サンプル条件および固定化分子の選択
Biacoreの実験ではセンサーチップに固定化する分子をリガンド、それに対して結合を測定する分子 をアナライトと呼びます。いずれの分子をリガンドとし、アナライトとするかは、実験系を構築する上で 重要です。以下にサンプルに適したリガンド、アナライトの設計方法やサンプルの必要条件などをご 紹介します。<サンプルの種類>
(1) タンパク質 リガンドとしてもアナライトとしても用いることができます。固定化する場合は、センサーチップCM5 を使用してアミンカップリング法で固定化、または、キャプチャー法で固定化することが多いです。酸 性タンパク質はアミンカップリング法では固定化効率が悪いため、キャプチャー法(以下<サンプル の精製度>参照)やビオチン化してセンサーチップ SAに固定化するか、アナライトとして使用します。 (2) ペプチド リガンドとしてもアナライトとしても用いることができます。固定化する場合は、センサーチップCM5 に直接固定化するか、N末にビオチンを導入したペプチドを調製して、センサーチップSAやセンサーチ ップ CAP(Biotin CAPture Kit)に固定化することができます。末端に導入したチオール基や末端アミノ基を使用して化学結合でペプチドを固定化する場合には、 末端以外の相互作用に関与する部分に同じ官能基がないことを確認してください。ペプチドは分 子量が小さいため、結合部位に同じ官能基があると多点で固定化されるため、固定化後の自由度 の低下や立体障害によって結合活性が低下することがあります。 なお、疎水的が高いペプチドを取り扱う際には、溶解性を上げるために界面活性剤や有機溶媒 (DMSOなど)を緩衝液に添加してご使用ください。この場合、システム付属ハンドブックの化学耐性 表で、使用できる有機溶媒の種類、濃度、添加時間について必ずご確認ください。 (3) 核酸 核酸はリガンドとして使用することが多いです。アナライトとして使用することも可能ですが、核酸は 中性付近の緩衝液条件でマイナスに荷電しているため、センサーチップ表面のカルボキシメチルデ キストランのマイナス荷電と反発してセンサーチップ表面のアナライト濃度が実際の濃度よりも低下 アナライト リガンド センサーチップ
したり、相互作用への影響が懸念されます。このため、通常はリガンドとして使用することをお奨めし ます。固定化は、末端ビオチン化した核酸をセンサーチップ SAに添加することでビオチンーアビジン の親和性で固定化できます。最長200 base程度の核酸まで固定化できます。核酸が長くなると、静 電的な反発や、デキストラン鎖との立体障害によって固定化が困難になります。 なお、末端にアミノ基を導入した核酸は、アミンカップリング法でセンサーチップ SAに固定化できま す。センサーチップ表面との静電的反発を抑制するため、固定化緩衝液に陽イオン界面活性剤 (CTAB)を添加することでアミンカップリング法での固定化が可能となります。 (4) 脂質 Biacoreで測定できる脂質とは、POPCあるいはDMPC等のリン脂質、糖脂質あるいはガングリオシド のことを指します。脂質の相転移温度が室温よりも低い場合には、リポソームの作成が困難で、固定 化もできないため注意が必要です。 脂質は通常リポソームとして取り扱います。カイネティクス解析が目的の場合には、リポソームは定量 化が困難であるため、アナライトとしてではなくリガンドとして用いることが多いです。固定化する場 合は、目的の脂質を1~5%含むPOPCあるいはDMPC等のリポソームを調製し、脂質を一重膜で固定 化できるセンサーチップHPA あるいは二重膜で固定化できるセンサーチップL1 に固定化します。 (5) 低分子化合物 分子量1,000 Da 程度以下のものを指します。使用機種の検出限界分子量以上であれば、リガンド としてもアナライトとしても用いることが可能です。 リガンドとして用いる場合は、官能基( -NH2(1級アミン)、-COOH、-SH、-CHO、-OH )の有無、立体 障害等を考慮し、センサーチップCM5に固定化するか、ビオチンを導入して、センサーチップ SAに固 定化します。何れの場合にも、センサーチップ上のデキストラン鎖との立体障害を回避するために、 親水性の高いスペーサーを介して固定化することをお奨めします。 (6) ウイルス、細胞 アナライトとして用いることが多いです。Biacoreシステムは、センサーチップ表面より約300 nmの範 囲の質量変化を捉えています。このため、分子サイズの大きいウイルスや細胞を固定化するよりも、 質量変化を起こすアナライトとして使用する方が、相互作用シグナルが得られ易いです。 固定化する場合には、ウイルスまたは細胞表面上のタンパク質のアミノ基を利用してアミンカップリ ング法で固定化するか、表面タンパク質を認識する抗体を利用したキャプチャー法(以下<サンプル の精製度>参照)で固定化している例があります。 なお、膜タンパク質がターゲットの場合には、可溶化ドメインを固定化したり、膜分画または膜タンパ ク質を脂質に埋め込めた状態でセンサーチップ L1に固定化する方法などもあります。
<サンプルの精製度>
センサーチップ上に直接固定化する分子は、精製度が高いことが最も重要な条件です。精製度の 低いサンプルを固定化した場合には、目的リガンドの固定化量が定量し難く、さらに相互作用測定 時に得られる結合レスポンスがどの固定化分子由来のものかも評価し難いです。よって、固定化分 子の精製度は90%以上であることが望ましいです。なお、精製度が高くても、安定化剤としてウシア ルブミンやゼラチンなどが含まれていると、これらの分子が固定化され目的分子が固定化できない、 固定化量が少ないなどのトラブルの原因となりますので注意が必要です。 精製度が低いリガンドを固定化する場合の対応策として、抗リガンド抗体や抗タグ抗体を利用する キャプチャー法があります。キャプチャー法では、抗リガンド抗体または抗タグ抗体をセンサーチップ に固定化し、センサーチップ上で抗体との特異的親和性を用いてリガンドを捕捉精製する方法です。 タグ(GST、His、Fc など)を持つリガンドの場合、タグに対する抗体を固定化することで間接的に固 定化することが可能です。ただし、サイクルごとにリガンドを捕捉しなおす必要があるため、化学結 合による固定化に比べてサンプル量が必要となります。 弊社では、次のキャプチャーキットを販売しています。 ・GST Capture Kit (BR-1002-23) GST融合タンパク質用 ・Mouse Antibody Capture Kit (BR-1008-38) マウス抗体用・Human Antibody Capture Kit (BR-1008-39) ヒト抗体およびヒトFcタグ付きタンパク質用 ・Human Fab Capture Kit (BR-28-9583-25) ヒトFab用
・Biotin CAPture Kit (28-9202-33)またはBiotin CAPture Kit, Series S (28-9202-34) ビオチン化サンプル用
Hisタグタンパク質の固定化には、キレート作用を利用してキャプチャーできるセンサーチップ NTAを ご使用ください。
・Series S Sensor Chip NTA 3枚入り (BR-1005-32)
・Sensor Chip NTA 1枚入り (BR-1004-07)、3枚入り (BR-1000-34) リガンド
アナライト キャプチャー方式の一例