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株式交換税制の論点

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平成18年度税制改正において、 株式交換・株式移転に係る税法規定が租税 特別措置法から法人税法に移され、 合併・会社分割等の組織再編成と整合す る形で組織再編税制へと統合された1)。その結果、 買収対象法人(株式交換 により完全子会社となる法人)の株主における株式譲渡益課税の繰延べが対 価要件(交付金等の利用の有無)によってのみ判断されることになる一方で、 合併とほぼ同様の税制適格要件を満たさない場合には、 対象法人の一定の資 産について時価評価課税が行われることになった (法62の9、 法令123の11)2) ここで注目すべき特徴点は、 合併と違って株式交換では買収対象法人にお ける資産の移転がないにもかかわらず、 税制非適格となれば、 連結納税の開 始・加入における連結子法人の時価評価課税(法61の11①)とほぼ同じよう に、 土地や有価証券など一定の資産について時価評価課税が行われるように なったことである。これは未実現の評価損益を課税所得に算入しないとする 基本原則に対する例外的な取扱いであるため、 いくつかの批判的な意見が示 されている(岡村〔2007 、 渡辺(徹) 2007 )。 また、 新税制の企業再編実務への影響として、 対価要件や共同事業要件に

株式交換税制の論点

− 105 − 1) 平成18年10月1日以後に行われる株式交換・株式移転に適用される。なお、 法人税法 に規定されたことにより、 組織再編成に係る行為計算の否認規定(法人税法132条の 2)が株式交換・株式移転についても適用されることになる。 2) 本稿において、 法令の引用は下記のとおり略記する。法人税法:法、 法人税法施行令: 法令、 租税特別措置法:措法、 租税特別措置法施行令:措令、 法人税基本通達:法基 通、 所得税法:所、 会社法:会、 会社計算規則:会規。

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照らして、 MBO(Management Buyout, 経営陣による買収)や異業種参入が 抑制される可能性が指摘されてきた(岡村・太田ほか〔2006 、 太田・野田 〔2006 )。平成11年旧商法における制度創設以来、 株式交換・株式移転はグ ループ企業の再編のみならず、 異業種への新規参入、 MBO による経営再建 や株式の非公開化(ゴーイング・プライベート)など様々な目的で利用され てきた。とくに、 MBO やゴーイング・プライベートにおいては、 TOB(株 式公開買付)により支配株数を取得した後に、 金銭交付型の株式交換を実施 して少数株主を排除する手法がよく用いられてきたが3)、 平成18年度の税制 改正により、 従来の金銭交付型の株式交換が税制非適格となり、 資産の時価 評価課税など租税負担が増大するため、 MBO などの企業組織再編への影響 が懸念されたのである。 ここで、 企業組織再編に関する統計資料 ( 月刊 MARR レコフ社) を見 るに、 株式交換新税制は実際にはそれほど大きな障害となっていないようで ある。平成18年10月1日の新税制施行後の動きとして、 確かに M & A 全体 に占める株式交換の割合には若干の減少が見られるが、 MBO 件数そのもの は増加している。 ただし、 これは新税制が積極的に評価されているということではなく、 期 せずして非適格株式交換とならざるを得ないような状況が現実問題としては あまり多くなかったということであろう。事業関連性の判断基準が示され (法規3)、 共同事業要件を満たし易くなったこと、 1株未満の端数株を利 用するにことよって対価要件を満たすことができると考えられたことにより、 適格株式交換の実施はそれほど困難でなくなったからである。かりに非適格 となる案件が多ければ、 時価評価課税等の問題点がもっと問題視されたに違 いない。 ここで、 1株未満の端数株の利用とは、 株式交換比率を調整することによ り、 どの少数株主にも1株未満の端数株しか交付されないようにし、 その端 3) 産業活力再生特別措置法(12条の9)の認可を受ければ、 合併、 分割、 株式交換等の 組織再編で現金のみを交付することができた。

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数株を換金して(会234)、 その金銭を少数株主に分配するというものである。 多段階取引の全体像をみれば、 実質的には金銭交付を伴う非適格株式交換と いえるが、 買収対価は1株未満の端数であるが完全親法人株式のみであると して、 これを適格株式交換として実施しているのである。また、 株式交換を 利用せずに、 全部取得条項付株式(会108①)を利用して少数株主を排除す るスキームも用いられる。これらの特殊ともいえるような手法については、 行為計算の否認規定 (法132の2) の適用、 私法上の法律構成による否認ない し仮装行為としての認定などの税法上の問題が検討されている(渡辺 2007 、 太田・野田〔2006 )。 これらのスキームはたしかに特殊なものであり、 法的安定性に欠ける憾み はあるが、 わずかな金銭交付でも非適格株式交換となってしまうが故にこれ を回避する手法として実務上の要請から考案されたものである。現行の税制 適格要件における「投資の継続性」の位置づけに一石を投じるものともいえ よう。 本稿では、 平成18年度改正で大きく変わった株式交換税制の論点を整理し、 今後の制度改正に向けた検討課題を提示することにしたい。

.株式交換制度の概要

株式交換とは、 既存の会社どうしが契約により完全親子会社関係を創設す る手続であり、「株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同 会社に取得させることをいう」(会2三十一)。 図1に示すように、 株式交換により完全子会社となるX社の株式は、 株式 交換契約書に定める効力発生日(会769)に完全親会社となるA社に移転し、 X社の従来の株主はA社が株式交換に際して発行する新株の割当てを受けて 完全親会社A社の株主になる。 株式交換が行われると、 完全子会社となる会社4)の株主は完全親会社とな 4) 法人税法においては「株式交換完全子法人」といい、 旧租税特別措置法では「特定子 会社」という。

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る会社5)の株主となるから、 その地位に重大な変更が生じる。また、 完全親 会社となる会社の株主にとっても、 完全親子会社関係を創設することは会社 の基本的な経営戦略にかかわる問題であるとともに、 自らの持株比率の低下 を招くことになるため重大な関心事である。つまり、 株式交換は双方の会社 の株主の利害に重大な影響を及ぼすことになるため、 株式交換を実施するに は株式交換契約書を作成し、 原則として株主総会の特別決議による承認を受 けなければならないとされる(会783①、 795①、 309②十二、 ただし、 略式 株式交換・簡易株式交換を除く)。 なお、 株式交換に反対の株主には株式の買取請求権が認められ (会785、 797)。債権者には異議申し立てが認められる(会798、 799)。また、 平成19 年5月1日以降は、 完全親会社の株式以外の財産を対価とすることが可能に なった(会768①二ホ)。ここで、 わが国の株式交換制度の特徴点として、 次 の2点を揚げることができる。①完全親子会社関係の創設を目的とする組織 法上の行為として株式交換を位置づけているため、 対象会社のすべての株式 を取得しなければならない。逆に言えば株式交換により少数株主を強制的に 排除できる6)。②内国法人にのみ適用されると解されるため、 クロスボーダ 5) 法人税法においては「株式交換完全親法人」といい、 旧租税特別措置法では「特定親 会社」という。 図1 株式交換 交 換 後 A 株主 X 株主 A 株主 A 社 X 社 A 社 100%保有 A社株式 X社株式 X 社 (完全子会社) X 株主

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ーな株式交換にそのまま使うには問題があり、 三角合併・三角株式交換が検 討されることになる。

.株式交換税制の概要と特徴

1.従前の株式交換の税務(平成18年9月30日まで)7) 従来、 株式交換に係る課税上のおもな論点は、 特定子会社(株式交換によ り完全子会社となる会社)の株主における株式譲渡益の取扱いと特定親会社 (株式交換により完全親会社となる会社)における特定子会社株式の受入価 額の取扱いであった。これらの問題につき、 平成11年税制改正において租税 特別措置法に設けられた特例措置は下記のとおりである。 特定子会社株主の税務 特定子会社株主の株式譲渡益については、 租税特別措置法において一定の 要件を定め、 その要件が満たされるかぎりは株式譲渡損益を認識しないとい う特例が設けられ、 課税の繰延べが認められた(旧措法37の14、 67の9)。 すなわち、 特定子会社の株主が個人株主の場合には、 当該株式交換等によ り移転した特定子会社株式の譲渡がなかったものとして取扱うこととし、 法 人株主の場合には、 譲渡は認識するものの「直前の旧株の簿価」を当該特定 子会社株式の時価とみなして各事業年度の所得金額を計算する(つまり、 譲 渡損益はゼロとなる)とされた8) 。こうした株式譲渡益課税の繰延べが認め られる要件は、 下記の2点である(旧措法37の14)。 ①特定親会社の特定子会社株式の受入価額に関する要件  特定子会社の株主数が50人未満の場合は、 特定親会社が受け入れる特定 子会社株式の受入価額が、 特定子会社の旧株主の税務上の簿価9)以下で 6) 米国における株式交換は、 一般に株式を用いた TOB(株式 TOB)の手法により、 対 象会社の支配権を獲得(80%以上の株式を取得)するものである。 7) 株式交換の制度の概要や税務上の取扱いについて、 詳しくは木村 (2004) 4055頁を 参照されたい。 8) 特定子会社株主が新たに取得する特定親会社株式の取得価額としては、 基本的に従前 の特定子会社株式の帳簿価額が引き継がれることになる(旧措令25の12の2、 39の30 の2)。

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あること。  特定子会社の株主数が50人以上の場合には、 特定子会社の税務上の簿価 純資産価額以下であること。 ②交付金銭等に関する要件 交付金銭等がある場合には、 特定親会社から交付された株式の時価と交付 金銭等の合計額のうち、 交付株式の時価が占める割合が95%以上であるこ と。言いかえれば、 交付金銭等の割合が5%未満であること10) 特定子会社の税務 特定子会社においては、 何も資産や負債等が譲渡されたわけではなく、 納 税単位が変わったわけでもない。その株主が変わっただけであり、 課税関係 はとくに生じないとされた。 特定親会社の税務 特定親会社において、 特定子会社株式の受入処理は資本等取引(法22⑤) に該当するため、 課税関係は生じない。ただし、 株式の受入価額については 会社法と税法の取扱いが異なる場合があるため、 別表五(一)における調整が 必要となる。 2.現行の株式交換の税務(平成18年10月1日以降) 平成18年度税制改正において、 合併等の組織再編成と整合性を図る形で、 株式交換・株式移転に係る税法規定が法人税法本法における組織再編税制へ と統合された。その概要は以下のとおりである。 完全子法人株主の税務 株式交換完全子法人の株主の株式譲渡益について、 完全親法人株式以外の 資産の交付がない場合11)には譲渡益課税の繰延べが認められる(法61の2⑨ 9) 株主が法人の場合は「直前の旧株の簿価」、 個人の場合は取得価額のこと。 10)交付金銭等に対応する部分については、 個人株主、 法人株主ともに譲渡益課税の対象 となる。 11)当該株主に対する剰余金の配当として交付される金銭その他の資産及び株式交換に反 対する当該株主に対するその買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資

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⑩、 所57の4)12) ◆〔新旧比較〕株式譲渡益課税の繰延べ要件は、 支払対価についての要件 だけであり、 従前の完全親法人における完全子法人株式の受入価額の要 件はなくなった。一方、 買収対価としてわずかの現金を交付しただけで も株式譲渡益課税の繰延べは認められなくなった。 ◆〔合併比較〕株式譲渡益課税については合併と同様であるが、 株式交換 においてはみなし配当課税(法24)は行われない。合併と違って対象法 人はそのまま存続し、 利益積立金が変化することもないからである。 完全子法人の税務 税制適格の場合には、 完全子法人の資産価額は株式交換前の税務上の簿価 のままであって課税関係は生じないが、 税制非適格の場合には、 時価評価資 産について時価評価が行われ、 株式交換の日の属する事業年度の益金の額又 は損金の額に算入されることになる(法62の9)。 ここで、 時価評価資産とは、 固定資産(土地〔土地の上に存する権利を含 む。 、 建物、 構築物、 機械、 船舶、 航空機、 車両、 工具器具備品、 無形固定 資産〔ソフトウェア、 特許権、 鉱業権、 営業権など )、 土地〔棚卸資産 、 有価証券、 金銭債権、 繰延資産で次に掲げる資産を除く13) ①非適格株式交換等の日の属する事業年度開始の日前5年以内に開始した 各事業年度において圧縮記帳の適用を受けた減価償却資産等 ②売買目的有価証券 ③償還有価証券 ④その1単位ごとの含み損益が資本金等の額の2分の1に相当する金額又 は1000万円のいずれか少ない金額に満たない場合の当該資産 ◇営業権の時価評価について14) 産を除く。 12)この場合、 新株(完全親法人株式)の取得価額は、 株式交換の直前の帳簿価額に相当 する金額(交付を受けるための費用は加算)とされる(法令119①八)。 13)時価で評価増された減価償却資産について、 評価差額は株式交換等事業年度前の損金 経理額とみなす(法31⑤、 法令61の4⑤)、 すなわち償却超過額となる。

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法人税法において、 営業権は固定資産で減価償却資産として挙げられてい るが(法令12二、 13八ル)、 その定義や評価についての明文の規定はなく15) 一般に、 営業権は同業他社に対する超過収益力を有する固定資産であるとい われる16) 非適格合併等における資産調整勘定の算定において、 営業権は「独立した 資産として取引される慣習のあるもの」に限定され(法令123の10③)、 資産 調整勘定に含まれない別の概念であることが示された。この規定は、 非適格 株式交換における時価課税に関する規定ではないが、 非適格株式交換におい ても、 時価評価の対象となる営業権を限定的に解すべきであり、 対象法人の 時価純資産価額と買収対価との差額に相当する価額をもって営業権の時価と し、 その評価益が課税されるようなことはないと考えるべきである。なお、 通達では、 連結納税の開始・加入において、 課税上弊害がない限り、 無形減 価償却資産について、 その取得価額を基礎として「旧定額法により償却を行 ったものとした場合に計算される未償却残額に相当する金額」(法基通12の 321)をもって時価とすることが認められていることも参考となる。 次に、 適格株式交換とは、 下記の∼のいずれかに該当する株式交換で、 株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人の株式以外の資産が交付さ れないものをいう(法2十二の十六)。 株式交換の当事法人(株式交換完全子法人と株式交換完全親法人)が、 100%の持分関係(法令4の2①)にあり、 かつ完全支配関係が継続す ることが見込まれるもの。 株式交換の当事法人が、 50%超の持分関係にあり、 かつ完全親法人によ り完全子法人の50%超の株式保有が見込まれているもののうち、 下記の 14)詳しくは、 佐藤〔2008〕209213頁、 太田・野田 2006 を参照されたい。 15)財産評価基本通達(165、166)には、 超過収益力としての営業権の評価方法が示され ている。 16)繊維工業における織機の登録権利、 許可漁業の出漁権、 タクシー業のいわゆるナンバ ー権のように法令の規定、 行政官庁の指導等による規制に基づく登録、 認可、 許可、 割当て等の権利を取得するために支出する費用は営業権に該当するものとされる(法 基通 7−1−5)。

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要件を満たすもの。①従業者の80%以上が株式交換後の子法人の業務に 引き続き従事することが見込まれていること(従業者引継要件)、 ②子 法人の主要な事業が株式交換後も子法人で引き続き営まれることが見込 まれること(事業継続要件)。 共同事業を営むための株式交換であり、 以下の共同事業要件のすべてに 該当するもの。 ①事業相互関連性要件 株式交換当事法人の事業が相互に関連するものであること。 ②事業規模比率要件または経営参画要件 株式交換当事法人の関連する事業の売上金額、 従業員数など規模の割 合が約5倍以内であること。または、 子法人の特定役員のいずれかが 株式交換に伴って退任するものではないこと。 ③従業者引継要件 株式交換完全子法人の従業者のうち、 おおむね80%以上の者が株式交 換完全子法人の業務に従事することが見込まれること。 ④事業継続要件 株式交換完全子法人の事業が株式交換後も引き続き営まれることが見 込まれること。 ⑤株式継続保有要件(株主が50人未満の場合のみ) その者に交付される完全親法人株式の全部を継続保有する見込みの株 主が有する親法人株式(議決権のないものを除く)の合計数が完全子 法人の発行済株式総数(完全親法人等の保有するもの、 議決権のない ものを除く)の80%以上であること。 ⑥完全支配関係継続要件 株式交換後に、 完全親法人が完全子法人の発行済株式の全部を直接又 は間接に保有する関係が継続することが見込まれていること。 ◆〔新旧比較〕従前には課税関係が生じなかった完全子法人において、 税 制非適格の場合には一定の資産について時価評価課税がされることにな

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った。なお、 負債は時価評価課税の対象となっていない。 ◆〔合併比較〕合併においては、 すべての資産・負債が時価譲渡したもの とされ(法62)、 その譲渡益は留保金課税から除外される(法67③一)。 株式交換では、 時価評価課税は一定資産についてのみであるが、 留保金 課税の対象から除外されてはないため、 完全親法人が非同族会社でない 場合は時価評価課税の影響がより大きくなる。 完全親法人の税務 株式交換完全親法人において、 完全子法人株式の受入処理は資本等取引 (法22⑤)に該当するため課税関係は生じないことは従前の通りであるが、 その受入価額については次のように改正された。  適格株式交換の場合 適格株式交換における株式交換完全親法人による完全子法人株式の受入価 額は次のとおり(法令119①九)。 ①特定子会社の株主数が50人未満の場合には、 完全子法人の旧株主の税務 上の簿価を引き継ぐ(付随費用は加算)。 ②特定子会社の株主数が50人以上の場合には、 完全子法人の税務上の簿価 純資産価額とする。ただし、 株式交換前に完全子法人株式の一部をすで に所有している場合には、 新たに取得する割合(1−完全親法人持分割 合)を乗じた価額となる(付随費用は加算)。  非適格株式交換の場合 税制適格要件を満たさない場合には、「その取得の時におけるその有価証 券の取得のために通常要する価額」(法令119①二十五)、 すなわち時価によ る受入処理が強制される。一般に、 完全子法人株主に交付する株式等の資産 の時価相当額が完全子法人株式の取得価額となる。 なお、 下記の表の通り、 税務上の株式受入価額と会計上の株式受入価額に 差違が生じることが考えられるが、 差額は別表五(一)における調整により、 資本金等の額に加減し、 会計上の受入価額を税務上の受入価額に修正するこ とになる。

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◆〔新旧比較〕企業会計上の受入価額と税務上の受入価額が異なる場合が多 く、 税務調整が従前よりも複雑になった。 ◆〔合併比較〕非適格合併の場合に認識される資産調整勘定ないし負債調整 勘定(法62の8)は株式交換で認識されることはない。 3.新税制の特徴と問題点 株式交換新税制の大きな特徴点は、 非適格株式交換の場合に対象法人にお ける一定の資産について時価評価課税がなされることである。この平成18年 度の税制改正について、 株式交換等は「株式取得を通じて会社財産を間接的 に取得でき、 合併と株式交換等は組織法上の行為による会社財産の取得とい う点で共通の行為と見ることができることから、 非適格合併等の場合に被合 併法人等の資産について譲渡損益が計上されることとの整合性などを図るた め、 非適格株式交換等の場合に株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人 の有する資産について時価評価により評価損益の計上を行うこととされたも の」との説明がある17) (青木孝徳ほか〔2006 313頁)。 確かに、 株式交換は合併と同様に組織法上の行為として規定され、 経済実 態においても合併と同様に企業結合機能を有するものであるから、 これを組 織再編税制の一環として整備することは、 組織再編における課税の中立性を 17)合併等との整合性を図るとはいっても、 株式交換と合併では、 繰越欠損金の引継ぎ、 特定資産譲渡損失の損金算入、 資産調整勘定・負債調整勘定、 みなし配当などいくつ もの点で課税上の取扱いが異なるため、 却って課税の公平を損なう場合もあるものと 考えられる。 会 計 持分の結合・逆取得 完全子法人の簿価純資産額 取得・共同支配下 交付する完全親法人株式等の時価 税 務 適格株式交換 株主数50人未満の場合:旧株主の税務簿価を引継ぐ 株主数50人以上の場合:完全子会社の税務上の簿価 純資産価額 非適格株式交換 交付する完全親会社株式等の時価

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担保する意味でも積極的に評価されるべきであろう18) しかし、 株式交換では対象法人は消滅することはなく、 株式交換前と同じ く独立した法人格を有する株式交換完全子法人として存続しているのであり、 資産や負債の移転がないという点で合併等とは大きく異なる。その結果、 み なし配当、 資産調整勘・負債調整勘定、 繰越欠損金の引継ぎなど税務上の取 扱いおいても重大な違いがある。それにもかかわらず、 合併等との一面的な 整合性を図ることを重視して、 非適格株式交換において対象法人の一定の資 産について時価評価課税がなされ、 留保金課税の対象にもなるというのは、 いささか議論の余地があると言わざるをえない。 この点について、「時価評価課税は実現主義を破るものであり、 現行税法 においてはごく例外的なものと位置づけられる。時価評価課税は合併・分割 に対する課税との整合性確保を理由に2006年改正で導入されたが、 合併・分 割との整合性から時価評価が必然的に導かれるものでは決してない。」(岡村 2007 428頁)、 さらに「この時価評価課税については、 何らかの形で課税 時期をもう少し遅らせる工夫が必要である。」(渡辺 (徹) 2006b 117頁) といった見解が示されている。 株式交換における固定資産等の時価評価課税は、 未実現の評価益(法25①) や評価損(法33①)を所得に算入することを禁止する基本原則に反する例外 的な取扱いである19) 。また、 連結子法人が連結納税加入するときのように納 税単位が変わるわけでもないし、 売買目的有価証券のような流動性の高い金 融資産を時価課税するものでもない。要するに、 株式交換における時価評価 課税の理論的根拠は希薄なものであり、 税負担能力の点から見てもこれを課 税適状とは認めがたいものと考えられる。 18)従来、 株式交換を経由させて100%の持分関係を創出することにより、 税制適格要件 の実質的な回避が可能であったが、「適格要件の横並びという改正によって、 この問 題を解決した」(渡辺 2007 506頁)といわれる。 19)法人税法施行令123条の11第3項において、 非適格株式交換等の場合の時価評価資産 について、「法第25条第1項(資産の評価益の益金不算入)及び第33条第1項(資産 の評価損の損金不算入)の規定は適用しない」と規定している。

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.株式交換税制改正の影響

株式交換新税制においては、 税制適格であれば改正前の取扱いより不利益 を受けることはなさそうであるが、 非適格となると課税関係は改正前とは大 きく異なることになる。以下では、 現行の株式交換税制の影響と課題につい て、 連結納税、 組織再編に分けて検討する。 1.連結納税への影響 連結納税を開始する子法人は、 原則として、 その開始直前の事業年度末に 特定の保有資産につき時価評価損益を計上しなければならない(法61の11①)。 しかし、 連結納税開始日の5年前以降に適格株式交換により完全子法人とな り、 その後継続保有されている場合には時価評価の対象外とされた(法61の 11①五)。 平成18年9月30日以前の株式交換による子法人についても、 一定の要件を 満たす場合には時価評価が不要とされていたが、 その要件は厳格なものであ り、 完全子法人の保有する時価評価対象資産の全てについて、 連結納税開始 日以後に譲渡、 評価替え、 貸倒れ、 除却その他これらに類する事由により損 益の計上が見込まれていないことや時価評価対象資産の種類、 名称、 所在地 などの一定の事項を届け出ることなどがあげられていた(旧法61の11①六)。 これに対し、 現行法では適格株式交換により完全子法人となれば、 連結納 税加入時の時価評価課税が回避できることになった。しかも、 連結納税では 合併と違って、 子法人の有する含み損益の計上に対する制限(法62の7)が ないため、 適格合併するより適格株式交換して連結納税した方が有利な場合 が考えられる。 適格株式交換では、 株式交換時に対象法人の時価評価課税が行われること もないし、 連結納税加入時にも時価評価課税されることもない。すなわち、 一度も時価評価課税を受けることなく連結納税加入が可能であり、 しかもそ の含み損益を実現することについて特段の制限規定もないため、 連結納税加

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入を予定する組織再編においては、 今回の改正はきわめて好都合であったと 考えられる。 2.組織再編成への影響 株式交換新税制の組織再編への影響として、 異業種への参入、 少数株主排 除によるゴーイング・プライベート、 MBO による経営再建といった目的で 株式交換を利用することが困難になることが考えられる。ここで問題となる のは、 次の3点である。 共同事業要件の観点から、 多角化戦略の一環として異業種に参入する場 合の株式交換の利用が制限されないか。 株式交換の対価として金銭非交付要件の観点から、 金銭交付型の株式交 換により少数株主を排除してゴーイング・プライベートないし MBO を 進めることが制限されないか。 継続保有要件の観点から、 逆三角合併に相当する再編手法が実行困難と ならないか。 共同事業要件の異業種参入への影響 共同事業要件における事業関連性について、 平成19年財務省令第33号(平 成19年4月13日交付)により、 三角合併を含む組織再編成における事業関連 性要件の判定に関する規定が新たに設けられ、 判定基準の明確化が図られた。 法人税法施行規則第3条では、 まず事業性に係る判定基準(イ∼ハ)、 次 に事業関連性の判定基準(①∼③)が示される。さらに、 事後的に事業関連 性を推定する規定が置かれた。その内容はおよそ下記の表のとおりである。 要するに、 三角合併への配慮もあってか、 事業性や事業関連性を相当広く 認める内容となっていて、 従来よりも共同事業要件が実質的に緩和されたと 考えられる。そのため、 共同事業要件が異業種参入のための株式交換利用の 阻害要因となることはあまりないものと考えられる。 なお、 株式交換における問題ではないが、 共同事業要件の実質的な緩和は、 適格合併等における未処理欠損金の引継ぎ制限(法57③)や資産譲渡損の損

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金算入制限(法62の7①)に影響を与えることになるため、 租税回避に関す る留意が必要となる。 対価要件の MBO への影響 従来、 MBO による経営再建や非上場化に株式交換が利用されてきた。上 場会社の MBO20) においては、 経営陣や投資会社が100%の株式を取得して 少数株主を排除して、 非上場化するのが通常である。 一般に、 受け皿となる特別目的会社 (SPC) 等が公開買付 (TOB) により 大半の株式を取得した後、 産業活力再生特別措置法の認定を受けて、 現金を 対価とする株式交換を実施し、 少数株主を排除する方式が用いられてきた。 20)一部上場企業の MBO による非上場化を例示すると下記のとおり。東芝タンガロイ (2003年)、 ワールド(2005年)、 ポッカコーポレーション(2005年)、 すかいらーく (2006年)、 東芝セラミックス(2006年)、 サンテレホン(2006年)、 ツバキ・ナカシ マ(2007年)、 サンスター(2007年)、 テーオーシー(2007年)、 オークネット(2008 年)。 事 業 性 事 業 関 連 性 イ 事務所、 店舗、 工場その他の固定施設 を所有し、 又は賃借していること。 ① 当該被合併事業と合併事業とが同種のも のである ロ 従業者があること。 ② 当該被合併事業に係る商品、 資産若しく は役務又は経営資源と当該合併事業に係る 商品、 資産若しくは役務又は経営資源とが 同一のもの又は類似するものである ハ 自己の名義をもつて、 かつ、 自己の計 算において、 商品販売、 市場調査等の 行為をしていること。 ③ 当該被合併事業と合併事業とが当該合併 後に当該被合併事業に係る商品、 資産若し くは役務又は経営資源と当該合併事業に係 る商品、 資産若しくは役務又は経営資源と を活用して営まれることが見込まれている 推定規定 合併に係る被合併法人の被合併事業と当該合併に係る合併法人の合併事業とが、 当該 合併後に当該被合併事業に係る商品、 資産若しくは役務又は経営資源と当該合併事業に 係る商品、 資産若しくは役務又は経営資源とを活用して一体として営まれている場合に は、 当該被合併事業と合併事業とは、 前項第二号に掲げる要件に該当するものと推定す る。

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しかし、 株式交換新税制により、 買収対価として金銭を交付すると税制非適 格とされ、 対象法人の一定の資産について時価評価課税を受けることになる ため、 MBO による企業再編が進まなくなることが考えられる。 ここで、 統計資料21)によると、 MBO 件数の推移は2005年が67件、 2006年 が80件、 2007年は89件となり、 MBO 件数は減っていない。その背景には、 1株未満の端数株を利用した株式交換や株式交換を使わずに全部取得条項付 株式を利用する手法の存在が考えられる。いずれも一連の多段階な取引をま とめて見れば、 当初より金銭交付により少数株主を排除することを意図した 取引であり、 その課税上の取扱いが問題となる。 ◆1株未満株式交付型の株式交換 東芝セラミックス(現、 コバレントマテリアル株式会社)の MBO におい て採用された手法である22)。この手法は、 まず受け皿会社となる買収目的会 社が TOB により、 対象法人の3分の2以上の株式を買収する。次に、 TOB に応じなかった少数株主を排除するために、 どの少数株主にも1株未満の端 数しか渡らないような極端な株式交換比率を設定し、 株式交換を実施する。 いずれも端株となるので、 これを買い取って株主には買取代金を交付してス クィーズアウトする方式である。少数株主を排除した後、 受け皿会社を存続 会社として対象会社と合併して一連の買収スキームが完了となる。 東芝セラミックスの場合(株式交換効力発生日は平成19年3月23日)、 公 開買付価格が1株600円。交換比率の算定では、 完全子法人となる東芝セラ ミックス株600円に対し、 完全親法人となるエスアイシー・インベストメン ト株は843,020,000円。交換比率は1対0.0000007117 となり、 いずれの少数 株主も端数しか交付されず、 その端数に相当する金銭が株主に交付された。 このような、 実質的に金銭交付を対価とするような場合にも、 あくまで株式 を交付したものと解すべきであろうか23) 21) 月刊 MARR (レコフ社) 2008年7月号参照。 22)平成20年2月29日を効力発生日とする「インパクト21(東証1部)」を買収対象法人 とする PRL ジャパン(ポロ・ラルフローレン社〔米国デラウェア州〕の100%子会社) による株式交換においても同様の手法が利用された。

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この点につき、 通達では次のように規定している。適格合併の判定におい て、「被合併法人の株主等に交付された金銭が、 その合併に際して交付すべ き合併法人の株式に1株未満の端数が生じたためにその1株未満の株式の合 計数に相当する数の株式を他に譲渡し、 又は買い取った代金として交付され たものであるときは、 当該株主等に対してその1株未満の株式に相当する株 式を交付したこととなることに留意する。ただし、 その交付された金銭が、 その交付の状況その他の事由を総合的に勘案して実質的に当該株主等に対し て支払う合併の対価であると認められるときは、 当該合併の対価として金銭 が交付されたものとして取り扱う。」(法規通 142、 但書部分は平成19年改 正で追加された)。 上記通達の但書において、 総合的に勘案して実質的に合併の対価であると 認められるときは、 金銭交付として取り扱うとの規定があり、 東芝セラミッ クスの場合は当初から少数株主が端数株の買取金を分配されて排除されるこ とが予定されていたものであるから、 総合的に勘案して金銭交付として取り 扱われるように考えられるが、 東芝セラミックスの場合は、 適格株式交換と して認められたようである。 もし非適格株式交換とされると MBO の実施そのものが危ぶまれたであろ うから、 実務上の要請からは適格株式交換と認めることは理解できる。しか し、 こうした手法が問題なく認められるのであれば、 合併や分割等において も同様に合併比率や分割比率を調整することによって、 実質的な金銭交付型 の組織再編成が税制適格として実施可能となると考えられる。 これを柔軟な組織再編ができる制度として評価できるかもしれないが、 こ れでは課税の公平を担保することはできず、 様々な租税回避スキームが設計 できてしまいかねない24)。渡辺〔2007〕は、 行為計算の否認規定(法132の 23)米国では内国歳入法368条に規定するB型組織再編(株式交換)において、 税制適格 要件として規定される対価は議決権株式 (voting stock) となっているため、 このよう な1株未満の端数株では適格要件を満たさない。 24)少数株主排除の手法に株式交換を利用するのではなく、 種類株式(全部取得条項付種 類株式)を利用する方法がある。定款変更により普通株式を全部取得条項付種類株式

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2)の適用の可否を検討し、 少数株主の排除という租税回避以外の目的が存 在するという主張を完全に否定しきれるかという問題は残るものの、 租税回 避として否認される可能性がある旨を主張している。 こうした法的安定性に欠けるようなスキームを利用せざるを得ないのは、 税制適格要件において、「支配の継続性」が重視されているにもかかわらず、 まずは「投資の継続性」が求められ、 わずかの交付金の交付でもスキーム全 体が税制非適格とされてしまうがあるからである。実務上は金銭交付による 少数株主排除の要請があり、 会社法においても対価の柔軟化が認められてい る現状を鑑みると、 例えば組織再編成の前後で「支配の継続性」が保たれて いるような場合には、 金銭交付により「投資の継続性」が部分的に失われて も、 その部分についてのみ非適格扱いをするといった措置が講じられるべき であろう。そうすることによって、 およそ法の予定しないような極端なスキ ームが用いられることもなくなり、 交付金で排除される少数株主の利益が厳 格に保護されることにもなると考えられる。 逆三角合併への影響 会社法では、 合併の対価が存続会社の「株式等以外の財産であるときは、 当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法」を合併契約書に定 めなければならないとされる(会749①二ホ)。このことにより、 金銭をもっ てする交付金合併(キャッシュアウト・マージャー)や親会社株式を交付す る合併(三角合併)が可能となった(平成19年5月1日以降〔会附則4 )25) 。 三角合併は、 100%子会社と買収対象会社を合併させることによって、 実 に変更し、 その交換比率を調整することにより、 少数株主に1株未満の端株しか渡ら ないようにして、 これを現金で買取る方式である。レックス HD が実施した方式であ り、 これはそもそも株式交換に該当しないが、 このような法が予定しないような少数 株主排除手法が私法上問題なく認められるのか疑問である。なお、 反対株主が買取請 求する段階で上場廃止となっているが、 その買取はみなし配当課税の対象とはならな いようである。 25)原則として禁止されている子会社による親会社株式の取得(会135)の特則である会 社法800条の規定は施行を1年間先送りするような取扱いはない。つまり、 内から外 への三角合併は会社法施行当初から可能であった。

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質的に対象会社を100%子会社化する組織再編手法である。対象会社の株主 には合併存続会社の親会社の株式が交付されることになる26) また、 三角合併において買収対象会社が存続会社となるものを逆三角合併 という。逆三角合併では対象会社の資産・負債の移転を避けることができる とともに営業上必要な許認可などを保持することが可能であるため、 米国で はとくに逆三角合併がよく用いられる27)。なお、 その最終形態は株式交換に よる場合と同じになる。 会社法における対価の柔軟化によりわが国でも三角合併が可能となったが、 逆三角合併は制度上認められていないと解されるため28)、 その代替案として の株式交換の利用が検討される。 これは、 まず三角株式交換(完全支配親会社の株式を交付する株式交換) を実施して買収対象会社を完全孫会社としておき、 その後にこの孫会社(株 式交換完全子法人)を存続法人、 子会社(株式交換完全親法人)を消滅会社 とする逆さ合併を実施して、 結果的に対象会社を完全子会社とする方法であ る。 ここで問題となるのは、 三角株式交換の税制適格性である。すなわち、 三 角株式交換を実施した後、 完全親法人による完全子法人株式の継続保有が税 制適格要件とされるが、 完全子法人が完全親法人を吸収合併してしまうとこ の継続保有が認められなくなり、 当初の三角株式交換が非適格株式交換とな りかねないのである。 株式交換新税制は、 経済実態に応じた整合性を確保するとともに、 株式交 換を利用した租税回避29) を防止するという面では評価に値するが、 却って新 26)合併の対価として親会社株式を交付することや子会社による親会社株式の保有の問題 から、 会社法施行以前は三角合併はわが国では一般に可能でないと考えられていたも のである。 27)例として、 ボーダフォン、 BP アモコ、 ファイザーなど。 28)会社法749条の規定からすると、 わが国の三角合併においては、 存続会社から消滅会 社株主に対して当該存続会社の親会社株式が合併の対価として交付される必要がある ため逆三角合併は不可能と解される(石綿〔2008〕参照)。 29)渡辺(徹) 2003〕では、 株式交換により 100% の持分関係を構築してから、 合併 や 分

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たな不公平や不条理を作り出し、 組織再編における余計な社会的コストを生 じさせている嫌いがある。

.むすび

平成18年度の株式交換税制の改正は、 経済実態と課税上の取扱いの整合性 を図り、 課税の公平を確保するものとして評価できるが、 その一方で非適格 株式交換における資産の時価評価課税という大きな問題を抱えることになっ た。この時価評価課税は株式交換における租税負担の増大を招くため、 異業 種参入や MBO などの企業再編実務への影響が懸念されたが、 実際には大き な影響は出ていないようである。 これは、 共同事業要件の中心的な構成要素である事業関連性要件が緩和さ れたこと、 1株未満の端数株の利用による実質的な金銭交付スキームが用い られたことにより、 非適格株式交換を回避することがそれほど困難でなくな ったからである。 しかし、 事業関連性要件の緩和はいわゆるみなし共同事業要件の緩和をも たらし、 適格合併等における欠損金引継ぎや特定資産譲渡損失の損金算入に 対する制限を緩めることになるなど新たな課税上の問題を招きかねない。ま た、 1株未満の端数株の利用は、 およそ法の予定しない特殊なスキームであ るため法的安定性を欠き、 企業組織再編における余計な社会的費用を生じさ せている。 そもそも株式交換では買収対象法人がそのまま継続し、 資産や負債の移転 はないため、 合併とは法形式も性格も異なるものである。そうであるが故に、 繰越欠損金の引継ぎ、 みなし配当課税、 資産調整勘定などの税務上の取扱い が合併とは異なる点も多い。にもかかわらず、 企業結合手法としての側面を 重視して合併との整合性を確保しようとするが故に、 却って新たな課税上の 不公平や税務コストの増大を生じさせている。 割を行うことにより事実上税制適格要件が回避されてしまうことが指摘されている。

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1株未満の端数株の利用については、 その多段階取引を総合的にみれば、 明らかに少数株主排除のための金銭交付であると言うべきものであり、 これ をあくまで株式交付とみることには無理があり、 課税上の弊害が懸念される。 ただし、 こうした特殊なスキームに伴うコストやリスクを負担してでも少数 株主を排除したい実務上の要請があることも事実である。 そこで、 こうした状況を克服し、 対価の柔軟化が認められた現状に対応す るために、 金銭交付がたちまち税制非適格となるという税制適格要件の構成 を見直して、 株式交換の前後で「支配の継続性」が保たれているような場合 には、 交付金の利用度合いに応じてその部分についてのみ非適格扱いをする といった措置が検討されるべきである。一方、 株式交換、 合併あるいは TOB であれ、 支配権が移転して、 それが濫用されるような場合には、 欠損 金や資産の含み損益の利用を制限するなどの対策が講じられるべきである。 (筆者は関西学院大学商学部准教授) 【参考文献】 青木孝徳 2006 平成18年版 改正税法のすべて 大蔵財務協会。 石綿学〔2008〕「三角組織再編をめぐる実務上の課題」、『商事法務』1832号。 太田洋・野田昌毅〔2006〕「株式交換・株式移転税制の抜本改正と M & A 実務への影響」、 『商事法務』1778号。 岡村忠生〔2007〕 法人税法講義〔第3版 、 成文堂。 岡村忠生・太田洋・貞森恵祐・川端久雄〔2006〕「日本の M & A 税制の到達点と改革の視 点」、『MARR』2006年7月号。 木村吉孝〔2004〕 企業組織再編における税務会計問題の研究 、 雄松堂出版。 佐藤信祐〔2008〕 組織再編におけるのれんの税務 、 中央経済社。 渡辺徹也〔2003〕「株式交換・株式移転と税制」、『法律時報』75巻4号。 〔2006a〕「株式交換と平成18年度税制改正」、『税務弘報』2006年9月号。 〔2006b〕 企業組織再編成と課税 、 弘文堂。 〔2007〕「組織再編税制における実質主義と形式主義」、『租税法の基本問題』(金 子宏編)、 有斐閣。 渡辺裕泰〔2007〕「組織再編税制の適格要件に関する一考察」、『租税法の基本問題』(金子 宏編)、 有斐閣。

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[r]

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【消費税】 資産の譲渡等に該当しない (処理なし)。. 【法人税】