小腸閉塞のマネジメント
長崎医療センター 総合診療科 PGY3 阿部千鶴 監修 森隆浩、森英毅 分野:消化器 テーマ:治療 Clinical Question 2018年12月3日症例;70歳代 女性
【主訴】腹痛、嘔吐 【現病歴】 受診3日前 就寝中に突然腹痛が出現した。 受診2日前 食後に嘔吐を認め、近医の腹部単純レントゲンで 便貯留著明であり、浣腸で排便を認めた。 受診1日前 夕食後に嘔吐あり。以降絶食で水分のみ摂取していた。 受診当日 腹痛は持続し2日間排便、排ガス認めず当科を受診した。【既往歴】 10代 虫垂炎 虫垂切除術後 5年前 早期直腸・S状結腸癌術後(腹腔鏡下低位前方切除) 【生活歴】飲酒:なし 喫煙:Never smoker 【アレルギー】食品、薬剤なし 【内服薬】ビフィズス菌製剤散 3g /day ラフチジン 10g /day
入院時所見
【バイタル】 体温:36.8℃、血圧:153/69mmHg、脈拍:72回/分、SpO2:98%(室内気) 【身体所見】 頭部:眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄染なし 胸部:呼吸音:清 心音:整、雑音なし 腹部:軽度膨隆、軟、腸蠕動音低下、心窩部・右下腹部に圧痛あり、反跳痛なし 四肢:浮腫なし 【検査所見】 血算;WBC 5600/μL、CRP<0.14mg/dL 静脈血液ガス;pH 7.387, Pco2 48mmHg, Po2 23.4mmHg, HCO3 28.2mmoL/L, Lac 15mg/dL【単純CT】 回腸末端より口側の小腸の拡張あり closed loopなし、腹水少量あり 【腹部レントゲン】 ケルクリング鄒襞・ 二ボーあり
画像所見
【診断】
小腸閉塞
Small Bowel Obstruction, SBO
受診後、嘔気・腹痛は軽快傾向で 画像上、絞扼所見はなさそう・・ 保存的にみることができるかな?
SBOのマネジメントは?
• 手術適応の判断
虚血を示唆する画像所見・臨床予測モデル
• 胃管 vs イレウス管
• 保存的加療は何日まで待てるか
• ガストログラフィンの効果
Clinical Question
SBOのマネジメントは?
• 手術適応の判断
虚血を示唆する画像所見・臨床予測モデル
• 胃管 vs イレウス管
• 保存的加療は何日まで待てるか
• ガストログラフィンの効果
Clinical Question
虚血を示唆する画像所見(CTスキャン)
1. 腸管壁造影効果の減弱または欠如(LR+11) 2. 腸管壁の肥厚 3. 腸間膜血管の拡張/うっ滞 4. 腸間膜の浸潤像/浮腫 5. 腹水(LR-0.16) 6. 腸間膜血管の異常走行 7. Beak sign8. 小腸便サイン(small bowel feces sign)の欠如
虚血を示唆する画像所見
Closed loop Whirl sign Beak sign わかる!役立つ!消化管の画像診断 レジデント2009/5 vol.2(5)腸管虚血ー手術移行に関する臨床予測モデル
✓痛みが4日以上続く場合 ✓筋性防御がある場合 ✓CRP>7.5mg /dL ✓WBC>10000/μL ✓CTで腹水>500mL ✓CTで腸管壁造影効果の減弱 3項目以上当てはまる場合…感度 67.7%、特異度 90.8%入院後経過
入院当日 血液検査で炎症反応上昇なし、画像上も虚血や絞扼を疑う所見なく 絶食、補液管理の方針とした。 入院翌日 腹痛改善せず、排ガスなく経過。 腹部単純レントゲンで腸管拡張の増悪あり。 Opeは避けたい・・ 胃管もしくはイレウス管挿入で 腸管の減圧を図ろう!入院後経過
その後イレウス管を挿入して経過を見たが、
SBOのマネジメントは?
• 手術適応の判断
虚血を示唆する画像所見・臨床予測モデル
• 胃管 vs イレウス管
• 保存的加療は何日まで待てるか
• ガストログラフィンの効果
Clinical Question
胃管 vs イレウス管(2017年、RCT)
イレウス管で
外科手術移行は減る
という結論
時は2018年、胃管 vs イレウス管
系統的レビュー・メタ分析
Dong et al. Medicine (2018) 97:36
2017年のRCTも含めた系統的レビュー・メタ分析
イレウス管が胃管より優れているとは必ずしも言いきれない。
(コスト、手技に伴う合併症を考えるとまずは胃管で経過をみる方がよいかもしれない。) 今後更なる大規模な追加研究が必要
P Small bowel obstraction
I nasointestinal tubes(NITs)
C nasogastric tubes(NGTs) O 治療効果;手術に移行しなかった症例 手術に移行しなかった症例 NITs;56.4%、NGTs;51.8% オッズ比;1.79 95%信頼区間:[0.55, 5.84]→NITとNGTで有意差なし I2=93%と異質性が大きい 結果の統合は難しい P3 Table 1
SBOのマネジメントは?
• 手術適応の判断
虚血を示唆する画像所見・臨床予測モデル
• 胃管 vs イレウス管
• 保存的加療は何日まで待てるか
• ガストログラフィンの効果
Clinical Question
絞扼・虚血所見はないけれど。
どのくらい保存的に待てるのか?
• 現時点でどの程度の期間、保存的に経過観察すべきか、 根拠となりうるRCT等の質の高い研究報告はない。 • 4日以上経過した場合の手術治療は予後悪化と関連したとの報告 (観察研究)がある。 • エキスパートオピニオンとして3-5日との記載がある。 Eur J Surg. 2002; 168(8–9):475–81.The journal of trauma and acute care surgery. 2013;74(1):181-7; discussion 7-9. J Trauma Acute Care Surg. 2014;76(6): 1367–72.
2017 update of the evidence-based guidelines from the world society of emergency surgery ASBO working group. World journal of emergency surgery : WJES. 2018;13:24.
SBOのマネジメントは?
• 手術適応の判断
虚血を示唆する画像所見・臨床予測モデル
• 胃管 vs イレウス管
• 保存的加療は何日まで待てるか
• ガストログラフィンの効果
Clinical Question
ガストログラフィンの効果
虚血なし、非緊急性SBO →ガストログラフィンチャレンジ! 【方法】 胃減圧、補液の4時間後、ガストログラフィン約100mLを胃管から 注入しクランプ。8-12時間後に腹部レントゲンを撮像する。 【診断】 結腸まで造影剤が達していれば手術の必要なし (感度 97%、特異度 96%) 【治療】 入院期間の短縮;-1.83日(95%CI -2.21日〜-1.45日) 閉塞解除や手術移行、絞扼や切除、合併症率、死亡率は差なしCeresoli M, et al. Am. J. Surg. (2016) 211: 1114–25 ANZ J Surg 88 (2018) 1117–1122
https://pharma-navi.bayer.jp/products/p roductdetail.php?cd=86