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一般演題 ポスター

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Academic year: 2021

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一般演題 ポスター1

P1-1

Zenker 憩室の一切除例

大澤正人,竹長真紀,権 英寿,中本光春

兵庫県立姫路循環器病センター 外科 症例は 77 才女性.既往歴で特記すべきこと無し.現病歴では,10 年前から食事 がのどに詰まることがたまにあるも放置.1 年前に胃内視鏡にて頚部食道の憩室 を指摘されていたが,様子観察となっていた.1 週前から食事時の嚥下困難と咳 が強くなり,近医受診.CT,UGI,上部消化管内視鏡施行され,φ3cm の頚部食 道憩室に残さの貯留あり,症状の原因であると判断された.紹介にて当院受診. Zenker 憩室による症状と判断し,全身麻酔下に憩室切除を施行した.至適切除 とするため,術中内視鏡を併用し,左頚部を胸鎖乳突筋内側縁に沿う約 7cm の 皮膚切開にて頚部食道を露出し,リニアステイプラーを用い横に切除し,縦に 筋層縫合を追加した.輪状咽頭筋が確認できれば切除予定ではあったが,確認 できなかったため憩室切除のみを施行した.術後経過は良好で,嚥下困難も消 失し術後約 2 週で退院した.(考察)頚部食道の憩室は,稀な疾患で症状があり 手術適応のある症例はさらに少ない.今回有症状の Zenker 憩室症に対して,切 除術をおこなったので文献的考察を加え報告したい. 一般演題 ポスター1

P1-2

Zenker 憩室術後,縫合不全をきたし保

存的に軽快した一切除例

田代圭太郎

1

,内山和久

1

,河合 英

1

,李 相雄

1

革島悟志

1

,田中 亮

1

,平松昌子

2 大阪医科大学 一般・消化器外科1,高槻赤十字病院 外科2 【背景】Zenker 憩室は咽頭食道移行部に発生する圧出性に生じる憩室であり,仮 性憩室と考えられている.食道憩室の発生頻度は全消化管憩室の中では約 1% と最も低く,食道憩室の中で Zenker 憩室の発生頻度は約 10% と稀な疾患であ る.今回,Zenker 憩室に対して手術を施行し術後縫合不全を来したが保存的に 軽快した一例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.【症例】症 例は 65 歳女性.平成 24 年 4 月頃より左頚部の違和感を自覚し,徐々に腫瘤の 増大を認め精査にて Zenker 憩室と診断され手術目的に紹介となった.平成 25 年 10 月 18 日,憩室切除術を施行されたが,切除にはリニアステープラーを使 用し輪状咽頭筋切開術を約 2cm 追加した.ステープルラインの閉鎖は施行しな かった.【経過】術翌日より食事経口摂取を開始したが,第 3 術後病日に 38 度 の発熱を認めた.食道造影検査を施行したが明らかな造影剤の漏出は認めなかっ た.しかし第 4 術後病日に施行した頚部造影 CT にて吻合部周囲の Air Leakage を認めたため術後縫合不全と診断した.抗生剤(DRPM0.5g×3!day)点滴投与 を開始し絶飲食管理とした.第 5 術後病日より解熱し,以降炎症反応も陰転化 したため第 10 術後病日に抗生剤投与を中止し,食事摂取を再開した.以降,発 熱は認めず炎症反応も陰転化したまま経過し第 16 術後病日に軽快退院となっ た.【考察】Zenker 憩室に対する術式は憩室固定術,憩室切除術,輪状咽頭筋切 開術,内視鏡的経粘膜的輪状咽頭筋切開術などがある.また,術後合併症とし ては肺炎,憩室再発,術後狭窄,嗄声等が考えられる.本症例ではステープラー を使用し憩室切除術に術後再発予防として輪状咽頭筋切開を追加したが,輪状 咽頭筋切開の有用性については議論が分かれるところである.本症例で縫合不 全を来した原因としては,リニアステープラーは円柱状の食道に対し直線的に 切除するため,ステープルラインの両端は粘膜のみの Dog ear となり圧がかか り易くなったためと考えられた.【結語】Zenker 憩室に対し憩室切除後,縫合不 全を来たしたが保存的に軽快した一例を経験したので報告した.憩室切除にリ ニアステープラーを使用する際には圧がかかり易い両端は術後縫合不全の予防 として追加縫合するべきと考えられた. 一般演題 ポスター1

P1-3

食道憩室穿孔の 1 例

赤池英憲,河口賀彦,細村直弘,土屋雅人,

藤井秀樹

山梨大学医学部 第一外科 食道憩室穿孔の保存的加療中に食道気管支瘻を生じ,手術を施行した 1 例を経 験したので報告する.症例は 32 歳,女性.SLE の診断で近医にて,22 歳時から PSL の内服加療をしていた.30 歳時に胸部下部食道に右胸腔に突出する食道憩 室を指摘されている.今回,当院入院 3 週間前頃より微熱と胸痛が出現.入院 2 日前からは咳嗽と発熱を認めたため,通院中の近医を受診した.胸部単純レン トゲン検査にて右下肺の肺炎と診断され当院内科紹介入院.入院後に施行した CT 検査で以前から認めていた憩室の壁欠損と同部から連続した右胸腔内の食物 残渣の貯留を認めた.食道憩室の穿孔による胸腔内膿瘍と診断され当科転科と なった.発熱を認めるものの全身状態は良好で,CT 上膿瘍は完全に被包化され ていること,穿孔部が大きく憩室内にドレナージが期待できること,発症より 少なくとも 2 日以上経過していると考えられたことより,まずは保存的加療を 行う方針とした.体位ドレナージを行いつつ,絶飲食,IVH 管理で抗生剤投与 を行った.発熱,炎症反応は改善し,画像上も膿瘍腔は縮小した.その後,ほ ぼ膿瘍腔は消失したが,造影検査にて食道気管支瘻を認めた.手術の適応と考 えたが,本人の同意が得られず feeding tube を挿入し,経腸栄養にて保存的加 療を継続した.その後,食道気管支瘻は閉鎖され当科退院となった.しかし, 退院後約 1.5 カ月で症状の再燃を認め当科再入院.造影検査にて食道憩室気管支 瘻の再燃と診断し手術を行った.手術は右第 6 肋間で開胸した.胸腔内に癒着 を認めたが縦隔側以外は軽度の癒着であった.食道気管支瘻の部位を含め肺は 部分切除し,食道憩室は鋭的に切離した.切離部を 2 層に縫合閉鎖し肋間筋皮 弁で被覆し手術を終了した.術後経過は良好であり合併症なく退院となった. 病理検査にて,憩室は仮性憩室と診断された.食道憩室は,大部分が無症候に 経過するため外科的治療の対象となるものは少ないが,嚥下障害,疼痛などの 症状を有するもの,食道狭窄を伴い栄養障害を来すもの,憩室内に潰瘍を生じ たもの,悪性変化が疑われるものは手術適応とされる.特に,憩室内に潰瘍を 生じた場合は,穿孔発生の前段階であり手術の絶対適応と考えられている.本 症例では,憩室内の潰瘍は確認できていないが,初めて食道憩室を指摘された 際,憩室内に粘膜の発赤を認めていた.この部位が潰瘍となり今回の穿孔の原 因となった可能性が高いと考えられた.食道憩室穿孔の治療法の選択は食道破 裂に準じて考慮されるが,本症例のように保存的加療中に食道気管支瘻を生じ ることもあり,憩室内に炎症を認める場合には積極的な手術治療が必要だと考 えられた. 一般演題 ポスター1

P1-4

単孔式腹腔鏡下手術を施行し得た食道横

隔膜上憩室の一例

加藤航司,奥芝俊一,川原田 陽,鈴木善法,

山本和幸

KKR札幌医療センター斗南病院 外科 症例は 63 歳,女性.30 代より食道アカラシアと食道憩室症の治療歴をもつ.今 回,嚥下障害を認めたため手術適応として当科を紹介受診となる.術前検査で は横隔膜上に 50mm 大の食道憩室を認め,食道内圧検査では下部食道機能不全 の存在を否定できなかった.臍部単孔式腹腔鏡下に食道横隔膜上憩室切除, Heller"Dor 手術を施行した.手術時間は 285 分,出血量は少量であった.術後 経過は良好で,嚥下障害は改善,術後 9 日目に退院となった.臍部単孔式腹腔 鏡手術は憩室切除の際には食道長軸方向に沿って自動縫合器を挿入可能で,筋 層切開,噴門形成の際にも支障なく施術できた.本疾患は良性疾患であり,摘 出臓器も憩室のみで小さいため,単孔式手術の利点を最大限発揮できるものと 考えられた.手術手技の工夫を中心に若干の文献的考察を加え報告する.

(2)

一般演題 ポスター2

P2-1

腹腔鏡下に修復した胃体上部,脾臓,膵

尾部の脱出を伴う食道裂孔ヘルニアの一

太田光彦,楠元英次,杉山雅彦,木村和恵,

堤 敬文,坂口善久,楠本哲也,池尻公二

九州医療センター 消化器センター外科 臨床研究センター 【はじめに】食道裂孔ヘルニアは日常しばしば遭遇する疾患であるが,Rice らが 1997 年腹腔鏡下の逆流性食道炎に対する手術の有効率は開腹術と同等であると 報告して以来,海外だけでなく本邦においても食道裂孔ヘルニアに対して腹腔 鏡手術は標準術式となってきている.しかし複合型食道裂孔ヘルニアに対して 腹腔鏡手術を施行した報告は少数である.【症例】86 歳 女性.全身倦怠感,食 欲不振を主訴に前医受診後に,低 Na 血症の精査目的で当院紹介となった.精査 にて Syndrome of inappropriate antidiuretic hormone secretion(SIADH)と診 断され,原因の検索のため行った CT にて胃体上部,膵体尾部,脾臓が縦隔内へ 脱出する複合型食道裂孔ヘルニアを認めた.前医での CT と比較すると進行性に 増悪した複合型食道裂孔ヘルニアに対して腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を 施行した.【手術所見】開大した食道裂孔に胃,膵体尾部及び脾臓の脱出を認め たが,胃を愛護的に腹腔側に牽引したところいずれも癒着を認めず,腹腔内に 容易に還納された.還納された胃は穹窿部が食道後壁に巻き付くように左から 食道後方にねじれて癒着していた.ヘルニア門を縫合閉鎖しメッシュで補強, 術中内視鏡を併用しつつ Nissen 法により噴門形成術を施行した.最後に軸捻転 予防で胃前庭部前壁を腹壁に固定し手術を終了した.【術後経過】術後は逆流症 状なく術後 12 日目に自宅退院.術後 2 カ月再発を認めていない.【考察】食道 裂孔ヘルニアの手術は現在,腹腔鏡手術が一般的に行われている.しかし本症 例のように巨大な複合型食道裂孔ヘルニア症例においては,多くが開腹で施行 されている.1995 年以降で複合型で腹腔鏡手術が施行されたという報告は自験 例を含め 14 例報告されていた.脱出臓器はほとんどの場合大網や腸管で膵臓が 脱出していたのは自験例を含め 2 例のみで脾臓の脱出を認めて腹腔鏡手術が行 われたのは自験例だけであった.今回,巨大な複合型食道裂孔ヘルニアに対し て腹腔鏡下に修復術を行い,良好な結果を得た極めて稀な症例を経験したので 若干の文献的考察を行い報告する. 一般演題 ポスター2

P2-2

食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下修復

術の 2 例

三松謙司

1

,大井田尚継

1

,加納久雄

1

,天野定雄

2 社会保険横浜中央病院 外科1 日本大学医学部付属板橋病院 乳腺内分泌外科2 【目的】食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術が良い適応であった症例とヘ ルニア修復と逆流防止処置の Pit fall に陥った症例の 2 症例を経験したので報告 する.【症例】症例 1 : 82 歳,女性.食欲不振と誤嚥性肺炎で入院.摂食嚥下障 害と低栄養に対して経鼻経管栄養を開始したが肺炎を再発した.精査にて滑脱 型食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎と診断された.栄養管理目的に中心静脈カ テーテル留置による TPN が考慮された.しかし,洞不全症候群でペースメーカー が留置されており,リード感染が危惧されたため,腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア 修復術と PEG を施行した.逆流防止には Nissen Fundoplication を行い,ヘルニ ア門は Crural repair で閉鎖した.術中内視鏡と腹腔鏡の同時観察下に Pull 法に て PEG を行った.術後胸水貯留を認めたが軽快し,PEG からの栄養管理確立後 に転院となった.症例 2 : 82 歳,男性.頻回の嘔吐を主訴に受診し,精査にて Up-side!down stomach を呈した食道裂孔ヘルニアと診断された.手術は,腹腔鏡 下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した.逆流防止は前方噴門形成術を行い,ヘ ルニア門は PARITEX COMPOSITE MESH で閉鎖した.術後 3 日目の XP 検査 でヘルニア嚢内に niveau 形成を認め,造影検査にて食道損傷と診断した.ヘル ニア嚢内にドレーン留置し低圧持続吸引ドレナージと洗浄を繰り返した.術後 19 日目に食道穿孔部閉鎖を認め,21 日目より経口摂取を開始した.術後 40 日目に 退院し,術後 3 カ月現在,若干の通過障害の訴えはあるが,再発,狭窄は認め ていない.【考察】症例 1 では,ペースメーカーのリード感染の危惧から TPN は非適応で,腸瘻は管理が煩雑となることから,腹腔鏡下ヘルニア修復術と PEG 同時手術は良い適応であったと考えられた.症例 2 では,短食道を呈しており, 食道周囲剥離や腹腔側への牽引時に食道損傷を来たしたと考えられ,術中内視 鏡で損傷の確認と短食道に対して gastroplasty を考慮すべきであった.【結語】 食道裂孔ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術は有用な方法であるが,胃を腹腔内 に完納した後も胸腔内に牽引されてしまうような短食道症例では Collis 法による 代用腹部食道形成を考慮すべきである. 一般演題 ポスター2

P2-3

混合型食道裂孔ヘルニア症例に対する

Left!sided approach の手技

矢野文章

1

,小村伸朗

1

,坪井一人

1

,星野真人

1

山本世怜

1

,西川勝則

1

,石橋由朗

1

,中田浩二

1

柏木秀幸

2

,矢永勝彦

2 東京慈恵会医科大学 消化管外科1 , 東京慈恵会医科大学 外科学講座2 【背景と目的】食道裂孔ヘルニアの中で,混合型食道裂孔ヘルニアは AFP 分類 で A3 に分類される.A3 症例に対する腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行 する際は,胃上部が縦隔内へ脱出していることから,迷走神経前幹・後幹を中 心とした食道裂孔周囲の解剖学的な同定が困難であることが多い.一方,A2 以 下の滑脱型食道裂孔ヘルニア症例は無傷把持鉗子で胃を尾側へ牽引すること で,ヘルニアを容易に腹腔内に還納できるため,手術操作に工夫を要すること は少ない.今回,A3 症例に対する手術手技の工夫点を供覧する.【手術方法と 工夫点】通常われわれは,1)横隔食道間膜の切離(迷走神経前幹の確認),2) 腹部食道をトンネリングし腹部食道を十分に露出(迷走神経後幹の確認)した 後に,3)網嚢腔に入り短胃動静脈をすべて切離することで,腹部食道の確保を 行っている.一方,A3 症例では左右の横隔膜脚の同定は容易であるものの,横 隔食道間膜を切離しても胃が挙上しているため迷走神経前幹の同定は難しいこ とが多い.またしばしば食道が屈曲しており,迷走神経前幹のみならず迷走神 経後幹を損傷する可能性がある.そこでわれわれは,まず左横隔膜脚と胃の癒 着を切離し,胃を腹腔内に牽引しながらこの部分から頭側に向かって短胃動静 脈をすべて切離し,食道胃接合部左側に到達し,解剖学的オリエンテーション をつけることにしている(Left!sided approach).そして食道左側から縦隔内に 入り,食道と周囲組織との癒着を鈍的鋭的に剥離する.食道胃接合部やや下方 を尾側に牽引し,食道を直線化したところで,食道右側を剥離し,腹部食道を トンネリングする.腹部食道をペンローズドレーンで牽引しながら,食道を縦 隔内から剥離し,ヘルニア嚢を切除する.また,A3 症例は食道裂孔が広く開大 していることが多く,裂孔縫縮をした後にデュアルメッシュによる裂孔補強を ルーチンにしている.【成績】手技が定型化した 2011 年 2 月以降,A3 症例 15 人に対して同手術を施行したが,手術時間は 194.3±49.0(112∼301)分であり, 開腹への移行率は 0% である.【結語】混合型食道裂孔ヘルニアに対して,本ア プローチ法は有効である. 一般演題 ポスター2

P2-4

Upside!down stomach の外科治療成

坪井一人

1

,小村伸朗

1

,矢野文章

1

,星野真人

1

山本世怜

1

,増田隆洋

2

,高橋直人

1

,中田浩二

1

柏木秀幸

2

,矢永勝彦

2 東京慈恵会医科大学 外科学講座消化管外科1 東京慈恵会医科大学 外科学講座2 【背景】食道裂孔ヘルニアの大半は滑脱型である.一方,食道裂孔が大きく開大 し,腹部食道の前面に胃が捻転して縦隔内に完全に嵌入してしまった状態は up-side!down stomach と呼称される食道裂孔ヘルニアの特殊型であり,稀な病態 である.無症状なことも多いが,急激な嘔吐を発症して重篤となる場合もある. さらに嵌頓・穿孔の危険性もあり,準緊急的な手術が推奨されている.しかし ながら,食道の変位や厚くなったヘルニア嚢の処理など,通常の食道裂孔ヘル ニアと比較して手術の難易度は格段に高い.【目的】upside!down stomach の外 科治療成績について検討した.【方法】1994 年 12 月より 2013 年 12 月までの間 に当教室において経験した upside!down stomach 症例につき,術前病態,手術 時間,術中出血量,および術後経過について調査した.【成績】対象期間内に食 道裂孔ヘルニアに対し初回手術として外科治療を施行した 417 例のうち,upside! down stomach 症例は 12 例(2.9%)であった.1 例を除き女性(91.7%)であり, 平均年齢は 74.6±10.3 歳であった.術前の平均 BMI は 25.4 で,9 例(75.0%)で 亀背を認めた.術式は 92 歳と高齢で極度の亀背を認めた 1 例を除きすべて腹腔 鏡下に行った.比較的初期の症例でヘルニア再発を認めたことから,10 例を経 験した 2013 年からは積極的にメッシュを使用し,横隔膜脚縫縮後に補強を追加 した.平均手術時間は 168.3±52.9 分,平均出血量は 132.5±207.7ml であり,術 中に 1 例で気胸をきたしたが腹腔鏡手術症例で開腹術への移行例はなかった. その他合併症は認めず,術後在院日数は 10.8±7.1 日であった.術後 3 例(25.0%) にヘルニア再発を認めたが,メッシュを使用した症例での再発は現在のところ 認めていない.【結語】upside!down stomach に対する外科治療成績は比較的良 好であるものの,25% に食道裂孔ヘルニアの再発を認めた.食道裂孔の修復に メッシュを使用することで,再発率が低下する可能性が示唆された.

(3)

一般演題 ポスター2

P2-5

食道裂孔ヘルニアにおける前方固定術症

例の検討

東 重慶,中島清一,高橋 剛,宮崎安弘,

山崎 誠,黒川幸典,宮田博志,瀧口修司,

森 正樹,土岐祐一郎

大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座消化器外科学 【背景】巨大食道裂孔ヘルニア症例では,長期間の脱出に伴う胃の変形や裂孔周 囲組織の脆弱化により,ヘルニア修復後の噴門形成術が技術的に困難となる症 例がしばしば見られる.我々は,このような場合,主訴が通過障害で高齢者に 多いという本病態の背景を鑑み,敢えて噴門形成術に固執せず,「食道裂孔の確 実な修復」と「環納胃の再脱出・捻転の防止」こそに力点を置くべきと考え, 胃前方固定術の付与を積極的に試みてきた.【目的】巨大食道裂孔ヘルニアに対 する裂孔修復術の際の胃前方固定術の手技を手術成績とともに供覧する.【方法】 2006 年以降,巨大食道裂孔ヘルニアに対して胃前方固定術を試みた 5 症例を対 象に,患者背景,病型,食道機能,術式,成績を retrospective に検討した.【手 技】通常の 5 孔式腹腔鏡手術でヘルニア内容を経裂孔的に環納後,裂孔を結節 縫合で修復し,必要に応じてメッシュ修復を行う.還納した胃の穹窿部を用い てカフの形成が可能な場合は short & floppy Nissen 噴門形成術を付与し,裂孔 周囲組織が intact な場合はカフを裂孔周囲の横隔膜に固定するが,カフ形成が 困難,もしくは裂孔周囲組織の脆弱性が著しく胃壁の腹腔内固定が行えない場 合は胃前方固定術を行う.<胃前方固定術の手技>胃体中部前壁やや大弯に 2 点の固定部位を定める.2!0 プロリン直針を体表から腹壁を貫通させ,腹腔内で 目標の胃壁を拾い,再度腹壁を貫通させて腹直筋前鞘(皮下)にて結紮固定す る.術中内視鏡にて胃の固定状況を確認する.【結果】症例は全例女性,年齢中 央値 83 歳,2 例に高度の胃軸捻転を認めた.全例腹腔鏡下に全脱出臓器を環納 し,うち 2 例に Nissen 噴門形成術を施行した.噴門形成術を行えた例を含め全 5 例で前方固定術を付与.手術時間 245 分,出血量は 20mL(いずれも中央値) であった.全例術後経過は良好で,通過障害は消退し,術後 716 日(平均)の 時点でヘルニアの再発を認めていない.【結語】食道裂孔ヘルニアに対する胃前 方固定術は比較的簡便な手技であり,胃の変形のために逆流防止術が行えない 場合や,裂孔周囲の脆弱化が強くて胃壁の横隔膜への固定が困難な場合におい て,強い酸逆流や通過障害等の術後合併症なくヘルニア再発を予防できる有用 な術式と考えられた. 一般演題 ポスター2

P2-6

高齢者食道裂孔ヘルニア・GERD 手術

症例の検討

広田将司

1

,中島清一

2

,高橋 剛

2

,宮崎安弘

2

山崎 誠

2

,黒川幸典

2

,宮田博志

2

,瀧口修司

2

森 正樹

2

,土岐祐一郎

2 市立豊中病院 外科1 大阪大学大学院医学系研究科 外科学講座消化器外科学2 【背景】高齢化と食生活や体型の欧米化等に伴い,本邦における食道裂孔ヘルニ ア・胃食道逆流症(GERD)の増加が予想されているが,本邦特有の「高齢者」 におけるこれら疾患の臨床的特徴や手術成績についてのまとまった報告は少な く,その詳細は明らかでない.【目的】高齢者食道裂孔ヘルニア・GERD 手術症 例についての臨床的特徴および手術成績を明らかにする.【方法】対象は 2005 年∼2013 年に当院にて食道裂孔ヘルニアおよび GERD に対して手術を施行した 32 例.手術時年齢で若年群(65 歳未満:n=12)と高齢群(65 歳以上:n=20) の 2 群に分け,各群で患者背景,病型,併存疾患,術式,手術成績の後方視解 析を行った.【結果】背景因子の比較では,両群とも男女比は女性優位であった が群間での有意差はなく(若年群 66.7 vs.高齢群 90, %),その他の因子(body mass index,食道炎併存の割合,病悩期間,DeMeester score 等)にも差はなかっ た.一方,高齢群では側彎・亀背などの脊椎変形を有する症例が多い傾向にあ り(0.0 vs. 35, %,p=0.0680),食道裂孔ヘルニアの形態分類では III,IV 型の 巨大脱出症例が有意に多かった(8.3 vs. 45, %,p=0.0004).手術は両群とも腹 腔鏡下 Nissen 噴門形成術を基本とし,脊椎変形を有する症例に対しても問題な く完遂された.一方,高齢群では脱出胃の著しい変形による噴門形成の不能症 例を 4 例(20%)に認め,これらに対しては胃前壁固定術が付与された.また, 高齢群には食道アカラシア根治術中に偶発的に食道裂孔ヘルニアの併存を認め た症例が 4 例(20%)存在し,これらにはアカラシア根治術に加え食道裂孔の 修復手術が付与された.高齢群では手術時間が有意に長い(193.5 vs. 237,分, p=0.0470)ものの,術後在院日数(12 vs. 15.5,日)および周術期合併症の発生 頻度(0.0 vs. 10, %)には差はなかった.全症例において症状は術後速やかに改 善され,継続的な内科的治療(プロトンポンプ阻害剤ならびに蠕動改善薬)を 要す症例の割合に差は無く,ヘルニア再発については高齢群に slipped Nissen 型 を 1 例認めたのみであった.また,bloating に対するバルーン拡張術を要する症 例は両群を通じて認めなかった(術後観察期間:35 vs. 21.5,ヶ月).【結語】高 齢者の食道裂孔ヘルニア・GERD 症例は女性に多く,脊椎の変形や食道裂孔の 著しい開大,アカラシアとの併存等,主として解剖学的異常を伴う症例が多い という特徴が認められた.術中,これらに対する特別な配慮をすることで,腹 一般演題 ポスター3

P3-1

大型有鉤義歯誤飲による食道異物の 2 例

塚本俊太郎

1

,寺島秀夫

2

,久倉勝治

2

,田村孝史

2

神賀正博

1

,大河内信弘

1 日立製作所ひたちなか総合病院 外科1 , 筑波大学附属病院 消化器外科2 【目的】我々は,大型有鉤義歯が頸部食道∼胸部上部食道に嵌頓して手術による 摘出を要した 2 例を経験したので,症例の術前及び術中画像を供覧しながら手 術手技の工夫について論じる.【症例 1】統合失調症の 60 歳女性.食事中に義歯 がはずれ誤飲した.軽度圧迫感を訴えていたが,菓子類などを摂取できていた ため,家人が経過観察としていた.その 3 日後に咽頭部の疼痛が出現したため 前医を受診し,単純 X 線写真で異物誤飲と診断されて当院紹介となった.上部 消化管内視鏡検査を施行したところ,clasp を有する義歯は梨状窩直下から頸部 食道に存在した.義歯の可動性はあるものの鉗子を用いた摘出は困難であった. 次いで,イレウス管挿入によりバルーンでの摘出を試みたが,位置変わらずバ ルーン破損のため断念した.加えて,血液検査所見から炎症反応の上昇を認め, 食道穿孔の可能性も否定できず,緊急手術の方針となった.【症例 2】認知症の 68 歳男性.食事中に突如苦悶様の表情を呈し始めたが,しばらくして落ち着い た.義歯がないことに家人が気づき,義歯の誤飲が疑われ,当院救急外来を受 診した.CT にて梨状窩から食道入口部に存在する義歯が確認された.内視鏡的 に抜去を試みたが,義歯の clasp による食道損傷の危険性が高いと判断され,緊 急手術の方針となった.【手術直前の単純 X 線写真】両者とも義歯の全長は約 50 mm であり,頸部食道側に約 20mm,胸部上部食道側に約 30mm の割合で頚胸 境界部と中心に嵌頓していた.【手術手技】頸部襟状切開を加えて皮弁を形成し た.左前頸筋群,次いで甲状胸腺靱帯を切離して,甲状腺左葉を十分に頭側へ 牽引できるようにした.左反回神経を露出してテーピングした後,頸部食道の 左壁から後壁にかけて周囲組織から十分に剥離し,その剥離操作を可能な限り 縦隔側に向けて進めた.甲状腺左葉を頭側・上方に牽引しながら,頸部食道左 壁で輪状軟骨下縁の高さから尾側へ向けて全長約 3∼4cm の縦切開を加え,食道 全層を切開した.clasp による食道損傷に注意しながら義歯を摘出した後,食道 切開部は層々縫合により閉鎖した.【考察】甲状腺を頭側・上方に牽引すると気 管も同方向へ牽引され,気管と食道は同一の固有鞘に包まれているので,同時 に食道も同方向に牽引されることになる.この操作により胸部上部食道を頚部 術野へと可及的に引き出し,大型有鈎義歯の安全な摘出に見合った食道切開を 加えることが出来た. 一般演題 ポスター3

P3-2

食道異物に対して胸腔鏡下異物摘出を

行った 2 例

難波江俊永,荻野利達,村上聡一郎,内山明彦

九州厚生年金病院 外科 【はじめに】食道異物は内視鏡的摘出ができない場合,食道切開による異物除去 が必要となる.今回,義歯による食道異物に対して胸腔鏡下食道切開および異 物摘出を行った症例を経験したので報告する.【症例 1】78 歳,女性.胸部中部 食道に嵌頓した義歯による食道異物のため当院紹介となった.体位は腹臥位気 味の左側臥位とし肩甲骨下角線上第 9 肋間,後腋窩線上第 7 肋間および第 5 肋 間,中腋窩線上第 3 肋間および第 9 肋間からポートを挿入して手術を行った. 胸部中部食道周囲を剥離したのち食道を切開して義歯を摘出した.切開した食 道は層々縫合をもちいて縫合閉鎖した.【症例 2】81 歳,男性.頚部食道∼上部 食道の義歯嵌頓のため紹介となった.内視鏡的異物除去ができなかったため手 術を行った.肩甲骨下角線上第 8 肋間,後腋窩線上第 7 肋間および第 5 肋間, 中腋窩線上第 3 肋間からポートを挿入した.義歯は頚胸境界部に嵌頓していた ため上部食道周囲の剥離を行いテーピングして食道を牽引,義歯の直上で食道 切開を行い異物摘出を行った.切開した食道を縫合閉鎖,胸腔ドレーンを留置 して手術を終了した.いずれの症例も術後の縫合不全や食道狭窄は認めなかっ た【まとめ】今回,義歯による食道異物に対して胸腔鏡下異物摘出を行った症 例を 2 例経験した.胸腔鏡下手術では縫合手技が容易でないが,良好な視野で 手術を行うことができる.

(4)

一般演題 ポスター3

P3-3

開胸手術で有鈎義歯を分割して摘出した

食道異物の 1 例

西内 綾,浅生義人,西野裕人,日下部治郎,

藤 浩明,加藤 滋,門川佳央,待本貴文,

古山裕章,吉村玄浩

天理よろづ相談所病院 腹部一般外科 大型有鈎義歯の誤飲は,食道粘膜損傷や穿孔から縦隔炎にまで至るリスクがあ り,摘出が困難で食道切除が必要になる場合もある.今回我々は,開胸手術で 有鈎義歯を分割し摘出した 1 例を経験したので報告する. 症例は 54 歳の男性で,転倒後より苦悶様となり義歯誤飲の疑いで,当院に救急 搬送された.患者は,幼少時の事故による後遺症で,複数の抗精神病薬を内服 していた.胸部単純レントゲン検査上,鎖骨レベルの胸部に半周性の義歯を認 めた.義歯の両端に有鈎部を認めた.胸部単純 CT 検査では,義歯は胸部上部食 道内に位置しており,気管の高度な偏位を認めるものの,明らかな縦隔気腫や 穿孔は認めなかった.気管内挿管で気道を確保した上で,全身麻酔下に内視鏡 的摘出を試みるも,有鈎部分が食道粘膜に食い込んで摘出困難であり,開胸手 術に移行した. 第 4 肋間で右開胸し,食道を露出して胸部上部食道を約 3cm 切開し摘出を試み たが,やはり義歯両端にある有鈎部が各々食い込んで摘出困難であった.ニッ パーで義歯の中央部の金属連結部を分割することで,義歯の下半分は食道切開 部から摘出し,上半分は内視鏡的に口から摘出することができた.食道切開部 は一期的に閉鎖し,上部消化菅内視鏡で内腔から他部位の損傷がないことを確 認した.経腸栄養のために,胃瘻を造設し手術を終了した. 術後経過は,第 3 病日に抜管し,同日より経腸栄養を開始し,第 16 病日に他院 に転院した.現在は経口摂取可能となっている. 一般演題 ポスター3

P3-4

義歯誤飲による食道気管穿通の一救命症

山本竜太,森 和彦,八木浩一,山形幸徳,

愛甲 丞,西田正人,山下裕玄,野村幸世,

瀬戸泰之

東京大学医学部附属病院 胃・食道外科 58 歳男性.夕食時に義歯を誤飲し,近医受診した.上部消化管内視鏡検査にて 胃内に義歯を認め,内視鏡下に摘出を試みたが,義歯が食道に刺入し,摘出困 難となった.直後より頸部から前胸部にかけて著明な皮下気腫が出現した.CT 検査にて義歯による食道気管穿通,縦隔気腫を認めたため,当院救急受診し, 緊急手術施行した.右開胸にて異物除去,食道気管瘻閉鎖術施行した.義歯は 約 4cm であった.術後第 6 病日に食道造影検査を行い,狭窄や漏れがないこと を確認した.また,第 13 病日に上部消化管内視鏡検査施行し,閉鎖部が治癒傾 向であることを確認した.その後の経過は良好で第 18 病日に退院となった.異 物による食道穿孔の治療方針は多岐にわたるが,本症例のように穿孔部が小さ い場合や比較的汚染が少ないなどの状況下では一期的縫合閉鎖も選択肢の 1 つ であると考えられた. 一般演題 ポスター3

P3-5

有鈎義歯誤飲による食道入口部異物症例

の検討

宮成信友,松本克孝,森田圭介,北野雄希,

大内繭子,木下浩一,冨樫陽彦,水元孝郎,

芳賀克夫,片渕 茂

国立病院機構熊本医療センター 外科 【目的】食道異物は内視鏡的摘出が第一選択であるが,形状が複雑な有鈎義歯は その金属の鈎が食道壁に陥入しており内視鏡的摘出が困難であり,食道穿孔, 縦隔炎の原因になるため緊急手術の適応となる.2010 年 1 月か 2013 年 12 月ま での 4 年間に有鈎義歯誤飲による食道入口部異物の頚部切開摘出した 6 症例を 検討した.【成績】6 症例は男性 4,女性 2,年齢は 71 歳から 83 歳で平均 77.5 歳 であった.また全例認知症あるいは統合失調症の合併症を有していた.誤飲か ら当院受診日までの期間は当日から 5 日の範囲であった.入院期間は 15 日から 42 日で平均 25.5 日であった.全例当日緊急手術を行い,左胸鎖乳突筋内縁に沿っ た斜切開でアプローチし食道切開で摘出し食道は縫合閉鎖した.頸部食道周囲 に気腫を認め喉頭浮腫が顕著な 1 症例目と窒息状態で発見され挿管状態であっ た 2 症例目,誤飲後 5 日目に診断され挿管困難であった 3 症例目には義歯摘出 後に喉頭浮腫による気道閉塞も懸念されたため気管切開を施行した.全例縫合 不全や食道狭窄は認めなかった.【考案】今回の 6 症例中最初の 2 例は画像上食 道穿孔も疑われたため対側(右側)の頚部斜切開を追加しドレナージを施行し た.また喉頭浮腫による気道閉塞が懸念されたため頚部切開摘出後,気管切開 を施行した.2 例の術後の経過から対側のドレナージと気管切開は必要なかった と思われた.3 例目は対側のドレナージは施行しなかったが,誤飲より 5 日が経 過し麻酔時に挿管困難であったため気管切開を追加した.術後の経過から対側 のドレナージと気管切開の必要性は乏しいと思われ,以後の 3 症例は左頚部の 斜切開のみと良好に経過した.食道入口部有鈎義歯誤飲に対しては迅速に対応 すれば頸部外切開摘出のみで良好な経過が得られる.【結語】今回経験した 6 症 例はいずれも高齢で,認知症や精神疾患を有しており,本人への問診は困難で あった.家族や入所施設スタッフは義歯が紛失している場合は誤飲を念頭に入 れる必要がある.高齢化社会の進行に伴い義歯をはじめとする異物誤飲症例は 増加するものとおもわれ,早期の診断と適切な対応が必要である. 一般演題 ポスター4

P4-1

食道粘膜下膿瘍の 1 例

了徳寺大郎,川田研郎,中島康晃,永井 鑑,

小郷泰一,奥田将史,藤原尚志,宮脇 豊,

東海林 裕,河野辰幸

東京医科歯科大学医学部附属病院 食道外科 【諸言】食道粘膜下膿瘍の報告例はまれであり,魚骨誤飲などによる食道損傷よ り生じる限局性の疾患の報告がなされている.今回我々は,臨床経過・CT・内 視鏡所見が特徴的であった 1 例を経験した.【症例】78 歳男性,2013 年 6 月発 熱,嚥下困難,咽頭痛を主訴に近医耳鼻科受診した.原因精査,加療目的に当 院紹介となり,緊急入院した.【既往歴】糖尿病にて服薬加療.2006 年頚椎症性 頚髄症にて C4!5,C5!6 前方固定術施行.2010 年 2 月プレート抜釘術施行,術 後遅発性食道穿孔にて保存的加療.【入院後検査】入院時採血検査にて白血球数 18,400!μl,CRP21.19mg!dl と炎症反応高値を認めた.CT では頸部∼胸部下部食 道壁内気腫像を認めた.上部消化管内視鏡検査では食道入口部直下(上切歯列 より 16cm)右壁に潰瘍形成をみとめ,以下胸部下部食道まで,後壁主体に食道 壁外性圧排と,浮腫状粘膜を認めた.EUS では食道粘膜下から筋層にかけ内部 不均一な壁肥厚が観察された.【入院後経過】食道穿孔,食道気腫,食道粘膜下 膿瘍の診断にて抗生剤(MEPM2g!day)・禁飲食・TPN 管理とし保存的加療を 開始した.炎症反応は徐々に低下した.入院第 6 病日施行した上部消化管内視 鏡検査では,鼻孔より 22cm 右壁の頸部食道の潰瘍は浅化,上皮化傾向を認め治 癒傾向であった.また,鼻孔より 26"32cm の胸部上部から中部食道にかけて, 入院時に食道粘膜下気腫を呈した部位に一致して,不連続に縦走する小潰瘍形 成をみとめ潰瘍間は粘膜架橋を形成していた.潰瘍間粘膜下は偽腔形成してお り膿汁・壊死組織貯留を認めた.食道潰瘍部の粘膜下組織より培養提出しα" streptococcus を検出した.生検では炎症細胞浸潤を認める食道粘膜であり,各 種免疫染色を追加しウイルス検索を行ったがいずれも陰性であった.第 14 病日 施行の上部消化管内視鏡では,偽腔は狭小化し粘膜下膿汁・壊死組織は減少し, 潰瘍の浅化を認めた.第 27 病日に施行した上部消化管内視鏡検査では,食道潰 瘍は治癒し瘢痕を認めるのみで,狭窄や憩室形成は認めなかった.嚥下訓練, 経口摂取を再開し第 47 病日退院した.以降再発なく経過している.【考案】本 症例における発生機序は,脊椎プレート抜去部位の反応性骨化と周囲瘢痕が頸 部食道床の基礎として存在し,外因性に食道穿孔,食道壁内気腫を生じ,感染 の重複により食道粘膜下蜂窩織炎から食道粘膜下膿瘍形成に至ったと考えられ る.粘膜下膿瘍部が食道潰瘍を形成し,内ドレナージ状態となったことで保存 的加療が奏効したと考察される.【結語】食道粘膜下膿瘍に対し,保存的加療に て良好な経過が得られた.

(5)

一般演題 ポスター4

P4-2

野草摂取後の嘔吐により発症した食道破

裂の 1 例

田中成岳

1

,高橋 遼

1

,熊倉裕二

1

,松本明香

1

小野里良一

1

,谷 賢実

1

,森永暢浩

1

,設楽芳範

1

石崎利政

1

,桑野博行

2 公立藤岡総合病院 外科1 , 群馬大学大学院 病態総合外科学(第一外科)2 背景:特発性食道破裂は,直接的な外傷,異物の誤飲などの原因によらず,食道 内圧の急激な上昇によって食道壁が破裂する疾患である.早期に診断し適切な処 置がなされないと,急激に全身状態の悪化を来たし治療に難渋する症例も少なく ない.今回我々は野草摂取後に嘔吐し発症した食道破裂を経験したので若干の文 献的考察を加え報告する.症例:60 歳男性,夕食に自宅の庭に生えていた野草を 摂取し就寝.深夜になって気分不快を自覚し 1 回嘔吐を認めた.その後持続する 胸部痛のため,救急要請し当院救急外来受診となった.来院時意識は清明,血圧 も保たれていたが頻脈および浅い頻呼吸を認めた.単純レントゲンでは左胸水お よび気胸を認め CT を施行したところさらに縦隔気腫,左胸水の所見も認めた. 酸素化も不良であり左胸腔にトロッカー挿入留置すると茶褐色の食物残渣の排出 を認めた.食道造影では胸部下部食道左壁より胸腔内への造影剤の漏出を認め た.以上より胸腔内穿破型の特発性食道破裂と診断し,発症後約 10 時間で緊急 手術開始となった.全身麻酔下右側臥位で手術開始.後側方第 8 肋間開胸を行っ た.胸腔内には摂取したと思われる野草含め食物残渣を多量に認めた.破裂部位 は下部食道左壁で約 4cm の裂傷を認め粘膜は露出していた.裂傷部位の食道の上 下にテーピングを行い,粘膜と食道筋層を 2 層に分け層々に単純閉鎖を行った. 体位を仰臥位とし上腹部正中切開で開腹.大網と留置する縦隔ドレーンを食道裂 孔から胸腔内に誘導した.続いて再度左開胸を行い,食道縫合閉鎖部と縦隔ドレー ンを拳上した大網で被覆し,胸腔内にドレーンを留置し手術を終了した.術後 8 日目に食道造影を施行し造影剤の漏出ないことを確認し経口摂取再開.その後経 過は良好で,術後 2 週間で縦隔ドレーンを抜去,術後 3 週間目で退院となった. まとめ:本疾患は早期診断が重要であることは間違いないが,外科的治療におい て予想される合併症に対する処置が重要と考える.重篤な合併症である縦隔炎に 対し,本症例では食道裂傷部の縫合不全の可能性も考え,縦隔内にドレーン留置 するとともに瘻孔化も考慮して経腹的経路とした.また,膿胸の予防および対策 として胸腔内にドレーンを留置するとともに,十分な温生食での洗浄と胸腔鏡の 十分な観察で食物残渣の遺残が無いように注意した.また,敗血症に対する予防 として抗生剤に加え免疫グロブリン製剤を併用し周術期の管理を行った.本疾患 は比較的まれな疾患でありしばしば治療に難渋することも多いが,予想される合 併症に対する対応を行いながら慎重に術後管理を行うことが重要と考える. 一般演題 ポスター4

P4-3

食物塊が誘引となった食道破裂に対し胸

腔鏡補助下手術を施行した一例

神尾幸則,小澤孝一郎,高橋 愛,間瀬健次,

横山森良,森谷敏幸,東 敬之,水谷雅臣,

長谷川繁生,薄場 修

公立置賜総合病院 外科 【はじめに】食道破裂は緊急処置が遅れると重症化し死亡率が高くなる重篤な疾 患であるが,その救命率は増加してきている.今回,食物塊が誘引となった食 道破裂に対し胸腔鏡補助下手術を施行した一例を経験したので報告する.【症例】 患者は 63 歳の女性で,夕食に魚の干物を食したが,夜間に喉のつまりを感じ嘔 吐した.その後,急激な胸痛が出現し,当院救急外来を受診した.受診時の意 識は清明で,バイタルサインは安定していたが,右胸部から右肩にかけての強 い疼痛があり,酸素飽和度の低下を認めた.CT で右胸水の貯留と縦隔気腫を認 めたことから,食道破裂と診断した.腫瘍性病変を疑う所見もあり,それによ るによる閉塞で食道内圧が上昇したための穿孔も疑われたが,上部内視鏡検査 を施行すると,食道下部,右側壁に径約 2cm の穿孔とそのさらに肛門側に食物 塊を確認できた.発症から早期であり,穿孔が大きく,周囲への炎症の波及や 感染による重症化を考え,緊急手術を施行した.右側臥位で,右第 7 肋間で開 胸し,胸腔鏡補助下に食道穿孔閉鎖術を行なった.胸部下部食道に約 4cm の縦 裂傷を確認,食道内にある食物塊を用手的にかき出した後,穿孔部をトリミン グ,層々吻合で閉鎖とした.胸腔内には汚染胸水と食残があり,胸腔ドレーン を留置し閉創とした.術後 3 日目に抜管するも,炎症の波及と思われる喉頭浮 腫のために再挿菅となり,7 日目に気管切開を行なった.11 日目に人工呼吸器 を離脱し,経口摂取を開始した.31 日目に退院となった.【考察】食道破裂の治 療は原則として外科的治療であり,食道破裂の修復の golden period は発症から 12 時間とされ,24 時間を過ぎると縫合不全の危険性が増し,死亡率も増加する. 近年は,全身管理や感染,栄養の管理の進歩から,症状が軽度,破裂が縦隔内 に限局,破裂孔と通じドレナージが効いている,感染徴候が軽度などの場合に は,保存的治療も選択されるが,十分なドレナージが出来うるのか,症状が悪 化してからの手術にて改善が可能なのかといった問題があり,最近は低侵襲に て治療を行える胸腔鏡下手術の報告が増加してきている.本症例では,胸腔鏡 を補助的に用いて手術を行ったが,胸腔鏡による術野の拡大視が得られ,破裂 部位の確認,閉鎖も容易に行えるほか,開胸・開腹手術に比べて低侵襲である ため,術後合併症のリスク減少,在院日数の短縮が可能になると考えられる.【ま とめ】食道破裂は発症早期の的確な診断と治療の選択が重要な疾患であり,さ まざまな手術法があるなかで,胸腔鏡補助下手術は選択肢の一つとして有用で 一般演題 ポスター4

P4-4

異なるアプローチで治癒した特発性食道

破裂の 2 例

谷島雄一郎,柏木秀幸

富士市立中央病院 外科 <1>症例は 65 歳男性.食事摂取後に嘔吐し,前胸部痛が出現した.近医受診 し,X 線で縦隔拡大を認めたため当院を紹介受診した.CT で縦隔気腫と左気胸 と左胸水を認め,特発性食道破裂を疑い食道造影を行い,下部食道から造影剤 の縦隔左側への限局的な漏出を認め確定診断を得て手術を施行した.上腹部正 中切開で開腹し縦隔へ到達し下部食道左側壁の穿孔部位を確認した.穿孔部位 を縫合閉鎖し,胃穹窿部で被覆をおこなった.縦隔膿瘍が出現したものの抗生 剤で保存的に改善を得た.<2>症例は 48 歳男性.飲酒後に嘔吐し,左背部痛 が出現した.近医受診し,X 線で気胸の診断で当院を紹介受診した.CT で縦隔 気腫と左気胸と左胸水を認めたため,特発性食道破裂を疑い食道造影を行い, 下部食道から造影剤の左胸腔内への広範な漏出を認め確定診断を得て手術を施 行した.左第 6 肋間開胸でアプローチし,下部食道左側壁の穿孔部位を確認し た.穿孔部位を縫合閉鎖し,肋間筋弁で被覆をおこなった.術後 1 週間で縫合 不全と縦隔膿瘍を指摘しえたので,内視鏡的経鼻膿瘍ドレナージを施行し改善 を得た.異なるアプローチで救命した特発性食道破裂の 2 例を経験したので文 献的考察を加えて報告する. 一般演題 ポスター4

P4-5

Fundic patch 法にて良好な結果が得ら

れた特発性食道破裂の 3 例

大川 広,淺海信也,高倉範尚,金 仁洙,

大野 聡,中野敢友,石井龍宏,日置勝義,

黒瀬洋平,門田一晃

福山市民病院 外科 【はじめに】特発性食道破裂は嘔吐などで食道内圧の上昇により食道破裂をきた すもので,比較的稀な疾患であり,診断治療を早期に的確に行わないと重篤な 経過をとり予後不良になることも少なくない.今回我々は当院で経験した特発 性食道破裂のうち fundic patch 法にて良好な結果が得られた 3 例を検討した. 【症例 1】87 歳,男性.主訴は心窩部痛.前医で CF のため下剤内服後に嘔吐し 症状出現し CT で縦隔気腫あり食道破裂と診断され救急搬送となり,発症から約 9 時間で緊急手術施行した.下部食道左側に 2.5cm の穿孔部位あり左開胸にて洗 浄ドレナージし直接縫合後に胃底部被覆し修復した.術後は大きな合併症なく 術後 41 日目に退院となった.【症例 2】73 歳,男性.主訴は背部痛.夕食中に 突然嘔吐し症状出現し前医受診.CT で胸水,縦隔気腫あり食道破裂で救急搬送 となり,発症から約 4 時間で緊急手術となった.穿孔部位は下部食道左側で約 3 cm の穿孔あり左開胸で洗浄ドレナージ行い直接縫合後に胃底部被覆行った.術 後脳梗塞あったが手術部位合併症はなく,術後 29 日で退院となった.【症例 3】77 歳,男性.睡眠中に突然の左前胸部痛を自覚し救急搬送.CT で胸水,気腫を認 めたが来院時には症状消失していた.食道透視で胸腔内への leak と診断し発症 から 17 時間で緊急手術となった.下部食道左壁に約 4cm の穿孔あり左開胸で直 接縫合,胃底部被覆し洗浄ドレナージ施行した.術後は合併症なく術後 52 日で 退院となった.【考察】特発性食道破裂は嘔吐が原因となって起こることが多い が,多彩な症状を呈し初期症状が軽度であることが多いため早期診断が比較的 困難とされる.破裂部位は下部食道左壁が多いとされ,早急に治療を行わなけ れば予後不良となることも少なくない.治療は穿孔部の修復とドレナージが基 本であり,単純縫合閉鎖や胃底部や肋間筋,大網による patch,T チューブ等が 行われる.Fundic patch 法では単純縫合閉鎖に比べ縫合不全率の低下が報告さ れており,発症から時間が経った症例でも有効であるとの報告もある.今回我々 はドレナージと fundic patch 法による穿孔部修復で良好な結果を得られた特発 性食道破裂 3 例を経験検討し,若干の文献的考察を加え報告する.

(6)

一般演題 ポスター4

P4-6

特発性食道破裂 5 例の治療成績

鈴木研裕,久保田啓介,武田崇志,下平悠介,

加藤俊治,上田宣仁,千葉裕仁,関戸悠希,

大東誠司,太田惠一朗

聖路加国際病院 消化器・一般外科 【目的】特発性食道破裂は高い死亡率を有する稀な疾患であり,一般的には手術 が必要となる.今回,我々が当科で経験した特発性食道破裂 5 例の手術成績お よびその妥当性を検討する.【方法】2004 年から 2013 年までの 10 年間に,当院 にて特発性食道破裂と診断され緊急手術を受けた 5 例の患者を抽出し,手術成 績および長期的予後に関してチャートレビューによる後方視的解析を行った. 【成績】全 5 例の平均年齢は 60.3 歳であり,男性が 4 名,女性 1 名であった.原 因としては,飲酒後嘔吐が 3 例,感染性胃腸炎による嘔吐が 2 例であった.発 症から執刀開始までの時間は,平均で 8.9 時間(range ; 3.0,18.0)であった.4 例で術前の上部消化管造影検査が施行されており,うち 3 例で左胸腔への造影 剤漏出を認め,そのうちの 2 例では手術時に左胸腔内に多量の食物残渣を認め た.全 5 例で左開胸による穿孔部位の縫合閉鎖および左胸腔内洗浄ドレナージ を行った.穿孔部位はいずれも胸部下部食道の左側壁であった.術後縫合不全 などの重篤な合併症の発生は認めなかった.全例で術後 7 日目ないし 8 日目に 上部消化管造影検査を施行しているが,縫合不全を認めた症例はなかった.平 均術後在院日数は 15.8 日(range ; 12,18)であった.平均観察期間は 40.6 ヶ月 であるが,いずれの症例においても退院後も明らかな合併症なく生存している. 【考察】以前は致死率 50% 程度と報告されていたが,現在では診断・治療法の 発達により,致死率が 10−20% 程度に低下してきている.当院で経験した 5 例 はいずれも治癒退院し現在も後遺症なく生存していることから,治療成績とし ては妥当であると考えられた.最近は食道穿孔が縦隔内にとどまるものであれ ば保存的加療も可能であるとの報告も散見されており,当科でも今後検討して 行きたい.【結語】稀な疾患である特発性食道破裂を 5 例経験したので,文献的 考察を混えて報告する. 一般演題 ポスター5

P5-1

高齢者おける食道 ESD の検討

西村 誠

1

,相田順子

2

,潮 靖子

3

,田村優子

3

中嶋研一郎

3

,佐々木美奈

3

,上垣佐登子

3

新井冨生

2

,田久保海誉

2 東京都健康長寿医療センター 内視鏡科1 東京都健康長寿医療センター 病理診断科2 , 東京都健康長寿医療センター 消化器内科3 【目的】近年,NBI などの内視鏡診断学の進歩により,内視鏡治療の適応となる 食道表在癌が増加しつつある.また,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)におい ても局注液やデバイスの改良により安定した手技が可能となった.しかし高齢 者の食道 ESD に対する検討は未だ少なく,適応や安全性などは未だ明らかにさ れていない.今回我々は当院での高齢者に対する食道 ESD について検討した. 【対象と方法】2013 年 6 月∼2014 年 1 月までの間に 65 歳以上の高齢者に対して 当科で行った食道癌,胃癌,大腸腫瘍(腺腫!大腸癌)の全 51 例の ESD を検討 した(69∼92 歳,平均 81.0 歳).全症例でデバイスとして Dual ナイフが用いら れ,局注液としてはヒアルロン酸ナトリウムが用いられた.治療は内視鏡室で 行われ,鎮痛薬として塩酸ペンタゾシン 15mg,鎮静薬としてミダゾラム 1"10mg が用いられた.全例で術中に CO2 送気が行われた.これらの症例に対して検討 を行った.【結果】65 歳以上の ESD51 例における男女比は男性:女性=30 例: 21 例であった.このうち食道 ESD は 6 例であり,全例が男性であった(75"83 歳,平均 79.6 歳).食道 ESD 例において,全例(100%)が一括切除であった. 合併症は全例で認めなかった.ESD 施行時間の平均は 58.5 分(21"90 分)であ り,ミダゾラムの投与量の平均は 7.25mg(3"10mg)であった.ESD 中に持続 出血は 0 例であったが,酸素飽和度の低下(92% 以下)を 2 例に,また収縮期 血圧の低下(80mmhg 以下)2 例に認め,いずれも術中に改善した.病理学的に は深達度は EP1 例!LPM4 例!sm1 1 例であった.切除最大径の平均は 30mm(15" 41mm),病変最大径の平均は 23.3mm(9"31mm)であった.2 例で水平断端陽 性であり,1 例で脈管侵襲陽性であった.脈管侵襲陽性の 1 例に対し ESD 後に 放射線治療が行われた.退院後は 2 例で他病の治療目的で入院中であるが,4 例 は外来通院中である.全例で術後狭窄や遺残再発を認めていない.【結語】高齢 者において食道 ESD は安全に施行しうることが示唆された.高齢者における内 視鏡治療においては,心肺機能や PS によって適応を考慮することが重要であ り,特に誤嚥性肺炎や縦隔炎,気胸などの重篤な合併症を起こしうる食道 ESD においては術前に十分な評価が必要である.今後高齢者の食道 ESD において, 鎮静剤の種類や用量,適切な術前評価項目,抗生剤や術中血圧コントロールな ど多くの項目で検討が必要と思われた. 一般演題 ポスター5

P5-2

cStage 0!Ⅰ高齢者食道癌に対する内

視鏡治療の有効性

小平佳典

1

,三浦昭順

1

,久米雄一郎

1

,坂本 啓

1

加藤 剛

1

,出江洋介

1

,藤原純子

2

,門馬久美子

2 がん・感染症センター都立駒込病院 食道外科1 , がん・感染症センター都立駒込病院 内視鏡科2 【背景】高齢者食道癌に対する治療において,心肺機能などの低下など背景因子 が問題となることが多いため治療が限られてくる.そのため,内視鏡治療(ER) が可能な Stage0!I食道癌においては特に,ER を含めた治療戦略が重要となる. 【目的】cStage 0!I高齢者食道癌における治療の現状と ER の有効性について明 らかにする.【対象と方法】2012 年までに当院にて cN0 かつ cStage 0!I食道癌 と診断した 137 例中,治療が可能であった 131 例を対象とし,先行治療別に retro-spective に検討した.【結果】ER 症例 104 例 79%,手術 13 例 10%,化学放 射 線療法(CRT)14 例 11%.Stage 別でみると全体では Stage0!I=93!38 例,治 療別で見ると ER は Stage0!I=82!22,手術症例は 4!9,CRT は 7!7 であった. また,年齢別でみると ER 症例では 75"79!80 歳以上=61!43,手術症例では 9!4, CRT では 13!1.また,80 歳以上の手術術式は全例,非開胸手術で行った.ER 後に追加治療を行った症例は 13 例 13% で Stage 別で見ると Stage 0 では 4 例 4%(全例 CRT),Stage I では 9 例 24%(手術 2 例,CRT7 例).また CRT 後 に追加 ER を行った症例は 6 例 43% で Stage 0,I それぞれ 3 例ずつであった. 長期予後:Overall では 5 年生存率(5 生率)は ER!手術!CRT=74.2!92.3!85.1% と ER の予後が劣る傾向にあった.しかし,Cause specific で見ると,5 生率は ER!手術!CRT=88.8!100!85.1% と ER は他の治療と比べ予後良好の傾向にあっ た.Stage 別で見ても Cause specific は Stage 0 が 5 生率で ER!手術!CRT=88.1 !100!85.7%,Stage I が 93.3!100!83.3% と Stage 別でも ER 症例は手術症例と比 べほぼ同等の成績であった.【結論】本検討から cStage 0!I高齢者食道癌では, 79% に ER が先行して施行され,CRT 症例中 6 例 43% に追加 ER を要した.予 後に関しても ER 症例において予後良好な結果にあった.ER 症例中 13% は追 加治療を要したが,正確な診断が可能であり適切な治療が可能であった.また, このことから Stage 0!I食道癌,特に高齢者においては ER による正しい診断, 治療戦略が重要であることが示唆された. 一般演題 ポスター5

P5-3

後期高齢者食道癌患者に対する化学放射

線療法の検討

戎井 力,岡田一幸,武岡奉均,加藤 亮,

牧野俊一郎,岡村 修,福地成晃,村田幸平,

横内秀起,衣田誠克

市立吹田市民病院 外科 【はじめに】近年,平均寿命の延長により高齢者食道癌患者の治療にあたること が増えている.今回,化学放射線療法(CRT)を施行した後期高齢者(75 歳以 上)の食道癌患者について有効性と問題点を検討した.【対象と方法】対象は 2010 年 4 月から 2013 年 12 月までに当科にて CRT を施行した後期高齢者の食道癌患 者 3 例である.CRT のレジメンは根治的 CRT は 5FU(250mg!m2 ; day1"5!w× 6),CDDP(5mg!m2 ; day1"5!w×6),Ra(2Gy ; day1"5!w×6)を,ま た 緩 和 的 CRT は 5FU(250mg!m2 ; day1"5!w×4),CDDP(4mg!m2 ; day1"5!w×4), Ra(2Gy ; day1"5!w×4)を原則とした.有効性は RECISTversion1.1 で,また 有害事象は NCI"CTCAEversion4.0 に準じて判定した.【症例提示】症例 1)76 歳,男性.主訴は嚥下困難.2010 年 12 月,食道癌に対する CRT(手術拒否)の ため他院より紹介となった.特記すべき既往歴は無く,PS0 であった.腫瘍は Mt の 3 型,StageIII(T3N1M0)の SCC で,根治的 CRT を施行した.治 療 効 果は PR(good PR)であった.また有害事象は grade2 の骨髄抑制とクレアチニ ンの上昇を認めたが,追加治療なく軽快退院した.症例 2)78 歳,男性.主訴 は食思不振.2011 年 5 月,上部消化管内視鏡検査で早期食道癌と診断され CRT となった.特記すべき既往歴は無かったが,PS は 1∼2 であった.腫瘍は Ut の 0"I+IIb 型,StageI(T1bN0M0)の SCC で,根治的 CRT を施行した.第 1 週 目は著変なかったが,第 2 週目に grade4 の低 Na 血症を認めた.ただちに抗癌 剤治療を中断し,Na の補正を開始した.Na の補正後放射線治療のみ再開した. 治療効果は CR であったが,有害事象として低 Na 血症のほか第 6 週目に grade3 の血小板減少と WBC 減少を認めた.放射線治療終了後に軽快退院した.症例 3) 85 歳,女性.主訴は嚥下困難と嗄声.2012 年 9 月,嗄声精査のため上部消化管 内視鏡検査を施行し進行食道癌と診断された.特記すべき既往歴は無く,PS1 で あった.腫瘍は Mt の 1 型 SCC であったが,CT 検査で多発肝転移を認めた. StageIVb(T3N2M1)のため緩和的 CRT となった.超高齢者のため抗癌剤を 25% 減量して CRT を施行し,治療効果は PR であった.また問題となる有害事象は 認めず軽快退院した.現在 FP 療法を継続している.【結語】高齢者の食道癌治 療においても化学放射線療法は有効と考えられる.一方,有害事象の発症には 個体差が大きいと考えられ,より慎重な治療計画と経過観察が重要と思われる.

参照

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