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麹菌由来界面活性タンパク質 hydrophobin RolAの自己組織化機構の解明

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麹菌由来界面活性タンパク質 hydrophobin RolAの

自己組織化機構の解明

著者

寺内 裕貴

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19329号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00127874

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令和元年度 博士論文

麹菌由来界面活性タンパク質

hydrophobin RolA の

自己組織化機構の解明

東北大学大学院 農学研究科 生物産業創成科学専攻

微生物機能開発科学講座 応用微生物学分野

寺内 裕貴

指導教員 阿部 敬悦 教授

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1 目次 目次... 1 凡例... 3 序論... 4 第一章 タンパク質実験、糸状菌の基本操作 ... 6 第一節 タンパク質実験の基本操作 ... 6 1-1-1 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) ... 6 1-1-2 タンパク質の定量 ... 8 第二節 糸状菌の基本操作 ... 8 1-2-1 糸状菌の培養と分生子の取得 ... 8 第二章 RolA の固液界面における吸着キネティクスと自己組織化機構の研究 ... 9 第一節 緒言 ... 9 第二節 RolA 高発現麹菌からの RolA の精製 ... 10 第三節 固体表面改質 ... 11 2-3-1 化学改質表面 (SAM 化表面) の作製 ... 11 2-3-2 接触角測定による評価 ... 12

2-3-3 原子間力顕微鏡 (AFM; Atomic Force Microscope) による評価 ... 14

第四節 SAM 化表面を用いた RolA の固体表面への吸着キネティクス解析 ... 14

2-4-1 1-UD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析 ... 14

2-4-2 10-CD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析 ... 16

2-4-3 11-AUD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析 ... 17

第五節 RolA の固液界面での自己組織化機構の解析 ... 18

2-5-1 1-UD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察 ... 18

2-5-2 10-CD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察 ... 19

2-5-3 11-AUD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察 ... 20

第六節 RolA の水溶液中での二次構造の解析 ... 20

第七節 考察 ... 21

第八節 Figure ... 25

第三章 RolA の気液界面における自己組織化機構の研究 ... 40

第一節 緒言 ... 40

第二節 RolA 高発現麹菌からの RolA の精製、RolA 量の測定 ... 40

3-2-1 RolA 高発現麹菌からの RolA の精製 ... 41

3-2-2 UV 測定を用いた RolA 量の測定 ... 41

第三節 SiO2 表面改質 ... 42

第四節 L 膜を用いた RolA 自己組織化過程の解析 ... 43

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2 3-4-2 RolA L 膜の転写、観察 ... 44 第五節 L 膜を用いた RolA 自己組織化機構の解析 ... 46 3-5-1 様々な pH での RolA L 膜の表面膜圧の測定、解析 ... 46 3-5-2 様々な pH で作製した RolA L 膜の転写、観察 ... 48 3-5-3 高濃度塩添加時の RolA L 膜の表面膜圧の測定、解析 ... 50 3-5-4 高濃度塩添加時の RolA L 膜の転写、観察 ... 50 第六節 考察 ... 52 第七節 Figure ... 55 総合考察 ... 73 原著論文 ... 76 参考文献 ... 76 謝辞... 82

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3

凡例

本論文中で用いた略語を以下に示す。

APS ; ammonium peroxodisulfate BCA ; bicinchoninic acid

bisacrylamide ; N, N’-methylenebisacrylamide

BPB ; bromophenol blue BSA ; bovine serum albumin CBB ; coomassie brilliant blue

CD ; Czapek-Dox, Circular Dichroism Da ; Dalton

ddw ; double distilled water DMSO ; dimethyl sulfoxide

GTA ; 3,3-dimethylGlutaric acid ‒ Tris ‒ 2-Amino-2-methyl-1,3-propanediol h ; hour

IgG ; immunoglobulin G LB ; Luria Bertani min ; minute

Na-Pi ; Sodium phosphate

PAGE ; polyacrylamide gel electrophoresis PBSA ; polybutylene succinate-co-adipate QCM ; Quartz Crystal Microbalance RolA ; rodA like protein A

RT ; room temperature SDS ; sodium dodecyl sulfate

SDS-PAGE ; sodium dodecyl sulfate - poleacrylamide gel electrophoresis sec ; second

TCA ; trichloroacetic acid

TEMED ; N , N , N', N' - tetramethyl ethlenediamine

Tris ; tris hydroxymethyl aminomethane UV ; ultra violet

WT ; wild-type

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4 序論 糸状菌は地球上に 150 万種以上存在すると考えられており、植物遺体、すなわち多糖類やタン パク質、ポリエステルなど、様々な生体高分子を分解する酵素を多種類生産することから、自然界 の物質循環において分解者として重要な役割を果たしている(1-4)。酵素による固体高分子の加水 分解は病原性糸状菌が宿主に感染する際に必須なプロセスでもあり、この能力は古くから発酵産 業という形で産業的に利用されてきた(5-9)。麹菌 Aspergillus oryzae はその固体高分子分解能力 の高さから日本国内で発酵産業に古くから利用されてきた糸状菌である(8, 9)。前任者である高橋、 前田らは、A. oryzae が生分解性ポリエステル PBSA を唯一の炭素源として資化する際にポリエス

テラーゼ cutinase CutL1 と、界面活性タンパク質である hydrophobin RolA を生産することを見出 した(2, 10)RolA は PBSA 表面に吸着、被覆し、その後 CutL1 を PBSA 表面へリクルート、濃縮 することで、CutL1 による PBSA 加水分解を促進する(10)。cutinase は植物感染性糸状菌が植物 表面のワックスエステル (cutin) を分解して感染する際に分泌することで知られ(5, 6)、PBSA はクチ ンのアナログとして CutL1 により分解される(2, 10)。hydrophobin は糸状菌に特異的な低分子量の 分泌性両親媒性タンパク質であり、糸状菌の生態において、hydrophobin は気中菌糸の形成や分 生子の分散性、固体表面への吸着、吸着した固体表面の湿潤性の逆転、菌糸や分生子の細胞壁 表面での疎水性被膜の形成、動植物感染時の宿主免疫機構による認識の回避などの多岐にわた る役割を担うことが知られている(11-15) 。また、hydrophobin はアミノ酸配列や hydropathy プロファ イル、固体表面上に形成する膜の構造から主に2 つの Class に分けられ、RolA はそのうちより疎 水度が高く、固体表面上で β-amyloid 様の自己組織化棒状構造 (rodlet) を形成する Class I に 属する(11, 13, 16)。また、rodlet の形成には hydrophobin の Cys3-Cys4 間および Cys7-Cys8 間の アミノ酸配列 (Cys3-4 loop, Cys7-Cys8 loop) が関与していることが示唆されている(17, 18)

界面活性タンパク質が足場となって固体高分子分解酵素をリクルートするという分子間相互作用 は、前任者らにより新奇に発見された固体高分子分解機構である(10, 19)。近年になり、固体表面に 吸着した hydrophobin と、BSA や IgG、avidin が相互作用する現象(20)や、glucose oxidase, horseradish peroxidase, CutL1 といった酵素が固体表面上の hydrophobin または hydrophobin 様の固体表面吸着タンパク質と相互作用する現象が報告されている(10, 19, 21, 22)。したがって、固体 高分子上に吸着した hydrophobin が高分子分解酵素を固体表面にリクルートして固体高分子分 解を促進する現象は、固液界面での固体高分子分解において重要な機構であると考えられるよう になってきた(10, 19, 23, 24)。筆者らは、RolA – CutL1 間の相互作用が、RolA N 末端側の正電荷アミノ 酸残基 H32, K34 と、CutL1 分子表面負電荷残基 D30, E31, D142, D171 が累積的に寄与する イオン的相互作用であることを明らかにしている(25, 26)。一方で、RolA によって CutL1 基質表面に 形成する強固な自己組織化膜を、CutL1 がどのようにして通過して、 RolA 膜の下にある基質に たどり着くのかはわかっていない。このメカニズムを調べるためには、RolA の自己組織化膜の形成 を制御する必要がある。既知の Class I hydrophobin の自己組織化に関する知見(27)から、RolA が 自己組織化膜を形成し、CutL1 をリクルート、濃縮するまでには以下の 5 つの過程をたどると考え られる。

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5 1. RolA が固体表面に吸着する 2. 固体表面上に RolA 単分子膜が形成される 3. 固体表面上の RolA の構造が変化し、RolA 自己組織化膜が形成される 4. RolA の自己組織化膜に CutL1 がリクルートされる 5. CutL1 が RolA 自己組織化膜を通過し、基質にたどり着く

本博士論文では、RolA が CutL1 をリクルートするまでの前段階である RolA 自己組織化膜形 成の制御と自己組織化機構の解明を目的とし、RolA の固体表面への吸着キネティクス、RolA の 固液界面および気液界面での自己組織化構造形成機構の解析を行った。

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6 第一章 タンパク質実験、糸状菌の基本操作 第一節 タンパク質実験の基本操作 タンパク質実験に用いた溶液等の組成は Table 1-1 に示した。 1-1-1 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) SDS-PAGE は Laemmli の方法(28)に従って行った。 【ゲルの作製】 分離ゲルは次のように作製した。Table 1-1 に示した試薬のうち、10% SDS, TEMED を除いて混 合し、脱気した。続いて 10% SDS、TEMED を加えよく混合し、ゲル板 (DNA-PAGE 用電気泳動 プレート, Nihon Eido, Tokyo, Japan) に流し込み、脱塩水を重層し室温にてそのまま重合させた。 続いて、濃縮ゲルは次のように作製した。Table 1-2 に示した試薬のうち、10 % SDS, TEMED を除 いて混合し、脱気した後 10% SDS 0.06 ml, TEMED 3 µl を加えよく混合した。約 1 h 重合反応さ せた分離ゲル上に重層し、コームを差し込みさらにそのまま室温にて重合し終えるまで放置した。 【サンプル調製】 100 % (w/v) の TCA を終濃度 33 % (w/v) となるようにタンパク質溶液に加え、4˚C、60 min 静 置した。17,400 g、20 min 遠心し、水流アスピレーターを用いて上清を除去した。得られた沈殿を 適当量の SDS-PAGE sample buffer [120 mM Tris-HCl, 10% (v/v) glycerol, 5% (w/v) SDS, 5% (v/v) 2-mercaptoethanol, 0.05% (w/v) bromophenol blue, pH 8.8]に懸濁し、これを 100 ˚C、5 min 加熱処理したものを SDS-PAGE のサンプルとした。

【泳動、検出】

SDS-PAGE buffer [50 mM Tris, 384 mM glycine, 0.1% (w/v) SDS]で泳動槽 (DNA-PAGE 用電 気泳動層, Nihon Eido) を満たし、濃縮ゲルを 20 mA、分離ゲルを 30 mA で定電流電気泳動し た。相対分子質量マーカーとして XL-Ladder Protein Marker Broad Range (APRO life Science Institute, Tokushima, Japan) を同時に泳動し、イムノブロット用のマーカーには、 Dr. Western (Oriental Yeast, Tokyo, Japan) を用いた。タンパク質の検出は、クマシー染色液 (Coomasie staining solution) もしくは ULTRA FAST COOMASSIE STAIN (Nag Research Laboratories, Fremont, CA, USA) 中でゲルを振盪して染色した後、脱色液 (Destaining solution) 中もしくはぬるま湯中でゲル を振盪して脱色することで行った。

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Table 1-1 Buffers and solutions for protein experiments For SDS-PAGE

SDS-PAGE sample buffer SDS-PAGE buffer Coomasie staining solution 0.12 M Tris 10% (v/v) glycerol 5% (w/v) SDS 5% (v/v) 2-mercaptoethanol 0.05% (w/v) BPB adjusted to pH 8.8 with HCl 50 mM Tris 0.384 M glycine 0.1% SDS 50% (v/v) methanol 10% (v/v) acetic acid 0.25% (w/v) CBB-R250 Destaining solution 25% (v/v) methanol 7% (v/v) acetic acid

For Quartz Crystal Analysis

10 mM GTA buffer 0.15 M GTA (15x stock solution) 3.3 mM 3,3-dimethylglutaric acid 3.3 mM Tris 3.3 mM 2-amino-2-methyl-1,3-propanediol adjusted to pH 3.0 ~ 10.0 by HCl or NaOH 50 mM 3,3-dimethylglutaric acid 50 mM Tris 50 mM 2-amino-2-methyl-1,3-propanediol

Table 1-2 Mixture of various concentration of running gel for SDS-PAGE.

17.5% 12.5% 10% 30 % acrylamide, 0.8 % bisacrylamide 3.5 ml 2.5 ml 2.0 ml 1.5 M Tris-HCl (pH8.8) 1.2 ml 1.2 ml 1.2 ml ddw 1.18 ml 2.18 ml 2.68 ml 1.5% (w/v) APS 0.06 ml 0.06 ml 0.06 ml 10% (w/v) SDS 0.06 ml 0.06 ml 0.06 ml TEMED 5 µl 5 µl 5 µl

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Table 1-3 Mixing ratio of 3 % stacking gel for SDS-PAGE.

30% acrylamide, 0.8% bisacrylamide 0.6 ml 0.5 M Tris-HCl ( pH6.8) 1.2 ml ddw 4.08 ml 1.5% (w/v) APS 0.06 ml 10% (w/v) SDS 0.06 ml TEMED 5 µl 1-1-2 タンパク質の定量

【ビシンコニン酸 (BCA; bicinchoninic acid) 法による定量】

BCA Protein Assay kit (ThermoFisher Scientific) を用いた。適宜希釈したサンプル液、及び BSA 標準溶液 25 μl に対して、200 μl の Working Reagent を加え良く混合後、37 ˚C, 30 min インキュ ベートした。インキュベート後、MTP-300 microplate reader (Corona Electrics, Ibaraki, Japan) を使用 して 550 nm の吸光度を測定した。BCA Protein Assay kit 付属の 2.0 mg/ml BSA 標準溶液を滅 菌精製水で希釈したものを用いて標準曲線を作成し、タンパク質量を算出した。

【タンパク質バンド強度による定量】

2-1 に従って SDS-PAGE 後染色し、脱色液によって脱色したゲルのスキャン画像、もしくは 1-2-2 に従ってウエスタンブロッティングにより蛍光発色させたメンブレンの蛍光検出画像から、 ImageJ 1.44p (National Institute of Health, https://imagej.nih.gov/ij/) を用いて目的タンパク質のバ ンド強度を数値化した。定量したいタンパク質の精製標品を BCA 法により定量した後、SDS-PAGE sample buffer で適宜 SDS 化・希釈した溶液を同時に泳動することで標準曲線を作成し、 タンパク質量を算出した。 内部標準を加える場合は、泳動したい SDS 化サンプルに対し、それぞれ予め SDS 化した内 部標準タンパク質を一定量添加・混合してから電気泳動に供した。上記と同様にバンド強度をそれ ぞれ数値化後、サンプルタンパク質または標準曲線タンパク質のバンド強度を、同じレーン内にア プライされた内部標準タンパク質のバンド強度により除算し、その値を用いて標準曲線作成、タン パク質量算出を行った。 第二節 糸状菌の基本操作 糸状菌 A. oryzae の基本的操作に用いた試薬・培地等の組成を Table 1-4 に示した。 1-2-1 糸状菌の培養と分生子の取得 A. oryzae の場合、マスタープレート上の菌体もしくは分生子の 25 % グリセロール分散液 (グリ

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セロールストック)、もしくはマイクロバンク (Pro-Lab Diagonistics, Round eock, TX, USA) にて保存 した分生子をPDA 寒天 (agar) 培地プレートの中心部に点植菌し、十分に分生子が形成されるま で 30 ˚C、4~6 days 静置培養した。十分に分生子が形成された後、0.8 M NaCl (0.01% Tween-20 含む) を適当量プレートに注ぎ、コンラージ棒で分生子をかきとるようにして懸濁した。懸濁液をセ ルストレーナー (pore size 70 µm; BD falcon, Franklin Lakes, NJ, USA) で濾過して菌体を除去し、 分生子懸濁液ストックとして冷蔵保存した (使用期限を胞子懸濁液調製より 1 か月とした)。ストック として保存した分生子を PDA 寒天培地または CD-Met 寒天培地に点植菌し、分生子が十分形 成されるまで 30 ˚C、4~6 days (PDA) または 10~14 days (CD-Met) 静置培養した。十分に分生子 が形成された後、上記と同様に分生子懸濁液を作製、CR22N 高速冷却遠心機 (Hitachi Koki, Tokyo, Japan) 及び R14A スイングローター (Hitachi Koki) で 3,000 rpm、10 min, RT で 遠心し た。上清を廃棄し、沈殿を適当量の滅菌精製水に懸濁して分生子懸濁液とした。なお、分生子濃 度は、光学顕微鏡及びトーマ血球計算盤を用いて算出した。

Table 1-4 Media for fungal genetics.

Potato dextrose agar (PDA) medium Czapek-dox (CD) (agar) medium 0.4% (w/v) potato extract 2% (w/v) glucose 1.5% (w/v) agar 10% (v/v) 10x stock solution 0.1% (v/v) 1000x trace element 1% (w/v) glucose 2 mM MgSO4

(2% (w/v) agar for A. oryzae) YPM medium 2% (w/v) Hipolypeptone 1% (w/v) Yeast extract 2% (w/v) maltose 第二章 RolA の固液界面における吸着キネティクスと自己組織化機構の研究 第一節 緒言 RolA は水溶液に分散している状態では CutL1 をリクルートせず、固体表面への吸着後に CutL1 をリクルートすることが、高橋らの以前の研究により分かっている(10)。また、RolA は N 末端側 の正電荷残基でCutL1 と相互作用する(25)。すなわち、固体表面に吸着したRolA が CutL1 と相互 作用するためには、、固体表面に吸着した RolA の N 末端領域は液相に配向している必要があ る。 RolA の固体表面への吸着キネティクスと固体表面上に形成される自己組織化構造の形成の 観察を組み合わせて解析することは、RolA による CutL1 リクルートのメカニズムを解明するために 必要な条件となる。

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10 他の Class I hydrophobin に関する研究では、界面への吸着キネティクスや界面での自己組織 化はそれぞれ別々に研究されており、異なる物理化学的特性 (粗さ、化学式、官能基など) の界 面および異なる溶媒条件下 (pH、イオン強度など) での Class I hydrophobin の吸着キネティクス 解析や形成される自己組織化構造の解析はほとんどない(29-31)。筆者の調べた限り、様々な物理化 学的性質を有した固体表面に吸着した hydrophobin によって形成された自己組織化構造と、 様々な pH 条件下での吸着キネティクスは同時に解析されていない。固体表面上の Class I hydrophobin の吸着と自己組織化は、界面張力の強度、タンパク質濃度、時間、イオン強度、およ び pH に影響される(27, 30-32)。固体表面の物理化学的性質と溶媒の pH は、固体表面上の RolA の吸着キネティクスと自己組織化構造の両方に影響すると考えられる。 本章では、様々な物理化学的特性を有する固体表面上への RolA の吸着キネティクスおよび 自己組織化メカニズムを解明するために、QCM センサーの表面を、末端に官能基を持つアルキ ルチオール誘導体で化学修飾して自己組織化膜 (SAM; Self-assembled monolayer) を形成させ ることで化学改質し、原子間力顕微鏡 (AFM; Atomic force microscopy) 観察および静止水接触 角 (WCA; Water contact angle) の測定による修飾の均一性を評価した。次に、SAM 化したセンサ ー表面への RolA 吸着キネティクスを解析し、センサー表面に吸着、自己組織化した RolA 構造 を AFM を用いて観察した。これらの結果から、RolA の固液界面への吸着キネティクスおよび自 己組織化機構を考察した。 第二節 RolA 高発現麹菌からの RolA の精製 本章に使用するすべての RolA は、以下の方法を用いて精製した。 【材料】

RolA 高発現株として、A. oryzae 高発現用ベクターである pNEN142 ベクターに RolA の ORF を組み込んだ pNEN142-AorolA を、A. oryzae NSlD-tApEnBdIVdV2(33, 34)株に導入した A.

oryzae RolA 高発現株 (以下、enoA142-RolA) (25) を使用した。 【方法】

RolA の精製は高橋らが報告した方法(10)を改良して行った (Scheme 2-1)。

YPM (2% Polypeptone, 1% Yeast extract, 3% Maltose) 液体培地を 400 ml を入れた 1 L 容バ ッフルつき三角フラスコ 4 本に、 RolA 高発現株の分生子を 1 x 106 /ml になるように接種し、 30˚C で 24 時間振盪培養した。培養液をミラクロス (EMD Millipore Corp., Billerica MA, USA)に てろ過し、菌体を除去して培養上清を得た。培養上清に、90% 飽和硫酸アンモニウム水溶液を滴 下し、終飽和度 30% にした後、8,000 g , 4 ˚C で 30 分間遠心分離して上清画分を得た。10 mM Tris-HCl (pH 8.0) / 30% 硫安飽和 で平衡化した Phenyl-Sepharose CL-4B (GE Healthcare, Chicago, USA) に供し、吸着画分を 30-0% 飽和度の硫酸アンモニウム直線濃度勾配で溶出させ た。溶出させた全画分について SDS-PAGE を行い、RolA の推定分子量 13.6 kDa にバンドが 確認された画分を回収した。回収した画分を 5 mM Tris-HCl (pH 9.0) に対して透析し、同緩衝液

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11

で平衡化した Cellulofine Q-500 (Seikagaku Co., Tokyo, Japan) に供した。吸着画分を NaCl 0-0.3 M の直線濃度勾配で溶出させ、全溶出画分について SDS-PAGE を行い、RolA の推定分子量 13.6 kDa にバンドが確認された画分を回収した。次いで、回収した画分を 10 mM クエン酸-NaOH (pH 4.0) に対して透析し、同緩衝液で平衡化した SP-Sepharose FF (GE Healthcare, Chicago, USA) に供した。吸着画分を NaCl 0-0.3 M の直線濃度勾配で溶出させ、全溶出画分に ついて SDS-PAGE を行い、RolA の推定分子量である 13.6 kDa にバンドが確認された画分を 回収した。回収した画分を精製水に対して透析した。精製した RolA は凍結乾燥により濃縮し、用 時に任意の溶媒に再溶解して使用した。 第三節 固体表面改質 2-3-1 化学改質表面 (SAM 化表面) の作製 SAM 化とは、固体表面上において自己組織化して単分子膜を形成する試薬を用いて、固体表 面上の化学的性質を改質する方法のことである。SAM 化試薬は炭素鎖の片方の末端に固体表 面と反応する官能基が、逆側に固体表面上において表面 (気体側) に露出し、固体表面の性質 を制御する官能基 (ex. –CH3; 疎水性, -COOH; 負電荷, -NH3; 正電荷) が付加されている。SAM 化法を用いて、固液界面での RolA の吸着キネティクス解析の反応系のうち、固体表面の化学的 性質を制御した。

【材料】

AFFINIX QNμ 用分離型センサーセル (QCMSC-SPP1AUR1; Ulvac, Inc., Kanagawa, Japan) の金電極を用いた。

また、各 SAM 化試薬は、以下のものを用いた。(Table 2-1)

・1-undecanethiol (1-UD; Tokyo Chemical Industry Co., Ltd., Tokyo, Japan) (疎水性) ・10-carboxy-1-decanethiol (10-CD; Altech Co., Ltd., Tokyo, Japan) (負電荷)

・11-amino-1-undecanethiol (11-AUD; DOJINDO LABORATORIES., Tokyo, Japan) (正電荷) 【方法】 以下の方法で、センサーセルの金表面を SAM 化した。疎水性表面の作製は、前任者永山の 方法(35)で行った。正負の荷電性表面の作製は、Jiang らの方法(36)を改良した方法で行った。 1.金表面の洗浄 まず、センサーセルの金表面上にピランハ溶液 (濃硫酸 : 30% 過酸化水素水 = 3 : 1) を 5 μl マウントし、室温で 15 分間インキュベートした。その後、MilliQ 水で洗浄し、ブロアーで乾 燥 さ せた 。 こ の 操 作は 3 回行った 。その後、 UV-オゾ ンクリーナー (SKB401Y-01; SUN ENERGY Co. Ltd., Kanagawa, Japan) よる洗浄を裏面 20 分、表面 40 分と両面行う事で、金表 面上の有機物を酸化除去した。

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12 2.金表面の改質 (SAM 化) 金表面の SAM 化のために使用するガラスバイアル、ピンセット等実験器具は、残存している チオール・油脂等の汚れを除去するため、使用直前にエタノールで洗浄した。また、チオール 類は溶液中だと、酸化を受けてジスルフィド結合を形成しやすく、金への反応性が低下すること が知られている(37)。そのため、各 SAM 化試薬の溶液は、金電極を SAM 化する直前に調製し た。 金電極のSAM 化は、それぞれの SAM 化試薬ごとに以下の方法で行った。 ①疎水表面 (1-UD) への改質 まず、100% エタノール中に 1 mM となるように 1-UD 粉末を添加し、その後 10 分間超音 波処理することでチオールを完全溶解させた溶液を、ガラスバイアル (底に穴を開けた試験管 をバイアル中に入れたもの) 中に 5 ml 添加した (Figure 2-1)。そこに、UV-オゾン洗浄後の金 電極をセンサー面を下にしてすぐに浸漬し、30℃で一晩、静置した。翌日、金表面を 100% エ タノールに10 回浸漬した後、MilliQ 水を洗瓶で 10 sec 洗浄した。 ②負の荷電性表面 (10-CD) への改質 まず、2% (v/v) トリフルオロ酢酸を含むエタノール中に 1.0 mM となるように 10-CD 粉末を添加 し、その後 10 分間超音波処理することでチオールを完全溶解させた溶液を、ガラスバイアル (底に穴を開けた試験管をバイアル中に入れたもの) 中に 5 ml 添加した (Figure 2-1)。そこに、 UV-オゾン洗浄後の金電極をすぐに浸漬し、30℃で一晩、静置した。翌日、金表面を 2% (v/v) ト リフルオロ酢酸を含むエタノールに 5 分間浸漬後、100% エタノール、10% (v/v) アンモニアを 含むエタノール溶液、100% エタノールの順に 10 回浸漬し洗浄した。 ③正の荷電性表面 (11-AUD) への改質 まず、3% (v/v) トリエチルアミンを含むエタノール中に 0.1 mM となるように 11-AUD 粉末を 添加し、その後10 分間超音波処理することでチオールを完全溶解させた溶液を、ガラスバイア ル (底に穴を開けた試験管をバイアル中に入れたもの) 中に 5 ml 添加した (Figure 2-1)。そ こに、UV-オゾン洗浄後の金電極をすぐに浸漬し、30℃で一晩、静置した。翌日、金表面を 3% (v/v) トリエチルアミンを含むエタノールに 5 分間浸漬後、100% エタノール、10% (v/v) 酢酸 を含むエタノール溶液、100% エタノールの順に 10 回浸漬し洗浄した。 2-3-2 接触角測定による評価 SAM 化法で均一な SAM 化表面が形成できているかどうか、固体表面の濡れ性 (疎水性、親 水性) を評価するのに用いられる水静止接触角測定によってマクロな視点で評価した。 【方法】

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13

金電極表面に付着した汚れや空気中の酸素による SAM の酸化により、接触角が変化すること を防ぐため、SAM 化直後の電極を使用した。

接触角計は、CA-D 型 (Kyowa Interface Science Co., Ltd., Saitama, Japan) を用い、まず水準機 を用いて、水平調整を行った。次に、注射筒に MilliQ 水を入れ、液滴調整器に組み込み、試料 台にサンプルを乗せてもう一度水平調整を行った。光学鏡を覗きながら、マイクロメーターを回して 液滴を作成し (液滴の大きさは、レンズ目盛換算で 10 目盛りもしくは 15 目盛。約 5 µL)、試料台 を上昇させて針先の液滴を固体試料に付着させた。その後試料台を下降させ、液滴の 半径 (r) と高さ (h) を光学鏡の目盛から読み取り、θ = 2 tan-1 (h/r) (θ/2 法) により、接触角を算出した。 【結果】 UV-オゾン洗浄を行った後乾燥させた金電極の接触角は、85.5 ± 3.4° であった。 各表面の接触角は以下のようになった (Table 2-1)。 ・1-UD SAM 化表面の接触角は、100.1 ± 2.0° であった。 ・10-CD SAM 化表面の接触角は、42.5 ± 4.7° であった。 ・11-AUD SAM 化表面の接触角は、34.9 ± 0.3° であった。 一般的に、θ が 40°以下の場合を親水性、10°以下だと超親水性とされ、一方で、θ が 90°以上 の場合を 撥水性 (疎水性)、110°から 150°だと高撥水性、150°以上だと超撥水性とされる(38)こと から、SAM 化によって、炭素鎖長 11 のチオール試薬により金電極の表面を疎水的または親水 的に改質できていることが確認できた。

Table 2-1. Thiol reagents for SAM modification and water contact angles of the surfaces of SAM-modified QCM electrodes.

SAM Structural formula

Water contact angle (°) Gold Au 85.5 ± 3.4 1-undecanethiol (1-UD) 100.1 ± 2.0 11-amino-1-undecanethiol (11-AUD) 34.9 ± 0.3 10-carboxy-1-decanethiol (10-CD) 42.5 ± 4.7

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2-3-3 原子間力顕微鏡 (AFM; Atomic Force Microscope) による評価

SAM 化法で均一な SAM 化表面が形成できているかどうか、固体表面の形状および位相 (固体表面の物性) を観察することのできる AFM で評価した。

【材料】

走査型プローブ顕微鏡 (SEIKO SII SPA400; HITACHI, Tokyo, Japan) を用いて観察を行った。 スキャン画像の取得と解析はソフトウェア (AFM5000; HITACHI, Tokyo, Japan) を用いた。また、カ ンチレバーは探針がシリコンである SI-DF20 (背面 Al 有り、f = 136 KHz、C = 16 N/m; HITACHI, Tokyo, Japan) のものを用いた。サンプルには、洗浄直後もしくは SAM 化直後の AFFINIX QNμ の分離型センサーセル (QCMSC-SPP1AUR1; Ulvac, Inc.) 用金電極 (QCMSC-SPP1AU; Ulvac, Inc.) を用いた。 【方法】 最初に QCM 用の金電極を観察したところ表面の凹凸が非常に大きく (約±20 nm)、SAM 化が 均一にできているか確認するには形状画像だけでは判断できないことが判明した (Figure 2-2)。そ のため、AFM のダイナミックフォースモードを用いて、形状画像及び位相画像を同時に観察した。 システムを起動させ、除振台、サンプル、スキャナ、カンチレバーをセットした。その際、水準器を 用いて除振台の四隅が水平かつ固定台に接触していない状態であることを確認した。次に、レー ザーとフォトディテクタがカンチレバーの短針上にフォーカスされるように調整した。調整後、Q カー ブ測定を行い、カンチレバーの動作周波数を計測した。続いて、測定可能領域まで短針をサンプ ルへアプローチさせ、走査画像を得た。この際の測定条件は走査エリア 1 µm²、測定周波数 0.5 Hz、解像度 512 lines × 256 lines で、サンプルとして使用する SAM 化表面は 3-3-1 と同様の方 法で表面毎に 3 枚ずつ作製し、それぞれの表面に対してランダムな位置で 3 回ずつのスキャン を実施した(n = 3 x 3)。

【結果】

1-UD SAM 化表面、10-CD SAM 化表面、11-AUD SAM 化表面いずれにおいても改質前の金 表面と同様に位相が一様であった。この結果から、表面がナノメートルオーダーで均一に SAM 化されていると判断した。(Figure 2-2)

第四節 SAM 化表面を用いた RolA の固体表面への吸着キネティクス解析

QCM を用いて、pH 4.0, 7.0, 10.0 条件下での各 SAM 化表面と RolA の親和性解析を行った。

2-4-1 1-UD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析

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QCM は AFFINIX QNμ (QCM2008-LVKIT, Ulvac, Inc.) と、2-2-1 と同じ方法で作製した SAM 化金電極を組み込んだ分離型センサーセル (Ulvac, Inc.) を用いた。測定データ取得は AFFINIX QN Series Solo Viewer version 1.1 (Ulvac, Inc.) ソフトウェア、データ解析は AFFINIX Q User Analysis (AQUA; Ulvac, Inc.) ソフトウェアを用いた。

RolA WT は、精製標品を MilliQ 水に溶解後分注、減圧乾燥し、これを用時に測定用緩衝液 に任意の濃度で溶解させて使用した。 【方法】 反応系は、測定温度 30℃、撹拌速度 1,000 rpm に設定した。操作は、下記のようにセンサー セル洗浄、金表面の改質 (SAM 化)、安定化準備、RolA (アナライト) の注入、結合のモニターの 順で行った。 1.金電極の洗浄 2-3-1 と同様に行った。 2.金表面の改質 (SAM 化) AFFINIX QNµ 用分離型センサーセル用金電極を 2-3-1 と同様に SAM 化し、30 分以上風 乾させたものを使用した。 3.安定化準備 まず、センサーセルを AffinixQNµ に装着し、発振周波数のシグナルが安定するまで静置 した。次に、膜孔 0.2 μm のシリンジフィルター(DISMIC-25cs; ADVANTEC Co., Ltd., Tokyo, Japan) で濾過することで不溶性微粒子(ゴミ)を除去した 10 mM GTA buffer (pH 4.0, 7,0 又は 10.0) をセンサーセルに 500 μl 加えた。撹拌子付きカバーを装着して攪拌を開始し、発振周 波数のシグナルが安定するまで静置した。

5.RolA (アナライト) の注入と結合のモニター

安定化後、センサーセルに各濃度の精製 RolA 溶液を 5 µl もしくは 10 µl 加え、 AFFINIX QN Series Solo Viewer version 1.1 を用いて発振周波数の変化を観察した。

6.KD 値と Bmax 値の算出

解析ソフト AQUA を用いて、Langmuir の等温吸着式への Non-Linear フィッティングを行い、

KD 値 (結合解離定数) と Bmax 値 (RolA の最大結合量) を算出した。

【結果】

均一に改質された金表面を用い、まず、疎水性表面 (1-UD) と RolA WT の親和性を、QCM を用いて定量的に解析した。いずれの pH 条件下でも、チャンバ内の RolA 濃度の上昇に従い吸 着曲線がシグモイド型となった (Figure 2-3A) ことから、RolA の吸着段階が複数存在することが示 唆された。一段階目の飽和吸着 (Figure 2-3B) からの KD 、Bmax 算出を行い、以下のような結果

が得られた (Table 2-2)。また、発振周波数の変化とセンサー表面に吸着した RolA の質量の関係 は、Sauerbrey の式という次式で表される(39)

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16 ∆𝐹 = −2𝐹02 √𝜌𝑄𝜇𝑄 ⁄ ・ ∆𝑚⁄ 𝐴 (2-1) ΔF は発振周波数変化量 (Hz)、F0 は基本周波数 (Hz)、ρQ はセンサーを構成する水晶の密度 (= 2.648 g/cm3)、μ Q は水晶のせん断応力(= 2.947×1013 g/m・sec-2)、Δm はセンサー表面に吸着 した RolA 量 (g)、A は金電極の面積 (cm2) である。式 (2-1) を用いて、吸着 RolA 量を算出 した。

・pH4.0 では、KD、Bmax ともに算出できなかった。

pH7.0 では、KD = 135.0 ± 35.8 nM、Bmax = 9.1 ± 1.9 ng であった。 ・pH10.0 では、KD = 200.7 ± 49.1 nM、Bmax = 4.6 ± 2.6 ng であった。

吸着全体での速度・量は、pH4 > pH7 > pH10 の順に大きかった (Figure 2-3A)。

Table 2-2. Summary of the interaction between RolA and 1-UD-modified surfaces, water contact angle of surfaces with adsorbed RolA, and shape of self-assembled RolA structures.

pH KD (nM)* Bmax (ng)*

Water contact angle (°) Shape of RolA structures RolA 6 ng RolA 30 ng RolA 6 ng RolA 30 ng

4 N.C. N.C. 99.6 ± 2.0 94.5 ± 1.9 Sphere Mesh 7 135.0 ± 35.8 9.1 ± 1.9 84.4 ± 6.1 79.2 ± 4.0 Sphere Rod 10 200.7 ± 49.1 4.6 ± 2.6 96.2 ± 1.7 N/A Sphere N/A *Values were calculated from the first plateau.

N.C., not calculable; N/A, not assessed.

2-4-2 10-CD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析

【材料】

2-4-1 と同様の物を使用した。 【方法】

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2-4-1 と同様の方法で行った。 【結果】

均一に改質された負荷電性表面 (10-CD) と RolA WT の親和性を、QCM を用いて定量的に 解析した。チャンバ内の RolA 濃度の上昇に従い吸着曲線がシグモイド型となった (Figure 2-4A) ことから、RolA の吸着段階が疎水性表面に対する RolA WT の吸着と同様に複数存在することが 示唆された。そこで、一段階目の飽和吸着(Figure 2-4B) からの KD 、Bmax 算出を行ったところ、以 下のような結果が得られた (Table 2-3)。吸着 RolA 量は式 (2-1) を用いて算出した。 ・pH4.0 では、KD = 71.3 ± 0.6 nM、Bmax = 4.0 ± 1.2 ng であった。 ・pH7.0 では、KD = 187.3 ± 69.0 nM、Bmax = 2.4 ± 1.2 ng であった。 ・pH10.0 では、KD = 396.5 ± 31.8 nM、Bmax = 1.0 ± 0.0 ng であった。 負荷電性表面においては、吸着全体での速度・量は、pH4 > pH7 > pH10 の順に大きかった (Figure 2-4)。

Table 2-3. Summary of the interaction between RolA and 10-CD-modified surfaces, water contact angle of surfaces with adsorbed RolA, and shape of self-assembled RolA structures.

pH KD (nM)* Bmax (ng)*

Water contact angle (°) Shape of RolA structures RolA 6 ng RolA 30 ng RolA 6 ng RolA 30 ng

4 71.3 ± 0.6 4.0 ± 1.2 59.2 ± 3.8 51.9 ± 2.4 Sphere Short rod 7 187.3 ± 69.0 2.4 ± 1.2 60.5 ± 1.3 N/A Sphere N/A 10 396.5 ± 31.8 1.0 ± 0.0 55.8 ± 3.2 N/A Sphere N/A *Values were calculated from the first plateau.

N.C., not calculable; N/A, not assessed.

2-4-3 11-AUD SAM 化表面に対する RolA の動力学的解析

【材料】

2-4-1 と同様の物を使用した。 【方法】

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【結果】

均一に改質された正荷電性表面 (11-AUD) と RolA WT の親和性を、QCM を用いて定量的 に解析した。その結果、チャンバ内の RolA 濃度の上昇に従い吸着曲線がシグモイド型となった (Figure 2-5A) ことから、RolA の吸着段階がこれまでの表面と同様に複数存在することが示唆され た。そこで、一段階目の飽和吸着 (Figure 2-5B) からの KD 、Bmax 算出を行った結果、以下のよう になった (Table 2-4)。 ・pH4.0 では、KD、Bmax ともに算出できなかった。 ・pH7.0 では、KD = 49.4 ± 0.3 nM、Bmax = 1.7 ± 0.2 ng であった。 ・pH10.0 では、KD、Bmax ともに算出できなかった。 正荷電性表面においては負電荷表面と同様に、吸着全体での速度・量は、pH4 > pH7 > pH10 の 順に大きかった (Figure 2-5)。

Table 2-4. Summary of the interaction between RolA and 11-AUD-modified surfaces, water contact angle of surfaces with adsorbed RolA, and shape of self-assembled RolA structures.

pH KD (nM)* Bmax (ng)*

Water contact angle (°) Shape of RolA structures

RolA 6 ng RolA 30 ng RolA 6 ng RolA 30 ng

4 N.C. N.C. 90.4 ± 2.5 62.3 ± 2.9 Sphere Short rod 7 49.4 ± 0.3 1.7 ± 0.2 51.0 ± 0.8 N/A Sphere N/A 10 N.C. N.C. 62.3 ± 2.2 N/A Sphere N/A *Values were calculated from the first plateau.

N.C., not calculable; N/A, not assessed.

第五節 RolA の固液界面での自己組織化機構の解析

2-5-1 1-UD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察

【方法】

2-4-1, 2-4-2, 2-4-3 と同様にして RolA 吸着 SAM 化表面の作製を行った。QCM により吸着キ ネティックス解析後の金電極を MilliQ 水で洗浄した後、乾燥させ、2-3-2, 2-3-3 と同様の方法で

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接触角測定及びAFM 観察を行った。 【結果】

AFM 観察の結果からは、pH4.0, 7.0 において、RolA 吸着量の増加と共に、吸着した RolA の 構造が球状 (直径約 30 nm) から、棒状 (幅約 30 nm)または網目状 (幅約 40 nm ) に変化して いた (Figure 2-6)。pH4.0 よりも pH7.0 の方が、より少ない吸着量で棒状構造を形成した。一方、 pH10.0 では RolA による球状構造形成は観察できたが、棒状構造の形成は見られなかった。

接触角測定の結果 (Table 2-1, 2-2) から、pH4.0 で作製した RolA 吸着表面の接触角は、RolA 6 ng 吸着時に 99.6 ± 2.0(°)、RolA 30 ng 吸着時に 94.5 ± 1.9(°) であり、RolA 吸着前後での表面 性質に大きな変化は見られなかった。pH7.0 で作製した表面は、RolA 6 ng 吸着時 84.4±6.1(°)、 30 ng 吸着時に 79.2 ± 4.0(°) と、RolA が疎水表面に吸着することで 1-UD から約 20°表面が親 水性に改質された。さらに、pH10.0 で作製した表面では、RolA 6 ng 吸着時に 96.2 ± 1.7(°) であ り、pH4 と同様に RolA 吸着前後での表面性質に大きな変化は見られなかった。 2-5-2 10-CD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察 【方法】 2-4-1, 2-4-2, 2-4-3 と同様にして RolA 吸着 SAM 化表面の作製を行った。QCM により吸着キ ネティックス解析後の金電極を MilliQ 水で洗浄した後、乾燥させ、2-3-2, 2-3-3 と同様の方法で 接触角測定及びAFM 観察を行った。 【結果】 AFM 観察の結果からは、pH4.0, 7.0, 10.0 で RolA が 6 ng 吸着した表面において、明らかな RolA の構造物は形状像では観察できなかったが、位相像で小さな球状構造 (解析ソフトウェアの 仕様上、位相像からの直径の算出はできなかった) が確認できた (Figure 2-7)。pH4.0 条件下で は、RolA が 30 ng 吸着すると、小さな棒状構造 (幅約 15 nm) が部分的に形成されている様子 が観察できた。さらに吸着量を増やし、RolA が 240 ng 吸着すると小さな棒状構造 (幅約 30 nm) ができる領域が拡大している様子が観察できた。

接触角測定の結果 (Table 2-1, 2-3) から、pH4.0 で作製した RolA 吸着表面の接触角は、RolA 6 ng 吸着時に 59.2 ± 3.8(°)、RolA 30 ng 吸着時に 51.9 ± 2.4(°) であり、RolA 吸着により、表面 が約10°疎水性に改質された。pH7.0 で作製した表面は、RolA 6 ng 吸着時 60.5 ± 1.3(°) と RolA が表面に吸着することで 10-CD から約 20°表面が疎水性に改質された。さらに、pH10.0 で作製 した表面では、RolA 6 ng 吸着時に 55.8 ± 3.2(°) であり、pH4 と同様に RolA 吸着後、表面が約 10°疎水性に改質された。

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2-5-3 11-AUD SAM 化表面に対する RolA の吸着形態の観察

【方法】 2-4-1, 2-4-2, 2-4-3 と同様にして RolA 吸着 SAM 化表面の作製を行った。QCM でにより吸着キ ネティックス解析後の金電極を MilliQ 水で洗浄した後、乾燥させ、2-3-2, 2-3-3 と同様の方法で 接触角測定及びAFM 観察を行った。 【結果】 AFM 観察の結果からは、pH7.0, 10.0 で RolA が 6 ng 吸着した表面において、明らかな RolA の構造物は形状像では観察できなかったが、位相像で小さな球状構造 (解析ソフトウェアの 仕様上、直径の算出はできなかった) が確認できた (Figure 2-8)。pH4.0 条件下では、RolA の吸 着量の増加と共に、球状構造 (直径約 30 nm) から棒状構造 (幅約 30 nm) が形成されている様 子が観察できた。

接触角測定の結果 (Table 2-1, 2-4) から、pH4.0 で作製した RolA 吸着表面の接触角は、RolA 6 ng 吸着時に 58.0 ± 3.8(°)、RolA 30 ng 吸着時に 69.3 ± 8.4(°) であり、RolA 吸着後は表面が 約 30°疎水性に改質された。pH7.0 で作製した表面は、RolA 6 ng 吸着時 51.0 ± 0.8(°) であり、 RolA 吸着後の表面性質は変化しなかった。pH10.0 で作製した表面では、RolA 3 ng 吸着時 62.3 ± 2.2(°) と、RolA 吸着後、表面が約 10°疎水性に改質された。 第六節 RolA の水溶液中での二次構造の解析 固液界面での RolA 吸着において、RolA の化学的状態だけでなく、タンパク質の構造の変化 も RolA の吸着に変化を及ぼす可能性が考えられた。そこで、QCM に使用した水溶液の pH 条 件下において、RolA の CD スペクトルを測定し、RolA の二次構造の変化を解析した。 【方法】

RolA の CD スペクトル測定は J-720WI circular dichroism spectrometer (JASCO International, Tokyo, Japan) を用いて行った。

精製 RolA WT を 10 mM GTA 緩衝液 (pH4.0 or 7.0 or 10.0) 1 ml に 100 µg/ml になるように 溶解した。J-720WI circular dichroism spectrometer (JASCO International) を用いて、装置の測定 室内に N2 ガスを流入しながら、CD スペクトルを測定した (測定波長 190-250 nm, 1 mm 光路長 石英セル、積算回数 10 回)。

【結果】

RolA はいずれの pH 条件下においても、CD スペクトルのピーク位置に大きな変化が生じな かったため、二次構造はpH4.0, 7.0, 10.0 においては変化がないことが示唆された (Figure 2-9)。

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21 第七節 考察 再現性のある正確な親和性解析及び、AFM 観察を行うためには、均一な SAM 化表面を作 製する必要がある。本実験で用いた 27 MHz QCM (AffinixQNµ) に適用可能な金電極表面を AFM で観察したところ、凹凸が約 ± 20 nm と大きい事が判明した (Fig.2-2)。そこで、表面の形状 画像だけではなく位相画像も得ることでより正確な改質均一性の評価を行った。本実験では Jiang らの方法(36)を参考にし、10-CD, 11-AUD SAM 化表面を作製する際に、SAM 化溶液中にそれぞ れトリフルオロ酢酸、トリエチルアミンを添加した。これによって、金表面に吸着したアルカンチオー ルと未吸着のアルカンチオール間の水素結合の生成を阻害することができる(36)。また、トリフルオロ 酢酸により、COOH の脱イオン化を、トリエチルアミンにより、NH2 のイオン化を抑制することができ、 電荷を持った末端の官能基が反発しあうことで炭素鎖部分同士の疎水結合と組織化が阻害され、 高密度・均一な表面状態が形成されない問題を抑制することができる(36)。また、11-AUD において は、SAM 化溶液中に解離した末端アミノ基 (-NH3+ ) が存在すると、11-AUD のチオール基が大気 中の酸素等により酸化されて生じた硫酸基 (SO32-) と末端アミノ基が結合してチオールの多層構 造が形成されてしまうため、末端アミノ基 (NH2) のイオン化を防ぐことが非常に重要である(36)。接 触角測定、AFM 観察による表面の物理化学的評価により、Jiang らの方法を改良した上記の方 法では、3 種類のチオール試薬で作製した SAM 化表面全てにおいてドメイン構造の無い均一 な改質が行われたと評価できた。そのため、この方法で作製した SAM 化表面を以下の実験に使 用することとした。 QCM 解析による RolA の各固体表面に対する親和性解析の結果、1-UD では吸着初期のみの 速度・量は pH7>pH4 であった。しかし、全ての表面 (疎水性、正・負の荷電性表面) において吸 着全体での速度・量は、pH4 > pH7 > pH10 の順に大きかった (Figure 2-3, 2-4, 2-5, Table 2-2, 2-3, 2-4)。当初、筆者は、固体表面が本来持つ性質 (疎水度、官能基 etc.) が RolA の吸着全体の 速度・量に大きく影響を与えると予測していたが、QCM による親和性解析の結果からは、RolA が 約 0.3 ng~1.0 ng 吸着した表面では、表面が本来持つ性質よりも、RolA 分子の化学的性質が RolA の吸着速度・吸着量に影響する可能性が示唆された (Figure 2-3, 2-4, 2-5)。これまでの研究 から、RolA と固体表面間の相互作用には静電的相互作用と疎水的相互作用の両方が働いている と推測される(10, 25, 40)。前任者の田中により、RolA の表面電位は pH < 5 では正の、pH > 6 では負 の電位を持つことが明らかとなった (Figure 2-10)。また、GENETYX ver.9 を用いて、RolA の疎水 性ループ領域であるCys3-Cys4, Cys7-Cys8 loop のアミノ酸一次配列から電荷を予測すると、Cys3-Cys4 loop は pI 3.96、Cys7-Cys8 loop は pI 3.91 と推測された (Figure 2-11)(41)。また、CD スペクト ルの結果 (Figure 2-9) から、RolA の構造変化が吸着キネティクスに与えた影響は排除することが できる。さらに、Shyue らの報告において、末端官能基がメチル基である疎水性 SAM 化表面のゼ ータ電位は、pH4.0 では約-10 mV、pH7.0 では約-30 mV、pH10.0 では約-50 mV、末端官能基が カルボキシル基である負荷電性 SAM 化表面 (10-CD) のゼータ電位は、pH4.0 では約-40 mV、 pH7.0 では約-50 mV、pH10.0 では約-90 mV と、常に負に帯電しており、pH が大きくなるにつれて、

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22 大きく負に帯電していることが示唆されている(42)。また、末端の官能基がアミノ基である正荷電性 SAM 化表面(11-AUD) のゼータ電位は、pH4.0, 7.0 では約+100 mV、pH10.0 では約+80 mV と常 に正に帯電していることも示唆されている(42, 43) これらの結果および知見より、次の吸着モデルが考えられる (Figure 2-12)。RolA は、いずれの 化学的性質を有した固体表面に対しても吸着キネティクスは類似しており、その中でも特に疎水性 表面に対して高い親和性を示したことから、固体表面に対し主に疎水的相互作用で吸着している と考えられる。そのうえで、さらに pH によって生じる RolA 全体の表面電位と Cys3-Cys4 loop, Cys7-Cys8 loop の表面電位の違いで固体表面への親和性が大きく変化すると考えられる。RolA, Cys3-Cys4 loop, Cys7-Cys8 loop の等電点がいずれも pH4 付近であることから、pH4 条件下では、 RolA は電荷を失い疎水的になっていると考えられる。そのため、固体表面との疎水的相互作用が 非常に強くなり、RolA-固体表面間の親和性が高くなる。一方、pH7, 10 条件下では RolA 全体が 負電荷、Cys3-Cys4 loop, Cys7-Cys8 loop も負電荷となり、RolA の電荷は負電荷寄りとなり固体表 面との疎水的相互作用は pH4 条件下に比べ小さくなる。

本実験で行ったAFM による疎水性、正・負の荷電性表面に吸着した RolA の形態観察の結果、 全ての表面上にRolA は吸着した。これは、class II hydrophobin である HFBI, HFBII, HFBIII でも 同様の傾向を示している(44)。また、Class I hydrophobin は一般的に、rodlet と呼ばれる β-アミロイド 様の棒状自己組織化構造を形成することが知られている(45)が、RolA は全ての表面において自己 組織化構造と思われる棒状構造を形成したことから、RolA も他の class I hydrophobin と同様に自 己組織化構造形成能を有していることが示唆された。疎水性表面では、RolA は固体表面に吸着 すると球状構造を形成し、それを足場に網目状構造、棒状構造を形成している可能性が示唆され た。これは、Agaricus bisporus 由来の class I hydrophobin ABH1 において、ABH1 が疎水表面上

に吸着し経時的に吸着形態が変化したとする報告と類似する結果である(30)。実験で用いた 3 つの 表面を比較すると、疎水性表面でRolA が最も低濃度の条件で自己組織化構造が形成されていた。 これは、疎水性表面に吸着する際に最も自己組織化構造が形成しやすいことを 示唆している (Figure 2-2, 2-5)。また、緩衝液 pH4.0, 7.0, 10.0 の 3 つの条件で比較すると、pH4.0>pH7.0>>pH10.0 の順で自己組織化構造が形成されやすいことが示唆された (Figure 2-6, 2-7, 2-8)。また、負電荷表 面、正電荷表面上では、球状構造を形成した後、疎水性表面とは異なり短い棒状構造が形成され た。これまでに、ハイドロフォビンの自己組織化によってこのような短い棒状構造が形成されるという 報告はされていない。一方、rodlet の研究において、ハイドロフォビンを吸着させる基板に荷電性表 面を用いた文献も存在しない。また、短い棒状構造の幅は、疎水表面で見られた長い棒状構造と 類似していた (Figure 2-6, 2-7, 2-8)。このことから、本研究で観察された短い棒状構造は、RolA の 自己組織化構造の形成が荷電性表面の持つ電荷によって阻害されたために生じたのではないか と予想される。また、RolA 自己組織化機構には、RolA 中のアミノ酸の電荷が関与しているのでは ないかとも考えられる。さらに、疎水性表面、電荷表面のいずれも自己組織化構造が観察されたの は、RolA の二次吸着後であったことから、1 段階目の吸着によって球状構造が生じ、その後の二 段階目の吸着において自己組織化構造が形成されたのではないかと考えられる。

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以上より、次のような RolA 自己組織化モデルが考えられる (Figure 2-12)。モデルは大きく疎水 性表面と荷電性表面に分けられ、さらに pH によって形成される構造が異なる。疎水性表面では (1) RolA が疎水性表面に吸着し球状構造を形成、(2) RolA がさらに吸着し、pH4 では網目状構 造、pH7 では棒状構造が形成される (Figure 2-13A)。荷電性表面では、(1) RolA が荷電性表面 に吸着し球状構造を形成、(2) RolA がさらに吸着し、pH4 条件下では短い棒状構造が形成され る (Figure 2-13B)。 また、RolA が 30 ng 吸着した表面の接触角を測定したところ、疎水性表面 pH7.0、正荷電性表 面 pH4.0, 負電荷表面 pH 4.0 においては RolA 吸着後の表面が親水性または疎水的に改質さ れたにも関わらず、疎水性表面 pH4.0 では RolA が吸着しても、表面が親水的に改質されなかっ た (Table 2-2, 2-3, 2-4)。これは、hydrophobin の特異的な性質である、表面の湿潤性を逆転させる (22)という性質に反している。この原因として、疎水的表面 pH4.0 条件下では RolA が被覆してい ない疎水的表面が露出した部分が多いため (Figure 2-6g,h)、接触角が減少しなかったことが考え られる。荷電性表面も pH4.0 条件下では RolA が被覆しきれていない部分が露出しているが (Figure 2-8g,h)、これは RolA 吸着表面形成から接触角測定するまでの経過時間で、荷電性表面 が劣化したからだと考えられる (荷電性表面形成から RolA 吸着までは直ちに操作するため、吸 着への影響はない)。基板が露出しているかどうかは AFM 観察像から判断した。また、疎水性表 面の pH4.0 中では RolA タンパク質は等電点に近く、表面の荷電性を失っている状態であるため (Figure 2-11)、疎水性表面にランダムに吸着している可能性が高い。一方、緩衝液 pH7.0 中では RolA タンパク質は負に帯電しているため、RolA 同士の静電的相互作用により、配向性が高い状 態で疎水性表面に吸着していると考えられる。Linder らによって、pH を変化させて疎水性、正・負 の荷電性表面に吸着したclass II hydrophobin HFBI, HFBII の接触角を測定した実験がなされてい るが、HFBI, HFBII では pH4.0 の条件で疎水性表面に吸着すると接触角が約 90°からどちらも 50° 前後まで低下する(44)。この結果を踏まえて考察すると、class I hydrophobin である RolA は、class II hydrophobin HFBI とは異なり、大きな疎水ループが存在するため、タンパク質が表面の電荷を失う と、疎水的相互作用が引力として働く力が極めて強くなる。そのため、RolA は固体表面へ吸着する 際に、class II hydrophobin よりも分子の配向性がランダムな状態で吸着しやすいと予想される。 以上のような考察の一方で、以下のような課題点が抽出されてきた。 現在使用している QCM 用金電極の表面の凹凸は約 ±20 nm と大きく、約 2 nm である RolA や数十 nm である rodlet が、平滑な表面上にどのように吸着しているのかを正確に観察すること が困難である。また、疎水性表面 pH4 条件下で観察された自己組織化構造は QCM 用金電極 表面の凹凸に沿うようにして形成されていることが観察されたことから、表面の凹凸が自己組織化 に影響を与えていることが考えられる。前任者の永山は、QCM-D の高平滑な金電極を用いて実 験を行うことで、ある条件を満たすと RolA は高平滑表面上に高密度に配向した rodlet を形成す ることを明らかにした (Figure 2-14)(35)。このことから、平滑な表面で rodlet を形成させることで、より 詳細に自己組織化構造形成機構を明らかにすることができると考えられる。しかし、永山はQCM-D

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24

表面上での rodlet 形成の再現性が悪いと報告している(35)ことから、平滑な表面上に RolA による 高密度に配向した rodlet を形成させるためには、別の方法を用いる必要がある。

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25

第八節 Figure

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27

Figure 2-2. AFM images of the surface of QCM electrodes.

(A)(B) non-modified gold electrode; (C)(D) 1-undecanethiol (1-UD) modified electrode; (E)(F) 11-amino-1-undecanethiol (11-AUD) modified electrode; (G)(H) 10-carboxy-1-decanethiol (10-CD) modified electrode. Topographic images (A,C,E,G) and phase images (B,D,F,H) are shown. Scale bar = 200 nm.

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Figure 2-3. QCM monitoring of interaction between RolA and 1-undecanethiol surface.

(A) Adsorption amount of RolA on 1-UD-modified electrode in response to addition of RolA. Solid

line and square : pH4. Dashed line and circle : pH7. Dotted line and triangle : pH10. (B) The area

where the RolA concentration under 1,000 nM is shown in an enlarged. The arrows and lower case letters in the graph indicate the adsorbed amounts of RolA to the electrodes of which surfaces were observed with AFM (Figure 2-5).

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29

Figure 2-4. QCM monitoring of interaction between RolA and 10-carboxy-1-decanethiol surface.

Adsorption amount of RolA on 10-CD-modified electrode in response to addition of RolA. Solid line

and square: pH4. Dashed line and circle: pH7. Dotted line and triangle: pH10. (B) The area where the

RolA concentration under 1,000 nM is shown in an enlarged view. The arrows and lower case letters in the graph indicate the adsorbed amounts of RolA to the electrodes of which surfaces were observed with AFM (Figure 2-6).

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30

Figure 2-5. QCM monitoring of interaction between RolA and 11-amino-1-undecanethiol SAM surface, and AFM images of the RolA-adsorbed surfaces.

(A) Adsorption amount of RolA on 11-AUD-modified electrode in response to addition of RolA. Solid

line and square: pH4. Dashed line and circle: pH7. Dotted line and triangle: pH10. (B) The area where

the RolA concentration under 1,000 nM is shown in an enlarged view. The arrows and lower case letters in the graph indicate the adsorbed amounts of RolA to the electrodes of which surfaces were observed with AFM (Figure 2-7).

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Figure 2-6. AFM images of the RolA-adsorbed 1-undecanethiol surfaces.

The AFM images of the surface topographic and phase. (a)(b) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 4; (c)(d) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 7; (e)(f) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 10; (g)(h) the surface on which 30 ng of RolA adsorbed at pH 4; (i)(j) the surface on which 30 ng of RolA adsorbed under at pH 7. For each AFM image, the structures formed by RolA are indicated by arrows. Image size is 1 μm × 1 μm. Scale bar = 200 nm.

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32

Figure 2-7. AFM images of the RolA-adsorbed 10-carboxy-1-decanethiol surfaces.

The AFM images of the surface topographic and phase. (a)(b) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 4; (c)(d) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 7; (e)(f) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 10; (g)(h) the surface on which 30 ng of RolA adsorbed at pH 4. For each AFM image, the structures formed by RolA are indicated by arrows. Image size is 1 μm × 1 μm. Scale bar = 200 nm.

(35)

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Figure 2-8. AFM images of the RolA-adsorbed 11-amino-1-undecanethiol surfaces.

The AFM images of the surface topographic and phase. (a)(b) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 4; (c)(d) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 7; (e)(f) the surface on which 6 ng of RolA adsorbed under the condition of pH 10; (g)(h) the surface on which 30 ng of RolA adsorbed at pH 4. For each AFM image, the structures formed by RolA are indicated by arrows. Image size is 1 μm × 1 μm. Scale bar = 200 nm.

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34

Figure 2-9. Circular dichroism spectra of wild-type RolA under various pH .

Solid line: pH4, dotted line: pH7, dashed line: pH10. Spectra are the average of 10 scans corrected by using a reference solution without protein.

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Figure 2-10. Zeta potential of RolA under various pH conditions(41).

RolA was dissolved by 10 mM KCl at 100 µg/ml concentration, then pH of was adjusted to pH 3 to 10 by 0.1 N KOH and 0.1 N HCl. Zeta potential was calculated by ELSZ-2 (Otsuka Electronics Co., Ltd., Osaka, Japan) at 25℃. The data represents the mean ±S.D. (n = 6).

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Figure 2-11. Calculated charge of RolA and its hydrophobic region under various pH conditions(35).

(A) Amino acid sequence of RolA. Cysteines are boxed in blue. (B) Calculated charge of RolA total molecule. (C) Calculated charge of RolA Cys3-Cys4 loop. (D) Calculated charge of RolA Cys7-Cys8 loop.

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37

Figure 2-12. Schematic models of adsorption of RolA on various solid surfaces.

The schematic model of interaction between RolA and 1-UD / 10-CD / 10-AUD-modified solid surfaces under various pH conditions. (A) At pH 4, zeta potential of RolA is near zero and RolA showed high affinity to the three solid surfaces (1-UD (a) / 10-CD (b)/ 10-AUD-modified surfaces (c)). (B) At pH 7, zeta potential of RolA is negative and RolA showed lower affinity to three solid surfaces than at pH 4. At pH 10, zeta potential of RolA is more negative than at pH 7 and RolA showed lower affinity to three solid surfaces than at pH4 and pH 7. So RolA showed low affinity to the three solid surfaces (1-UD (a) / 10-CD (b)/ 10-AUD-modified surfaces (c)).

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38

Figure 2-13. Schematic models of self-assemble of RolA on various solid surfaces.

(A) The schematic model of adsorption and self-assembly of RolA on the 1-UD-modified surface under various pH conditions. At pH 4, 7 and 10, First, RolA molecules (small gray spheres) adsorb on the surface. As the amount of RolA adsorbed on the surface is increased, RolA forms the spherical structures (big gray spheres). As the amount of RolA adsorbed on the surface is further increased, RolA forms the mesh-like structures (gray mesh) at pH 4 and the rod-like structures (gray rods) at pH 7. At pH 10, the amount of RolA adsorbed on the surface is less than at pH 4 and 7, and RolA forms only the spherical structures. (B) The schematic model of adsorption and self-assembly of RolA on the 10-CD or 11-AUD-modified surface under various pH conditions. First, RolA molecules (small gray spheres) adsorb on the surfaces. As the amount of RolA adsorbed on the surfaces is increased, RolA forms the spherical structures (big gray spheres). As the amount of RolA adsorbed on the surfaces is further increased, RolA forms the short rod-like structures (gray rods) at pH 4. At pH 10, the amount of RolA adsorbed on the surface is less than at pH 4 and 7, and RolA forms only the spherical structures.

(41)

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Figure 2-14. AFM images of the RolA-adsorbed surfaces on the 1-undecanethiol QCM-D electrode(35).

(A) Topographic image and (B) phase image are shown. Scale bar = 200 nm. (C) Analysis of width of the rodlet structure.

(42)

40 第三章 RolA の気液界面における自己組織化機構の研究 第一節 緒言 第二章では RolA の固液界面に対する吸着キネティクスと自己組織化機構を解析した。しかし、 吸着キネティクスに関しては詳細な解析ができたものの、自己組織化機構に関しては観察に用い た QCM 電極表面の凹凸が自己組織化に影響を与えていることが示唆された。

凹凸の小さいQCM 金電極表面は市販されており (例:Qsensor QSX 301 Gold, Biolin Scientific, https://www.biolinscientific.com/qsense/qsensors)、前任者の永山は本 QCM 金電極上に RolA 溶 液をマウントすることで電極表面上への RolA 自己組織化構造作製を試みた(35)。この際 Rodlet と 思われる自己組織化構造の形成に成功したが (Figure 2-14)、同様の自己組織化構造を再現性良 く取得することはできなかった(35)。そこで、QCM 電極を用いた解析に代えた別の解析方法として、 界面活性物質の膜の性質解析によく用いられる気液界面膜 (L 膜; Langmuir 膜) 形成を用いた 詳細な rodlet 形成およびメカニズム解析を行うこととした (Figure 3-1)。L 膜形成法とは、トラフ (Trough) と呼ばれる水槽に緩衝液を入れ、緩衝液と空気の界面 (気液界面) に界面活性物質を 展開し、気液界面を圧縮することで界面活性物質の膜を気液界面上に形成しつつ、形成過程を膜 の表面圧の変化から解析する方法である(46)。一般的な L 膜は、L 膜を構成する分子が疎であり、 配向性がそろっていない気体膜から、分子がある程度密に集まってはいるが配向性がそろってい ない液体膜、そして分子が密に集まり配向性がそろった固体膜へと相転移していく(47)。また、L 膜 は QCM 電極上への RolA 吸着構造よりも短時間で作成でき、作製した L 膜を SiO2 のような平 滑な表面に転写することで、形成された膜の構造も観察することができる (Figure 3-1)。 本章では、RolA L 膜を様々な pH で作製し、自己組織化機構の詳細を解析することを目的と した。前章において、RolA の予測等電点に近い pH 条件下では自己組織化構造が形成されやす いことが示唆されたため、まずは RolA の予測等電点である pI =4.8 に近い pH5 で L 膜作製を 行い、表面膜圧解析と AFM 観察を行った。その後、pH を変化させて L 膜作製を行い、同様の 解析を行って RolA の自己組織化機構を解析した。

第二節 RolA 高発現麹菌からの RolA の精製、RolA 量の測定

第二章で用いた RolA 精製法では、一度の精製で得られる RolA 量は十分でない (1 L の培 養液から 3 mg 程度)。L 膜作製の実験に使用する RolA は、精製毎の RolA の状態のバラつ きを抑えるために、実験をすべて一度の精製で得られた RolA で行う必要がある。L 膜作製に RolA は少なくとも 10 mg は必要であると考えられたため、RolA の精製法を改善する必要がある と考えた。そこで、当研究グループの千葉が改良した精製法を用いて精製した(48) また、L 膜作 製にあたり、L 膜作製前の RolA の二次構造変化を抑制し一定の二次構造に保つために、可能な 限り迅速に RolA を定量する必要が生じた。そこで、従来の RolA 定量法である BCA 法(所要約 1 時間)に代えて、RolA を UV の吸光度で定量(所要 10 分以内)できるように、BCA 測定の結果 と UV 測定の結果を照らし合わせ、UV 吸光度における RolA 量の検量線を作成した。

Table 1-1 Buffers and solutions for protein experiments  For SDS-PAGE
Table 2-1. Thiol reagents for SAM modification and water contact angles of the surfaces of SAM- SAM-modified QCM electrodes.
Figure 2-1. Model for the SAM coating on quartz crystal microbalance sensor disks.
Figure 2-3. QCM monitoring of interaction between RolA and 1-undecanethiol surface.
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