• 検索結果がありません。

(2) 概要 2005 年の司法改革の大きなポイントとして 調停 : 裁判所外での調停と裁判所内での調停についての新しいルールにより 裁判所外での紛争解決方法 (Alternative Dispute Resolution: ADR) が付加られたこと 35 迅速さ : 裁判官が 準備手続により重き

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(2) 概要 2005 年の司法改革の大きなポイントとして 調停 : 裁判所外での調停と裁判所内での調停についての新しいルールにより 裁判所外での紛争解決方法 (Alternative Dispute Resolution: ADR) が付加られたこと 35 迅速さ : 裁判官が 準備手続により重き"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2. ノルウェー (1) 消費者保護行政の歴史的背景及び導入の経緯 集団訴訟としては長い歴史があり、共同訴訟制度は以前からあった。しかし、苦情対 策委員会が消費者からの苦情をうけることもあったが、相手が銀行などの大企業だと何 もできない状態であった。1990 年に北欧 4 国(ノルウェー、スウェーデン、デンマー ク、フィンランド)が集まり、北欧閣僚審議会のひとつのプロジェクトとして、クラス アクションの研究会を開催した(スウェーデンの Per-Henrik Lindblom 教授を座長とし て、各国から弁護士、裁判官、オンブズマン、大学教授などが集まった)。その際は、 アメリカのクラスアクションの勉強を行ったが、法体系が違うので、ノルウェーに導入

するには独自の仕組みが必要だと感じた(オスロ大学 Inge Lorang Backer 教授の意見33)。

その当時は、Opt In 方式、Opt Out 方式など具体的な議論にまでいたっていなかった。 その後、コ―ツン社のペンキが家をぼろぼろにするというケースがあり、訴訟が提起さ れたものの、企業が上訴したため、被害者はそれ以上、上訴することが無理であきらめ ざるを得ないということがあり(コスト負担できなかった)、集団訴訟の議論などが始 まるひとつのきっかけともなった。 1999 年に司法制度改革の一環として、競争法(1915 年)の改革のために紛争解決審議 会が設置され、紛争関係全体の議論がなされるようになった。その中のひとつとしてク ラスアクションも検討され、2001 年にレポート 32 号として提出された。その後、法務・ 警察省内により法案が作成され、2005 年 3 月 4 日に国会に議案が提出され、同年 6 月 17 日に国会で可決成立した。法律が成立後、裁判官への周知、教育、調整、さらには コンピューターシステムの調整などに時間がかかり、施行は 2008 年 1 月 1 日となった。 ノルウェーの司法制度は、基本的にドイツ・オーストリアを範としていたが(1915 年 の旧紛争法)、2005 年の改正では米国、UK システムをモデルにした。改正時に米国と UK をモデルにしたのは、1999 年の調査(紛争法改正のための紛争解決審議会)で UK の ウルフレポートなどを参考にしたからである。34 1999 年の紛争解決審議会のメンバー としては、現在最高裁長官である Christian Reuseh 氏(当時は最高裁判事)をリーダ ーとし、以下 6 名(高等裁判所判事 1 名、地方裁判所判事1名、法学者【人権関係】1 名、及び弁護士 3 名)であり、2001 年に調査レポートが提出された。1999 年の紛争解 決審議会の調査結果を受け、2001 年に政府案が提出されたが、その中で、すでに Opt In 方式、Opt Out 方式の混合型が提案されていた。2005 年の改正では、クラスアクション は新しい分野で、それ以外は従来の項目の改正であった。

33 オスロ大学法学部教授 Inge Lorang Backer 教授へのヒアリングより(2009 年 3 月 6 日)

(2)

(2) 概要

2005 年の司法改革の大きなポイントとして、

調停:裁判所外での調停と裁判所内での調停についての新しいルールにより、裁判所

外での紛争解決方法(Alternative Dispute Resolution: ADR)が付加られたこと。35

迅速さ:裁判官が、準備手続により重きを置き、口頭弁論を以前より短くすることに よって、案件を積極的に取り扱うことが出来る。個々の案件に関して、裁判の取り扱 い規模が紛争の重要さに比例するように、比例原則が徹底されるようになったこと。36 費用軽減:案件取り扱いを迅速にし、紛争の中核に的を絞ることにより紛争解決の費 用を安くすること。37 簡素化:125,000 ノルウェークローネ(以下、「NOK」と呼ぶ)以下の案件において特別 の訴訟手続が取れるようになった。新しい法規定に則りより簡単で迅速な処置がされ、 3 ヶ月以内に判断が下される。また、同じ目的でクラスアクションにおいての新たな ルールが導入され、低額の請求をひとつの集団にまとめて訴訟することが出来るよう になったこと。38 があげられる。新しい紛争法は判事が積極的に動けるようになったことから判事改革 ともいえる。 (3) 集団訴訟制度の概要(消費者保護に関しての基本的な考え方、方針) 2005 年紛争法改正の一環として集団訴訟(以下、「クラスアクション」と呼ぶ)も 導入された。それにより、個人が集団として訴えることができるとともに、団体や、 政府機関もクラスアクション訴訟を起こすことが可能となった。39 複数の者が同じ状況により請求がある場合、それらの請求を集団として訴訟を起こ す必要になる。これは個々人の権利を保護するだけでなく、社会経済的な視点からも 重要である。40 35 法務・警察省ホームページ http://www.regjeringen.no/nb/dep/jd/aktuelt/nyheter/2007/Raskere-a-lose-tvister.html?id=495158 36 法務・警察省ホームページ http://www.regjeringen.no/nb/dep/jd/aktuelt/nyheter/2007/Raskere-a-lose-tvister.html?id=495158 37 法務・警察省ホームページ http://www.regjeringen.no/nb/dep/jd/aktuelt/nyheter/2007/Raskere-a-lose-tvister.html?id=495158 38 法務・警察省ホームページ http://www.regjeringen.no/nb/dep/jd/aktuelt/nyheter/2007/Raskere-a-lose-tvister.html?id=495158 39 Ds 2008:74, p.40. 40 NOU 2001:32, p.467.

(3)

クラスアクションは、原則的には Opt In 方式であるが(35 ないし 36 条)、一人一 人の損害額が少ない場合は手続が煩雑になるために Opt Out 方式でも可能である (35-37 条)。 クラスアクションに関し、裁判所がどこまで決定するかということがあるが、(①責 任論:被告の責任の有無までの判定、②損害論:責任があるとの判定の場合、被害者 への補償額まで決定)、ノルウェーは損害論までとなっている。 ①2 つの制度

ノルウェーではOpt In方式とOpt Out方式の二つの方式が並存している。基本的 にはOpt In方式をとっているが、消費者オンブズマンによって代理された訴訟に関 してや少額の訴訟の場合に関しては、限られた範囲でのOpt Out方式の可能性が認

められている。41 原告は訴状に当該クラスアクションがどちらの方式を希望する

かを記さねばならない。42 裁判所がクラスアクションを容認する決定を下す際、

訴訟がOpt In方式かOpt Out方式で容認されるのかを決定する。43

・Opt In (35-6 条) Opt In した集団構成員に対して、判決は直接拘束力を持つ。判決が下されるま で Opt-In を撤回することが可能である。クラス構成員は判決が出ても、判決確定 までは撤回できる。その期間が過ぎ確定判決になった後はできない。Opt In 方式 が適している紛争の典型的な例として、大人数が巻き込まれた事故の原状回復が 挙げられる。また、不十分なサービスやオファーを提供している会社に対しても Opt In 方式による訴訟が適している。44 ・Opt Out(35-7 条) Opt Out方式の訴訟の条件としては、 ※ 集団構成員の請求額または請求内容(請求の対象)が小さいものであり、 そのうちの大多数の請求が個人訴訟としては提訴出来ないであろうとさ れるものであること、及び、 ※ 集団構成員の請求内容において、個別の審査(取り扱い)が必要とされる ような事項(問題)を含んでいないと思われるもの、 である。 41 Lindblom(2009), p.9. 42 Ds 2008:74, p.42. 43 Ds 2008:74, p.41. 44 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.3.

(4)

Opt Out方式は例えば市場での請負業者による、例えば銀行、保険、電力、 ブロードバンドなどの様々な継続的なサービスの場合に適している。このよ うな場合、消費者個々人の損失は少ないかもしれないが、顧客との契約を的 確に履行しないことにより企業側は大きな収益を得ることが出来る。このよ うな場合、集団での解決策が必要とされ、Opt Out方式が最適とされるケース がある。45 例えば個人の訴訟を選ぶなどの理由で集団に参加したくない者は クラスアクションから離脱することが出来、判決は集団構成員にのみ適用さ れる。46 Opt Out 方式が導入できた理由及び経緯 Opt Out 方式の利点はまず、訴訟の存在を知らない人が自分の権利を喪失し てしまうリスクがないということである。アメリカなどの経験からして、通 知・告示の規定を設けていても可能性のあるすべての構成員に通知すること、 またすべての人が理解できる通知内容を送付することが難しいということが 指摘されていた。このような場合、通知をする方式であると、集団に加わりた い人が機会を逃し加われないということになりかねない。47 Opt Out 方式の 導入は消費者にとって、導入されない場合と比較して利益が大きいと法務・警 察省では考えている。特に、ノルウェーの制度の場合、訴訟費用はクラス代表 が負担義務をおっており、たとえ、敗訴の場合でも、Opt Out 方式で自動的に クラスに入った構成員には費用負担は発生しないことから、構成員にとっての リスクは非常に小さいとも考えられている。48 立法の過程では、ノルウェーの法伝統では処分権主義をとっており、自動 的に構成員になる Opt Out 方式では法伝統にそぐわないとの意見があった。49 また、Opt Out 方式の場合、裁判所が積極的に参加しない構成員に配慮して、 手続きを後見的に監督する義務を課せられ、長期的に見てその業務遂行は難 しいものとなる。50 さらに、一般的な Opt Out 方式では、クラスアクション においても適用されるべき裁判費用のルールと適合させることが難しいなど の意見もあった。51 45 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.3. 46 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.3. 47 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.334.. 48 ノルウェー法務・警察省へのヒアリング(2009 年 3 月 4 日)及びメールでの回答(2009 年 3 月 19 日)より) 49 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.335. 50 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.335. 51 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.335.

(5)

このように、完全型の Opt Out 方式の導入には反対もあったが、他方で完 全型の Opt In 方式では、個々人の請求が個人訴訟として扱うことが出来ない 場合に適切に対処できず、クラスアクションの必要性において、適切な選択 とはいえない。52 そこで、原則は Opt In 方式だが、前述した所定の規定を満たしている限ら れた場合においては Opt Out 方式を認めることが出来るものとする併用型の 方式を採択するに至った。53立法の過程で寄せられた異論、すなわちノルウェ ーの法伝統にそぐわない、裁判所の業務遂行が難しくなる、裁判費用のルー ルを適合することが難しいなどの意見については、結局、裁判所の運用にお ける対応で克服することが可能な問題ばかりであり、むしろ裁判所の意識改 革こそが求められ、裁判所サイドもこれに応ずることにした。 企業などからは Opt Out 方式に対して、クラスアクションに参加するかど うかは対象者個々が決めるのが適切であること、訴訟の初期の段階で企業側 がクラス構成員の人数が特定できないことは問題であること、また、Opt Out のオプションを設定することで、同じ案件について複数の訴訟の可能性が残 ることなど、から反対する意見があったのも事実である。しかし、制度導入 検討時に、政府はこれらの企業側の意見には同意しなかった。現在までのと ころ、企業サイドから、格段の不満は聞かれない。 Opt Out 方式の部分的な導入に関して、個別の積極的な授権なく集団全体 のための訴訟が行われることが、手続保障を欠くのではないかという趣旨の 議論は、特になかった。ノルウェーの制度では、請求金額が少額であるため に個別訴訟の提起が困難であることが、Opt Out 方式が裁判所に認められる ための要件である。すなわち、Opt Out 方式がとられるのは、実質的に個別 訴訟が考えにくい場合であるので、個別訴訟の手続保障を問題にする必要は ないからである。また、Opt Out のための通知や広告は、現実にはほとんど の集団構成員に認識されるのが通常であるので、その意味でも問題はないと 考えられている。 ②制度の導入にあたって参考にした国 ※ アメリカの法規定と判例を重点的に参考(近代的なクラスアクションにお いて最長で最も幅広い経験を持つため)54 52 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.335. 53 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.335. 54 Ot.prp. nr. 51(2004-2005), p.317.

(6)

※ カナダ ※ オーストラリア ※ イギリスとスコットランド ※ 北欧(スウェーデン、フィンランド、デンマーク) (4) 制度の運用方法 ①適用分野 クラスアクションは特に消費者紛争に適しているが、基本的にほとんどの分野 での適用が可能である。55 クラスアクションは少額請求のみに適用されるのではなく、個々人の請求額が 大きくとも同じ状況にいる複数の者がいれば、クラスアクション扱いが出来る。56 ②対象者(当事者適格) 集団構成員になる条件を満たしている者は誰でも集団のためにクラスアクシ ョンを提起することが出来る。(35-3 条 1a)57 組織、事業者、組合そしてその他ある集団保護に特別な関心を持つ団体は、そ の集団のために訴訟を起こすことが出来る。(35-3 条 1b)例えば消費者委員会 (Consumer Council)やオンブズマンは消費者の関係団体としてクラスアクショ ンを起こすことが出来る。58 ただし、オンブズマンはさまざまな分野で分かれており(児童、市民、消費者、 差別平等など)、訴訟を起こせるのは、児童、差別平等オンブズマンのみで、消 費者オンブズマンにはその権利ない。つまり、消費者保護分野でクラスアクシ ョンを起こせるのは、消費者委員会のみである。その他、団体としては、環境 や金融分野の消費者団体などがクラスアクション提起する権利をもっているが、 ケースバイケースで裁判所が適格かどうかを審査する。 ③クラス代表・代理 集団の代表は裁判所によって任命され、グループのために行動し責任を負う。 また、クラス代表としての適格要件として、①クラス構成員の利益を守れるこ と、②訴訟費用を支払う能力があること、となっている(35-9 条 3)。集団は 55 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.3. 56 ノルウェー法務・警察省ホームページ http://www.domstol.no/DAtemplates/Article.aspx?id=16972&epslanguage=NO 57 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.2. 58 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, p.2.

(7)

弁護士によって訴訟を進めなければならない。特別な場合は例外も認められる (同条 4)。 ④申立に関する要件 複数の者が同じ事実または法的根拠に基づいている請求または債権がある こと(35-2 条 1a) 請求が裁判所で同じ構成で基本的に同じ手続で処置できること (35-2 条 1b) クラスアクションが最も適した取り扱いの形態であること (35-2 条 1c) 同法 35-9 条に従って集団の代表を任命する根拠があること (35-2 条 1d) クラスアクションのグループ構成員となるには、裁判所で定められた期間 内に自身で登録申請し(Opt In)、登録された者のみを含む。59 登録方法として、書類提出と口頭申請の 2 種類があり、書類提出の場合、 様式は特に決まっていないが、裁判所に郵送する必要がある。email での登 録は現在まだ認められていない。また、口頭申請の場合、自ら裁判所に出頭 して登録申告を行う必要がある。 裁判所は集団名簿に登録なしでもクラスアクションで取り扱う請求に該 当する請求を持つものは、集団構成員として容認することが出来る。この場 合の要件は、クラスアクションで扱う請求が非常に少額でそれらのうちのほ とんどが個々の訴訟では提起できないこと、そしてそれらの請求が個別の取 り扱いを必要とするような争点(問題)が含まれていないことである。60 Opt Out 方式の際、集団構成員リストの作成は求められておらず、離脱す る構成員リストのみ作成することが要求されている(35-7 条 2) サブグループの結成:もしグループが大人数で構成されており、そのうち 59 ノルウェー法務・警察省ホームページ http://www.domstol.no/DAtemplates/Article.aspx?id=16972&epslanguage=NO 60 ノルウェー法務・警察省ホームページ http://www.domstol.no/DAtemplates/Article.aspx?id=16972&epslanguage=NO

(8)

複数の者の請求が同じ法的または事実関係に基づいたものでありながら、グ ループ全体に関する共通の問題とは異なっている場合は、裁判所はサブグル ープを構成することを決定することが出来る(35-10 条 2)。 ⑤訴訟で扱える内容及び限界(対象者含む) 通常の民事訴訟では、同じ当事者間で既に紛争として訴訟の対象になっ ていることを新たに提起した場合、裁判所は提起の申立を取り下げせねば ならなく(18-1 条)、新たな提起は訴訟障害(litispendens)となる。 個人訴訟を提起した者は、クラスアクションのグループから離脱したも のとみなされる(35-8 条 5,1)。 個人訴訟を取り下げた場合は、35-7 条の Opt Out 方式でのクラスアクシ ョンに関しては自動的に集団構成員になるが(35-8 条 5,2)、35-6 条の Opt In 方式でのクラスアクションの場合は構成員になるためには登録をしな ければならない。61 法律扶助など団体訴訟についての援助制度は現行ではなく、クラスアク ションにかかる経費を集めることの難しさなどから、クラスアクションを もっと支援するよう社会から援助が必要である、との意見が見られる。62 ⑥訴訟通知手続、告示方法 クラスアクションが容認されたら、裁判所はクラスアクションに参加可 能な者、または 35-7 条 Opt Out 方式の場合にはグループの構成員に、通 達、公示またはその他の方法で通知する(35-5 条 1)。 通達または公示において、クラスアクションとその手続の意味について、 集団への登録または離脱することの意味、かかりうる費用の責任、そして 集団代表者の代理権限について63明確に知らせなければならない。集団名 簿への登録期間も通達に記されていなければならない(同条 2)。 通達の内容や方法などは裁判所が決定する(同条 3)。 また、通知にかかる費用をクラス代表が負担するかどうかは裁判所が決 61 Ot.prp. nr. 51 (2004-2005), p.496. 62 Otprp. nr. 51 (2004-2005), p.338 63 Ot.prp. nr. 51 (2004-2005), p.494.

(9)

定する(35-5 条 3)。なお、ノルウェー法務・警察省に確認したところ、原 告の代表が通知を行う場合は当該代表者がその費用を負担し、裁判所が通 知を行う場合は裁判所がその費用を負担する、とのことであった。 ⑦管轄裁判所 クラスアクションは、地方裁判所に、訴状を提出することで提訴できる (35-3 条 2)。 ⑧裁判の具体的進展手順(判断基準など) ※ 提訴 訴状は裁判所がクラスアクションの条件が満たされているか判断し、第 35-4 条第 2 パラグラフに従って決定するために必要な情報を提供するも のでなければならない(35-3 条 3,1)。 そのクラスアクションにおいて 35-6 条の Opt In 方式または 35-7 条の Opt Out 方式のどちらを要望するかを記述しなければならない(35-3 条 3,2)。 損害額の多寡は最終的に裁判所の判断になる。 ⑨クラスアクションの容認 裁判所は出来るだけ早急にクラスアクションが認められるか否かを決 定しなければならない(35-4 条 1)。 クラスアクションが容認されると、裁判所は以下の項目について決定 を下さなければならない。 クラスアクションにおける条件の範囲(35-4 条 2a)

クラスアクションが第 6 条の Opt In 方式でまたは第 7 条の Opt Out 方 式でなされるのか決定(35-4 条 2b)

35-6 条の Opt In 方式の場合、集団名簿に登録する期限(35-4 条 2c)

(10)

な場合(35-4 条 2d) 集団の代表者を任命(35-4 条 2e) また、場合によっては原告と集団構成員が訴訟費用のための保証の支 払いを要求されることがある。64 また、集団構成員は終局判決の確定時点まで(上訴が可能な間)Opt Out が可能である(35-8 条 1)。この時点まで Opt Out が可能であることは、 被告(企業など)にとって不公平ではないかとの質問に対しては、法務・ 警察省の担当官の回答は、たしかにこの点に疑問を呈する企業サイドの 意見もあったが、立法当時の議論では、原告側が Opt Out を悪用する可 能性は低いと考えられたとのことであった。 集団構成員が、終局判決後に離脱した場合は、その判決の拘束力を当 然に受ける。したがって、原告敗訴の判決が下され、その後に離脱した 場合は、離脱した集団構成員もその判決の効力を受け、訴訟物である権 利がないことが判決で判断されたことになる。判決後に離脱することの 意味としては、判決後に離脱すれば、その時点で集団構成員ではなくな るため、集団代表者による控訴に服しないことになる。そして、離脱し た当事者は、個人訴訟として控訴審で独自に訴訟追行できる。結局、1 審における集団代表者の訴訟追行がまずかったために負けたと考える集 団構成員は、2審ではその集団代表者に代表されることを避けて、自分 で控訴審を闘うことができる。 法律では、最終判決に Opt Out の集団構成員がどのように記載される べきか、特に、個々の集団構成員の名前などを明確に記載すべきとの規 定はされていない。 ⑩裁判費用 クラス代表がクラスアクションにおける裁判費用に関する権利と義務 を負う(35-12 条 1)。 集団の代表者が交代した場合は、裁判所が裁判費用が両者の間でどの ように負担されるか決定する(35-12 条 2)。 64 Lindblom (2009), p.11.

(11)

Opt In 方式の場合:構成員の登録時に、裁判所は法律費用をカバーす るために、定められた最高額を前もって支払うように条件付けることが できる。65 また、定められた最高額まで、集団構成員は相手側と集団の 代表の費用を負担するよう課せられることがある。66 Opt Out 方式の場合:集団構成員は費用の負担責任がなく(自分達でア クティブに構成員になったわけではないため)、集団の代表が経済的責 任を負う。67 勝訴側は、相手側から弁護士費用を含む訴訟費用の請求ができる

68English Rule を適用している(以下、「English Rule」と呼ぶ)69

⑪判決 クラスアクションの請求に関する判決は、判決が下された時点で集団 構成員を拘束するものである(35-11 条 1)。 ⑫控訴 裁判官は、原告、被告双方の話を聞き、それがクラスアクションとし て適格かどうかを独自に判断する。もし、クラスアクションとして適格 でないという判断が出ても 2 回上訴できる(35-4 条 4)。それは決定 (Ruling)に対する上訴である。 ⑬原状回復額の算出方法 原状回復額はケース毎に裁判所が算出方法を含め決定。 ⑭具体的な消費者権利の回復方法 一般的な民事訴訟と同様に、問題行為の差止めや原状回復金の請求が 可能である。 個々の構成員の金額を決めずにクラス全体の総額を決めるという方法 は不可であり、ノルウェーでは、判決で個々の構成員の金額を明記する 必要がある。 65 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, s.4. 66 Ds 2008:74, p.43. 67 Gruppesøksmål, Forbrukerportalen, s.4. 68 ノルウェー法務・警察省へのヒアリングより(2009 年 3 月 4 日) 69 敗訴者が勝訴者の弁護士費用を負担するという原則 三木浩一、大村雅彦 「アメリカ民事訴訟法の理論(商事法務社)」 P257

(12)

また、個々の構成員の補償額への具体的な記載方法については法律で は規定されていないが、裁判所は、各集団構成員への一律補償額を支払 うといった記載を行っている。また、集団がサブグループに分けられる 場合は、そのサブグループ各構成員に対して一律補償額を支払うといっ た記載も可能である(35-10 条 2)。他の記載方法としては、例えば、企 業がある商品を同程度の欠陥で多数販売した場合、それらの販売価格の 10%分を集団構成員個々に補償するといった記載方法も可能である。 ただし、和解の場合は総額でも可能である。また、和解の内容に関し て、①Opt Out 方式の場合、裁判所の認可必要、②Opt In 方式の場合、 裁判所の認可は不必要である。 Opt Out 方式の場合、個々の構成員が和解の内容を理解していること、 クラスの代表が内容を構成員に知らせる義務があること、個々の構成員 が内容を理解していて、自分の要求を主張できることが必要である。 ノルウェーのクラスアクション法には執行に関する規定はない。したがっ て、個別訴訟における規定が適用されることとなり、集団代表者による執行 は原則として認められない。ただし、解釈による例外の余地がありうるとの 見解が法務・警察省から示されている。 ⑮資産保全の方法 ※ 資産凍結の制度の有無: 消費者問題に利用されているかは分からないが、通常の裁判手続において 仮決定として資産凍結は可能である。 (5) 過去、現在の事例 2008 年 1 月 1 日に新法が施行されて以来、現在までに何件のクラスアクション が提起されたか具体的な件数は不明であるが、具体的な例として、FMG Protected

Masternote のケースがある。これは、Fund Management Group が販売した貯蓄型 金融商品(2 つの銀行が資金提供)が、もともと運用されず利益を出せない(投資者 に還元できない)詐欺であるというクレームが数名の被告からオスロの裁判所にクラ スアクションとして提起された(2008 年 12 月)もので、これまでに約 700 名が Opt In した。賠償請求総額は約 4,100 万 NOK(約 5.8 億円)で、オスロ裁判所は、まだ この案件をクラスアクションとして認定するかどうかの決定を下していない(2009 年

参照

関連したドキュメント

約二〇年前︑私はオランダのハーグで開かれた国際刑法会議に裁判所の代表として出席したあと︑約八○日間︑皆

判決において、Diplock裁判官は、18世紀の判例を仔細に検討した後、1926年の

記)辻朗「不貞慰謝料請求事件をめぐる裁判例の軌跡」判夕一○四一号二九頁(二○○○年)において、この判決の評価として、「いまだ破棄差

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例

〃o''7,-種のみ’であり、‘分類に大きな問題の無い,グループとして見なされてきた二と力判った。しかし,半

距離の確保 入場時の消毒 マスク着用 定期的換気 記載台の消毒. 投票日 10 月

ただし、このBGHの基準には、たとえば、 「[判例がいう : 筆者補足]事実的

の繰返しになるのでここでは省略する︒ 列記されている