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明治期における小学校二部教授の実態

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(1)Title. 明治期における小学校二部教授の実態. Author(s). 佐竹, 道盛. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 43(1): 17-31. Issue Date. 1992-07. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5222. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第43巻. 平成 4年7月. 第1号. I I 43 i Sec ionI C) VO t t ty of 政iuca lofHokkaido Universi on( Jouma . - , No. ly Ju ,1992. 明治期における小学校二部教授の実態. 佐. 目. 竹. 道. 盛. 次. は じめに. 1 二部教授の制度化 1 1 二部教授の推進 1. 二部教授の推進策 2. 二部教授の全国的実態 皿 官立, 公立学校における二部教授の実況 1. 北海道の小学校 (以上, 前号) 2. 長野県師範学校付属小学校 3. 兵庫・広島・熊本3県下の小学校 4. 横浜市戸部小学校 (以上, 本号) 5. 東京高等師範学校付属小学校 6. 女子高等師範学校付属小学校 おわりに (以上, 継続). 2. 長野県師範学校付属小学校 ここで長野県師範学校付属小学校で行われた二部教 授の研究を検討していきたい. 同校の研究は 1 } 研究報告の内容は ( 『信濃教育会雑誌』第220号に掲載されている( 2 )法文適用の )法令の要旨,( ,1 . ) 訓練 ( ) 二部教授と単級教授 時間割 ( 7 8 ( 5 ) ( 6 ) 教授法 ( 4 ) 教科及教授時間数 3 )編成の種類, 見解,( , , , , との利害比較等の8項目にわたっ ていて,二部教授にかかわる主要な事項を含むものになっている. 以下, これらの事項について検討していきたい. 長野県師範学校付属小学校の研究報告(以下「研 究報告」 とする) はまず二部教授に関する法令の解説を行っ ている. 2 ところで小学校 叉令施行規則はその第34条に次のような二部教授の許容条件を規定している(} . 第3 4条. 左ノ各号ノーニ該当スル時ノ、小学校若クハ其分教場ニ於テ全部若クハ 一部ノ 児童ヲ 前. 後二部ニ分チテ教授スルコトラ得 1. 一学級毎ニ本科正教員一人ヲ置クコト能ノ・サル時. 2. 児童ヲ同 時ニ容ルルニ足ルヘキ校舎ノ設ケナキ時. 3 児童ノ就学上又ノ・教授上特別ノ必要アル時 「研究報告」 は上記の第1号の趣旨を 「経費支出に制限あるとき」 及び 「適当なる教員を得難き , とき」 を指していると指 摘している. この規定が市町村財政の制約や教員の不足を想定したもので 17.

(3) . 佐 竹 道 盛. あることは, 教育界の一般的な見解であっ た. また第2号の規定について 「研究報告・ は, 「校舎建築の見込み立た ざる時」 及び 「校舎建築の期 日までの時」 に該当するという見解を示している. 財政上の理由により校舎建築が困難な場合か, 財政上に問題はないが, 建築が完了するまで二部教授が許容されるというものである. 第3号に関しては, 「就学上」 の必要と, 「教授上」の必要のそれぞれについて見解が述べられる. 就学上の特別の必要というのは 「研究報告」 によれば, 「通学上の便否により前後二部に分ちて可と する時」を指しているとされ, 教授上の特別の必要というのは, 「単級学校に於て特に二部教授の適 当なるを認めたる時」 や, 「児童を優劣二部に分ちて教授するの適当なるを認めたる時」 あるいは, 「季節により二部に分ちて教授するの適当なるを認めたる時」 に当たるとされている . 「研究報告」 は以上のように法令の趣旨を解説した後で 二部教授に対する評価を行っ ている , . それによれば,「規則第三十四条及第三十五条の精神を研むるに二部教授なるものを教育上及行政上 止むを得 ざる場合に限リイ テふ可き者と認む」 というのである. 二部教授をやむを得 ざる方策とみる 見解は, 教育界の大方の見方であった. 積極的にすすめるべき編制法ではないのである. しかも二部教授の適用範囲に関して 「研究報告」 は, 尋常小学校では 「先づ第一学年及第二学年 に行ふものとす」 という立場を主張している. 適用学年を限っ ていこうとしているのである. その 理由は,「幼年者は法規上配当の学科数及時間の少なきと家庭に生活せしむ可き程度の高学年より多 きによる」というものである. やむを得ない措置として行う場合の, 二部教授実施の順序としては, 一応穏当なものといえよう. 「高学年即ち第三学年就中第四学年に此の制を施か ざる」方針が採られているが その理由は「義 , 務教育完成の時期なれはなり」 というのである. また 「研究報告」 は, 尋常高等小学校併置の場合には, 二部教授は 「尋常科に先ち高等科に適用 するを適当と認」める立場を明らかにしている. その理由は,「義務教育の部分を重んずること」「尋 常初年の児童にありては後教授の 児童は前教授児童に比して精神疲労の度高等上級の児童」 よりも 大きいことが実験上明らかなこと,「高等小学の児童に二部教授を施すときは其一部の児童をして家 事の手伝を為さしめ得る」こと, 「高等小学の 児童は尋常小学の児童に比すれば自裁力の度著しく発 達し居る事及始業予定時間にも大差なく集まり得る」ことなどがあげられていた. 義務教育の理想, 発達段階の差違, 児童の家庭環境などへの配慮がうかがえる措置であっ たといえる. 次に, 教授法に関しては「特に普通教授法と異なる処を認めず」としながらも, 「研究報告」は「如 何にせば最時間を経済的たらしむることを得るか」 を研究すべきであると説いている. 二部教授に 不可避な教授時数の減少に対処する方法の工夫が,教授法研究の主要な課題とされているのである. このような意味の教授法について 「研究報告」 は, 準備段階における教具の準備の必要を, 「教具 は秩序整然として適当の位置に置か ざるべからず然らされば実際教授の際に当たり渋滞を来し時間 を徒費」 することとなるから, と説いている. 教授の準備に関しては, 小黒板の利用, 配水記帳, 復習, 予習等の具体的項目を示したうえ で, 「要するに教授を敏活ならしむる為に教師は休憩時間に於て充分の準備をなすことを務 むる こと 」 を 説 い て い る.. 実際の教授に関しては, 自習の必要, 予習復習の必要, 宿題提出の在り方, 宿題の 点検法, いわ ゆる 「劣等生」 の取扱などが具体的に説かれている. 二部教授における自習の重要性を改めて印象 づける主張がなされている. まず自習の必要について 「研究報告」 は, 「教室内に於て一教授単元の完成を望むこと難ければ教 授法は専ら主要部分を授け家庭に於て自修にて之か短を補ふことを勉むべし」 と説く. 自習が二部 18.

(4) . 明治期における小学校二部教授の実態. 教授法のきわめて重要な部分に位置づくことが明らかである. 自習のための宿題の提出について 「研究報告」 は, 「宿題は各科に渉り交互に之を提出し然も難題 を一時に多く出し児童を苦しむること或いはあまりに多くの日数に渉るものは避けざるべか らず」 な どと注意事項を提示している. また宿題の点検法に関しては特に 「児童をして自発的の方法を取らしめ或は相互に交換して行は しむ等教師の力を少なからしむることを謀るべ」 きことが奨励されている. さらに, いわゆる 「劣 等生」 について, 同学年を前後二部に分っ場合には, 二度同一の教授を受 けさせ, 成績の進歩をは かることが説かれている. 時間の経済をはかる方法としての前部後部一緒の合組教授についての注意事項が3項目掲 げられ ているが, できるだけ時間の浪費を避けようとする工夫といえる.「読方綴方図画又は板書せる運算 書取等に就きては教師の命を侯たすとも挙止批正課業の継続等適当の方法を取らしむること」「運算 点検に於ては別に小黒板上にも行はしめて直ちに比較対照せしめ得る様になすこと」「綴方等に於て は直ちに記帳せしめて二重の手数を省くこと」 などが示されているのである. 時間を節約することに関連して訓練上の注意事項が示されている‐ 「自動的習慣の養成」 及び「父 兄援助の必要」 がそれである. 自動的習慣養成の具体的な事例は次のように説かれている. 二部教授に於ては編成上教授時間を減らすの己むを得 ざるものなれば児童をして自ら為し能ふへ き事は成るへく之を為さしむるを要す例へは教室の出入, 学用品の出納, 窓の開閉, 教授器具の 整頓等に到る迄凡て自発的に活動せしめ無益の手数と時間とはなるべく之を減少し而かも教育の 効果は之を相当に収めんとするものなる が故に大に此自動的習慣養成の必要を見るなり. 二部教授においては, 「児童日常の動作学業共に学校に在るの時間少」 いという事情にあるので, 「父兄の之を援助するなく独り学校にのみ依託せんには完成すること能はさるもの」であるから「学 校は宜しく家庭に其趣旨を詳細に通報し置き十分に其援助を求むるの便を謀るべし」 とされる. 学 習に関しても, 訓育に関しても家庭の援助 が不可欠となる. 最後に 「研究報告」 は, 単級教授との比較において二部教授の利害を掲 げている. 二部教授の原 型となっ た ドイツの半日学校は, 単級学校の欠点を克服する方途として提唱されており, 我が国で も,明治37年に文部省から二部教授の研究を命ぜられた官立の高等師範学校ならびに公立の師範学 校が, ドイツの前例にならいつつ単級教授と比較して二部教授の利点を検討していたのである. 長 野県師範学校付属小学校も同様な二部教授の利害の検討を行っ ている. 表1に示すとおりである. 二部教授の利点として教授上では, 時間数を2倍 に延長することができること, いわゆる劣等生 の指導が十分に行えることなどがあげられているが, 教育界で広く認められていた利点である. 学級の児童数の減少に伴う個性の助長も, 一般 に認められていた利点であっ た. 家事を見ならわ せることによっ で労働の習慣を養成することができるという指摘は, 長野県師範学校 叉独自の見解と い っ て よ か ろ う.. しかし, 表に掲げるような弊害も認められるのであるから, 上記のような利点を根拠に二部教授 を積極的に推進するわけにはいかないのである. 「研究報告」は, 前述のとおり, 二部教授をやむを 得ぬ場合に限っ て行うべきものとみていたのである.. 19.

(5) . 佐 竹 道 盛. 表1 二部教授の利害比較対照表 弊害と認むるもの. 利益と認むるもの. { ) 教授上 1 ( 1 ) 教授上 ィ ) 児童の学習 時間をして減少せしむること ” ) 二部教授制を取る時は其学年に対する直 ( 接教授の時間を単級制に比較すれば二倍に 延長することを得 ( ) 児童数の半減により劣等生の指導を充分 口 なすことを得 をぅ 教材の分量を多く し且つ確実なる処置を. ) 教師の教授 時間延長するか故に疲労の度 ( 口 増大し後半部児童に其弊を及ぼすこと ←う 復習練習等の課業をして不規則なる家庭 にも依頼せ ざるへから ざること. なすことを得 ( 2 ) 訓練及管理上 ”) 児童数半減するを以て其個性を明にし助. ( 2 ) 訓練及管理上 ( ィ ) 兄妹長幼相扶けて通学するの便なきこと. 長矯正すること単級制に比するに多きを得 ( ) 教室の静粛を保つを得 ロ. ( ) 教師と接する時間少なきにより感化を受 ロ くるの機会減少すること. ◎. 幼年生の取扱上便利なることを得 家事を見倣はしめ労働の習慣を与ふるこ とを得. ◎. 各自の学用品をして混し易き弊あること. 杓. 休憩時間中に於て長幼相楽み兄弟相扶く るの時機を失せしむること. 的. 男女長幼種々なる児童の教育的感化と家 庭及社会の一模型と一致するを以て殊に必. 要なれとも斯る便利を欠く ( 3 ) 経済上 机, 腰掛, 器具, 器械等を利用することを得. 3 ( ) 経済上 児童の在校時間長きにより校費をして増大な らしむること. ( 4 ) 其他. 土地の状況又は家事の実情による不就学者を 就学又は卒業せしむるを得 『信濃教育会雑誌』 第2 2 0号, 明治3 8年1月25日) 注 長野県師範学校付属小学校 「二部教授研究報告」 ( による.. 3. 兵庫・広島・熊本3県下の小学校 女子高等師範学校教授東基吉は, 官命によっ て兵庫・広島・熊本の3県下の 小学校における二部 教授の実況を視察して, その結果を報告書にまとめている. 以下, 4回にわたって 『教育時論』 誌 3 )の内容を検討していきたい 上に掲載された報告書( . 東の視察は3県, 5市, 7郡, 26小学校に及んでおり貴重な資料を提供している. 視察報告書の 内容を表2に掲示する.. 20.

(6) . 明治期における小学校二部教授の実態. 表2 兵庫・広島・熊本3県二部教授視察報告書の内容一覧 ( 1 ) 視察せし学校 ①兵庫 ◎広島 ⑭熊本 ( ) 概説 2 ( 3 ) 学級の編制, 児童数, 部分. 附, 学校の設備. ①学級の編制. ③部 ②児童数 ③部分 ④学校. の設備 ) 時間 ( 4 ( 5 ) 担任教師 ①教師の資格 ②教師の労力問題 ③担任学級の種類と教師の労力 ④児童数 と教師の労力 ( ) 教授訓練 ①児童の成績 ②教授の方法 ③児童の自修 ④児童の疲労問題 ⑤管理訓練 6 ( ) 児童の欠席遅刻及放課時間中学校タトに於ける児童の生活 ①児童の欠席遅刻 ②放課時間 7. 中学校外に於ける児童の生活 ( ) 教師の手当と市町村の経済 8 9 ( ) 二部教授に対する家庭の感情 1 の 結論 ( 注. 『教育時論』 第804号 (明治40年8月 15 日) 同第805号 (明治40年8月 25日) 同第806号 (明治 , , 40年9月 5日) , 同第807号 (明治40年 9月 15日) による.. 報告書の内容は, 二部教授をめ ぐっ て教育界で論議されていた主要な問題を盛り込んだものとな っ て い る.. 報告書は3県下の二部教授の概況を以下のように伝えている. まず兵庫県の状況をみることにし た い.. 兵庫県に在りては, 二部教授に関して著しく奨励の方針をとれるが故に, 県内学校の総数七百十 六に対して, 尋常科全部に, 若くは其一部に之を実施せる校数, 実に三百三十一, 学級数千二百 四十六の多きに達 し, 宍粟郡の如きは十九の尋常小学校悉く全部に之を施行し, 之に尋常科の- 部に施行せるものを加ふれば総計二十五校, 其数に於て県内第一を占めたり, 而して其数少なき 郡に在りても尚水上, 加古二郡の二校, 印南, 城崎二郡の三校, 明石, 出石二郡の四校の如き凡 4 } そ何れの郡に於ても皆之を施行せ ざるなし( . 兵庫県が二部教授の積極的な推進をはかっていたことは, 当時広く全国に知られていたが, 東の 報告書も, よく兵庫県下の二部教授の盛況を伝えている‐ 熊本県について報告書は, 兵庫県とはやや異なっ た様子を伝えているものの, やはり相当数の二 部教授実施校があっ たことが知られる. 熊本県に在りては当初二学年の高等小学併置の計画を遂行せんがために, 市町村の資力経済の状 態を商量して, 二部教授の編制を奨励したろを以て, 一時之を, 実施せる町村甚だ多かりしが, 爾後校舎の増築等のために漸く其数を減ずるに至りたり然れとも尚県内学校の総数五百九十校に 対して, 百四十九校, 四百二十八学級の多きを見る. 総数の25 パーセントにあたる学校での二部教授の実施は,全国的にみても決して少ないほうでは ナ !し).. 次に, 広島県では二部教授の実施はきわめて少なく人口急増の問題をかかえる都市部でやや集中 的に実施されている感がつよい. 広島県に至っ ては, 前二県に比して二部教授を実施せる学校甚だ少し, 即ち学校総数八百六十三 に対して僅々五十に過 ぎず, 而して其中十数校は広島市の学校にして他の十校は呉市 の学校 叉なれ 21.

(7) . 佐 竹 道 盛. ば, 郡部に於ける校数は僅々三十校のみ, 然も此等は何れも皆一時的の施設たるに留まり, 本年 三月 限り廃止せらるべきもの過半を占めたり. 数が少ないだけでなく, 一時的な編制も相当数あるので, 幾分恵まれた状況にあっ たといえよう. 報告書は特に神戸市及び呉市の状況について 触れ, これら二市こそ法令の趣旨に適合する事例で あるとしている. というのも 「之等の地たろや, 何れも土地比較的狭小にして, 然かも其人口年々 月々非常の速度を以て増加 しつつあり, 此増加に応じて学校数を増加 し, 以て悉皆の児童を収容せ んことは蓋し容易の業にあらず」 という事情をかかえているからである. これら両市について 「こ の編制 方法の利害得失につきて, 論議するの日は既に過ぎ去りたるものに して, 今や実に編制に固 有なるべき欠点を, なるべく軽減し, 其利点を出来得る限り増大せしむる方法に向っ て鋭意考究せ ざるべから ざる機運に際せりと言うべきなり」 という見解が表明されている. 人口及び学齢児童の 急増地域での二部教授が盛ん なのは一般的な傾向であっ た. 法令の規定もそのような地域にそなえ るためのものであっ たといえよう. 学級の編制については, まず学校の全部に二部教授を実施するものと, 学校の一部に施行するも のとがあるが, 全部に施行するものは, 学級数の少ない学校であっ て複式編制をとっ ている. しか も実施している学校の数も少ない. 学校の一部に二部教授を採用 しているのは, 学級数の多い学校 である. 実施学年は低学年が多く, 高学年は少ない. その理由は,「二部教授編制何れも尋常科 一二学年に 多く して, 三学年以上に少きは高等学年に至るに従ひ, 児童数の減少するにも依るものなるべ しと 難も, 主として高等科に於て時間数を縮減することの成績上に及ぼす影響著大なることを, 経験又 は予想せるに依る」 のであっ た. 児童数をどの 程度にするかは, 教育効果に大きな影響を及ぼす事柄であり, ドイツでは前後部両 50名の多 30名ないし1 学級合わせて1 00名 を限度と定めていたが, 上記の3県では, 特に郡部で1 数にのぼっている.「熊本県春竹小学校の百五十名の如き, 同県腹赤小学校の百四十七名の如き, 即 ちそれなり, 姫路市野里小学校の如きも亦百 三十名に達せり.」という報告書の内容が注目されると こ ろ で あ る.. 前部, 後部の交代については, 一週間交代制を採るもの最も多く, ほかに一か月交代法を採るも の, 季節交代法を採るものなどがあげられている. 次に設備については,後部児童のうち定刻よりも早く登校する者を収容する教室が不足していて, 管理上問題の あることが指摘されているが, これもかなり一般的な傾向であっ た. 二部教授上設備の十分なら ざる為に, 特に困難を感ずる点は, 定刻前に登校する後部児童の管理 法なりとす, 勿論晴天の日に在りては運動場に於て, 自由に遊楽するに任すといへども, 雨天若 くは冬期に在りては多く廊下に在らしむるが故に, 之等児童の喧擾が他の授業の妨害をなすこと は忘るべから ざる事情なりとす. 教授時間数は 「尋常-学年又は二学年に在りては一日三 時間一週十八時間を課すもの最も多しと 5 ) す( 」という状況にあっ たようである. なかには熊本県佐敷小学校のように第1学年で20時間, 第 2学年で21時間をあてている例もみられる. 尋常科第3, 4学年では少なくとも21時間, 多いも のでは佐敷小学校の 27時間があっ たと伝えられている. 教師の教授時数は, 佐敷小学校の38時間が最多のものであっ た. 担任教師は, 身体強健で優秀な者をあてるべきことが説かれていたのであるが, 東の報告書によ れば, 「三県とも概して二部教授には, 正教員にして然も比較的優良の者を配当せり」という状況に あっ たという. なかでも二部教授の盛んな神戸市では,「神戸市に於て視察せし所に由れば, 二部教 22.

(8) . 明治期における小学校二部教授の実態. 授担任教師の多数は, 何れも熱心にして教授の方法にも熟練せるを見る」 と資格面の充実が目立っ ていた. こう した充実の背景には 「神戸市に在りては, 特別に手当ての月額比較的多額にして, 且 つ大抵其校の優良なる者を択んで之に当たらしむるを以て, 教師も自ら進んで之れに当たらんこと を希ふもの多き」 という事情があっ たのである. ここで注目されることは, 簡易科卒業生や女教員に適格者が多いといわれていることである. 報 告書は,「師範学校簡易科卒業者に多く適良のものを見たるは熊本県にして, 広島県殊に広島市に在 りては女教員にして二部教授を担任せるもの過半を占め,然も教育方法等に於ては何れも不可なく, 就中播磨町小学校の女教員の如きは極めて巧妙なるものありき」 という実況を伝えている.. 教師の労力問題について, 報告書は 「一週三十三時乃至三十九時の教授時数は, 教師の執務時数. としては決して多からずとせず」とし, 「殊に教師以外の時間, 即ち成蹟物の調査, 添削, 教授の準 備, 教室の整理, 其他の時間外日々更に二時間或は其以上を要せ ざるべからず」 と職務が多方面に わたることと負担の重いことを指摘している. 教師の負担は担任する学級の種類によっ ても異なるものである. 同学年の二部教授を担任する の は, 教授の準備に時間を軽減し得るため多くはこの方法をとっ ているのであるが, 他方で1, 2学 年をもっ て前後部を編制するものもあり, この場合の理由は,「前後の時間に於て被教授者の程度を 異にするは, 之を同一のものとするに比して幾分の教授の疲労を軽くするに依る」 というものであ っ た.. 教師の負担は、 1学級の児童数にも関係が深い. 法令によれば, 尋常小学校1学級の児童数は80 60人までは担任するこ 人とすることができるので, 二部教授の場合には前後部の 児童を合わせて1 とができるのである. 児童数が実際にこの数に近い事例も あるのである. このことについて報告書 は次のような論評を加えている. 一人の教師の教授力に対する 児童数には自ら制限あるべく, 縦令之を二部に分っとするも一日八 十人乃至百人以上の児童を取扱ふことは誠に困難にして, 教師の労力より言ふ時は, 一日一時を 増して児童数を半減する方遂に負担を軽くすべしと考へる. 一週の教授時数三十九時, 而して教 授すべき児童の数百五十人に対す. 此の如く にして良好の結果を収めむと欲す亦難しと言ふべき なり. 週当たり授業時数が多く, 児童数が限度に近い状況では, 教育効果が疑問視されるのも当然のこ と と い え る.. 二部教授に対する反対は, 児童の成績の低下を危倶するところからきていることが多いのである が, 3県下の二部教授の実況からは, 表面上の成績はそれほどの影響を受けていないと結論づけら れている. 特に尋常科第1, 2学年においてそうだといわれている. ただ第3, 4学年については 事情が異なるようである. 第三四学年以上に在りては, この編制のために多数の時間を縮減せ ざるべから ざるを以て, 其 成績の上に及ぼす影響の勘少なら ざることは, 経験せし者の一般に認むる所の如 し, 但尋常一二 学年に在りても単に知識を授くるのみならば普通編制のものと同量の材料を以てして尚之をよく すべ し, ただ授けたろ知識を充分鍛錬する上に於ては自ら不充分なら ざるを得ず, 又書き方, 図 画, 裁縫等の技能的教科は, 従前に比して梢々劣れる感なきにあらずとは, 何れも当事者の言明 6 } せ る 所(. 二部教授に伴う時間数の縮減は, 知識の定着を不十分なものにし, 技能科の成績の低下をもたら すことは一般的に指摘されていたことである. 教授の方法に関しては, 時間数の縮減によっ て生ずる欠損を補うため, 児童既知の事項, 比較的 23.

(9) . 佐 竹 道 盛. 重要でない事項等には時間を減らし, 実地教授の場合には比較的必要のない問答等を廃することが 説かれている. 3県の視察結果も,「今回視察せし所に依れば, 教授の方法に関しては前記の如く数 校を除く外概して 適切なるものありしが如く」 という状況にあっ た. 二部教授に伴う時間数の減少に対処 する方途として, 一般に自習が奨励されていたが, 視察報告 書も自習の実況に触れている. 自習の方法として宿題を課し, 家庭においてそれをなさしめ, その結果を点検する方法が広く採 用されていたが, この点に関して視察報告書は, 「教師の煩労到底よく 耐ふる所にあらざるを以て, 実際之を行へる学校は甚だ稀なるが如し」 と記している. 各家庭も教育思想が十分に発達していな いため自習を厄介視しており, また机などの用具も足りず, 子供を家事の手伝いに使用するなどの 事情もあっ て, 効果のある自習は望めないといわれている. 結局家庭練習会と呼ばれる組織にたよ る こ と と な っ て い る.. 是に於てか家庭練習会なるものを組織し, 各区に児童組合を設け, 各組は各戸廻りにて昇校前又 は退校後, 或は夜間に於て 一時間乃至二時間つつ, 一週間凡そ三四回寄合自修を行はしめつつあ り其結果良好にして家庭も大に之を歓迎せりと云ふ. また, 学校内における自習は, 設備の不足と看護者の不足がこれをはばんでいることが述べ られ て い る.. 児童の活動力は午前に旺盛で午後に減退するため, 午後の部の学習能率の低下が一般に懸念され ていたが, 視察の結果も,「午前に比して午後の教授力が幾分の結果を減ずるものあるは疑ふべから ず」 というものであっ た. 訓練上の問題点として, 時間数の減少に伴う児童の習慣品性の形成の不充分なこと が報告書で指 摘され, これに対する対策の研究が必要であるとされていた. 管理に関しては, 一般に午後の部の児童のうち早く登校する者が, 午前の部の授業の邪魔をする ことが問題 点として指摘されていたが, 3県の視察の結果では, 郡部でこうした状況がみられ, 都 市部では解決済みであるとされて いる. 二部教授の実施に伴っ て欠席遅刻者の増加することが懸念されていたが, 3県下の視察の結果で は, ほとん ど影響のないこ とが明らかである. 視察せし学校に就て見るに, 此の懸念は殆ど一の妃愛に過きさるが如し, 市部にありては通学距 離の遠から ざる為に, 仮令相伴うて通学し得ずとするも, 敢て出席の妨とはならず, 郡部に在り ても多く通学区域に依りて 前後部を編制せるが為に, 又敢へて出席に影響することなし, 家事の 手伝に至っ ては, 寧ろ従前は之れが為に, 全日欠席せ しめたりし家庭も, 半日の授業となりし為 め却っ て児童に取りては, 午後より通学することの午前よりするに比して好ま ざる傾向あるは事 7 ) 実なるが如しといへども, 然も之が為に殊に出席に影響することも なきが如し.( 遅刻についても, 時間の観念が確かでなかった児童が学校になれるにつれて, 遅刻者の数が減少 したと報告されている. 8 パーセントであっ たも 学校への出席の比率は, 熊本県玉名郡の例では, 二部教授実施前に88‐5 8 パーセ のが, 実施後は90.83 パー セントに増大して おり, 遅刻者の比率は, 二部教授実施前の2.3 ントから実施後は0‐44 パーセントに減少している. 幼児を背負っ て登校する児童の数も減少したことが報告されている. 村落の小学校に在りては, 従来幼児を背負ひながら出席せる児童のありたるは往々見る所なりし が, 二部教授実施後は前後部児童互に代りて, 就学子守をなす便を得るに至りたるを以て, 此種 の児童漸く其数を減じ, 且つ之が為にかかる児童も喜んで出席を欲するに至りたりと云ふ. 24.

(10) . 明治期における小学校二部教授の実態. 二部教授の実施に伴って, 学校で生活する時間が減少し, 他方で比較的無規律な社会や家庭で生 活することが増えるため, 悪影響が懸念されていたが, これも妃憂であっ たようである. 学校生活の時間を半減し, 比較的無規律なる家庭及社会に於ける児童の生活時間を増加せしに依 りて児童の成蹟上品性上に及ぼす影響は, 主として其学校外に於ける 児童の生活状態に関係する ものたることは言を待た ざれども……概して之を言ふ 時は二部教授施行の結果, 児童の或は悪戯 に耽り, 又は金銭の浪費を多くするものを増加したろことなきが如しとは, 都市郡部に於ける当 事者の共に明言する所なりき. 次に, 当時子供たちのなかには, 学校を離れている間にさま ざまな事業に雇われて作業に従事す るものがあっ たが, 二部教授は就学と就業を両立させる制度であるとされていた. こうした就業児 童への配慮も学校の重要な任務とされ, 学校から父母へ指示がなされている. 児童の服する作業につきては, 兵庫県上池小学校の如きは尋常三四年の児童にして, マッチ箱の 製造に従事するもの多く, 大抵一日七八銭の賃金を得, 而して尋常二学年の児童の如きも午前中 この作業に服するもの多く, 又同県豊富小学校に於ては多く蓬の製作に服し, 其賃金の幾分つつ は学校貯金として蓄積せしめつつあり, 然れども家屋に在りて過重なる作業に服せしむることは 心身の過重を来たし, 教育上に及ぼす影響も亦少から ざるものあるべし, 是に於て熊本県玉名郡 に於ては, 郡内一般に家庭作業の種類と時間とを制限し, 其種類を定めて子守, 留守番, 炊事, 洗濯, 牧草切, 農時手伝, 商業手伝, 掃除, 使ひ, 物売り等とし午前は昇校前三十分に其作業を 停止せしむることに定めたるは適切なる注意といふべし. 二部教授の実施によっ て, 教員の数を減 じ, 教員給与の負担を軽減することができる点を利点と して強調する主張が教育界内部にあっ た. また, 二部教授担当者になにがしかの手当を支給するこ とが, 優秀教員の優遇策となることが主張されていたのであるが, 3県下の実況は次のようなもの で あ っ た.. 今回視察せし所に依れば, 二部教授担任教師の手当は, 神戸市の月額六円を最高とし, 豊富小学 校 (兵庫県) の二円を最低とせり, 而して其他は何れも大抵三円或は三円以上を支出せりといへ ども, 郡部に在りては尚此以上に在るもの少から ざるが如し, 概して言ふ時は教員の数を減じた るに由りて一般に市町村の費用を減じたるは事実なりといへども, 然れども元来二部教授の実施 は畢覚費用の節約より来れるものなるを以て, 之か為に正教員優待の途は開けたりとは言ふを得 ず.. 二部教授手当ての支給が教員の優遇策になるという主張は, このように否定されることのほうが 多 い.. 二部教授に対する 児童の家庭の感情は, 二部教授の存廃にも影響するものだけに, 関係者の関心 事であって, 多くの調査報告書が取り上げているが, 3県下の視察報告書でも次のように報告され ていた. 一般に二部教授は歓迎されてはいない. 概して言ふ時は, 以上三県を通じて二部教授に対する家庭の態度は, 其実施を喜ばざる傾向多き は事実たり, 之にて実施の当初は其趣旨を説明して十分 了得せしめんが為めに, 当事者は何れも 頗る苦心したろが如し, 現今に至りては略々其趣旨を了知するに至れろを以て, 漸次不満足を訴 ふるもの減ずるに至りたりといへども, 尚実施の事情にして消滅せば一日も速に之を廃止せんこ とを希望せるもの多し, 兵庫県に於ては県の方針として一般に奨励しつつあるに係らず, 之を実 施せる校数の僅に二三校に過 ぎざる郡あるが如きに由るも, 以て察知すべきなり. 二部教授が歓迎されないのは,「児童を通学せしむる上に於て少数の家庭の之を便とするものなき に非るも, 多数は登下校の時間区々たること, 幼年児童の家庭に在る時間多きが為に, 其看護に困 25.

(11) . 佐 竹 道 盛. 難を感ずること等」 が理由となっ ていた. 3県下の視察報告書は, こうした一般父母の 態度をむし ろ望ましいものとしている. すなわち,「如此は実に国民一般に教育を重視する観念の発達したる結 果といふべく, 教育上寧ろ喜ぶべき現象といふべきなり」 というのである. 確かにそうみること が できる. 教育関係者の良識のあらわれとみることもできる. 報告書は, 「結論」として6項目にわたっ て3県の二部教授の実 況を概括している. その第1項は 二部教授実施校の数の動向に関するものである.「実施せる校数は, 広島県に於ては将来減少を見る べく, 熊本県に於ては依 然変化なく, 而して兵庫県に在りては尚増加すべき傾向あり」 という. 減 少, 現状維持, 増加の三つのタイ プをそれぞれの県が代表しているといえる. ただし,「義務教育年 限延長の結果は一般に増加 すべく予算せらる」 という予測 がなされている. 第2点は, 二部教授担当教員の資格につ いての概括である.「教師は一般に正教員のみを配置せり といふを得ず, 殊に本科正教員は何れも高等小学校に配置せらるるが故に, 之を尋常科二部教授に 配置することは頗る 困難なり」 というものである. 有資格教員の供給が不 十分な当時の状況から当 然 の こ と と い え る.. 結論の第3点は, 教授並びに管理訓練上の研究の なお必要なことである. 第4点は, 二部教授児童の数の減少をはかるべき ことである. 第5点は, 児童の管理上必要な雨天体操場等の設備の整備が必要となっ ていることである. 二部 教授の効果を大ならしめるためには, 全児童を一斉に登校させ, 時間交代による教授を行うのが望 ましいといえるが, これには全児童を同 時に収容できる設備が必要となる. また, このような 時間 交代制によらず午前午後の二部に分ける場合にも, 交代の際の後部児童の一時的な収容のための設 備の整備が求 められるとされている. 最後に, 前部後部の児童を同 時に登校させる 場合に, 授業を受けていない児童を管理する看護者 が不足していることが指摘されている.. 4. 横浜市戸部尋常小学校 8 } ここで横浜市戸部尋常小学校の報告書「実験二部教授( 」を検討してみたい. 同校の報告書は横浜 誌に交付され 文部省から教育雑 市長から文部省へ提出され, , 公開されたものである. 戸部小学校では, 「本校は未だ省令に接せ ざるの以前即ち明治32年4月より今日迄六ケ年の久し きに渉り引続き二部教授を行ひ来たり多少の経験を有」しているため, 「毎年各府県より調査委員の 来訪に接すること実に頻 繁を極む」という実況にあっ た. ところが来訪者に対する対応は, 「素より 校務の間隙に於て なす処の一時の談話に過 ぎざれば熱心の来訪者に対し実験の結果を尽く し以て満 足を与えることは到底不 可能」という事情にあっ た. そこで, 「実験の顛末を記し今後二部教授を布 かんとするものの参考に供せんとして之を世に公にするに至れり」 という経緯によって報告書が公 開されたのであっ た. 戸部小学校にお いて二部教授を実施するに至っ た理由は, 人口の急激な増加 に伴う 児童数の増加 に対処するためであっ た.「当市人口の増加は主に当区域内に多数を占むるを以て年々 学齢児童の増 加も亦従て著しく, 明治三十一年迄は尋常高等併置にて尋常科児童の多数を収容すること能はず」 という状況の下で, 「或は校舎の増築を行ひ或は普通家屋を買ひ入れ以て教 室の不足を補」っ たとい われる. しかし, 「三十二年度に至りては最早増築の余地を存せず大に困難を感じ」 たため, 「一学 年の二学級に二部教授をなすの策を執れり」 という経過をたどるこ ととなっ た. 同校ではこの二部 教授を, 「是我国小学校に於 ける二部教授の噛矢ならんか」 とみている. 26.

(12) . . 明治期における小学校二部教授の実態. ところで, ここで明治37年度の同校の二部教授の実況を, 報告書によっ てみていきたい. 表3は 二部教授実施の学級数, 児童数, 組合せ, 教員 資格及び給与の実況を示したものである. 表3. 学年児童 人員 1学年女 3学年男. 1学年女 1き年男 2学年男 3学年男 1学年男 1学年男 3学年男 2学年男 3学年女 2学年男 2学年女. 3学年女 3学年女. 2学年女. 4 総 0 8 6 4 微 8 8 4 6 2 4 4 後 綿 7 7 6 6 6 7 6 6 8 6 7 6. 前後 午前 午妾 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後 午前 午後. 学級数, 児童人員組合せ, 教員資格及諸給与表. 教員資格 正教員男1人. (明治37年度). 月1 奉額. 二部手当. 住宅料. 円. 円. 円. 合. 計 円. 22.000. 7.333. 3‐500. 32‐833. 全. 上. 20.000. 6.667. 3‐500. 30.167. 仝. 上. 20‐000. 6.667. 3‐500. 30‐167. 仝. 上. 18‐000. 6‐000. 3‐500. 27‐500. 仝. 上. 18.000. 6.000. 3‐500. 27‐500. 全. 上. 4‐667. 3‐500. 22‐167. 女1人. 14‐000. 4‐667. 1.500. 20‐167. 女1人. 13.000. 4‐333. 1‐500. 18‐833. 『教育公報』 第2 注 戸部尋常小学校 「実験二部教授」 ( 9 5号, 明治3 8年5月1 5日発行) による‐ 表 3 にみるとおり, 戸部小学校では第1学年から第3学年までに二部教授を実施し, 組合せは異. 学年の組合せを多く している. また二部教授担当教員には月俸の3分の1の二部手当てが支給され て い る.. また週教授時数と普通編制に対する減少時数を示すと表4のとおりとなる.. 表4 二部教授の週教授時間数. 面官まき. 1学年. 2学年. 3学年. 備. 修. 身. 2. 2. 2. 国. 語. 9. 11. 妻ま る. 算. 術. 4. 5. 5. 各学年1時間を減ず. 現制のまま 1学年 1時 間 2 学年1時間 3 学年男 4日寺 摺罪女 5日寺R 濁 をi成ず. 唱. 歌. I. I. I. 各学年1時間を加設す. 体. 操. 2. 2. 2. 2時間を減ず. 裁. 縫. 3学年に1時間を加設す. O. O. I. 計. 18. 21. 21. 1日平均. 3. 3‐5. 3‐5. 考. 『教育公報』 第29 注 戸部尋常小学校 「実験二部教授」 ( 5号所載) による.. 27.

(13) . 佐 竹 道 盛. 二部教授に伴う 時間数の縮減について, 報告書は次のような解説を加えている. 一学年を毎日三時間に短縮せしは心身の発達最も幼稚なる が上不規律なる家庭に於て自由の行動 をなせし児童が, 始めて規律ある学校に於て 一種異様の教育を受くるもの なれば到底長時間の束 縛教育に耐へ得るものにあらず, 況んや午後は既に幾分の心身を消耗し疲労を来して昇校せるに 於てをや. 然るに二学年以上は既に学校教育になれ, 心身の発達も一学年に比し遥かに優れたろ 処あるを以て 一学年より教授時数の多きは当然 なれど, 是亦, 二部交代の都合上到底三十分より 多くの 時間を増加することを得 ざるなり. 学校生活に不慣れな1年生の時間の縮減を大きく し, 心身の発達の進んだ2年生の 時間の縮小幅 を小さくする方法を採用する. 一般的に行われている方法である. 始業及び終業の 時間は, 冬季, 夏季及び中間の 時期のそれぞれに応じて調整が行われる. 季節による教授時間の短縮に直面した教師の苦労や授業上の工 夫について報告書は次のように記 して い る.. 冬季夏季は授業 時間極めて少なく, 実際教授に従事する 時間は二時間以内となるを以て, 之が教 授に与り教員 は非常なる熱心と多大なる勉強とによるにあらざれば, 二部教授は全く無効に帰し 不完全極まる児童を養成するに止まるべし. 二部教授に従事せる教師の 非常なる疲労を感ずるは 全く之が為なるべし. 前後の学級の交代につ いては,「最初十日或は十五日を期して交代を試みたろことありしが, 交代 期の余りに頻繁なり し為めか児童の前後を誤るもの多く, 為に欠席児童を多く 出すに至」っ た結果, 「現今は一ヶ月を以て交代期となせり」 と報告されており, 幾分試行錯誤的な対応がなされたこと が知られる. 報告書はさらに, 経済上の観点, 父母の立場, 学校の立場のそれぞれからみた二部教授の利害に 関して意見を提起している. 経済上からみた二部教授の利益については,「教育上必要なる用件を 無視して単に経済上より論す る 時は言ふ迄もなく二部教授は有益なる方法にして, 国民の負担を減じ且 学齢児童の収容を多から しむるを以て何人と難も 一点の非難する処なかるべし. 然れども教育上の効果は必ずしも経済上の 利益と伴ふものにあらざること忘るべからず」 という評価が下され, 「教員淘汰」 「教員養成費の軽 減」 「校舎増築及び器械器具費の 節減」の各項にわたっ て見解の表明が行われている. 結論は次のと お り で あ っ た.. 二部教授に於て経済上大に利する処あるは主に教員給にありて次は校舎の増築位ならん他は誠に 採るに足ら ざる事どもなり. 父兄の側からみた二部教授の利害は, 端的にいって不満の 一語に尽きる. 彼等は二部教授を見るに姑息の方法とし其何の為めに然るやを怪しむものの如しかかる 思想を有 するが故に其初めに当たり苦情百出尚多少の苦情を免れず. 苦情の主なものは以下に示すとおりである. ( ) 午前部に於ける始業 時間の余りに早きこと 1 2 ( ) 授業時の短く して充分教授を受くる能はざること 3 ( ) 幼年 児童の前後を誤ること ( 4 ) 午後に廻る児童は午前中遊びに耽りて昇校を厭ふこと 5 ( ) 後部を前部に廻されんことを申出づるものあること ( ) 用具を紛失すること 6 ( ) 下駄傘を間違へること 7 28.

(14) . 明治期における小学校二部教授の実態. 始業の時間が早す ぎるという苦情は,「当区域内の人民は夜分長時間商業に従事するもの多きを以 て翌日朝の起床おそきは自然」 という地域的な事情によるものであっ た. 授業時間が短いという苦情は, その本音は 「都部何れを問はず普通父兄の学校に望む処は長期間 児童の保護を頼み之が厄介を免れんことを希ふもの多ければ」 というのである. 幼年児童が前部後部をとりちがえるという苦情は, 1年生児童が 「学校に不慣れなる上物事に無 頓着の質なるを以て堅く云ひ含めたろことも打忘れ或は了解せ ざるものあり」 という事情によるも の と い わ れ て い る.. 用具を紛失するという苦情は, 二部教授に伴って, 児童それぞれの持ち物を持ち帰らせるところ から生じたものである.「下校の際は己が所持品全部を携帯せ ざるべから ざることなるに, 無頓着な る児童は墨, 筆, 石筆, 鉛筆などを机内に忘れ次の児童の己が所持品と混合して持ち帰るものある」 がために生ずる苦情である. 学校からみた二部教授の欠点も多数にのぼっ ている. 表5のとおりである. 実際の経験から抽出 されたものだけに注目されるところである. 表5. 学校の側からみた二部教授 スの問題点 一覧. 1. 管理上の観察 g) 前部に於て始業時におくるる 児童多きこ と. ) 欠席児童の多きこと ( ロ ←う 用具の携帯を怠ること. ◎ 午後部の生徒昇校早くして教授上の妨害. 2. 衛生上の観察 3. 教授上の観察 4. 学力上の観察 5. 訓練上の観察 ( ) 公徳上の欠点 ィ ( ) 教室机内を清潔にするの美風を害するこ 口. となること 的. 下駄傘を間違えるもの多きこと. ㈹. 雨天の日後部児童の置き処なきこと. ( ) 後部児童を始業前監督するものに困るこ ト. ◎. 午後部児童に居睡をなすもの多し. 己が用具を携帯せ ざりし責を免るる為め 他人の遺せし物品を無断に用ふること. Q 的. と. ◎. と. (. 父兄教師を欺くものあること 沈着の気風に乏しき事 親愛の心に乏しき事. 『教育公報』 第2 注 本表は, 戸部尋常小学校の 「実験二部教授」 ( 9 5号, 明治3 8年5月1 5日) によっ て作 成 した.. 管理については特に, 午後の部の児童が早く登校することが問題とされている. 始業前二十分以内に昇校すべき旨申渡し置くも家庭に於て欠席せんことを恐るると, 児童の悪戯 をなすとを厭ふの結果早く昇校することを逼り, 或は児童の家庭においては面白からぬより早く 昇校する等にて, 早きは始業一時間前より遅くも三十分 前には群衆す. 之を運動場に置けば体操 遊戯の妨 げとなり之を教室付近に放置せば教授の妨害となる. されば運動場の設置二部教授に適 する様区分するか或は雨天体操場の如き建物あらば如何に早く出校するも甚だしき困難を見ざる ならん. 早す ぎる登校の理由, 管理上の問題点及び対策等について, 要点をついた叙述がみられる. 衛生上の問題点というのは, 食事にかかわることである. 29.

(15) . 佐 竹 道 盛. 例へば午後部の児童は始業前一時間以上も早く昇校するものあるを以て午前十時頃に早や昼飯を なすあり. 或は余りに早き為め昼食をぬきとして午後部終業時まで食せ ざるあり. 斯の如きは音 に身体上に害を及ぼすのみならず, 空腹に加ふるに疲労を以てし教授上活気に乏しく実に気の毒 に感ずることも度々なり. 次に教授上についての欠点 は 報告書によれば 「世間二部教授を以て教授上大に利益あるやに吹 聴するものあれども, そは少部分にして如何なる点より考ふるも大なる利益を認むること能はざる なり」という結論になるのである. 一部, 全日教授と差の ない二部教授が見られるのは, 「二部教授 其物が善良なる方法と云ふにはあらずして時間を短縮せしことの憂慮常に教師の脳裏を刺 激し非常 なる奮発と大なる熱心とを以て之が教授に従事せ し結果ならん」 ということなのである. また, 二部教授が次のような公徳上の問題を生み出すことが指摘される. 教室, 机などを前後部 の児童が共用することからくる問題点の指摘である. 我教室にして我教室にあらず. 我机にして我机にあらず. 前後に於て他生に譲ら ざるべか らず. 弦を以て清潔に保ち置くも他生の代わりて乱し汚すことあるべしとの考えより常に教室を不潔に し机内に紙屑其他種々の玩弄物を遺棄し加之器物の取扱に鄭重を欠き甚面白から ざる結果を顕す ことあり. 結局のところ, 報告書の結論は 「以上述ぶる所の実験により考ふる 時は二部教授の利益は単に経 済上に存し教育上の価値より評する 時甚薄弱なるものなり」 ということになるのである. それでもなお二部教授が必要なのは, 就学児童の増大, 経済上の理由, 教員の欠乏等特別の事情 があるためなのである. 余輩の考ふる処を以てせば二部教授なるものは本校の如き年々就 学児童の増加著しき処か又は 経済上の都合或は教室の狭陽なるか或は教員の欠乏せる土地には其必要を認むるならんが十分の 余力ある町村にては強て之を施すの 必要なかるべし. 何となれば半日教授は教師の熱誠を以て教 授せば或は全日教授と略互角の成績を挙げ得るならんが徳育 上には全く欠点を生ずること多けれ ば な り.. こうして, 戸部小学校では, 経験を基にした二部教授の新しい方案 が表6のように提起されてい る. 表に掲げる事項の内容の検討は次号において行うことに したい.. 表6 経験に基づく二部教授の新方案内容一覧 1. 校舎運動場の設備 ( ) 教室は同大なるを便利とす. 1 ( 2 ) 雨天体操場の建物を要すること 3 ( ) 雨天体操場は下駄置場小使室に接近 し且 便所に通じ得ろを要すること ( 4 ) 雨天体操場の内部四壁に帽子雨具 掛及携. に接するを要す. ( 2 ) 下駄箱は各受持教員別に区分 して更に其 一学級部を児童数に分ち各個内に前後の児 童氏名 の 札をはり錠付の蓋を有する を 要 す.. ( ) 傘棚も各受持教員別に区分し勝手に出し 3. 入れをなすこと能は ざる設備を要す. 3. 管理上の要件 1 ) 前後両部とも始業前は必ず雨天体操場に ( 5 ) 後部児童の始業時迄遊び得る運動場を別 ( 集め置くこと に設くること 帯品を一時置き得る棚の如きものの設備を. 要す.. 2. 下駄傘置場の設備 ( 1 ) 下駄傘の置場は必ず使丁室及雨天体操場 30. ( 2 ) 始業後鈴報により諸般の整理を終へしめ 始業迄運動場に出すべし..

(16) . 明治期における小学校二部教授の実態. ) 終業時は下駄電場を通 じ雨天体操場にて ( 3 解散を行ふべし. ( ) 始業時に後れて昇校したるものは下駄傘 4. 教授する場合. 6. 始業終業及交代期 7. 教授上及訓練上の要件. 等を己が学級の箱前に置かしめ放課時間受. ( 1 ) 始業入室に対し運動場整列を速にし教室. 持ち教員の指揮を受けしむべ し. ( 5 ) 机は一人分に対し更に其内部を前後の 児. ( ) 用具の出し入れを敏捷ならしむること 2. 童に分ち低き仕切りを設け置くべし. ( ) 前部終業時に於て三学年以上は四名 以上 6. ( ) 公徳心の養成に重きを置くこと 4. の 児童をの こ し机の位置 をなをさ しむ べ. ( ) 訓練上の事項を忽にせ ざること 5. し.. ( ) 自治の習慣を養成すること 6. . 教授時数 . 学級編制及び前後の組み合せ. の出入りに多くの時間を費さ ざること ( 3 ) 教室内にては雑談を厳禁すること. ( 7 ) 家庭に於て補習を奨励する為め成るべく 多く算術綴方摘字書取等の宿題を与へ翌日. ( 1 ) 学級児童数は各学級同一にして一学級六 十人を程度とす. ( 2 ) 同学級の組み合せ. 答案の正否を批評すること ( ) 算術綴方等に於ける劣等生を集め或る授 8. 業時間外に於て一時間或は三十分以上特別. { ) 異学級の組み合せ方 3. の教授を施すこと. { ) 学級数奇数にして組み合せ上一部を全日 4 『教育公報』 第29 注 戸部尋常小学校 「実験二部教授」 ( 5号, 明治3 8年5月1 5日発行) による. だE. 『信濃教育会雑誌』 第22 ( 1 ) 長野県師範学校付属小学校 「二部教授研究報告」 ( 0号, 明治3 8年1月 25 日発行, 1 3- 20頁) 以下引用はすべて同誌による ‐ . ( 2 ) 内閣官報局編 『明治年間法令全書』 明治3 6年-3 『教育時論』 第80 「 ( 3 ) 「小学校二部教授の実況( ) 1 4号, 明治40年8月1 5日発刊, 20一2 2頁) 」( . 小学校二部教授の 『 「 『教育時論』 2 5 2 ( 第8 日発刊 2 7 一 2 9頁 実況( ) 教育時論 0 5号 明治4 0年8月 ) 小学校二部教授の実況 3 ) ( 」 』 」( , , ‐ 「小学校二部教授の実況(完)」 ( 『教育時論』第80 第80 6号, 明治40年9月 5 日発刊, 31一3 2頁) 7号 ‐ , 明治40年 9月 15日発刊, 2 5一27頁) 4 ( ) 『教育時論』 第80 4号, 以下の引用はすべて本号による‐ ( 5 ) 『教育時論』 第80 5号, 以下の引用はすべて本号によることとする. 6 ( ) 『教育時論』 第806号, 以下の引用はすべて本号によることとする. ( 7 ) 『教育時論』 第807号, 以下の引用は本号によるものとする‐ 『教育公報』第295号 明治3 ( 8 ) 「実験二部教授」 ( 8年5月1 5日発行, 1 5一30頁) , - なお以下の引用は本号によるこ と と する.. (本学教授函館分校). 31.

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参照

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