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序文 : 農・食・環境からみた現代アメリカの行方

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序文 : 農・食・環境からみた現代アメリカの行方

著者 二村 太郎

雑誌名 同志社アメリカ研究

号 51

ページ 45‑46

発行年 2015‑03‑17

権利 同志社大学アメリカ研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014001

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45 農・食・環境からみた現代アメリカの行方

特集 第 6 部門研究成果報告

序文―農・食・環境からみた現代アメリカの行方

代表: 二 村 太 郎

趣旨説明

第 6 部門は 2012 年度から発足した新しい部門である。本部門では、アメリカ 合衆国の諸地域を支える農業、食、環境をめぐる様々な問題に着目し、議論を重 ねてきた。ディシプリンとしてのアメリカ研究では合衆国の農業や環境に着目し た研究の蓄積が少なく、同時に地理学や社会学や経済学などの関連分野でアメリ カに焦点を当てた研究も限られている。そのため、本部門は同志社大学内外の諸 組織に所属する様々な分野の研究者が集まって当該テーマに関連した研究につい て議論する、いわばプラットフォームとして機能してきた。

本特集で掲載する 3 論文は、第 6 部門研究に属するメンバーがそれぞれ進めて きた研究の成果である。農と食の地理学を専門とする二村太郎の論文は、アメリ カ合衆国においてローカルフード運動や都市空間への農業導入の機運が高まるな か、基幹産業の衰退により大量の空白地が発生したミシガン州デトロイトにみら れる都市農業の実践について明らかにしたものである。都市農業は空間的制約や 地域の社会経済的状況と関係して拡張が難しいものの、デトロイトでは非営利組 織を中心として各地で農産物が育てられるようになり、それが地域のファーマー ズマーケットなどで入手できるようになってきた。しかし、「デトロイト産」な る農産物・食品が増える一方で、それが今後拡大していくためには労働力の確保 が大きな課題となることを指摘している。ローカルな農業生産・消費が賛美され る言説がアメリカ社会で主流な昨今、それを維持する上で現実的な問題を直視し ていく必要があるともいえよう。

環境運動論・社会地理学を専門とする香川雄一の論文は、都市の社会経済的変 化とともに工業都市の環境問題がどのように展開していったかを検討している。

アメリカ合衆国では過去 150 年に渡り各地で環境運動が繰り広げられ、自然環境 への開発問題を中心とした環境運動の歴史については先行研究によって明らかに されてきた。しかしながら、大都市周辺部における住宅地開発や大都市の工業化 による環境汚染、さらには農業開発による生態系の破壊や都市住民による平和運

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46 同志社アメリカ研究 第51号

動など、環境問題や環境運動の広がりの中で、それらの地域的特徴に基づいた展 開過程の分析は、まだ取り組みが不十分である。香川論文はアメリカ合衆国の五 地域に焦点を当てて、工業都市で発生した環境汚染の問題が都市の居住分化や産 業構造の変遷とともにどのように環境運動を発生させていったかを明らかにして いる。

環境経済学・生態系サービス論を専門とする中山琢夫の論文は、アメリカ合衆 国を中心に実施されている水質取引制度を中心として、地域で導入された生態系 サービスの市場化について検討している。アメリカ合衆国やヨーロッパで導入さ れつつある水質取引は、二酸化炭素排出取引と同様に、汚染の限界削減費用が高 い排出主体が自ら排出削減に取り組む代わりに、限界削減費用の低い主体からク レジットを購入し、これによって限界削減費用の高い事業主体がその排出量をオ フセットしようとするものである。ここでは市場原理を利用して、限界削減費用 の異なる汚染主体間で取引を行うことによって、社会全体の削減費用を最小化し ながら、排出削減を実現することが可能となる。市場化された生態系サービスの 実態についてはまだあまり知られておらず、中山が詳述するアメリカ合衆国の事 例は自然環境を維持・管理するために導入された諸策の長期的な可能性と課題を 提示している。

本特集のうち、二村と香川の論文は各々が採択された科研費の研究課題に関し て実施した現地調査を基としたものであり、中山の論文は研究会において発表さ れた内容(2015 年 3 月 12 日の研究会で報告)を基にしている。部門研究のテー マの窓口が広いゆえに、本部門の参加者も専門領域や関心が多岐に渡っているが、

日本のアメリカ研究ではこのような分野に関する研究蓄積が少なく、本特集がそ の一端を担えるようであれば存外の喜びである。

参照

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