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正期産正常新生児に対し出生直後から生後4日までに実施した看護行為と看護時間

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Academic year: 2021

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正期産正常新生児に対し出生直後から生後4日までに実施した

看護行為と看護時間

Nursing care provided to newborns delivered normally at full term

from immediately after birth to day four and the time used for care

中 井 かをり(Kaori NAKAI)

*1

齋 藤 いずみ(Izumi SAITO)

*2

寺 岡

歩(Ayumi TERAOKA)

*1 抄  録 目 的 現在,正常新生児は保険診療報酬の対象外であり,正常新生児への看護人員配置の基準はない。正常 新生児への看護の安全性と質を上げるための看護人員配置を検討するための基礎的資料が求められてい る。本研究の目的は,出生直後から生後4日までの正常新生児に対し,産科の病棟内で実施している看 護行為と看護時間を明らかにすることである。 方 法 産科の病棟を有する3施設において,マンツーマンタイムスタディ法により生後0日は出生直後から の8時間,生後1~4日は午前8:30~16:30までの8時間に看護者が正常新生児に対し実施した看護を 111日間調査した。 結 果 対象は正常新生児64名と看護者122名であった。提供の多い看護行為には生後日数による変動がみら れた。平均看護時間は,測定8時間のうち児1人当たりに約2時間を費やし,生後日数間に有意差はな かった。 結 論 本研究により,正常新生児への看護行為と看護時間が明らかになった。今後,さらに正常新生児への 看護に専念できる人材の必要性を検討するためのデータの蓄積が望まれる。 キーワード:正期産正常新生児,産科混合病棟,新生児看護,マンツーマンタイムスタディ法,看護人 員配置 2018年2月1日受付 2018 年9月2日採用 2018 年11月30日早期公開

*1神戸大学大学院保健学研究科 博士課程後期課程(Kobe University Graduate School of Health Sciences Doctoral Course) *2神戸大学大学院保健学研究科(Kobe University Graduate School of Health Sciences)

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Abstract Purpose

Newborns delivered normally at full term are not covered by the current medical insurance system. There is no criterion for the proper assignment of nursing staff in newborns. Fundamental materials are being desired to ensure infant safety and increase the quality of nursing care. The purpose of this study was to clarify the nursing care and time in maternity wards. Target subjects were newborns from immediately after birth to day four.

Method

We applied a one-on-one time study method to investigate nursing care provided to newborns delivered normally for the first eight hours immediately after birth, and for eight hours between 8:30 am and 4:30 pm on day one to day four at three hospitals with maternity wards.

Results

Subjects of this study were 64 newborns delivered normally and 122 nurses. Nursing care provided to the newborns changed according to the day after birth. Mean nursing time was approximately two hours per newborn during the eight hours measured. No significant difference was observed in the time used to provide nursing care among the days.

Conclusion

This study clarified the nursing care and time for newborns. Furthermore, it is desirable to accumulate data to consider the proper assignment of nursing staff in newborns.

Key words: full-term normal delivery, maternity ward, nursing care for newborns, one-on-one time study method, assignment of nurses

Ⅰ.緒   言

日本の出生数は年々減少傾向にあり,2016 年には 97万人余りであった(厚生労働省「人口動態統計」, 2017a)。出生は54.3%が病院で行われ,45%が診療所 で 行 わ れ て い る(厚 生 労 働 省「人 口 動 態 統 計」, 2017b)。約半数が出生する病院には「産科単科」「産科 と婦人科の混合病棟」「婦人科以外の診療科との混合 病棟」がある。日本看護協会の実態調査によると産科 混合病棟は,2012年 80.6%,2016年77.4%であり,産 科混合病棟において「産科患者と他科患者の入院状況 によって,他科患者を産科病床に入院させる」施設の 割合は,2012年52.4%から2016年63.9%へと増加して おり,分娩が行われている病棟の中で,正期産正常新 生児(以下正常新生児)が他科の患者と混在し入院し ている。さらに,「産科混合病棟における助産師の患 者の受け持ちにおいて「他科患者と産婦を同時に受け 持つ」割合は43.7%で,平成24年実態調査結果に比し て有意に増加していた。」ことから,他科患者の状態 によっては,正常であるとされる産褥入院中の母児へ の看護の優先順位が下がることが考えられる(公益社 団法人日本看護協会,2017)。2013 年日本看護協会は 産科病棟管理者研修会において,入院患者数に健康な 新生児を含めてよいと提言している(公益社団法人日 本看護協会,2013)が,日本の診療報酬制度におい て,正常新生児に対する看護人員配置は保険診療報酬 の対象外である(医学通信社,2016)。現状を佐藤ら (2012)は新生児に対する看護人員配置が不十分であ ると述べている。このような背景下,これまでに正常 新生児の入院中の看護行為や看護時間を詳細に実測調 査した研究は見当たらなかった。そこで,正常新生児 への看護行為と看護時間を明らかにすることによって 正常新生児への安全性と看護の質を上げるための看護 人員配置の検討に資する基礎的資料とすることを目的 に本研究を行った。

Ⅱ.研 究 方 法

1.用語の定義 看護者:正常新生児を看護する助産師及び看護師・ 准看護師をあわせて看護者とした。 2.研究デザイン 前向き観察研究 3.調査施設 調査施設は,特定のエリアにおいてリクルートを行 い賛同を得られた A ・ B ・ C の 3 病院とした。A 病院 正期産正常新生児に対し出生直後から生後4日までに実施した看護行為と看護時間

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娩前から産後母体が落ち着くまでの期間―生後0日か ら生後2日まで―母児は産科単科病棟に滞在する。た だし,ほとんどの母児は生後1日の午前11時に産科混 合病棟に転棟し,母子同室となるシステムである。看 護 方 式 は PNS(Partnership Nursing System: パ ー ト ナーシップ・ナーシング・システム)を採用していた。 2014年の分娩件数は約650件であった。 B病院では51床の内科混合病棟内に完全にゾーニン グされた産科 12 床が含まれ,一般患者や全ての入院 患者の家族は産科領域に入れない構造であった。生後 1日の午後から母子同室であった。看護方式は機能別 看護を採用していた。2014年の分娩件数は約290件で あった。 C病院は35床の産科病床に加え小児科2床併設の産 科混合病棟である。出生直後から母子同室であった。 看護方式は機能別看護を採用していた。2014 年の分 娩件数は約600件であった。 4.調査期間 調査期間はA病院2015年2月4日から3月31日まで, B病院同年4月1日から5月29日まで,C病院同年6月 3日から 7 月 31 日までの土曜・日祝日を除外した 111 日間の日勤帯の調査であった。看護人員が多く看護ケ アが多い日勤帯を調査対象とし,生後0日は出生直後 からの8時間,生後1~4日は日勤帯8:30~16:30ま での8時間の正常新生児への看護行為と看護時間を測 定した。 5.調査対象者 対象は,経産婦と初産婦では分娩による疲労や育児 経験の違いにより必要な看護行為の内容や看護時間に ばらつきが生じると考えられたため,初産婦から出生 した正常新生児,ならびに,正常新生児を看護する看 護者とした。看護時間は,看護者の仕事量や経験,ス ピードにも影響されると考えられる。しかし,施設ご とにラダー設定基準が異なるため,看護者の熟練度を Benner(2005/2006)の 5 段階を採用し分類した。本研 究では看護者の選定は行わなかった。表1に対象者の 背景を示す。 1)正常新生児 対象新生児は,初産婦から出生した正常新生児とし た。正常に経過中の新生児で黄疸等の発症が見られた としても小児科の入院管理とならない限り対象として 調査を継続した。また,出生児体重が 2,500g 未満で あっても小児科の管理とならない限り,在胎週数 37 週0日~41週6日までの正期産児を対象とした。帝王 切開で出生した正常新生児は除外した。正常新生児は 3施設とも生後 5 日が退院日であったが,退院日は退 院時間が個々で異なるため調査は生後4日までとした。 2)対象看護者 A病院は,産科単科病棟に助産師32名,産科混合病 棟に助産師11名,看護師14名が配属されていた。B病 院は,産科ゾーン専任看護者は常勤助産師7名,夜勤 専従助産師 3名,日勤専従助産師 4 名であったが,人 員が必要な時は内科ゾーンより看護師がサポートし, 本研究では11 名の看護師が対象となった。C病院は, 調査前半は助産師 11 名,看護師 12 名であったが,後 半は助産師11名,看護師4名,准看護師5名であった。 6.調査方法及び内容 調査方法及び内容は,大野ら(2002)のタイムスタ ディ法を使用した研究を参考とした。他計式マン 施設 A B C 合計 対象新生児数 総数 19 17 28 64 生後日数別新生児数 0日 10 5 9 24 1日 9 11 13 33 2日 8 7 12 27 3日 7 10 10 27 4日 8 13 11 32 母親年齢 3535歳以上歳未満 145 152 244 5311 分娩週数 37週0日~37週6日 1 1 0 2 38週0日~38週6日 5 2 5 12 39週0日~39週6日 5 8 8 21 40週0日~40週6日 6 2 12 20 41週0日~41週6日 2 4 3 9 新生児 の出生体重 2500g未満 2 2 0 4 2500~3999g 16 15 28 59 4000g 1 0 0 1 対象看護者 助産師 達人 21 8 9 9 中堅 6 3 8 8 一人前 5 1 2 2 新人 8 2 0 0 看護師 達人 7 11 6 6 中堅 1 0 6 6 一人前 5 0 3 3 新人 5 0 0 0 准看護師 達人 0 0 5 5 中堅 0 0 0 0 一人前 0 0 0 0 新人 0 0 0 0 ※対象新生児を生後日数別で記載しているため,対象新生 児数と生後日数別新生児数は一致しない

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ツーマンタイムスタディ法により,ルーチンケアの多 い日勤帯に正常新生児に提供されている看護行為と看 護時間を測定した。「測定」「呼吸・循環管理」の看護行 為は秒単位での判断を要するため,調査は研究者が看 護者に密着し1秒単位で行った。研究者は看護者の勤 務中,休憩時間以外は行動を共にし,休憩中に急なケ アが発生する場合は測定ができるように研究者に連絡 をもらった。観察項目である看護行為は,国内外の文 献検索の結果,明確な看護行為分類を確認できな かった。そこで,日本看護協会の新看護業務区分表・ A(1997)を基礎とし,仁志田博司,佐藤和夫,横尾京 子等の著書を参考にし,複数の助産師と協議のうえ, 新生児看護行為分類表を作成した。それを表2に提示 する。項目は日本看護協会新看護業務区分表・ A (1997)に準じる。新生児看護行為内容は,授乳観察 ・介助,搾乳,搾乳介助などの授乳に関する看護行為 を「食事」とし,授乳指導・沐浴指導・退院指導など の退院後に向けた看護行為は「自立の援助」にまとめ た。感染予防,早期母児接触の見守りなどの新生児の 安全を確保するための看護行為を「安全」とした。 表2 新生児看護行為分類表 項目 新生児看護行為内容 食事 看護者による白湯・糖水・人工乳の準備・哺乳,母乳量の測定・観察,排気,白湯・糖水・人口乳の手渡し,授乳介助,搾乳,搾乳介助,授乳の観察 排泄 おむつ交換,嘔吐時の世話,綿棒浣腸など排便の促進介助 清潔 清拭,沐浴,ドライテクニック,衣類・寝衣交換や整え,鼻腔・耳介保清,臍消毒,臍クリップ除去,爪きり 安全 転落予防,巡視,感染予防,防災,カンガルーケアの見守り,沐浴の見守り,母児標識の装着・更新,児への声掛け,看護者の手洗い・手消毒,手袋着用, ディスポエプロン等の着脱,インファントウォーマー上に寝かせる 安楽 胎位の工夫,ポジショニング,罨法(罨法の温度管理を含む),児の預かり,コット収容,抱っこ,あやす,コットをゆりかご様に揺らす 入院環境の整備 室温・湿度調整,採光・照明の調節,騒音防止,防虫,コット移動,コット内の整理・整頓・保清,コット内メーキング 自立の援助 母児面会と抱擁の介助,母親への育児指導(新生児の取り扱い・観察事項に関する こと,授乳指導,沐浴指導),母児関係の観察,母児同室説明,各種手続きの説明, 退院お見送り,搬送・転院の検討・依頼,小児科受診説明,母子手帳預かり・返 却,聴力検査結果説明 患者移送・移動 新生児を抱いて,もしくはコットでの移動 患者及び家族との 連絡・相談 家族との電話対応・来院対応・連絡,家族との情報交換及び相談,児に関するナースコール,家族との面会,IDカード受取・返却 準備・後片付け 授乳準備,哺乳瓶洗浄,コット・クベースの清拭・消毒,沐浴槽の準備・洗浄・消毒,その他日常生活の援助による準備・後片付け 指示受け・報告 指示受け,医師への確認,状態報告,ドクターコール 測定 看護者によるアプガースコアの採点・新生児の状態の評価,T,P,R,体重,身長,胸囲,頭囲,血糖値,ミノルタ黄疸計によるビリルビン値の測定,便・尿回 数と性状確認,見守り 呼吸・循環管理 酸素吸入,吸引(鼻腔口腔・胃液),PaO2モニター装着・観察・除去,背部刺激,O2投与,肩枕,肺音・心音聴診,呼吸・循環管理のための保温 診療・治療の介助 医師による診察・採血・カテーテル挿入および除去・レントゲン撮影等の介助,光線療法の介助と管理等 諸検査の介助及び 検体採取 臍帯血ガス・臍帯血検査,胃内吸引液検査,聴力検査,ガスリー採血,採尿,各種検査の他部門との連絡,その他の検査片付け 注射・点滴 点滴挿入介助・管理 与薬(注射を除く) 点眼,K2シロップ与薬・服用確認,軟膏塗布,K2シロップ保管・管理 準備・片付け 看護者でなくとも可能な処置の準備・後片付け,検体容器・提出準備,結果整理等,デイスポ製品等のごみの片付け,その他診療場面における援助による準備・ 片付け 看護計画・記録 分娩時の児に関する看護記録,問題リスト,看護計画,経過記録,体温表,サマリー,カンファレンス その他の記録 処置計画,ワークシート作成,母子手帳記載,足型取り,写真撮影 看護者間の申し送 り 申し送り,看護者間の病棟内連絡 日本看護協会 新看護業務区分表A(1997)を基に中井が作成 正期産正常新生児に対し出生直後から生後4日までに実施した看護行為と看護時間

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7.分析方法 新生児1人に対して,①主に日勤帯の8時間を1日の 観察期間とし,その間に提供された看護時間を21項目 の看護行為別に数値化した。②看護者が1人の新生児 に対して複数の看護行為を同時期に行った場合,主と なる看護行為のみを看護時間として計上した。③それ らの合計を新生児 1 人に対する 1 日看護時間とした。 この看護時間をもとに記述統計を求めた。データ分析 はSPSS Ver. 23を使用した。各生後日数別新生児への 看護時間の分析には一元配置分散分析を行い,Tukey による多重比較を行った。有意水準は両側5%とした。 8.倫理的配慮 神戸大学大学院倫理審査委員会(承認番号 362-1)お よび各施設の倫理審査委員会審査承認を得て実施した。 研究について研究者から看護管理者に説明後,看護者 に対しては看護管理者から説明承諾を得た。また,調 査が看護者に対し監視的に感じることを考慮し,看護 者への負担を考え,一施設の調査機関を2か月と限定 し,主に日勤帯の調査を実施し土日祝日・夜間の測定 は行わなかった。対象正常新生児に対しては,A病院 では家族及び産婦に病院看護管理者から説明同意を得 た。B 病院では研究者が産婦人科外来で妊婦に直接, 書面を用いて説明し後日承諾書を得た。C病院では当 日の受け持ち助産師から説明し承諾を得た。個人情報 の保護に関しては厚生労働省の人を対象とした医学系 研究に関する倫理指針ガイダンスに則った。

Ⅲ.結   果

1.対象者の背景 3施設で出生した合計64人の正常新生児とその看護 を実施した看護者122名から看護行為と看護時間を収 集した。研究対象の正常新生児の在胎週数は平均 39 週5日±7日,出生時体重は平均3047±388gであった。 対象者の詳細は表1に示した。 2.生後日数別の正常新生児への看護行為と看護時間 本研究の結果には,新生児看護行為分類表の項目の 「注射・点滴」のデータは発生しなかった。各生後日数 ごとの看護時間は表3に示す。生後0~4日までの全例 に対する日勤帯8時間の平均看護時間は,2時間15分 45秒であった。生後0~4日までの正常新生児への看護 時間の比較には,一元配置分散分析を行った。その結 果,生後日数によって看護時間の平均値に有意な差は 認められなかった。(F値(4, 138)=1.95,p値=0.106)。 生後 0~生後 4 日までの生後日数ごとの看護行為項 目上位5位を表4に示す。生後0~4日の全日で「食事」 「自立の援助」「記録」の看護行為が看護行為項目上位5 位に見られた。看護行為全体の比率は,「食事」「自立 の援助」「記録」が生後0日は10.0%,8.3%,13.1%,生 後 1 日 は 22.6%, 24.1%, 6.1%, 生 後 2 日 は 28.4%, 16.4%,6.4%,生後 3 日は 23.1%,28.4%,6.5%,生後 4日は 16.9%,37.0%,7.0% であった。看護行為項目 上位5位において生後0日のみに見られた「安全」は看 護行為全体の比率が6.9%であった。生後3日・4日に 見られた「準備・後片付け」は,看護行為全体の比率 がそれぞれ 8.4%,7.1% であった。生後 0 日以外に見 られた「申し送り」は,看護行為全体の比率が生後 1 日 12.9%,生後 2 日 12.3%,生後 3 日 7.0%,生後 4 日 9.8%であった。生後 3 日以降 5 位までに見られなく なった「測定」は,看護行為全体の比率が生後 0 日 13.1%,生後1日6.3%,生後2日6.3%であった。 生後日数 n数 平均値 中央値 標準偏差 最小値 最大値 0日 24 2時間 28分09秒 27分45秒2時間 38分15秒 22分47秒1時間 01分43秒4時間 1日 33 2時間 24分25秒 17分14秒2時間 1時間 14分16秒 43分16秒 46分59秒4時間 2日 27 1時間 58分03秒 1時間 35分29秒 1時間 12分54秒 38分33秒 5時間 30分32秒 3日 27 1時間 57分14秒 451時間分17秒 46分50秒 29分12秒 584時間分35秒 4日 32 2時間 30分56秒 22分39秒2時間 1時間 4分42秒 55分04秒 58分45秒6時間 ※日勤帯8時間の測定  F値(4,138)=1.95 p=0.106

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1)生後0日 生後0日の対象正常新生児は24例であった。生後0 日の新生児に対しては,出生からの2時間までに,測 定 8 時間の看護時間のおよそ半数の 54.7%(1 時間 17 分 6 秒)の看護時間を実施していた。出生から 3 時間 までは 24 例全ての正常新生児に看護行為を実施して いた。出生から 3 時間以降は,24 例中の 62.5%(15 名)の正常新生児に対し看護行為の実施があった。 生後 0 日は「測定」の看護行為にかかる看護時間が 最も多く,8時間の測定中に「測定」の看護行為は継続 してみられ,平均看護時間の19.1%(28分18秒)を占 めた。また,「食事」「自立の援助」の看護行為が上位 にみられ,それぞれの看護行為は,平均看護時間の 10.1%(14分55秒),8.8%(13分6秒)であり,合わせ ると平均看護時間の18.9%であった。「安全」の看護行 為が上位5位にみられた。「呼吸循環管理」の看護行為 は,生後0 日の全体の上位にないが,出生からの 1時 間までには平均して4分27秒みられた。 2)生後1~4日 表4に示すように,生後1~4日の正常新生児への看 護行為は「食事」「自立の援助」「看護計画・記録」「看 護者間の申し送り」の看護行為が全日においてみられ た。この4看護行為の合計時間は各日の平均看護時間 との比率が生後 1 日 66.5%,生後 2 日 66.6%,生後 3日 65.0%,生後 4 日 72.2% と 6~7 割に及んでいた。中で も「食事」「自立の援助」の看護行為の合計時間は,生 後 1 日 48.5%(1 時間 10 分 3 秒)生後 2 日 46.5%(54 分 54秒)生後 3 日 51.9%(55 分 42 秒)生後 4 日 53.0%(1 時間20分)と各日の平均看護時間のおよそ半数に及ん でいた。「準備・片付け」の看護行為は生後 3 日・ 4 日 のみにみられ,「測定」の看護行為は生後 3 日・ 4 日に は上位には見られなくなった。

Ⅳ.考   察

1.正常新生児への看護行為と看護時間 2016年人口動態調査では新生児の94.2%が正期産出 表4 生後日数ごとの看護行為項目上位5位 生後日数 0日 1日 2日 3日 4日 n数 24 33 27 27 32 順位 項目 測定 自立の援助 食事 自立の援助 自立の援助 1 平均時間 28分18秒 42分50秒 31分55秒 34分 5秒 54分57秒 標準偏差 10分03秒 40分53秒 19分0秒 20分46秒 29分27秒 最小値 7分14秒 0秒 6分30秒 1分10秒 16分17秒 最大値 46分33秒 26分02秒2時間 1時間 25分49秒 1時間 10分02秒 26分34秒2時間 項目 記録 食事 自立の援助 食事 食事 2 平均時間 19分24秒 27分13秒 23分54秒 26分48秒 25分 3秒 標準偏差 7分56秒 15分34秒 27分59秒 15分48秒 17分01秒 最小値 0秒 0秒 0秒 2分36秒 2分12秒 最大値 32分54秒 18分0秒1時間 33分04秒1時間 10分56秒1時間 59分17秒 項目 食事 申し送り 申し送り 後片付け準備 申し送り 3 平均時間 14分55秒 17分51秒 15分42秒 11分13秒 16分11秒 標準偏差 15分56秒 5分09秒 6分22秒 15分50秒 6分03秒 最小値 0秒 0秒 0秒 0秒 0秒 最大値 15分14秒1時間 28分01秒 30分48秒 21分31秒1時間 23分15秒 4 項目 自立の援助 測定 測定 申し送り 記録 平均時間 13分 6秒 9分14秒 8分12秒 8分 0秒 12分44秒 標準偏差 10分28秒 7分47秒 9分48秒 4分25秒 6分03秒 最小値 0秒 1分03秒 1分35秒 1分18秒 0秒 最大値 40分16秒 29分35秒 42分29秒 15分55秒 23分15秒 項目 安全 記録 記録 記録 後片付け準備 5 平均時間 10分25秒 8分 4秒 7分 8秒 7分16秒 9分57秒 標準偏差 5分59秒 5分09秒 6分22秒 4分25秒 8分06秒 最小値 3分45秒 0秒 0秒 1分18秒 32秒 最大値 29分36秒 28分01秒 30分48秒 15分55秒 31分57秒 ※記述統計 日勤帯8時間の測定 正期産正常新生児に対し出生直後から生後4日までに実施した看護行為と看護時間

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あった(厚生労働省「人口動態統計」,2017b)。本研究 の対象新生児は在胎週数・出生児体重に関し統計と照 らし合わせて標準的であるといえる。先行研究で齋藤 (1999)が正期産で出生した正常新生児1人につき,分 娩期の新生児看護に要した時間を初産・経産別に他計 式タイムスタディ法で測定している。この先行研究で の新生児ケアの測定は出生後2時間のみであり,その 後の入院期間中は新生児へのケアは測定されていない ため本研究との比較はできない。また,岩谷らの先行 研究(2006)は産褥期のケア全体の測定であるが看護 職員による自己申告式であり,本研究とは測定方法・ 看護行為の把握が異なり,国内で本研究と比較できる 先行研究は見当たらない。海外文献検索においても国 外での先行研究に正確に出生後の看護行為と看護時間 を実測した研究は見当たらなかった。 生後0日は「測定」「安全」「呼吸循環管理」の看護行 為により,正常新生児の命の安全に重点が置かれてい るという特徴がみられた。出生から3時間までは全正 常新生児に看護行為が実施されていることが明らかに なり,特に出生からの 2時間に1 人の正常新生児に対 し平均1時間17分6秒の看護行為を実施していること は,出生からの2時間に看護行為と看護時間が集中し ていることを表している。つまり,生後2時間は新生 児の安全確保が必要であり,そのための新生児看護に 専念できる人員の配置が不可欠である。正常新生児の 診療報酬上の位置づけは母親の付属物という扱いであ るが,母親の看護のみならず,新生児への看護に専念 できる人員の確保を検討するべきであることが実測 データから裏付けられた。新生児看護に専念できる体 制がなければ,正常新生児に対しても生命の安全確保 は困難である。 生後1~4日は診療報酬上の位置づけのない1人の正 常新生児に平均 2 時間 12 分 39 秒の看護時間が実施さ れ,8 時間勤務のうちの約 25% を占め,1 人の看護者 が新生児看護に専念できるのは新生児4児が限度であ るといえる。生後 1~4 日の看護行為は「食事」と「自 立の援助」のいずれかが上位 1 位である。この 2 つの 看護行為が,生後 1~4 日の正常新生児への看護時間 の約 50% を占め,最も重要視されている看護である と示唆している。 生後1日は分娩経過により母親の体調に個人差があ るが,母親が本格的に育児に向けての技術を獲得して いく初日であるといえる。母親に対し児の抱っこ・授 わせたゆっくりで丁寧な看護者の説明・指導が必要で ある。そのため,生後 1 日は「自立の援助」の看護行 為に最も多くの看護時間が必要である。生後 4 日は, 翌日が退院であるため「自立の援助」の看護行為がど の看護行為よりも長かったといえる。退院に向けて家 庭において,母親が一人で新生児に対処できるように するため「自立の援助」の看護行為が長いのである。 生後3・4日の「準備・後片付け」は,授乳の準備や 各種指導の準備である。正常新生児の入院期間は出生 直後から授乳の介助が始まり,退院に向けての準備が 整えられていく。生後3・4日の「準備・後片付け」の 看護行為は,退院準備のピークであるため観察された 看護行為であるといえる。 生後 4日の看護時間の最大値は 6時間余りであった が,このケースは社会的背景に問題があると看護者間 で協議され,社会福祉士が介入したケースである。カ ンファレンスにかかった時間により看護時間が長く なったものである。近年,社会的リスクを持つ褥婦の 増加があるため(川越ら,2014)データとした。 2.看護人員配置と診療報酬の加算 看護人員配置に関する研究において,Needleman, et al.(2002,2011)は看護師により提供される看護時 間が入院中の患者ケアの質に関連しているとし,看護 ケアに対しての患者の要望と看護人員を調和させ る必要が強まっていると述べている。また,Buerhaus, et al.(2002), Kane, et al. (2007)や Sinni, et al. (2014)は患者ケアの安全性と質には看護人員の影響力 があると述べ,Aiken, et al.(2003)は,患者ケアの質 の向上には看護時間,看護人員配置を考慮することが 不可欠であると述べている。これらの研究は産科を フィールドとした研究ではないが,ケアの質の向上に は看護人員配置の関わりが大きく作用するという点は 産科領域においても同様のことがいえると考えられる。 本研究結果は,出後0日の正常新生児への看護行為 は命の安全に重点が置かれ,正常新生児への安全と看 護の質の向上確保のための看護人員配置の確保を検討 するべきであると示唆している。大木ら(2012)の研 究結果においても一定の割合で正常新生児の急変があ り,その第一発見者が主に看護者であるという調査結 果があり,本研究結果からも正常新生児に対し定期的 な観察は不可欠であり,そのための看護人員配置は必 要であることが提言されている。

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わが国の病院で出生するおよそ8割の新生児は,産 科混合病棟で生まれる。その病棟の中では,一般患者 と妊産褥婦の人数により7対 1の人員が決まり,正常 新生児および分娩期のケアのための看護人員配置は 現在の産科混合病棟には考慮されていない。産科混合 病棟では,正常と異常な母子が混在し,その上,一般 患者が入院しているため各施設の分娩件数や入院患 者の状況を想定の下に考慮した看護人員配置を行う 必要性があり,円滑に看護人員配置を行うためにも正 常新生児が診療報酬加算対象とされるべきであると考 える。 3.研究の限界と今後の課題 本研究により対象正常新生児数 64 名の看護行為と 看護時間が明らかになった。対象が64名であるため, 平均看護時間の比較は外れ値の影響を受けている可能 性がある。しかし,この外れ値は正常新生児の個々の 状況に応じた看護を提供している状況を表している。 本研究を正常新生児に対する看護人員配置の検討を行 う為の基礎的資料として,より,信頼性の高い研究に するためには,さらに正常新生児への看護行為と看護 時間を測定することが望ましい。 タイムスタディ法は,量的に明確な看護時間の結果 が得られ信頼性の高い結果が得られるが,もう一方の 対象者である看護者に多大な負担を強いているため, 長期間の調査には限界がある。勤務時間中に常時,観 察される看護者への負担も考慮する必要があり,短期 間の調査をより多くの施設で実施する必要がある。 本研究は,正常新生児に対する平日の日勤帯におけ る看護行為と看護時間の測定に留まり,看護者が少な くなる夜勤帯の測定はできなかった。看護者は正常新 生児に対しても 24 時間体制の看護を実施するため, 今後,入院中の正常新生児への看護が全日測定される ことが望ましい。日本看護協会の調査(公益社団法人 日本看護協会,2017)では,助産師が他科患者を受け 持たない割合が2012年55.2%から2016年16.3%に減少 している。新生児が感染に留意しなければならないの は周知の事実である。産科混合病棟内では,新生児担 当者が他科患者と妊産褥婦を同時に受け持つ調査も必 要であると考える。また,本研究において看護行為や 看護時間と母親の状態や理解度・対処行動に関する因 果関係・効果は,データ取得に至っておらず今後の課 題としたい。さらに,本研究結果には母親への看護時 間は含まれていない。看護者が母児を1組として担当 する場合,何組の母児を担当することが適切であるか を判断するデータも必要である。

Ⅴ.結   論

本研究では,出生からの8時間と生後1~4日までの 日勤帯において,正常新生児に対し全日で2時間程度 の看護時間が提供されていた。その結果は1人の正常 新生児への看護時間が日勤帯 8 時間の 4 分の 1 に相当 していた。病棟全体の安全を考えると正常新生児に対 する看護人員配置が必要であると考えられる。今後, 正常新生児に対し実施している看護時間のデータを蓄 積することにより,正常新生児が診療報酬加算対象と なることが望まれる。 謝 辞 本研究にご協力いただきました産婦,褥婦,新生児 の皆様,ならびに協力施設のスタッフの皆様に心よ り感謝申し上げます。なお,本研究は神戸大学大学院 保健学研究科博士課程前期課程での学位論文の一部で ある。 利益相反 本論文内容に関し開示すべき利益相反事項はない。 文 献

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参照

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