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地域の教育施設を理科教育に活用するための研究 : 本学学生の博物館・科学館などの利用実態とその期待

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Academic year: 2021

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はじめに 全国各地に設けられている博物館・科学 館,その数は中井によると最近では6000ヵ所 以上にのぼるという1).そして,これらの施 設・設備を教育・学習活動に取り入れる施策 が文部科学省から打ち出されている.これを 示すものに平成14年4月から完全実施となっ た「小学校学習指導要領」の中に記述があ る.そこでは,理科の指導計画の作成や各学 年にわたる内容の取り扱いに関する事項で, 「指導に当たっては,博物館や科学学習セン ターなどを積極的に活用するよう配慮するこ と」などと記されている2).そして,理科に 関する各種学術誌の中でも博物館・科学館を 活用・利用する記事がみられる3)∼6).こう した状況の中にあって,著者は2002年春,全 国初の試みとして小学生や中学生などに展示 学習シートを利用して授業での学習を補完・ 再認識させることで知られる仙台市科学館を 視察した.また,2002年夏には,地域の自然 や産業などの特性を活用したことで知られる 富山県立科学センターの視察を行った.これ らの視察経験から,各地に設置されている博 物館・科学館などを理科の教育に有効利用す るための検討が必要と考えるに至った.今 回,その検討をする際に必要な基礎資料を得 る目的で将来教員を志望する本学学生が過去 に博物館・科学館などをどのように利用・体 験したか,またそこにどのような期待を寄せ ているか等のアンケート調査を行ったので, その結果について報告を行う. 調査方法 調査は,平成14年7月に本学教育学部で開 講している「理科教育」の受講生(2・3年 生)を対象に,博物館・科学館の利用・活用 経験や興味・関心,学習効果,また,施設・ 設備への期待等に関する簡易なアンケート調 査を行った.調査項目の設定については, 小・中学校で使用されている教科書7)∼9) 事項を参考に項目を設けた.調査に協力して くれた学生数は163名.性別では男子67名 (41.1%),女子96名(58.9%).出身地は, 北海道・東北10名,茨城・群馬・栃木15名, 埼玉31名,千葉17名,東京31名,神奈川20名,

地域の教育施設を理科教育に活用するための研究

― 本学学生の博物館・科学館などの利用実態とその期待 ―

金 子 博 美

Research on Utilizing Local Educational

Facilities for Science Education

Use and Actual Condition of Museums

and Science Museums for College Students

Hiromi KANEKO

(2)

その他25名,不明14名である.そして,区市 郡 別 で は , 区 部 29 名 (17.8 % ) , 市 部 95 名 (58.3%),郡部22名(13.5%),不明17名 ( 10.4 % ) で あ る . 学 年 は , 2 年 生 99 名 (60.7%),3年生64名(39.3%)である. また,高等学校まで住んでいた区市町村に, 博 物 館 ・ 科 学 館 な ど が あ っ た も の は 70 名 (43.2%),なかったものは92名(56.8%) である. 調査結果 1.博物館・科学館に行ったことがあるか 就学前,小学校低学年,小学校高学年,中 学校,高等学校,大学入学後の各時期それぞ れにおいて博物館・科学館などに行ったこと の有無について集計した結果を,表1並びに 図1に示す. 人数(%) 有 無 無記入 合計 就学前 小学校低学年 小学校高学年 中学校 高等学校 大学 98(60.1) 128(78.5) 141(86.5) 107(65.7) 71(43.6) 59(36.2) 61(37.4) 33(20.3) 22(13.5) 54(33.1) 90(55.2) 101(62.0) 4(2.5) 2(1.2) 0(0) 2(1.2) 2(1.2) 3(1.8) 163(100.0) 163(100.0) 163(100.0) 163(100.0) 163(100.0) 163(100.0) 表1 博物館・科学館へ行ったことがあるか 図1 博物館・科学館へ行ったことがあるか

(3)

行ったことがある割合が最も高かったのは 小学校高学年であり,141名(86.5%),つい で小学校低学年128名(78.5%),中学校107 名(65.7%)などであり,低かったのは大学 に入ってからの59名(36.2%),高等学校71 名(43.6%)である.そして,過去に一度で も博物館・科学館に行ったことがある学生を 集計すると158名(96.9%)となり,一度も 博物館・科学館へ行ったことが無い学生は5 名(3.1%)しかいなかった. 2.博物館・科学館に誰といったか 過去に博物館・科学館に行ったことがある 学生が,そこに誰と行ったかについて複数選 択で回答を求めた結果は表2並びに図2であ る. 人数(%)(複数回答) 家族 幼・保・学校 友達 一人 その他 就学前 小学校低学年 小学校高学年 中学校 高等学校 大学 78(79.6) 75(58.6) 52(36.9) 29(27.1) 18(25.4) 7(11.9) 22(22.4) 69(53.9) 97(68.8) 52(48.6) 31(43.7) 8(13.6) 10(10.2) 11( 8.6) 23(16.3) 31(29.0) 36(50.7) 35(59.3) 1( 1.0) 1( 0.8) 2( 1.4) 11(10.3) 7( 9.9) 9(12.3) 2( 2.0) 1( 0.8) 3( 2.1) 2( 1.9) 4( 5.6) 7(11.9) 表2 博物館・科学館には誰と行ったか 図2 博物館・科学館へは誰と行ったか

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家族と行ったという学生の割合が最も高か ったのは就学前79.6%,ついで小学校低学年 58.6%と続き,学齢が高くなるに従って家族 と行く割合は低くなり,大学では11.9%にす ぎない.また幼稚園・保育園・学校で行った 学生の割合が最も高かったのは小学校高学年 68.8%,小学校低学年53.9%,中学校48.6% と続き,大学では13.6%にすぎない.友達と 行 っ た 割 合 が 最 も 高 か っ た の は , 大 学 で 59.3 % , つ い で 高 等 学 校 50.7 % , 中 学 校 29.0%の順に低くなっている.また,一人で 行ったなどは大学の12.3%が最高であり,そ の他でも大学の11.9%が最高である. 3.興味・関心をもった事柄 (1)就学前から大学入学後の間で,一度で も博物館・科学館に行ったことがあると回答 した学生が,そこでどのような事柄に興味・ 関心を持ったか,について小・中学校で使用 している理科の教科書7)∼9)に出現している 事柄を掲げて,それに対して複数選択の回答 を求め,その結果を表3に示した. 人数(%)(複数回答) (1) (2) 恐竜 動物・植物の化石 動物の世界 植物の世界 天体 水や空気 気象 大地の変化と地球 歴史 石器・土器 遺伝 人体 化学分野 物理分野 コンピュータ 実験・体験コーナー その他 100( 63.3) 61( 38.6) 51( 32.3) 26( 16.5) 108( 68.4) 29( 18.4) 31( 19.6) 29( 18.4) 48( 30.3) 47( 29.7) 39( 24.7) 45( 28.5) 29( 18.4) 21( 13.3) 18( 11.4) ― 10( 6.3) 59( 36.2) 42( 25.8) 37( 22.7) 31( 19.0) 78( 47.9) 31( 19.0) 36( 22.1) 34( 20.9) 33( 20.3) 23( 14.1) 35( 21.5) 42( 25.8) 27( 16.6) 24( 14.7) 47( 28.8) 94( 57.7) 5( 3.1) 母数 158(100.0) 163(100.0) (1)博物館・科学館に行ったことがある学生で興味・関心のあったもの (2)全体の学生が博物館・科学館に、期待するものや充実してほしいもの 表3 博物館・科学館の興味・関心事項と充実希望事項

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興味・関心が回答者の30%を超えた事柄 としては,天体108名(68.4%),恐竜100 名 ( 63.3 % ) , 動 物 ・ 植 物 の 化 石 61 名 (38.6%),動物の世界51名(32.3%),歴史 48名(30.3%)などであり,逆に,興味・関 心 が 低 かっ た も のと し ては, そ の 他10 名 (6.3%),コンピュータ18名(11.4%),物 理 分 野 21名 ( 13.3% ), 植 物 の 世 界 26名 (16.5%),大地の変化と地球29名(18.4%), 気象31名(19.6%)などであった. (2)博物館・科学館で催されている実験・ 工作教室などに参加したことがあるか否かに ついて集計したところ,あると回答した学生 は21名(13.6%),ないは134名(86.5%) であった.そして,あると回答した学生18名 (85.7%)がどのようなものに参加したかの 記入を求めたところ,19事項の記述があっ た.その一覧を表4として示す.小学校低学 年から高等学校で学習する事項まで幅広い記 述がみられる. (3)博物館・科学館などに行って理科に興 味をもったか,について集計したところ,も ったという回答は133名(85.3%),もたない という回答は23名(14.7%)であった. (4)博物館・科学館に行って授業に役だっ たか,について集計したところ,役だったと いう回答は102名(66.2%),役だたなかった という回答は52名(33.8%)であった. 4.博物館・科学館と授業効果 (1)博物館・科学館に行くことによって子 供たちは理科に興味をもつことができると思 うか,について集計したところ,もつと思う という回答は157名(96.9%),もたないと思 うは5名(3.1%)であった. (2)子供が博物館・科学館などを利用する ことは授業の理解に役だつと思うか,につい て集計したところ,役だつと思うという回答 は150名(92.0%),役だたないと思うは13名 (8.0%)である. 5.博物館・科学館に対する期待 博物館・科学館で充実して欲しい事柄につ いて,回答者全体に表3(1)と同様に複数選 択で回答を求め,その結果を表3(2)に示し た. 充実して欲しい事柄として30%以上の回 答があったものは,実験・体験コーナーが94 名(57.7%),天体78名(47.9%),恐竜59名 (36.2%)であるが,反対に,低かった事柄 としては,その他5名(3.1%),土器・石器 23名(14.1%),物理分野24名(14.7%),化 学分野27名(16.6%),植物の世界と水や空 気がともに31名(19.0%)であった.そし て,実験・体験コーナーで望む内容の記述は そのうち63名(67.0%)もあった.その記述 ・上野で物理系の実験 ・雨の降る仕組み ・形状記憶合金の針金 ・上野の科学博物館の体験コ−ナ ・染め物 ・浮沈子の実験 ・やせて見える鏡 ・押し花、葉脈作り ・竹とんぼの工作 ・化学の実験 ・顕微鏡を作ってみよう ・スライム作り ・金属でキ−ホルダ−作り ・ドライアイスの実験 ・三葉虫のレプリカつくり ・電球の回路を作って点灯 ・真空鈴 葉脈 ・乾電池をつくった ・大きなシャボン玉作り 表4 実験教室や工作教室に参加した時の 内容

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内容は,身近なものを用いたものから,遺 伝,人体,天体・宇宙など,物理,化学,生 物,地学,環境分野まで幅広く,また高度な 事柄までがあげられていた. 6.博物館・科学館への興味・関心 博物館・科学館に興味・関心があるかにつ いて集計したところ,あるという学生は139 名 ( 85.8 % ) , な い と い う 学 生 は 23 名 (14.2%)である.そして,今後博物館・科 学館に行こうと思うか,について集計したと ころ,行こうと思う146名(89.6%),思わな い17名(10.4%)である.さらに,興味・関 心の有無と今後博物館・科学館に行こうと思 うか否かをクロス集計したところ,表5のよ うな結果である. 興味・関心があった学生で今後行きたいと 思っている学生は138名(99.3%),興味・関 心がない学生でも今後博物館・科学館に行き たいと思っている学生が7名(30.4%)あっ た. 考察 1.現在,埼玉県内には博物館・科学館など の協力機関は41カ所10),その中に本学がある 越谷市内には,科学技術体験センターミラク ル・児童館コスモス・児童館ヒマワリ11) があるように,全国各自治体でも博物館・科 学館の整備はかなり進んでいるように思われ る.しかし,中井の報告1)にみられるよう に全国6000ヵ所以上という数字は,文部科学 省の教育施策遂行には各自治体の都合もあっ てか全国的には十分整備されていないよう で,高校まで住んでいた区市町村に博物館・ 科学館があったところは43.2%にすぎなかっ た.こうした実情にもかかわらず,本調査対 象者の博物館・科学館に行った経験をもつと いう学生が96.9%にも及んでいたことは,児 童・生徒等に限らず如何に国民全体が博物 館・科学館に興味・関心をもち,また,期待 を寄せているかが窺われる.それは,就学前 の 段 階 で 家 族 と 行 っ た こ と が あ る 学 生 が 79.6%,小学校低学年で58.6%にも及び,ま た,大学では友達といった学生が59.3%,高 等学校でも50.7%に及んでいたという結果か らも窺うことができる.しかし,平成14年4 月からの「学習指導要領」2)が実施される以 前の本調査回答者のせいか,博物館・科学館 などに学校などで行ったという学生は小学校 高 学 年 で は 最 も 高 く 68.8 % , 中 学 校 で は 48.6%,高等学校では43.7%しかなかった. このことは各自治体の何らかの事情での施設 の未整備や,進路関連指導等に負担が掛かっ ている教育現場の実情などが反映された結果 と思われる.そして,博物館・科学館に行っ て理科に興味をもったという回答が85.3%も いたにもかかわらず,それが授業に役立った と回答した学生が66.2%しかいない.こうし たことから,平成14年4月から実施された 「学習指導要領」2)を推し進めるためには博 物館・科学館のさらなる整備が望まれる.そ れと同時に,博物館・科学館を十分利用・反 映させる教育方法や学習内容を,置かれた各 教育現場の実情を勘案しつつ検討していく必 人数(%) 行きたいと思う 行きたいと思わない 合計 興味関心ある 興味感心ない どちらでもない 138( 99.3) 7( 30.4) 1(100.0) 1( 0.7) 16(69.6) 0( 0 ) 139(100.0) 23(100.0) 1(100.0) 合計 146( 89.6) 17(10.4) 163(100.0) 表5 博物館・科学館に興味関心があるかと今後行きたいかのクロス

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要があろう. 2.博物館・科学館に行った経験をもつ学生 が興味・関心を示した事柄には天体や恐竜に 60%以上の学生が,また,動物・植物の化 石,動物の世界,歴史などは30%台の学生が それぞれ興味・関心をもっていた.そして, こうした傾向は博物館・科学館の充実して欲 しい事柄にも連動しており,天体は47.9%, 恐竜でも36.2%の学生が充実を望んでいた. しかし,博物館・科学館に行ったことがある 学生で,実験・工作教室に参加したことのあ るものは僅か13.6%にすぎなかった.このこ とは博物館・科学館の実験・体験するコーナ ーが回答者が博物館・科学館に行った時期に おいては十分充実していなかったのではなか ろうか.さらに,博物館・科学館で充実して 欲しい事柄に実験・体験コーナーを望んでい た学生が全体の57.7%もおり,その事柄は身 近なことから,理科の各分野や環境に至る高 度な事柄まで幅広くあげている.こうした, 回答者の期待は,著者が,視察した仙台市科 学館や富山科学文化センター,それに越谷市 内の3カ所の科学館などでは体験・実験コー ナーが設けられていたなど,今後ますます実 験・体験コーナーが充実されてゆく傾向にあ ると思われる.そして,回答者の博物館・科 学館に対する興味・関心がますます高まって いるようで,今後も行きたいと回答している 学生が99.3%にものぼっていた.それがこれ を物語ったものと思われる. 3.博物館・科学館の利用が授業の理解に有 効と思うという回答が92%,また,理科に興 味をもつことができると思うという学生が 96.9%であった.こうした結果は,博物館・ 科学館を教育・授業計画に取り入れる意味の 大きさを示したものと思われる. 今回のこうした調査結果は,これからの博 物館・科学館のあり方を検討するための基礎 資料となると思われると同時に,本調査対象 者が将来,児童・生徒を指導する際の計画立 案等にも役立つものと思われる. なお,本研究は,平成13年度本学学長調整 金(大橋ゆか子(代表),平沢茂,著者)によ る研究「理科教育普及活動の大学生と地域の 連携システムの研究」の一環として行った. まとめ 1.教員志望学生の博物館・科学館の利用実 態とその期待などを知る目的で調査を行っ た. 2.博物館・科学館に行った経験のある学生 は96.9%であった. 3.博物館・科学館には就学前や小学校低学 年では家族と行った学生が多く,大学や高等 学校では友人と行った学生が多かった. 4.博物館・科学館で興味・関心をもった事 柄は天体や恐竜が多く,回答者の60%以上の 学生があげており,また,実験・工作教室な どに参加したことのある学生は13.6%しかな かった. 5.博物館・科学館に充実して欲しい事柄は 実験・体験コーナー57.7%,天体47.9%,恐 竜36.2%などであった.そして,実験・体験 コーナーの充実して欲しい内容は,幅広く高 度な事柄に至るまでの記述がみられた. 6.博物館・科学館に興味.関心をもち,今 後も行きたいと思っている学生は99.3%に及 んでいた. 7.博物館・科学館の利用が授業の理解に有 効という回答が92%,また,理科に興味をも つことができると思うものが96.9%であっ た. 文献 1)中井正弘:ネットワークフォーラムイン 京都「博物館のネットワーク」(1999) 2)文部省告示「小学校学習指導要領」P60 (1999) 3)岩崎誠司:学校の理科教育と連携するた めの科学系博物館の取り組み,初等理科

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教育第36巻第11号14(2002) 4)森田和良:未来館ジュニア・インタープ リター,初等理科教育第36巻第11号22 (2002) 5)田村高広:子どもから見た博物館,初等 理科教育第36巻第8号46(2002) 6)高橋昭善:科学館などを活用した理科授 業,理科の教育通巻601号24(2002) 7)東京書籍:新しい科学1上下,2上下 (1997) 8)東京書籍:新しい理科3∼6年(2000) 9)学校図書:小学校理科3∼6年(2000) 10)平成14年度彩の国サイエンスキッズ,埼 玉県科学館ネットワーク研究会(2002) 11)こしがや児童館ニュース(2002)

参照

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