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失業均衡とその均衡下での財政・所得政策 : 短期固定価格モデルの研究(その3)

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(1)Title. 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策 : 短期固定価格モデルの研究 (その3). Author(s). 久保田, 義弘. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. B, 社会科学編, 40(1): 31-46. Issue Date. 1989-10. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/4499. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部B) 第4 0巻 第1号. 平成元年 10月. lof Hokka ido Univer i l i i Journa ty ofEducat t s on I B) Vo on(Sec .40 .l ,No. oc tober ,1989. 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策 -- 短期固定価格モデルの研究……その3 --. 久. 保. 田. 目. 義. 弘. 次. 1. は じめ に. 2. 不均衡概念について 3. マ ラ ンボー ・モ デル. 3.1模型の枠組と用語 3.2三つの経済状態 3.3政策効果 4. ミクロ的基礎について 5. むす びに か えて. 1. は じ め に. ケイ ンズ 〔 13 〕 によっ て提唱されている経済分析のための枠組は今日の経済状況からすると必ず しも完壁なものではないかもしれない. だが, 多数の経済学者 はケイ ンズ理論の研究を通じて新し い巨視モ デルを提唱したり, 時々 の経済問題についての処方範を提供してきている. 彼らによ っ て 認識される経済現象が変化するにつれて, その時代の経済問題に解法を与えよ・ うと努力 している政. 策担当者及び理論家は伝統的認識論を批判し, 新しい考え方及び政策論を展開する傾向がある. 例. えば,rケイ ンズの理論を基礎にして構築されているケイ ンズ派の体系及び新古典派総合として知ら れているIS・LM 体系は新しい経済現象 (例えば, 失業下のイ ンフレ) を適切に説明できないとし. て批判され, 新しい巨視模型の構築のための努力が多くの理論家によっ てなされてきている. この 過程で新古典派総合には欠けていた物価水準 (或いはイ ンフレ率) と雇用水準 (或い は失業率) の 関係を示すフィ リ ッ プス曲線が提供された. この曲線 はケイ ンズ派及び新古典派総合にはない価格 (物価)変数を明示化することによっ て, それらを補強する役目を担っ た. その曲線はケイ ンズ理論 では取り扱われていない労働市場の調整の問題に目を向けさせることにも成功した. 完全雇用水準 に近 づくと, 物価水準 (或いはイ ンフレ率) . が上昇 しがちであることをその曲線 は示唆している. これはイ ンフレなき成長を経済目標とする政策担当者たちに一つの新しい考え方を提供することに なった. イ ンフレなき成長の状態が達成されるために ,はフィ リッ プス曲線が安定していなければな らない. 多数の理論家及び実証家によっ てフィ リ ッ プス曲線が安定しているかどうかについて論争 が展開された. さらに,フィリ ッ プス曲線 は期待イ ンフレ率を組込んだもの へと改変さ れ,短期フィ リッ プス曲線と長期フィ リッ プス曲線の区別が試みられるようになり, この区別を前提にして失業 下のイ ンフレは短期的現象であり, 長期的には経済は自然失業率 の状態にあることをマネタリス は 31.

(3) . 久保田 義・ 弘. 提唱し, 合理的期待形成仮説の論者は短期にあっ ても政策の有効性 が否定された. マネタリス トは ケイ ンズ派体系及 び新古典派総合に基づく現実経済の分析が誤謬に満ちたものであると批判した. 巨視模型の構築及びその再構築が理論家の間で試みられる ようになっ てきている. 1960年代前半まで巨視模型 として受け入れられていたケイ ンズ派体系に代る模型の構築 は石油 危機や1MF体制の崩壊の危機を契機として本格的に開始されるようになっ た. この動きに平行し 1 4 〕 に触発されて活発になり, 伝 てケイ ンズ理論の再解釈がクラワー 〔5〕 やレーヨンフーフド 〔 統的なケイ ンズ解釈としての新古典派総合に代るケイ ンズ解釈の存在を経済学者は知るようになっ た き た.. その解釈の一つにケイ ンズ理論を不均衡理論であるとするものがある. これはワルラスの理論が 均衡理論であるというものと対照的である. その不均衡理論では需給の不 一致が一般的であり, そ の一 致は遇然にす ぎないことになる. ケイ ンズ体系が価格機構 の不完全な体 系であるという認識に 於て不均衡論者と新古典派総合は一致して いる.ケイ ンズ体系が不均衡体系である という想定下で, その微視的基礎を模索する試みに理論家も興味を覚えるであろう が, しかし, そのような理論展開 はケイ ンズの過少雇用 「均衡」 に関する理解を暖昧にすることになろう. これに対し, 固定的貨幣 賃金率を仮定するIS・LM 体系はその 「均衡」 を説明することに成功している. そこでは外生的に 決定される貨幣賃金率に対応してある過少雇用 「均衡」 が存在することになる. その水準の外生的 変化に伴なっ て 「均衡」 水準も変化する. そこでは完全雇用 「均衡」 は特殊な過少雇用 「均衡」 と して表わされる. 過少雇用 「均衡」 が一般的であるケイ ンズ理論からワルラスの一般均衡体系をみ ると, この一般均衡 は特殊ケースとなり, 過少雇用 「不均衡」 であるかもしれない. これに対 し, 不均衡論者はワルラスの一般均衡からケイ ンズ理論をみて, ケイ ンズ体系 は本質的に「不均衡体系」 であると主張している. 新古典派総合と不均衡論者は異なっ た観点からケイ ンズ理論を捉えようとするものであって, 不 均衡論者がェS・LM 体系に本質的批判を浴 びせているとは思えない. ケイ ンズ体系が不均衡体系か 否かは均衡をどのようにみるか (定義するか) に依存して決定されることになろう. ・ 所謂, 不均衡 論者 はワルラスの需給一 致を均衡として定義しているため,.労働市場にも失業者は存在しない. こ の均衡からすると, 過少雇用 「均衡」 は不均衡となる. 失業者が存在していても貨幣賃金率が一定 不変とされる過少雇用「均衡」からすると, 失業者(非 自発的失業者) が一人も存在 しない状況は特殊ケースとなる. このケ÷ス は過少雇用 「不均衡」 と 呼ばれても不思議ではないであろう.. 2. 不均衡概念について いう概念は経済分析の多くの領域で使用 不均衡という概念は均衡概念 と表裏一体である. 均衡と・ されているが,.理 論経済学の領域では需要と供給によっ ・て均衡が定義されている. 需要と供給の一 致している状態として均衡を定義するワルラス流の均衡概念 がよく知られている. さらに, ワルラ スの考えに沿っ て均衡の存在, 一意性及 び安定性が数学的に定式化され, 均衡といえ ばワルラス流 の均衡 が理論家 によっ てイメージされている. ・ 不均衡とは需給不一致が意味さ れよう. 需給の不一致が発生して ・すると, ,ワルラス流の考えから . いようとも, 各市場では購入量と販売量 は等しく, それぞれは取り引き量に等 しくなっていよう. 購入量と販売量とが等しい状態は均衡であろうか不均衡であろう か. 確かにワルラスの意味からす 32. ,.

(4) . 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策. ると, その状態は, 特別の場合を除くと, 不均衡状態であろう. 我々 は均衡を広く定義しようと思っ ている. 外生変数が与えられ, かつ, それが-定不変である とき, 均衡が達成される. このためには, 取り引きされる生産物(商品) の種類 は一定不変 であり, 取り引き主体の生産関数或いは選好関数は所与 であり, 一定不変である. 本源的生産資源の量が外 生的に決定され, 一定不変であるならば, 経済の運動は決定されることになろう 生産関数 選好 . , 関数及 び生産資源量が与えられ, かつ, 一定不変であるならば, ある経済状態が出現する ことにな ろう. それらが所与かつ一定不変であれば, 価格集合及び生産パター ンは時間を通して一定不変に なる経済状態が出現するであろう. 時間を通して一定不変な状態は, 時には, 定常状態,.或いは恒 常状態と呼ばれる. そのような状態は所与かつ 一定不変と仮定される外生変数の集合の変化と伴に 変化する. 均衡は環境 (生産関数, 選好関数及び生産資源量) によっ て規定されることになろう. 我々 は環 境変数が所与かつ一定不変と与えられると, 時間を通して一定不変となる経済状態が出 現すること を均衡と定義することにしたい. よっ て, 定常状態及び恒常状態は均衡とな ろう. マランボー〔 1 5 ) はそのような意味に於ける均衡概念を使っ ている. 彼の環境変数は生産物価格,. 貨幣賃金率及び財政支出である. 生産物価格 (P) , 貨幣賃金率 (w) , 及び財政支出 (g) の組み 合わせが与えられ, かつ, 一定 不変 であれば, ある経済状態が決定される. それらの組み合わせの. 違いが経済状態の違いをもたらす. 高い生産物価格と低い貨幣賃金率の状態は生産物市場に超過供 給を発生させ, 労働市場に超過需要を発生させている状態である. 低い生産物価格と低い貨 幣賃金 率の状態は両市場に超過需要を発生させている状態である. 高い生産物価格と高い貨幣賃金率 の状 態は両市場に超過供給を発生させている状態である. 低い生産物価格と高い貨 幣賃金率の状態は生. 産物市場に超過需要を発生させ, 労働市場に超過供給を発生させる. 一定の財政支出の下で, 生産 物価格と貨幣賃金率の組み合わせによっ て四つの経済状態の出現が可能となる. マラ ンボーは両市 場に於て需給の一致している状態をワルラス均衡と呼んでいる. マランボーが実際に明示的に分析している状態は三つである. 抑圧されたイ ンフレ状態, ケイ ン ズの失業状態, 及び古典的失業状態の三つが彼によっ て提示されている経済状態である いずれも . ・均衡″である という のは 所与かつ一定不変の外生変数の相対的関係によ て経済状態を明らか っ , , に し て い る か らで あ る.. マランボーは固定価格を仮定することによって, 通常不均衡と見倣されているケイ ンズの失業状 態をも均衡として捉えることに成功した. 価格変数の集合が外生的に与えられる. 彼の模型が完成 されるためには, .外生的に与えられる環境変数がどのようにして形成されるのかを明らかにしなけ ればならない.. 3. マラ ンポ ー・ モ デル 3.1 模型の枠組と用語 マラ ンボー 〔 15 〕 は失業を一般均衡 の枠組みによっ て説明している. 古典的説明によると失業は 高い実質賃金率に起因すること になる. この説明は部分均衡分析によるものである. 一般均衡 の枠 組みが考慮されると, 労働市場の需要や供給は生産物市場 の状態にも依存することになり, 生産物. 市場に超過供給がある場合には, その時点で流布している価格及び賃金率の下で労働需要は減少す るであろう. 労働市場での取り引きの状態が説 明されるためには生産物市場 の取り引き状態からの 33.

(5) . 久保田 義 弘. 影響を考慮に入れなけれ ばならないことをマラ ンボーは示唆している. 彼の一般均衡理論 はワルラスのそれとは違っており, 固定価格体系で構築される. 価格水準及び 貨幣賃金率が外 生的に与えられており, 労働市場及 び生産物市場に於て需要と供給とが一致するの は遇然であり, 需給の不一致が一般的である一般均衡理論を彼は提供している. その不一致が生じ ると,所与の固定価格体系下で需要量か或いは供給量のい ずれか小さな方が実現されることになり, 需給の不一致であるにも拘らず均衡が出現することになる. それぞれの市場での取り引き量は購入 量及 び販売量に一致しており, この一致しているという意味に於て 「均衡」 があらわれる. このマ ランボーの均衡は固定価格体系下で構 築されているので, ワルラス均衡は特殊な価格体系 が与えら れるときに達成される. 購入量と需要量とが等しく, 販売量と供給量とが等しく, かつ, 購入量と 販売量とが等しい状態 がワルラス均衡である. マラ ンボー・モ デルは固定価格体系下で構築されているので, 経済主体間の整合性 は数量調整に よ っ て な さ れる. 彼 の shorts deルールがその整合性を達成している. さらに, すべての市場で取 i. り引きされる数 量は同時決定である. これは一般均衡 の概念が必要とされることを意味して いる. 彼は貨幣のみ が交換 の媒介手段である という貨幣経済の特徴に注目し, 貨幣経済では物々 交換経済 と違っ て 一般 的超過供給 (或いは需要) が生じることを明らかにした. 物々 交換経済ではある生産 物市場に超過供給があれ ば,,必ず超過需要になっ ている他の市場が存在することになる. 故に, 貨 幣経済に於てのみワルラス均衡以外の均衡 が出現することになろう. ワルラス以外の均衡では需要 量は購入量に等しくなく, 供給量 は販売量に等しくなく, 購入量は販売量に等しくなっ ている. こ ・ れらは実際の取り引き数量である. 需要量と供給量は取り引きしたいと望んでいる数量である. マラ ンボーの一般均衡 の主要な特徴には以下で説明される三つがあろう. 第一に自発的交換であ ・ 経済主体が望む以上に購入したり販売 したりはしない. こ の性質は総購入量が総販売量に等し る. ,・ くなることを意味 している, 第二は購入量が需要量を超えること はなく, 販売量 は供給量を超える ことがないという性質である.こ の性質の下では経済主体 はつ ぎのいずれかの状況にいるであろう. i i i ) 割り当てをう けていない買い手, i) 割り当てられた売り手, ( (i) 割り当てられた買い手, (i ( ) その市場の外にいる i ) (v 割り当てられていない売り手, v , この5つの状況が可能である. 第 三は, ある任意の市場に数量割り当てられた買い手 (或いは売り手) が居るならば, その同じ市場 に数量割り当てられる売り手 (或いは買い手) は一人もいないという性質である. こ の性質は市場 i i i i) )買 がいずれかの状態にあることを意味する. (i) 需給一致している市場, (i ・売り手市場, ( い手市場,,この3つのいずれかの状態に市場がある. i rce マラ ンボーの一般均衡に於て重要な働きをする制約 は慧知覚された制約″( vedconstraint pe である. ある主体がある市場で彼の需要或いはその供給 を表明するとき, 彼はその市場での割り当 てを考慮に入れることはないが, しかし, その市場以外における制約 (数量制約) を無視すること はないであろう. 例えば, 失業者 (詰, 割り当てられた家計) が需要を形成する際に, 彼は自分 が 失業していることを無視して はその需要を表明し 、えないであろう. 彼は失業しているという制約の 下で消費需要を形成 している. 経済主体 がある市場に於て消費或いは生産計画を立てるとき, 彼は 他の市場に於ていかなる状況に位置するかを知覚していることを必要とする. この知覚された制約 きな特徴である. が経済主体の消費或いは生産計画に影響することがマラ ンボーの一般均衡論の大・ それは三市場の巨視模型である. 生産物市場, 労 巨視的観点からマラ ンボー・モ デルをみると,, 働市場, 及び貨幣市場からその模型は構成されている. マラ ンボーは一種のフローの意味における ワルラス法則を前提に している. 生産物及び労働市場に於て購入量と販売量とが一致しているなら ば, 残された貨幣市場にあっ てもそれらが一致することを彼は想定している. よって, 生産物及び 34.

(6) . 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策. 労働市場によっ てのみマラ ンボーの均衡 は提示されている. この前提のも● とでケイ ンズ均衡, 古典 派の均衡及び抑制されたイ ンフレ均衡の経済状態が示される. その両市場に超過供給が存在する経 済状態をマラ ンボー はケイ ンズ均衡と呼んでいる. 両市場に超過需要が存在する経済状態を彼は抑 制されたイ ンフ レ均衡と呼んでいる. 労働市場に超過供給があり, 生産物市場に超過需要がある経 済状態を彼 は古典的均衡と呼ん でいる. マランボーの一般均衡体系では在庫数量が明示的に考慮さ. れていないので, 労働市場に超過需要があり, 生産物市場に超過供給が存在する経済状態は扱われ ていない. 生産主体は供給量 (即ち産出量) を減少させると同時に労働需要をも減少させ るので, 生産主体が在庫を保有しない限り, 第四の経済状態は観察されないであろう. それぞれの経済状態は生産物価格と貨幣賃金率の組合わせによっ て分割される. 高い価格水準と 高い貨幣賃金率の経済状態はケイ ンズ均衡であり, 低い価格水準と低い貨幣賃金率のそれは抑制さ れたイ ンフレ均衡であり, 古典的均衡は高い貨幣賃金率と低い価格水準の経済状態である. 最後にマラ ンボ」・モデルの一般的な枠組みについて言及してみよう. 彼のモ デルでは所与の時 間的長さからなる期間が想定される. この期間は過去及び将来から独立して存在している. このこ とは過去の経験及び将来 の不確実性に経済主体の行動が影響されないことを意味して いる. 彼の体 系は静学的模型である. このことは, 彼のケイ ンズ均衡が必ずしもケイ ンズの 『一般理論』 を忠実 に記述するも のではなく, 単にケイ ンズ体系を一般超過供給として捉えていることを強調 している にすぎない. ケイ ンズ理論に於て最も重要な変数は不確実性とその下での期待である. マラ ンボー のケイ ンズ均衡では明確に不確実性及 び期 待が考慮されていない. マランボー体系では外生変数が 一定不変である限り, 同一 の経済状態が永久に続くと推測されるので, その体系は一種 の定常状態 で あ る.. マラ ンボー体 系の社会勘定をみてみよう. 社会は消費主体, 生産主体及び政府から構成されてい る. 社会の産出物 は消費主体によっ て消費されるか, 政府及び生産主体による需要 (購入) に向け られる. 社会の産出量をYとし, 消費主体の消費量をCとし, 政府及び生産主体による需要量をG とすると. 生産物市場の巨視的均衡は, ( 1 ). Y=C十G. と表わされる. 家計は賃金として所得を獲得し, それを消費支出するか, 貯蓄している 賃金所得 . をWとし, 貯蓄をSとすると, 家計の巨視的行動は, ( 2 ). W =C十S. と表わされる. 社会の非労働所得 (所謂, 財産所得) をPとすると, ( 3 ). Y- W …P. ,. が得られる. 非労働所得は現実の経済では家計に配分されると考えら れるが, マランボーの体系で は生産主体の内部留保と取り扱われている. もし家計にそれが配分されるならば,( 2 )の貯蓄 (S) が貯蓄マイ ナス非労働所得であると考えてもよいであろう.( 3 )を考慮すると,( )と( 1 2 )より, ( 4 ). P+S=G. が得られる. これは社会全体の貯蓄がそ の投資に等しいという均衡条件である.( 4 )に於てGは外生 的に決定されているので, その支出額を融資する必要があろう. それは生産主体 の資金制約条件で あり, かつ, 政府の予算制約である. その制約は ( 5 ). M …dM/dt=G. ,. と表わされる. これは貨幣以外に金融資産が存在しないことを含意している. そこで M は一定期間 当たりの貨幣発行量である. マラ ンボーも大多数の新古典派経済学者と同様に同質的な経済主体を想定している. よっ て, 彼 35.

(7) . 久保田 義. 弘. は家計 (消費者) の行動を分析するとき, 代表的家計 (代表的消費者) の行動を分析し, 同様にし て, 代表的生産者の行動を分析 している. その想定 は集計を容易にし, 消費者同志及び生産者同志 の利害対立を無視することに成功 している. マラ ンボーの体系に於て政府行動は余りにも単純化さ れているために, その財政支出は経常支出のみであり, 社会資本の整備な どの支出は考慮されない ことになる. 現実の政府行動に於て最も重要であるのは公共財の供給である. 彼のモ デルではこの ことについては全く考察されていない. さらに, 彼のモ デルでは民間より も政府の需要が優先され ると想定され, 政府 は生産物市場で制約されないことが前提されている. 3,2 三つの経済状態 マランボー のワルラス均衡では, 生産物市場及び労働市場に於て需給が均等しているので, そこ では失業は発生していない. 代表的家計と代表的生産者の間で取り引きされる労働サーヴィ ス量を 1*とし, 生産物の量をy*とすると, ) ( 6. * r *=l l f=1 r 及び c ,十g=y =y. が得られる. ここではc ,は代表的家計による消費量, gは代表的生産者及び政府による需要量であ る. 政府による需要量 は一生産者当たりに調整されている. 選好関数及び生産関数に新古典派流の仮定 がおかれると, ワルラスの経済状態 は (図-1) とな る. そこでは, 家計の予算制約式は /p /p=(w/p)1 〒十 mー c l十 ml. であり, 生産者の費用制約式は f十7 c q/p j十g=(w/p)l. であり, c j十g=y jが成立している. m,は家計の初期貨幣保有残高, 巧 は生産者の内部留保(つまり )の関係式から, )/p である.( 4 利潤) である. 家計の実質貯蓄は (m--m, (7 a). )/p+ 巧/p =g (mーー m,. という関係式が成立するとしよう.. y i‐g. )=Uー Uー ( c - - ,1 1 ) y 」 i‐g=f(. c*. 0. 1 - 」 ,1. * 1. 図- l 36.

(8) . 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策. ワルラス均衡では生産物の需要関数及び労働サー ヴィ スの供給関数は価格水準, 貨幣賃金率及 び 初期貨幣保有残高に関して零次同次の関数である. 貨幣需要関数もそれらの変数に関して一次同次 の関数である. 同様に, 生産物 の供給関数及び労働サーヴィ スの需要関数もそれらの変数に関して 零次同次であり, 企業の利潤関数 はそ れらに関して一次同次である. よっ て, それらの変数を比例 的に変化させても, ワルラス均衡ではそれぞれの需要量並びに供給量は不変であり, 実質の貨幣需 要及び実質の利潤は不変に維持される. 故に, d=cf(巾‘ , p, w)=cf(入寵. , 八w) , 入p 1 1 ( )= え寵 え 〒(中ー 〒=1 〒 w , , p, , P, 八w) m,= m,(m- , p, w)= mー(入翫, , 八P , 入w) y j-g=. (P f(八P , w)=c , 九W). 1 ?=1 テ( f(入P P , w)=l , 八w) テ(P f(P, w)= 巧(P, の 巧 =Pc , w)- wl 丸川 (P , w)= 巧(入p , 入w). という関係が得られる. ここではg=g( p , w):及びその零次同次性が暗黙に仮定されている. (図 -1) の点Eでは上述のことが成立している. ワルラ ス 均衡では家計の意図した貯蓄と企業の意図 した利潤 (内部留保) の総和が企業並 びに政府の投資支出にバラ ンスしている. このバラ ンスは遇 然にしか成立しない.初期貨幣残高が家計と企業の行動を不整合にする水準にあるときには,(7a) の関係は成立しないであろう. 価格水準と貨幣賃金率が比例的に変化すると, 巧( p , w)/p=巧(入p , Aw)/入p, g(PJt 〕/入p≠〔m,(m, ,w)-ml ゞw)=g Q p, Aw)で あ る が, し か し, 〔m,(m, , ぇp, 入 , p,. 〕/p である. よっ て, 初期貨幣残高が適切な水準に与えられていないならば, 社会の意図し w)-m, た貯蓄とその意図した投資とが爺離する. すなわち, .7 b) (. (mー「 爺, )/p+ 巧/p>g. (7 c). (m-- 爺, )/p+ 均/p<g. ,. . ′. ,. ,ず .・. .、. ≦ . ,. 、 ; ・, :、 ‘ ,. となりうる.1=l f=l fの下で (7b) の関係が遇然に成立するとき, (8a). )/p< 晋IH 廟 一mー. 十テーg. という関係が得られる. 1=1 テ=1 デの下で (7c) の関係が遇然に成立するとき, (8b). 十(mj- m・ )/p>. +. -g. という関係が得られる. (8b)の関係が成立するとき, 生産物市場 に超過需要及 び労働市場に超過需要が生じる抑制され たイ ンフレーショ ンの経済状態が発生する. (図-2) に於てβ野線は家計の予算制約式であり, ααは企業の利潤線である. それぞれの線の勾 配は等しく, それは実質賃金率である.ββの縦軸切片は家計の意図した貯蓄に対応し, ααの縦軸切 ● 片は企業及び政府の支出調整済みの利潤 (内部留保) である. ・(8b) の関係が成立しているので, ββはααの上方に位置する.. 生産物市場では 1 (9 a). cf> “ 一g. ・. ・,. となっ ており, 労働市場では b) l (9‐ 〒 r>1 と な っ て い る. (9 a) 及び (9b) の下では, 生産物市場及び労働市場での取り引き数量 (すなわ 37.

(9) . . 久保田 義 弘. Uー( )=U, c - - ,1. αα. 1 ¥=1 R. ′ 1 〒. l ) y i‐g=f( j. 11 . ・ 1‐ .‐ ▼ . 1 . . .・1 : 1 : 1 : 1 ▼ .・ 1‐ .. ーーーーー「ーーー. ‘ 1. ′ h ;. 1 デ 図-2. ) はそれぞれの供給量以下である. よつて, 抑制されたイ ンフレ均衡は ちy R R 及 びI (10・a)・. ?>yf一g≧y c. (lo b). l f≧1 テニー. loa)の等号は生産者の労働サーヴィ スに対する需要が制約されないときに成立す と表わされる.( る. 抑制されたイ ンフレ均衡は (図-2) のR点で示される. (8a)の関係が成立するとき, . 生産物市場及び労働市場に超過供給が生じるケイ ンズ均衡の経済 状態になる. (図-3)に於て〆〆は利潤線であり, ββ は予算線である. α′〆とββ は平行であり, 〆α′はβ β の上方に位置する.. 生産物市場では (1l a). cf≦yf一g. であり, 労働市場では. ‐ ‐b)・ l ‐ ・ (11 r<1 〒. である. それぞれの市場での取り引き数量はそれぞれの需要量に等しい. ケイ ンズ均衡は a) ぎ ,(12・ . (12 b). f≦yテーg ck=c. ≦l ・ l r<l f k れないときに成立する. (図-3)′に於てケ である. (12b) の等号は家計の生産物需要が制約さ・ イ ンズ均衡 はK点で示され, そこでは両市場に超過供給 が存在する. 古典派の均衡では, 生産物市場に超過需要が生じ, 労働市場に超過供給が生じる. そこでは (7 d) (m,一寵ー )/p十吻/p≧g となっ ている. これが等号で成立するとき, その均衡は (図-4a) となる. (図-4a)に於て,bb線は生産者の利潤線であると同時に家計の予算線である. 生産物市場に於 て, t. 38. .. ●. ・. ●. ●. ●. ..

(10) . . 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策. c I y 」-g. U‘ ( )=U, c - , ,1 α′α′. ↓g=f( l ) y 」 j f K′ k ー-----.‐K 一 ‐→-」”. ′1 l fl 〒 〒. l k 図-3. U i. C , y 」-g. U,( )=U, c - - ,1 居 ー,↓. ′ ? c. = h c. f c. =C. l f=1 。. l ) y i‐g=f( j. -------.11111. c c:yテーg. --‐→-. i. =. ′1 1 〒 〒. 1 I 」 ,1. 図一4 a. 13 a) (. cf> “ 一g. であり, 労働市場に於て l (13 b) f r<l である. 故に, 生産物市場 での取り引き数量( )はその供給量に等しく, 労働市場での取り引き数 y 。 量 (』) はその需要量に等しい. よっ て, (14a). c 〉yf一g=c。. (14 b). 1 r<l f 。=l 39.

(11) . 久保田 義 弘 U,( )=U, c ー - ,1 y i‐g. 1 ) y i-g=f( ,. l f=1 。 図-4 b. である. 古典派の均衡点はCによって表わされる. (7d) の関係 が成立するときには (図-4 b) によっ て古典派の均衡は描かれる. (図-4b) では意図された投資 が意図された貯蓄におよ ばないことを示 している. (図-4a) は高い実質賃金率が失業の原因であることを示唆しているのに対し, (図- 4 b)ではその原因を不 適切な初期貨幣残高にも依存させている. そ の残高が不適切な水準にあるとき, 抑制されたイ ンフ レ均衡の状態にあるのか● , それとも古典派の均衡の状態であるのかは選好及 び生産プロセス の性質 に依存する. 3,3. 政策効 果. 固定価格体系に於ける政策変数として財政支出の水準, 価格水準及び貨幣賃金率を取りあ げる. その支出は生産物の購入に向けられ, 政府はその市場で制約されないと仮定される. その支出拡大 は失業者数を減少さ せるためになされるな,らば, 生産物市場に超過需要かつ労働市場に超過供給が 併存していないときに÷ その支出の増加がなされるであろう. 同質的家計から構成される巨視模型 ではその数の減少はその効用水準を高めるであろう. このようにその支出の増加 (或いは減少) が 有効か否かを判断する指標の一つとしてその効用水準がある. その支出の変化によっ て効用水準が 高められるときには, その支出政策は有効である. それぞれの均衡状態でその支出変化の政策効果を考察してみよう. ワルラス均衡でのその増加は 一時的に生産物市場 に超 過需要をもたらし, 価格水準の変化が実質賃金率の低下をまねき, 労働市 場に超過需要をもたらし, 貨幣賃金率の上昇をもたらす. このように価格水準及び貨幣賃金率が伸 縮的な場合には, その支出の増加 は最終的にはワルラス均衡には影響 しないであろう. 抑制されたイ ンフレ均衡における財政支出による政策効果を考察してみよう. この経済状態では 両市場に超過需要があるので, このことを正しく知ることが出来るなら ば, 政策担当者は財政支出 を削減させる政策を採るであろう. この削減 は抑圧されていた家計の消費需要が満たされるこ とに 40.

(12) . . なり, その労働供給量を増加させる であろう. このことは(図-2) を使っ て説明される であろう. 財政支出の削減は一人当たりの財政支出を小さくすることを意味す る. 一人当たり財政支出をgと すると, その削減は△g<0であることを意味する.( )式が考慮されると, 5 Q5 ). △(m,- m, )/p=△g< 0. という関係が得られる. これより, △(mー一 期)/p<0となるので, (図-2)に於て, 家計 の予算制 約線を下方に移動させる. 家計の選択する点はhから げ に移動する. 両市場の取り引き数量は R 点 で表わされる状態がら 裂 で表わされる状態に変化する. 両市場での取り引き数量は増加する. その 政策は労働市場の超過需要を小さくするが, しかし, 生産物市場の超過需要を小さく するかどうか は判然としない. だが, 家計の効用水準は低められる. ケイ ンズ均衡において財政支出の効果を考えて みよう. 両市場に超過供給 が存在するときに, 財 政支出の増加は生産物市場における需要を大きくすると考えれる. ケイ ンズ派及び新古典派総合は その増加によっ て両市場の超過供給を小さく出来ることを主張している. これはケイ ンズの乗数効 果によると説明される. 同様のことが (図-3) に於ても説明される. 財政支出の増加 は, Q 6 }. △(m,- mー )/p=△g> 0. ′ とするので, 家計の予算制約線を上方に移動させる. 家計の選択点はh k からh k に移動する. 生産 物市場及び労働市場の超過供給量は減少することがその図より明らかである. また, その支出増加 は家計の効用水準をも高める. 古典派の均衡に於 ける財政支出の変化の効果を考えてみよう. 古典的均衡では生産物市場に超過 需要があり労働市場に超過供給がある. 労働市場の超過供給を小さくするために, 政策当局が財政 支出を増加させるならば,( 1 6 )式が得られるので, 家計の予算線は上方に移動する. その移動は (図 -4a) に於て家計の選択点をh 。から 甘 に変化させる. 生産物市場の超過需要量はさらに大きく なる傾向をもつが, 労働市場の超過供給量は減少する. 家計の効用水準が高くなるのは(図-4a) より明らかである. 同様の議論は (図-4b) に関しても展開されることになる. マランボーの体系において考察される他の政策は価格及び所得政策である. 現実に政策当局が生 産物価格や賃金所得にいかなる影響を・ もつかについては確定したことを云えないであろう が, ここ では外生変数とされている生産物価格及び貨幣賃金率が外生的に (例えば政策的に) 動かされたと きに, それぞれの経済状態にいかなる影響を与えるかを考察してみよう. それらが外生的に変動す るとき, 生産物価格と貨幣賃金率が比例的に変化するか, いずれか一方のみが変化するかであろう. 前者のような変化のときには, ,実質賃金率は不変に維持されるが, 実質貨幣残高の水準が変化する. 後者のような変化のときには, 実質賃金率と実質貨幣残高のいずれもが変化する. 最初に, 抑制されたイ ンフレ均衡において価格・所得政策を考えて みよう. 生産物価格と貨 幣賃 金率が比例的に上昇する場合から始めよう. この場合には実質賃金率は一定不変である.・ しかし, そのような変化は, Q ) 7. )/p (m,- m,. ●. !. を小さくするので, (図-2)の家計の予算制約線は下方に移動する. このことは, 家計の労働供給 を増加させ, 生産物需要を小さくする. その政策効果は財政支出削減の場合と同じである. 両市場 の超過需要量は減少する. 生産物価格のみの上昇は, 実質賃金率を低下させ, かつ初期実質貨幣保有残高を小さくする. 実 質賃金率の低下は労働需要量を増加させる. しかし, 初期の実質貨幣残高の減少は家計による労働 供給量を増加させるであろう. よっ て, 生産物価格の上昇は労働市場 の超過需要量を小さくするか 否かは不明である. しかし, 生産物需要は減少し, その供給 は増加するので, その上昇は生産物市 ・. 41. ′ .●. ● .・. ● . ・.1」・ . ・ ● 1 . ●.● .●.● ●. ・ 1 ●. ● ,.・ ●.● . ● ・ 1 ● ● ● ●r ・ . ● ・ ● . ・. .●● ● ● .・. . . . ●. ・ ●. ● . ● . ●. ・ 1,.・ ●● ●. 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策.

(13) . 久保田 義 弘. U- Ui. h′ 1 ---- -- - 」-^ ---● . I 1 1 . 1 1 ---. aa. ′ FR. R ′ 1 〒1 〒. (図‐5) 場の超過需要量を小さくする. (図-5)において価格上昇の効果が示されている. その上昇 は家計の予算線を aa 線から 三〆 線 が実質賃金率の下落による代替効果を ) に移動させる. このと ,き初期貨幣残高 (実質値 の減少効果 凌駕するなら ば, その上昇は労働供給量を増加させる. また, 初期の実質貨幣残高の減少によっ て 生産物需要も減少する.(図-5)においてその上昇は家計の選択点をhR から 甘R に移動させる. そ. の上昇の生産者の行動への影響は容易に説明される. 実質賃金率の下落は労働需要量及び産出量を 増加させる. 生産者の選択点はFRから FR に移動する. (図-5) から明らかなように, 生産物の 超過需要量は減少するが, しかし, 労働の超過需要量 が減少するか否かは判然としない. また, 家 計の効用水準は低くなる. 貨幣賃金率のみの上昇の効果について説明しよう.その上昇 は実質賃金率のみを上昇させるので, 労働需要量は小さくなり, 労働供給量 は代替効果が支配的であれ ば増加するであろう. しかし, 一 般にその上昇が労働供給量を増加させるかどうかは判然 としない. その上昇は生産物の供給量を減 少させ, その需要量を増加さ せる ので, 生産物市場の超過需要量は増加する. そして, 家計の効用 水準は高くなる. ケイ ンズ均衡における価格と所得政策を吟味してみよう. 両市場に超過供給が存在するので, 政. 策として生産物価格及び貨幣賃金率を低くする手段が採択されるであろう. 最初に生産物価格と貨 幣賃金率を比例的に低下させる政策の効果を吟味してみよう. この場合には, 実質賃金率は一定不 変 であるので, その変化によっ て生産者の行動は影響されないであろうが, 家計行動はそれによっ て影響されるであろう. 生産物価格の下落は初期の実質貨幣保有残高を増加さ せるので, 家計の予 算線を上方に移動させる. このことによっ て家計の生産物需要は大きくなり, その労働供給は小さ くなるであろう. よっ て両市場の超過供給量は減少する. また, 家計の効用水準は高められる. そ の比例的低下政策の効果は財政支出増加の効果と同じであろう. 故に, その効果は (図-3) のよ う ,に示されるであろう. 42.

(14) . . .●● .. 価格水準のみの下落効果を吟味してみよう. この下落は実質賃金率を上 昇させるので, 生産者 に よる労働需要量は減少する であろう. 同様に生産物の供給量も減少するであろう. その下落の家計 行動への影響は実質賃金率の上昇だけではなく, 初期の実質貨幣残高の増加を通じて生 じることに なる. 後者の効果が実質賃金変化の労働供給への効果を凌駕するとき, その下落は労働供給量を減 少させる. また, その実質残高の増加は生産物需要を大きく する. よっ て, その下落は生産物市場 の超過供給量を小さくするが, しかし, 労働市場の超過供給量を小さくするか否かは判然としない. 1 ) 家計の効用水準はその下落によっ て高くなる. その下落の効果は (図-6) に表わされている ( . 貨幣賃金率の下落 の効果について考えてみよう. その下落は労働需要を大きくし, その供給を小 さくするであろうから, 労働市場の超過供給量は減少するであろう. また, その下落は生産物供給 を大きくし, その需要を小さくするであろうから, 生産物市場 の超 過供給量 は減少するであろう . 家計の効用水準は低くなる であろう. 古典派の均衡における価格及び所得政策について吟味 してみよう. 価格水準と貨幣賃金率が比例 的に変化する場合を考えてみよう. この場合, 実質賃金率は一定 であるが,(m,一mー )/p は小さくな る. このことは家計の予算線は下方に移動するこ● とを意味する. 生産物需要量は減少するので, 生. 産物市場の超過需要量は減少する. 家計の実質貨幣残高が減少するので, 家計はその労働供給量を 増加させるであろう. よって, そのような変化は労働市場の超過供 給量を大きくするであろう. 価格水準のみの上昇は労働需要量を大きくす る. その上昇は初期の実質貨幣残高を小さ くするの で, その労働供給量は増加する傾向をもつであろう. しかし, 実質賃金率の低下はそ の供給量を減. 少させる傾向をもあらわす. 古典的均衡の場合に代替効果が実質残高効果を凌駕すると想定される ならば, その上昇 はその供給量を減少させるであろう. このことは労働市場 の超過供給量が小さく なることを意味する. 生産物市場の超過需要量は減少するであろう, というのは, 実質貨幣残高の 減少のた め, 家計の生産物需要量は減少するのに対し, 生産者はその産出量を増加させるためであ る. その上昇は家計の効用水準を低くする. 貨幣賃金率のみの上昇の効果について考えてみよう. その上昇は生産物の超過需要量を大きく す. Uf. Ck. U‘. h k =. 0. ′ 1 k k l. 1 I j ,l. 図-6 43. . ・‘ ●.●●● . ・ ・ .」. ● ● ●.・ r . ●●. 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策.

(15) . . 久保田 義 弘. Ui ′ ÷ c C c l y j‐g. ’ ---- ? c. hも I. ,. … -. 0. f さ. 1 c. =. 1 ′ ーーー.・ー. ・ ー. . . ‘ ‘ ld. - .‐ ・, . - - . - - -- - -- - .- , .・ ‐ . - .-- ,・. ‐‘. = fl cF y. UI. ,f ‘. -. =. …. d 1. 1 〒. αd. dd. 1 l ー , .j ,. 図-7. ることは自明であろう‘ その上昇の労働市場への影響について考察してみよう. その上昇の労働供 給量に与える効果は不明である. 実質賃金率の上昇は代替効果と所得効果を通 じてその供給量に影 響する. 代替効果が支配的であるならば, その上昇はその供給量を増加さ せるであろう. その逆の 場合には, その上昇はその供給量を減 少させるであろう. よ づて, その上昇が労働市場の超過供給 量を減少させるか どうかは判然としない. もしその上昇にも拘らず, その供給量が一定不変である ならば, その上昇は労働需要量を小さくするので, その上昇は労働市場の超過需要量を大きくする 2 ) で あ ろう. こ の こ と は (図 - 7) に 表 わ さ れ て い る.(. 4. ミク ロ 的 基礎 につ いて マランボーの巨視模型はそのミクロ的基礎としてベナシー 〔3, 4〕 の ・非ワルラス模型″ を使 用 している. これは固定価格体系であり, そこでは数量のタ トヌマ ンによっ て市場が調整されてい る. この意味に於てベナシーの模型は非ワルラス模 型である. ベナシーは家計の効用最大を満足する有効需要関数に不動点 が存在すること, つまり彼の固定価 格均衡の存在を示した. 各々 の市場に於て有効需要関数 を各主体が表明するとき, 彼の行動を制約 するものは通常の所得制約 と知覚された割り当て制約である. これらの制約の下でそれぞれの主体 は効用最大をもたらす有効需要量を表明する. しかし, 彼によっ て表明される有効需要量は必ずし も実現されない. その需要量がその供給量を超過する場合には実現される取り引 き数量はその供給 量である. 実現される取り引き量を全ての主体に関して総和すると, その値は零である. これは取 り引き 一均衡″ と呼 ばれる. 44.

(16) . . . この均衡を満足し て, 表明される有効需要量と実現される数量との関係 は割り当て関数として表 わされる. 任意の主体の割り当て量は他の全ての主体の有効需要量の関数である. 主体iのhに於 ) は, ける割り当て数量 (Z , h 0 8 ). z. ) ( i=1 h(乞. h h h=F, , …, 2。 ,2 , …, n). と表わされる. その 一方で主体は, 交換過程の間, 彼の取り引き可能性についての制約を知覚する. その際に彼 は獲得した全ての情報量を利用する. その集合は市場価格及び他の主体によっ て表明される有効需 要量を含んでいる. 固定価格体系では, 後者の情報が特に重要であり, それが彼の知覚される取り 引き量に影響すると考えられる. ある任意の市場に於ける有効需要量と知覚される数量との関係 は 知覚された割り当て関数と呼 ばれている. 主体iの市場hに於ける知覚された割り当て関数はその 市場を構成する全ての主体の有効需要量の関数である. その知覚された割り当て数量をZ , hとする と, その関数は, q9 }. Z i=1 , h=G‘ h(2, h , …, えh) ( , 2, …, n). と表わされる.この関数によって表明される知覚数量が彼の有効需要量の決定に重要な働きをする. 主体iの市場hに於ける有効需要量はh以外の市場での知覚された割り当て関数に制約されて決定 ) される. このよう にして表明, された有効需要量・(Zh .が実現されるか否かはその市場条件に依存す る.. 固定価格均衡は有効需要量の集合に関じて定義される. ある任意の有効需要量の集合が, この集 合に基づいて形成される知覚された制約の下で得られる新しい有効需要量 の集合に一致するとき, 固定価格均衡が定義される. その均衡が定義されるためには, 効用関数が連続かつ準凹であり, そ れぞれ主体の割り 当て 関数 が連続であり,.かつ, 有効需要量の集合がconvexcompact で あ る こ と を必要とする. これらの条件が満足され, 有効需要量の集合に不動点が存在するとき, , その不動点 る有効需要量がいつも繰り返し主体に・ よっ て表明される. これによっ て固定価格均衡の存 に対応す● 在が明らかにされることになる. . ;▼ , , . . , 、 コ ーの枠組みに しかしながら÷ ベナシーさらにマラ ンボーによるケイ ンズ理解はアロー& ドブリ . ・. 沿っ たものであり,私にはそのような理解はケイ ンズ理論とは全く異質 のものであろうと思われる.. 5. むす・びに か えて 本稿では固定価格体系の一つであるマランボーの巨視模型の特徴を概観し, さらに, その巨視模 型が, 一定不変に維持されている財政支出のもと で, 所与の価格集合に対応してワルラス均衡, 古 , 典的均衡, ケイ ンズ均衡及び抑圧されたイ ンフレ均衡のそ・れぞれをもたらすことを説明し ,た. それ. ぞれの均衡に於て財政支出及び価格・賃金の変化の効果が分析された. マラ ンボーの巨視模型はそのミクロ的基礎 と して数量に関する タトヌマ ンを備えて い る点に於 て, 彼の模型はベナシーの ・非ワルラス模型″ と同じであるが, しかしながら, マラ ンボー自身も 積極的に価格設定を内生的には説明して はいない. 固定価格体系の最大の特徴であり, かつ, 最大の欠点は価格体系が模型の外から与えられるとこ ろにある. 大半の所謂不均衡の巨視模型 は価格決定メカ・ニズムの説明を放棄し, 固定価格下・で均衡 ●のための充分条件を明らかにして (例えば, ベナシー の ・ケイ ンズ均衡″ やドレーゼの均衡) の存在 いるにす ぎない÷ 45. .●. . . ●.●‘ .・. ・ 1 . ... . ●.1. ●. . . ●.・ 1 . ● ● ● .・ ・ . ● ・ 1 ●.・ 1・ . .●. .. ●・ 1 1 1●●● . ・ ′. ・ ・●●. 1 ● ●.● . ●. ● .●, . ●. ● . ・ ● ● .・1 ,. ・ 1 .r.1 .’ . .・ ‘ ...・..・ ● . ・ ● ●. 失業均衡とその均衡下での財政・所得政策.

(17) . 久保田 義. 弘. ことを内生的に解明することであろう. 経済理論家がしなければならないことは価格が固定化する・. 註 ( 1 ) (図-6)に於て, f eから kが価格上昇前の生産者及び家計の選択点である. その上昇は家計の予算線をe k及びh ′に変わる 生産者の選択点はf から 乱 に移動する 故に 両市 からh ぎぎ に移動させるので, その選択点はh k k k , . . 場の超過供給量は減少し, 新しいケイ ンズ均衡は K′として示される. ( 2 ) (図-7)に於て, h c及びf cが貨幣賃金率上昇前の生産者の選択点である. その上昇は家計の予算線をcc線から ごご線に変え,生産者の利潤線をddから dd 線に変える.家計の労働供給量がその上昇にも拘らず一定不変であ ・の け。とr るならば, その上昇は労働市場の超過供給量をより大きくする, (図-7) 。とを比較するとこのことは 自明であろう,. 参考文献 “ ” i l ibr i l of,lncome and Emp l I Di oyment 〔1〕 Barro, R,J sman sequ um Mode , Gros , , and 日,1 , A Genera A粥8“”7 l 1971 ) pp 2 Ec o“o粥た 兄eひれク ,16 ,82-93 , ,vo ,(. 〔2〕. idge i i dge Univer Bar ty s ro sman o明 【庇 諺 α“〆 虜潟好めれ, .Gros .and H.1 ,Cambr ,R.J ,虜わ“の ,Cambr ,E粥めZ Pr 1 9 6 7 es s . , “ ” ian Di l ibr ium ina Monetary 取;onomy o“o加f c s粥霞榔 ‐P. sequi 〔3) Benassy,J. , 尺eの捌 け Ec , Neo‐Keynes , ) pp vol .42(1975 .502‐23 . ” “ α“〆≠ ,. f l ionsofEf ive Demadd Theory i t 〔4〕 Benassy ty Signa “仰ご α 7 2 ‐P, sandthe Foundat ec , , 0n Quant ,J l 9( 1 9 ) 1 4 ‐ 6 8 7 7 7 7 元の瑠 v o zメ メ βの 伽 加たs p p . . . , “ ‘ ‘ ion:A Theore i i lut ian Count t caI Appra sal errevo 〔5〕 C1ower, R. W. , in 脳わ“e如か Z先飾り, , The Keynes Pengu in Books . ,1969 “ ”A,Recons i i ion of Mone derat R tary Theory 1 W 〔6〕 C on ofthe Mi crofoundat c蹴り粥た owe r . , , 粥郎 加勢 E , , l ) 6( 1 9 6 7 9 め粥り解≧ o v p p . , , , “ “ lopment l ibr ium Theory l sin Macroeconomi c Di s equi 〔7〕 Drazen, A, , βの伽粥露“餌 ,48 , Recent Deve ,Vo ( 1980 ) pp .283-306 . ” f i l i br i l ionson Some Cur ian Economi t rent um Theory:Re ec cs and GeneraI Equ 〔8〕 Hahn, F. H. , Keynes M i l l 1 9 Debat 1撫 順化me i t o“s け Mαcmβ co“o加Z c s ed) G,C. Har cour a c m a n esrin 7 c o“o粥た 扉o“”吻Z . , , 77 ” &”“d粥αのα ”Exerc メ E れ l 1 ) i i IE i l i b i 7 9( 9 7 7 C t i ザ r 7 2カメ創 c o “ o 粥 v o 〔9〕 Hahn,F.H. s e s n o n e c u r a u a p p q . . , , , 210‐26 .. 〔 10 〕 〔 11 〕 〔 12 ) 〔 13 ). Hi cks ”e 卿d G物ま胡,2nd , ,R. .ed .oxford ,1946 ,J , ””Z ,C1arendon f 1 Hi R C Z ′ 〆 G o d C d 1 9 6 5 加 云 J 為 ゆ α “ のw x o r a r e n o n cks , ,, , , , ,. l Hi cks α凋メメリ 粥 βの 伽 粥 ね,oxford,B1ackwel . .R C ,1979 ,J E idge l l Keynes M Z彬 G ‘ 7 1 跨 M 加彰 f d J m 粥〆o跳ね鋤『 an げ B “ g の o ” “ e s α “ か 馴 , ,1973 ,Cambr , Macmi ,, リ , β K o f o f d i i i A 0 ず 〆 効 d U 〔14〕 Le E ね t 比 如 ionhufvud のれ o 加 c s ” e 呼 8 蘭 x o r x o r n v e r s “ α c o “ o m B S “ 卯 y 釧 α , , , , , Pr es s , ,1968 Ma l invaud 1脳 Z跨の7 l e粥〆の粥伽i 尺eco“sideメゼメ,oxford,B1ackwel y げ びれ . ,1977 ,E. ,7. 〔 15 〕 〔 16 ) 〔 17 〕 〔 18 〕. idge idge Un iver i Ma l invaud ty Pre器,1980 すか & び”8欄劉の〆粥 川,Cambr s . ,Cambr ,E. ,Pm宛加脱‘ P ” i D N Y k H & R 1965 Pat 屑 廓ね d 2 d d る r e r o ” 〆 榔 α ” c 榔 n e nkin e w o r a ow ‘ の p . . . , , . , , ,. 1綾 の粥卿す We intraub i ぎ すか け 屑i i d る“ oれs:7 ‐ cme c o“omi c sα”〆 Mαme c ommi c s ,E.R. , 順化〆咳り”“吻ご ,Cambr C b i d U i i P 1 9 t 9 7 r n r r s e v e s e s am ge g y , , ,. (本学助教授 旭川分校) 46.

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