大 気 汚 染 学 会 誌 第29巻 第6号(1994) A93
入門講座
大 気 中 に お け る粒 子 の挙 動
― 生 成 ・変 質 ・除 去 ―
笠
原
三 紀 夫
大 気 中 に浮 遊す る粒 子 状 物 質 を エ ア ロ ゾル 粒 子 とい い, 大 気 環 境 問題 で は,通 常 粒 径 が1nm∼100μm程 度 の粒 子 を対 象 と して い る。 エ ア ロ ゾル粒 子 の 挙 動,す な わ ち 粒 子 の物 産,化 学 的 性 状 の空 間 的 ・時 間 的 変 化 は,粒 子 自身 が もつ 固 有 の性 状 は も と よ り,媒 質 で あ る空 気 の 物 理 ・化 学 的 条件,大 気 と地 上 との 境 界 条 件 な ど,各 種 条 件 に依 存 しきわ め て複 雑 で あ る。 本 講 座 で は, 1)大 気 中 に お け るエ ア ロ ゾル粒 子 の 挙 動 2)大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 発 生 源 と性 状 3)大 気 中 にお け る二 次 粒 子 生 成 4)大 気 中に お け る エ ア ロ ゾル粒 子 の変 質 5)大 気 中か ら のエ ア ロ ゾル 粒 子 の 除去 6)大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 動 態 シ ミュ レー シ ョ ン に関 す る基 礎 的 問 題 に つ い て 述 べ る 。 なお,本 学 会 誌 第27巻 第4号-入 門 講 座 「粒 子 状 物 質 に よる大 気 汚 染 問 題 」 に おい て,粒 子 状 物 質 の大 気汚 染 に係 わ る諸 問 題 に つ い て 述 べ た 。 本 稿 と内 容 が重 な る部 分 が あ るが,な るべ く重 複 を さけ る よ う努 め た。 しか し, 一 部 に重 複 した 記 述 が あ る 。 本 稿 を よ りよ く理 解 して頂 くた め に重 複 せ ざる を 得 な い もの と して ご了承 願 い た い。 1. 大 気 中 に お け る エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 挙 動 大 気 中の エ ア ロ ゾル 粒 子 は,発 生 ・生 成 以 来種 々 の物 理 ・化 学 的 作 用 を 受 け,空 間 的 に 移 動 す る と と もに,そ の 性 状 は時 々刻 々 と変 化 し,最 終 的 に は沈 着 等 に よ り大 気 中 よ り除 去 され る。Fig.1は 大 気 中 に お け る エ ア ロ ゾ ル粒 子 の 挙 動 とそ れ に 係 わ る 主 要機 構 を模 式 化 して示 し た もの で あ り,主 な 性 状 変 化 機 構 と して は,(1)輸 送(移 流 ・拡 散),(2)新 粒 子 生 成,(3)変 質(蒸 発,凝 縮,化 学 反 応,凝 集),(4)除 去(沈 降,乾 性 沈 着,湿 性 沈 着)が あ る 。 た だ し,問 題 とす べ き主 要 性 状 変 化 機 構 は,対 象 とな る 問 題 の 性 質 や汚 染 ス ケ ー ル,時 間 ス ケ ー ル に よ り 異 な る 。Table 1は 大 気 中 に お け る粒 子 の 性 状 変 化 に 及 ぼ す輸 送,変 換(新 粒 子 生 成+変 質),除 去 過 程 の 相 対 的 重 要 性 を汚 染 ス ケ ール 別 に示 した もの で あ る 。 一 般 に, 対 象 地 域 が局 地 ・小 域 ス ケ ー ルの 場 合 に は,変 換 の 寄 与 は 小 さ く,ま た低 煙 源 の場 合 を 除 い て 沈 着 除 去 効果 も無 視 で き る。 対 象 地 域 が大 き くな る に 従 い 変換,沈 着 除去 効 果 と も大 き くな り,広 域,地 球 規 模 ス ケ ール で は沈 着 除去 問 題 と して取 り扱 わ れ る こ とが 多 い 。 一 方 ,エ ア ロ ゾル 粒 子 の 性 状 は,粒 径 や濃 度,化 学組 成,形 状,密 度,親 ・疏 水 性,反 応 性,光 学 的 特性,電 気 的 特 性 な ど多 数 の 因 子 に よ り表 わ され る が,大 気 汚 染 問 題 にお い て は一 般 に,粒 径,濃 度,化 学 組 成 の3因 子 が最 も重 要 とな る 。 2. 大 気 エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 発 生 源 と 性 状 大 気 エ ア ロ ゾル 粒 子 の 性 状 は,粒 子 の 発生 源 や 生 成過 程 と密 接 な関 係 が あ り,粒 径 に つ い てみ れ ば,Fig.2に 見 られ る よ うに 発 生 ・生 成 過 程 が 異 な る3つ の粒 子 群: 小 粒 子 群(Nuclei mode),中 間粒 子 群(Accumulation mode),大 粒 子群(Mechanical mode)の 集 合 体 か らな る と考 え る こ とが で きる 。個 数 濃 度 で表 わ した場 合 そ の大 部 分 を 占 め る 小粒 子群 は,発 生 源 にお い て は高 温 ガ ス が冷 却.凝 縮 す る こ とに よ り,ま た大 気 中 に お てい は ガ ス状 汚 染 物 質 が ガ ス相 反 応 に よ り低 蒸 気 圧 性 物 質 を生 成 しそ の 反 応 生 成物 が凝 縮 す る こ と に よ り,新 た に ガス 状 物 質 か ら粒 子 化 した粒 子群 で あ る。 中間 粒 子 群 は,こ れ らの 小 粒 子 が さ らに 他 の ガ ス分 子 を凝 縮 す る こ とに よ り,あ るい は小粒 子 同 士 が凝 集す る こ と に よ り,成 長 し 形 成 され た粒 子群 で あ る。 一 方,大 粒 子 群 は土 壌 粒 子 や 海 塩 粒 子 の よ うに,主 と し て機 械 的 分 散 に よ り発 生 した 自然 起 源 の 粒 子 を 中 心 と した粒 子群 よ りな る。 そ して 通 常,(小 粒 子群+中 間 粒 子 群)を 微 小 粒 子(fine parti-京 都大学 ・原 子エネルギー研究所
A94 大 気 汚 染 学会 誌 第29巻 第6号(1994)
Fig.1. 大 気 中 に お け るエ ア ロ ゾル粒 子 の挙 動 とそ れ に 係 わ る主 要 機 構 。
Table 1. 大 気 中に お け る粒 子 の 性 状 変化 に 及 ぼす 輸 送,変 換(新 粒 子 生 成+変 質), 除 去 過 程 の 相対 的重 要 性
cles),大 粒 子群 を粗 大 粒 子(coarse particles)と 呼 ん で い る。 微 小 粒 子 と粗 大 粒 子 間 の移 行 は きわ め て 小 さ く, 大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 質 量 粒 度 分 布 は一 般 に,微 小,粗 大 粒 子 域 にそ れ ぞ れ ピ ー クを もつ 二 山 型 分 布 とな り,両 者 の化 学 的 性 状 はFig.3に 示 した よ うに 発生 過 程 ・起 源 に応 じ大 き く異 な る 。 3. 大 気 中 に お け る 二 次 粒 子 生 成 大 気 中 で ガス か ら粒 子 が 生 成 され る過 程 を二 次 粒 子 生 成 と呼 び,生 成 され た粒 子 を 二 次粒 子 とい う。 二 次 粒 子 は,大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 中 で も微 小粒 子 の主 要 な供 給 源 と な って い る 。 こ こで は,二 次 粒 子 の生 成 機 構,大 気 中 に お け る 二 次 粒 子 生 成,二 次 粒 子 の汚 染 寄 与 に つい て述 べ る 。 3.1 二 次粒 子 の生 成 機 構 大 気 中 にお い て は ガス 状 汚染 物 質 の一 部 は,物 理 ・化 学 的 変 化 を 受 け て 粒 子 化 し,い わ ゆ る二 次 粒 子 に転 換 す る。 ガス の 粒 子 転 換 過 程 は,Fig.4に 示 す よ うに大 き く は均 一粒 子(核)生 成:Homogeneous nucleationと, 不 均 一 粒 子(核)生 成:Heterogeneous nucleationと に分 け る こ と が で き る。 不 均一 粒 子生 成 は,ガ ス分 子 が 既 存 の 液 体 ま た は 固体 微 粒 子 に凝 縮(凝 結)し 粒 子 に 転 換 す る過 程 を意 味 し, この 際,粒 子表 面 で の化 学 反 応 や 粒 子 中へ の 吸 収 を 伴 う 場 合 もあ る。 し た が っ て不 均 一 粒 子 生 成 は,ガ ス 側 か ら み れ ぼ 「ガ ス の粒 子 化 」 であ り,粒 子 側 か らみ れ ば 「粒 子 成長 」 と な る。 本 稿 で は不 均 一 粒 子 生 成 は粒 子 成長 と し て取 扱 い,4.1で 述 べ る こ と とす る 。 一 方,均 一 粒 子 生 成 は,ガ ス 分 子 同 士 が 衝 突 合 体 し新 た に粒 子 を 生 成 す る 過 程 を 意 味 し,無 核 自己 凝 縮 と も呼 ば れ,そ の 転 換 過 程 は次 の よ うに 説 明 され て い る。 大 気 中 で は気 体 分 子 の 空 間 的,時 間 的 な濃 度 の ゆ らぎ に伴 い, 複 数 の 分 子 よ りな る ク ラス ター(核)が 作 られ る が,そ の 多 くは元 の 単 分 子 に 戻 る。 分 子 の 数 が大 き くな る ほ ど そ の 存 在 確 率 は小 さ くな る が,臨 界核 と呼 ばれ る あ る個 数 以 上 の 分 子 が 集 合 した と き,ク ラス ター は もはや 元 の 単 分 子 に 戻 る こ とな く,逆 に,更 に他 の 分 子 を 集 め 成長 し粒 子 を 形 成 す る 。 反 応 の 初期 に は ガ ス相 の み か らな る こ とか ら 「均 一 」 と名付 け られ て い る。 な お,エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 大 き さに対 す る絶 対 的 な定 義 は な い が,通 常 は 1nm∼100μm程 度 を 対 象 と して い る が,臨 界 核 に相 当 す る ク ラス ター は粒 子 と して の最 小 単 位 と考 え る こ とが で きる。 均 一 粒 子 生 成 にお い て,気 体 の 組 成 が 単 一 成 分 よ りな る場 合 を単 成 分 均 一 粒 子 生 成:Homogeneous homomo-lecular nucleation,2成 分系,3成 分系 の 場合 を それ ぞれ Binary nucleation, Ternary nucleationと い い,2成 分
大 気 汚 染 学 会 誌 第29巻 第6号(1994) A95 Fig.2. 粒 径 別大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 主要 発 生過 程 と除 去 機 構 。 Fig.3. 大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の一 般 的 質 量 粒 度 分 布 形 状 と化 学 性 状 特 性 。 系 以 上 に つ い て は 多 成分 均 一 粒 子 生 成:Homogeneous heteromolecular nucleationと 呼ん で い る。 大 気 汚 染 問 題 で は と く に,H2SO4(g)-H2O(g)系,HNO3(g)-H2O(g)系 の2成 分 均 一 粒 子 生 成 に対 す る関 心 が 高 く, 自由 エ ネ ル ギ ー △Gを 基 本 と した 古 典 核 生 成 理 論 を 中 心 に,粒 子 の生 成速 度(単 位 時 間,単 位 体 積 中 に新 た に 生 成 され る粒 子 の数)や 生 成粒 子 性 状 な ど に関 す る理 論 的 検 討 が 行 わ れ て きた。 Fig.5aは,単 成 分系 に お い て半 径rの 核 が1個 生 成 され る と きの 自由 エ ネ ル ギ ー の増 加 分 △Gをrの 関 数 と し て示 した もの で あ る。 飽 和 比Sが1よ り小 さい 不 飽 和 の と き に は,△Gはrと と もに単 調 に増 大 し,粒 子 核 が 大 き くな る程 そ の 核 を つ くる の に よ り大 き な エ ネ ル ギ ー を必 要 と し,そ の 存 在 確 率 は小 さ くな る こ とがわ か る。 した が って,S<1で は核 は蒸 発 消滅 しや す い 状 態 に あ る こ と に なる 。 一 方,S>1の 過 飽 和 蒸 気 中 で は,臨 界 半 径rcで △Gは 最 大 値 とな り,核 の半 径 がrcを 超 え る とrが 増 す ほ ど は △G減 少 し,粒 子核 の存 在 確 率 は大 き くな る。 した が って,臨 界半 径 以上 に達 した 粒 子 核 は, 更 に ガ ス分 子 を 凝 縮 す る こ とに よ り微 小粒 子 へ と成長 し て い く。Fig.5bは 単 成 分系 の一 例 と して,300Kの 水蒸 気 か らの粒 子 生 成 速 度Jを 飽 和 比 の 関 数 と して求 め た も の で あ る。J=1個 ・cm-3・s-1とな るた め に はS≒3.1の 過 飽 和 状 態 と な る必 要 が あ る こ とを示 して い る。 これ よ り,大 気 中 で の雲 粒 の 生 成 は,均 一粒 子生 成 に よっ て は 難 し く,不 均 一 粒 子 生 成 に よる もの で あ る こ とを 意 味 し て お り,こ れ は後 述 す る湿 性 沈 着(Rain out)と 深 くか か わ って い る。 2成 分 系 に つ い て も単 成分 系 と 同様 に考 え る こ とが で
A96 大 気 汚 染学 会 誌 第29巻 第6号(1994)
ガス の粒 子 転 換
(
gas-to-particle converslon)
{
均 一 相 核 生 成
=新 粒子生成
(
homogeneous nucleation)
{
単 成 分 系(homogeneous =過 飽 和 に よ る 物 理 的 プ ロ セ ス か ら の 粒 子 生 成homomolecular nucleation) 多 成 分 系(homogeneous heteromolecular nucleation)=ガ ス 相 の 化 学 反 応 に よ る 凝 縮 性 ガ ス の 生 成 に 引 き 続 く
粒 子 生 成
不 均 一 相 核 生 成(heterogeneous nucleation or heterogeneous condensation) =微 小 粒 子 へ の 凝 縮 =粒 子 へ の ガ ス 分 子 移 行(粒 子 表 面 で の 化 学 反 応 や 粒 子 中 へ の 吸 収 を 伴 う場 合 も あ る) Fig.4. ガ ス の 粒 子 へ の 転 換 機 構 。 Fig.5a. 単 成 分 系 に お け る粒子 核生 成:核 半 径rの 関 数 と して表 した 自由 エ ネ ル ギ ー △G. Fig.5b. 水 蒸 気 系 に お け る均 一 粒 子 生 成 速 度 。 きる。Fig.6はm個 のH2SO4分 子 とn個 のH20分 子 よ りな る核 の △Gを,m,nの 関数 と して3次 元 表 示 した もの で,臨 界 核 とな る鞍 点(saddle point)を 乗 り 越 え た核 は,△Gの 小 さい よ り大 きな粒 子 へ と成長 して い く。 な お、 これ らを 基 礎 と した 理 論 計 算 に よ り,飽 和 蒸 気 圧 の違 い か らH2SO4は 大 気 中 で 容 易 に粒 子 化 す る の に 対 し,HNO3の 粒 子 化 は困 難 で あ る こ と が 示 さ れ Fig.6 2成 分(H2SO4-H2O)系 に お け る 粒 子 核 生 成;H2SO4,H2Oガ ス 分 子 数 の 関 数 と し て 表 し た 自 由 エ ネ ル ギ ー △G面 。 た 。 た だ し,粒 子 生 成 とと もに化 学 反 応 を も 考 慮 し た H2SO4(g)-HNO3(g)-H2O(g)の3成 分 系 か ら は, HNO3粒 子 が 容 易 に生 成 す る との報 告 も あ り,実 験 と あわ せ 今後 の理 論 の さ ら なる 発 展 が 望 まれ る。 3.2 大 気 中で の 二 次 粒 子 生 成 大 気 中 で の二 次 粒 子 生 成 と し て重 要 な もの に は,SO2 か らの硫 酸(塩)粒 子,NOxか ら の 硝 酸(塩)粒 子, 炭 化 水素 ガ ス か らの有 機 粒 子 生 成 が あ る。 い ず れ も気 相 反 応 に よる 均一 粒 子 生 成 や,液 相 反 応 や 固 体 粒 子 表 面反 応 に よる 不 均 一粒 子生 成 に よ り粒 子 化 す る が,そ れ らの 競 合 性 は既 存 微 小粒 子 の表 面 積 濃 度 に 依 存 し,清 浄大 気 中 に お い て は均一 粒 子 生 成 が,汚 染 の ひ どい 都 市 大 気 中 で は不 均 一粒 子 生 成 が支 配 的 で あ る と推 測 され て い る 。 汚 染 大 気 中 で の粒 子 生 成 は,ま ず ガ ス状 汚 染 物 質 間 で の ガス 相反 応 に よ り低 蒸 気 圧 性 物 質 が 作 られ,そ の 反 応 生 成 物 が 凝 縮 し粒 子化 す る と考 え られ てい る。 代 表 的 な ガス 状 汚 染 物 質 で あ るSO2,NOx,HCか らの 粒 子 生 成 に お い て は,相 互 の ガ ス相 反 応 が 互 い に関 連 しあ い,例 えばSO2,NOxか らの硫 酸 塩,硝 酸 塩 生 成 に お け る 初 期 酸 化 反 応 にお い て は,大 気 中 でHC-NOx反 応 か ら生 成 され るOH,HO2ラ ジ カ ルやO3な どが 重 要 な 役 割 を 果 し てい る 。 二 次粒 子 の環 境影 響 を評 価 す る場 合 に は,ガ ス の粒 子 転 換 速 度 が 最 も重 要 な 因 子 とな る。 以下,SO2,
大 気 汚 染 学 会 誌 第29巻 第6号(1993) A97 NOx,HCの 大 気 中 に お け る粒 子 転 換 速 度 に 関 す る 知見, 研 究 状 況 を ご く簡 単 に ま とめた 。 1)SO2か らの粒 子生 成 SO2か らの 粒 子 生 成 で は,OH,HO2,RO2ラ ジ カル な ど に よ るSO2の 酸 化反 応 が 律速 とな る。 これ らの 酸 化 反 応 で は光 化 学 反 応 が重 要 な役 割 を果 た す こ とか ら,粒 子 生 成 速 度 は地 域(緯 度)や 一 日の時 間 帯,季 節,大 気 汚 染 状 況 に よ って も大 き く 変 化 す る。 大 気 中 のSO2→ H2SO4転 換 速 度 は,都 市大 気 中や 煙 流 中 で の 実 測,シ ミュ レー シ ョ ン計 算 な どか ら,汚 染 都 市 大 気 中 で1∼10 %・h-1程 度 と見 積 も られ て い る。 2)NOxか らの粒 子 生 成
NOxは 大 気 中 でNOx-HC反 応 か らで きたOHラ ジ カ ルや03と の 反 応 に よ りHNO3と な る 。 生 成 した HNO3はH2SO4に 比 べ 飽和 蒸 気圧 が 高 い た めH2SO4 よ り粒 子 と して は不 安 定 な状 態 で 存 在 し,温 湿 度 な ど環 境 条件 の変 動 に伴 いHNO3(g)〓HNO3(p)〓NO3-(p) と状 態 を 変 え る。 した が っ て,NOxの 粒 子 転 換 は, NOxの ガ ス相 反 応 に関 与 す るNMHC/NOx比 の み な らず,環 境 条件 に も大 き く依 存 す るた め そ の 転 換 速 度 を 評価 す る こ とは 容易 で は ない 。 概 略1∼20%・h-1程 度 と 考 え られ て い る。 3)ガ ス 状炭 化 水素 か ら の粒 子 生 成 ガ ス 状炭 化 水素 の 中 に も,NOx等 との ガス 相反 応 に よ り,よ り低 蒸 気圧 性 の物 質 に な っ て有 機 粒 子 を 生 成 す る もの が あ る。 した が っ て,炭 化 水 素 か らの 有 機粒 子生 成 に お い て は,先 駆 物 質 た る炭 化 水 素 の ガス相 で の反 応 性 とそ の反 応 生 成物 の蒸 気 圧 の大 き さが 重 要 な 因 子 とな る 。 炭 化 水素 の 化学 種 は,大 気 汚 染 物 質 と して 重 要 な もの に 限 っ て も極 め て多 岐 にわ た り,し た が って反 応 も極 め て複 雑 に な る こ とか ら,大 気 中 に お け る炭 化 水素 ガ ス の 粒 子 転 換 速 度 に関 す る報 告 は非 常 に 広 範 囲 に わ た り,ま た 系 統 的 に評 価 す る こ とが 難 しい こ とか ら,ま だ ほ とん ど未 知 の状 況 とい え る。 3.3 二 次 粒 子 の 汚 染 寄 与 二 次 粒 子 の汚 染 寄 与 推 定 法 と して は,実 測 デ ー タ に基 づ く推 定 法 と,先 駆 物 質 た る ガス 状 汚染 物 質 の排 出 ・輸 送 拡 散 ・粒 子 転 換 ・沈 着 を モデ ル 化 した シ ミュ レー シ ョ ン法 とが 考 え られ る 。 実 測 デ ー タ に基 づ く推 定 は,実 測 され た硫 酸 塩,硝 酸 塩 濃 度 の全 量 が 二 次 生 成 粒 子 と仮 定 し,全 粒 子濃 度 に対 す る比 率 よ り寄 与 率 を 決 定 す る 方 法 で あ る。 な お,海 塩 粒 子 の寄 与 の 大 きい 地 域 に お い て は,海 塩 起 源 の硫 酸 塩 粒 子 の 寄 与 を 差 し引 く必 要 が あ る 。 ま た,硫 酸 塩 や 硝 酸 塩 は,そ の 多 くが 硫 酸 ア ンモ ニ ウ ム,硝 酸 ア ンモ ニ ウ ム と して存 在す る と考 え られ る こ とか ら,二 次粒 子 の寄 与 と して は硫 酸 塩,硝 酸 塩 の 寄 与 の 各 々1.38,1.18倍 とす る方 が適 当 であ る。 一 方 ,有 機 粒 子 につ い て は,有 機 粒 子 中 に 占 め る二 次 粒 子 の 比 率 が 明か で な く,そ の 寄 与 を 決 定 す る こ とは難 し く,推 定 結 果 も"有 機 粒 子 の ほ とん どが一 次 粒 子 で あ る"∼"70%が 二 次 粒 子で あ る"ま で広 い範 囲 の数 値 が 報 告 され てい る。 実 際 に は,紫 外線 強 度 や 気 象 条 件,更 に は炭 化 水 素 濃 度 を は じめ と した汚 染 物 質 濃 度 な どの 環 境 条件 の違 い に よ り,二 次 生 成 の寄 与 も異 な る と考 え ら れ る が,概 略,有 機 粒 子 は二 次 生 成 の寄 与 が大 きい とい う見 解 が大 勢 を 占め て い る 。 た だ し,疑 問 点 や 矛 盾 点 も 多 く今 後 基 礎 実 験,野 外 実験 を含 む 系 統 的 な検 討 が 必 要 で あ る。 シ ミ ュ レー シ ョン法 を利 用 した硫 酸 塩 粒 子 や 硝 酸 塩 粒 子 につ い ての 研 究 の 多 く は,長 距 離輸 送 問 題 に関 連 した 酸 性 雨,酸 性 沈 着 の 観 点 か ら検 討 され た もの で あ り,地 域 内 の二 次 粒 子 濃 度 予 測,す なわ ち結 果 的 に二 次 粒 子 の 寄 与,と い った 観 点 か ら の 検 討 は き わ め て 少 な い 。 Seinfeldら を 中心 と した 研 究 グル ー プは,都 市 大 気 中 で の ガ ス相 反 応,粒 子 生 成,沈 着 を含 む シ ミ ュ レー シ ョ ン モ デ ルを 作 成 し,硫 酸 塩,硝 酸 塩 を は じ め,ガ ス相 反 応 ・粒 子 生 成 過 程 の知 見 の 乏 しい 有機 粒 子 につ い て も都 市 域 内 の濃 度 推 定 を 行 い,二 次粒 子 の寄 与 や 有 機 二 次 粒 子 生 成 へ の各 種 炭 化 水 素 族 の 寄 与 な どにつ い て検 討 を 行 っ てい る。 4. 大 気 中 に お け る エ ア 口 ゾ ル 粒 子 の 変 質 4.1 凝 縮 によ る 粒子 の成 長 前 述 した よ うに,ガ ス 分 子 が既 存 の微 小粒 子 に凝 縮 し 粒 子 化 す る不 均 一 粒 子 生 成 は,粒 子側 か らみ れ ば粒 子 の 成 長 と な る。 均 一 粒 子 生 成 に お い て も,生 成 粒 子 量 の 増 加 と と もに 次 第 に 新粒 子生 成 は減 少 し,既 生 成 粒 子 へ の 凝 縮 が 支 配 的 とな って い く。 また,反 応 系 と して の環 境 大 気 中 に は,種 々様 々な粒 径 の粒 子 が 存 在 し てお り,反 応 の初 期 よ り新 粒 子 生 成 と と もに既 存 粒 子 へ の ガス 分 子 の凝 縮 が 起 こ り,そ れ らの 軽重 は既 存 粒 子 量 に 依 存 す る。 ガ スの 粒 子 へ の 移 行過 程 は,(1)粒 子 表 面 へ の ガス 分 子 の 拡 散 輸 送,(2)等 方 的 な 熱運 動 に伴 うガ ス分 子 の 粒 子 表 面 へ の 付 着,(3)粒 子 表面 で の化 学 反 応,あ るい は粒 子 相 中へ の 移 行+化 学反 応,と い った プ ロセス に 分 け て 考 え る こ とが で きる。 凝 縮 性 物 質 の粒 子 表面 へ の凝 縮 は,物 質 と熱 の 移 動 に 依 存 し,ガ ス 分 子 の 凝縮 速 度 は,粒 子 の 大 き さ(半 径 r)が 空 気 の 平 均 自由行 程lに 比 し,十 分 大 きい 場 合 と 小 さい 場 合 に 分 け て取 り扱 うこ と が で き る。 連 続 領 域 と 呼 ば れ るr《l(Kn∼0)の 領域 で の凝 縮 率(単 位 時 間 に
A98 大 気 汚 染 学 会 誌 第29巻 第6号(1994) Table2. ガス の 粒 子 転 換(不 均 一 粒子 生 成)に 伴 う粒 子 成 長 r:粒 子 半 径,l:気 体 分 子 平均 自由行 程,c:補 正 係 数 粒 子 表 面 に凝 縮 す る ガス 分 子 の 数)は 拡散 理 論 を用 い て, またr《l(Kn》1)の 自由 分 子 領域 に お け る凝 縮 率 は気 体 分 子 運 動 論 を用 い てそ れ ぞ れ 計 算 す る こ とが で き る。 凝 縮 に よ る粒 子 の 成 長,す な わ ち粒 子 体 積Vや 粒 子 半 径rの 増 加 速 度dV/dt,dr/dtは,反 応 速 度>拡 散 速 度 の 場 合 に は,拡 散 過 程 が 律速 条件 とな り,一 方,化 学 反 応 を 伴 い 反 応 速 度<拡 散速 度 の場 合 に は,反 応 過 程 が 律 速 条 件 とな って,Table 2に 示 した よ うな粒 径 依 存 性 を もつ 。 こ こで,連 続 領域 に お い て は体 積 の 増 加 速 度 が 粒 径 の 二 乗 に で はな く一 乗 に比 例 す る こ と に注 意 す る 必 要 が あ ろ う。 な お蒸 発 は,粒 子 か らの ガ ス分 子 の脱 着 で あ り,凝 縮 と は ガ ス分 子 の 輸 送 方 向 が逆 な 現象 で あ る こ とか ら,理 論 的 に は凝 縮 と同様 な取 り扱 い が で き る。 4.2 粒 子 の凝 集 粒 子 が 何 らか の相 互 作 用 力 を 受 け て 衝 突 合体 す る 現 象 を 凝 集 とい う。 凝 集機 構 と して は,(1)微 小 粒 子 で 顕 著 な ブ ラ ウ ン運 動 に よる凝 集,(2)1μm以 上 の 大 きい 粒 子 で 顕 著 な 乱 流場 に お け る凝 集,(3)流 体 の 速 度 勾 配 に起 因す る 凝 集,(4)粒 子 の沈 降 速 度 差 に起 因 す る 凝 集,(5)異 符 号 に 荷 電 した粒 子 間 で生 じる静 電 気 凝 集 な どが あ る 。 凝 集 で は1回 の衝 突 で2個 の小 さ な粒 子 が 消 滅 し,そ れ らの粒 子 の 質 量 が加 算 され た1個 の 大 きな 粒 子 が 生 成 す る。 した が っ て,系 全 体 と して の 粒 子 の 質量 に変 化 は な い が,粒 子 の個 数 濃 度 が 減 少 す る こ とか ら平 均粒 径 は 凝 集 の進 行 に伴 い 増 大 して い く。 凝 集 は粒 子 間 の 衝 突 で あ る こ とか ら,そ の発 生 頻 度 は 粒 子 の個 数 濃 度 に大 き く依 存 す る 。大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の個 数 濃 度 はo.01μm付 近 の 微 小粒 子 が圧 倒 的 に大 き く,し た が って ブ ラ ウ ン運 動 に よる 凝 集 が支 配 的 とな る。 こ こで ブ ラ ウ ン運 動 とは,「 粒 子 が小 さ い 場 合,熱 運 動 を 行 う空 気 分 子 と粒 子 との衝 突 に よ り,粒 子 が 分 子 の 動 き と似 た 連 続 的 な 不 規 則運 動 を行 う」 現 象 をい い,微 小 Table3. 2粒 子 間 の 凝 集 定 数 K(r1,r2)×10 10[cm3/s] 粒 子 に 特 有 な 現 象 で あ る。 ブ ラ ウ ン運 動 に基 づ く凝 集 を 拡 散 凝 集 とい い,そ の理 論 はSmoluchowskiに よ り導 か れ た 。 い ま最 も簡 単 な ケー ス と して,粒 子 の 個 数濃 度 が n,粒 径 がrの 単 分 散 系 を 考 え れ ば,凝 集 に よる粒 子 数 濃 度 の 変 化 は,半 径rの 粒 子 の凝 集定 数 をK[cm3/s]と す れ ば, dn/dt=-K・n2(1) と 表 さ れ る 。(1)式 を 初 期 条 件n=n0 at t=0で 解 け ば, 1/n-1/n0=K・t(2) とな る 。(2)式 よ りn=(1/2)n0と な る の に 要 す る 時間 を 求 め る とn=106cm-3の 場 合,r=1μmで は52min, r=0.01μmで は14minと な る 。 半 径 がr1,r2で あ る2粒 子 間 の 凝 集 定 数 をTable 3に 示 した 。Table 3の 値 は 拡 散 凝 集 定 数 補 正 因 子 を 加 味 し た もの で あ る が,大 小粒 子 間 の 凝 集定 数 は同 一粒 径 間 の 値 よ りは る か に大 き く,多 分 散 粒 子 の 粒 子 数 濃 度 変 化 は 単 分 散 の もの よ り速 い こ と がわ か る。 粒 子 の個 数 濃 度 が 10 8個/cm3を 越 え,多 分 散 状 態 に あ る煙 道 中 の エ ア ロ ゾ ル粒 子 や た ぼ こ煙 の よ うな場 合 に は,数 秒 内 に粒 子 数 濃 度 は 半 減す る が,10 4∼10 5個/cm3程 度 の都 市 大 気 中 で は,凝 集 の み に よる粒 子 数 の半 減 に は数 時 間 を要 す る。 5. 大 気 中 か ら の エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 除 去 大 気 中 の エ ア ロ ゾル粒 子 や ガ ス状 汚 染 物 質 は,地 表 面 (土壌,森 林 草 木,水 面,建 造 物 表 面 な ど)へ 輸 送 され 大 気 中か ら除 去 され る。 この よ うな エ ア ロ ゾル粒 子 の 除 去 過 程 は,(1)雨 や 雪 な ど降 水 に よ る 除 去,(2)拡 散 や 泳 動,慣 性 衝 突 な どに よる沈 着 除 去,(3)重 力 沈 降 に よる 除 去,の3つ に 大 別 で きる。 な お,ガ ス 状 汚染 物 質 の 場合 に は,(1)降 水 に よる 除 去,(2)拡 散 に よる沈 着 除 去 に加 え,(4)湿 潤 表 面 で の 吸 収 が 考 え られ る。(1)の 降 水 に よ る除 去 を 湿 性 沈 着(wet deposition),(2)∼(4)の 降 水 以外 に よ る除 去 を 乾 性 沈着(dry deposition)と 呼 ん で い る。 湿 性 沈 着 で は,沈 着 特 性 が地 表 面 の 性 状 に よる影 響 を受 け る こ と はほ とん どな い が,乾 性 沈 着 の 場 合 に は,沈 着 面 の 種 類 や そ の性 状 に依 存 し,さ らに は粒 子 の大 き さや 風 速,大 気 の 乱 れ な どの 気 象 条件 の影 響 を も受 け る 。
大 気 汚 染学 会 誌 第29巻 第6号(1994) A99 5.1 湿 性 沈 着
エ ア ロ ゾル粒 子 の 湿 性沈 着 過 程 は,さ ら にRain out とWash outに 分 け られ る。Rain outは,雲 粒 の 生 成 時 に粒 子 が 凝 縮(凝 結)核 とな り形 成 され た 雲 粒 が,あ
るい はそ の 雲 粒 に さ らに粒 子 が凝 集 し,そ れ らの 雲 粒 が 雨 滴 と な っ て落 下 ・沈 着 除 去 され る過 程 をい い,雲 粒 洗 浄(within cloud scavenging)と も呼 ばれ る。 一 方, Wash outは,降 水 時 に粒 子 が雨 滴 に捕 捉 され 大 気 中 か ら除 去 され る 過 程 を い い,雲 底 下 洗 浄(below cloud scavenging)と も呼 ばれ る。 5.1.1 Rain out エ ア ロ ゾル粒 子 の 凝 縮核 と して の作 用 は,大 気 の 相 対 湿 度 が高 くな る と,大 気 中 の 吸湿 性 エ ア ロ ゾルが,媒 質 で あ る大 気 の 湿 度 と平 衡 を保 つ よ うに水 蒸 気 を 凝 縮 し, 雲 粒 を 形 成 す る過 程 で あ る。 ま た,エ ア ロ ゾル粒 子 の 雲 粒 核 へ の凝 集 作 用 は,微 小 エ ア ロ ゾル粒 子 が,ブ ラ ウ ン 運 動 や 拡 散 泳 動,熱 泳 動 な どに よ り,既 に生 成 して い る 雲 粒 に凝 縮 合 体 し,雲 粒 中 に取 り込 まれ る過 程 で あ る 。 粒 径 が0.01μm以 上 の 粒 子 は 凝縮 核 作 用 が,逆 に0.01 μm以 下 の粒 子 は 凝 集 作 用 に よ る除 去 が支 配 的 で あ る。 な お,こ の よ うに して形 成 さ れた 雲 粒 の多 くは,雨 滴 と な り地 表 に 落 下 し大 気 中 か ら除 去 され るが,一 般 に 除 去 され る ま でに は,雲 粒 → 蒸 発 → 雲粒 を何 回 も繰 り返 す と い わ れ てい る。 5.1.2 Wash out エ ア ロ ゾル粒 子 の 雨 滴 中 へ の取 り込 み は,粒 子 の雨 滴 へ の ブ ラ ウ ソ拡 散(Brownian diffusion)や,雨 滴 とエ ァ ロ ゾル粒 子 との沈 降速 度 差 に よ る 慣 性衝 突(Inertial impaction)・ さえ ぎ り効 果(Interception)な ど*に よる もの で,前 者 はエ ア ロ ゾル粒 子 径 が 小 さい もの ほ ど,ま た後 者 は逆 に粒 子 径 が 大 きい もの ほ どそ の捕 集 効 率 は大 きい。 雨 滴 半 径 をR[m],エ ア ロ ゾル粒 子 半 径 をr[m] と した 場合 の全 捕 集効 率E(R,r)の 推 定 例 をFig.7に 示 す 。 雨 滴 が落 下 す る際 に,雨 滴 に 取 り込 まれ 単位 時 間 に除 去 され る エ ア ロ ゾル粒 子 の割 合 を洗 浄 率 とい い,Λ[s-1] で表 す こ と とす る。Λ は通 常,測 定 値 は質 量基 準 で,理 論 値 は個 数 基 準 で取 り扱 わ れ る 。個 数濃 度 を基 準 と した 場 合,粒 子半 径rの 粒 子 に対 す る洗 浄 率 Λ(r)は,半 径 Rの 雨滴 の終 端 速 度 をUt(R)[m/s]と すれ ば
(3)
(4)
と表 され る。 こ こ で,Nは 雨 滴 の 個 数 濃 度[m-3],f(R) は雨 滴 の個 数 基 準 の粒 度 分 布 関 数,ま たg,ρ,μ は各 々 重 力 加 速 度,雨 滴 密 度,空 気 の 粘 性 係数 で あ る。 した が Fig.7. 雨 滴 に よ る エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 捕 集 効 率 。 っ て,エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 粒 度 分 布 関 数 をf(r)と す れ ば, 全 洗 浄 率 Λ は Λ=∫ Λ(r)・f(r)dr(5) ま た,Wash outに よ る 沈 着 フ ラ ッ ク スFw[kg/(m2・s)] は,Wash outが 降 水 高 度 全 域 に わ た っ て 起 こ る の で, 高 度z[m]に お け る 粒 子 濃 度 をC(z)[kg/m3]と す れ ば Fw=∫ Λ ・C(z)dz(6) と 表 され る 。 な お,雨 滴 径Rは 通 常0.1mm<R<1mmの 範 囲 に あ り,ま た 一 般 に よ く用 い ら れ る 降 雨 強 度 ρ[mm/h]と の 間 に は,上 記 変 数 を 用 い れ ば, p=3.6×10 6×(4/3)π ∫R3・Ut(R)・N・f(R)dR(7) な る 関 係 が あ る 。 な お,経 験 的 に 雨 滴 の 幾 何 平 均 径 R[m]は,p[mm/h]の 関 数 と し てR=0.3×10-3p0.3と 近 似 で き,そ の 幾 何 標 準 偏 差 は1.5∼20程 度 と い わ れ て い る 。 5.2 乾 性沈 着 エ ア ロ ゾル粒 子 の乾 性 沈 着 は,沈 着 面 の 種 類 や 性 状, 気 象 条件 の影 響 を受 け る と と もに,粒 径 や粒 子 密 度 な ど の 粒 子 性 状 に も依 存 す る。 と くに沈 着 プ ロセ ス は粒 径 に 依 存 し,粒 径 が1∼100μm粒 子 は重 力 沈 降 と乱 れ に よ る慣 性 衝 突 が,一 方,微 小粒 子 は沈 着 底 層 を 通 した ブ ラ ウ ン拡 散 が,そ れ ぞれ 主 要 沈 着 プ ロセ ス で あ る 。 乾 性沈 着 が 沈 降 と拡 散 に よる も の と す れ ば,沈 着 フ ラ ッ クス Fd[kg/(m2・s)]は,D,εp[m2/s],Vt[m/s]を そ れ ぞ れ ブ ラ ウ ン拡 散 係数,渦 拡 散 係 数,粒 子 の 重 力 沈 降 速 度 と すれ ば, Fd=(D+εP)・(dC/dz)+Vt・C(8) とな り,粒 子 の 乾 性沈 着 速 度Vd[m/s]は 次 式 で 定 義 さ れ る 。 Vd=Fd/C(z0)(9) こ こで,C(z0)は 地 表付 近 の あ る基 準 高 さz0に お け る 大 気 中 の粒 子濃 度 で,通 常z0=2mに お け る濃 度 が用 い られ る 。 * 熱 泳 動(thermophoresis) ,拡 散 泳 動(diffusiopho-resis),静 電 気 力(electrostatic charge collection)A100 大 気 汚 染 学会 誌 第29巻 第6号(1994) 5.3 酸 性 雨,酸 性 沈 着 前 述 した 乾 性 ・湿 性 沈 着 は エ ア ロ ゾル粒 子 ば か りで な く,ガ ス 状 物質 につ い て も起 こ り,土 壌 や 水 面 で の 吸 収, 溶解,植 物 へ の取 り込 み,雲 粒 や 雨 滴 へ の 吸 収 な どに よ り,地 表 面 へ と運 ば れ 大 気 中 よ り除 去 され る。 大 気 中の 主 要 な一 次 汚 染 物 質 で あ る二 酸 化 硫 黄 や 窒 素 酸 化 物,お よび そ れ らが 大 気 中 で粒 子 化 し生 成 され る硫 酸 塩 や 硝 酸 塩 な ど は,雨 水 の 酸 性化 に大 き く関 与 し,ま た 同 時 に 乾 性沈 着 に よ り地 表面 に到 達 し環 境 を 酸 化 させ る 。 大 気 中 に 直 接 放 出 され また は大 気 中 で 生 成 した ガ ス状, エ ア ロ ゾル 状酸 性 物 質 に よ り酸 性 化 され た雨 は酸 性 雨 と 呼 ばれ る。 酸 性 雨 は乾 性 沈 着 を も含 む 酸 性沈 着 とは本 来 区 別 され るべ き で あ るが,現 在 で は む しろ 広 義 の意 味 と して の酸 性 沈 着 全 体 を さ して 酸 性 雨 と呼 ぶ こ とが 多 い。 乾 性 沈 着 と湿 性 沈 着 の寄 与 は同 程 度 と推 定 され て い るが, 乾 性 沈 着 に 及 ぼ す影 響 因 子 が 多岐 にわ た る こ とか ら,そ の 評 価 手 法 は まだ確 立 され て い な い。 酸 性 物 質 の 乾 性沈 着 で は,沈 着 速 度Vdが 重 要 な 因 子 とな る が,前 述 した よ うに 乾 性 沈 着 速度 は,沈 着面 の 状 態 や 気象 条件,ガ スの 種 類,粒 子 性 状等 に依 存 す る こ と か ら,室 内基 礎 実 験,屋 外 実 験 等 で 得 られ た デ ー タ も広 範 囲 にわ た っ てい る。 酸 性 沈 着 の主 要 原 因 物 質 で あ る SO2,NOx,硫 酸 塩 粒 子 の 乾性 沈 着 速 度 は,そ れ ぞ れ0.5 ∼5,0∼2,0.2∼3[cm/s]程 度 と考 え られ て い る。 6. 大 気 エ ア ロ ゾ ル 粒 子 の 動 態 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 実 験 室 規 模 か ら地 球 規模 に至 る各 種 ス ケ ール で の エ ア ロ ゾル粒 子 の 挙動 につ い て,数 値 シ ミ ュ レー シ ョンモ デ ル に よる 検 討 が行 われ,実 験 デ ー タの 解 釈 や 予 測,現 象 解 析,大 気 環 境 影 響 予 測 等 に 用 い られ て きた。 前 述 した よ うに,大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 主 要 性 状 変化 機 構 と し て は,(1)輸 送,(2)新 粒 子 生 成,(3)変 質,(4)除 去 が あ る。 一 方 ,大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の 性 状 は,粒 径,濃 度,化 学 組 成 の3因 子 が 最 も重 要 で あ る こ とか ら,エ ア ロ ゾル の 性 状 変 化 を モ デ ル化 す る に あ た っ て は,こ れ ら3因 子 を 含 んだ 形 で表 現 す る こ とが 望 ま しい。 い ま,地 点r(x,y,z),時 間tに お け る,粒 径,化 学 組 成 を 加 味 した濃 度 を 意 味す る性 状 分 布 関 数 をf(m,M, r,t)と 表 す と,そ の時 間 的 変 化 は, (移 流 ・拡 散) (新 粒 子 生 成) (化 学反 応,凝 縮,凝 集) (沈着 除去) (発 生 源 か らの付 加) (10) と表 せ る 。 こ こで,Mは 粒 径 パ ラ メ ー タ と し て の 質 量 を,mは 各 種 成 分 か ら な る粒 子 中 の 化 学 種 を,u,D,v は それ ぞれ 風 速,拡 散 係 数,粒 子 の 沈 着 除 去 速 度 を 表 す。 計 算 機 の計 算 速 度 の 高 速 化,記 憶 容量 の大 容量 化 に伴 い,化 学 組 成,粒 度 分 布 変 化 を 含む か な り複 雑 な モ デ ル に よ る シ ミュ レー シ ョン も行 われ る よ うに な っ て き た。 Fig.8は,凝 集,粒 子相 内 化学 反 応,粒 子 生 成,地 着 除 去 に 起 因 す る煙 流 中 で の粒 径,化 学 組 成 変 化 を シ ミュ レ ー トした 一例 で,風 下 距 離 の 関 数 と して 表 した もの で あ り,煙 流 中 で の粒 子 の 性 状 変 化 を 知 る こ とが で きる 。 ま たFig.9は,輸 送,ガ ス相 反 応,粒 子 生 成,沈 着 を 含 む シ ミュ レー シ ョンモ デ ル を用 い て求 め られ た 都 市 域 内 の 二 次 生 成 有 機 粒 子 の 濃 度 変 化 を 実 測 デ ー タ(■)と 比 較 した もの で あ る 。 シ ミ ュ レー シ ョン計 算 で は,パ ラ メ ー タを 変 え る こ とに よ り容 易 に そ の影 響 をみ る こ とが で き Fig.8. 煙 流 中 の 化 学 成 分 別 粒 度 分 布 変 北 シ ミ ュ ー レ ー シ ョ ン(Basset et al.,1981). Fig.9. シ ミ ュ レ ー シ ョ ン モ デ ル を 用 い た 有 機 二 次 粒 子 生 成 の 予 測(Pandis et al.,1993).
大 気 汚 染学 会 誌 第29巻 第6号(1994) A101 (感度 解 析),こ こで 沈 着 を は無 視 した場 合,及 び反 応 性 有 機 ガス(ROG)の 排 出量 を2倍 とした 場 合 につ い ての 推 定 結 果 に つ い て も併 せ て示 され て い る。 感 度 解 析 に よ り現 象 を 分 解 して解 析 で きる こ とは,シ ミュ レー シ ョ ン 法 の 最 大 の 利 点 とい え る が,シ ミュ レー シ ョ ンに用 い る パ ラ メ ー タに つ て い は,室 内 実験,野 外 実 験 を通 し蓄積 し てい くこ とが 大 切 で あ る 。 一 方 ,汚 染 物 質 の 長 距 離 輸 送 問 題 を対 象 と した シ ミ ュ レー シ ョ ンモデ ル の 予 測 対 象 は,一 般 に長 期 平 均 的 な乾 性 ・湿 性 沈 着 量 や ガス,粒 子 濃 度 の 推 定 で あ る。 した が っ て,ガ スの 消 滅 や 粒 子 生 成,除 去 過 程 な どにつ い て は 細 か い議 論 はせ ず,濃 度 の 一 次 に 比 例 す る とい っ た よ う な簡 略 化 を行 い,ま た 粒 径 に つ い て も分 割 す る こと な く 全 量 と して取 り扱 わ れ る。 上 記 簡 略 化 を 導 入 し,風 下 方 向 を 灘軸,風 速 をuと す れ ば,(10)式 は
(11)
と表 され る。 こ こ で,ktは ガス の 粒 子 転 換 速 度[s-1], kdepは 除 去 速 度[S-1]で あ る。 ガ ス の粒 子転 換,沈 着 除去 を 含 む 長 距 離 輸 送 シ ミュ レ ー シ ョンモ デ ル は,ヨ ー ロ ッパ 地 域 や 米 国 北 東 部 地 域, ま た 最 近 で は東 ア ジ ア地 域 を対 象 とし,数 多 くの 報 告 が な され,汚 染 状 況 の 把 握,大 気 環 境 計 画 な どに利 用 され 効 果 を あ げ て い る 。 大 気 エ ア ロ ゾル粒 子 の シ ミュ レー シ ョンに お い て は,輸 送 拡散 因子 と と もに ガ ス の粒 子 転 換, 沈 着 除 去 に 係 わ る 因 子 が モ デ ル の精 度 に影 響 を与 え る こ とか ら,対 象 地 域 特 性 を 考 慮 した これ らの定 量 的 検 討 が 重 要 とな ろ う。 本 稿 で は,入 門 口座 と して の 性 格 上,大 気 エ ア ロ ゾル 粒 子 の 挙 動(生 成,変 質 、 除 去)に 係 わ る基 礎 的事 項, 諸 問 題 を で き るだ け 平 易 に 述 べ た 。 した が っ て,各 事 象 に 関 連 した 理 論 式 は ご く一 部 を 除 き示 して い な い。 理 論 式 を含 め,大 気 エ ア ロ ゾル 粒 子 の 挙 動 に 関 し,さ らに詳 細 に学 ぼれ よ うと思 わ れ る方 は,下 記 の よ うな 書籍,解 説 記 事 を参 考 と され た い 。文
献
1) G. M. Hidy: Aerosols and Atmospheric
Chemis-try, Academic Press (1972).
2) S. K. Friedlander:
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