大牟田市立病院 外科1,大牟田市立病院 健診センター2
症例は 60 歳,男性.胃潰瘍出血のため緊急上部消化管内視鏡検査を受けた際,
門歯より 23cm の食道 Ut 領域に 0"1 型病変を指摘され,生検で扁平上皮癌が検 出された.内視鏡診断は通常観察,拡大内視鏡観察(IPCL type Vn)から sm 深層浸潤であった.全身精査から cT1b N0 M0 StageI と診断した.Informed con-sent の結果,患者が化学放射線療法(chemoradiation therapy,以下 CRTx)を 選択した.Low dose FP(CDDP 10mg!body,5FU 500mg!body,day1"5,8"12)
療法 2 コースと radiation 60Gy!30fr.による治療を行った.治療直後の内視鏡 検査で,粘膜面の食道癌は消失していたが,隆起が残存していた.治療後 2 ヶ 月目の内視鏡検査で同部位に不染帯を認め,生検で扁平上皮癌が検出され食道 癌遺残を確認した.粘膜面は表在癌のようだったが辺縁がなだらかに隆起する 隆起病変が残存していた.超音波内視鏡検査(以下 EUS)を行ったところ,腫 瘍の直下に粘膜下腫瘍を認めた.食道癌が遺残しているため salvage surgery の 適応となるが,食道癌は表在癌で,粘膜下腫瘍は平滑筋腫が疑われ食道筋層と 粘膜下の間にあり内視鏡的切除が可能であることを考慮し.診断目的に salvage の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を行うこととした.CRTx 後 3 ヶ月目,ESD 施行.食道癌と粘膜下腫瘍は一括で切除できた.病理診断の結果,食道癌は深 達度 EP(M1),ly0,v0 で,その直下に粘膜下腫瘍があり平滑筋腫であった.
本症例は,術前の内視鏡所見から深達度 sm2 以深と診断し CRTx を施行した が,腫瘍の縮小とともに粘膜下腫瘍が明らかとなった.CRTx 後の salvage をど うするか悩むところであるが,EUS の所見から内視鏡的切除が可能と判断し,
診断,治療を兼ねて ESD を施行した.現在,内視鏡,CT で経過観察中である が,切除後 11 ヶ月で再発の所見はない.食道癌と平滑筋腫が同部位に並存して いる症例はまれなため報告する.
一般演題 ポスター79
P79-2
ESD で診断し得た粘膜筋板由来の食道 平滑筋肉腫の 1 例
澤井寛明
1,山本佳宣
1,坂本岳史
1,飛松和俊
1, 西崎 朗
2兵庫県立がんセンター 消化器内科1, 県立柏原病院 消化器内科2
【症例】60 歳代男性.【主訴】嚥下困難【現病歴】1 ヶ月前から嚥下困難を自覚 し,近医での上部消化管内視鏡検査で隆起性病変を指摘されたため,当院紹介 受診.当院での上部消化管内視鏡検査で,胸部上部食道左壁を主座に 30mm 大 の頂部に白苔様の壊死組織を伴った隆起性病変を認めた.病変の立ち上がりは 明瞭で,一部で非腫瘍粘膜に被覆されていた.透視では,わずかに分葉構造を 有する表面平滑な病変であった.CT で腫瘍は造影効果を有する有茎性病変と認 識され,明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.2 回の生検検査では 壊死組織を伴う肉芽組織との診断であり,明らかな悪性所見は認めなかった.
確定診断に至らなかったが,内視鏡所見では癌肉腫を第一に疑い,診断的な内 視鏡的切除の方針となった.【生活歴】喫煙 20 本!日×40 年,ビール 500ml!日
【治療経過】治療時,病変は管腔を占拠する 50mm 大の病変として認識され,初 回内視鏡検査時と比較して著明な増大を認めた.EMR が困難であったため ESD による切除の方針となり,大きな偶発症や切れ込みなく,一括切除し得た.ESD 検体では表面に凹凸が目立つ柔らかい腫瘍であり,大きさは 50×30×30mm で あった.病理学的所見では,HE 染色にて紡錘形細胞がびまん性に増殖しており,
細胞間には粘液状基質が豊富にみられた.免疫染色では,smooth muscle actin と HHF35 が陽性であったが,desmin,h"caldesmon,CD34,c"kit,DOG1,ALK,
S"100 protein,cytokeratin などはすべて陰性であった.核分裂像 10 個!10 視野 と比較的豊富に認め,Ki"67index は 30% 程度であった.また desmin 染色では 腫瘍は粘膜筋板と連続するように認められた.以上の所見から粘膜筋板由来の leiomyosarcoma,myxoid type と診断された.ESD 後追加治療なく,術後 12 ヶ 月無再発生存中である.【結語】今回診断的な ESD で初めて確定診断し得た粘 膜筋板由来の食道平滑筋肉腫の一例を経験したため,若干の文献的考察を加え て報告する.
一般演題 ポスター79
P79-3
胸腺腫に対する照射野に認められた食道 平滑筋肉腫の 1 例
國崎真己
1,日高重和
1,黨 和男
1,阿保貴章
1, 竹下浩明
1,七島篤志
1,安武 亨
1,永安 武
1, 林 健太郎
2,中山敏幸
2長崎大学病院 腫瘍外科1,長崎大学病院 病理部2
【背景】平滑筋腫瘍は食道間葉系腫瘍の中でも頻度が高く,良性の平滑筋腫と悪 性の平滑筋肉腫に分類される.その中でも食道平滑筋肉腫は稀な疾患であり,
食道悪性腫瘍の 0.1〜2.2% を占めるにすぎないとされている.腫瘍の占拠部位は 下部食道が最も多く上部食道の発生は最も少ないとされている.今回我々は重 症筋無力症に対する治療として胸腺腫摘出術及び放射線治療後に同部位に認め られた食道平滑筋肉腫の 1 症例を経験したので報告する.【症例】症例は 61 歳 女性,嚥下困難を主訴に内視鏡検査を施行され,上部食道に I 型の腫瘍を指摘さ れた.生検を繰り返し施行されたが確定診断が得られず,徐々に増大し食事摂 取困難となったため精査加療目的で当科紹介となった.栄養状態不良であった ため術前経管栄養を施行し,術前生検にて Poorly differentiated carcinoma の診 断が得られたため,術前診断は食道腫瘍(Ut Type1 cT3(AD)N0M0 cStageII)
の診断で胸部食道全摘+胃管再建+D2 郭清を施行した.術後の病理所見は紡錘 形の細胞がびまん性,シート状,索条の増生を示す腫瘍成分で,腫瘍細胞は核 小体の明瞭な大小不同核を有し,一部で細胞分裂像も認めた.免疫染色にて上 皮マーカーには反応せず,平滑筋系マーカーのみ弱く陽性で平滑筋肉腫が最も 考えられた.今症例に対して文献的考察を加えて報告する.
一般演題 ポスター79
P79-4
食道 Liposarcoma の 1 例
瀧口豪介,中村 哲,音羽泰則,友野絢子,
山本将士,金治新悟,今西達也,鈴木知志,
田中賢一,掛地吉弘
神戸大学医学部附属病院 食道胃腸外科
【はじめに】Liposarcoma(脂肪肉腫)は脂肪芽細胞に由来する悪性腫瘍であり,
四肢深部や後腹膜に発生する事が多い.消化管での発生は比較的少なく,中で も食道での発生は消化管原発 Liposarcoma のうち 1.2〜1.5% と特に希である.
今回,我々は食道に発生した Liposarcoma の 1 例を文献的検討を加え報告する.
【症例】生来健康な 50 歳,男性.自覚症状はなく,人間ドックの胸部 CT にて頸 部食道に長径約 7cm 大の腫瘤を指摘された.内視鏡検査,透視検査では有茎性 腫瘍と判断した.MRI では大部分が脂肪成分で,一部に T1・T2 ともに低信号 の部位を認めた.EUS"FNA を行い脂肪成分と共に軟骨成分も採取されたが,
確定診断には至らず,有茎性粘膜下腫瘍と診断した.腫瘍は増大傾向を認めて おり,今後の窒息のリスクも含めて,切除の方針となった.腫瘍の大きさ,部 位から内視鏡的切除は困難と判断し,左頚部切開による腫瘍切除術を施行した.
切除標本は頸部食道から発生した有茎性粘膜下腫瘍であり,病理組織学的診断 では脂肪と軟骨成分を認め,免疫染色で p"16 陽性であった事から Liposarcoma
(Well"differentiated type)と診断した.現在は外来にて経過観察中であり,術 後 13 ヶ月経過しているが再発を認めてはいない.【考察】PubMed にて Liposar-coma,esophagus のキーワードにて検索し得た 32 例に自験例 1 例を加えた,計 33 例を検討した.発症年齢の平均は 58 歳であり,男性 25 人,女性 8 人と男性 に多く見られた.発生部位は頚部食道が 22 例,胸部食道が 11 例であった.腫 瘍径の平均は 12cm(4〜23cm)であり,腫瘍の形状は壁内発育の 2 例を覗いた 31 例(94%)は有茎性であった.自覚症状としては嚥下困難が最も多く,約 90%
に見られた.他には体重減少(30%),嘔吐(18%),胸部不快感(15%),呼吸 困難(15%),咳嗽(13%),嗄声(6%),悪心(6%)などが見られた.無症状 での発見は今症例だけであった.治療は全例で外科的・内視鏡的切除が行われ,
外科的切除術を施行した 24 例のうち 19 例では腫瘍切除術,4 例では食道部分切 除術,5 例で食道亜全摘術が施行された.内視鏡的腫瘍切除術は 5 例に施行され た.病理診断では Well"differentiated type が 20 例(60%),Myxoid type が 6 例(18%),Dedifferentiated type が 3 例(9%),Pleomorphic type が 1 例(3%),
詳細不明が 3 例であった.予後に関しては 78 ヶ月,300 ヶ月と長期観察されて いる 2 例(6%)に再発を認めた.【まとめ】今回我々は食道 Liposarcoma の 1 例を経験し,文献的検討を加え報告した.
一般演題 ポスター79
P79-5
食道から壁外性に発育し右胸腔内に伸展 した脂肪肉腫の 1 切除例
番場竹生,中川 悟,藪崎 裕,會澤雅樹,
松木 淳,梨本 篤
新潟県立がんセンター新潟病院 消化器外科
【はじめに】脂肪肉腫は下肢や後腹膜に好発する軟部悪性腫瘍である.今回我々 は食道筋層から壁外性に発育し,右胸腔内に伸展した脂肪肉腫の症例を経験し たので報告する.【症例】54 歳,男性.高血圧症にて内服治療中.2013 年 7 月 に検診の胸部単純 X 線で右胸部異常陰影を指摘され,8 月に当院を初診した.
受診時に自覚症状はなかった.検血,生化学検査で異常はなく,血中腫瘍マー カーは SLX が 57 U!mL と高値であった.CT 検査では右後縦隔から胸腔内に伸 展する最大径 14 cm の腫瘍を認め,部分的に食道壁との連続性が疑われた.腫 瘍内部は脂肪濃度の低吸収域の中に索状の充実性部分が認められた.CT ガイド 下針生検では線維性組織と脂肪組織を認めたが,明らかな悪性所見はなかった.
上部消化管内視鏡検査で食道内腔に異常所見は認めなかった.後縦隔の間葉系 腫瘍と診断し,10 月に右開胸下腫瘍切除術を施行した.術中所見で腫瘍は後下 縦隔に存在し,右胸腔側に膨張性に発育していたが表面は胸膜に覆われており,
胸腔内臓器への浸潤はなかった.縦隔内で腫瘍は下部食道壁に付着しており,
筋層を一部合併切除して摘出した.腫瘍は大きさ 18×10×7 cm,重量 720 g で,
薄い被膜を有しており,割面は黄色と白色調成分が混在していた.組織学所見 では異型細胞を伴った脂肪組織と比較的疎な線維成分からなる腫瘍であった.
免疫染色で異型細胞は vimentin(+),S100(+,少量),CD34(+,少量),CDK 4(+),MDM(+,一部),p53(+,一部),Ki67(+)であり,最終的 に 高 分化型脂肪肉腫と診断した.術後の経過は良好であり,第 11 病日に退院した.
【まとめ】食道壁から発生した脂肪肉腫が著明な壁外性発育を呈し,後縦隔から 胸腔内に伸展していた.周囲臓器への浸潤はなく食道を温存して腫瘍を完全切 除することができた.高分化型脂肪肉腫の完全切除後の予後は比較的良好とさ れるが,脱分化を伴った再発の報告もあり経過観察の継続が重要である.