翻刻『曽根崎模様』(下)
著者 翻刻の会
雑誌名 同志社国文学
号 43
ページ 59‑95
発行年 1996‑01
権利 同志社大学国文学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000005143
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 翻刻の会
やなぎ ぱ ︑・ たのみ もの 五冊 柳の馬場の段結納に入ル物︵三十七オ︶
ハル ウ上 ウキン のき なら 二ふくみせ げんぎんあきな かけす︑・りとらいし 中 がは ウ とうしやうへ別れ行︒柳の馬場を︒押小路軒を並べし呉服店︒現銀商ひ掛硯虎石町の西側に︒主ジは帯屋長右衛門町人ながら堂上
中ウ ウ フシハル ハル いづ・ のうれん ハル ね きぬ中 ら きりやう あいへ︒出入の門の目印シは井筒に帯の暖簾を︒かけ直内義はお絹とて︒麦等名代の器量よし人愛もよく見へにけり︒
中 ウ地中 には だ に こしらヘハル いくこほり でつち いそがしくとくい ウ となり ハル主ジは留主の庭先キに駄荷の祷送り状︒馬で大津へ幾固︒手代丁稚も開敷得意廻りに出る跡へ同じ隣の信濃屋から︒丁
はこ だい ウ ゥ フシ 地ハル やか 色むか 詞稚が運ぶ台の物︒巻キ樽持タせて後家のお石いそくとして入来れば︒お絹は頓て出迎ひ︒お石様一コリヤマアどふでごさん
たのみすへ︒さいな聞イて下さんせ︒おまへのお里油の小路から私シが娘お半ンヘ参った結納の印シでござんする︒サァ夫レ︵三十
七ウ︶は私も知ツてゐる︒なぜに納メて下さんせぬへ︒イ・ヱイナア︒戻しまするではござんせぬ︒コリヤ松よ置イていねと
もら追返し︒お絹様ンマア聞て下さんせ︒お前へ持タして来た心はナ︒預ヵつて貰ひましたさ︒知ツての通り運合治兵衛殿は去年
いはくら たき やうじやうンの秋過キられます︒兄次郎吉は岩倉の滝へ養性にやりまして︒内に居る妹のお半ン︒おまへの弟御才太郎様ンの嫁にくれ
さいはひ どくいとおつしやる︒幸の事じやとお半に段ン々申ても︒っんともふ合点ンが悪ルふて母の私が気の毒さ︒長右衛門様はお留主
もら け さ成リあなたが内にござんしよは︒合点のいく様にいふて貰ふと存じて待チ兼ておりまする︒サイナ︒夕べの夜舟なら今朝で
有ラふと待チましたれど︒今にまだ帰られませぬはいな︒成ル程︵三十八オ︶お石様ンのおっしやる通り︒こちの人長右衛門
ぬし様がいはんす事はよふ聞入レてござんする︒主が帰られたら私も倶ガ合点のいく様に申ましよ︒サィナ此様に印シの数々
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 五九
翻刻 ︐曽根崎模様﹄︵下︶ 六〇
もマアく磁︒へ預ヶてくれ・夕べから知し寧が悪ゾいと敏て計リおりまするハテ其様に気合に徹ふ事なら︒どふなとせふと気
の識ながら預ツけに参った私が心・娘に辞いお石じやとか雌ず熟ふて下さんすなへ︒ヲ・お石様ンのわっけもない︒おまへな
むす ぐう せわり私シなり︒アノ子さへ得心ンなりや︒一ツ家の結びじやないかいなア︒アノ子も去年ンの参ン宮の時︒長右衛門様のお世話
ことに成ツたと本一にく︒くどい程私に礼いふて二一ざんする︒殊におまへのお違レ合お過キなさった治兵衛様と兄弟よ念ン
と一 そは かた比に有ツた故︒一三十八ウ一こちの人を死しやった爺様の替りじやと思ふて居ると︒モ夫レはく私が傍基言ず︒肩をも︑の やうく足さすろのと︒した・るい程いとしぼがって・ござんする︒ホ・ ⁝︒サイナ私よりませた事いふかと思へば︒ 漸今年
シ十四のお半ン︒油の小路へいきやってもおまへのいかい世話で有ラらふと存ジます︒ヲ・何ンのいな︒才太郎も此春十九で
藤させたりや驚な碧中ヵ・内は蟻献つ赫なれど人に知ラれた緑様・幸イの事じや叢−急いだ難の印シ預カつて置キ
ひま 地ハルませふ︒アイそんなら置て帰りましよ︒いかひお隙を取リました恭ふござんする︒ヲ・お茶さへろくに上り口︒腰かけ咄し
ど し フシ女ゴ同士お石は内へ立帰る︒
お絹はそこら片付て︒待ツ問も昼に︒なる鐘の︒時キつく胸を押シ包ミ︒大坂戻り︵三十九オ︶の長右衛門合羽の裾も大4 詞 ・レ ウ 色 寸 さも︒剖五助連レて内に入︒お絹は待チ兼是はく︒今朝とふ戻らしやんしよかと待受ヶておりました︒与五助も太義じやマア 地色ウ 色 ちやはん たぱこぼんぬい フシ 詞 に ゑんしうく休みやと勝ツ手へ立︒茶碗片手に煙草盆脱た合羽を袖ぐみ︒アノ申シ大坂よりの荷物も届キ︒遠州への荷物も今朝大津 地ハル とは 色 詞迄出しました︒今出川への御状もさいく夫レよ︒幸右衛門様も一ツ所にお帰りなされたかと︒問れてハツト長右衛門︒ア︑
くろういやく幸右殿はまだ跡に︒大方今夜の夜舟で有ラふ︒其幸右衛門に付ヶいかい苦労をしたはいの︒ヲ〜ふでござんせふ︒
めでたい 二・マアちっとお体︑︑なされたら︒何やかやお咄し申事も有リ︒目出度事もござんする︒したがモウお昼時お吉は何をしていや
地色ハル ニしらへ 中 フシる︒ドレ栴て上ヶましよとお︵三十九ウ︶絹は勝ツ手に入ル跡へ︒
ウ ハル 中地色ウ ゥ ゥ はかま 二し き さつしよう ウ ぱく ハル片岡幸右衛門が父同苗幸之進︒年シは六十に余りても袴の腰ものしめの着なし︒今出川家の雑掌連鰭有仁体一チ僕連レ︒帯 色屋か門を差窺ひ︒長右衛門戻ツてお居やるかと︒ずっと通れば悔りし︒ホウ是は幸之進様ハテお前は先ツ御息才てとあしら
あるき しよじやうへば︒ヲ・サく︒年罷リ寄ツたれ共また此様に五調故︒主人の用事に歩行申一︒扱何から申そふ︒此間は大坂よりの書状
たうらい とかくていねい かんとう たつて わひこと ゆる度々到来致した︒兎角丁寧な貴殿ンに引替族者の幸右衛門︒目に余って勘当した︒お身か達而の佳言故貴殿にめんじ︒赦す
と其儘御婚礼の御用筋︒大坂におる内も晦一々世話て有リつらふ︒貴殿ンが下タつておくりやつたで此幸之進大︵四十オ︶舟に
乗ツた様に思つていたてや︒ナニ長右衛門︒貴殿は夫レ蹴し箪のすぐれぬは気分ンでも悪いか︒イヤ何内室は更にか早く薬リ
さうたいさん いたみ ひへでも︒ヤア幸イ亀屋が霜台散が麦に有おませふか︒アいやくさしてどこも痛は致しませぬが︒どふでもコリヤ夜船で冷
が入リました物てかな︒ム・そふ有ラふトレく薬おまそふ︒イヱく私も用意がござりまする︒ハテ遠慮のない事︒ひら
色 ハル のみ さし 地色ウ なんしう フシに呑やれと差出せど︒差うっむいて長右衛門難波小橋の難渋を︒夫と言ねは顔に出︒胸せくるしき思ひなり︒
ヲ・夫レなれば咄しは出来ぬ︒一ト先帰つて後にこふ︒ゆるりと休で養生めさ︒お絹殿へも心へてと︒訳ヶを白髪の幸之
色 フシ進家来を︒連て立︵四十ウ︶帰る︒
地色ウ 中 ウ ゆうはん ハル ウ 色 詞門ト送りして長右衛門見馴レぬ白ラ台巻キ樽は︒ハテ心へぬと夕飯やら︒昼には遅き膳ン廻りお絹が手づから持ツて出︒幸之進
フシ様のお声がした︒モウお帰りなされたか︒ヲ・たつた今夫一そこ一︒是はしたりマアくおま一もひもじにあろサァお上り
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 六一
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 六二
と押シ直す︒
ア・イヤく︒大仏一屋で支度したりやまだ急に欲ふもない︒そふしておきやく︒アノ樽や白ラ台はどこからきたと尋れ
み・ば︒サイナ︒何やかやめでたい事が有ルといふたはナアノ事でござんする︒ム・めでたいとは先耳寄リ様子が聞たい︒サァ
たのみ なかうど しありや結納の印でござんすはいの︒ムンこちの内へ結納のくる覚ヱはないが︒留主の内媒でも仕やったか︒アイさればで
ござんす外ヵでもない油の小路の親父様から︵四十一オ︶夕べ持タしておこしてござんした︒ハテナ︒そんなら何かそなた
しうと となりの弟の才太郎に呼でやるのか︒アイ︒フウそりやマア舅太夫も嬉しかろ︒そして先はどこの娘じやや︒アイ隣の信濃やの
たのみお半女郎でござんすはいな︒ム・何といやる︒アノお半へやる結納じや︒アノお半へ︒ホ・ ⁝︒お前にいふたら悦んて
あ下さんしよと戻らしやんすを待チ兼て居たはいな︒ムンいやもふ悦ぶ段ンではない︒余ンりでけふもあすも︒イヤ何けふも明
す よい日も日が能げな︒そしてお半もいく気で有ふ︒サイナいく気ならよいけれど︒嫁入リはいやじやといぢばって寝て計リいや
もし たのみしやるげな︒ア若又何ぞ外ヵに様子でも有ツての事かと︒案ンじてお前を頼まし得心ンのいく様に言ツてほしいと母様の気
一四士ウ一もせ︒成程主が帰られたら私シも倶に申そふと待兼たは右の訳︒常々お前の言んす事はおうくに聞てじや故︒
こと とくしん だんかう言を訳ヶておつしやつたら得心もいき合点もし︒談合が出来りや両方よし︒ナアそふじやないかへ︒ム・成程そりやもふい
ずいやる通り︒得ク心さへすりや互の重畳︒ハテ常々おれが可愛がって置ツたお半じや物︒随分ンとす・めて嫁入リをする様︒又
せつかく へんがへ得心のいく様に言ふはいの︒ハテ其様に折角印シ迄来た物を変改も成ルまいし︒知耳といふはそなたの弟︒嫁といふも念ン比中︒
ふんべつ 地色ウ しあん と フシいきつくコリヤとっくりと分別がと︒両手を胸に思案の吐胸︒吐息突より外ぞなき︒
地色ウ さすがハル じや・つ 詞 わきまお絹は遺女の︵四十ニオ︶情︒ハテ何ンのいな︒お前もかたい心から跡先を弁へて思案ンなさる・は尤なれど︒弥いやに
きよま 色 地色ウ えんりよ 詞楓ったら印シを戻す分一の事︒他人ではなし私が里︒夫レに遠慮は︒イヤくく︒一ツ家には猶義理が有︒舅殿も人に知ラ
たしゆつ ゆる なみ とつれたかうかっ人ン︒おれじやて・まんざらの町人ンでない此刀︒他出の時は大小を赦され侍イ並︒サイナ︒それもよう爺様
らち たか はな 色 地色ウ わしが知ていさんす︒石に根っぎをする様にいふて居ては票明ヵ害貫ンの鷹も放さにや知一ぬといふじやないか︒マアく私 ウ ウ ウ ウ くたびれ ウ す・ ウ ハルウ ウは隣へいてお半女郎をおこそふ程に︒大坂戻りの草臥ながら得心ンのいく様に︒進めて見て下さんせと︒心も口も尻がる
ヲクりクル ユリ フシにいそくへ隣一出て行︒ スヱテ 中地ウ ハル 一ウ ち ︑・ くだく うきくらう 地中 しゆび ウ ハルウ跡見一四十ニウ︶送クつて長右衛門我ヵ宿ながら我心︒千々に砕る憂苦労︒大坂表テの首尾の上お半が事も思案ンの外ヵ︒ふ
なれそめ 中 詞 おもて 地色ウと馴初た縁ンにより︒嫁入リをいやといふ心もム・此おれ故︒女房が思はくお石殿の手前︒モウ何と面が合ハされう︒二に
ハル 一ウ 色 ウ あく 二ろ中 万 しよせんあす ウ ハル ひとりは又大恩一有一幸之進殿︒悪人ながらも子を殺され︒此儘で置ヵれふか所詮明日迄待タれぬ我ヵ命︒ム・そふじやくと独
ハルフシ 長地 ウニと ウ のど 中 せき フシ きはハル 地中 ハル すみすりなが ウ ウ かく言︒膳ンに向ヵへど中々に︒喉へ通さぬ︒胸の関︒思ひ極めて立上り︒店セに有リ合ふ硯リ箱︒墨摺流し筆取ツて人目に何を書
ウ とがめ つみとが 中ノル ハル ウキン ハル フシとだに︒ゑやは答じ罪科の次第を︒紙にうく涙︒同じ思ひを︒信濃屋の︒
地中 ハル 一ウ ウ かく 色 ハル フシ ハルお︵四十三オ︶半ンは夫レと聞よりも︒内のつらさを振リ袖に顔を隠して走リ入︒長右衛門様︒と計リにて︒詞は涙にこもら
地ハル 色 詞 あは そくさい 地色ウ あいさつ ハルウ 色せり︒ちやっと快トヘくるく巻キヲ・お半か︒此程は逢なんだ︒息災で有一たのと︒表向キなる挨拶にお半はとかふいら一
詞 地ハル すが ひやうし 色 詞なく︒ヱ・どんなわしや悲しい︒わしや悲しいと︒挟トに維る其拍子︒ばらりとひろがる書キ置見て︒アリヤ何でござんす 地ウ ハルおさむ色 詞へ︒イヤそなたが見て入ラぬ物じやと︒巻キ納ればコレ申︒お前は何で死しやんす︒おれが死ヌとは︒ソレ其書イた物︒死
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄一下一 六三
翻刻 ﹃曽根崎莫兼−︵下︶ 六四
し 地ハル フシ のれんといふ其死の字はと︒いふ口押サヘてア・声が高いしづかにと︒見やる暖簾を押シ上て︒
地ウ ハルよし 色 詞 いで 地ウ出るお吉が是は扱︒おゑ様ンかと思ふたりや︒お半様ンお出たか︒コレハ︵四十三ウ︶本ンに御膳ンもすへたま・︒よそへか
へてと手をかくれば︒ア・イヤ大事ない︒く此儘置︒コレお吉殿一よいはいの︒わしが給仕をするはいの︒アイくほん
とい 地色ハル フシ ウ 詞に久しいお留主の内さいく問にお出たなふ︒そんならかへに来ておくれと︒下女は勝手へ入ル跡に︒ほんにお吉がいふ通
地色ウ あたり 色 詞リお絹もお絹じや︒男に膳をすへて置イてまだ戻らぬか︒ヱ・尻の長イ者では有ぞと︒傍を詠メイヤコレお半︒アレアノよ
たのみふに祝言一の結納はくる︒嫁入リ仕やらざ成一まいぞや︒ヱ・︒お前迄か其様に︒モウ言出して下さんすなわしやいやく︒
しせう たしなみコレ申︒長右衛門様︒私が寺入した時は五つの年シ︒お師匠様のおつしやるには︒女子の子の嗜は︒一ツ生に夫トといふ
ていきん︵四十四オ︶はたつた一人リ︒ふたりと持ツは女ゴしやない︒女今川庭訓にも書イて有ルとおつしやつたを︒よふ覚て居る
物︒ソレ伊勢参りの下向の時︒忘れはせぬ︒夫トはおまへ一ト人しやもの︒それに嫁入の何ンのとは聞たふもない私しやいや
く︒誠無理にといはんすりや︒わしや女の道が捨タる︒お師匠様や︒お絹様へ恥かしい︒コレ申︒お前のお帰りを待チ兼
地色ハルよん ぜ ひウ 上 フシウ ノル中 ハル 地ウた些ト通︒是を読で下さんせ︒是非嫁入一ならわしや死る︒死るくと娘気の思ひ︒詰一たるわりなさよ︒長右衛門押開
ハル 色 詞 地ハル ウ かく 二きっく▲\詠メムウ扱は︒押シて嫁メれば自害すると︒某シヘの此書置キ︒ヘヱ︒是非もなき此しだら︒我連も早覚悟の身
一ウ 色 かく一︐一 詞 おどろと︒いふにお半が︒ヱ・アノ︵四十四ウ︶そんならお前も覚悟と言しやんすは︒ヲ・驚きは尤︒其死ヌる子細室言イ聞さん
地ハル くはいちう 中 かさ せいし ウ 色 のり 詞 げんざいと︒懐中より取リ出すは︒傘の誓紙のまくり紙︒コレ是を見や此血は︒平野屋の徳兵衡といふて現在のおれが弟︒天満や
けつぱんお初生言かはし︒死二に出る場へ行キ合セ︒心ン中を留トめた血判︒其弟が難ン義から︒ぜひなふて此長右衛門︒人をあやめた
めうと かあい事も有︒ヱ・イ︒サ其場で死るおれが命︒おれが死では弟が難ン義︒徳兵衛女夫が可愛さに︒おれも死ナぬといふ血判︒ハ フ一ン もつたい かり かさ ち あや しんばつ 地色ハル おそろツア勿体なや︒仮にも天満ンと書イた傘︒血を怪したる神罰かと︒思へば空︒恐しし︒
地色ウ殊にそなたも其様に︒嫁入リをいやじやといやるのも︒よしないおれが有ル故じや︒母様の手前お絹︵四十五オ︶が心根油
かくべつ とくしんの小路の舅迄︒三方四方へ義理の命︒死ねばならぬ長右衛門︒トハいへそなたは又格別︒よふ得心をして見やや︒おれは今
やうく 地ウ ハル 一ウ 色 詞 しせう年皿川八︒そなたは漸十四の花︒苔にもならぬ身を︒よい年をしてだましたと笑はる・は知レた事︒手習のお師匠へ恥かし
いとは尤ながら︒コレ髪をとっくと合点しや︒おれが事はない昔じやとふっっりと思ひ切︒油の小路へ嫁入てたもれば︒母
かうく どうぜん御へは大孝行︒又おれが身も思やる同前︒ノそふじやないか︒サァどふぞ聞キ訳てコレ嫁ってたも︒アこ﹂んな事とは夢に
しかへ 地ハも知ラず︒女房お絹が頼ンでいた手前と言イ︒おふくろの心根︒世問ンがどふも立ぬコレお半︒思案ン仕替て見やいなふ︒や
いのくとなでさすれど︒一四十五ウ一へいらへはかぶりふる計︒悪縁一深きしるしなり︒
地色ウ ウ ウ せいし つか ウ フシアレくお絹が戻るぞと︒我書キ置を刀の柄一誓紙も倶に巻込一で︒柄に袋を打かづけ空さぬ︒顔して居る所へ︒
戻るお絹がても誓︒マアくわしとした事が旦那殿一膳一出して︑給仕をとんと忘れていた︒是はしたり髪な子は︒脩
ていて済ムかいなふ︒旦那殿どふじやいな︒サァ頼ンで置キやった一ト通り︒口のすい程いふて見ても︒まだ得心ンがないそ
と︑ふで︒おりやモウ男が立タぬはいの︒サア私シも弟や爺様へ申訳が立ませぬ︒コレお半ン様︒何やら咄をせふと思ふた︒ヲ・
それく去年のソレ夏で有一た︒こな様一と連立て大坂一下つた時︒中山文七が芝居でした︒八百やのお七を見て戻一た夫か
かあいら夜船の口々︵四十六オ︶に︒イヤお七をよふした可愛らしいといふたれど︒わしやひっとっもかはゆふないなぜといはん
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 六五
翻刻 ﹃曽根崎模様−︵下︶ 六六
るいくは のい 二しやう いひなせ︒マアく有ふ事か︒合屋の内が類花に合︒寺一退ていた内に︒小性吉三に心をかけたが悪事のもとじや︒言名付ヶ
ムしんの武兵衛がお七を女房に持タふ為︒だいまいの銀出して︒元トの八百やの普譜もでき︒内へ戻一て居る内も吉三に逢たいく
なかだち ふみと︒下女の杉を媒にて︒文のやりくりばつかりで思ふ様に逢レぬ故︒今ン度も家がないならば又寺へいて逢れふかと︒
地色ハルウ 中 ウ くはなん ハル 色 詞娘 心に思ひ詰メ︒又も火難の其後チは恋しい吉三に逢事か︒江戸中を渡されて︒浅ましい死をしたといな︒コレお半様ン︒
よ そおまへはそふではないけれど︒芝︵四十六ウ︶居事も余所にはない︒誰ガ身の上にもよふ有事︒嫁入リをいやといはんすは︒
ただ やくそくム・但し外ヵに言イ約束でも有ルといふ︒ハテ夫レもないならひじやない︒有ルなら有ルとナ旦那殿︒そふじやないかへ︒ムン
地色 ハル 色 詞 わうじやう顔ふらんすはそれでもないか長右衛門様と︒いへばぎつくり胸に釘︒そんなこっちや有ルまい︒したが其様にきめ往生に
マ さうだんし 地色ウ ハル 上 キンいふても済ぬ︒マアい・んてお半とつくりと︒お袋共相談仕や︒サアくいにやくと手を取レば︒只アイ︒くとないじや
中ノル フシくり是非も︒泣ク々立出る︒
ホこりやどこも店さし時︒コレ女房︒おりや砥園様へ参つてこふ︒アイそんなら早ふお帰りと︒お絹は奥へ別れ入︒後の哀
フシ 地中 ハルウ ウ 中 づかはレを知ラぬが仏ヶ︒向ひの寺は門ンしめるこなたは大戸引しめる︒︵四十七オ︶人顔見へぬ夕暮レ方︒お半はいか︑・気遣しと︒
上 色 びつく 詞くりを出る長右衛門︒夫レと見るよりしがみ付わつと泣出す声に拘り︒お半そなたは髪に居たか︒アイわしやモウ内へ
地色ハル ウ かみそり 詞 いけんはいにませぬ︒お前に逢ふ計に︒今迄生キて居ましたと︒剃刃取出す其手を取︒コリヤお半スリヤ最前段ン々の異見も聞ず
いよく ぜひ そこな 地色ハルム・扱は弥死る気か︒ハア何一とせう是非がない︒死損一ば恥の恥︒モウかふ成ルからは一一所に死んサアくおじやと
ウ中 ラ 色 ラ 万 ハルタ問暮︒上の町からくる挑灯︒アレあれは片岡幸之進︒急ぎのていは気遣ヵはしと︒胸にこたへし我ヵ身の上︒逢てはいか
フシかけウゾと用水の︒小陰にこそは忍び居る︒
地ハル 色 ウ ハル家来を先にいっきせき︒息キも片岡幸之進︒差札片手にかけあがり︒長右衛門長右にあはふ︵四十七ウ︶気をせく声︒お絹
ウ 色 詞 よびが聞付是はくよふお出︒こちの人はたった今薗一様へ参るとて︒いやさく︒早く呼にやり召サれ︒そんなら茂兵衛呼ビ
フシにいきや︒はつといふより出て行︒
詞 ないしやう 地ハル 一ウ 色 詞コレサ内証︒大坂より早状がきた故に︒急に逢ねば叶はぬと︒いらっ老人落チ付クお絹︒おまへはいかふおせきあそばすが︑
しやうばい 地ハルお急キなさる・御用でも︒イヤサ商売の事ではおりない︒扮レ幸右衛門は切ラれましたはいの︒ヱ・イ︒そりやマァどこで
色 おどろけ 詞 さたふんめうと驚 ば︒サァ大坂にて︒平野屋の徳兵衛が切ツた共︒いまだ其沙汰分明にはなけれ共︒合点のいかぬは最前ンきて︒長右
いつぞや衛門に逢た時︒済マぬ顔も気遣はしく︒其徳兵衛は長右の弟︒日外麦へき合セせて近ヵ付に成リ申た︒長右と違ツて︵四十八 地ウあたり ハル色オ︶ひがいす者夫レはとも有︒ヱ・早く逢イたいと︒見やる傍に残した刀幸之進取リ上て︒ムン此小柄ヵは拙ツ者がやった後
から 地ウ ウ なまち ハル 中 ウ ハル ひろ 色藤が唐獅子︒覚へ有此刀と︒引抜ク切先キしたひし生血︒扱はと驚其内に︒柄袋より落チちる一ツ通︒お絹が拾ひコリヤ何じ 詞 . 地色ウ ハル 色 詞 地色ウ 引や︒幸之進様一︒お絹殿参る長右衛門︒ドレくくと幸之進︒一通手に取押開き︒何じや書残す一一札︒ヤアとお絹が仰
てん色 ハル ウ と 色 ハル 色
天︒そんならアノ死にいかしやつたか︒わしも倶に追ツかけてと︒立を留めて幸之進︒マァコレ書キ置を︒聞たが能イと声しヨミ詞 どうしま だま うんはぶき︒ア此度御用を承り大坂へ下る所に︒堂島難波小橋において︒幸右衛門殿某を待伏セ︒欺し打に逢べき所運に叶ひ︒
みれん幸右衛門殿主従二人を切留︒直グに切ツ腹と存侯へ共︒︵四十八ウ︶御用かけ侯ては不忠と存︒未練ながら立チ帰り申シ侯︒
詞 かけムンそふで有ロヱ・武士に似合ぬ︒待チ伏とはにっくいやっ︒長右が手に懸討タれたは︒コレまだしも扮レが仕合セ︒それ
翻刻 ﹃曽根崎模様﹂︵下︶ 六七
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 六八
よん 地ハル フシ モミ詞 ようせう どうぜん そだてくお絹︒こなたも読で見られよと︒渡タせば取一て泣々も︒信濃やのお半一事︒幼少より我ヵ子同然にもり育︒去年一の春
たいせつ たはふれ伊勢参宮に同道せしは︒悪縁ンの始メかと存ジ侯︒道々大切にせし余り︒お半も又我を大切ツがり︒夫レとはなしに戯が誠ト
むす 詞 ヨミと成ツて︒縁を結びし事︒不義の段ン々詞にのべがたく侯︒ヱ・そんならお半殿にも様子が有ツた事かいな︒そなたを始メお
ぺん さまたげ石殿の手前︒此度縁辺を妨侯も我レ故と存侯へば︒生キて顔立チ申さず死るより外なく侯︒去ながら幸之︵四十九オ︶進殿
かげ ちくしやう たましい わきざし ハル ふち なげのお影により︒侍イと成一身に畜生の魂が入リ替り候故︒刀脇指にては死ナれず︒いか成渕川へも身を投申候︒ハァく
地上 ウ ふしスエテ 中 詞悲しやと身を打臥正体涙に︒くれけるが︒ヱ・アノ子と二人が中露程も知ラなんだく︒たとへ又私が知レた連︒コレ何一と
地色中 ウ ハルいはふぞ︒わしや是何共言ぬ気は︒日比よふお前知ツてないかいな︒去ながら私が様な者でさへ︒女房しやと思ふて私を
立て︒隠さしやんした心根が猶いとしい︒長右衛門様とぶぞ死すと最一度︒顔を見せて下さんせいなふ︒跡に残ってコレわ
地ハル 上ウ ウうへしやどふせふぞいな︒幸之進様どふしませふ︒皆もこいく呼一でこい︒私もいかふと立足さへ︒カラも落て其儘に︒お上 中
上ハルキンフシことはりハル
にどうど伏まろび︒声︵四十九ウ︶を計に歎キきしは︒断 と︒こそ見へにけり︒幸之進も目を摺て︒ヲ・道理く︒ヱ・此親が了簡すりや︒死るには及ばぬ物をと懐より︒金子の包を取出し︒差札
に押シ並へ︒是此ごとく用意せしは長右衛門を思ひの余り︒大坂より早状の趣見るやいな︒突キ詰た長右衛門かふ有口ふと
さつ れうち ゑんしう りやう察した故︒遠ン州には今出川の領地も有リ︒一ト先遠州へ落してやらん︒其為の此差札︒道中筋は心の儘︒遣ひ寮には此金
ざん じつ子五十両迄持一て来たに︒ヱ・残念一く︒実の扮レは何共思はず︒どふした縁一かアノ長右衛門︒後チ々はおれが子分一にし ハル めうじ ゆづ 地ウ いづく ふちかは ウ 一ウ 中て︒片岡の苗字を譲らんと迄思ふたにノウお絹︒さも有レ何国の渕川ぞと︒また一五十オ一取上て幸之進お絹もなくくく
ウ せいしち ハル よみ 色 ヨ・︑︑詞 のび
り出す内︒包込ンだる誓紙の血判︒是々麦に此事がと︒又読上る涙声︒弟徳兵衛お初が命助ヶん為︒我レも暫ラく生キ延たるかは せいし命代りの此誓紙︒人の善ン悪さ一見分ヶたる我成レ共︒我身の上は目に見一ず︒うかく見ていた夢もさめ︒油の小路の舅殿
はづか ていせつ いんぐはお石殿︒取リ訳て恥しきは女房お絹︒人ならぬ此おれに貞節を立テ︒其札をさへいふ事か︒因果な縁ンにからまれて︒心ざ
むそく なきあと さらし もはや まじはり ね二 さい二 ぺんしも無足と成リ︒亡跡迄浮キ恥を晒侯︒最早人問ンの交ならず︒犬猫に同じ最期の有リさま︒必々仏の前へ手を合し一遍
てき かうはな た︑・の念仏水一ツ滴︒香花連も無用に候︒只面ン目なきは幸之︵五十ウ︶進様︒人ならぬ某を人と思し召︒御一ツ子にかへての御
れんみん もつたい のべ憐慰︒思ひ出すも勿体なく存侯︒余りく悲しく侯て︒筆の立ども跡や先︒申シ上度キ事は海山に侯一共︒心に余り詞に述
しつ 詞がたく侯︒大坂天満宮の氏地に置イて相果ツる身に侯へ共︒古郷の方もなっかしく︒桂川に沈む者也︒ヤ扱は桂川へ身を投ゲ
やくそく 地色ハルにかいの︒いとしやくヱ・かふいふ事をとふから知一たら何のく︒油の小路一縁一組の約束をせふぞいな︒此書置を見
ウ ウ 一ウ ゐけん りんき 色る内も此身が此身で恥しい︒お半様さつきの様に異見したも何もかも知ツて居て︒倍気でいふたかと思ふて・有︒何のさら
地 ハル い・くわしや知なんだくそ一こら一て下んせ︒ヤヤ︒ヱ・どふぞ︒モ一チ度逢たい見たい言訳がしたいはいの︒大事のく
一ウ わざ たのみ 上隣の娘︒あっ︵五十一オ︶たら男を死すもわしが業じや︒どんなからしゃ︒ひよんな結納の印を預ヵったも︒かふ成ル知せ
だい だる ウ ウ フシ ノル中 ハルで有ツたかと︒台も手樽も打付ヶ投付身を投付︒倶に死んと身もだへしうさもつらさも一時に涙︒果しはなかりけり︒
地ハル 色 詞折しも来る隣リのお石︒申シくお半はお前におりますかな︒ヤアお石様か程お半様も内にじやないかへ︒ハア︑︒コレ
地色ハル うろたへ色く申く長右衛門殿が此様に書キ置を残し置︒お半様と一一所に桂川へ死にかと︒聞イてお石が気も狼狽何でくどふして
とへ 色 詞 す・ 地ウ ちやうちん ウ いそ ウと︒問どこた一も幸之進︒様子は道々我レは駕の用意して追一付行︒早ふくと進められ︒与五助が挑灯にお絹が急げばお
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 六九
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 七〇 上
ウ 一ウ かた ウ てる色 まか
石も倶に︒跡をおちや横切レに︒今迄忍びし長右衛門お半を肩に引かけて︒桂は西に照月の足に︒任せて三重︵五十一ウ︶うきな 道行浮名に入ル物
二人半太夫 ウ 入 中キンハル キン なが ウ ゥ こた きへ 一ウ むかし あくた 下 かつら月かげの︒流る・方へ行我レを︒もしやはたそととふならば︒っゆと答へて︒消なまし︒それは昔の︒芥川是は︒桂の︒ スヱテ 万 ハル ナヲスフシ 中 ふんぺつ ウ おもに ゑん むす おび のき はるか川水に︒浮名を流す身の上と︒思ひながらも分別の外の重荷の恋衣︒かたにあふせの悪ク縁を︒結ぶ帯屋の軒もはや︒ 逢
フシ 中へだて フシ 中ウ はな ウ せな 小ヲクリつくろ タ・キ ハル ウ かく二隔て見返れば︒町を放れてやうくと背をおろしてとりぐに姿繕ふ心根は︒まだ娘気の跡やさき︒死に行身と覚悟し
フシヲクリて︒歩むぞ︒へ思ひ︒やるせなき︒男は跡にしほくとしばし一五一ニオ一た与む其ふぜい︒お半はふしん立よりて︒お
地フシ △詞まへは何してゐさしやんす︒サアござんせと手を取レば︒サイノこ・は三条あたご道︒露の命の置キ所︒草葉の上と思へ共︒
やいぱ ふち しつめ いひわけ かい さぞ何やかやと義理あれば刃では死なれぬゆへ︒渕川へ身を沈るがせめてもの言訳と︒くはしく書て置キたれば︒今比は嚥ひ ハル 中キン ゥ ニ上リ歌二人ハル はな O色 わけ 二人中ウこうぢ よめ しんじつ せ わ むらき見て︒サイナわたしも髪に放さぬは︒おきぬさんへの申訳︒油の小路へわたしをば︒嫁にやらふと︒真実なお世話を無 上下にさせましたも︒かうして一ツ所に死たい計リ︒昼も昼とて様々と︒大坂で見た富十郎の︒八百屋お七の狂言まで︒あれ
ヒロイ ウ ゥ いけん しばゐ ハルウ 中ウ O色 ナヲスハルが手本ンじや異見じやと︵五十ニウ︶芝居咄しを言出して︒おまへとかうしてゐる︒とはしらずかう出た跡で︒嚥や嚥呵つて
一ウ ニ人中ウ かんにん ウ キン たうり ウ計リゐさんせう︒堪忍して下さんせとわ︒ひる涙圭ト筋におほこ︒育といちらしし︒道理くといさめられ行は野すへに
中 ウ フシ ウ ヒロイ み ふてら かね ノル 冷泉 たうし しゆしやか犬の声︒身にしむ風にさそはれて︒アレ壬生寺の鐘の音九ツ︒髪に︒北みなみ︒東寺はあれよ西の寺朱雀の︒火かげほの
ウ ウ フシ見へて心ほそ道︒まがい道︒行道すからわすられぬ去年の参宮の道ぐさに︒関の︒お地蔵は︒親よりもまししや似合の︒つ 長地 ウ ハル けかう やと ウ ウ ウ ウ 中ウまつぢとうたふ馬子の歌のふし︒下向の宿は坂の下っゐ手枕のかりねして︒あいの︵五十三オ︶土山︒雨よりもぬれたどふ
サハリ ウ ・レよしウ いしべ 中 ハル ウ ウ 入 中 ハルウしと水口のわる口がソレ繍の端︒かたい石部の︒お前迄︒今此やうに成リはっる事とは︒しらず跡の月︒アノ清水のぶたい ウ 中 ウ 中ウ ウ ゥ 一ルウ︑ むくひっみ二くはん交 ばち ナヲスから飛ンで命の有ツたのは︒願ひのかなふ︒印シじやと悦んでゐた物が︒不義な恋した報か罪カ 観音様の御詩か︒ハテ何 ウ ウ 沖 ウ もはやかつら 軍ン うしろ ハル ハツ︑︑︑フシ フシ カく二事も書置キに跡で様子は知レること最早桂に月の足︒アレくく︒後一見ゆる火の光り︒追ツ手の者に逢ぬ内︒覚悟はよ
いがと外露の・湖る︐撫りの畑ち瀬川石を・挟に・ぎ鏑・しゆすの帯屋と敏屋の娘くと呼ブ声に彫付ヶられじとデを引て︒
ウ まろ ウ みなかみ 上こけつ転びっ牛が瀬の水上︒へとぞ︒三重へたづね行︵五十三ウ︶
かつらかは 七冊 桂川の段水に入ル物
司 たんな 地色ハルさけぷ フシ︑デ・イく︒長右衛門様イのふ︒旦那様イのふ︒こちの人イのふと︒呼も叫嘉声︒
餅が先に与五助が驚の火紅ぐらき︒齢川迄走−付そこ茎よと尋ヌる内︒を跡から︒妓イのふ︒おはん様イのふと 地ハル聡勘レて・rイに顔を︒ザアお絹さんか︒お石さん道々申た入リ訳︒堪忍して下さんせとわっと歎けばもろ共に︒涙はらふ
司 おぽ きて・︑中々わしやもふ心がうろたへていつそ何ンにも覚へませぬ︒かふいふ内も気遣一し与五助殿も尋ねてや︒アイく川上 打︑ポ ウ かうのしん︺ 詞 きぬ一は庄六茂兵衛が行キました・詳くこちへと進る所へ︒乗物釣ラせ幸之進息をはかりに尋ねきて︒コレハくお絹一五
︑ し よひ ほうぐ十四オ︶殿鰐や帷卸をさっして居ます︒シテ成行は何ンとでござる︒イヱもふとんと知れませぬ宵から方々尋ぬれど︒ヲ︑
みな 二ひ 地色ウ道理く此幸之進も芽道々︒日比念一ずる仏ツ神ンに皆長右衛門の命乞︒ア・かふいふても済マぬ事︒夜明ケぬ内にそれ
くと⁝上−川下轟は榊し・一専ねさまよふ其内に早嚢に・樹ちかく尉の撃もほのぐと︒雪渡りたる川筋を︒湘カれ来タ ヲクリ ウ
るに肝を付ヶて・押アく棄共あ僻しや祥といふ声に・ベツト籏一て下部共でんでに︒飛一込−激ぎげキ︒押アく是は死撚
翻刻 ﹃曽根崎莫様﹄︵下︶ 七一
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 七ニ フシ 地ハル おどろじやと︒聞より人々ハアはっと驚く内チに引キ上れば︒
詞 地色ハル すが ウ をんあい 上 の べ ふちノルフシ 中 ・レ うづヤァこりや娘︒こちの人︒なふ悲しやと取纏り︒わっと泣出す恩愛の︒涙は野辺に渕なして又も︒期身や沈むらん︒︵五十
地色ウ ハル しがい色 詞 に てつた舌よ あん四ウ︶幸之進もせぐりくる︒涙ながらに死骸にむかひ︒ヱ・日比に似合ハぬ一ツ徹短慮︒今いふたとてかへらねど案の外ヵな
ゑん そりやく てい 地色ハルる此有リ様︒いかなる縁かか程迄疎略にせざる我心ン底︒天ン道夫レとしり給はなぜ引キ留メては給はらぬ︒ヱ・残ン念ンや スヱテ こぷし にぎ ひたん 中 ラ 色 詞 ウと拳を握り悲歎の涙にくれにける︒始終正体泣キ入リしお絹は顔をふり上ヶて︒コレ申お石様ン︒おまへは又其様に泣イてば
︑ な二り しにがほ げんざいつカり居さんせずと︒せめて名残に死顔をとっくりと見て上ヶまして︒ヲ・現在娘の顔じやもの見たふてくならね共︒さ
地上 一ウっきに一ト目見た時に何ンやかやを思ひ出し︒二目ととふもわしや見られぬ︒見られぬけれど我ヵ子の顔︒見たいはいのとか 中 一ウ いたき スヱ 差だ ハル中 ウ ハルつぎ 詞 こ青 書きくとき︒死骸に取リ付キ抱付キ又も涙に︒伏沈む︒歎キの中ヵへ︵五十五オ︶手代の茂兵衛︒息キ継あへず︒申々氷が渕
きし ぬぎすて ざうり 地ハル 詞の岸のうへ脱捨て有ル此草履︒見れば何やら書イた物がく・り付ヶてござりますと︒差出す草履目早くもお石が取ツて︒コレ
く此草履はきのふあの子が買フたのじやはいな︒ヱ・そんならそれはおはんさんの書キ置キかへ︒夫マァちやっとく︒ キン地色ハル ひら 色 詞あいといふ問も胸ねせかれ︒開く手さきもふるひ声︒何から申シ残さんやらあんじに暮レて書キ参らせ侯︒申シたい事山々な
ざ た︑︑き さんぐう 書づる ゆかたカら只気にか︑るはお絹様への申シ訳ヶにて侯︒去年ン参宮の時もわたしが好イた折鶴のもやうの湯衣︒手づから仕立テて下
かぜ さむ よをり ゑんりよさんす︒ヱ︑かはいや何ンの湯衣の礼所か︒其上ヱ道て風ひくな︒ちっとでも寒いならこちの人の綿入羽織︒遠慮なしにき
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かんにん わびことに思召ス︒お絹様への申シ訳ヶ︒わしや是計リが気にか・り参らせ侯︒どふぞ堪忍なさる・様に詫言頼ミ参らせ侯︒コレマア
地色ハル かたみ 上 クル是程ながい書キ置キにわしが事は何ンにもか・ず︒おまへに莚言ばっかりを書たはいな︒是がおはんが筐かと︒顔にあて身 中 そへ 一ウ ハル7ン と︑・ 一ウ ハル 詞に添て声をはかりに泣入レば︒お絹も涙︒留め兼ね︒夫トの歎キいやまさる︒涙ながらに︒ノウコレく何の腹ラを立テませ
ふ・末を私シが読ますも︒あの子の迷ひはらすため︒ナニく詫言頼︑︑︑参らせ侯︒っいてはわたしが徒の申シ訳ケを致シ参
らせ侯・猷とやら機けとやらわたしはさらくしらぬに候︒あの長右衛門様の事は皆人さんか打よつて︒明ケても暮レてもほ どうぜんめて詐・夫レでわたしもよいお方タと思ひ染参らせ侯︒かへすく\もお絹様︵五十六オ︶の手前︒とのご盗︑︑︑し同然と一日
かな 一︑こやう かんにん ウ くれぐねがく気の付ほど悲しく思ひ参らせ侯︒只此上一は後生じやと思召︒お絹様の堪忍したとおつしやる様に︒呉々願ひ参らせ
侯・南無あみだ仏一く・詰あみたぶと識繍り・かつぱと緊泣キ出せば︒酎は熾さら身の上にヅる歎キのうさっらさ︒
一ウ 中なみ ハルフシ むせび ハル並居る人も諸共に咽︒入こそ道理なれ︒
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まよなふ︒コレくく堪忍せいで何ンとせふぞいな︒かならず迷ふて下タさんすな︒よい所一いて下さんせ一︒コレ申シ長右衛 二・ろざし門殿︒長右衛門様ン︒早まつた事さしやんしたので︒幸之進様のお志もむそくになつたはいな︒何やかや︵五十六ウ︶
ぎりの立タぬ事思ふて・鰐おまへの身にお前があいそがっきたで有口けれど︒わしや一トつもあいそはっきやせぬぞへ︒此世
じやうぷつ うらみ 地ハル ノル中フシ ハルに心残さずと成仏して下さんせへ︒何ンの恨が有口ぞいなと︒声も涙にせぐり上ヶ又も︒つきせぬ歎キ也︒
撃がらに幸之進凱うつると廿チ上り︒デ︑か苛の歎キ尤ながら・日も立魏らは人目も有︒二つの騒引キ分ケて長右衛門
翻刻 ﹃曽根崎莫蒙﹄︵下︶ 七三
翻刻 ﹁曽根崎模様﹄︵下︶ 七四
かたきうつ ひろう きやうきは我手にかけ︒伜レが敵討たりと披露せん︒マツタおはんは狂気の上︒水に入ツたと言イふらさば心中の名をのがるべ
し︒崇二人−へ幸之進島善也と並から︒整セたる・概と芭かんとすれば熱はと・め・腎に糸針迄黙して・織
たましい めうと合せたる心根を思ひ廻ハせばいとしぼい︒廿四時が其問は魂其身に有と聞ク︒せめて一チ夜は此世にて女夫にするがわたし
ざついぜん つね ひめ しがい きざみカ追善︒やっぱりそふして置イて下さりませ︒ア・黍いおきぬ様お前が常の姫ごせ︵五十七オ︶なら︒娘が死骸切リ刻もせ
つき しんせつ ぷ きやう かみ 地ハル 詞ふ突もせふ︒夫レに引キかへ深切な︒其お詞は娘への千ン部万ン部の経だらに︒お前は神か仏かと手を合ハすれば︒アノまあ
しんじつ りんき だんお石様ンのおっしやることはいな︒わたしが真実いとしいと思ひ込ンたアノ子じや物︒椿気しつとの段かいな︒コレく
さきしやう やくそくくおきぬ様其お詞か猶じゆっない︒ハテかふ成一も前生からの約束でか室一ざんしやう︒サァそふ言一しやんすりやわた
しが身に︒イヱくわたしが︒イヤわしがと︒弔に手に手を取リかはしふりを立テぬく心根を馴ひやられて磯なり・
タ︑キ 中地色ウ はて ハル しがい 中ウヒロイ クル 上 一ウ あいべつ ナヲスウ ハル斯ては果じと幸之進︒二人の死骸を乗リ物にのせて︒かき出す小笹原︒是や誠ののべ送り夫と娘に愛別の︒つきぬ名残を彼
一ウ ぐぜい 中キン けふり 一ウ 上 ふち しづ し〃によ 一ウ 中 上 ユリ岸に︒おくる弘誓の舟岡山︒やがて煙ときへ果る︒氷リが渕に沈む身も真如の︒月の桂川涙︒残して三重へ立かへる︵五十
七ウ︶ とだな 八冊 平野屋の段 戸棚に入ル物
地中 ・レ ノ︐ 中あきんど ハルフシきぬた︑む 中 ウ かうし ウ つね しまつ ぷしん かべ くづれ ウ商人のよき絹畳︒内本町︒外トは格子の角屋敷キ名は平野屋の久右衛門︒常も築の内普請︒壁の碧こてくと皆手細
ハル フシ ハル なは ラ つだ中 すさ ウ たまりしやうゆ とせい から わざ工の下タ地縄︒長蔵も手伝ふて︒窃を切ルやら土に水溜奨油のおろし売り︒渡世も辛き手業なり︒
地色ウ ︑ ハル 中 たね 詞 やいと すへ 地ハル 色長蔵殿はどこにぞと︒立出る女房のお種︒ヲこ﹂ちの人そこにかへ︒アノ灸はどなたが居なさる・と︒尋れば久右衛門︒
デ︑おれがけんべき厭るのじやが・マア徳丘一衛からす一てやりゃ・アイく・そんなら左様といふ所へ︒デ様お茶をFま
よめ ハルフシはなが 詞 地ハル 色 詞 テミやいとしよと嫁のお北が心の端香︒一五十八オ一ヲ・こりやよふ気が付キました︒どれくと︒茶碗手に取ヤイお種︒徳兵雰灸
もらは︒此お北にすへさせい︒ハテあれと女夫にせふ為に︒貰ふて置イた在所の娘︒あの徳兵衛は天満屋のはつに気を取れ︒お かいすまゐ北が顔は見向キもせぬ︒京の兄の長右衛門が連レて戻って︒此問は門へも出すなと頼ンだ故︒二階住居させて置イた︒外を家
やうじやう げんはくにした若い者︒気詰りにあらふかと養生薬も呑ンだ上︒マァ灸もよからふと︒玄伯がおろしてやられた︒ヤ夫レはそふと︒
かけ 二とはつ ︑九平次めが掛物を戻さぬ故︒町所へも断て置たが︒何とぞいふて来そふな物じや︒ナァ長蔵︒おりゃちよっと宿老殿迄尋 かべてかふかい︒いか様左様になされませ︒ヲ・いて︵五十八ウ︶かふ︒コリヤ長蔵︒麦はもふよい︒そちらの壁へ問渡し入て 色 もぐさ 地ハル はおり かたかいて置ヶ︒ヤイくお種︒文もたんとひねって置ヶ︒コレくお北︒徳兵衛を呼ンです一てやりや︒ドレく羽織と肩に
司 っいやす もつたいかけ︒ゴリヤくお北︒何が悲しうて泣クぞいやい︒我泣のはかまはぬが︒此様にあったら紙を費が勿体ない︒ア︑若い
どく 地ハル ひろ 7シはよいが︒しどがなふて気の毒じやと︒落たる紙を拾ひ上︒挟に入て出て行︒
地色ハル 中 詞 おい二 くらう やいと こしらへ長蔵跡を打ながめ︒ア・いとしや︒甥御にか・っていかひ苦労をなさる・︒お北様︒灸の祷なされませ︒女房共︒何を
地色ウ し二と ハル 中 詞うっかりとしてゐるぞ︒連圭して奥へいけ︒おれも為業を片づきよと︒立ツをお北がコレ長蔵︒徳兵衛様の灸なら︒わし
地ウ ハル ラよりはお初殿を呼ンで来て︒すへさしたがよいわいの︒わしらが︵五十九オ︶様なふっ・かな在所者︒何のあなたが気にい
中 詞 やいと もぐさ はし ふくろだならふぞ︒ハ・ ⁝︒お北様こりや︒灸よりひぞりじやな︒サア跡で旦那もすよふといふてじや︒文も箸も袋棚に入て フシ 地ハル ともな有︒ドレ出してやりませふ︒サァく早ふござんせと︒二人を伴ひ入にけり︒
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 七五
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 七六
ハルキンフシ 小ヲクリ地ウ かき 中 へだてハル ウ ウ ハル 中 ハル つ・ まうし ハルうきことの︒数重なりて︒山鳥の隔て住ムは︒春の草︒今は便リも夏の空︒お初は人目まばゆさに包む︒帽子も平野やの︒
ウ 地ハル フシのきは 中 詞 かべ くづれ うか︑・軒端にたどり来りしが︒ア・嬉しや︒マア麦迄は北がいの︒壁の崩に身を寄セて︒内の様子を窺ひゐる︒ ハルフシ同し思ひに徳兵衛も︒二階をそろく︒段ばしごおりると出ると顔と顔︒徳兵衛様︒長蔵か︒アイ︒いや申︒おまへは気
しよく色が悪ルい速寝てござったけなが︒ちっと様子が︒イヤもふ大分ンよいわいの︒薬も呑ふし︒灸︵五十九ウ︶も下タですへ
もら こしらへ る すて貰をと思ふて︒アイそれく︒女房共やお北様が栴て二一ざります︒イヤ申︒旦那殿の留主の内︒ちよと申シたい事も
ゐけん有︒マアく下にござりませ︒アノ︒ゆふべ段々わっっくどいっ異見が有ツた︒其尾に付イて︒アノお北様と女夫に成て此
おさ内を納め︒旦那には隠居させませふとおつしやったが︒ヲ・そふいふたく︒夫レが何とぞ︒サアそりやはや︒あの様にお
せ わ そま前を太切ツがってお世話なさる・︒其手前を思ふてナ︒心には染ぬけれど︒マァ当座の問に合に︒いはしやったでござりま 色 ざ O ︑ しんじつ 地色ハル びつくせふカな︒ア︑いやく問に合じやないぞや︒真実お北と女夫に成一︒合点じやわいのといふ声を︒外に立聞お初が愉
ウ 色 詞り︒長蔵が押シかへし︒アノそんならお初一殿の手を切てかへ︒ヲイノ︒いゑく合点が一六十オ一いきませぬ︒今の様に
むふんべつ ふかいはしやっても︒っんと誠と思はれぬ︒どふでも無分別が出そふで︒気遣ヒに存ます︒是はしたり疑ひの深い人じや︒何で
かい かんがへおれが無分別を出す物で︒サァ・ ⁝︒夫レなら二階に居やしやる筈︒人のない問を考て︒麦を出よとの事じやあろ︒
かく ぢやうヱ︑聞へぬ徳兵衛様︒今迄何べんか申ス通リ︒なぜ私に隠さつしやる︒今いはしやつたが定なら︒元トの二階へ上つて下さ ウ 地ハル しあん 色 おがみ サれ︒灸もそこへすへにやる︒コレ申︒無分別の出ぬ様な︒思案をしかへて下さりませ︒コレ申拝ます︒拝ますると手をす
しんじつフシ ゐけんつて︒真実心の異見也︒
ゴレく・其様に拝一でたもると榊ない・何々の婁・無分別の出ぬ誠つ牝といふは︒お初とは手を切ツたぞや︒ムンそりや
もらとふして︒いっ切ラ︵六十ウ︶しやった︒ハテお初が兄が天満やへ︒金を渡して隙を貰ひ︒外で男を持タすげな︒ハテおれ あ ちじや皐畠一ねば︒お初が為にならぬ故︒さっぱりと思ひ切た︒是からもうく心を入か一︒お北を女房にして︒伯父者人に かうく せい吏 き み定 うそ 地色中も孝行にするわいの︒神仏を誓文に入るは古ルい︒京の兄貴が川へはまって死る法も有レ︒微塵も嘘はっきやせぬと︒っゐ
ねん 一ウ か伽れ 万 ウ フシ 地ハル 色 すつ 詞 一いふ事も天然と血筋がしらす哀さを︒外トにはお初が聞クつらさ︒立ツたり居たり腹立涙︒長蔵も目を摺て︒モウく圭
ちかひ 地ウ うしろ ハルたね 色 詞んす︒兄様迄誓に入てのせいごん︒落付キました︒嬉しうござるといふ後へ︒お種が立出コレ長蔵殿︒文はたんと有けれ
ど・や狐と密がかたしもないぞへ・ヱ︑夫レ出して置たはい︒柳忙郵の中に有ル筈じやが︒︵六十一オ︶テモあの中にはないわ
地ハル 中 詞 らちいのふ︒見て下んせと気をせけば︒ヱ・堵の明ヵぬ者では有ぞ︒ドレ尋てやろ︒イヤコレ徳兵衛様︒お前はやっぱり二階へ
︑レ フシ 地ハル フシ 地ウま かべ やぷれ ウ ウ 色 はしりと︒言捨奥へ行跡に︒人問を待てゐるお初︒壁の破をおづくと︒く︑りはいるをよくく見て︒お初じやないかと走寄リ︒
司 地ハル 詞ヂく大たんないっの問に︒どふして麦へおじやつたと︒と一ど涙にむせ返り︒ほんにく今の様な︒どうよくな事がよ
ふいはれた事じや︒わしやさっきにから麦へ来て︒いはんした事はよふ聞た︒兄様が金立テて︒隙をもらはんすの何のとは︒
つとめ みぢん うそ たとヘサアわしが合点したかいな︒コレ勤こそしたれ︒わしやお前に微塵も嘘はっかぬぞへ︒警どの様な身に成速︒こな様ンを
そふ どうよく見捨て︒外の男に添様な︒心じやと思ふて︵六十一ウ︶かいな︒夫レにマア胴欲な︒わたしとは手を切ツて︒お北様と女夫
ようそはに成一といはんした︒是程に思ふてゐる物︒能添そふわいな︒サアく今麦でそはんせ︒くく︒よふあんな事いはれた 地ハル 地上 キンハル ノルフシ 中 詞 ふと.ヒろな︒聞へぬ人やと計にて声も︒得立簑び泣︒コレく︒夫レ聞きやったら腹立は尤︒マァ泣ずと是を見やいのと︒懐カら
翻刻 ﹃曽根崎模様﹄︵下︶ 七七