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認知行動療法を「集団」で実施することはクライエントにどのような利益をもたらすか?

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 92

-認知行動療法を「集団」で実施することは

クライエントにどのような利益をもたらすか?

○(企画・司会者)山本 竜也1)(話題提供者)青木 俊太郎2)(話題提供者)太田 滋春3)(話題提供者) 岩野 卓4)(指定討論者)遊佐 安一郎5) 1 )中京大学、 2 )福島県立医科大学、 3 )こころsofa、 4 )大分大学、 5 )長谷川メンタルヘルス研究所 集 団 療 法 は, 個 人 療 法 と 同 等 の 効 果 を も た ら す (McRoberts et al., 1998)にもかかわらず,費用対 効果が高いため(Tucker & Oei, 2007),公認心理師 が国家資格化された今,我が国において中心的な治療 法になる可能性がある。特に,集団形式での認知行動 療法(GCBT)の実践は,治療効果のエビデンスだけで はなく,参加者同士の交流という点において大きな意 味を持ち,治療行動や認知行動療法の「技法」として の効果を促進する可能性を秘めている。本企画では, GCBTについて,うつ病や強迫症,アルコール依存症な ど,対象疾患が異なる中での参加者間の関わり合いが もたらす効果について議論し,GCBTをよりよく運営す る上での情報を提供したい。 演者 1 :青木俊太郎「行動活性化に“集団”で取り組 む」 この演題では,うつ病に対する行動活性化を集団で 行うにあたっての工夫点についての情報を共有する。 行動活性化は,うつ病の改善のために編み出された心 理療法である(例えば,Lewinsohn, 1974)。行動活性 化では,個人の抑うつ症状を緩和するような行動パ ターンを実践し,個人の価値に向けた行動を増やすこ とで,抑うつ症状の改善や生活をより良いものにして いくことが目標の一つとなり(例えば,Lejuez et al., 2001),演者はそのような目的のもと集団行動活 性化を実施してきた。 一方,うつ病では倦怠感によって行動への動機づけ が著しく低下すること,そして抑うつ的な考え方に よって行動をすることをためらってしまうことが多く ある。そのため,行動をしようという動機づけを高め ていくことが行動活性化では必要になるが,集団療法 の利点を最大限に利用することによって,行動の生起 確率を高めていくことが期待できる。 さらに,行動をしたとして,本人が「うまくいかな かったなぁ。」と感じたとしたら,継続的な行動には つながらない。この点は,行動実験として実施するこ とで,本人の行動パターンに関する情報収集に徹底し てもらうという意味付けをし,失敗の可能性をゼロに しておくことがまず重要である。このことに加えて, 本人が思っている以上に周囲からの評価はマイナスな ものではなく,プラスの評価を受けることが多い。こ のような点も,本人の行動が自然と持続する要因にも なることが期待できる。 上述の事項を踏まえながら,本取り組みの量的な効 果判定に加えて,参加者の感想の質的分析や事例を基 に,行動活性化を集団で実施するうえでの工夫点につ いて,情報共有したい。 演者 2 :太田滋春「OCDの集団認知行動療法の試み: 心理教育+課題設定+ほめっせーじ」 2014年夏,北海道OCDの会が設立された。設立後よ り,演者は北海道OCDの会のサポーターとして関わっ ている。定例のお話会の中で「書籍等からOCDには行 動療法が重要と知っても地域でOCDを専門に治療して くれる場がない」という現状を嘆く言葉を多数耳に し,何か地域でできる試みをと考え, 2 つの取り組み を開始した。一つは実践の場を増やすことの取り組み としてOCD関連の研修会の開催をすること,一つは地 域のメンタルクリニックにてOCDを対象とした集団療 法(年に 2 回)を実践することである。 実践している集団療法は, 1 クール 4 回( 1 ~ 3 回目は週 1 回, 4 回目のみ 2 週後)で行い,1.自身の 強迫症状を客観的に理解する,2.エクスポージャーと 儀式妨害(以降,ERP)について理解する,3.自身の ERPの具体的な課題を考える,4.課題にチャレンジす るという点をねらいとしてる。 プログラム内容は, 第 1 回目:強迫症状及びERPについて心理教育を行 い,自身の症状を「○○恐怖(強迫観念)で,儀式は △△(強迫行為)」という型で整理し,発表する。 第 2 回目~ 4 回目:周囲と交流しながら,自身の課 題(ホームワーク)を設定し,発表する。 第 3 回目, 4 回目:課題のチャレンジ状況を報告し, 他メンバーとスタッフからほめっせーじ(肯定的な点 を 肯 定 的 な 言 葉 で 伝 え よ う ) を も ら う。 と い う メ ニューである。 個人療法では得られない要因(参加者間の関わり合 いや複数スタッフ体制)が活きるよう試行錯誤しつつ 工夫している点について紹介し,皆さんとのディス カッションを通じて,より良いものへのアイディアを 持ち帰りたい。 演者 3 :岩野卓「依存症の集団認知行動療法」 依存症は,自身に害があるにも関わらず嗜癖行動を 止められない問題である。たばこやギャンブルなど 自主企画シンポジウム 2

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 93 -様々な依存対象があるが,アルコール依存に限定して も日本の有病者数は109万人と推定されている(尾崎, 2014)。また,依存症は慢性疾患と考えられており, 一時的に嗜癖行動が止まっていても,寛解したとは言 えない。各種の依存症に共通して,嗜癖行動の 1 年再 発率は 7 割前後である(Hunt, 1971)。 依存症の治療として,認知行動療法(以下,CBT) 及び学習理論に基づくアプローチはエビデンスが示さ れている(Dutra et al., 2008)。日本では,薬物依 存に対するCBTがSerigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(以下,SMARPP)としてパッケー ジ化されており,薬物依存に対しては保険算定がされ ている。また,SMARPPはワークブックが整備されてい ることから,依存症の治療経験がない者でも実践が可 能である。さらに,SMARPPを含む依存症の治療は,基 本的に集団アプローチである。代表的なアプローチと して自助グループが挙げられるが,依存症者はパター ナリズムを嫌う傾向があり,同じ依存症者の意見の方 が医療スタッフの意見よりも共感しやすいと言われて いる(片丸・影山,2008)。 筆者は現在,アルコール依存用の短期集団CBTプロ グラム(RELIFE-A2)の効果検証を行っている(JSPS 科研費JP17K13941の助成を受けて行われた)。研究途 中のデータであるが,Treatment As Usualと比較し て,治療脱落率が少ない。RELIFE-A2は,スキル訓練, 心理教育,価値の明確化,社会資源についての説明が 含まれるが,基本コンセプトはハームリダクション (herm reduction)であり,この点はSMARPPと同様で ある。すなわち,断酒を目的とするのではなく,飲酒 によってもたらされる害を最小化することを目的とす る。依存症は慢性疾患であるため,一時的な断酒を強 要するよりも,治療の継続を優先させる方が長期的に みて心理社会的問題が軽減されるのである。依存症者 は基本的に断酒したいとは考えていないため,この点 が他の疾患に対するCBTと比べて特徴的である。また, スタッフの関わりは動機づけ面接を基本とする。これ は,依存症者と医療スタッフのパワーゲームが起こる ことを回避するためであり,断酒や節酒は本人の自由 意志に基づいて決定してもらう。参加者の断酒に関す る発言を引き出し,スタッフからは断酒や節酒を強制 しない関わりをすることで,治療パッケージが活用し やすくなると考えられる。 自主企画シンポジウム 2

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