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日本金属学会誌第 76 巻第 4 号 (2012) Mg Zn (Y, Gd) 鋳物のミクロ構造形成 岡本和孝 1 高橋智一 2 佐々木正登 2 1 株式会社日立製作所日立研究所 2 日立オートモーティブシステムズ株式会社 J. Japan Inst. Metals, Vol. 76,

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MgZn(Y, Gd)鋳物のミクロ構造形成

岡 本 和 孝

1

高 橋 智 一

2

佐々木正登

2

1株式会社日立製作所日立研究所

2日立オートモーティブシステムズ株式会社

J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 4 (2012), pp. 234239  2012 The Japan Institute of Metals

Microstructure Evolution in MgZn(Y, Gd) Casts

Kazutaka Okamoto1, Norikazu Takahashi2and Masato Sasaki2

1Hitachi Research Laboratory, Hitachi Ltd., Hitachi 3191292 2Hitachi Automotive Systems Ltd., Atsugi 2438510

Commercial magnesium alloys have a great potential for structural applications in automotive due to their significant weight saving. However, they have poor creep resistance at temperature over 125°C, thus making them inadequate for power train appli-cations such as engine pistons, which are operated at temperature up to 300°C. Recently, creep resistant magnesium alloys with rareearth elements and zinc have been developed and it is suggested that Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr alloy is promising as a candi-date material for the engine piston application. However, the detail strengthening mechanism is not clear, hence the detail micro-structure of MgZn(Y, Gd) alloys was investigated in this paper. Gravity casting was performed with MgZn(Y, Gd)Zr alloy, followed by T6 treatment. In the as cast condition, both Mg12(Y, Gd)Zn and Mg24(Y, Gd)5were observed at the aMg grain

boundaries, while metastable Mg24(Y, Gd)5was dissolved into aMg matrix and surplus (Y, Gd) and Zn were precipitated on the

Mg12(Y, Gd)Zn via solution heat treatment at 535°C. After the aging treatment for 24 hours at 225°C, fine b′precipitates were

formed in aMg matrix.

(Received November 22, 2011; Accepted January 10, 2012; Published April 1, 2012)

Keywords: magnesium, piston, microstructure, long period stacking order, precipitate

1. 緒 言

耐クリープ性マグネシウム合金に関する研究は,固溶体強 化,析出強化および分散強化のいずれかのアプローチによる 転位上昇運動や結晶粒界すべりの抑制に分類される.これま

でに MgAlCa(Sr)合金(AX(J)),MgAlRE 合金(AE),

MgAlSr 合金(AJ),MgRE 合金,MgYNd 合金(WE),

MgAlCaRESrZn 合金(MRI153)など様々なマグネシウ ム合金が自動車メーカやマグネシウムメーカから提案されて いる.中でも Y および Gd などの希土類(RE: Rare Earth)

元素は,高温にてaMg 中に最大 12.5 massおよび 23.5

massと顕著に固溶するが,室温での固溶限は非常に低い ため,過飽和固溶体から低温時効により析出物が形成され

る.また固溶 RE 元素はaMg の積層欠陥エネルギー(SFE:

Stacking Fault Energy)を低下させ,底面転位を部分転位に 分解するため転位上昇が抑制され,引張強度やクリープ強度

が向上する1,2).さらに Zn の添加は時効析出挙動を促進し,

底面析出物3)や X 相4,5)を形成して,優れた耐力や強度を発

現することが報告されている.特に後者は,急冷凝固粉末冶 金(RS P/M: Rapid Solidified Powder Metallurgy)プロセス

で作製されたナノ結晶 Mg97Zn1Y2(at)でも観察され6),長

周期積層構造(LPSO: Long Period Stacking Order)型 Mg

ZnRE 合金として注目を集めている7,8)

MgZnRE 合金は,RE 元素によるミクロ組織形成機構 に基づき,凝固時に 18RLPSO が形成される Type合金 (RE=Y, Dy, Ho, Er, Tm)と,凝固時には長周期積層構造は

形成されず,高温熱処理により過飽和aMg 固溶体から 14HLPSO が形成される Type合金(RE=Gd, Tb)の 2 タイプに分類される9,10).また塑性変形を付与することで, a Mg 結 晶 粒 の 微 細 化 と LPSO 内 の キ ン ク バ ン ド ( Kink band)の形成で,機械的性質をさらに向上することが可能で ある11).熱処理時のミクロ組織形成に関しては,MgGd YZr 系鋳造合金への Zn 添加効果について検討され,0.3~ 1.0 atZn を含む MgGdYZr 合金に 500°C での溶体化処 理 と 225 °C で の 時 効 処 理 を 施 す と ,a Mg 粒 界 に 14H  LPSO が観察されるとともに,準安定なb′相が析出し,室 温 で の 引 張 強 度 が 400 MPa 以 上 と な る と 報 告 さ れ て い る12,13).また 225°C での時効処理過程におけるミクロ組織形 成機構は,SSSS(過飽和固溶体)→b″(D019)→b′(bco: base

centered orthorhombic)→b1(fcc: face centered cubic)と報告

されている14).さらには透過電子顕微鏡の技術を駆使した LPSO の同定15)や,MgRE 過飽和固溶体からの時効析出物 のミクロ構造の再検証16)など,ミクロ組織形成機構が明ら かにされつつある. 著者ら17)は,Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr(mass)(以下, 本合金と称する)のエンジンピストンへの適用性を検証する ため,大気溶解,重力鋳造および T6 処理したピストン冠面

(2)

部の強度評価を行った.その結果,本合金はピストン設計上 重要な材料特性である高温強度(引張強度,クリープ強度, 疲労強度)が現行アルミニウム合金(AC8AT6)より優れ, ピストン適用に際して改めて強度設計を行う必要がなく,技 術的には極めて有望な合金素材であることを示した.実用化 に向けた解決すべき課題として,インゴット製造,溶湯処理 方法や鋳造法案などの鋳造プロセス,低摩擦性や耐摩耗性の 表面処理プロセスなどが重要であるが,これらはいずれもマ グネシウム合金に関わる一般的な課題であり,既存の技術を 応用することで解決の見込みが得られている.むしろ熱処理 に伴うミクロ組織形成の理解,変形メカニズムとミクロ組織 の関係の理解など,本合金の本質的な解明はピストン設計者 には大変重要であると同時に,学術的にも興味深い. そこで本研究では,Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr 鋳物を対象 に,耐熱性および強度を担う LPSO および時効析出物など のミクロ構造の形成を改めて詳細に評価することを目的とし た.重力鋳造にて作製したピストン冠面から試料を採取し, 鋳造材,溶体化処理材,および時効処理材のミクロ構造を同 定し,組織形成機構を考察した.併せて,本合金を用いたエ ンジンピストンを試作した. 2. 実 験 方 法 2.1 供試材作製 本研究では,実際に大気溶解・鋳造したピストンから供試 材 を 得 た . ま ず Mg 2Zn 10Y 5Gd 0.5Zr ( 固 相 線 温 度 542°C)17)のインゴット 20 kg を,電気炉内で鉄坩堝を用い て 大気溶解し,溶湯加熱 温度 720°C で保持し た.このと

き,フラックス(立川鋳造溶剤工業所,Tsubasa flux SK No. 101)を用いて溶湯酸化を防止した.鋳型は実験用ピストン 金型を用い,鋳型表面にはアルミニウム用塗型を吹きつけ, 溶湯の凝着を防止した.なお金型温度は参照熱電対で測定し, 280°C に予熱した.手汲みにより鋳込み時間 5 s として全 14 チャージを重力鋳造した.熱処理条件は,溶体化処理 535± 5°C, 16 h→水冷(水温 55±10°C),時効処理 225±5°C, 24 h →大気中放冷(以下,T6 処理と称する)を標準とした. 得られた鋳物のうち,# 4,9,14 の湯道部より採取した試料 を 高 周 波 誘 導 結 合 プ ラ ズ マ 発 光 分 光 分 析 法 ( ICP AES: Inductively Couples Plasma Atomic Emission Spectroscopy) で化学組成分析したところ,Mg2.1±0.1Zn10.8±0.2Y 4.5±0.1Gd0.41Zr(mass)であり,溶湯を保持する間の化 学組成変化(Fading)はほとんど見られなかった. 目視による外観検査で,スカート部やピン孔部近傍に湯回 り不良や湯境いが確認された.一般にマグネシウムはアルミ ニウムに比べて凝固潜熱が小さいため,凝固時間が短い.ま た鋳物表面には酸化に伴う変色が見られた.本合金は希土類 元素を多く含むため,それらの元素が溶湯表面で顕著に酸化 するため,湯流れ性を低下しているものと考えられる.した がってミクロ組織の観察には,これら鋳造欠陥の発生が見ら れなかったピストンの冠面部より供試材を切出した. 2.2 時効硬化曲線の測定 本合金の時効硬化レスポンスを確認するため,溶体化処理 (535±5°C, 16 h→水冷)の後,225, 250, 300°C にて最大 32 時間保持する時効処理を施し,マイクロビッカース硬度計を 用いて硬さ変化を測定した.押込み荷重を 9.8N とし,測定 点 5 点の平均値を求めた.なお鋳造材,および溶体化処理 材の硬さも併せて測定した. 2.3 ミクロ組織構造の観察 鋳造材および T6 処理材のミクロ組織観察を行った.試料 を切出した後,エメリー紙# 1200 まで,およびダイヤモン ド研磨した後,5ナイタール液にてエッチングして,光学 顕微鏡およびエネルギー分散型 X 線分析(EDS: Energy Dis-persive Xray Spectrometer, Oxford INCA)を装着した走査 型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope, Hitachi

SEFESEM SU70)で観察した.また,鋳造材,および溶

体化処理材の試料を広角 X 線回折法(XRD: Xray Diffrac-tion, Rigaku RU200BH)で分析した.得られたスペクトル を,国際回折データセンタ(ICDD: Int'l Centre for Diffrac-tion Data)の発行する X 線回折標準データ集を用いてプロフ ァイルフィッティングにより解析し,主要ピークの積分強度 比を求め,溶体化処理時の相変化を調べた.

T6 処理後の LPSO 相および析出物の詳細観察を,透過型

電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope,

Hitachi HF2000)および高角度散乱暗視野走査型透過電子

顕微鏡(HAADFSTEM: High Angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscope, Hitachi HD 2700)で観察した.TEM および STEM は,SEM 観察で予 め決めた部位から結晶方位を確認して観察試料を切出し, FIB(Focused Ion Beam)加工して観察領域を作製した.明 視野像,暗視野像,回折像などの観察と EDS 分析を行った. 3. 実験結果および考察 3.1 熱処理に伴う硬さ変化 Fig. 1に,本合金の時効硬化曲線を示す.鋳造材,および 溶体化処理材の硬さは 92~93 Hv で同等である.各温度で 時効処理した場合,ピーク硬さは処理温度とともに短時間側 に低下する.225°C で処理した場合が最もレスポンスに優れ, 4 時間保持後にほぼピーク硬さ 130 Hv を示した.その後, プラトー領域が保持時間全域にわたって見られ,32 時間保 持後も 128 Hv とわずかに低下した程度であった. 3.2 溶体化処理に伴うミクロ組織変化 Fig. 2 に,鋳造材および T6 処理材の二次電子像を示す. 鋳造材のミクロ組織は,aMg の周囲に網目状に化合物が分 散する.T6 処理材では,溶体化処理により網目状部位の一 部が消失し,aMg 粒界が明瞭に観察されると同時に,残存 した粒界相は櫛歯状を呈した.なおaMg 粒径は,およそ 100~150mm である.図中,矢印部の EDS 定量分析結果を Table 1 に示す.鋳造材では,aMg(分析点 1),粒界相1

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Fig. 1 Age hardening response of Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr alloy.

Fig. 2 Secondary electron images of Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr alloy, (a) ascast and (b) T6.

Fig. 3 Xray diffractions of Mg2Zn10Y5Gd0.5Zr alloy.

Table 1 Chemical composition of each points analyzed by

SEMEDS. (at)

Point No. Mg Zn Y Gd Zr Note

asCast 1 97.1 0.05 2.30 0.17 0.39 aMg 2 85.6 5.13 7.48 0.26 1.57 MgZn(Y, Gd) 3 84.6 1.04 11.7 0.19 2.51 Mg(Y, Gd) 4 10.1 0.59 47.7 38.6 2.99 (Y, Gd)Zr T6 1 95.1 0.11 3.61 0.83 0.36 aMg 2 84.5 5.84 8.13 1.27 0.23 MgZn(Y, Gd) 3 84.7 0.10 12.41 2.34 0.41 Mg(Y, Gd) (分析点 2),粒界相2(分析点 3)の三相および介在物(分析 点 4)が観察された.aMg の周囲に網目状に分散する化合 物からは,(Y, Gd),Zr および Zn が検出される.詳細に観 察すると,それらは Zn 量が 5 atと比較的高い粒界相1 と, Zn が 1 at程度に低い粒界相2 の 2 種類からなる. 一方,T6 処理材では,aMg(分析点 1)と粒界相(分析点 2)の二相が主に観察された.aMg の化学組成は概ね本合金 組成と同様であり,溶体化処理により(Y, Gd)が過飽和に固 溶したものと考えられる.櫛歯状の粒界相には,Zn および (Y, Gd)が多く含有されている.また粒状の相(分析点 3)は Mg(Y, Gd)であり,鋳造材で見られた粒界相2 が溶体化 処理後にも固溶しきらず残存したものと考えられる. Fig. 3 に,鋳造材,および溶体化処理材の XRD スペクト ルを示す.鋳造材では,aMg, Mg12YZn(X 相),および

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Table 2 Integrated intensity ratio of each phases. ()

aMg Mg12YZn Mg24Y5

asCast 76 6 18

asSHT 87 9 4

Fig. 4 TEM bright images and corresponding selected area electron diffraction pattern of (a) aMg, (b) LPSO and (c) dispersoid. Table 3 Chemical composition of each points analyzed by

TEMEDS. (at)

Point No. Mg Zn Y Gd Note 1 96.3 0.4 2.1 1.1 aMg 2 84.4 7.7 5.7 2.2 LPSO: MgZn(Y, Gd) 3 67.8 5.1 22.3 4.7 Mg24(Y, Gd)5 Mg24Y5の 三 相 が 観 察 さ れ た . 溶 体 化 処 理 に よ り Mg24Y5 ピーク強度が顕著に低下し,主要ピークはaMg,および Mg12YZn となった.なおaMg のピークはやや低角度側で 検出された.Luo ら4)は,Mg1.2Zn7.2Y0.48Zr(mass) 鋳造材のミクロ構造を XRD や TEMEDS で同定し,本合 金の場合と同様にaMg,その粒界に Mg12YZn(X 相),お よび粒内に Mg24Y5の三相が存在することを報告している.

Table 2 にaMg 相の(101)面,Mg24Y5相の(411)面,2u=

35.5°に観察された Mg12YZn 相の回折線強度からプロファイ ルフィッティングして求めた各相の積分強度比を示す. SEMEDS の結果と併せて考えると,凝固時に形成された 2 種類の粒界相のうち,粒界相1 は Mg12YZn(X 相),結晶 相2 は Mg24Y5であり,ともに一部 Gd を含有する.固相線 温度直下の 535°C と高温での溶体化処理において,熱的に 不安定な Mg24Y5は平衡状態図に従い aMg に固溶し,a Mg 中の Y 濃度はほぼ固溶限の 3.6 atとなると同時に,余 剰の(Y, Gd)は Zn とともに熱的安定相である Mg12YZn(X 相)と母相の界面に櫛歯状に析出したものと考えられる. 3.3 X相構造の同定 Fig. 4 に,T6 処理材の TEM 明視野像および回折像を示 す.また図中,矢印部の EDS 定量分析結果を Table 3 に示 す.なおいずれの分析点においても Zr は検出されなかった ため,それを除く 4 元素で化学組成を定量した.Fig. 4(a) は aMg であり,(Y, Gd)が過飽和に固溶している.Fig. 4

(b)はaMg に対して c 軸方向の格子定数が大きく変化した ものであり,MgZn(Y, Gd)からなる LPSO と思われる. なお Fig. 4(c)は Mg24Y5構造であり,大きさ 50 nm 程度で, Y を 22 atと多く含有することから,鋳造時に形成された 粒界相2 が固溶しきらずに残存した Mg24(Y, Gd)5と考え られる.

Fig. 5 に LPSO の HAADFSTEM 像と[0001]方向のコ ントラストプロファイルを示す.主に[0001]方向に 6 層ご とに積層欠陥(SF: Stacking Fault)がある 18R 構造が観察さ れ , 一 部 7 層 ご と に 積 層 欠 陥 が あ る 部 位 も 見 ら れ た . HAADFSTEM 像では輝点の位置が原子コラムの位置に対 応し,またその輝度は平均原子番号のおよそ 2 乗に比例す る.例えば,18R 構造の場合,Fig. 6 に示すように積層欠陥 の周囲 4 層,特に中心 2 層は輝度が高く,Mg よりも原子番 号の高い(Y, Gd)などが濃縮している.なお希土類元素およ び遷移元素である(Y, Gd)と Zn の区別がつかないため, (0001)底面内での原子配列までは確認できなかった. 当初 LPSO は,急冷凝固粉末冶金プロセスで作製された ナ ノ 結 晶 Mg97Zn1Y2を 温 間 押 出 し し た 材 料 で 観 察 さ れ た7). す な わ ち Zn お よ び Y を 過 飽 和 固 溶 し たa Mg が 300°C で塑性加工されると,底面 6 層ごとに積層欠陥が導入 さ れ , 溶 質 元 素 の Zn, Y が そ の 両 隣 の 底 面 に 拡 散 し た Chemical orderと考えられていた.ところが銅鋳型を用い て鋳造された Mg97Zn1Y2においても,aMg 粒界に LPSO が第二相として観察された8).鋳造材では 18R 構造であるが, 500°C, 5 h の熱処理で 14H 構造に変態し,それぞれ温度に 応じた安定相と考えられた.また Luo ら5)は Mg1.2Zn 7.2Y0.48Zr(mass)に形成された Mg12YZn(X 相)の詳細 構造を報告している.一方,高周波溶解された Mg97Zn1Gd2 の 場 合 , 凝 固 ま ま で は LPSO は 観 察 さ れ な い . し か し 520°C, 2 h の溶体化処理により Zn および Gd をaMg 中に 過飽和固溶することで積層欠陥エネルギーが低下し,その後, 300°C 以上で保持することで,まず積層欠陥が形成され,続 き 14H 構造が観察された10).本合金では,凝固時にaMg 粒 界 に LPSO ( Mg12YZn ) お よ び Mg24Y5が 形 成 さ れ た . 535 °C と 高 温 の 熱 処 理 を 施 す こ と で , 熱 的 に 不 安 定 な

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Fig. 5 HAADFSTEM images and contrast profiles of LPSO.

Fig. 6 HAADFSTEM images and corresponding atomic column. Mg24Y5はaMg に過飽和固溶して積層欠陥エネルギーを低 下させる18)とともに,余剰の(Y, Gd)は Zn とともに熱的安 定相である LPSO 相とa 相の界面に析出したものと考えら れる.鋳造材の LPSO 構造の同定は行っていないが,当初 18R 構造であったなかに,溶体化処理により 14H 構造が一 部形成されたと思われる.また 18R 構造において,積層欠 陥の周囲 4 層,特に中心 2 層には,(Y, Gd)や Zn の濃縮が 見られた.(Y, Gd)の原子半径 0.18 nm および Zn の原子半 径 0.13 nm は,それぞれ Mg の原子半径 0.16 nm に対して 大および小であり,(Y, Gd)と Zn が同時に底面に濃化析出 することで,原子半径差に伴う歪場を緩和するためと考えら れている.さらに MgAlGd 合金に形成された LPSO にお ける Gd および Al 原子の規則配列構造に関する HAADF STEM 解析から,Gd 濃縮 4 重層内では Gd 原子と Al 原子 が L12型 構造と同様の原子配列をもつクラスター を形成 し,それらが長周期にわたって規則配列していることが報告 されている15).本合金では,希土類元素と遷移元素である (Y, Gd)と Zn の区別がつかないため,(0001)底面内での原 子配列までは確認できていない. 3.4 時効析出物の同定 T6 処理後[0001]a晶帯軸から TEM 観察し,時効処理に よりaMg 中に生成・微細分散した粒内析出物の明視野像 および回折像を Fig. 7 に示す.明視野像からは,大きさ数 十 nm の析出物によると思われるコントラストが観察され る.また回折像からはaMg 中に微細分散する析出物の回 折スポットが明瞭に観察される. Nishijima ら19,20)は , Mg 5 at  Gd 合 金 を 溶 体 化 処 理 (500°C, 6 h→水冷)した後,200°C にて最大 100 時間保持す る時効処理を施し,析出過程を詳細に調査した.時効初期段 階では,Mg 格子点を置換した Gd 原子が短範囲規則配列を 取り,またb′(Mg7Gd 型構造)の核が形成される.時効時間 とともに,それが規則化・成長し,長周期の規則構造である b′相(Mg7Gd)へと構造変化する.また Mg2 atY 合金を 200°C で時効処理して形成されるb′相(Mg7Y)とは,格子ミ スフィットの大小により,析出形態が前者では楕円状,後者 では直線状と異なることを報告している21).本合金に見ら れる析出物の形態は,比較的楕円状であり,b′相は Mg7Gd 型構造と考えられる.なお本合金では,Fig. 1 に示した時効 硬化曲線から,最も硬度上昇の著しい 225°C を時効処理温 度に選択した.しかし明瞭なピーク硬さは見られず,むしろ プラトー領域が保持時間全域にわたって見られたため,必ず しも本時効処理条件 225°C, 24 h ではb′が十分に析出しきっ ていない可能性があり,より長時間の時効処理に伴う析出物 形態の変化を知る必要がある. 例えばエンジンピストンのように実機環境下で高温保持さ

(6)

Fig. 7 TEM bright image and corresponding selected area electron diffraction pattern of fine precipitates in aMg.

Fig. 8 Trial manufacturing of magnesium cast piston.

れれば,aMg 中に微細分散する析出物の粗大化が懸念され る.現段階では,本合金の高温強度は LPSO が担っており, aMg 中の微細析出物は,例えば切削性や耐摩耗性を担保す るものと考えている.しかし Fig. 1 の時効硬化曲線から, 例えば 250°C に保持した場合も,225°C の場合ほどではない が硬化が認められる.Gd を含む合金の場合,250°C に保持 した場合,b 相に加えて積層欠陥が導入されることが報告さ れており9),時効処理条件とミクロ組織形成の関係を改めて 詳細に検討する必要がある. 3.5 ピストン試作 Fig. 8 に,世界最軽量と低フリクションを目指したマグネ シウムピストン試作品の外観を示す.マグネシウム合金の適 用以外にも,スカート部と 2nd/3rd リング溝には耐摩耗性 向 上 の た め プ ラ ズ マ 酸 化 処 理 ( PEO: Plasma Electrolytic Oxidation)を適用し,さらにスカート部には低フリクション 化を目的に 2 層構造固体潤滑被膜22)を採用した.なおトッ プリングにはニレジスト鋳鉄リングキャリアを鋳包み,また 黄銅製ピストンピンブッシュを圧入した.トータルの質量 は,アルミニウム製ピストンの 553.7 g に対し,マグネシウ ム製ピストンではアルミニウム製ピストンにはないピストン ピンブッシュを採用したため 461.5 g であり,質量低減効果 は 17と素材の密度差から期待される値にはやや及ばなか った.現在,本ピストンはエンジンベンチを用いた実機耐久 試験中である. 4. 結 言 耐クリープ性マグネシウム合金鋳物ピストンを対象に,耐 熱性および強度を担う長周期積層構造(LPSO)および微細析 出物のミクロ構造を改めて詳細に観察し,以下の知見を得た.  凝固時には,aMg の周囲に網目状に Mg12(Y, Gd)Zn (X 相)および Mg24(Y, Gd)5の化合物が形成される.  溶体化処理により,熱的に不安定な Mg24(Y, Gd)5は 分解してaMg に過飽和固溶するとともに,余剰の(Y, Gd) は Zn とともに熱的安定相である Mg12(Y, Gd)Zn(X 相)上 に櫛歯状に析出し成長する.  Mg12(Y, Gd)Zn(X 相)の長周期積層構造(LPSO)は 18R 構造であり,一部 14H 構造が一部見られ,積層欠陥の 周囲 4 層,特に中心 2 層には,(Y, Gd)や Zn の濃縮が見ら れる.  時効処理により,aMg 粒内には大きさ数十 nm と微 細な析出物 b′が形成される. 文 献

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9) M. Yamasaki, T. Anan, S. Yoshimoto and Y. Kawamura: Scr. Mater.53(2005) 799803.

10) M. Yamasaki, M. Sasaki, M. Nishijima, K. Hiraga and Y. Kawamura: Acta Mater.55(2007) 67986805.

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13) K. Yamada, Y. Okubo, S. Kamado and Y. Kojima: Advanced Materials Research1112(2006) 417420.

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15) H. Yokobayashi, K. Kishida, H. Inui, M. Yamasaki and Y. Kawamura: Acta Mater.59(2011) 72877299.

16) K. Hiraga and M. Nishijima: Materia Japan49(2010) 161169. 17) K. Okamoto, M. Sasaki, N. Takahashi, Q. Wang, Y. Gao, D. Yin and C. Chen: Magnesium Technology 2011, TMS Annual Meeting, (2011) pp. 7378.

18) M. Suzuki, T. Kitamura, J. Koike and K. Maruyama: Scr. Mater.48(2003) 9971002.

19) M. Nishijima and K. Hiraga: Mater. Trans.48(2007) 1015. 20) M. Nishijima, K. Hiraga, M. Yamasaki and Y. Kawamura:

Mater. Trans.47(2006) 20192112.

21) M. Nishijima, K. Yubata and K. Hiraga: Mater. Trans. 48 (2007) 8487.

22) M. Sasaki, N. Takahashi, T. Sato and S. Sue: Proc. of JSAE Annual Congress (Spring) 8210, (2010) pp. 710.

Fig. 1 Age hardening response of Mg 2Zn 10Y 5Gd 0.5Zr alloy.
Table 2 Integrated intensity ratio of each phases.
Fig. 5 HAADF STEM images and contrast profiles of LPSO.
Fig. 7 TEM bright image and corresponding selected area electron diffraction pattern of fine precipitates in a Mg.

参照

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