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瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究 VI 圃場規模での土壌水分消費機構の不均一性と代表性とについて-香川大学学術情報リポジトリ

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81 Vol=24,Noい1(1972)

瀬戸内地方に適合した畑地かんがいの基礎的研究

Ⅵ.圃場規模での土壌水分消費櫻構の不均一・性と代表性とについて

松 田 松 二・山 田 宣 良

Ⅰま え が き 既に論述したように,テラス造成甘橘園の土壌水分は,地形的にも(1)又時期的にも(2)不均一・に消費されており, 水の経済的価値が高まってきている昨今の諸情勢からみると,効果的なかんがい方法の確銅iますます必要となって くる。又,現在の畑地かんがいが圃場規模で行をわれている以上,まず圃場規模での土壌水分消費機構の究明がなさ れねばならないであろう。そしてそ・のような質的になされた検討の結果を利用して,盈的なかんがいを行なうために は,たとえば圃場内のどの点の土壌水分消費題が全体を代表しうるものであるのか,とか,あるいは作物の板群域内 のどの探さの土壌水分を測定すれば全体を推定することができるのか,といったようを,いわゆる簡便化がなされな ければ実用的を価値は小さいものといわねばならない。 以上の見解にもとづき,ここでは主として土壌水分消費機構の不均一・性と代表性とについて,圃場規模での検討を 行なった。実験の場所,項目等については前報($)と同じである。 ⅠⅠ実験結果と考察 Ⅱ−1果樹を中心にした消費機潤 一・般に甘橘類の消費水孟については,1日3mmとか5mmとかいうように,蒸発散の合計として盈的に示される ことが多く,その中の何パ・−セントが果樹によって吸水されたのかについては明らかではない.又根群の不均一分布 や果樹の自己マルチ作用などによって,果樹を中心にした土壌水分消費蕊は,水平,鉛直分布に不均一・であるものと 考えられる.そこでテラス谷側における約10年生の果樹を対象として,時期別に土壌水分消費量を許足した.その結 果は表−1,2,3,4に示すとおりである. 表−1第 一・期 の 土 壌 水 分 消 費 盈 表−2 第 二 期 の 土 壌 水 分 消 費 意

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表−3 第 三.期 の 土 壌 水 分 消 費 最 東平踵鹿 真一4 第 四 期 の 土 壌 水 分 消 費 恩 まず第一・期(5月10日∼26日)は,デー・タが充分ではなく,−・般に表層土壌水分が多く消費されていることが示唆 されたにとどまった.つぎに第二期(7月10日∼8月3日)については,樹下と樹間において若干の羞がみられ,探 さにかかわらず幹からある程度離れた位置での消費水魚が多くなっている.又鉛直分布をみても,消費水盈のうち約 70%は探さ20cm以内の表層において消費され,前報(8)でも示したように,この時期には表層かんがいを行なうこ とが適当であることがわかる。第三期(8月6日∼29日)については,傾向は第二期とやや類似しているが,30cm 以上の深層の土壌水分もかなり消費されており,特に樹下では探さにかかわりなく消費水魔が均一・な,いわゆる「金 屑消費蟄」を示している。この表からはさほど明白ではないが,第三期に表層かんがいが行なわれると,深層の土壌 水分消費良が著しく増加することが知られているので(2),この時期には表層かんがいと深層かんがいを交互に行なう と効果的であろう.さらに第四期(9月11日∼10月1日)になると,第三期にみられた傾向は特徴的ではをくをり, 比較的第二親に類似した傾向を再び示すことがわかる. Ⅱ−2 地形による消費機構の相違 わが国における甘橘類は,傾斜地を開拓したテラス造成地に栽培されている場合が多くみられるが,テラス全体に ついての土壌水分消費機構の解明はいまだ充分ではなく,わずかにテラスの山側と谷側との間に差があることが示さ れる程度にとどまっている(1).今回の測定結果について,テラス横断面における土壌水分消費盈を示すと図−1,2, 3,4のようになる. 、

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mm 図一1第一・期の消費機構

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83 第24巻第1号(1972) m 2 1 0 ■ 叫 + 0 1203040

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0 5 0 2 1⊥ l 0 5 0 5 m 2 1 1 m 図−2 第二期の消費機構 図−3 第三期の消費機構 ′ ̄、\

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0 1 2m − ー■■−■− 10 20 30 40 50 Cm 図−4 第四期の消費機構 まず第一・期は,データが不充分ではあるが,−・般的にみて等消費孟扱が水平になり,鉛薄方向の消費慮に差が大き いことが示唆された.第二期になると水平方向の分布が生じ,樹下の深層では1日の消費水丑が平均1mm以下であ るのに対し,樹間の表層では3mm近くにもなり,位置による消費水量の差が非常に大きくなっている。又,一・般に 谷側の消費慮が山側のそれを上まわっているのが特徴である.第三期になると消費水羞が更に増大し,深層の土壌水 分もかなり消費されはじめる.そして樹問においては谷側の消費水量のほうが多いが,全体としてはテラスの部位に よる差が緩和されてきている.更に第四期にをるとテラス山側の消費水蕊が谷側のそれを上まわる傾向がみられる. このように,第三期から第四期にかけてテラスにおける土壌水分の消費傾向が逆転している原因は,測定の対象とし

た果樹群の生育が山側のほうが盛んであったためではないかと考える.そこで称々の因子について果樹の成長度を比

較してみると真一5のようになる. この表からわかるように,主として第コ那こおける成長度の指標となる夏枝伸長丑はテラス谷側が大きいが.その 他の因子は山側が大きく,特に第二期以後における成長度の指標とをるところの果実肥大盛は,山側が有意な差をも って谷側より大きな偲を示している.この結果と昭和45年度のデータ(1)とを対比させて考えると,本来の土壌水分

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表−5 成 長 度 の 比 較 テ ラ ス 山側 1 テ ラ ス谷側 春枝伸長盈(cm) 夏枝伸長魚(cm) 果実肥大蛍(cm) 13一.7 ± 2.6 29..8 ± 9.3 5.76 ± 0..39 11“4 ± 3巾0 37.8 ± 9.4 5.57 ± 0.18 総供給量は山側のほうが多く,そのために生育の前期には山側の土壌水分が谷側のそれを上まわり,みかけ上の消費 水盛もより少をくなっている.しかし山側の果樹の生育,特に生殖成長が谷例の樹木より盛んであったために土壌水 分がより多く消費され,早秋になって探屑からの水分補給が期待できなくなると,みかけ上の消費水晶が真の消費水 盈に近くなり,谷側を上まわる結果となったものと考える.このように生育の第三期前半までは,地中深層からの土 壌水分の供給が充分期待できるのに対し,第三期の後半から第四期にかけてはこれがあまり期待できず,果樹の消費 水量に応じただけの水分補給がなされなければならないことがわかる. Ⅱ−3 圃場における測点の代表性について さきに図−1∼4に示したように,テラスにおいては,土壌水分の消費特性が各部位によって著しく異なっている. しかしながら−・般の圃場において,今回の検討の対象としたような多くの測点において土壌水分を測定することは煩 雑であり,実際上は不可能に近い.そこで,このような多くの測点をとらずに1点で圃場全体を代表しうるような測 点について考究してみた.甘橘類では根群分布がq・般に探さ20∼30cm,樹幹から150∼200cmまでの範囲に集中し ていることが知られているのでく4),この場合に対象とする圃場は図−1に示した土壌水分測定位置によってほぼ把握 されているものとみなした.そこでまず生育期全体を通じて,給水必要時期における各測定の土壌水分(pF値)を 示すと,表−6のとおりである. 表−6 給 水 時 の 土 壌 水 分(pF) 谷 側 つぎに生育期全体における消費水温を示すと表イのようになる. これらの表からわかるように,給水時の平均pF億2一.4が示されるのは,テラス谷側では欄幹から60cm経れた位 置で深さ20∼30cm,あるいは90cm離れた位置で探さ30cm余りとなっており,又山側では樹幹から60∼90cm離 れた位蕊で探さ20cm余りのところがこれに相当している.又,平均消費水盤40mm/10cmに相当するのは,谷側 では樹幹から60−90cm離れた位置で探さ30cmのところであり,山側では樹幹から60cmの深さ20∼30cmのと

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85 第24巻第1号(1972) 表−7 生 育 期 の 消 費 水 竃 谷 側 90い7mm 50.8mm 30,.3mm 28.7mm 24..7mm 20. 7 mm 15.8mm 70.1mm 55..9mm 45小4mm 19.6mm 18.7mm 66小6mm 42.9mm 18.Omm 31.6mm ころ,および90cm離れた位置で探さ 30cmのところがこれに近い値を示している.従って単に相加平均値に近い 測点を代表点としてとらえるのならば,谷側では樹幹から60ハノ90cm離れた位置で探さ 30cm程度のところを代表 点とみなすことができ,又山側では樹幹から60ル90cm離れた位恩で深さ20”30cmのところがこれに相当するも のと考えられる.しかしをがら生育時期別の変動や,かん水の方法による偏差も考えられるので,実際上はこれより も安全側にとって,樹幹から90cm離れた位置で探さ20cmのところを代表的測点とするのが妥当であろう. Ⅱ−4 土壌水分環境からみた栽根密度について 甘橘類の栽楷密度については,これまでは主として樹冠部分の大きさや,管理上の容易さといったいわゆる空間的 要素を考慮して,経験的に決定されてきていた.しかしながら現在,甘橘類は比較的地下環境の劣悪な傾斜地に多く 栽培されており,空間的要素に加えて地下環境要素をも考慮する必要があるものと考える.特に空間的要素について は,整枝や好走等によってある程度制御できるのに対し,根の伸展に対しては直接的制御が困難であることからも, 地下環境,特に土壌水分環境からみた栽植密度の決定も必要とをってくるのではなかろうか. 根の伸展は,表土屑の厚さヤ生育期の土壌水分の多少などによって水平,鉛直方向の分布が異なってくるので,栽 植密度の決定法の−・般化については多少問題があるが,こ.こでは今回の測定デ・−タをもとに考究してゆく.■まず表−7 のデ・−・タをもとにして検討してみると,鉛直方向については,せいぜい40∼50cm程度の表土厚さがあればよいも のと考える.水平方向については,探さ10cmのところでは樹幹から離れるよど消費水虫が多くなっているが,こ れは主として蒸発の影響によるものと考えられ,むしろ恭発による消費が相対的に少をくなる探さ 20cmのところ では,樹幹から90cm離れた位際で消費水量が娘大値を示している点に着目したい.Ⅱ−3で示した測点の代表性か らみても,探さ20cmで樹幹から90cm離れた位置が中心となっているので,果樹の根群範囲はその2倍の距離に 達するものとして,各果樹間の距離は更にその2倍にあたる360cm程度にとるのが若木の場合安当なものと考える. 実際の根群分布もほほこの推定をうらづけるものとをっていることが知られているが(4),栽植距離としては,若年期 には計画密植とする場合も多く,一応この考え方は移植や間伐をしをいことを前提としている.又,できるだけ土地 を有効に利用するために,図−5に示したような中心角を600とした配列にすると,1ha当り864本の樹木が栽培で きることになり,実際の果樹園での,いわゆる2間間隔栽培はほぼこれに匹敵している. これを中心角900に栽租した場合と比較してみると,1ha当り135本多く栽培でき,土壌水分の消費効率も約19% 上昇し,効率的であるといえる.

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図−5 栽棉の配列と蜜度 ⅠⅠⅠま と め これまでに論述したように,甘橘類の開場規模での土壌水分消費機構をとらえることにより,こ.れまでの経験的に 行なわれていた栽培方法がより合理的に説明できる.今回の測定によれば,まず地形と果樹の生育とは土壌水分の消 費機構に対して影響を及ぼす2大要因であり,この両者の相乗的効果によって,圃場における土壌水分消費の不均一・ 性がつくり出されていることが判明した.つぎに土壌水分の測定位置については,樹幹から90cm程度離れた探さ 20cmのところを代表点として選べば,より簡単かつ合理的な指標とすることができよう.又土壌水分環境から栽植 密度を決めるには,若木の場合樹間距離を360cm程度にとり,1ha当り864本前後の栽砥が適当なものと考えられ る。 参 考 文 献 (1)松田松ニ,山田窒息:香大農学軌 22−2,113− 80(1972) 117(1971) (4)たとえば, (2)桧田松ニ,山田窒息:番犬農学軌 22−2,108∼ 富士岡義一,海田能宏,中川泰男:盛土論集, 112(1971) 27,1∼8(1969). (3)松田松二,山田宣良:番犬農学報,24−1,72∼ FUNDAMENTALSTUDIESONTHERATIONALIRRIGATIONFOR

THEDISTRICTALONGTHEINLANDSEAOFJAPAN

VIlOntheVariationandRepresentativenessoftheMechanismsofSoil

MoistureComsumptlOninthefield

MatsujiMArrUDAandNoriyoshiYAMADA

Stlmmary

In this paper〉tOpOgraPhycaland physiolog1Cale駄ctsonthe soilmoistureconsumptlOnOf

tangerinetreeisresearched… Resultsprovedinthisexperimentalresearchare;

(1)・Intheslopingrorchard,themechanismsofsoilmoistureconsumptionof−tangCrintreeare

a鮎ctedbybothtopographical(locationofterrace)andphysiological(stageofgrOWth)

f瓦ctorS

(2)・Fromviewpointofsoilmoisture,thepointof90cm fiom trunk and20cm depthis

regardedasrepresentativepositionofalltheorChard

(3)・Fortheplanting・densityoftangerinetrees,itissuitabletoplantas864trees/ha,Or・the

Shapeofisoscelestriangleof’3l6msidelengtheachother

参照

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