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算数科の問題解決学習における見積り活動の位置づけ : 見積りの類型化とカリキュラム

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(1)

算数科の問題解決学習 における見積 り活動の位置づけ

―――見積 りの類型化 とカ リキュラムーーー

Some Estimation Activities inヽ

Iathematical Problenl‐

Solving Learning

An Estilnation Model and Curriculum一

数学科教育教室 矢

1.は

じめ に (これ まで の 研 究 の 経 過) 問題解決学習 について は

,こ

れ までに「問題解決 における児童 の思考 の一考察」,「算数科 におけ る問題解決能力の評価 について」

,そ

して「算数学習 にお ける問題解決行動の考察一一問題の理解・ 解決の計画開発 と数学的遂行力 との関係――」として

,日

本数学教育学会誌 において発表 して きた。 そして

,こ

れ ら一連 の研究 は算数科 における問題解決学習の望 ましい在 り方の追求 を目的 とした も のである。 また

,そ

のための研究 の方法 としては児童一人 ひ とりの問題解決行動 に焦点 をあて

,以

下の視点 より考察 を進 めて きた ものである。 ・ 児童 はどのように問題 を理解す るか。 ・ 児童 はどの ような解決 に役立つモデル を作 り上 げるか。 ・ 児童 はどのような解決の筋道 をたてるか。 そして, ・ 児童 はどのように自ら用いた手続 きを振 り返 り

,ま

た見 い出 した解 を評価す るか。 これ らの視点 に対 して

,研

究 の成果 は十分であるとは言い難い。 その1つは

,問

題 の解決 に対す る計画開発が挙 げられ る。 また

,そ

の2つめ としては解決 に用いた手続 き 。見 い出 した解 に対 する 評価 の在 り方が挙 げ られ る。 第1の点 について は

,前

論文

(*1)に

おいて児童の計画開発 の様相 を

,部

分的な計画 と大局的 な計画の2つに分類 し考察 した。 そして

,解

決の計画 を立てるためには今直面 している問題 と既習 の事柄 との関係づ けや既得 の経験的知識 との関係づ けをす ることが望 ましい こと。 また

,児

童 の立 てる解決 の計画 は部分的な計画か ら大局的な計画へ と立て られ る能力の育成が望 まれ ることを提言 した。 第

2の

点について は

,多

様 な解決 を試みることにより自ら見い出 した解 に対す る自己評価 と

,集

団における話 し合 いで各児童が解決 に用いた手続 きについて議論 し合 うことの重要性 を指摘 した。 前者 については

,確

かめ として一般 に用い られる逆算 による検討 と合わせて

,多

様 な解決 を試みる ことが 自ら見い出 した解 の検討 につなが ることを意図 した ものである。 また

,後

者 については既習 事項 との関係づ け

,及

び他 の手続 きと自ら用いた手続 きとのつなが りを明 らかにすることが必要で あることを意図 した ものである。 本論文で は見積 りの活動 とい う新 たな視点か ら児童 の問題解決行動 を考察す ることによって

,上

昭 敏 部

(2)

記の

2点

についてさらに明 らかにしてい くことを考 える。 また

,児

童の見積 り能力 に関す る基礎研究 として は,「算数科 における見積 りの指導(数と計算領 域

)に

ついて

,そ

1,そ

の2」,「子 どもの数量的な感覚 と算数科 の問題解決 における考 え方を中 心 にして」をもとにし,「算数科 における児童の見積 り能力の考察―下見積 りの中にみる児童の数 に 対す る感覚 と誤差 の意識 について一―」

(*2)の

論文 の中で

,見

積 りの重要性 と今後 の見積 り指導 における望 ましい在 り方 について提言 した。特 に

,こ

の論文 において は

,見

積 りの重要性 として以 下 の事柄を挙 げた。 ・ 数 に対す る多様 な見方が育 て られ ること。 ・ 問題 の構造 に対す る大局的な見方 と共 に

,解

決 の方向及び結果 に対す る大局的な判断力が育て られ ること。 そして, 。目的に応 じた数の概括的把握 により

,解

決の見通 しを立 てる力が育 て られ ること。 また

,見

い 出 した解 について検討す る力が育 て られ ること。 数 に対す る多様 な見方 については

,特

に数 の加法的及び乗法的見方がで きることであ り

,言

い換 えれば数の相対的な大 きさをとらえるとい うことである。 そして

,数

に対 する多様 な見方が育て ら れ ることにより

,目

的 に応 じた数の概括的把握が可能 になるもの と考 える。 また

,解

決 の見通 しを立て ることはまさし く問題 の解決のための計画開発 を意味 し

,そ

のことは 見い出された解 の検討へ とつなが るものである。

2.研

究 の ね らい 本研究のね らいは

,今

まで個々 に研究 を進 め主張 して きた問題解決学習 と見積 り指導 を

,児

童の 問題解決行動の1つとして見積 りの活動 をとらえ位置づ けることである。 (1)本研究の第一 見積 りの活動 を児童 の問題解決行動の1つとして位置づ けるためには

,児

童の見積 りの様相 を見 直 し分析することが必要である。 そ こで

,こ

こで は過去

3年

間にわたる見積 り指導の実践 をもとに して問題解決過程への位置づけをす ると共 に

,新

たな見積 りの類型化 を行 うものである。 12)本研究の第二 見積 りの活動 を実際の指導の中に位置づ けることも考 える。 そのためには

,新

たな見積 りの類型 化 をもとにその指導の具体化が必要であると考 える。その1つの方法 としては各学年の学習内容 と 対比することである。 そ こで

,こ

こで は第

1学

年か ら第

6学

年 までの数 と計算領域 にお ける見積 り の活動のカ リキュラムを明 らかにす るものである。

3.研

究 の方法 (1)見積 りの活動の位置づけについて 問題解決過程 に即 して児童の問題解決行動をみると

,児

童にとって困難なものの 1つ には

,ま

ず 問題の解決にあた りいかに解決を進めてい くか という計画の立案がある。児童にとって容易に解決 できるものであれば

,改

めて解決の計画を立てる必要はない。 しか し

,問

題の多 くは容易に解決で

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第32巻 第

1号

(1990) 17

、 きるもので はない。 また

,解

決の計画が立 て られたか らといって必ず しも正 しい解 に到達す るとい うもので もない。解決の計画 を立 てては遂行 し

,時

にはその途 中で計画 を修正す ることもある。 こ のように解決の計画開発の過程 は何度 と思考錯誤 を繰 り返す。 この過程 における有効 な試みの1つ として は

,既

習 の内容や既得 の経験的知識 と今直面 している問題 との関係づ け とい うことが挙 げら れる。

I

問題 の解決 にあた り児童 に とって困難 な ものの2つめには

,見

い出 した解 に対 す る振 り返 りがあ る。 この ことは

,児

童 にとって困難であるとい うことよ りはむ しろ実際の指導の中で取 り上 げ られ に くい とい うことである。 その原因 は

,解

決 の遂行 に時間がかかるために検討 についての時間的な 保証が されに くい とい うことがある。 本研究 は以上 の2つの過程 に焦点 をあて

,見

積 りの活動 の位置づけを考 えるもので ある。 (2)見積 りの類型 について 見積 りの類型 については

,先

行研究

(*3)に

より以下 の4つの類型が示 されてい る。

・ オープン・ エ ン ドな見積 り (Open‐ended Estimation scale)

この見積 りは

,算

数・ 数学 の研究者 たちが普通 に用いる手続 きで得 られ る見積 りの うち

,最

大 と最ガヽの ものの間に入 っていればその答 えは正 しい もの とす る。

・ 適当―不適 当の見積 り (Reasonable vs,Unreasonable Estimation scale)

この見積 りは

,与

えられた答 えに対 してその答 えが適当であるか

,不

適当であるか を判断する

ものである。そして

,適

当な答 えは正確 な ものの ことであ り

,不

適当な答 えは正 しいオープン・ エ ン ドな見積 りの範囲外 にあるが

,正

確 な答 えの10倍以内になっているものである。

・ 大小比較 の見積 り (Reference Number Estimation scale)

この見積 りは

,与

えられた数 に対 して正確 な答 えがその数 よりも大 きいか小 さいか を判断す る ものである。比べ るときの基準 になる数 は

,オ

ープン 。エ ン ドな見積 りで認 め られ る最大 と最 小 の範囲内にある。

・ 桁数の見積 り (Order Of magnitude Estimation scale)

この見積 りは

,10の

累乗 の範囲でその答 えの妥当性 を判断するものである。 そ して

,正

答 はや は リオープン・ エ ン ドな見積 りの範囲内にある。 これ ら4つの見積 りの類型 をもとに実践 を行 って きた。本研究では

,児

童の見積 りの様相 を実際 の指導 に即 して振 り返 り

,分

析・考察す ることを通 して新 たな見積 りの類型化 を考 える ものである。

4.研

究 の 内容 (1)問題解決過程に即 した見積 りの活動の位置づけ 見積 りの活動を問題解決過程へ位置づけるために

,解

決の計画開発の過程 と解決の評価の過程 を 取 り上げて考えるものとする。それは

,前

述 した通 り見積 りの活動には主に解決の見通 しを立てる 活動 と見い出した答えを確かめる活動があるか らである。

1)解

決の計画開発の過程について 児童 は問題 に直面 したとき

,そ

の問題が どのような問題であるかを理解 し

,解

決に向けての計画 の開発 を行 う。解決の見通 しを立てるためには

,提

示されたはじめの問題 を解決者 自身が再構成す

(4)

る心的活動 を行 う。 その様相 の中には

,そ

の問題 をい ろい ろな角度か ら考察す ることが ある。例 え ば

,与

えられた数値 に対する多様 な見方が行 われ る。 その与 えられた数値 その ものが もっている大 きさについての数 の構成的な見方や

,他

の数 を想起 してその数 との相対的な大 きさを とらえる見方 な どがある。 また

,問

題 その ものが もつ し くみに対す る多様 な見方 も行われ る。今直面 している問題 と

,今

ま でに学習 して きた既習内容の中か ら類似 な問題 を想起 した り

,あ

るいはその問題 に含 まれ るい くつ かの条件 の中か らある条件のみを取 り出 した りす る。そして

,想

起 した類似な問題 との相違点や類 似点 を見 い出 した り単純化 した りす る様相 を示す。 さらに

,解

決 の見通 しを立てる様相 の中には

,そ

の問題 の答 えについての概括的把握 を行 いお よ その答 えを見当づ ける。お よその答 えを見当づ けるためには

,そ

の問題 に与 えられた数値 を概数で とらえた り

,概

算 した りする心的活動 を行 う。 この ようなお よその答 えに対す る見当づ けは

,自

ら の問題解決 についての方向性 を得 るばか りで はな く

,そ

の解決 の方向性 に大 きな誤 りを起 こさない ようにす るためにもなる。 児童 はこのように問題 の計画開発 の過程 において

,問

題 に対す る部分的な見方 をす る と共 に

,大

局的な見方 をもしなが ら解決の見通 しを立て るのである。 これ らの児童の問題解決行動 の中にみ ら れ るさまざまな活動 は

,数

量 に対す る豊かな感覚 と問題 の構造 に対する部分的あるい は大局的な把 握 を基礎 としていることは言 うまで もない。 そ して

,こ

の過程 における児童の心的活動 は見積 りの 活動 の過程 と非常 に似ているものであるととらえることがで きるのである。(前論文

*1,*2を

参 照 されたい。)

2)解

決 の評価の過程 について 児童 は

,自

ら立てた解決の計画 にそって問題 の解決 を遂行す る。解決の遂行 によって見 い出され た答 えは確かめられなければな らない し

,ま

た用いた手続 きに対 しても検討が加 えられなければな らない。その ときに望 ましい ことは

,用

いた手続 きについて より高次の数学的に価値 のある方向に 高 め られ ることである。 これ らの児童 の活動 は

,解

決者 自ら行 うことが よいのであるが

,時

には学 級全体 による話合いの中でその ことが議論 され ることが多い。 例 えば

,加

法の問題であればその答 えは

,被

加数 と加数 を交換 して加法計算す ることで確かめが 行われ る。あるいは

,そ

の答 えか ら加数 を既習 の減法 に帰着で きるように分解 し減法計算 を行 い, その差が被加数 に一致す ることで も確かめ られ る。減法の計算で は

,そ

の答 えは見 い出 した差 (答 え

)と

減数 を加 えた加法計算 を行 い

,そ

の和が被加数 に一致す ることで確かめ られ る。つ まり,カロ 法 も減法 もその答 えの確かめはそれぞれの逆算 によって確かめ られるとい うことである。加法 と減 法 の指導の系統が逆であれば

,上

述 した事柄 はその逆 になる。 また

,児

童の問題解決の計画開発の過程 において解決の見通 しを立てると共 に

,概

数 あるい は概 算 によっておよその答 えを見積 っている。 この答 えについての見積 りの活動 を

,見

い出 した答 えの 確かめに用いることは望 ましい ことであ り確かめの幅 を広 げることにもなると考 えるものである。 なぜな らば

,問

題 の解決 にあた りお よそで はあるが見積 った答 えの大 きさは

,解

決 の遂行後 に得 ら れた答 えの大 きさと大 きく異なるもので はない。正確 な答 えの範囲 は十分確かめられ る ものであ り, 得 られた答 えの妥当性 を裏付 ける1つのよい手段で もあると考 える。 前論文

(*2)に

おいて

,見

積 りの誤差 について明 らかにした通 り低学年で もその ことは可能で ある。例 えば

,低

学年 (第

2学

)に

おいて

3位

数の3日の加法及び2日の減法で

,誤

差 を意識 し

(5)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 32巻 第

1号 (1990) 19

ている児童 は全体 の約

2/3以

上 の割合 を示 している。また

,正

しい誤差 の認識がで きている児童 は 加法 において全体 の約半数である。 この調査 において は誤差 の指導 は行 っていないのであ り

,こ

れ か らの指導の中で誤差 をも含 めた見積 りの活動 を位置づけることにより

,そ

の割合 は増す もの と考 えられ る。その際

,加

法 と減法

,乗

法 と除法で は児童 の誤差 に対す る正 しい認識 は

,減

法 よ りも加 法

,除

法 よりも乗法 の方が容易 にで きる。 この ことを考慮 に入れた上で指導 にあたる必要がある。 高学年 (第

6学

)に

おいて は

,そ

の誤差 の認識 は一層で きるようになっている。 また

,分

数 のカロ 法計算の結果 を見積 る中で よ り正確 な計算結果 に近づ けるための概数処理及び概算処理が試み られ ていることも明かである。 問題解決過程 に即 して児童 の この ような見積 りの活動 を問題解決行動 の中に位置づけることは, 問題解決学習の望 ましい在 り方 に近づ ける上で意味があると考 える。そ して

,

この ことはまた学習 者である児童の問題解決行動 を一連 の学習活動 とす るばか りでな く

,問

題解決のそれぞれの過程が 児童 に とって一層価値 あるもの として とらえられ ると考 えるものである。 似)見積 りの類型化 ここで は

,児

童 の見積 りの様相 を以下の2つの観点で類型化 を試みる。 ・ 数その ものの大 きさを見積 る (概数 にす る

)際

にみ られ る数 の見方 ・ 計算結果 を見積 る (概算す る

)際

にみ られる数の見方

1)概

数 の見積 りの類型

類型

A-1】

数の大 きさを

,あ

る数との和でみる

類型

A-2】

数の大 きさを

,あ

る数 との差でみる

類型

A-3】

数の大 きさを

,あ

る数をもとにして乗法的にみる

類型

A-4】

数の大 きさを

,お

よそ何十

,何

,一

,と みる

以下 に挙 げる例 は

,原

則 として教科書 の各単元の導入等で用い られている数値及び提示問題 を取 り上 げるもの とす る。(次項 の「概算 の見積 りの類型」について も同様)また

,こ

こに示す見積 りの 様相 は実践 より見 い出された ものが主である。 よって

,そ

の他 にも考 えられ ることは言 うまで もな ヤゝ。 ・ 【類型

A-1】

について 235の大 きさ (第

2学

)は

,200よ

り大 きい とみることがで きる。つま り

,235を

200と35の和 とみる見方である。同様 に

,2354の

大 きさ(第

2学

)は

,2000よ り大 きい とみることがで きる。 これ らの見積 りを「数の大 きさを

,あ

る数 との和 でみる」 とす るのである。 また

,こ

の見積 りは概算の過程 において もみ られ る。 「

lmが

312円のぬのを

3m買

いました。代金 はい くらですか。」(第

3学

)の

問題 に対 して,

312X3の

積 はお よそ900よ り大 きい とみることがで きる。 この様相 は300×

3=900の

概算 を行 っ ているが

,312を

300と 12の和 とみることにより概算結果 の900よ り大 きい とす る見積 りである。

(6)

・ 【類型

A-2】

について 699の大 きさ(第

2学

)は ,700よ

り小 さい とみることがで きる。つ ま り

,699を

700と1との差 とみる見方である。同様 に

,68418(第

4学

)は

70000よ り小 さい とみることがで きる。 これ らの見積 りを「数 の大 きさを

,あ

る数 との差でみる」 とす るのである。 また

,概

算 の過程 において もこの見積 りはみ られ る。 「81まいの色紙 を

3人

で同 じ数ずつ分 けると

, 1人

分 は何 まいにな りますか。」(第

3学

)の

問題 に対 して

,81■

3=の

商 はお よそ30よ り小 さい とみることがで きる。 この様相 は90■

3の

概 算 を行 っているが

,81は

90よ り小 さい とみることにより概算結果 の30よ り小 さい とす る見積 りで ある。 ・ 【類型

A-3】

について 2354の大 きさ (第

2学

)は

およそ2500と みた上で

,2500は

100の 25こ分あるいは100の 25倍と みるのである。同様 に,8013000の 大 きさ (第

3学

)は

およそ800万とみることができ

,さ

らに 100万の

8倍, 1万

の800倍とみるのである。 これらの見積 りを「数の大 きさを

,あ

る数をもとにして乗法的にみる」 とするのである。 ・ 【類型

A-4】

について 699の大 きさはお よそ700と みることがで きる。 また,8013000の大 きさはお よそ800万とみるこ とがで きる。 これ らの見積 りを「数の大 きさを

,お

よそ何十

,何

,…

,

とみる」 とす るのである。 また

,こ

の見積 りは概算の過程 において多 くみることがで きる。 「山川市 の人 口を調べた ところ

,東

町 は9167人

,南

町 は7829人 です。東町 と南町の人数の合計 は何人ですか。」(第

3学

年)の問題 に対 して

,9167+7829の

和 はお よそ17000人 とみることがで き る。 この様相 は9000+8000の概算過程 において

,9167を

9000,7829を 8000と みているのである。 また

,9200+7800の

概算過程 において は9167を9200,7829を7800とみているのである。 「

21.5mの

ひ ごか ら

,4.3mの

ひごは何本 とれ ますか。」(第

5学

年)の問題 に対 して,21.5■4. 3の商 はお よそ 5と 見積 ることがで きる。 この様相 は21.5を 20,4。 3を 4と みることによって行わ 孝ιる。 以上

,概

数の見積 りの類型 について個々に説明 をしたが,699と い う数 を1つ とってみて もそこ とこは「700よ り小 さい」 とみる様相や「およそ700」 とみる様相 が存在す る。 また

,9167を

9000と みた り9200と みた りす る数の見方 も存在する。 さらに

,加

えるな らば

,9000は

1000の

9倍

とみる 見方 も存在す る。 このように数 の大 きさについての多様 な見方が見積 りとい う活動 を通 して も育 て られるのである。そ して

,こ

れ ら数 その ものの大 きさに対 す る概数 の見積 りは

,概

算 の見積 り 過程 において も行 われ るのである。

2)概

算の見積 りの類型

類型

B-1】

計算結果を見積る際

,あ

る数よりも大きいとみる

類型

B-2】

計算結果を見積る際

,あ

る数よりも小さいとみる

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 32巻 第

1号

(1990)

類型

B-3】

計算結果を見積る際

,

類型

B-4】

計算結果を見積る際

,

類型

B-5】

計算結果を見積る際

, ある数 をもとにして乗法的にみる およそ何十

,何

,…

,と

みる 範囲

(A<X<B,X:計

算結果

)で

とらえる ・ 【類型

B-1】

について 「重さが1.75kgの入れ物 に

,3.64kgの

米を入れると

,全

体の重さは何kgにな りますか。」(第4 学年

)の

問題 に対 して

,1.75+3.64の

和 はおよそ5よ り大 きいとみることがで きる。 この様相 は

1+3=4の

概算過程で

,純

小数部分の和

(0.75+0.64)は

1を 超 えると見積 り

,概

算結果の4 に 1を 加える。槻算結果では

4で

あるにもかかわ らず

,よ

り正確な値 に近づけるために適当な数 を加 える (あるいは引 く

)と

いう行為を調整 という。(『調整』については後述する。) 「2/5m2の板 をぬるのにペ ンキを3/4dl使いました。ペンキl dlでは

,板

を何m2ぬることがで き ますか。」(第

6学

年)の問題 に対 して,2/5■3/4の商 はおよそ2/5よ り大 きいとみることがで きる。 この様相は2/5■

1=2/5の

概算において

3/4<1で

あることより

,1よ

り小 さい数でわるとその商 は被除数より大 きくなると見積つている。 これ らの見積 りを「計算結果を見積る際

,あ

る数 よりも大 きいとみる」 とするのである。 ・ 【類型

B-2】

について 「ちよ紙を5まい買って

,725円

はらいました。 このちよ紙1まいのねだんは何円ですか。」(第

3学

)の

問題に対 して

,725■ 5の

商 はおよそ150よ り小さいとみることがで きる。 この様相 は 750■

5=150の

概算において

,725<750で

あることより150よ り小 さい と見積 っている。 「ペ ンキl dlで

,板

を4/5m2ぬることがで きます。ペ ンキ2/3dlでは

,板

を何∬ぬることがで き ますか。」(第

6学

年)の問題 に対 して

,4/5×

2/3の積 はおよそ4/5よ りも小 さい とみることができ る。この様相 は4/5×

1=4/5の

概算過程において

2/3<1で

あることより

,1よ

り小 さい数をかけ るとその積 は被乗数 より小 さ くなると見積 っている。 これ らの見積 りを「計算結果 を見積 る際, ある数 よりも小さいとみる」 とするのである。 ・ 【類型

B-3,B-5】

について 「色紙が87まいあります。

1人

に21まいずつ配ると

,何

人に分けられますか。」(第

4学

)の

問題 に対 して

,87■

21の商 はおよそ4と 5の 間 とみることができる。 この様相 は21の

4倍

が84で あり,21の

5倍

が105であることを見積うている。つまり

,お

よその商 を4と

5の

間 とみる見積 り を「計算結果を見積 る際

,範

囲で とらえる」 とするのである。 また

,21の 4倍

が84であることや 21の

5倍

が105であるといった見積 りを「計算結果 を見積 る際,ある数をもとにして乗法的にみる」 とするのである。 7876■

32(第 4学

)の

商の見積 りにおいても同様 にこれらの様相 はみられる。およその商 は 200と300の間 とみることがで きる。そして

,32の

200倍は6400であることや32の300倍は9600であ ることより

,6400<7876<9600と

見積っている。

・【

類型

B-4】

について

(8)

この見積 りは低学年か ら高学年 まで

,ど

の学年 において も多 くみ られ る様相 である。

28+47(第

2学

)の

和 は30+50と概算す ることによ り

,お

よそ80と見積 ってい る。同様 に,

465-342(第 2学

)の

差 も450-350と概算す ることにより

,お

よそ100と見積 つてい る。 また

,小

数 の計算や分数の計算 において もこの様相 はみ られる。

3.64-2.1(第 4学

)の

差 は3.6-2.1と概算す ることによりおよそ1.5と見積 っている。 ・『調整』 について 【類型

B-1】

の ところで調整 の例 を挙 げたが

,そ

の他の例 について もまず挙 げるもの とす る。

325+334(第 2学

年)の加法計算 において

,お

よその和 は

300+300=600と

概算 した後

,十

の位以 下 に着 目してよ り正確 な値 に近づ けるために600に 50を力日えておよそ650とす る様相 を示す。また, 3.6×

7(第

4学

年)の乗法計算 において

,そ

のおよその積 は

3X7=21と

概算 した後

,正

確 な値 に近づ けるために適当な数 を加 えお よそ25とす る様相 を示す。 以上の例 か らわかるように

,調

整 とは概算結果 に対 してよ り正確 な値 に近づ けるための行為で あ り

,誤

差 の意識が強い児童 に多 くみ られ る傾向がある。 また

,概

算 に際 して個々 の数 をどのよ うな概数で とらえるかにも依存す る。つ まり

,与

えられた数 と概数 との差 の大 きさにも依存す る ものである。 (31カ リキュラムヘの位置づけ (2)において新 たな観点 による見積 りの類型化 を行 った。 この ことは

,実

践 に役立つための試行で ある。 ここで は

,こ

の類型化 をもとにして第

1学

年か ら第

6学

年 までの数 と計算領域 におけるカ リ キュラムヘの位置づけを試 みるものである。 その際

,概

算 における見積 りは一般 に事実問題 によつ てなされ るが

,以

下では学習内容 と見積 りの類型化 を明確 にす るために

,立

式 による表現で表す こ とにす る。 よって

,実

際の指導 において は事実問題 の提示後 に行われるものである。 第 1学 年 (表 1) 学習の内容 具体例 行われる見積 りの類型 100までの数

【Al】.【A-2】.【A-4】キ【A-3】

【A-1】.【 A-4】キ【A-3】

第 2学 年 (表2) 学習の内容 具体例 行われる見積 りの類型 くり上がりのあ る2位数+2 位数=2位教 28+47 【B-4】 +【 A-4】 【B-1】+【 A-4】 くり下が りの ある2位数― 2位数=2位 数 34-18 【B-4】キ【A-4】 1000ま で の数

【A-4】.【Al】+【A-3】

【A-4】.【A-2】+【A3】

3位数+2位 数(3位数)= 3位数 325+334 【B-4】十【A-4】キ調整 【B-1】+【 A-4】 3位数-2位 数(3位数)= 3位数 465-342 【B-4】+【 A-4】 【B-1】+【 A-4】 3日 のたし算 36+18+39 【B-2】十【A-4】 【B-4】十【A-4】 3日 のひき算 798-69-284 【B― +【A-4】 10000ま で の 数 2354 【A-4 【A-1 十【A-3】 十【A-3】 学習の内容 具体例 行われ る見積 りの類型 千万 までの数 36254 【A-4】.【A-3】 8013000 【A-4】.【A-3】 4位数 (5位 9167+7829 【B-4】十【A-4】 第3学年 (表3)

(9)

数)±4位数 (5位数) 8682-5975 【

B4

十【A-4】 2位数(3位 数)×1位数 32×3 B   B 十【A-4】 十【Al】 312× 3 B   B +【A-4】 キ【A-1】 2位数(3位 数)■ 1位数 81■3 【B4】+【 A-4】 【B2】キ【A-2】十【B-3】 725■5 【B-4】十【A-4】 【B2】十【A-2】 +【B-3】 2位数(3位 数)×2位数 65X37 【B4】十【A-4】 375×45 【B-4】十【A-4】 鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 32巻 第

1号

(1990) 第 5学 年 (表5) 第 4学年 (表4) 学 習 の内 容 具体例 行われ る見積 りの類型 兆 までの数 121048923 【A-4】.【A-3】 3位 数 ×3位 数 245×315 【B-4】+【 A-4】

槻 数 68418 【A-4】.【A-1】.【A-2】

2位数(3位 数)■2位数 =1位数 87■21 【B-1】十【Bと 3】 【B-5】+【B-3】 279■45 【B-4】 +【A-4】 【B-5】十【B-3】 3位数(4位 数)■2位数 =2位数 (3 位数) 860■21 【B-4】十【A-4】 【B-2】十【B-3】 7876■ 32 【B-4】十 【B-5】十 A-4】+調整 B-3】 小数のたし算 とひき算 175+364 【B-1】十 【B-5】+ A-4】十調整 A-4】 364■21 【B-4】十【A-4】 帯分数のたし 23/5+14/5 【B-1】+ 【B-5】十 A-4】+調整 A4】 第 6学 年 (表6)

5.研

究 の ま とめ と今 後 の課 題 本研究の第

1で

ある見積 りの類型化については

,ま

ず大 きく概数における見積 りの類型 と概算に おける見積 りの類型 との 2つ に分類 した。そして

,概

数における見積 りについては4つ の視点でさ らに類型化 を試みた。また

,概

算における見積 りについては5つ の視点で類型化を試みた。そこで は

,低

学年か ら高学年における児童の数 と計算に対する認識の発達段階を考慮 し

,ま

た実際の児童 の見積 りの様相を分析 した結果をもとに明らかにしたものである。

4.研

究の内容(2)見積 りの類型 化

,の

中で具体的に例 を挙げてそれぞれの類型について説明 した。概数の見積 りの 【類型

A-1】

と【類型

A-2】

は,「数の大 きさを

,あ

る数をもとにして加法的にみる」とまとめることもで きる。 算 とひ き算 31/5-12/5 【B-2】十【A-4】十調整 小数のかけ算 とわ り算 36× 7 【B-4】十【A-4】十調整 【B-5】十【A-4】 184■23 【B-2】+【A-4】キ【A-3】 学習 の内容 具体例 行われる見積 りの類型 小数のかけ算 180×34 B   B +【 A-4】 +【A-3】 十【A-4】 236×27 B-4 +【A4】 小数のわ り算 420■28 B B +【A4】+調整 +【 A-4】 215■43 B-4】 +【 A-4】 B-5】 +【 A-4】 帯分数のたし 算 とひ き算 25/6+37/1〔 【B-4】 +【 A-4】 【B-5】十【A-4】 31/15-13/t 【B-4】 +【 A-4】 学習 の内容 具体例 行われる見積 りの類型 分数のかけ算 (×整数)とわ り算(■整教) 23/4× 3 【B-1】十【A-4】十【B-3】 【B-5】十【A-4】 41/4■ 3 【B-1】十【B-3】 分数のかけ算 4/5×2/3 【B-2】十【A-4】 21/2× 23/4 【B-4】 +【 A-4】 分数のわ り算 2/5■ 3/4 【B-1】 +【 A-4】 34/5■ 21/2 【B-5】十【A-4】

(10)

また,【類型

B-1】

と 【類型

B-2】

についても同様である。【類型

B-5】

の見積 りの様相は, 低学年にはみられず中学年。高学年においてみられる。『調整』については

,低

学年において もみら れ児童の誤差の意識及び認識 に依 るところが大 きい。 本研究のね らいの第

2で

あるカ リキュラムヘの位置づけについては

, 4.研

究のねらい131におい て一覧表にまとめることで明 らかにした。各学年の一覧表 をみてわかるように

,計

算結果の見積 り である概算過程の中では,数そのものを概数でとらえる見積 りの様相が含 まれる。例えば,【

B-4】

A-4】

,【

B-1】

十 【

A-4】

,【

B-2】

十 【

A-2】

+【

B-3】

というように常に概数の見積 りがその過程 において行われるのである。 このことは

,計

算結果の見積 り指導において概数の見積 り指導をも可能 にし

,合

わせて考 えてい くことが重要であると考える。 本研究 は

,今

後の算数・数学教育の中で見積 り指導が重視 され実践的によリー層研究が進められ ることを考え

,そ

の基礎 をなす研究であるととらえる。そして

,本

研究の内容 は実践の中から生み 出したものであ り

,今

後 より改善 してい くと共によい方向へ修正 されてい くことを期待する。 また

,本

研究 は問題解決学習における見積 りの活動の位置づけを学習者である児童の問題解決行 動の 1つ として とらえてい くことであった。そのためには

, 4.研

究の内容(1)問題解決過程に即 し た見積 りの活動

,を

児童の具体的な問題解決行動 と対比 し分析・考察を進める中で

,そ

れ らの関係 を一層明 らかにしてい くことが今後の課題であると考える。 文

*1

矢部敏昭 「算数学習 における問題解決行動 の考察:問題 の理解・ 解決 の計画開発 と数学的遂行力 との関 係」.日本数学教育学会誌第70巻第10号,1988,29.

*2

矢部敏昭 「算数科 にお ける児童 の見積 り能力 の考察:見積 りの中にみる児童の数 に対 す る感覚 と誤差 の 意識 について」.お茶 の水女子大学附属小学校研究紀要

,1989,4559

第22回数学教育論文発表会論文集,313318.

*3 R N RUKENSTEIN.「

Computational estimation and related mathematical skilis」 . Journa1 0f Research in Mathematical Education.vol,16.no,2 1985

4)矢

部敏昭 「問題解決学習 における児童 の思考 の一考察」。 日本数学教育学会誌第65巻第8号,1983年,25 -29.

5)伊

藤説朗,矢部敏昭 他 「算数科 における問題解決能力 の評価 について」。 日本数学教育学会誌第66巻第 10号,1984年,213.

6)

矢部敏昭 「問題解決過程 の分析 と問題解決能力の育成J.科学奨励研究報告書,1984年.

7)伊

藤説朗 他 「算数科 における見積 の指導「(数と計算

)領

域Jについて,その1。 その2」.日本数学 教育学会誌第69巻12号,1987年

,28,

第70巻4号 ,1988年,1925.

8)中

島健三,矢部敏昭 他 「子 どもの数量的な感覚 と算数 の問題解決 にお ける考 え方 を中心 にして」.算数 調査研究会,1987年 ,1988年.

9)

矢部敏昭「見積 りの中にみる子 どもの数 に対 す る感覚 :問 題提起」

.筑

波大学附属小学校学習公開・初等教 育研修会誌,1989年.

10) NCTM

「Curriculum and Evaluation STANDARDS for School Mathematics: working Draft」 .

National Councl of Teachers of A/1athematics, 1987.

11) NCTM

「Curriculum and Evaluation STANDARDS for School Mathematics」 National Council of

(11)

鳥取大学教育期 究報告 毅育科学 第 諺 巻 第

1号

(19901 %

Abstract

h Recent ycarj it is focussilag tO estimation actiVity on the mathemaical edtlcationれ Japan and other COuntFi饂

This thesis is issued cogltit e“αおh of estimation and cleaFed CuFriCulum in t礎工lnumber and Calctlla‐

■onオ す ぬ,And i is relaion tO pF∝溜欝Ofts,mauon act ity and hella ior Of.solヤing problena,Especね 1ヽ4 ■iS VeFy nearly Children's repre.sefatadon of儀 見i丘聰tion in the prOcess oF,lanOing toもolve手 庁。blem and loolt

back a熙ヽ=,.IザS alta呼 鶴 tO representations of esdmatiOn MIIh two vie■ v,Ointtt which arё うollowillg

thati one wiew pOint is ro呻 d numberi the other Чew pOilatる Fettlt of cttlc,lation,The F"meF illCIudes 4-aspOcttt he latteF ineludes 5 aspects

参照

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