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香川用水の淡水魚類(II)-香川大学学術情報リポジトリ

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香川用水の淡水魚類(Ⅱ)

安 芸 昌 彦

〒760−0068 香川県高松市松島町1−18−54 香川県立高松商業高等学校

Freshwater丘shesofKagawaCanalinKagawaPreftcture(Ⅱ)

MasahikoAki,乃jb仇αわ〟C(フ用例e′・C∼αJ〃なぁぶcあ00ちrb肋朋αf叫ぬgαWα乃0−00dβ,・′呼α〃 感謝の意を表する。 調査方法および調査地の概妻 幹線水路の調査は,前報と同じく幹線水路 改修工事に伴い一・定区間の水位が低下したと

きに行った。2003年の調査は11月12日にt3

(高松市)で,2004年の調査は10月14日にt 3のす−ぐ下流部にあるt4(高松市)で実施

した。また,2005年の調査は10月17日にtl

(まんのう町一旧満濃町)とt2(三豊市一 旧高瀬町)の2カ所で実施した。採集には1

節4mmの玉網2∼5個を使用した。分水施設

付近の調査は2003年8月18日にBl(綾川町一

旧綾南町),B2(綾川町一旧綾南町)および

B3(綾川町一旧綾上町)の3カ所で実施し

た。また,B4(高松市)の調査は,2003年

と2004年の幹線水路内の調査と並行して行っ

た。Bl∼B3の採集には1節8mmの投網と

1節4mmの玉網を,B4の採集には1節4mm

の玉網3個を使用した。 採集した資料は,直ちに持ち帰って全個体 を同定後,体長と体高を計測した。また,資 料の一い部はホルマリン(10%)溶液で固定し て標本とした。なお,魚類の同定,標準和名 および学名は「日本産魚類の検索一全種の同 定」(中坊編,2000)に従った。 は じ め に 香川用水の導水は1974年6月に開始され, 香川県の山間部と島喚部を除くほぼ全域に農 業用水,水道用水および工業用水を供給して いる。幹線水路の総延長は約98km,幹線水路 からの分水施設は約180カ所あり,そこ.から県 内の主要な河川やため池等に水を分配して−い る(水資源開発公団香川用水総合事業所, 2002a)。 筆者は先に,香川用水の幹線水路内におい て1986年10月から2002年12月までの間に確認 した淡水魚頬6科14種を報告するとともに, 吉野川水系から香川用水を経由して本県に侵

入した魚頬の移入実態を明らかにした(安

芸,2003)。本報では,その後の2003年11月か ら2005年10月までの間に香川用水の幹線水路

内と分水施設付近で調査した結果を報告す

る。 この報告の作成にあたり,香川用水の魚類 調査の機会を与えてくださった独立行政法入 水資源機構香川用水総合事業所の皆様,現地 調査に協力してくれた香川県立高松商業高等 学校の大西康仁くんと真田紘行くん,ならび に原稿作成の過程で丁寧なご指導をいただい た香川大学教育学部の末広喜代一・教授に深く

(2)

図1.香川用水における調査地点 ■・▲は今回,●は前報の調査地点,Sは財田川,Tkは高瀬川,Dは土器川 Aは綾川,Ktは香東川,Ksは春日川をそれぞれ示す. 各調査地点の位置を図1に,調査地点の概 要は以下に示した。 東部幹線は総延長が約74kmあり,香川用水 の主水路となっている。束西分水工(三豊市 一旧財田町)から古川チェック(高松市)ま でが共用区間(農業用水,水道用水および工 業用水が流れる区間)で水路幅も広く水量も 多い。それ以降は農専区間となり水路幅が狭

まり,水量も大幅に減少する。幹線水路には

道路や谷,河川などを横切るときに用いられ るサイホンが多数あり,今回の調査では共用 区間にある4カ所のサイホンと4カ所の分水 施設下流部(幹線水路外)で採集を行った。

tl 和光第2サイホン(図2) 谷をく

ぐる落差の大きい角形サイホンで,高さが約 3.5m,長さは約35mである。通水時にはサイ ホン内は満水となるが,改修工事に伴いポン プで排水したため,調査時には水深20cm,13 mx3.5mの水溜まりとなっていた。また,サ イホン内に堆積物ははとんどなく,コンクリ −トがむき出しになっていた。

t2 高瀬川サイホン(図3) 高瀬川を

くぐる落差の大きい角形サイホンで,高さは 約2.5m,長さは約50mである。通水時にはサ イホン内は満水となるが,改修工事に伴いポ ンプで排水したため,調査時は水深15m,24 mX2.5mの水溜まりとなっていた。また,サ イホン内に堆積物はほとんどなく,コンクリ ートがむき出しになっていた。

t3 古川サイホン(図4) 川部チェッ

ク直後にある香東川支流の古川をくぐる丸形 サイホンで,直径は2,4m,長さは約80mで下 流に向かって大きな傾斜がある。通水時には サイホン内は満水となるが,改修工事に伴い ポンプで排水したため,調査時は水深25cm,

15mXlmの水溜まりになっていた。サイホ

ン内には砂泥が数cm堆積し,投棄されたナイ ロン袋や空き缶などのゴミがあった。

t4 川部第3サイホン(図5) 古川サ

イホン(t3)直後の川部第4開水路と川部

ー118 −

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表1.調査年別の採集魚類(◎は本報で初めて確認された種) 標準和名 学 名 前章艮 2003 2004 2005 (⊃

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1.コイ 2.ギンブナ 3.オイカワ 4ハ カワムツ 5.ウグイ qp′・f乃〟SCα甲王O C(‡′α55ヱ〟5α〟′〃れ持Jα〝g5(わrβ‘ ZαCCO〆叫p〟5 ZαぐCOfe肌用∼〝C最ヱ ニ打・fムoJo(わ〃ゐαた0〝e乃5f5

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6.タモロコ 7.カマツカ 8.ニゴイ 9.コウライモロコ 10.シマドジョウ G〝α娩甲Og(,乃gわ〝g(‡J〟5eJo乃g(打α5 鳥甜ゐgoムよ0朗OCg〃〟5ぴOCf乃〟5 助言あαIる〟5あα′ム〟S ∫ヴ〟αJg血5Cゐα〝たα朗5・j5J∼〟C/王なαe Coム∼J∫5あil引αe 000 000 11.ギギ 12.ナマズ 13.アカザ 14.アユ 15.シマヨシノボリ P5e〟ぁあαg′〝5〃〝成c甲5 ぶ吉山′・〝,α50′〟S ⊥わあαg川5′ぞ玩i タJβCOgJの∼〟5αJJivβJg5αJJ‘vピノi! 月ゐ∼〃OgOあヱ〟5SpCB 000 16.オオヨシノポリ 月ゐi〝OgOあf〟∫Sp.u) ◎ 17.カワヨシノポリ 月ゐ∼〝OgOあ∼〃5.β〟用言〃β〝5

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18.ヌマチチブ 乃∫‘ね〝Jなど′ム′・即旬ゆ油 第5開水路の間にある道路をくぐる角形サイ

ホンで,高さは約2=5m,長さは約35mであ

る。通水時にはサイホン内は満水となるが, 改修工事に伴いポンプで排水したため,調査

時は水深40cm,12mX2.5mの水溜まりになっ

ていた。サイホン内には泥が10数cm堆積し,

長径2∼5cmの礫が散在していた。また,投

棄された空き缶やビン,針金などのゴミが多 くあった。

Bl 丸亀幹線分水工(図6) 琴平サイ

ホンにある分水施設で,幹線水路から分水さ れた水は50m下流にある苗田揚水機場から水 路に流入している。水路は水深約20cm,幅約 2.5mの三面コンクリー・トで堆積物はほとんど なく,長径2∼3cmの礫が散在していた。

B2 宝憧寺幹線分水工(図7) 土器川

チェックにある分水施設で,分水された水は 施設横の水路に放水されている。水路は水深 約30cm,幅約l.5mの三面コンクリー・トで堆積

物はほとんどなく,下流部には4mX4mの

沈砂地がある。

B3 綾川分水工(図8) 綾川チェック

にある分水施設で,分水された水は導水路を 経由して綾川本流に直接放水されている。導

水路は長さ約20nl,水深約40cm,幅約4mの

三面コンクリ岬トで砂が10数cm堆積物してい た。

B4 中央幹線分水工(図9) 古川サイ

ホン(t3)と川部第3サイホン(t4)間

にある分水施設である。分水された水は1.5m 下にあるコンクリー・ト製の棟内に落ちた後,

直径1m長さ約15mの暗渠を通過して古川と

合流する。幹線水路の改修工事に伴い分水を 停止していたため,調査時は析内の水深が約 20cmとなっていた。また,分水工直下の析と 暗渠内に堆積物はほとんどなかった。 結 果 幹線水路内の調査で確認された魚類を表1 に示した。2003年の調査では初記録のオオヨ

(4)

表2.地点別採集個体数 tl t2 t3 t4 合計 体長範囲(mm) ′05 ′05 ′03 ′04 10.17 10.17 11.12 10.14 調査 日 56 21−125 21 21−160 159 43−303 314 24−193 224 50−408 1 49 12 オイカワ カワムツ ウグイ カマツカ ニゴイ 9 75 41 34 6 66 88 154 8 36 116 66 59 32−113 4 39−211 1 195 1 1 54 1 63 1 58 1 3 1 コウライモロコ ギギ アユ シマヨシノボリ オオヨシノポリ ー■■■−1■■−■●■■■■■−一−1−■−−=−−−−−−−−●■−■−−−−一一−−−−■■−−−−■−−−−−−−−−‥−−−−−−■−−−−一一■一−−−−−−−−一一−−−−−−−−■−−−−■−−■−●−■−■■■■■■−■■■■−■■■●●−−■■■■−■ カワヨシノポリ 47 77 15 37 176 17−69 ヌマチチブ 2 2 79,89 合 計 72 319 327 300 1018

t3ではオオヨシノボリ1個体を含む今回

の調査で最多の9種が採集された.。この流域 で共通して出現する魚種はオイカワ,カワム ツ,ウグイ,カマツカ,ニゴイおよびカワヨ シノポリの6種で,両地点ともにカマツカと

ニゴイの個体数が多かった。また,t3では

コウライモロコの成魚が多数採集された。t 4ではシマヨシノポリが1個体確認された。

魚頬以外ではt3で多数のスジエビが,t4

ではモクズガニかわcゐe王′・.メ呼0〃血!が1個体と アメリカザリガニ乃・OCα∽あα′〟5CJα止主ょが1個体 確認された。 分水施設付近の調査で確認された魚類を表 3に示した。また,以下に水系別の魚類相の 特徴を記述した。

1)Bl,B2 土器川水系

両地点に共通して出現する魚種はオイカ ワ,カワムツおよびカワヨシノボリであり,

これらを含めて7種が採集された。Blでは

ウグイ当歳魚(体長58mm)1個体とニゴイ

(体長455mmの成魚を含む)が確認された。ま

た,B2の沈砂地ではカマツカが確認され

シノボリを含む9種,2004年の調査では初記 録のシマヨシノボリを含む7種,2005年の調

査では初記録のギギとヌマチチブを含む9

種,全体で4科12種の魚類が香川用水で確認 された。 地点別の採集結果は表2に示した。また, 以下に地点別の魚類相の特徴等を記述した。

1)tl,t2 東部幹線上流域

両地点に共通して出現する魚種はオイカ

ワ,ウグイ,カマツカ,ニゴイ,ギギおよび カワヨシノポリであり,これらを含めて9種

が採集された。また,ギギは3年魚が1個体

と当歳魚が3個体であった。採集された魚類

ではカワヨシノポリの個体数が最も多く,オ イカワとウグイの個体数が他の地点に比べて

多かった。また,tlではヌマチチブの成魚

が2個体確認された。魚類以外ではtlでコ

ヤマトンボ肋c′・0朋∫dα′呼物跳αの幼虫が2個 体,t2で多数のスジエビ凡才αα乃0〃クα〟Ci血ざ とサワガニGeoJゐeわ加.5α血塊αα乃が1個体確認 された。

2)t3,t4 東部幹線中流域

−120 一

(5)

表3.分水施設付近における採集魚類 標準和名 学 名 〇・・〇〇 1.ゲンゴロウブナ 2.オイカワ 3.カワムツ 4.ヌマムツ 5.ウグイ C(‡′α55f〟5C〟Vfe′・g ZαCく=○クぬりp〟5 Z(JCC(=ピノM油粕拓 ZαC(:05fβあoJdg卓 二け∼ム0わ(わ〃ゐαノb〃e〝!f5 ・〇〇・ ・〇〇・ 0〇・〇 〇・〇 6.カマツカ 7.ニゴイ 8.スジシマドジョウ中型種 9.アユ 10小 ブル・−ギル Pse〟‘わgoあわ郎OC∼〃〝5e5OCg〝〟∼ ガα乃iあαrあ〟5ムα′ム〟5 C‘)ム‘ff5Sp PJecogわ5!〟5αJ血βJf5αJffveJム エ甲∂肌∼5椚αCJ・OC妨祝5 ○ 11.ウキゴリ qγ〝∽叩0あ£〟5〟′クーαe〝∼α

0

12.カワヨシノポリ 只ゐ∫〃OgOあg〟∫。伽∽∫〝e〟5

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ギが採集されたtlとt2は,いずれも幹線

水路上流部に位置する落差の大きいサイホン

で,前報ではtl上流部の八月谷第1サイホ

ンにてアカザも採集されている。ゆえに,幹

線水路上流部にある深いサイホン内には,こ れら夜行性の魚類が多く生息していると考え

られる。また,ギギやアカザを確認したサイ

ホン付近には,財田川水系につながる分水施 設が数カ所あり,両種はそこ.から財田川に侵

入していると思われる。実際,本篠分水工直

下にある財田川本流の財田中橋付近では現在 も多くのギギが生息している。 新しく確認されたハゼ科魚類3種のうち, オオヨシノボリ以外の2種は香川用水の水源 となっている池田ダム湖周辺で確認されてい

ない(水資源開発公団池田総合管理所,

2002)。ハゼ科魚類,特にヨシノポリ類は回遊

性のため遡上能力が非常に高い。また,県内

ではオオヨシノポリが河川の上流軌 シマヨ シノポリが香川用水が通る河川の中流部に多 く生息することを考えると,後者は一・般河川 から分水施設を介して幹線水路内に侵入した 可能性がある。香川県におけるヌマチチブに 関する報告は1970年代までは全くなく(植松 はか,1979;須永はか,1989),1983年に春日 た。

2)B3 綾川水系

B3ではオイカワ,カワムツおよびアユの 3種が確認された。

3)B4 香東川水系

B4では2003年の調査でウグイ成魚1個体

(体長198mm,体高37mm)を含む6種が確認さ れた。採集された魚類ではブル・一ギルの個体 数が最も多く,これらはすべて暗渠出口付近

で確認された。また,ブル、一ギル以外の魚頬

は分水工直下の析内で確認された。2004年に も2003年と同様の調査が行われたが,析内に 魚類はおらず暗渠出口付近でカワヨシノボリ のみ確認された。 考 察

今回の調査で新しく記録された魚類はギ

ギ,オオヨシノポリ,シマヨシノボリおよび ヌマチチブの4種で,前報(安芸,2003)の 調査結果と合わせると香川用水内で確認され た魚類は7科18種となった。 ギギは,1986年に財田川で初採集された当 時より香川用水からの移入種であると考えら れてきたが(安芸,1989),今回の幹線水路内 における生息の確認でそれが実証された。ギ

(6)

川上流にある支流高梯川で初めて確認されて いる(須永ほか,1985)。その後,1999年には 土器川中流の常包橋付近で(四電技術コンサ ルタント,2000),2002年には筆者によって春 日川上流の御神燈橋付近で確認されているの みである。本種がシマヨシノポリと同様に分 水施設から侵入したとも考えられるが,生息 個体数や分布範囲から考えてその可能性は低 い。ヌマチチブは1989年に琵琶湖に移入して

以降,琵琶湖内に分布域を拡大するととも

に,アユ種苗の放流等に伴って全国の河川や ダム湖等に移入して問題となって−いる(清 水,2004;向井,2006)。これらの事実から考 えると,2001年の池田ダム湖調査(水資源開 発公団池田総合管理所,2002)以降に本種が 池田ダム湖に移入し,その一・部が香川用水内

にも侵入した可能性がある。なお,池田ダム

湖における最新の魚類調査報告書は2007年に 水資源機構(旧水資源開発公団)池田総合管 理所より発表される予定である。 筆者は前報で香川用水内の魚類のうち,カ マツカやニゴイが県内に侵入して生息域を拡 大しているのに対して,ウグイが県内の一・般 河川で確認されない理由として,本種が幹線 水路内の環境に適応し,分水エのスクリー・ン を通過できるにもかかわらず水路内に留まっ ていると考察した。しかし,今回の調査に よってBlで8月の潅漑期に本種の−・般河川

への侵入を確認した。Blでは2002年11月の

非潅漑期にも当歳魚が1個体採集されており (ウエスコ,2003),ここでは本種,特に当歳 魚が常時分水施設から一・般河川に侵入してい

ると考えられる。なお,ウグイには淡水型と

降海型があることが知られており(酒井, 2001),吉野川水系のウグイは前者であると考 えられている(佐藤,1995)。ゆえに,本種が 土器川水系等で定着することは容易であるに もかかわらず,現在まで本種の定着は報告さ れていない(須永はか,1989;四電技術コン サルタント,2000;ウエスコ,2003)。今後は 定期的な魚類相の調査に加え,本種が本県に 定着しない理由を解明して−いく必要がある。 香川用水では1999年度から2005年度までの 期間,幹線水路の劣化を修理する必要から非 潅漑期に工事区間を設け,工事中はその区間 にある分水施設から水を排水し水路内を空に している(水資源開発公団香川用水総合事業

所,2002b)。また,1999年と2003年には非潅

漑期に香川用水の通水を止めて,東部幹線共 用区間全域の水路の劣化状況を点検する空水 調査を実施して−いる。農専区間でも非潅漑期 に水路内の水を分水施設から排水し,水路の 点検と清掃作業を毎年実施している。今回の

調査で,t3下流にある川部第4開水路の改

修工事において−,B4より排水が行われた結 果,分水工直下の析内でウグイ成魚が1個体 採集され 水路改修工事に伴ってウグイが県 内河川に侵入していることを確認した。工事 による水位の低下で魚類の多くは行き場を突 い近くにあるサイホン内に入るが,今回の調 査で山部は分水工のスクリーン(図10)を通 過して一・般河川に泳出していることが判明し た。今まで香川用水から本県への魚類の侵入 方法は,分水施設からの自然流入と渇水時に おける放水路の開放であると考えられてきた が,今回の調査で上記改修工事や作業等が行 われた結果,ウグイを含む幹線水路内の魚類 が分水施設から強制的に排出されて−いること が判明した。1977年に農専区間流域の春日川 本流でウグイ成魚が発見されたのも(植松は か,1979),上記作業が原因であったと思われ る。 今回の調査でも幹線水路内において年魚で

あるアユが採集されている。前報では,春に

池田ダム湖から香川用水に侵入した稚魚が10 月までにまんのう町(旧満濃町)まで移動し ていたが,今回は11月までに少なくとも高松 市まで移動することが分かった。 −122 −

(7)

香川県レッドデー・タブック(香川県希少野生 生物保護対策検討会編,2004)では,早急な生 息環境の保全・保護対策を行う必要があると して,県内に生息する淡水魚類19種を絶滅危 倶種または準絶滅危倶種に指定している。そ の中で絶滅危倶Ⅰ類のアカザ,絶滅危倶Ⅱ類 のイトモロコ∫ヴ〟αJi血5g′αCgJゐg′・αCヱJゐとオオ

ヨシノポリ,準絶滅危倶種のタカハヤ

上場d芳∫〝〟5dWC甲ゐαJ〟∫ノ0年yiとシマドジョウの計 5種は池田ダム湖周辺にも生息し(水資源開 発公団池田総合管理所,2002),アカザ,オオ ヨシノポリおよびシマドジョウはすでに香川

用水内で確認されている。現在,アカザとオ

オヨシノポリはそれまで生息していなかった 土器川中流域で確認されるようになっており (須永ほか,1981;大高ほか,1994;四電技 術コンサルタント,2000),そうした背景には 香川用水からの魚類の移入が深く関係してい

ると思われる。また,カワムツなど県内在来

種の個体群に吉野川水系の個体が侵入し,そ の結果として遺伝的撹乱が生じ,本県の地域 個体群の特徴が次第に失われつつあると考え られ,今後は感度の高い遺伝子分析によりそ の実態を明らかにする必要がある。香川用水 から移入する魚類は,その種類や個体数が今

後とも増加すると予想され 香川県レッド

デー・タブックをはじめ希少種の保護等につい て一再検討する必要がある。 文 献 安芸昌彦.1989.財田川(香川県)で採集さ れたハゲギギ.香川生物(15・16):7−9. 安芸昌彦.2003い 香川用水の淡水魚類.香川 生物(30):13−24. 日高敏隆監.1998.日本動物大百科(別巻)− 動物分類名索乱 平凡社,束京. 香川県希少野生生物保護対策検討会編.2004“ 香川県レッドデータブック.香川県環境森 林部環境・水政策課. 水資源開発公団池田総合管理所.2002.平成 13年度池田ダム河川水辺の国勢調査(魚介 類)報告書.水資源開発公団池田総合管理 所. 水資源開発公団香川用水総合事業所.2002a 香川用水管理事業概要い 水資源開発公団香 川用水総合事業所. 水資源開発公団香川用水総合事業所.2002b. 香川用水のあらまし.水資源開発公団香川 用水総合事業所. 向井卓彦.2006… ヌマチチブ非在来個体群間 の遺伝的変異.魚類自然史研究会会報「ボ テジャコ」第10号:34 中坊徹次編小 2000… 日本産魚類の検索一全種 の同定.東海大学出版会,束京. 大高裕幸・須永哲雄・河内直人・倉沢 均・ 吉田時子・森 −L生∫.1994.香川県香東川 と財田川における淡水魚の分布.香川生物 (21):5−14. 酒井沿己.2001.ウグイ.川那部活哉・水野

信彦・細谷和海編・監修.日本の淡水魚

(改訂版):259−265.山と淡谷社,東京. 佐藤陽一・.1995.宮川内谷川(吉野川水系) の魚頬相.徳島県立博物館研究報告(5): 45−86. 清水孝昭.2004.愛媛県の淡水魚一魚類相研 究の推移と分布の特徴−.愛媛の生物誌: 81−93.愛媛.県高等学校教育研究会理科部会 生物部門記念誌. 須永哲雄・植松辰美.1981.土器川における 淡水魚の分布.香川県自然環境保全指標策 定調査研究報告書(土器川水系):93−97. 須永哲雄・植松辰美・大高裕幸・河内直人. 1985.香川県中讃東部地域における淡水魚 の分布.香川県自然環境保全指標策定調査研 究報告書(香川県中讃東部地域):194−205. 須永哲雄・植松辰美・川田英則い1989..香川 県における淡水魚研究の現状について.香 川生物(15・16):95−113.

(8)

事務所. 四電技術コンサルタント.2000.平成11年度 土器川水系魚介輯調査報告書(河川水辺の 国勢調査).建設省香川工事事務所. 植松辰美・須永哲雄・川田英則.1979.香川 県の淡水魚.動物と自然 9(l):1ト17. ウエスコ.2003.平成15年度香川用水土器川 沿岸地区環境調査・環境配慮検討業務報告 書.中国四国農政局四国土地改良調査管理 図3.t2(高瀬川サイホン) 図2.tl(和光第2サイホン) 図5.t4(川部第3サイホン) 図4.t3(古川サイホン) 図7.B2(宝憧寺幹線分水工) 図6.Bl(丸亀幹線分水工) ー124 −

(9)

図8.B3(綾川分水工) 図9.B4(中央幹線分水工)

ごニエ」L.ユニ川州∴血∴亡∴∴_…∴ユ∴上」

参照

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[r]

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