水素エネルギーシステムVo1.37,No.1 (2012) 若い研究者の声
若い研究者の声
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令争命令錯体系水素貯蔵材料の再生技術
ーアンモニアボランの再生を例に-梅 垣 哲 土
日 本 大 学 理 工 学 部 物 質 応 用 化 学 科 干101圃 8308 東京都千代田区神田駿河台 1・8・14 はじめに 日本大学理工学部の梅垣哲士と申します。r
若い 研究者の声」に初めて寄稿させて頂く機会を頂きま した。本誌編集委員の皆様に御礼を申し上げます。 私はここ 3'"'-'4年、錯体系の水素貯蔵材料で、あるア ンモニアボラン(NH3BH3)
に着目し、このアンモ ニアボランを加水分解するための触媒の研究に従事 してきました。本反応は、酸や触媒の存在下でのみ 進行し、室温でも水素を発生します。さらに副生物 であるメタホウ酸アンモニウムが水中に溶解するか 固体として析出するため、生成物のガス成分が水素 のみとなり、高純度水素が得られます。この反応で アンモニアボランを再生する場合、メタホウ酸アン モニウムが原料になりますが、この再生プロセスは 熱力学的に非常に難しく、研究例が少ないのが現状 です。一方で、アンモニアボランを水素貯蔵材料と して実用化するためには、再生プロセスの確立が不 可避でありますので、この場をお借りして使用済み アンモニアボランの再生プロセスの研究例について 私見を交えながらご紹介致します。2
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アンモニアボランの再生方法 アンモニアボランからの水素発生ブOロセスには、 大きく分けて熱分解と加溶媒分解(溶媒:水、アル コールなど)があります。これらのプロセスの副生 物からアンモニアボランを再生させるには、熱力学 的に不安定なホウ素ー水素結合を効率的に形成させ ることが鍵となり、この点がプロセス設計の出発点 となります。以下、個別のプロセスの概略を紹介し ながらこの点を{府敵していきたいと思います。 [アンモニアボランの熱分解副生物からの再生】 アンモニアボランを熱分解する場合、アンモニア ボラン 1分子中に含有される 3分子の水素のうち何 分子の水素が放出されるかは、処理温度や触媒の種 類によって異なってきます。これに伴い副生物の種 類も異なってきます。種々の副生物の中で、特に再 生フ。ロセスの原料として注目を集めている物質にポ リボラジレン(図1)があります。この物質は、比 較的低温で2分子以上の水素を発生するプロセスに おいて副生し、例えばニッケルカルベン錯体触媒を 使用して有機溶媒中でアンモニアボランを熱分解(
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で反応を行うことで、24h
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のポリボラジレンをアンモニアボランに変換可能で あることが明らかになっております。このプロセス においては、副生物が窒素ガスのみでありますので、 副生物もクリーンな物質であり、生成物の分離が比 較的容易になるという利点もあります。一方で、ヒ ドラジンを如何に低価格で大量生産するかというこ とが問題点として挙げられます[3]。 図3.ヒドラジンを利用するポリボラジレン(“BNH") からのアンモニアボラン再生プロセス[3] 【アンモニアボランからの加溶媒分解副生物からの 再生] アンモニアボランを水などの溶媒により加溶媒分 解した場合、熱力学的に非常に安定なホウ素副酸素結 -75 若い研究者の声 合が形成されるため、アンモニアボランの熱分解生 成物からの再生と比較して、再生に大きなエネルギ ーを要します。これより、熱分解副生物からの再生 よりも難しいプロセスであることが指摘されていま す。加溶媒分解副生物からの再生プロセスとして、 図4に示すようなアンモニアボランのメタノリシス 反応生成物から還元剤であるリチウムアラネートを 塩化アンモニウム存在下で反応させるプロセスが報 告されています[5]。このプロセスでは、室温で反応 が進行し、3h
で65%、8h
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のメタノリシス反応 副生物がアンモニアボランに変換可能であることが 明 ら か に な っ て い ま す 。 こ の プ ロ セ ス で は 、 LiAl(OMe)4など副生する化合物をし1かに処理する かなどが問題となってきます。 MeC>H1
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しiAl(OMe)4 L凶IH4'"NH4CI 図4. アンモニアボランのメタノリシス反応を利用 するアンモニアボランの再生プロセス[5] 3. まとめ アンモニアボ、ランは、熱分解あるいは加溶媒分解 により比較的容易に水素発生する化合物で、ある一方 で、水素を化学的に貯蔵するので、水素吸蔵が困難 です。水素吸蔵の際、ホウ素-水素結合をいかに効率 よく形成させるかが鍵となり、この過程で重要な役 割を果たす還元剤にどのような化合物を選定するか がプロセス効率向上の鍵となります。プロセス効率 を向上させる潜在的な還元剤はまだまだ存在すると 考えられますので、今後も還元剤の探索が研究の主 流になると考えられます。加えて再生プロセスにお いて副生する物質についても目を向けることが重要 であり、より安全で、クリーンな物質が副生する再生 プロセスを設計することも重要であると考えられま す。一方、米エネルギー省は、錯体系の水素貯蔵材 料で実用間近にあった水素化ホウ素ナトリウムを水 素貯蔵材料として扱うことを見直すという方針を打 ち出しており、その一因が再生プロセスの効率の低水素エネルギーシステムVo1.37,No.1 (2012)
さだとされています。アンモニアボランを水素貯蔵 材料として実用化するためには、再生プロセスの確 立が急がれるところです。
参考文献
1.R.J. Keaton, J.M. Blacquiere and R.T. Baker;J.Am. Chem. Soc.129, 1844圃1845(2007).
2. B.L. Davis, D.A. Dixon, E.B. Garner, J.C. Gordon, M.H. Matus, B. Scott and F.H. Stephens;Angew.
Chem. Int. Ed.48, 6812・6816(2009).
3. A.D. Sutton, A.K. Burrell, D.A. Dixon, E.B. Garner III, J.C. Gordon, T.Nakagawa, K.C. Ott, J. P. Robinson, M. Vasiliu; Sciencθ331, 1426・1429 (2011).
4.R.Shrestha, B. Davis, H. Diyabalanage, A. Burrell, N. Henson, M. Inbody, K. John, T.Semelsberger, F. Stephens, J. Gordon, K. Ott, A. Sutton and K. Bhattacharyya;“Chemical Hydrogen Storage R&D at Los Alamos National Laboratory," DOE Hydrogen Program Review, 2009
(www .hydrogen.energy .gov/pdfs/review09/st_1 7 _bu rrell. pdf)..
5. P. V. Ramachandran and P.D. Gagare;Inorg. Chem. 46, 7810・7817(2007).