実技指導を行う実践能力の育成 (1) : 硬筆書写用具の持ち方への取り組み
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(2) 第三指・ ・ ・横下から支え、左右と跳ね上げる動 きを行う。. 分を支点にして、上から押さえつけているのである。そ のため、引く動作は可能であるが、 -ネ等の押し上げる. 換言すれば、 ①は「掌から書写用具が抜け出そうとす. 動作は不可能となる。派生形と思われる、第一指が第二. る力」であり、 ②は「書写用具が抜け出そうとするのを. 指の上に重なる(巻き込む)持ち方も多い。一見、第三. 止めようとする力」と「用具を制御する力」ということ. 指が用具の下に回り込んでいるように見えるが、下段の. ができよう。 「掌から書写用具が抜け出そうとする力」. 小学生の持ち方を別の角度から見ると、ほとんど機能し. への対抗手段として、第-指と第二指の間にストッパー. ていないことが分かる。. をっけたのが新しい筆記具(ェルゴノミックス)という ことであり、 ②の力を軽減するという部分で理論的には 誤りでない。ただし、そのことによって用具の上下動が 阻害されることになり、漢字・仮名特有の-ネや-ライ といった「用具の浮沈に関わる用筆」は行えない可能性 が生じる。 この理想とされる持ち方に対し、果して現状がどうで あるかというと、指導者も学習者も大きな問題を抱えて いるというのが実状であろう。以下、特徴的な事例をい くっか掲げ、分析と考察を加えておくことにする。 小学校教員の用具の持ち方 2本の指で押し付ける力が強いためであろうか、書字 の際には邪魔にならないように第三指は折りたたまれた 形となる。 シャープペンシルを多用する大学生の場合、抑える力が 加わりやすいということか、この指が揃う持ち方が多い。 この持ち方の場合は、手元に引き寄せた形での執筆姿勢と なりやすく、動き自体も小規模のものとなる。ただし、硬 筆による書字の場合は、かなり小さい文字を書くことにな るので、さほどの不都合は感じていないようである。 小学校5年生(女子)の用具の持ち方. 小学校5年生(女子)の用具の持ち方. 上掲の持ち方では、第一・二指が揃い、上から押さえ 込むという形で、用具は指の付け根に挟み込まれている。 両者、ほぼ同様の持ち方であるといえよう。ただし、指 導者の持ち方が転移したとは考えにくく、単なる偶然の. 上掲の持ち方は、第一指が全く機能していない持ち方で ある。第二・三指の位置には問題はないが、左右方向への 動きを第一指の付け根、あるいは手首で行うために微細な. 相似と思われる。要するに用具の接する指の付け根の部. -102-.
(3) 運筆は不可能となる。このような用具を指先で持たない事 例は、手指の筋力の弱い小学校低学年に多く、そのまま固 定してしまうという場合も少なくないようである。. 小学校5年生(男子)の用具の持ち方. 左掲の持ち方は、 3本の指、それも指先でつまむとい う形で保持している。指先の動きとしては問題がないも のの、用具は指の付け根に入ってしまっている。さらに 指自体が緊張して反り返っており、指で制御していると いうより手首で運筆している。特に第二指の反り返りは 極端で、用具を制御し動かすという状況にはない。概し て強く握り締めて押さえつけるため、筆圧が強く、微細 な運筆(-ネ・-ライ・円運動)は苦手である。書字・ 書写を離れた場合の指先の巧緻性と関係があるかは、現 段階では不明であるが、なぜか文字を書くという習慣に 乏しい男子児童に多い持ち方である。 小学校5年生(女子)の用具の持ち方. 小学校5年生(男子)の用具の持ち方. 小学校5年生(女子)の用具の持ち方.. 小学校5年生(男子)の用具の持ち方.
(4) 小学校5年生(女子)の用具の持ち方. が倒れているように見える。保持する3本の指の位置関 係をどう示すか、今後の教科書掲載図版の変化・変遷を 見守って行こうと思う。 下に筆者(小竹)の持ち方を例示している。 教科書の図版と比較すると、多少、鉛筆が倒れている ように見えるが、いわゆる教科書に掲げられている「正 しい持ち方」として位置づけてよいだろう。動きについ て分析を加えてみる。. I.  ̄ーヽ1. -. この学級の場合、三角軸の鉛筆を導入しており、持ち 方に対する関心も高い。そのため、上掲のように指に余 裕のある持ち方で書写する児童も数名いる。 3点並べた 図版のうち最上段の児童の場合は、鉛筆が倒れた形になっ ており、筆圧が弱く、たどたどしい。最下段の児童の持. 上の図版は、平仮名の「あ」を書く際の書き出しの手 の形である。連動する動きを、以下に時間の経過に従っ. ち方は、教科書に掲載される図版とはぼ一致しており、 筆圧もあって不自由さを感じさせない。 このような持ち方ができるにも関わらず、学年進行と. て例示する。. ともに手指は硬直化した形となり、書写上の阻害要因と. 第1筆の横方向への動きの. なってくることは、かなりの問題点として考えていかな. 場合は、主要には第一指が 作用するため、この方向か. ければなるまい。ゆっくり丁寧に書くということだけで なく、長文を速書するという技術と併せ考えなければ解 決しない部分であろう。. らの手の形に大きな変化は l車見られないo. 第2筆の縦方向への動きに. 2.正しい持ち方の動き 一般的な傾向と の図版は2方向か. は、第二指が作用する。第 一指と第三指で桟のプレを 押さえながら、第二指が屈. ら撮影されている. 伸する様子が見られる。. して、教科書掲載. ことが多い。立体 的に見せようとい う工夫であろうが、 微妙な角度の違い を表現するには至っ ていない。そのた め、角度によって ように見えたりし. 第3筆は「斜め-上-右回 り回転」という複雑な動き. て、指導上の工夫. をする。. 鉛筆が倒れている. が必要となる部分 である。この図版 の場合も、正面か らの図版では鉛筆. -104-.
(5) 斜めの方向への動きには、 第二指が作用する。引き下. 左から右への横方向には第一指が、右から左への横方向. ろしていく際に、第二指が 屈伸する様子が見られる。. が理解できよう。特に主要に用具を操作する第二指の動. 縦および斜めの上から下へに向かう動きには第二指が、 と下から上に向かう動きには第三指が作用していること きは大きく、下の図のような軌跡(+印の連続形)とし てを描いて記録される。. 上の方向への動きには、第 三指が作用する。跳ね上げ て(押し上げて)いく様子 が見られる。. 手の甲の頂点をマーキングし、同様に動きの軌跡を記 録したのが下の図である。指の動きの大きさに対して、 ほとんど動いていないことが分る。手や手首で書くので はない、指の柔軟な動きで文字を書き進む様子が記録さ れている。. 右回り回転の動きには、 3 本の指総てが作用する。か なり複雑な動きを伴うので、 難易度の高い運筆である。. 3.正しい持ち方への着眼点. 右回り回転が終わりに近付. 持ち方のポイントは、以下の3点に絞られる。 1.用具と指の接する位置と接し方. いている。第一指が屈伸し ている様子が見られる。. 2.保持する指の形 3.書写面に対する腕の構え方 !. 書き終わって、用具を紙面. !. から離した状態。最後が力. ! 1ページで用具と握圧の. 関係を簡単に示しているが、. を抜く払いであるため、こ. 卸′!響!!その際の指の位置関係を図 !示すると、およそ左のよう. のような形になっている。. !6)になろう。. -105-.
(6) ①が第一指、 ②が第二指、 ③が第三指の位置を示して. 肘が前に出ている場合の螺旋運動. いる。 ①が②よりも前に出ると、第一指の先が書字点を 隠すため、頑を傾けて横から覗き込むか、肘を前に出し て書く形をとらざるを得ない。その事例が次の図版であ る。. 小学校5年生(男子)の用具の持ち方. 持ち方と姿勢が連動することを踏まえれば、このよう な場合に「手を引いて、背筋を伸ばし、まっすぐに座り. 「日本人は器用な民族である」と称されたことがある。. なさい」という指示では、逆に文字が書けなくなる。つ. しかし、昨今の児童・生徒に関しては、その言葉が適切. まり、視線を邪魔する第一指を回避するために肘を前に. であるとは思えない。指先の巧緻性が著しく細っている. 出し、内側から覗き込んでいるのであるから、持ち方を. のである。モノを「握る」ということはできても、「つ. 是正しない限り書字点を見ずに書くことになるのである。. まむ」という行為はできない。 「正しい箸の持ち方がで. これまでの書写指導が姿勢重視であったことから考えれ. きない」は象徴的な表現であろう。箸を持っということ. ば、起こしやすい指導上の誤りであろう。書字点-の視. が目標ではあるまい。つまりは「モノを挟む」や「モノ. 野を確保すること、そのために持ち方の是正を行うこと、. をっまむ」という微細な運動ができないのである。書写. そして最後に書字面全体を正しく見渡せるよう姿勢に触. 用具に対しても同様で、手の中に握り込むということは. れることが順序である。. できても、指先でつまんで操作するということができな. さらに肘を前に出さない場合と出した場合では、平仮. い。ポイントとして掲げた「1」と「2」に関わること. 名の基本となる螺旋運動自体に変化が生じる。螺旋運動. であるが、日常の生活習慣との関連で考えていかなけれ. の変化は、当然のこととして字形の変化となり、示され. ばならないだろう。 「小刀(カッターナイフ)で鉛筆が. る字例を正しく再現することができなくなる。. 削れない」とか、 「-サミが満足に使えない」等々の嘆. 肘が前に出ていない場合の螺旋運動. きの声も聞かれる。単なる用具の扱いの不備として片付 けることなく、共通する「指先の巧緻性」というキーワー ドで括って、幅広い視点からの解決が望まれるところで ある。. 4.指導にあたる実践的視点の育成 (1) 「正しい持ち方」への試行 いわゆる「正しい持ち方」は、現在の段階では「書写 効率を高めると考えられる持ち方」にしか過ぎない。し かし、 「見た感じできれい」という、およそ書写効率と は関係ない部分も含めながら、代替の方法がない現状で は存続していく-ものと予想される。指導者の側としては、 「果して硬筆書写に最適な持ち方であるのかどうか」と いう疑問や課題を持ちながらも、まずは「正しい持ち方」 の定着に努めることが必要となろう。少なくとも、この 持ち方の場合、指への負担は少なく、指の運動性という. -106-.
(7) ものは保障されている。 現代的な表現ではないが、持ち方の是正に関しては. 「ザ・ペンシルグリップ」には、使用方法として次の 説明が付されている。. 「矯正」という立場も必要となる。書字・書写というも のが習慣的なものであるから、ある程度の強制力を持た. 右利き左利きを問わず、全ての方の指にフィットし、. せながら進めていかないと効果は見られないからである。. 長時間の使用による手の疲れや指の痛みを解消して. 方法的には、大きく次の3方法が用いられる。 ①手指の動きから考える方法. す。右利きのばあいは親指をRに、左利きの場合は. 医学的なデータに基づいてデザインされ、年齢や. くれます。収縮自在でどんなペンにもフィットしま. ②書写用具自体に変化をっける方法 ③補助具を用いる方法. 親指をLにあててご使用ください。 ただし、装着して指示を与えない状態だと、下掲図版. ①の方法は、現象が最も軽度の場合に効果がある。特 に小学校低学年などの文字を書き始めた時期に用いるこ. 「C補助具無指導」のように通常の自分の持ち方のま. とによって、柔軟な指の動きを確保することができるよ. 二指が反り返ったりする。. うになる。用いるものは、ピンポン球大の粘土、ボール 等で、それを掌の中に握りこんだ状態で用具を持ち、書 写することになる。 「指の屈伸運動が必要」とは言うが、 用具を握りこんだ状態では掌の中に空間が生じず、動き が不自由になるのを防止するためである。さらに、掌の 中にモノを握り込むことによって、用具を握り締める指 の力が軽減されるという副次的な効果もある。 (塾の方法は、筆記用具自体の形状を変化させることに より、正しい持ち方に導こうとするものである。 ①より も、多少、強制力が強い方法である。小学校の教育現場 では、以前から軸に溝を刻んだ「うずまき鉛筆」が使用 されている。刻まれる溝に指を沿わせることで、指の位 置関係を確認することができる。最近では軸が三角形の ものが多く市販されるようになり、 3本の指で保持する ことを理解-させるのに役立っている。ただし、後に述べ る③同様に、用いるだけではほとんど効果を発揮しない。 (右掲図版「B三角軸鉛筆」参照) 例示や助言等、かなり綿密な指導を加えて始めて効果 を発揮するものであり、 (彰の方法よりは格段に手続きが 必要となる。 ③の方法は、用具にグリップ状の補助具を装着し、強 制的に持ち方を変えていこうとするものである。補助具 自体を書写用具に合わせて付け替えることができるため、 一般的に多く用いられる方法でもある。商標名「書き方 くん」等々が、その系列のものである。ここで使用して いるのは、柔軟性のあるラバーを使用した「ザ・ペンシ ルグリップ」という商品である。. -107-. まに使用したり、指先でつまむことのみを考えて逆に第 A通常の持ち方B三角飽鉛筆e補助具無指導D尋貞助具有指埠.
(8) RとLの表示は有効であるが、それに加えて「グリッ プの持っ位置」と「持ち方」 (第一・三指が点で、第二 指が面で接すること)を個別指導すると、右掲図版「D 補助具有指導」のように比較的簡単に指の形が直って いく。数多くの補助員の中では際立って効果が高く、違 和感も少ない。あくまでも補助貝での「矯正」であるか ら、持ち方は激変するものの定着するわけではない。当 然のことながら、かなり長期間の継続的なトレーニング を経ないと習慣としては定着しない。. 第一指と寮二指の動き J 一 ラ. 毛筆書写の場合、軸の太さが異なるので、硬筆用のも のを転用することはできないが、このような補助具の使. ん LV ㌔ 喝野. 強腰監議d誠に Zプ サ こ こ 、 、. 用は大きな効果を上げている。削る必要のない形状(ホ ∼. ルダー式)の書写用具ならば、補助具を一体化した軸を 作り出せるので効果的であると考える。. / i. (2)是正と容認という弾力的な対応. 一. rI ^-潤 一,lE = 近 ゎ 、 磯 、 ミ 、 、! だ. 小学校では文字をしっかり書いていたのに、中・高等 学校と学年が進行するにつれて、乱雑で暖味になると言 われる。しかし、その小学校段階でも、下掲のような姿 勢や執筆の状況が日常的に見られるようになり、 「文字. 、 ")義 / こ q !ン !: 、J㍍ル ー. i. を書くこと」に対する危機感さえ感じるようになった。 「児童・生徒は、自分の手で伝達交流を可能にする文字. +. や わ 微 オ ""0,1せ り ザ !!. 連. ラ 近 /!議 霊 芸蒜. 、 . 忘郡 實 … 蘭. ∴ 誌堊 H. 」 ■m 一ふ "″ く わ ノ 町. /蝣'・・∴. こ. r 湖. で. プ ″ も レ ㌦. -. 、 )/ 、 ミ ミ w、、 ;. 野. tL * . ″ !!,.. 5端が 紗、 せ 、 F、 でハ. sr^ )> 叫W. !ン ::. ,一、 Kr で 、 、 ゆ :!. 捕. 本論の最終となる本項では、 「是正と容認という弾力. M. 的な対応」という視点で、幾つかの対処法を掲げておく ことが必要であろう。厳格に「正しい持ち方」を論じる. 滋 V^B a ふ. 、 .dY艶ぶ;. i. 立場からすれば対症療法との批判もあるだろうが、 「書 写用具や書式が変化するならば、書き方も変化してよい のではないか」という考え方も必要と考えるからである。. 蝣-. VI. 輝. Ig H B. 右に多少の問題点を抱える持ち方を例示している。問 題点とは、 「第二指の反り返り」と「用具が握り込まれ. H. M M M. ^ ^ B ^. 声丁 ),メ .. H. jjjj^ H. q a .▼ ふ ロ く く J. た状態」である。他の事例と同様に「あ」の書字状況を 記録化し、第一指の動き(白線)と第二指の動き(黒線) を画像中に付加している。. -108-. ち. 義. を書写できないのではないか」という危機感である。遠 からぬ将来、一般の社会生活を送ることを考えれば、こ れは児童・生徒という域に止まらない、いわば文字言語 の活用全般に関わる問題であろう。. 琵V/、 、 藍. 、こ、. ,- -. !{げ ー >t t . 那. B │.
(9) 興味深いのは、硬直化していると見える第二指の動き. 指を伸ばしている状態指を折り曲げた状態. である。書き始める前段階では、動くはずもないと感じ させる反り返った指が自在に動き、まさしく用具を制御 しながら働いているのである。第二指が内側に向かって 動くということは、掌の内部に余裕があるということで ある。問題点として掲げた「用具が握り込まれた状態」 を詳細に観察すると、 「動かない持ち方」と微妙に異なっ ていることが分る。つまり、 「動かない持ち方」の場合 は、鉛筆が第一指と第二指の間の部分に落ち込んだ(挟 み込まれた)状態となっているのに対し、例示している. 持ち方は、第二指による上. 掌の中にある筆記用具の長さ. からの圧力を受け止める点 として働いているのではな. ここでも明らかになった第二指が大きな機能を果たす. く、 「3本の指で鉛筆を保. ということからすれば、下掲のような幼児用の描画用ブ. 持し、第二指の付け根に軸. ラシ(指先に直接装着する)などは理に適ったものであ. を当てている」だけの状態. る。巧緻性を高める上でも効果ある用具であろう。. なのである。そのため、指 の動きにあわせて用具も自 在に軸の方向を変化させる ことになる。さらにマーキ ングのポイントを変えて別 の視点で分析すると、左図 のように指の屈伸に合わせ て微妙ではあるが軸が上下 動しているのである。特に 指を折り曲げた状態におい ては、掌の中に入っている 軸部分が短くなる(上下動) していることが分る。下渇 の模型による例示は、その 状況を増幅した形で示して いる。 ①と表示している灰. 以上をまとめると、視認される形態上の問題点のみを. 色の矢印が、掌の中にある 筆記用貝の長さである。つ. とらえて、是正を求めることの不条理が浮き上がってく. まり、手前に用具が引かれ. る。問題は「指が反っている」ことではない。指が動く. る際に、あた「エルゴノミッ. スペースを掌の中に確保しているか、 3点(3本の指). クス」のようなストッパー. での保持に加えて4点目(軸の後部)の存在をどう位置. が付いている用具だと指を. 付けるか等々が確実に押さえられるならば、一定の型に. 折り曲げることができない. 押し込む必要はないということにもなろう。特に毛筆の. ということになる。つまり、. ように柔軟な筆先を持たない昨今の書写用具の場合、相. 「掌から書写用具が抜け出. 当な力を持って保持することは必要であり、いわゆる. そうとする力」を止めるス. 「正しい持ち方」のような第二指の形は不可能となる場. トッパーは、左右や円運動. 合が多いのである。そのことを確実に押さえ、単なる形. という平面的な運動には適. 態的な指導に陥らないことが、 「実技指導を行う実践能. するものの、上下の線を引. 力の育成」への第一歩であろうと考える。 「文字を書く」. くという運筆には適さない. ということは、静止したフォームの良否ではなく、運動. ということが明らかとなっ. 的な機能性に彩られたものなのである。. ている。. -109-.
(10) おわりに 読み書き一体を基軸としていた漢字指導が、読み書き 分離という方向に動きかけようとしている。それととも に、 「文字を手書きすること」への視点も薄れがちであ り、今後の文字言語の活用という場面で不安感は募るば かりである。しかし、不安感を感じるだけでは、何一つ 解決されることはあるまい。今一度、単なる書き方教育 に止まらない書写教育の方向性や意義を確認し、より実 践的な学習へと踏み出していくことが必要であろう。 これまで「情報化時代における文字を手書きすること の意義」 (実技教育研究第16号)と「伝統的書写指導の 誤解と問題点の指摘」 (実技教育研究第17号)という2 つの論を提示してきたが、それは今回の「実技指導を行 う実践能力の育成」に至る原理・原論となるものであっ た。それらを踏まえながら、今回は「硬筆書写用具の持 ち方」について具体化を図った。以降、種々の課題に対 して継続的な取り組みを行っていきたいと思う。 今回の書字過程の記録には、アシックスの「Motion adviser」を用いた。特にアシックス・エクィップメン ト事業部企画開発部の吉本譲二氏には、ソフトのセッティ ング等々で格別の御配慮をいただいた。さらに児童の書 字姿勢等のデータ収集には、兵庫県上郡町立赤松小学校 の多大な御協力をいただいた。御支援・御協力に感謝す る次第である。. -110-.
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