ( 西堤 徹氏 ・トヨタ自動車環境部企画 グル‑プ担 当郡長.及 び,初鹿将之氏 ・東京電 力環境部長) は,「 総量削減義務化」や 「 罰則規定」 に反対 の意向 を示 し
.「(「自 主行動計画」は)産業界 と政府̲ とで
1年,あ るいはそれ以上十二分 に議論 を し て制度が作 られた。ですか ら,義務化 とか規制 あ りきとい うような,方向性 を 先 に決めて議論す る とい うの は, ち ょっ とどうか な とい う感 じがす る」 ( 初鹿 委員)2 ‑( 括弧内は筆者 らに よる補足.以下同様) との意見 を述べ,これ までの ように,個 々の企業 の 自主的な取 り組みに よ り,エ ネルギー原単位 の削減 を進 めてい きたい とした2 2 0
ただ し. これ ら委員 は,事務局案 を完全 に拒否 したわけではな く
,「 総量削 減義務化」 には反対す る一方,議論 の比較的当初 よ り
,「地球温暖化対策計画 書制度」の強化が もはや避 け られないのであれば,個 々の企業 に対す る都 の立
ち入 り検査や継続 的なチ ェ ックについては容認す る との意向 を示 した2 3 。 こうした産業界側の意向は,部会 とは別に非公式で開かれた 「 温暖化対策 に
19
企 画 政 策 部 会 委 員 名 言
乳 http.//www2kankyometrotokyojprklkaku/singlkaiAikakuJ
O30127bukaiノsankoul.pdf(200
7年
9月
5日)参照。
20
前掲
注4参照。
21
前掲 注
17,16頁参照。
22 第5
回企画 政策部会議事録
,http://www2.kankyometro.tokyo.Jp/k止aku/slnglkaiノbkakuJ
O30728bukai/030728.pdf(2007年7月
23日)
24頁参照。
23
前掲注
12参照0
‑147(263)‑
係 る経 済界 との意見交換
」(9月
12日開催)の場 において も展 開 された模様 で あ る。当 日の議事録 は非公開であ るが,後 日.事務局が企 画政策部会 で行 なっ た概 要説 明に よれば,出席 した不動産関係 の事業者 か らは
,「 個 別性 が非常 に あ るので,一律 の義務 目標 とい うのは困難 で はないか
」2 4との指摘が あ った一 方で,事業者個 々のエ ネルギ‑消費デー タの分析 ・公開が必要 との都行政の意 見 に対 しては
,「 都 の調査 に協力 させて もらうことはやぶ さかではない し,公 開について も都 にや って もらいたい
」ま うとの意見が 出 された ことがわか る。
この ように,産業界 の主張 は,あ くまで,企業が個別 ・自主的にCO Zを削減 す る 「自主規制」 に基づ く対策の実施 にあ り,審議会の場 において も,事務局 の 「 総量削減義務化」案 と企業の 「自主規制」案 とが相対立 した。 しか し,企 画政策部会 では,「 総量削減義務化」を支持す る委員が数の上では圧倒的 に多 く,
また
,「 東京都が打 ち出す
CO2排 出規制の衝撃度」Z b な どと して,マスメデ ィア か らの注 目も高 ま りつつあ り,当初,事務局が思 い描 いた通 りの後 ろ盾が得 ら れ るか と思 われた
27。に もかかわ らず,2 00 3年 11月に約 4ケ月ぶ りに開かれた部会 において,辛 務局 は,当初の方針 を大 き く転換 し,企業の 自主性 を尊重 した現行枠組 み を当 面維持す る と した答 申案2 8を示 した。その中では, これ までの 「地球温暖化対 策計画書制度」 を 「 現在 よ りも実効性 のあ る制度 と してい く」 と語調が弱め ら れ
,「削減義務化」や 「 罰則」 といった表現 に代 え
,「 事業者が計画策定段 階で
よ り高い削減 目標 の設定 を図 るよう透豊土
星」
,「中間年では,実施状況 を把握 し.削減 目標 が着実 に実施 され るよう指導す る」.「 事業者 は.対策指針等 に基
24 第6回企画政策部会議事録
,http://www2kankyo,metro.tokyojp/kikaku/slnglkai瓜lkaku/031120bukaiノ031120pdf(2007年8
月
15日)
3頁参照。
25
同上
. 4頁参照。
26 rエ ネ ル,ギ ー フ ォー ラム」2003
年
8月号
,32‑33貫参照0
27前掲注
4参照。
28 第6
回企画政策部会資料 「 新 たな温暖化対策の方向性 と制度設計の基本 ス タンスにつ いて (莱 )
」,http//www2.kankyometro.tokyojp瓜ikaku/slngikainiikaku/031120bukai/031120̲1li pdf(2007年
8月
15日)参照。
1148(264)‑
づ き,実態 に応 じた 自主的な削減 目標,削減対策計画書 を作成す る」
.「 都 は, 優 れた取組 を実施 した事業者 を表彰す
る」 ( 下線 は筆者 らに よる) な どの,狗 束力のない緩やかな方策が提示 された2 9 。
こう した方針転換 について,都行政 は , 「例 えば3 0%削減能力があ るの に, 5%などの一定の削減 目標 をかけて しまうと,本来 もっと削減で きる事業者で あって も低い レベルに収赦する恐れがある。そこで,あえて個別の事業者の現 在の レベルに着 目して.削減可能 な レベルに まで削減量 を引 き上 げてい く」1 0
との政策的な合理性があ る旨を強調 した。 しか し,産業界以外 の委員か らは, 事務局の方針転換 に対 して,た とえば,以下の ようなネガテ ィブな評価が寄せ
られた。
「 何か トー ンダウンした感 じだ。 この委員会 は, 自主 的取組 の限界 を克服す るとい うのがス ター トラインだったはず」 ( 松本委員)
,「自主的規制 だけで本 当に東京の環境が守 られ るか疑問であ る」 ( 石福委員) , 「 最初 は 自主的な もの で もいいのか と思 っていたが,デ ィーゼル車対策 を見て,やは りアメとムチ.
ムチ ( 規制) もある程度は必要 だ と感 じた」 ( 伊藤委員) , 「 削減義務化 も含め た上での制度設計 とい う意見が何度 もあった。 どういった理 由で義務化ではな く誘導 とい う制度設計になったのか説明すべ き」( 松本委貞)
,「 書 き方 としては, 両論併記 な りいろいろなや り方があると思 う」 ( 神野部会長)ラ ) 。
結局,こうした委員の意見は事務局案に反映 されることはな く ,2 0 0 4年 5乱 都行政の意向に沿 った内容 の答 申
(「 東京都 における実効性 ある温暖化対策 に ついて」
)が知事 に示 され,審議会は閉会 した。ただ,都行政 として も,実効性 を担保す る手段や,規制色 を強めた制度設計 の可能性 を全て放棄 したわけではなかった。た とえば,郡があ らか じめ複数の
29同上。
30
第
7回環 境 審議 会企画 政策 部会 議事録
,http://www2kankyo.metro.tDkyo.]pndka k
u/singikn i/ klkaku/031224bukal/031224.par(2007年
8月25日)
24頁参照。
31
前 掲 注
24及 び30参照。 また, 東 京 都 環 境 審 議 会 企 画 政 策 部 会 委 員 へ の ヒア リ ン グ
,2004年
5月
14日実施。
‑ 149(265)‑