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新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合的成果

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Academic year: 2021

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(1)組織科学 Vol.54 No. 2 : 4-15(2020). 特集/デジタル・マーケティング研究の動向. 新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合 的成果. 本稿は,多様な研究分野に広がる,消費者が新製品開発に参 加するクラウドソーシングの成果とその要因を体系化するため に,システマティックレビューを行うものである.レビューの 結果,製品成果,プロセス成果,そしてラベル成果という 3 つの分類と,下位分類や要因に体系化され,最後に将来の研究 が示唆される.成果を複合的に捉えた整理は,関連研究への貢. 西川 英彦(法政大学 経営学部 教授). 献だけでなく,クラウドソーシングを実践(計画)する企業に も貢献する.. キーワード システマティックレビュー,SCOPUS,アイデアコンテスト,ユーザーイノベーション,共創 イノベーション(Chesbrough, 2003),ユーザー. Ⅰ .はじめに. イノベーション(von Hippel, 2005),共創(Prahalad & Ramaswamy, 2004),価値共創(Vargo. オンラインでの多数の個人による問題解決が実. & Lusch, 2004) な ど の 研 究 が 源 流 と し て 存 在. 践 さ れ て い る と い う 社 会 現 象 を 捉 え た Howe. し,そのため多くの領域で研究が進展している.. (2006b)が Wired 誌で提唱したクラウドソーシ. こうした CS には,オンラインでのアイデアコ. ング概念は,実務や研究において注目される.ク. ンテストなどを通して新製品やサービスを開発す. ラウドソーシング(以下,CS)とは, “The Wis-. る方法と,柔軟にマイクロタスクをアウトソーシ. dom of Crowds” (Surowiecki, 2004)にもとづく. ン グ す る 新 し い 方 法 が あ る(Boudreau &. 「群衆(クラウド)」の概念と,「アウトソーシン. Lakhani, 2013;Ghezzi et al., 2018;Rouse,. グ」という言葉を組み合わせた造語である(Howe,. 2010) .本稿では,前者の方法で,その中心とな. 2006a).その記事を契機に多くの研究が実施さ. る消費者が新製品やサービスの開発に参加する新. れ,Estellés-Arolas & González-Ladrón-De-Gue-. 製品開発 CS を対象とする.レゴ,デル,スター. vara(2012)は,それらのレビューを通して,. バックス,無印良品などの取組みがよく知られて. 「クラウドソーシングとは,個人,機関,非営利. いる(Antorini et al., 2012;Bayus, 2013;Sigala,. 組織,企業が,知識,異質性,数の異なる個人の. 2012;Nishikawa et al., 2013).企業により利用. グループに,柔軟な公募により,自発的にタスク. 部分は異なるが,アイデア創造からアイデアスク. を引き受けることを提案する,参加型のオンライ. リーニング,コンセプト開発,設計,技術,テス. ン活動の一種である」 (p. 197)と定義する.こ. ト,販促までの新製品開発の多くのプロセスにお. うした概念は突然生まれた訳ではなく,オープン. いて CS が利用される(Mladenow et al., 2014).. 4.

(2) 新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合的成果 5. だが,消費者のアイデアを企業がうまく活用で きているとはいえない.消費者が自らのアイデア. れるものとする.① CS および類似概念(co-cre-. ation, co-production, crowdsourcing, customer. をもとに起こしたイノベーションが,第三者(企. involvement, customer participation, customer. 業や仲間)に受け入れられている率は日本 5%,. empowerment, idea contest, idea competition, in-. 米国 6%,英国 17% と低く,消費者の努力の多く. novation contest, innovation competition, innova-. が,埋もれた資源となっているからだ(von Hip-. tion tournament)のいずれか,②成果を特定でき. pel et al., 2011) .社会全体で有効活用するために. る用語(new product, new service, performance,. も,CS の成果や要因に関する知見の整理は必要. outcome)のいずれか,③消費者(consumer)で. である.. ある.. CS のレビューに関しては,広く CS を対象にし. 第 2 に,より多くの文献が検索される可能性を. た包括的レビュー(Ghezzi et al., 2018;Hossain. もつオンラインデータベース SCOPUS を対象に. & Kauranen, 2015)をはじめ,定義統合のための. (Ghezzi et al., 2018),タイトル,要約,キーワー. レ ビ ュ ー(Estellés-Arolas & González-Ladrón-. ドに,3 項目の検索ワードを全て含む文献を抽出. De-Guevara, 2012)やオープンイノベーションと. する.その結果,抽出された 430 件の文献の書誌. の関係を分析したレビュー(Hossain, 2015) ,新製. 情報および要約,キーワードをエクスポートし,. 品開発 CS の対象を絞り込んだアイデアコンテス. データ抽出ホームを作成する.. トのレビュー(Adamczyk et al., 2012)やゲーミ. 第 3 に,データ抽出フォームの文献タイトル,. フ ィ ケ ー シ ョ ン の レ ビ ュ ー(Morschheuser et. 要約の確認の結果,著者・タイトル・要約が重複. al., 2017)があるが,いずれも成果に焦点をあて. した内容の文献 1 件,本文言語が英語でない文献. たレビューではない. 一方,ユーザー参加の新製品開発の成果に絞っ たレビュー(Schweitzer et al., 2020)やメタ分析. 5 件,本研究に明らかに関連性のない文献 324 件 を削除する.その結果,抽出された 82 件の文献 のフルペーパーを入手する.. (Chang & Taylor, 2016)はあるが,CS 以外の多. 第 4 に,個々の文献に記述される方法論や CS. 様な参加方法を含んだ上に,企業ユーザー参加も. 成果,その要因などをデータ抽出フォームに記述. 対象にした内容である.主に消費者参加を対象と. し,新製品開発 CS の成果を測定している実証研. したレビューもあるが,一部の成果(本稿におけ. 究に限定する.その結果,28 件を本稿のレビュ. るラベル成果)に限定したレビューである(岡. ー対象とする.. 田,2019) .. 第 5 に,研究を網羅するため,28 件の文献に. そこで,本稿では,こうした先行するレビュー. 引用される新製品開発 CS 成果に関連する 11 件. を参照しつつ,新製品開発 CS の成果に関する研. の文献を対象に加え,それらのフルペーパーを入. 究のレビューを通して,その体系化と将来の研究. 手し,最終的に 39 件をレビュー対象とする.. への示唆を行う.. SCOPUS の分類で整理すると,Business, Management and Accounting 37 件,Agricultural. Ⅱ .レビュー方法. and Biological Sciences 1 件,Arts and Humanities 1 件である.. 本稿では,システマティックレビューを行う. 第 6 に,11 件をデータ抽出フォームに追加し,. (Denyer & Tranfield, 2009;Webster & Watson,. 個々の研究で特定された CS 成果や要因との関連. 2002).第 1 に,著者の事前知識や,本研究に関. 性の検討により,構造化する.こうしたレビュー. 連するレビュー論文を参考に(Chang & Taylor,. の結果,製品成果,プロセス成果,そしてラベル. 2016),本研究の目的に関連する検索ワードを定. 成果という 3 つの分類と,下位分類や要因に体系. 式化する.検索ワードは,次の 3 項目全てが含ま. 化する..

(3) 6 組織科学 Vol. 54 No. 2. 予測できる(Lang et al., 2016).だが,この研究. Ⅲ .製品成果と要因. では予測する情報の機密性が高いため,消費者で はなく社員による予測で実験したことには留意が. 1.製品成果. 必要である.. 製品成果は,CS により生まれた製品の成果 (実験群)と,企業内部の専門家による新製品開 発,いわゆる伝統的新製品開発手法により生まれ た製品の成果(対照群)を比較することで,評価 される. 財務成果. 2.製品成果要因 製品成果に影響を与える要因について確認して いく. 製品要因. まず,製品要因である.製品の複雑性が成果に. まず,製品の財務成果である.Nishikawa et. 影響を与える.Jensen et al.(2014)は,レゴフ. al.(2013)は,無印良品の家具 43 製品のデータ. ァクトリーの 1799 点のデータにより,デザイン. をもとに,CS による消費者アイデア製品が,企. の複雑性(ピースの数)の高さと,デザインの商. 業の専門家アイデアによる製品に比べて,初年度. 業的魅力との間には,逆 U 字型の関係があると. 売上高が 3 倍,粗利は 4 倍高いと指摘する.その. 指摘する.ある程度の複雑さは消費者ニーズに応. 成果は時間とともに拡大し,3 年後の累計売上高. えるのに必要だが,一定の水準を超えると消費者. は 5 倍,累計粗利は 6 倍高く,3 年後に継続販売. に理解できないものになるためであると説明して. されている製品も多い.つまり製品寿命も長い.. いる.. 同様の成果が同ブランドのヘルス & ビューティ ー 53 製品のデータでも支持される。. 参加者要因. 次に,参加者要因である.第 1 に,多数の参加. 質的成果. 者の中に,特定の特徴や知識をもつ消費者が存在. 次に,製品の質的成果である.Poetz & Sch-. することが製品成果に関係する.Hamdi-Kidar et. reier(2012)は,大手ベビー用品企業との実験. al.(2019)は,ベビー用品とゲーム開発を対象に. を通して,CS で募集した消費者によるベビー用. した実験を通して,リードユーザー特性(対象市. 品のアイデアが,同社内部の専門家によるアイデ. 場における先進性と,解決策からの高便益期待を. アに比べ,新奇性や顧客価値が高いと説明する.. もつ)が高い消費者ほど,質の高いアイデアを創. 無印良品の家具でも,同様の質的成果がみられる. 出することを指摘する.だが,同じベビー用品の. (Nishikawa et al., 2013) .. 実験にもかかわらず,アイデアの質に影響を与え. リスク低減成果. ないという研究もあり(Poetz & Schreier, 2012) ,. 最後に,多くのアイデアの中から消費者が適切. 結果は矛盾する.前者の研究が,オンラインパネ. な選択することで,製品の失敗や在庫保有コスト. ルから,週 1 回以上のベビー用品を利用し対象年. のリスクを低減させる成果である(Ogawa & Pill-. 齢の子供をもつ参加者を条件にしているのに対. er, 2006) .Magnusson et al.(2016)は,通信事. し,後者が自ら CS で投稿する自己選択の参加者. 業者によるアイデアコンテストの 83 アイデアを. であることが影響を与えた可能性がありうる.一. 使い実験したところ,消費者と専門家の相対的評. 方,異なる種類の知識の必要性も指摘される.. 価は一致すると指摘する.つまり,CS における. Zhu et al.(2017) は, 家 電 の CS を 実 践 す る. 大量のアイデア評価を,専門家の代わりに消費者. Quirky の 89 製品のデータをもとに,消費者の技. に移譲することができるということだ(Toubia. 術知識がマーケティング知識よりもアイデアの製. & Florès, 2007) . さ ら に,CS に よ る 売 上 予 測. 品化に役立ち,マーケティング知識が技術知識よ. は,従来の企業内の専門家による予測に比べて,. りも売上数向上に役立つと指摘する.. 4 分の 3 のケースで,その後の実績数値を正確に. 第 2 に,参加者の発案数が製品成果に影響を与.

(4) 新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合的成果 7. える.Bayus(2013)は,デルの CS プラットフ. 第 3 に,複数プロセスでの共創が製品成果に影. ォーム IdeaStrom の 4285 名のデータをもとに,. 響を与える.Pee(2016)は,家電メーカーの CS. 85% を占める 1 回のみのアイデア発案者よりも,. による 107 製品のデータをもとに,アイデア段階. 15% の連続発案者のほうが,デルにより実現さ. での創造と選択という両方のプロセスでの参加者. れたアイデアを創出していると指摘する.だが,. 間の共創が製品の革新性をもたらし,製品化段階. アイデア実現後は成功体験により,似たようなア. での創造と選択での共創が売上数を向上させると. イデアとなり,再度実現されるアイデアを出すこ. 指摘する.一方,同一段階ではなく,複数段階で. とはない.ただし,成功発案者が他の参加者に多. の 共 創 の 成 果 に は ア イ デ ア の 質 が 影 響 す る.. 様なコメントをする場合は,成功体験の負の効果. Quirky の家電 86 製品のデータ分析によると,消. が緩和される.一方,デザイン段階の議論だが,. 費者アイデアをもとに,他の参加者が設計するこ. レゴファクトリーのデータ分析によると,デザイ. とは売上数には影響を与えないが,アイデアの質. ン発案数とデザインの商業的魅力との間には,U. が悪い場合には売上数を増加させる(Allen et. 字型の関係があり(Jensen et al., 2014) ,結果は. al., 2018).. 異なる.参加プロセスの段階の違いによる影響は. 第 4 に,共創に競争が加わることが,製品成果. ありえるが,発案数と製品成果の関係は検討が必. を高める.Zhao et al.(2016)は,参加者間が競. 要である.. い合う競争モデル,協力しあう共創モデルと,競. 参加者間要因. 争と共創の組み合わせ(コーペティション)モデ. 次に,参加者間要因である.第 1 に,参加者間. ルの実験室実験のアイデアコンテストを通して,. の直接的共創が製品成果に影響を与える.Jensen. コーペティションモデルが,他のモデルよりも多. et al.(2014)は,先のデータ分析をもとに,他. くのアイデアを生み出し,アイデアの質を高める. の参加者からのポジティブなフィードバックが,. と指摘する.. デザインの商業的魅力を高めると指摘する.だ. 参加者・企業間要因. が,知識の組み合わせによって成果は変わる.. 最後に,参加者・企業間要因である.第 1 に両. Zhu et al.(2017)は,Quirky の家電 89 製品の. 者のインタラクションが製品成果を高める.Kim. データをもとに,マーケティング知識をもつアイ. & Slotegraaf(2016)は,スターバックスを使っ. デア発案者が,他の参加者からマーケティングま. た実験により,Twitter での企業とのインタラク. たは技術関連の助言をうける場合は,売上数を向. ションが,参加者の独自性の高いアイデアをもた. 上させると指摘する.だが,技術知識をもつ発案. らすと説明する.さらに,情報のパーソナライゼ. 者がマーケティング関連の助言をうける場合は,. ーション(参加者に関連した情報)の度合いが高. 売上数を悪化させる.それは,特定の技術知識に. いほど,アイデアの質が高くなる.同様に,ロゴ. もとづいたアイデアを理解した上での助言が困難. コンテストの実験によると,参加者からのロゴ案. なためだと説明する.. に対して,企業からの評価のフィードバックが,. 第 2 に,参加者間の間接的共創が製品成果に影. 投稿行動を促進させ,アイデアの質を向上させる. 響を与える.Lang et al.(2016)は,参加者の予. (Wooten & Ulrich, 2017). さ ら に,IdeaStorm. 測のための追加情報獲得の多さと解釈の多様性. の 1 万 1894 件のアイデアの分析によると,企業. が,予測精度を向上させると説明する.一方,互. からのフィードバックの回数と応答のスピード. 酬性が働く場合も問題をもたらす.CS プラット. が,アイデアの質を向上させるという(Chen et. フォームの Atizo.com のアイデアコンテストのデ. al., 2012).. ータ分析によると,相互に投票可能な状態で選択. 第 2 に,両者の文化の関係性も重要である.. されたアイデアの質が高いとはいえない(Hof-. Chua et al.(2015)は,アイデアコンテストの. stetter et al., 2018) .. 99 コンテストと発案者 1 万 1671 名のデータをも.

(5) 8 組織科学 Vol. 54 No. 2. とに,文化的緊密性(強い社会規範と逸脱行動へ. ス成果を高める.Shulga et al.(2018)は,カフ. の厳しさ)において,タイトな文化圏の発案者. ェチェーンの新製品の広告コンテストの実験によ. は,ルーズな文化圏の発案者に比べ,他国の課題. り,ブランド愛着をもつ消費者が参加すること. で優勝する可能性が低いと指摘する.さらに,文. が,ブランドロイヤルティを高め,将来の行動意. 化的距離が遠いほど,文化的緊密性の負の影響は. 向(訪問・購入)につながると指摘する.. 強くなる.だが,タイトな文化圏の発案者は,自. 第 3 に,楽しい体験がプロセス成果を高める.. 国や文化的距離の近い国の課題で優勝する可能性. Füller & Bilgram(2017)は,CS に参加経験の. が高い.. ある 727 名のサーベイデータをもとに,参加者が 体験を楽しく感じることが,ブランドイメージ,. Ⅳ .プロセス成果と要因. 信頼,口コミ,興味に影響を与えると説明する. だが,個人的特性である新奇性の追求は楽しい. 1.プロセス成果. CS 体験がもたらす影響を強め,既存製品への不. CS では,群衆と呼ばれるように多くの消費者. 満は影響を弱めるという調整効果をもつ.. がプロセスに参加する(Howe, 2006b) .そのた. 参加者間要因. め,参加する消費者が,実際に製品を購入するの. 次の要因は,参加者間要因である.参加者間の. かということは重要である.プロセス成果は,参. 共 創 が プ ロ セ ス 成 果 を 高 め る.Akman et al.. 加する消費者から企業が得る成果である.CS 参. (2019)は,CS で他のメンバーと交流経験のある. 加者からの成果(実験群)と,非参加者からの成. 309 名のサーベイデータをもとに,参加者間の共. 果(対照群)を比較することで,評価される.. 創(フィードバック提供,支援,ラポール構築,. 心理的成果. 情報共有)が,参加者の価値(社会的価値,感情. ここではプロセスの心理的成果が明らかとな. 的価値,功利的価値,努力価値)の創出につなが. る.Fuchs et al.(2010)は,T シャツとシリア. っていると指摘する.. ルを使った実験で,CS 参加者は,CS 非参加者に. 参加者・企業間要因. 比べて,自身と参加者らの評価により選ばれた製. 最後の要因は,参加者・企業間要因である.参. 品に対して,高い支払い金額と購入意向をもつだ. 加者の特徴と企業の課題との関係がプロセス成果. けでなく,その着用に喜びを感じ,大切に思い,. に影響する.Naletelich & Spears(2020)は,食. ロイヤルティをもつと指摘する.. 器などを対象にした実験により,制御焦点理論を 援用し,促進焦点(自分の希望・夢などの動機). 2.プロセス成果要因. の消費者は,予防焦点(自分の良心・義務などの. プロセス成果に影響を与える要因について確認. 動機)の消費者と比べ,認知的柔軟性をもつた. していく.. め,類推課題(2 つの製品を提示して関連性を問. 参加者要因. うような質問など)の事前提示が,アイデアの創. まず,参加者の要因である.第 1 に,心理的所. 造性や購入意向を高めるという.予防焦点の消費. 有感がプロセス成果を高める.Fuchs et al. (2010). 者に対しても,類推できる課題はアイデアの創造. は,先の実験で,CS 参加者が購入意向を高める. 性を高めるため,類推できる課題の提供はいずれ. のは,選択に関わったことで心理的所有感をもつ. にしても効果がある.. ためだと指摘する.そのため,選択された製品が 参加者らの選択結果を反映していない場合や,参. Ⅴ .ラベル成果と要因. 加者らが適切な決定をする能力がないと思う場合 は,心理的所有感の効果は減少する. 第 2 に,ブランド愛着やロイヤルティがプロセ. 1.ラベル成果 ラベル成果は,CS により生まれた製品が発売.

(6) 新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合的成果 9. の際に,開発の源泉を表示すること(製品やパッ ケージ,POP,サイトなど)で,観察消費者(開 発に参加していない一般消費者)に影響を与える. 2018;Liljedal, 2016).さらに,購買意向の高さ も,T シ ャ ツ, シ リ ア ル の 実 験 で 支 持 さ れ る (Dahl et al., 2015).. ことで,企業が得る成果である.開発の源泉が消. 第 3 に,顧客志向の高さである.Fuchs & Sch-. 費者であるラベル(製品や企業の情報)を表示す. reier(2011)は,T シャツ,家具,自転車を使. る場合(実験群)あるいは消費者と企業の共創で. った実験により,消費者設計および消費者選択,. あるラベルを表示する場合(実験群)と,企業の. あるいはその両方ともを消費者が実施する企業と. 専門家であるラベルを表示する場合(対照群)あ. いうラベルは,伝統的新製品開発(企業設計・選. るいはラベルを表示しない場合(対照群)を比較. 択)を実施する企業というラベルに比べて,観察. することで,評価される.. 消費者の企業への顧客志向の認識や,企業態度,. 財務成果. 購買意向やロイヤルティ,口コミ意向などを高め. まず,財務成果である.Nishikawa et al.(2017). ると指摘する.一方,消費者対企業の専門家だけ. は,無印良品のスナックと防犯ブザーを対象にし. でなく,両者の共創設計ラベルをいれた三者の比. たフィールド実験により,消費者アイデア創造の. 較が研究される.Costa & Coelho do Vale(2018). ラベルは,ラベル無しに比べて売上高が約 2 割増. は,iPad カバーの実験を通して,共創設計ラベ. 加すると説明する.なお,ラベル無しと比べて,. ルが,消費者設計ラベルや専門家設計ラベルに比. ラベル表示有りには開発の源泉に関する説明文が. べて,革新能力の評価や,購買意向を高めると指. 増えるため,その詳細説明が成果をもたらす可能. 摘する.消費者の創造性と企業の専門性の複合的. 性も想定されるが,企業の専門家アイデア創造の. 成果を認識している可能性があるためだと説明す. ラベルは,ラベル無しに比べて,有意な売上高の. る.. 差はない. 心理的成果. 2.ラベル成果要因. 次に,心理的成果である.第 1 に,品質推測の. ラベル成果に影響を与える要因について確認し. 高さである.Nishikawa et al.(2017)は,オン. ていく.. ライン実験により,観察消費者は,消費者創造ラ. 製品要因. ベルによって,消費者が参加した製品の品質が高. まず,製品要因である.第 1 に,製品の複雑性. いと認識していると指摘する.その理由として,. が ラ ベ ル 成 果 を 弱 め る.Schreier et al.(2012). 観察消費者は,CS が有望な新製品を生み出すこ. は,先の低複雑製品(食品や T シャツ,家庭用. とに長け,自らのニーズに対処できていると考え. 品,スポーツ用品)の実験結果とは異なり,高複. るからだと説明する.. 雑製品(電子製品や園芸用品,ロボット)の場合. 第 2 に,企業革新能力の高さである.Schreier. は,消費者設計ラベルと,企業専門家設計ラベル. et al.(2012)は,食品,T シャツ,家庭用品,. の購買意向の差はないと指摘する.さらに,企業. スポーツ用品を使った実験により,CS による設. の革新能力への評価も,専門家設計ラベルの方が. 計を実施する企業というラベル(企業情報)は,. 高い.両者の共創設計をいれた三者の比較実験に. 企業専門家による設計を実施する企業というラベ. おいても,先の低複雑製品(iPad カバー)の結. ルと比べて,観察消費者による企業の革新能力の. 果とは異なり,中複雑性(スニーカー) ,高複雑. 評価を高めると指摘する.その革新能力の評価. 性(スマートウォッチ)では,購買意向の差はな. が,購買意向や支払い意思,推薦意向へとつなが. く,革新能力の評価は共創設計ラベルが高く,消. る.こうした革新能力の高さは,iPad カバーや. 費者設計ラベルと専門家設計ラベルとの間には差. スプリングウォーター,洗剤パッケージを使った. がない(Costa & Coelho do Vale, 2018).. 実験でも支持される(Costa & Coelho do Vale,. 第 2 に,製品のステータスがラベル成果を弱め.

(7) 10 組織科学 Vol. 54 No. 2. る.Fuchs et al.(2013)は,プラダやグッチ,. 似性を感じるため,CS を実施する企業の評価を. ルイヴィトン,ドルチェ & ガッバーナなどの高. 高めると指摘する.そのため,参加者の制限や,. 級ブランドと,ZARA や DIESEL,H&M などの. 性別,専門性などで異質性があると,類似性を感. 主流ブランドを使った実験で,主流ブランドでは. じられず,その効果は減少する.さらに,チョコ. 消費者設計ラベルは,専門家設計ラベルに比べ. レートを使った実験によると,共創する消費者の. て,観察消費者に対して高い需要をもたらすが,. 写真の類似性が,テキストでの類似性がもたらす. 高級ブランドでは負の影響をもたらすと指摘す. ブランド態度の効果を強める(Liljedal & Berg,. る.消費者設計の高級品の質が低いと認識され,. 2020). 一 方,Costa & Coelho do Vale(2018). ステータスを示せないことが,負の影響の媒介要. は,複雑性の異なる製品の実験により,類似性と. 因となる.一方,メルセデス・ベンツを使った実. 専門性の認識はトレードオフとなると説明する.. 験では,新製品開発プロセス全体での共創という. 低複雑製品では,消費者との類似性の認識が成果. ラベルが,観察消費者の高級感やブランド態度に. をもたらし,高複雑製品では,専門家の専門性の. 負の影響を与えていない(Weber et al., 2016) .. 認識が成果をもたらす.菓子や自動車の広告制作. 自動車は,ステータスも複雑性も高く,矛盾す. が高複雑制作物であるとすれば,同様の結果が支. る.CS を実施するカテゴリーの違いや,消費者. 持される(Thompson & Malaviya, 2013).. が参加するプロセスの違いによる影響を検討する 必要がある.. 第 2 に,ブランド精通度がラベル成果に影響を 与える.Liljedal(2016)は,ナイキやデル,飲. 第 3 に,表示される製品情報の内容がラベル成. 料,洗剤ブランドなどを使った新製品広告の実験. 果に影響を与える.Wang et al.(2019)は,ス. を通して,よく知らないブランド(ブランド名非. ターバックスや Quirky を使った実験で,製品の. 表示)の場合,観察消費者は新製品を開発した消. 説明情報と発案者の開発物語のそれぞれの背景に. 費者のものと見做すと指摘する.そのため,高複. ある動機の不一致が,消費者創造製品を選択させ. 雑製品の場合は,消費者の能力の欠如という知覚. る混合効果をもつと指摘する.動機の不一致と. が,消費者開発(設計・選択)ラベルに対する企. は,促進焦点の製品情報であれば,予防焦点の開. 業の革新能力やブランド態度,製品態度,購買意. 発物語にするという具合である.不一致情報が,. 向などの心理的成果に負の影響をもたらす.それ. 観察消費者の関与を高めるからだという.同様. に対し,低複雑製品の場合は正の影響をもたら. に,携帯電話プランとクレジットカードのポイン. す.一方,よく知っているブランドの場合,観察. トプログラムを対象にした実験によると,製品の. 消費者は新製品をブランドのものと見做し,開発. ネガティヴ文脈(消費者の不満のニュース)と製. した消費者はブランドに新たな価値を付加してい. 品情報を表示する場合は,共創製品を,企業開発. ることになる.そのため,高複雑商品も低複雑製. 製品より選択する(Zuniga Huertas & Pergenti-. 品も,消費者開発ラベルの心理的成果に正の影響. no, 2020) .ネガティヴ文脈は予防焦点で,本実. をもたらす.なお,低複雑製品の場合は,ブラン. 験の製品情報は促進焦点であり,動機の不一致と. ド表示の有無は関係なしに,消費者開発ラベルは. いえる.. 企業開発ラベルに比べて,心理的成果が高い.同. 観察者要因. 様の結果が,ナイキや食品,銀行ブランドを使っ. 次に,ラベルを観る消費者の心理的要因であ. た実験でも支持される(Kristal et al., 2016;van. る.第 1 に,類似性はラベル成果に影響を与え. Dijk et al., 2014;Weber et al., 2016).. る.Dahl et al.(2015)は,T シャツ,シリアル,. 一方,Meißner et al.(2017)は,アップルと. ソフトウェアを使った実験により,社会的アイデ. ノキアのスマートフォンを使った実験で,消費者. ンティティ理論を援用し,観察消費者は,自ら開. 設計および消費者選択,あるいはその両方ともを. 発に参加していないにもかかわらず,参加者と類. 消費者が実施するというラベルが,伝統的新製品.

(8) 新製品開発クラウドソーシングがもたらす複合的成果 11. 開発(企業設計・選択)ラベルに比べて,企業の. 第 2 に,空白領域となる下位成果や,その要因. 革新能力の評価を向上させると指摘する.だが,. の解明である.企業・参加者間の共創または参加. 高複雑製品かつブランド表示にもかかわらず,消. 者間の共創による製品成果や,プロセス成果の財. 費者設計や消費者選択ラベルの影響は,企業設. 務成果は実証されていない.さらに,CS 成果に. 計・選択ラベルとの差はなく,他の研究結果と矛. 関する質的研究や新製品開発研究では解明されて. 盾する.. いるが,CS 研究では実証されていない成果の解明. 第 3 に,CS 精通度が成果を高める.Schreier. である.たとえば,市場投入までの時間やコスト. et al.(2012)は,シリアルの実験で,観察消費. 削 減 効 果 な ど で あ る(Chang & Taylor, 2016;. 者が,ユーザーイノベーションの精通度(自ら創. Ghezzi et al., 2018) .. 造あるいは用途開発したか,実践した知人を知っ. 第 3 に,CS 研究に研究はあるが,いまだ成果. ているか)がある場合は,消費者創造ラベルがも. と関連づけられていない要因との関係の解明であ. たらす革新能力への知覚を強めると指摘する.一. る.たとえば,CS 研究で多くの研究がある参加. 方,Jacobsen et al.(2020)は,スナック菓子で. 者の動機や,参加者と対応する企業内部の専門家. の実験により,共創の精通度(概念を知っている. のスキルや能力と,CS 成果との関係などである. か)をもつ場合も,共創ラベルがもたらす心理的 成果(開発する消費者への信頼性や能力の知覚). (Ghezzi et al., 2018). 第 4 に,複数要因と各成果との関係の解明であ. にはつながらないと指摘する.観察消費者が共創. る.各成果ともに,複数の要因とその下位要因が. の精通度をもたない場合,企業が観察消費者に伝. 明らかになっているが,要因間の関係は整理され. えるより,共創した消費者が伝えるほうが,共創. ていない.これらの複数要因や下位要因と成果と. した消費者への信頼性につながる.両研究は異な. の関係を整理した上で,モデルを作成した実証研. る結果が出ているが,前者は自身あるいは友人の. 究が期待される.. 経験による精通度であり,後者は概念の認知のみ と水準が異なる.. 第 5 に,CS の成果を最も高めるプロセスの解 明である.CS には,多段階のプロセス(Mlade-. 第 4 に,権力格差感が成果を弱める.Paharia. now et al., 2014)や,いくつかのタイプの参加者. & Swaminathan(2019)は,T シャツや,ソフ. 間,参加者・企業間の関係があるが,どの組み合. トウェアを使った実験で,権力格差感(社会の権. わせが最も成果をもたらすのかは明らかではな. 力の不平等を受容する程度)の低い消費者は,企. い.こうした研究課題の解明には,ランダム化比. 業設計製品よりも消費者設計製品の選好が高いと. 較実験などが必要であり,より産学が連携して研. 指摘する.一方,権力格差感の高い消費者では,. 究に取り組むことを期待する.. この効果が減少したり,逆になったりする.. Ⅵ .将来の研究の示唆. Ⅶ .おわりに 本稿は,多様な研究分野に広がる,消費者が新. 最後に,レビューを通して発見された課題をも. 製品やサービスの開発に参加する新製品開発 CS. とに,簡単になるが将来の研究をいくつか示唆す. の文献のシステマティックレビューを通して,. る.第 1 に,結果の矛盾の解明である.製品成果. CS の成果とその要因を体系化し,将来の研究を. 要因でのリードユーザー特性や発案数,ラベル成. 示唆してきた.. 果要因での複雑性やステータス,ブランド精通. 理論的貢献としては,多様な分野に散在する. 度,CS 精通度において,結果は矛盾しており,. CS 成果の研究をまとめ,その成果を包括的に俯. 同条件での追試や,新たな交絡因子などの変数を. 瞰できるように体系化できたことである.具体的. 組み込んだ実証研究が期待される.. には,表 1 のように,CS 成果を複合的に捉え,.

(9) 12 組織科学 Vol. 54 No. 2 表 1 新製品開発クラウドソーシングがもたらす成果と要因 分 類 成果. 製品成果. 財務成果. Nishikawa et al. (2013). 質的成果. Nishikawa et al. (2013), Poetz & Schreier (2012). リスク低減成果. Lang et al. (2016), Magnusson et al. (2016), Toubia & Florès (2007). 製品要因. Jensen et al. (2014). 参加者要因 要因 参加者間要因. 成果 プロセス 成果. 要因. 成果. ラベル 成果. 論 文. Bayus (2013), Hamdi-Kidar et al. (2019), Jensen et al. (2014), Poetz & Schreier (2012),. Zhu et al. (2017). Allen et al. (2018), Hofstetter et al. (2018), Jensen et al. (2014), Lang et al. (2016), Pee (2016), Zhao et al. (2016), Zhu et al. (2017). 参加者・企業間要因. Chen et al. (2012), Chua et al. (2015), Kim & Slotegraaf (2016), Wooten & Ulrich (2017). 心理的成果. Fuchs et al. (2010). 参加者要因. Fuchs et al. (2010), Füller & Bilgram (2017), Shulga et al. (2018). 参加者間要因. Akman et al. (2019). 参加者・企業間要因. Naletelich & Spears (2020). 財務成果. Nishikawa et al. (2017). 心理的成果. Costa & Coelho do Vale (2018), Dahl et al. (2015), Fuchs & Schreier (2011), Liljedal (2016), Nishikawa et al. (2017), Schreier et al. (2012). 製品要因. Costa & Coelho do Vale (2018), Fuchs et al. (2013), Schreier et al. (2012), Wang et al. (2019), Weber et al. (2016), Zuniga Huertas & Pergentino (2020). 観察者要因. Costa & Coelho do Vale (2018), Dahl et al. (2015), Jacobsen et al. (2020), Kristal et al. (2016), Liljedal (2016), Liljedal & Berg (2020), Meißner et al. (2017), Paharia & Swaminathan (2019), Schreier et al. (2012), Thompson & Malaviya (2013), van Dijk et al. (2014), Weber et al. (2016). 要因. 3 つの成果に分類し,下位成果や要因を体系化で. 善余地は残る.より堅牢なレビューのために,2. きた.実践的貢献としては,CS を実践あるいは. 人以上の独立したレビュアーによる文献抽出や構. 計画する企業に対して,成果につながる CS の手. 造化(Denyer & Tranfield, 2009),文献の構造化. 法やモデルの設計に役立つ知見を提供できたこと. を容易にするために質的調査ソフトによるコーデ. である.. ィ ン グ を 使 っ た レ ビ ュ ー 方 法(Gamble et al.,. 本研究の限界と課題としては,ひとつに,広範 囲な文献探索にもかかわらず,本レビューが成果. 2016;Tranfield et al., 2003)などの改善があり うる.. と要因の関係を明らかにするために実証研究に焦. こうした改善の余地はあるものの,本レビュー. 点をあてた結果,量的研究が中心となり,事例研. を契機に CS の成果や要因の理解が進み,多くの. 究などの質的研究が対象になっていない点であ. 研究や実践が行われることを期待する.. る.さらに,消費者を検索キーワードにした結果 (企業ユーザーの論文を含めないため) ,対象文献 に記述される関連文献をレビュー対象にすること で網羅性を確保したにもかかわらず(Webster &. 謝辞 本研究は JSPS 科研費 20K01972 の助成を受けたもので ある.. Watson, 2002) ,対象論文を見逃している可能性 があることである.将来の研究課題の解明に向け て,レビュー拡張を行う余地はありうる. もうひとつには,システマティックレビューの 手続きにもとづき実施したものの,レビューの改. 参考文献 Adamczyk, S., Bullinger, A. C., & Möslein, K. M. (2012). Innovation contests: A review, classification and outlook. Creativity and Innovation Management, 21(4), 335-360. https://doi. org/10.1111/caim.12003.

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参照

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