フランシス・プーランクのピアノ音楽(II) : ピアノ教材論(VI-b)
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第48巻 第1号 , i fEduca i Sec i l JournalofHokkaido Univers t t t on( on1C)vo yo .48 .1 ,No. 平成 9年8月 A爆撃 t s l ,1997. フラ ンシス ・ プー ラ ンク の ピ ア ノ 音楽 (江) ピアノ教 材論 (W-b) 大. 塚. 夏. 生. L’oevres pour le piano de Francis POULENC. (虹). ’ -【surle materiaux pourl -b ion de piano 班- educat. 〔D〕 中期のピアノ作品. イ タリ ア留 学 後 の プー ラ ンク が以 前 の 「プロム ナー ド」 ( ) の 激 しい 凝縮 と 実 験 か ら はな れ 「ナ ポ リ」 1921 以 後の 平易 な作 風 にも どっ た の は前期 の と おり であ る が こ の傾 向 は30才代 に入 っ て か らもつ づ く その 作 , 。. 品のほとんどが遊悦的, 拡散的であり, ごくわずかの曲を除く大概のものが楽天的に演奏効果を案出したも の とな っ て いる こ と は否 め な い。 ピ アノ 曲 は1932年 に3 曲 翌 年 に2 曲 34年 に5 曲 35~ 8年 には毎年1 , , , 曲 ずつ かか れ, 合計14曲 にの ぼっ ている。40才代 に は 「15の即 興 曲」 50才代 に は 「テ ー マ と ヴァ リ エ 各々 」 , 「 1 曲の み が発 表さ れている。 しか し 15の即 興 曲」 は30才代 の初 め 頃か ら40才代 初期 にか けて かきつ づ けら. れたものなのである。 これらには第1次欧州大戦后の不安定感が全くなく また隣国ドイ ツにお けるナチ拾 , 頭の恐怖感, そして第2次大戦の緊張などの反映は全くみうけられない。 ここにはもっ ぱら小市民的娯楽の ひ びき が存 在 する の みであ る。 か っ て 「プロム ー ド」 でみせ たよう な 暗輪 me橡phor i e や 皮 肉i ron e は概 ね影. をひそめ, そのほとんどが日常の愉しい情景を映している。 猶 これら独奏曲のほかに第2次大戦后 に発表 , さ れた 「テー マ と ヴ ァ リ エ」 「2 台の ピ アノ の ため の ソナタ」 は後期 の作 品 に属 する も の と いえる のである 。 1932年 の Capr i jeur に は 仮 面舞 踏 会の フィ ナ ー レl ce en ut ma l IMa aFi na eduBa sque にか かわる も の と し. て という 副 題 がつ い て いる。 冒頭 の指 示 語 Fr i ene t que は熱 烈 に という も の であ り, そ の 華麗 さ とた の しさ,. そして語法の多様さの点 において 「ナポリ」 の終曲に似ているが 規模は頂度百小節みじかい 運指が比較 , 。 的簡易 で譜面も希薄であるが, 終始活発さが一貫 している。 曲想には乾いたものが求められ ペダルを必要 , とする箇所はきわめてすくない。 不協和の組成には格別新しいものがなく 音形もごくありふれたものが多 , い が, T. 143以 降最 後 ( 234 ) ま で には バ ル トー ク の 影響 が濃 い。 こ の直前 のD 楽 段 (T 124~142 ) のみ . が piul ent o であ り, タ ン ゴ のリ ズ ム, 弱 奏 と な り, 例 外 的 にゆ っ く り と した 気 分 を き か せ てい る。 同年 作 の 間 奏 曲lnt ermede en re mi neur もま た前 曲と似 て 開放 的, 楽 天 的 であ る が, リ ズ ム が 余り にも 単調 す ぎる。. 躍動的であり, 不協和音の組成と配置が前曲よりもよく整理されており バルトーク ストラヴィンキイの , , 影響もみられるが, リ ズム において遥かに単純なため 心理的刺戟は鋭くない 近代バレエ音楽を想起させ , 。 る性格の素材およ びそ の並列という 書法には対比的 緊張がなく 提示と展 開の ドラマもなく 寸劇的 , , バ レエ と 場 を共 有 する べ き感 がつ よ い の てある や は り 同年作 の 「BACH の名 によ る 即 興 的 ワ ルツ V l 。 ‐ e 」 as lmprovisat ion surl e nom deBACH は 変 ロ. , イ, ハ, ロ の 4 音 を主 音 列 と した テ ー マ にも と ず い て いる。 3. / 8 拍 子, ア レ グ ロ ・ ヴ ィ ヴ ァ ー チ ェ の 快 適 な ワ ル ツ で あ り commencerun euan dessousdu mou m t p ve en , 349.
(3) . 大 塚. 夏. 生. i n と記 さ れて いる よう に始 ま っ て か ら最 後 に至る ま で ほ んの 少 し af usqぜal s presser progressivementj pui ずつ テ ム ポをあ げて ゆく よう な演 奏 が要 求さ れる 曲である。ウラ ディ ミ ル・ ホ ロ ヴィ ッ ツ に献呈 さ れて いる。. 全部で16 6小節の中品であり, 明るく平穏にす ぎてゆくなかに種々の素材による多様化の工夫がなされてい る。 先 ず 第 1 に 曲 名 に 示 さ れて い る B - A ー C - H の 4 音 が主 要 素 材 と な っ て お り, そ れ はT‐ 1 ~ 8 の I AI.C . HI~ bl. al. blalc2hl(2 回), T‐ 9 ~11のblal c- h .T‐151~ 2 の左 右4 音 平 行 のB . 2 3 2 ち H- C- A -B 素材 がT. 83~ 9の 右手 オク タ ー ヴh . c .a . c2.hl , T. 78~ 9, その逆行, 即 b2及 びT. 164の h3. c4. a3. b3と して 現 れる。 前 者 の 音 程 関係 は 短 2 ↓-短3↑- 短2 ↓, 後者のそ れは短2 ↑ - 短3 ↓ - 短2 ↑であり これらの変形も少なくない。 例え ば短2 ↓ -長 2↑ ー 短2 いまT. 17. ,. ~ 8, 69~71, 75~ 7 et c‐, 短 2 ↑ー 長2↓- 短 2 ↑と反進行形もまた随所に用いられている。. 更に音価の. t c 多 様 な ク ロ マ ティ ッ ク 素材 が右11~ 2, 57~60 .多 数用 い ら れ, その 他 主 要 , 58~60e , 79~82 , 左33~40. 素材の変形として短2 ↓ - 長2 ↑ - 短2 ↓ が T‐. 65~ 7, 68~70, 75~ 8 et c., 長 3 ↑ - 短2 ↑-短3↑の. 音程関係素材等々多種多様な素材が幾度かにわたって現れているが, それらは皆相似している (変形) ため に 散 漫 な か ん じを与 える こ と がな い。 そ の ほ か フラ ン ツ ・リ ス トが か っ て用 い た 交 互 性 2 度 音 階 がT. 152. ~8等々に用いられ, また左右減5 (増4) 度の平行がT‐ 95~8に現れるな ど, 突発的使用の感をもつ素 材も存在する。拍子とリ ズムは標準型に徹し, 装飾的かつ華やいだパッセージはない。和声法においてはT. 1 ~8, 17~24な どに ソ プラノ と バ ス の2 度 平行, 付 加 音和 絃, ク ロマ ティ シ ズ ム, そ の他不 協 音程 の 規則. 的使用, 局部的協和音使用および調的浮遊e t c ‐も目立つが, 各フ レー ズには幹線があって大変わかりやすい ということ等, あらゆる点からみてこの作品は将にプーランクならではのものであるが, 決して古典的形式 にも と ずい た も ので はな い。. 19 33年にはピアノ組曲が2曲かかれており, 両者共大変ナイ ーヴな小曲の集合である。 第1曲はジァン・ i l l s es であ o ジ ロ ー ド ゥ ー と ル イ ・ ジ ュ ヴ ェJean Gi tに献呈 さ れ た 「村 人 たち」 Vi age sj ouve raudousetLoui inespourpiano と い う 副 題 が つ い て i eces Enfant t る。 こ の 曲 に は 「ピ ア ノ の た め の 易 し い 小 曲 集」 Pet es Pi. i l l eTyr o enne は古 典 派 的三部 形式 の 典 お り, 6 つ の小 曲 か らな っ て いる。 第 1 曲 「ティ ロ ルの ワ ルツ」 Va s ) による 二 長調 の 曲 であ り, B 楽段 はa音 の 保続 上 に属 調 でも っ て16 )A( 33~48 )B( 17~32 型 A (1~16 l 1 小 節 の 中 間部 をく り ひろ げる が, T. 31~ 2 の み は a . h ・ d . b という 和 絃 で も っ て 区切 ら れる。 こ の. i (陽気に) という指示通りの明快かつ素朴な, 基本的作 和絃以外は全てが平易な和音のみであり曲頭のGa ) 17~24 )B( t 法 によ っ た 曲で ある。 第 ロ 曲 「ス タ ッ カ ー ト」 St a c ca o もま た古 典 的形式 をもち, A (1~16. ) の典型的三部形式, 音域がせまく, ソ プラノ旋律その他 はもっ ぱら副次素材 41~45 2 )c A( 5~40 oda ( という ナイ ー ヴな も の である。題名 通 り のス タ ッ カ ー トを両 手 によ っ て連 続 させ,B 楽節 の み を単 旋律 レガー. ト書法によってかいている。 2/4拍子の単純なリ ズム, 躍動的楽想をもつ僅か45小節の小品である が, 曲 t ressec と あ り, テ ム ポ は」 =126であ る が, 作 者 はき び 頭には 「急 が ず に」 pasvi e 及 び 「大 変 激 しく一 t しいも の をイメ ー ジ している。 ソ プラノ には数多 く の 半音 関係 が充満 して おり, 更 にT‐ 10~15に は内声部. にもそれが異なる規模でもって付加されている。 そのため前曲とは異っ て和声進行が単純ではなく, 調性も 2小節毎に変る という浮遊性を伴っている。 中間部はイ長調→変ホ長調のレガートを有っ単旋律による増4 度転調という対照的フレー ズである。 c odaの右手はA楽段の各小楽節の第2小節の部分動機と同音価のも の である。 和 声 進 行 を T.39からみ てゆく と g : Vザー 略 - w7一 m9-w7- 工 となり, ピカ ル デイ 終止 を採 っ f fで 結 ばれる。 て いる。 T. 37以 降 は フォ ルテ とな り, コー ダで は フォ ルティ シモ, 最 後 はf を と お して i 第 m 曲 「田 舎 風 の」 Rus t gue は わ ず か20小 節 の み か らな る, 4/ 4拍 子 の 舞 曲 であ る。 全体 fetg )A( 4 ) i (速く, そして陽気に) で始まり, 冒頭素 2 )A′( 6 8 )Ps 強 奏 は なく, 構成 はA( a 。 変 ロ 長調 Vi .(. 材の変容手法でもっ て一貫しているが, 曲頭の指示語にもかかわらず旋律と伴奏は一様に地味である。 跳躍 350.
(4) . フランシス・ プーランクの ピアノ音楽 (ロ). が少く, ほぼ同一音域のみを上下し, 音長と動機素材の音形が変化に乏しいため極めて素朴であり, 音量の 指示が弱奏(P)に終始しているため,どこか遠くからきこえてくる田舎風ファンタジィの情調をかもしだす。 冒頭 4 小 節 T‐ 1 ~ 4 と 末尾 4 小 節 T‐ 17~20は 主調 であ る が, そ の 他 の フ レー ズ は Aa :- Es : - H: - D :-B : という 中 間部 から な っ ている。 上声 部 と低 声部 は ナイ ー ヴである が, 中声部 は下 降的半 音 階書. 法を主体としており, 全声部を指示どおりの弱奏で徹す場合, ここに単純さと複雑さの混合した曲想がうま れる の であ る。 T. 15~ 6 は右 手 がd:1 を 固執 する の に対 して, 左 手 は主調 のW, Wo , V7によ っ てす す め ら れて いる。 こ のよう に して徐々 に最 後の 変ロ 長調 へ と復 蹄 して ゆく が, この フ レー ズ の右 手 はま たB : 1 ともう けとる こ と ができる。い ず れにせ よ 伝統 的和 声 法 と は異 っ たも の とい え る の であ る。第W 曲「ポ ルカ」 Pa l ka はき わ め て 無 邪 気 な踊 り の 曲 であ る。 変 ホ 長調 の トニ カ で始 まる が最 後 は半 終止 形で お わ っ ている。 構成 は ABACoda (8+ 8 十6 + 6), 曲頭 には 「落着 い て一 Sansha t e とあ り, 舞 曲の節 度 が要 求さ れる。. 組成は単純であり, AとCodaの低音が主音と属音のみからなり, 右手も単純きわまるD月月ヲ 1月 71 の 素 材 に 基 い て いる。 全 体 を とお して ペ ダルな しの 指 示 があ り, A と 結尾 にf tressec , B 楽 節 に は対 称 的 な l 2 2 結 尾 の 右 手 T‐ 23~ 6 の 各 第 1 拍 に は as s, b の 5 度 堆 積 も み ら れ, 素 朴 さ , e が最 後ま で み ら れる。こ れ らは変 ホ長 調 の主 要 な3つ の 音 であ っ て,曲頭 か らこ れらの 三 つ の 音 が中軸 とな っ. tresl i e の 指 示 が ある。. て き たの である。 第 V 曲 「小 さ な ロ ン ド」 Pe i t t eRonde も ま た 全22小 節, A A′A ″ (7 + 8 + 7) と いう 小 規 模 なも の で あ る。 組成 は 極 め て 素朴 な モノ フオ ニイ であ り, 特 に 冒 頭 の7 小 節 は 右 手 の み による 単 旋 律 M. D. seu l e. の譜面である。 つ づくA′楽節 (T. 8~1 ) は左手の属音保続の上に右手の単旋律 (Aの変奏) という単 5 純 なも の であ り, A ″ (T‐ 16~22 ) は左 右 エ オク ター ヴ平 行 の み か らな っ て いる。 性 格 は 挽歌ま た は農民 歌 に近 い も の と 考 え ら れ, 曲 頭 に は非 常 に元 気 よく, リ ズ ミ カ ル に As hme の 指 示 語, sezanime‐trもsryt. 及. び奏法 につ い て は sanspedale, A ″ に は clair とあ り, 終始 明 快 さ が要 求 さ れる。 動 機 素 材 の 性 格 は ほ と ん どが下降的であり, なだらかな音程関係と単純な組織, ニ長調の明るいひびき イ音に始まりイ音に結 ばれ , る各動機, 使用音程差の狭さ, 変化音及び音価の種類の僅少, そして最後のフリギア終止的音程関係が特徴 と な っ ている。 前 曲 とお な じく ドミ ナ ンテ で 終 っ て いる が こ のロ ン ドの 場 合 はつ づ く 終曲 が同 じ調 性 であ , ため はり る 次 の ニ 音 へ の準 備 の 約 割 り をも 担 っ て いる の であ る。 第 W 曲 は Coda と名 付 け ら れ 第 1 曲 にや , と同 じく 二 長調 の ワ ル ツ テー マA 楽段 お よ びB 楽段 の 途 中 即 ち T 1~26は両 曲 が全く 同 一 である T , ‐ , 。 .. 27~3 4は経過句 で外相は単純, ソプラノとバスが付点2分音符のみでかかれ, 和声はひとつ前のD:Vから C 二 V2- Es : V2- 16- D : V2- V6一 切7- V7と 進 み C 楽 段 の D : 1 に 入 る。 こ の 楽 段 は 第 3 曲 Stac ‐ , t ca o 変ホ 長 調 の 変 奏 形をと っ て おり, ニ長調 によ っ ている。 即 ち こ の 楽段 T. 35~46は 第m 曲の T. 1~12. と同一リ ズム, 近似した旋律と和声 (半音低い調性) という ほぼ相似形なのである。 D楽段はまた第3曲 , Rus ique の 変 奏 形 と も い え る。 即 ち T‐ 47~54は 第 3 曲の T. 1 ~ 8 の ヴ ァ リ エー シ ョ ン であ り 調 性 は t ,. 第三曲が変ロ長調であるのに対して後者は二長調, 詰り長3度たかくなっ ているが 形相については特記す , べ き 変 化 がみ ら れな い。 総 じて 形 式 はA (1 ~16 ) B ( 17~26 ) Ps ( 27~34 ) C ( 35~46 ) D ( 47~54 ). 5 5~8) であり, 終曲において前出の幾つかの素材を明確な形相 によっ て再起させる構成法は古典 c oda ( 派 にも み ら れる も の であ り, 総 括 書法 の ひとつ と いえる の であ る。 この 曲 と 同年 に作 曲 さ れた 「ア ル バム の綴 り」rFeu i l l t in e s dA1bum は イ ヴ ォ ン ヌ ・ マ ル タ ンlvonne Mart に 献呈 さ れ た。 第 1 曲. アリ エ ッ タ Ar i t t e e , 第= 曲. 夢 Reve , 第m曲. ジー グ Gi gue の3 曲からなる小規. 模な組曲である。 ささやかな組曲という点においては前曲と似ているが, 各曲の音組成や素材組織について みればここにはかなりの相違がみられる。 即ち前者は終始一貫ナイーヴな書体に徹しているが 後者は伝統 , 的な部 分 が若干 あ っ て 更 に自 由な 構造へ と進展 して いる。 アリ エ ッ タ の 形 式 は A (1~ 9) B ( 10~15 ) B 351.
(5) . 大. 塚. 夏 生. ′( ) ps ( 23 ) coda ( 24~26 ) という 単 純な も の であり, A 楽段 は珍 しくカノ ンの書 体 によ っ て いる。 16~22 こ こ に は二 つ の フ レー ズ a (1 ~5) a′ (6 ~ 9) がみ ら れ, 拍 子 は 3/ 4, 5/ 4, 3/ 4, 5/ 4,. 4/4, 2/4というように目まぐるしく 変化する。 両フレー ズ共に頭の2小節のみが8度 (2声, 8度, 2拍おくれ) カノンであり, ト長調から出発して他調の和音へと進む。 これは伝統的な意味における転調で はな い が, T‐ 7 ~9 は G: 1 か ら Ge s : W7に至る ま で変化 音 を た どる 急 激な 進行 によ っ てA 楽段 を結 び,. 次のg:1に移行する。A楽段はト長調De i d e(きっ ぱりと)の曲想指示語の通り明快に始まるが, 両フレー c ズ共結びは変化和音の連結によって単純なら ざる音色配合が生じている。 即ち前半を単純な二声カノン, 後 半を不協和音の連続, しかも後半はテムポをゆるめるc ed e zを伴ひ, 前半の快活な流れが打ち消され複雑に して重いものとなる。 B楽段は上声部による単純な2声対位法, 4/4拍子のみによっており, 調性はト短 ) 経 路を た どっ ている。 B′楽段 は T‐ 16~19がソ プラノ 主 導の ホ 10~13 調 ~ ヘ 短調 という 転調 ( , 13~16 モ フォ ニイ 書 法 によ っ て お り, 調 性 は ト長 調 に も どる が, T‐ 18の み は 経 過 和 音 (BS : V7ー As : V7ー r ) が用 い ら れ, 再 び ト長調 にも どる。 こ の 楽 段 の 後 半 は テノ ー ル 声 部 の み がメ ロ ディ ー をう Des : V7~ W. けもち, バスはg音保続, ソ プラノ とアルトは共に下降的半音階法による伴奏に徹している。 続く経過句は 左 右 の増 8度 平 行ス タ ッ カ ー トに は じま り, T. 23に入る と左右 はオク ター ヴ・ユ ニ ゾン に よる 長 9 度跳躍 l と共に下降的全音々階法をとっている。 B′楽 段 がtresa l t元 気 よく ひ か れる の に対 して, こ の パ ッ セー an ) ため に一 種独特 のニ ュア ンス が ジはペ ダル な しのス タ ッ カ ー トの みで, す ぐに軽 や か になる ( eg er s e cetl 生 ずる。 coda は 冒 頭 素 材 による 9度カノンを用い, 主題呈示の直後に五度堆積和絃を用いる点においても. この最終小節はT‐ 8 (A楽段) と同類である。 底抜けにあかるい第1・D I曲にはさまれた第=曲 「夢」 Reveは弾むような性格をもちつつも, 和声のひ ) A′ ( 13 2/8拍子, 二部形式A (1 ~12 びきにおいて決して単純と言えないような流れをもっている。1. )という均斉のとれた無言歌風のスタイルであり,ブッサン女史に献呈されa Madame A.Bessan て い る。 ~2 4 両楽段の冒頭のみがあたかも小鳥のさえずりのようなフルート的音形をもつが, 次の小節からはやや大まか な音長, 短2度進行の多い地味なメロディーに替る。 バス声部には時たま旋律的なう ごきも現れるが, 概し てソ プラノと同じ音長で, 同時的に進行している。 中声部は臼手 型の連続であるが, 和声進行の中軸をなす 重要な約割りをになっており, また曲想の安定感に寄与している。 主旋律をみるとT. 1~20の間で小節の 最終音と次の小節の第1音が半音関係にあるのが18例あり, 即ちほとんどが短2度進行といえるのである。 そのほか音長形態も各小節がきわめて近似しており, 構造そのものが地味で堅実といえるのである。 A, A′の両楽段に顕著な相違はないが, 音高配分には差があり, ダイナミックス と曲想の指示に若干のちがい 1 l 2 であ り T 1 ~ 2 の 移行 部 がf i が み ら れる。 A の 冒 頭 は e2であ る が, A′の そ れ は半 音 下 の es s -g で .. がf - f i あ る の に た い して T. 13~ 4 の そ れ は al - bl s , , こ の よう にみ て く る とA 楽 段 に続 く 同 じ関 係 ′ i d - di i i i s - d, A 楽 段 の 場 合 は as - a, b - a, s-f s s l s s - h, e s s-c , di , h - C, a - a , a , hi. a-a i i s 一 g, e - f 等々 で あ り, 両 楽 段 の コ ン トラス トが ピ ッ チ に よ っ て 形成 さ れ て いる こ と が わ s , f かる。 第皿曲. ジー グ Gi gue はバロ ッ ク 組曲 にも 似 て最 終楽章 という 位置 にあ り, き わ め て活 発 に 終始する。 全. 体 にス タ ッ カ ー トが多用 さ れ, いき い き とは ず むよう な, ま た は乾 い た か ん じt esse r c の箇 処 が多く, テ ム. ) ポもプレス ティスィ モで一貫し, その間ペダルの使用 が要求される部分は稀である。 形式はA (1~18 , ′ )c ), A (a, b, c, Ps B ( 19~51 52~54 oda ( , a) は4 十 4 +4 + 2+ 4 の小 節 配分, B (d, d , ) は4 十 7, 4 十7, 4 + 7 という 均 等 な 配 分 によ っ て いる。 性 格上 B 楽 段 はA 楽段 の展 開部 であ る こ d″. と が わ かり, A が18小 節, B と coda を合はせて3 6小節, 即ち後者は前者の頂度2倍の長さ となっている。. 両楽段共に均斉がとれており, かつ冒頭素材とその展開という, 一貫性書法をとっているが, より細かくみ 352.
(6) . フランシス・プーランクの ピアノ音楽 (の. ればb素材がdとd′の 各々 頭 の処 で展 開 しつ つ, a 素 材 の 展 開 に連 な っ て ゆ く。 d ″ は a の展 開の み に徹 してお り, ここ で は4和 音 の 連用 が目 立 っ て いる。 変ロ 長調 の 曲で はある が, d フ レー ズ におい て はシ ャ ー. プ系に転調し, 伸びやかで緊張にみちた展開をな し, d ″ フ レー ズ で は フ ラ ッ ト系 に転 じて 4和 音の連 結 を なしつつ大胆に変化するが, ここでは左手が同一動機を13回反復しつつ結尾部にむかっ ている。 曲想指示語 をみると開始部にleger,. inc i i fetsanspeda l s e (軽 く, 鋭 く, ペ ダ ル な し で) t ressec (極 め て乾燥感をも っ. て) と あ る が, 中 間部 に は sansralentir ma i f (ゆ っ く と な ら ず, しか し表 情 ゆ た か に) と いう 指 ・ sexpre s 示 が一 回 だ けで てく る。 d ′ フ レー ズ で はも と の 曲想 にも どり, 最 後ま でつ づ け ら れる。 最 後ま でテム ポ を お と さ な い よう に sansra l i l I ent r と 指 示 さ れ て お り, 軽 快 さ と 明る さ が 要 求 さ れ て いる の で あ る。 Marce Meyer に 献呈 さ れた。 1934年 の 作 品5 曲. 以上の二作品 「村人たち」 「アルバム の綴り」 は1933年の作品であるが, 前者の素朴な田園的風景に対し て後者はロマンチックな感情と古典的対位法および浪漫派から近代への和声進行と色彩, そして伝統的形式 意識 がは っ きり とあ ら わ れて いる。 さ て, そ の 翌年1934年 に は五 曲 が発 表さ れた。 1‐ 譜講 2 ユ モ レス ‐ ク 3‐ 間奏 曲第 1 番 4‐ 同第ロ 番 5. プレス トであ り こ れ らもま た各々 小 曲 と い え る 規模 のもの で , あ る が, そ れ ぞ れ に個 性 が は っ きり して いる の であ る。 第 1 曲 譜 諺 Bad i nage と 第 n 曲 Humor esque は お. なじような意味をもつが, 曲名に前者が用 いられる例は決して多くはなく, スケルツォ Scherzo と よ ば れ る 例 の ほう が圧倒 的 に多 い の で ある。 ク リス ティ ア ン に献呈 さ れた こ の 曲の 冒頭 に は レイ モ ン・ ラ ディ ゲの詩 の. 節 が記 さ れ ている < グラス の な かの オ レン ジエ ー ドが温かく な っ て ゆく/ あ る 8月の晩に/ただそれだ. ) テ ー マ は 極め て ナイ ー ヴな歌 謡 性 け のこ と >1 にみち てお り, 伴 奏 も単 純 そ の も の である が, 呈示 後 はT‐ 。. 10から転調および展 開的労作が現れ, T‐17からは第2素材とそれによる動機の変容をくり返す。T.10~37 は主 と して フラ ッ ト系 の調 性 を た どっ て展 開 し T 38以 降 にシ ャ ー プ系 に転 じ 主調 (G:) にも どっ て , ‐ ,. 終結する。 曲想は柔和に終始し, 第1素材の部分動機に由来した第2素材もまた気品に満ちている 全体と 。 してあくまでも機智 に走ることなく, 素朴な歌から次第に内観的 ブラームス的な想念へと深まり 最終段 , , 階 に至 っ て 評 議 の神 秘 空 間 に 漸 次 き え て c i ederape ne ゆく。 こ の 曲 の 場 合 「バ ディ ナー ジ ュ」 と いう 言 葉. の本来の意味と楽想とは直接のかかわりをもたず, むしろささやかで控え目な書法によって表わす心象のひ びきとしての地味な音楽というべきであろう。 曲頭の指示語は 「ほどよくいきいき と」. Assez an ime お よ び. i f a ss e zun orme であ り, 決 して力 むこ と なく 弾く こ と が要 求さ れ ている の であ る。 次 の 「ユ ー モ レス ク」 Humor l i esque は有名 な Wa t erGi es ng に献 呈 さ れ た。 題名 にふ さ わ しく 活力 と機 ek 智 を か ん じさ せる 曲 であ り, そ の点 にお い て前 曲 Bad i nage と は将 に対 照 的 である。 前 曲 がゆ たか な拝 情 性, しず か な デリ カ シー を特 性 と してい る の に反 して こち ら の 曲 は極 め て健 康 明快 であ り 指 示 語 にもス タ ッ , , ,. カートを明瞭にひくことが要求されている。 即ちペダルはほとんど用いることなく 最後部の分散和音のみ , に止め る べ き も の な の であ る。 構 成 は A (1 ~16 )B( 17~28 ) A′ ( 29~40 )C( 41~60 )c 61~71 ), oda (. 小節数はA ( 16 )B( 12 ) A″ ( 12 )C( 20 )c 1 1 ) となっ ており, 各楽段共に素材の性格は大きく変っ oda ( ては い な い が, 曲想 はA (G - Dur ) が最 も 活発 であ り, そ の 変 奏 的 素材 による B (d :- h :- d :) に も輝 き は 目立つ が左 右 の バ ラ ンス がと れ や や 落着 き と充 実 が目 につ く A′はA と近似 しては いる がF : , 。 - f : - Des : - F : と な り A の 展 開 的 労 作 が顕 著 と な っ て いる C に入 る と 旋 律 は 大 き ざみ と な り 拝 , 。 情 的 性 格 が濃 く な っ て ゆく が T‐ 49か ら は 重 量 感 を増 しつ つ F : f : Des :E : h : d : を 一 時 的 に通 ,. 過して主調G.Durに回帰する。 c 6以降は冒頭素材の一部を変形して新し odaは冒頭楽節で始まり, T‐ 6 い 音 形進 行 に 転 じl ege r によっ て急に左右共が上昇し, フェルマータの後に音形が変っ て更に天上的きらめ き が生 じて静 か にお わる。 しか し最 後の二つ の コー ドはス タ ッ カ ー トであ っ て あく ま でも 冒頭 の 発想 と 深 , 353.
(7) . 大 塚. 夏 生. し1か かわり を も っ て いる の である。 こ の 曲も 決 して単 なる 冗談め い たも のや お どけ, ま た はさ わ が しいもの. てはなく, 形式の安定と楽想の格調に特質があり, クラシカルな品位を充分にそなえているのである。 プー ラ ンク は 同 じ年 に 間奏 曲 を二 曲 かき, 更 に1943年 にもう 一 曲 かいて いる。 こ れらは 第1番 ・ハ 長調, ilntermezzi と よ ば れ て お り, 第 ロ番 ・変 ニ長調, 第 m番 ・変イ 長調 と してま とめ ら れ, 「3 つ の 間奏 曲」 Tr o )へ の研 究の 跡 がう か が える の である 第1番 はライ モ ン・ 内 容 か ら して 明 らか に ブラ ーム ス の 同題 の 曲集2 。 ′ ) B ) B ( 18~28 ) A ( 11~17 マ レ ー 博 士 Doceur Raymond Ma l l tに 献呈 さ れて いる。 構 成 は A (1~10 e ″ ( ) であ り, 曲想 も 明 快 であ る。 A÷押 は ブラー ムス にも 一 脈 通 じ 40~58 ) coda ( 59~68 29~39 ) B″ ( -. るような重厚かつ強靭な性格をもち, スタッカートが多く, レガートの少い歯切れのよさが目立つ。 ハ長調 の単純な和声進行のなかに時として大胆な他調の借用も顔をだすなど, やはりプーランクらしい新しきもそ なえている。 B楽段以降は対照的になめらかで繊細な素材の変容と反復のうちに楽想がファンタジックに展 9と45に冒頭素材の一部分が瞬時現れるが極 開し, A楽段とのコントラス トをはっきりとさせてゆく。 T. 3 めてデリケートに過 ぎゆき, この楽段のもつ汗惰性に資している。 展開の織りなす綾は更に進展し, もりあ がり, 燃 えて のち c oda に入り, オ ク タ ー ヴ単 声音 形 に変 っ て 次第 にき かゆく よう にな っ て終る。 b jeur こそもっ とも ブラームス的内観性をそなえた曲といえる。 書法も 第 2 番 ロ emelntermezzo en re ma. 7 )A″( 1 6 6小節が弱奏でもって渋く,沈潜的にすすんでゆく。構成はA(1~1 内声部に主旋律をおいて先ず1 )。 A ″ 楽 節 に入 る と 上 声 部 62~70 ) coda ( ) C ( 55~61 51~54 ) Ps ( 35~50 ) A″ ( ) B ( 25~34 ~24. に旋律が移り, 再び (T. 21~4) ではなか ば潜行するような位置に降る。 冒頭は主和音から出発すること なく, De s : W7の 転 回形 を先 ず用 い てお り,フ レー ズ 単位 でみる な ら ばむ しろ 変 ロ 短調 の流 れ をも っ て いる。 T. 1 ~ 8 は主 旋律 がア ル トにあ たり, T. 9~16はそ れがテノ ー ル に移行 する。 そ れを 囲 む上 ・ 下声部 の 極め て 渋い 書法 か らみ て譜 面 全 体 が ブラームス の 間奏 曲 を紡沸 とさ せる の であ る。 T. 17~20は旋律 がソ プ. 4 ) はきわめて地味で堅実にま とめられてい ラノに移る がその后直ちにアル トにもどりA・A″楽段 (1~2 5~3 6 6は異名同音法によっ て変ニ短調からホ長調に急激転調をおこなってB楽段に入る。T‐2 る。T‐2 5と2 の間ではT‐ 27以外の全てが高声部に旋律をおき, 左手は単純な伴奏をなすノクターン的な楽想となるが決 してセンチメンタルに流れることなく天にかがよう超越的なひかりをおもわせる。 A″楽切はAとA′の性 格が複合し, A″に至 っ て遂 に内 燃 の 炎が外層 に表出す る が, こ れ は ほ んの 数小 節 であ っ て, T‐ 50をも っ 6~55は主調の変記号5箇という調子記号が全て除 て急激に静まり, 経過句の希薄な書法に変化する。 T. 2 外さ れ, 自在 に転調 しE : - G : - g : と進 み, A ″ に入 り Ges : に転 じ, ク ロ マ ティ シ ズ ム はよ り一層 そ. の度合いを濃くする。 シャープ記号とフラッ ト記号が交互に多用され, 主要素材のとらわれ ざる変移のもつ 幻想的性格は ビアニズムの華かさにおぼれることなく, あくまでもブラームス的抑制と内向の姿勢を貫くこ )に入 っ てフ ラ ッ ト5箇 の調子 記号 は復 活 する が, 55~61 と によ っ て 益々 深ま っ てゆく の であ る。C フ レー ズ(. 4/8から2/4拍子に変り, 希薄な譜面およ びPPによるレガート奏法の故に極めて評議にして内省的な ) の フ レー ズ の 再 現 であ り, 斯 様 に して こ の 曲 は一 貫 性 の あ る 深 い 楽 想 となる。 coda はA′ (T‐ 17~24 想 念 を有 している の である。. 15の即興曲」 の次にとりあげるべきものである が, 上 43年の作であり, 後述する 「 第m番.変イ長調 は19 b e jeur」 とし ermezzoen a ma 記 2 曲 と 共 にま とめ てリ ス ト・ ア ッ プさ れ 「3つ の 間奏 曲・ 第3 番 m me工nt ) こ と が多 い。 こ の 曲 は全 体 と して 明る く, 柔和 であ り ドイ ツ ・ ロ マ ン派 の i il て演 奏 さ れる (Tro z nt e rme z. 無言歌と共通する点か多いが, また夜想曲的に展開する一面をも有ち, 後半には若干 ビアニスティクな箇処 が右手に現れる。 やがて再現する歌謡性によって締められるが, 左右の音形, 和声進行な どを総合してみる t と や はりメ ン デルス ゾー ン, シ ョ パ ン, ブラーム ス e c‐19世紀 ピ アノ 音 楽 の 語法 が脈々 と 生 きて いる こ と が わ かる の である。 354.
(8) . フランシス・プーランクの ピアノ音楽 (江). 同 年 最 後 の ピ ア ノ 曲 は 「プ レス ト」 Prest o 変 ロ 長 調 で あ り, こ れ も ま た 有 名 な ピ ア ニ ス ト W1adimir Horowi t z に 献 呈 さ れ た。 ト ッ カ ー タ 風 の 一 見 即 興 的 性 格 をつ よ く か ん じさ せ る も の があ り, ま た無 窮 動 的. な連続的な速さ, 右手16分音符の一貫的継続のうちに淀みない流れが冒頭の指示 にした がっ て tres sec et ) B ( 21~32 ) C ( 33~42 ) A″ ( 43~56 t eger に演 奏 さ れる。 構 成 は A (1 べ20 ) coda ( 57~62 )。 re sl A はa (1 ~ 8) b (9 ~14 15~20 ), よ り細 分 す れ ばa (4 十4) b (2十 2 +2) a′ (2十 2 ) a′ ( + 2), B (6 十 6) C (4 + 4) 十 (2) A′ (6 十 2 + 4 十2) coda (4 + 2) という 小節 規模 か らな っ. ている。 A楽段a楽節は単純な変ロ音の保続と右手16分音符のスタッカートの連続によっ て極めてかわいた ひびきが支配的となる。 b楽節は4分音符による部分動機と上拍の16分音符4箇による音階又は分散和絃を 合成した短い素材を5箇,そしてT‐1 1のような8分音符をもまじえたクロマティク下降の変奏素材から成っ て いる。B 楽 段 は4 十 2 十2 十4 か らなり 四 分音符 主 体の 平 行 関係 が全 て と い っ てよ い。 変 ニ 短調 に始 まり , 次の フ レー ズ ( 25と26 ) は As : vテー A : v 多 岐, T は 2 7~ c: W - T は長 8 2 V 3度平 6 , ‐ , ‐ 9~33で 行 を左 右 共 オク タ ー ヴ・ユ ニ ゾンでお こ なう 部 分 が現 れ調 性 があ いま い になる。 曲想 はT‐ 1~20と は急 に. 変り, 静かで大まかな気分を表はし, いわゆる対照的中間部となっている。 つづくC楽段は右手がAと同じ く16分 音 符 のス タ ッ カ ー トで似 て 始 ま る が, 左 右 の 動 き がA と は 全く 異 っ て い る。 h - mo l lで は じま り, C ー Dur を 経 て e - mol l の V7- 工 とな る が, 次 に再 び調 性 があ いま い とな り C はA の展 開 と みても よ い ,. よう な 形状 と和 声 的変 転 をく り 返 しつ つ T‐41のB : V青 こ達 し, 続く A′楽 段 B : へ の橋 渡 しをな している。 む. 指示語は tresclair ettressec か ら tresfri l l antに 変 わ り, 音 量 も PP か ら mf - f - P - fとなり, 華やか さ の 度 が更 に加 わる。 A′楽 段 は主調 で始ま り, 冒頭 2小 節 は T‐ 1~ 2 と 左 右 共 に 同 じである が T 45 , ‐ 以 降は展 開部 をな し, 調 性 はB : - a: - F : - a: -D :- B : と変 転 して ゆく 音 形はA 楽 段 と 同類 で 。 あ り, ペ ダルな しに軽 快 なl ege r で しかも き らめ き を か ん じさせる よう な演 奏 が要 求さ れる。 主 要部 にス タ ッ. カートがつ づくのもA楽段と同様であるがC楽段と同じくA′楽段にはA楽段のaフレーズの音素材とbフ レー ズ の そ れ が 自 由 に 起用 さ れて いる の で ある。 T. 50以 降は 益々 は なや ぎ mo l fに達 して か ら coda に t of 入る。 結尾 は単 純 な オク タ ー ヴ・ ユ ニ ゾン 形 に変 り 最 後 の2小 節 で は急 に ptress e cの軽く静かな和絃形 , と な っ て 幕 を閉 じる。 1935年以 降の作 曲 「フ ラ ン ス. 組曲」. sui ise ( t ) は1935年 にか か れ EdouardBourde i e Franga ano t に献呈 された。 い わ pourp. ゆる 舞 踏 組 曲 で あ り ジ ェ ル ヴェ ー ズ の 旋 律 が 起用 さ れ d’apresC1aude Gervaise. (16es ) て い る。 即 ち iec le. 非常に素朴な, 昔のフランスの土の香りを存分にもち合わせ, 極めて明快ななかにも時として機智に富んだ 和 声 処 理 がみ ら れる。 全 部 で七 曲か らな り (工) Brans l i t ede Bourgogne (=) Pavane (m) Pet e marche l i i ta l mi re (W) Complainte (V) Brans i l i e de Chanpagene (班) si i l lon の 順 序 に 並 べ ら c enne (W) Car. れている。 この曲は後年吹奏楽に編曲去れている。 第 1 番 「ブル ゴー ニ ュ の ブラ ン ル」。 ブラ ン ル と は フ ラ ンス 語 bran l l ) に由 t e (揺 れ) bran er (振 る e c . 来 する 舞 曲 であ り, や や お そ い2拍 子 男 女 が輪 にな り 横 にう ごく と いう も の である しか し一方 bran l e , , 。 imple の ほ か に 速 い 3 拍 子 の br s l an egay があ り, こ の 曲 で は 後 者 が起用 さ れ てい る。 曲頭 に は Ga i 1 s , ma t sans ha e. 「快活に しかし速くなく の指示があり 全57小節中テムポの変るところがない 即ち大楽節 一 , , 。. の 末尾 (T‐ 19~20 ) に は Sansra l i ent r の指 示 があ っ て 一 様 の テム ポ が 快 活, 単 純 な 2 , 35~36 , 56~57 / 4 拍 子 と 共 に貫 か れる。 形 式 は A (1 ~20 ) A′ ( 21~37 ) A ( 38~57 ) と いう 真 に単 純 な も の であ り ,. 旋律構造の素朴で変節と変化音をもたない庶民的・直裁的形状は将にプーランク在来の主張そのものの表現 といえる。 ハ長調の属9で始まり第1・第2小楽節では末尾でのみ主和音が用いられ 全体としては7度 , , 9度 関係, 平行 5 度 の原 理等々 が生 かさ れてお り, ま たT. 27~8 には新鮮な和声の組織が現れて単調さを 355.
(9) . 大 塚. 夏. 生. 16十18 脱 している。 第2 曲は ヘ 長調 と 教 会調 の 両 者 に よ っ て いる。 形式 はA -B - A′の 単 純 な3 部 形 式 ( l l i ), 情調 は祈 り の よう な も の に近 く, 冒頭 の Graveet me 十21 anco que はま さ にこ の 曲 の様相 と 一 致 して い. る。 A (8+8) は教会音楽の旧タイプであり, B (8十4+4+2) は展開であっ て調性は冒頭より5度 ) 及 び総体の不協和音構造がi繊細なひびきのプ 17~2 3 高いe音を中心として動き, 左手の平行7度の連続 ( ロ セス を 生 ん で いる。 最 後 の 指示 語 c i l a r は 将 に天 上 にき らめく 星 の神 秘 的 な ひ びき を 暗示 して いる か のよ. うでもある。 即ちこのパ ヴァーヌ は本来の意味におけるスペインの儀礼の踊りからはややかけはなれた宗教 性 のつ よ い もの と い える の である。 書 体 は ほ ぼ教会 コ ラ ー ル 風の も の であり, この古 風な 曲 が パ ヴ ァ ー ヌ の. 歴史および教会音楽を強く意識してかかれたものであることは明白である。 l i i i 第 3 曲 は 「小 さ な 軍 隊行 進 曲」 Pe t t t a re と名 付 けら れ, 無 邪 気 な 子 供 の 遊 びの か ん じがよ e marcbe mi l の 暗 示 があ り, 2/ 4 拍 子, 右 手 く でて いる。 冒頭 に 「歩 行 の 二 倍 の 速さ で」 Mouvementde pasredoub ‐e ) は フ ォ ルテ で活 発 にf sec と あ る。 の重 音 をス タ ッ カー トで ひく こ と が要 求去 れている。 A 楽 段 (1 ~12. 曲全体 ( 71小節) は四声の和声体で貫かれ, 調子記号はヘ長調 (ニ短調) と同じであるが, 明らかに変ロ長 ) に はB : m - W - D6- V - G: 1 67~71 調 以 外 の 何物 でも なく, 最 後 の 4小 節 (. 工 の 進 行 が み ら れ,. 即ちト長調で終止している。 形式はA (6+6) B (6十6) A (6十4) C (6十6+1) であり, スラー が用 い られて いる の は中 間部, 即 ち C 楽 段 のう ち のT. 37~43とT. 51~ 8 の み であ り, この小 ロ ン ド形 式. 1では力強さが要求される。 C楽段の頭P subitoclair T‐ 5~7 のB楽段の前半 (T‐13~8) と最後のT.6 36~ 9 は属調F- dur であ る が, 直 ち に 主 調 に戻 る が T. 44~58の 左 手 に は 4 度 堆 積 が 連 続 使用 さ れ, 更. にそれが右手との間に鋭い不協和関係を生むことによって激しいひびきがきかれる。 第4曲 「挽歌」(哀歌) inte は冒頭に Ca lmeet me i Compla l l anco que (静 か に憂 い に みち て) と ある よう に, 沈 む愁 い と切 な い祈 り ー. 1. の よう な気 分 がた だよ っ ている。 6/ 8拍 子 ト短調, 8十 4 + 4 +3 十4 +3 の フ レー ズ 構造 をも つ が, 後. 半は9/8を含んでいるため45拍十24拍からなる。 第一フレーズはト短調 (自然的) であるが, また教会調 とも言い得る。 この部分は単旋律であるが, 第2フレーズ前半は左右に属音保続があるとはいえ, 旋律は左 右2オクターブ平行のモノトナスな形相である。 しかし, ここでは変化音も用いられていて短2度進行が増 加し, 雰囲気も異ってくる。 後半に入ると和声的手法に変る が一貫してト短調の線上にあり, 各小節に1ー V の型 が守 ら れて いる。 第3 フ レーズ前半は再び2オクターブ平行の単旋律であり, 最後の小節のみが9/. l i i f(嘆 t a n 8拍子となる。 後半は再 び和声書法にも どり左右共に音域がやや高くなる。 T. 9以降は指示語p 5には平行7度と平行5度もみられたが, こ くがごとく) のように作曲者の気持ちが最後までつ づく。 T. 1 ちらの方ではそのような進行は異名同音の一箇処のみである。 音量はPPにも どり益々内観性が深まる。 各 小 フ レー ズ が ドミ ナ ン テ でま とめ ら れて い る と いう 点 にお い て も 前 フ レー ズ と 同 じく 一 貫 性 を 保 持 して い. 4以降) も同様のテクスチュアであり, PPPで終るが最終小節には左右共に各々 る。 最終フレーズ (T. 2 の増4度堆積をもち-小節単位でみるなら ばg:V Vをできえゆくようにおわる。 第5 曲 「シ ァ ン パ 一 二 ュ の ブ ラ ン ル」 Bransle de Champagne は古 風 な 教 会 旋 法 に よる 3倍形式の舞曲で. ある。 変記号1箇の譜面である が二短調ではなく, むしろト短調の自然短音階に立脚している部分が主であ る。 即 ち 曲 中 に は変 ロ と変ホ の 二つ の フラ ッ トが レギ ュ ラ ー に用 い ら れ, 嬰 へ音 は現 れずへ 音 が常用 さ れて. いる。故に調性的上行導音は存在せず,中間部の ごく一部分を除いた嬰へ音は用いられていない。形式はA(8 ), 結尾句には変ホ音は現れず, 自然的ニ短調の如くにおもわれ 10 +6) B (5十5) A (5十4) c oda ( l i i る が, や はり g を 終止 音, d を副 次 終止 音 とする 旋 法 で あり, conf na s でお わ っ て いる が, e音 が付 加 さ. れているのは皮肉なことである。 昔風の郡びた情調 を表すためテムポは中位であるが, 余りおそすぎずに i i t Modere er eux (な にか しらさ だ か に捉 え eur の 指 定 があ り, 曲想 に は超 越性 を要 求する mys ent , ma s sansl. がたいような不可思議さを意識して) の指示がある。 A・B楽段共にg が中心音とた杏い時代の静寂な気分 356.
(10) . フランシス・ プーランクの ピアノ音楽 (亘). を現わしており, 基底音は第1拍がg第4拍はdという場合が圧倒的に多く, コラール風書法による落着き のある内観的な曲なのである。 第6 曲 「シチリ ア風舞曲」 は素朴な賛美歌風の地味な曲であり, ハ長調・3 部 形式, コ ラ ー ル書 体 の 西 欧的伝 統 線上 にある と い える。 A (1 ~12 ) B ( 13~20 ) A ( 21~32 ) coda ( 33 ~ 7), B フ レー ズ 以 外 に黒 鍵 の使用 はなく, 全 体 と して ひ びきも 単 純 その も の であ る。 第7 曲 「キ ァ リ ヨ ン」. Ca l l i r onもまた前曲と同じくハ長調の素朴な構成と楽想をもっているが, こちらは前曲と異っ て大変活発な 1. 1 1. 1. ’adab ’coda 黒 鍵 が一 回も 現 れず 田 舎風踊 り であ り, 曲頭 に は Trを iとある。 構成 は aba sanimetresga ca , , ま たリ ズ ム に格別 の 変 化 も なく, 不協 音程 のぶ つ かり も少 ない。 小 節 数が少々 ユニ ーク であ り a (5 + 5) , b (6 十6) c (8十 8) a ″ (5 十 4 十4 十4) d (4 十 4 十4 +4) b ″ (6 +6 十4十 4) coda (4. 十6十11 )。 結尾句の始まりが右手 による鐘の音 (題名) によっ ている。 最後には余韻を残すよう sfflais‐ i br serv er の指 示 が み ら れる。. 総 じて こ の 組 曲 は 第 1, 皿, W 曲 が活 発 であ り が そ の 他 は も の 静 か で音 組 ,. 成も古風であり 「フランス組曲」 として民族の伝統に帰依した感がつよいのである 。 1963年 に発 表 した 「ナ ゼル の夜 会」 Le l l ssoirees de Naze es は1930年 か ら連 続 的 に か か れ た大作 であ り, こ こ に は以前 の 彼 の作 曲 には み ら れな か っ たよう な ヴィ ル ト ゥ オー ゾ的 形相 が多く み ら れ 明ら か にロマ ン ,. 派 ピアノ音楽の技法が用いられていることがわかる。 構成は前奏曲 変奏曲1. 優美の極致 丑 おおらか , な心 皿 厚顔と謙虚 W. 連動する発想 V. 誘惑的魅力 班‐ 自己満足 孤. 逆境の風趣 皿 老衰の . 兆候. ば‐ カ デ ン ツ ア. ヱ. ) 譜 面 の 表紙 裏 には 「わ が 叔母リ 終 曲3 エ ナ ル を記 念 して - ナ ゼル の想 い 出 に 。. ) この曲の 中核部をなす8つの変奏曲は長期に亘る夏の保養 よせて一 とかかれてある4 地ナゼルにおける連 。 夜の ピアノ即興演奏会によって得た楽想を長い間溜めておいてパリにもどってから書いたものであり 各変 , 奏は彼の仲間達のポートレートであるという。 更に前奏曲から終曲に到るこの音楽は夜にひらかれた窓から ) 前 奏 曲は み ら れる ト ゥ ー ルー ズ 地 方 のサ ロ ンの演 奏 会 の 雰 囲気 へ の 濃厚 な想 い 出 に よる も の と い わ れる5 ‐ 。. 1 21小節からなるやや規模の大きなものであり, そのうちの110小節はリストとショパンの影響をつよくうけ たワルツ,第111小節以降はまさ にリストの手法をそっくり真似たようなカ デンツァである 和声には付加音 。 , 借用和音, 変化和音などが屡々用いられるが 調性手法のはっ きりとしたワルツなのである 形式は序 (4 , 。 + 2 + 4 + 4) A (4 + 4 十 4 十 4 +4) A′ (5 十4 + 4 十 3) B (4 +4 十 4 十 4) B ″ (4+ 4 十 5 十 4十 5 +4) C (4 十6 十 8) Cadence (9) 調 性 はA (b - mo ) B (Es - dur l l ) B ″ (同 じ) C (b , - mo l l ) Cadence (c- mol l → g - mou)。 曲 頭 に Ext ide (き わ め て 活 発 に remementanimeetdec , B - dur ,. そして決然と) の指示があり, まさにリスト的こけお どしを想わせる左手の爆発に始まり T 1 , . 3からショ パ ンの ワ ル ツ にも 似 た 表情 に変 わる B 楽 段 もま た 同様 であ り C 楽 段 に 入 っ て か ら は一小 節 毎 に PP - P 。 , ー mf-f - f fと音 量を増 しT‐ 110で は遂 にf f ftresbrusque (極 め て急 激 に最 強 に) お よ び des suss e c (更. に荒々 しく) とあり, リストを紡悌とささるものがあ る。 calme. T‐ i 13には Tr e sl arg e (極め て 闇達 に) と Tr き s. (極 め て 落 着 き 払 っ て), 更 に ec la t ant (華々 しく) と 記 さ れ て あ り, デモー ニ ッ シ ュ な 曲想 のう ち. にカ デ ンツ のリ ス ト風の 形相 が最 後の だめお しをお こなう 即 ち こ の前 奏 曲はオ リ ジナ リ ティ に乏 しいの で 。 ある。 変 奏 1 「優 美 の 極 致」 は Vi fetga i 。 R. シ ュ トラ ウス を想 わ せ る よう な 機智 に富 ん だ書 法 で あ り, 陽気. ないたずらともいうべき音形とスタ ッカートの連鎖 軽妙酒脱な音形の変化などを多用し ユーモアに溢れ , , る フ レー ズ を連 ね て いる。 フ レー ズ 構造 は4 + 8 十12十 6 であ り 表 情 ゆ た かな和 声 進 行 による ソノ リ ティ ,. の微妙な変幻自在の様相が現れている。 変奏ロ 「おおらかな心」 は前曲とは対照的で ゆっ たりとしたショ , パ ン のノ ク タ ー ンをお も わせ る 曲で ある 書 法 は かな り シ ョ パ ンに似 て お り 曲想 は 沓い 過去 へ のノ ス タ ル 。 , ジ アを 億 わせ る もの があ り シ ョ パ ンのバ ラ ー ド 夜 想 曲 バ ルカ ロ ー レe t c.に現 れる 手 法 が 随所 にみ ら れ, , , ,. 更にルバートの指示が多いのも特徴である。 変奏m 「厚顔と謙虚」 はフランス的ユーモアのあふれる外相の 357.
(11) . 大 塚. 夏 生. ) )C( 2 37~50 0 )B ( 1~36 奥に痛烈な皮肉と訓刺がかんじられる曲である。 形式はA (1~2 , Aはト長調, Bはハ短調, Cはト長調, 即ち調性のみの側からみれ ば(調性音楽としては) 安定した配置がなされている。 しかし, 素材の性格をみると各々にはっ きりとした個性があっ て対照付けられている。 和声法的には格別の 特質はみられないが, A楽段の動機素材には組成の多彩さと気の利いたアーティキュ レーションが顕著であ る。 B, C楽段にはR. シューマンに似た拝情的旋律と伴奏形があらわれ, ここにも浪漫主義が明らかに生 ‐「連動する発想 は題名の示すようにある付点音動機が終止一貫して用いられ きているのがわかる。変奏w 」 , しかも テ ム ポと重々 しい 性 格 か らみ て 明 らか に フラ ンス ・ バ ロ ッ ク の序 曲の 様相 と一 致 して いる。 しか し,. e slarge etpompeux (非 常 に大 ら かに, 音域と和声的進行がきわめて後期ロマン派的であり,曲頭の指示語Tr そ して 堂々 と) の如 き ア ウ トライ ンを保 持 しつ つ も 極 めて 陰影 に富 み, かつ 後 半 はリ ス トのラ プ ソ デ ィ ー に ) は フ ァ ンタ ジ ッ ク にま とめ ら れる。 フ レー ズ 構造 は4 も似 た悲劇 性 をもつ 箇 処 があ っ て最 後 (T. 14~18 +4 十4 十 4+ 2 と解 り やすく 第1 フ レー ズ は荘 重, 第2 フ レー ズ では天 上 的, 第3 フ レー ズ は 悲劇 的, 第. 4フレーズでは超越的, 結尾は沈潜的という構成をもっている。 和声進行にはクロマティ シズムが潜行して お り, 不協 音程 の 組 合せ に よる ニ ュ ア ンス がゆ たか である。 第 V 曲 「誘惑 的 魅力」 もま たメ ン デルス ゾー ンの無 言 歌や シ ョ パ ンの ワ ル ツ 等々 の 血 を濃く ひいて いる。 ) A′ (3十4十3) C (8十8+8) B′ (4 十 4 + 4) A ″ (6 + 7) B(. 形式はA (6+7). 4+4. ) C ) A′ (As - dur ) B (B ー dur f i l l B ″ (7 十 7) coda (1 十 5), 調 性 は A ( s - mo , es - mon f i ) A″ ( ) B′ (A - dur (De s - mou) であ り, 和 絃 は極 め て 単 純 なA 楽 段 か序々 に複 雑 化 (転 s - dur. 調楽節を含む) し, A″以降は付加音を多く用いつつ最終段階では合成和絃を頻繁にひびかせることにより, 1小節と 1 9世紀初期から20世紀への音組織の移りかわりのひとつの様相をあらわにしている。 全部で僅か10 いうみじかい曲であるが演奏に関 わる思い入れが多く, 数多くの言葉が用い られている。 まず冒頭には ’ ″ Tresa l l ant極め て 活発 に, plancerle mouvement しずかながらも活動的に, A 楽段には bien alaise 極 め ” tは減 7和 絃 3~ 4 sempreplancerletrai て 爽 や か に, t cり A 楽 段 の T‐ 7 I eux 非 常 に 自 由 に et rescapr ・ c. の分散を弱音により一気に弾きとおすことを要求している。 その他指示が余りにも多く, 最後に至る迄の不 協和音及び休符を含む音形による緊張の増大と相僕って, この組曲中最も内容の充実がみられるのである。 第W 「自己満足」 はマーチ風の楽想をもち, 滅法あかるいがために楽隊屋的雰囲気をかんじとられるむき t ressec お よ びB 楽 段 のf eet も あ る が, 細 部 に は 近 代 的 な 工 夫 も こ ら さ れ て い る。 冒 頭 の 指 示 語 Tresvi ) 15 l t ent (強く, 燃 える 如 く) 等々 がこの 曲の 情調 をつ よく 現 わ して いる の は た しか である。 形式 はA ( urbu ) B ( 16~19 ) こ れを細 かく み れ ばA (1~ 8, 9 ~11 ) coda ( 10 ) B′ ( 12 16 B ( 22 ) A‘ ( , 20 , 12~15 ) と いう こ と にな る。 75小 節 か らな 66~75 ) coda ( ) B″ ( 46~57 28~37 ) A″ ( 38~45 ~27 ( , 58~65. ur ‐ ること曲は全体が上記の如くに活発で明快であり, かつ大変にぎやかで華やいでおり, 特にB楽段のft i i l i tsec そ して po bu l e nt u 鋭 く刺 戟 的 に等 の指 示 語 には プー ラ ンク の 希 い がつ よく こめ ら se r c ant a り c , pr れて いる の が音 形, ス タ ッ カ ー ト, アク セ ン トの 様相 か ら みてよく わ かる の である。 A 楽 段の前 半 は無邪 気 な フォ ー ク ダンス で ある が, 左 手声 部 は各小 節 が パ タ ー ン化 さ れ, 一 定の バ ラ ンス を保つ。 後半 に入る と急. 5は右手が減7和音の原理, 左手が交互 に調性があいまいになり, 音型も全く別種のものに変り, T. 12~1 性2度 音 階 という 組あ わせ を行 な っ て 上昇 する。こ れは既 に19世紀 後 半 にF.リ ス トが用 い ている テク ス チ ュ ア であ り, B 楽 段 のT. 16~19の左 手 の増 工度 の 連 続 形は バ ル トーク 等々 にも み ら れる も の である。 ここ で. は右手に上昇的動機連鎖があり, T.20~36には逆に左右共に下降性の音列 を (主として低声部に) 潜ませ, 例 え ば de. l l l 1 l i i - c2 - bl - al - g1 - f s - s - e, a - g -f. i ー esl - desl - cl - b - a 一 g - f s. - e - es - c と いう 系 糸 が 潜行 して いる。 更 にT. 31~35の 右 手 に は各小 節 の 上拍 の ひとつ に減 5 度 が規. 則的に用いられており, 特にT. 32~35の第2上拍では左右の3つの音を合わせると減3和音を型造ってい 358.
(12) . フランシス・ プーランクのピアノ音楽 (B). る。 そ の ほ かこ の フ レー ズ に は左 右 の 間 に規則 的 音程 関係 も あ っ て 単 純 な シ ェ ー マ が みう けら れる。 A′楽. 段は冒頭の完全5度下, 詰り下属調 (F:) で始まるが, B′楽段はB楽段の後半の展開となり, C:から )。 こ の フ レー ズ はス ト レ ッ タ と も い い う る。 H : へ と 転 調 し, 更 に As :へ と 進 む (T‐ 58~61 , 62~65. 7 4~5) ではなにかしら暗示的な弱音に急変し c odaは冒頭素材に始まり, 豪快な上昇に変ずるが, 最後 ( て消える。 即ち余りにも明かろく快適な楽想が予想通りにもあがりをみせるのにもかかわらず, 末尾の2小 節 によ っ て 反 語め い た意 味 が示 さ れている の である。 第 孤 「逆境 の 風 趣」 は Lentet me l l i anco que 教 会旋 法 で 始ま る 無 言 歌 的 作 風 の 曲 であ る。 構 成 に は規則 性. はないが, 数箇の部分動機が自由な順序と音程で以て現れる, 論理的統辞性よりも思いつきが勝った, 汗惰 性 の 濃 い 書 法 によ っ ている。 全 体の 情調 は憂 愁 と いう べ き もの である。. 第孤曲 「老衰の兆候」 はブラームスの間奏曲のなかのあるものにも似て, 孤独な魂の内部を冷い空気が吹 ) 0 )B( 11~18 ) A′ ( 19~27 きぬけるような情感に近いものをおもわせる。 形式は序 (1~2) A (3~1 ), 各々 の 規模 を細 かく み れ ばA (2+2 + 2 十 2) B (4 +4) C( 28~35 ) A″ ( ) coda ( 44~50 36~43 A′ (4 + 2 + 2 + 1) C (4 十 4) A ″ (2 + 2 十 2 + 2) coda (3 + 4) と な り, 均 衡 の と れ た 配 分 i であ る こ と が わ かる。 調 性 はa : → f : →f s : → a : → a : で あり, ごく 普通 のも の と い える。 序 奏 に は 休 符 が 多 く, ま た Es : V7- a : V9- 1 と いう 極 め て 暗示 的 な和 声 の PP による 進 行 ( D 70耳-) の後 に同 じく Ppl eg er で以 てス タ ッ カ ー トによる 半音 下 降性 を示す。 こ れはT. ~6 にお い て ソ プラノ に現 れ, T. 6 ~10で はそ れ が 内声 に移 り bl - al - asl - g1 - fl - el - d i s 以 下 h に到る ま で の経 路 をた どっ て ゆ く。 こ こ は左 右 共 に歯切 れの よいス タ ッ カ ー ト, ソ プラノ の みt i l t e (裁 然 と) か らT. 7 ~ 8 の resa r cu レ ガー トを 経て T. 9 ~10のノ ン・ レガー トへ の 進 む変化 の多 い 楽段 な の であ る。 つ づ く B楽 段 はf :- c : - a : - f :- c : -f i s : と いう 調 性 のも と にや や 活気 を帯 びた左 手 の 上 昇 的ス タ ッ カ ー トを軸 と して ( l ) e m-g en end r eho s ‐bi. 右手が不随的半音上行~分散和絃という形体をとる。 上記の如き小節配分 による. 組成 的 対 比 がA ・ B 両 楽 段 のあ い だ には みう け ら れる。 A′楽 段 は 冒 頭 の a : よ り 短3 度 低 いf i s : に始ま 23~ 4, 25~ 6), 後 り, 後 半 の 4 小 節 は 転調 楽 節 を な して いる。 この フ レー ズ はま た2 + 2 にわ けら れ ( 半 は 烈 しい 性 格 に 変 る。 C 楽 節 に 入 っ て よう やく ス ラ ー に よ る な め ら か な doucement ビ ア ニ ッ ス ィ モ のス ラ ー を 多用 した対位 法 的 (ソ プラノ と テノ ー ル) な テク ス チ ュ ア をも っ た瀞 説 の フ レー ズ になる。 背骨 とな っ て いる の. の保 続音, およ びf2→ c2→ g2 → c2の 上下 をく り 返すメ ッ ツォ . ソ プラノ である。 結尾句 (T.. 44~50 ) は音 形 が急変 し激烈 なス タ ッ カ ー ト, ノ ン・ レ ガー トの フ レー ズ となる が, 最后 は天 界へ の 上 昇 と も いう べ き, 低 音 域 か ら高 音 域 へ の d im を伴っ た上行分散和音をた どっ た進行により. , 消えゆくよう にお. わる。 「ガ デンツ ァ と 終曲 この 組 曲 には先 ず前 奏 曲 の尾 部 にカ デンツ ァ があり 更 に終 曲の前 にもカ デンツ ァ 」 , が挿入 さ れている。 こ れら は共 にロ マ ン派 的 ビ アニ ズ ム の 誇示 を 目 的 と してお り リ ス トの 亜流 とも いう べ , き 浅 く 烈 しい だ けの, い わ ば 「こ けお どし」 であ る。 曲頭 表 示 語 は Tr ibrement esl argeettresl , オクター ヴ平 行 によ る 付 点 音 符 素 材 で初 め て の 4 小 節 が形 成 さ れる。 こ こ に は f f f fそ して e l t c a ant (ま ば ゆ い ば , s かり に), 更 にアク セ ン ト記 号 がや た らと用 い ら れて いる。 T. 5 ~ 6 は一転 して PP と なりt e r salangui (非. 常にゆっくりと) を以てフレーズをまとめている。 この語は本来は衰微を意味するものであり, イタリア語 の mol t i t or ardando と 同 じく 演 奏 上 心 掛 けてお け ばよ い で あろう。 T. 6 の 後半 か ら は 再 び華美 にな り, 最. 後まで左右のオクターヴ平行による音階, 分散和絃, トリル等の交互の起用 による虚しい曲想がつ づく。「終 曲」 Fina l は4 / 4 拍 子, 100小 節 か ら なる 活気 に み ち た 曲 で あ り, シ ュ ー マ ンの幻 想 曲 を は じめ ロ マ ン派 の語 法 をも り 込 んで いる。 A ー dur 工 に始ま り C - dur 工 に 終る ま で のあ い だ に幾つ かの調 性 を経 てお り,. その度毎に楽想が変化が大きく, 楽段の再現がない。 即ち大きく分けければA-B-C-D-c odaという 359.
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