平成2年度山梨県職員肺がん検診実施状況
山梨県総務部福利厚生室三神栄 伊藤幸恵
山田和美 大柴豊子 辻守昭 〈要約〉 平成元年度に引き続き実施した2年度山梨県職員の肺がん検診につき 報告した。検診の方法は元年度と同様でレ線検診と喀疾検診よりなり、職場検診 の間接写真を利用したレ線検診の総受診者は4346人で、要精密検診者は18 人、0.4%だった。40歳以上のハイリスクグループと希望者を対象にした喀 疾検診の総受診者は605人で、要精密検診者は9人、1.5%だった。肺がん は2年度も発見されなっかたが転移性肺腫瘍1人、治療を要する結核以外の炎症 性疾患1人が発見された。また、検診以外で胸部疾患が4人発見された。今後増 加が予想される肺がんにたいして喫煙対策を含め有効な肺がん検診体制を作るた めの問題点と課題を明らかにするため報告した。 〈はじめに〉 山梨県庁の福利厚生室は職員の福利厚生事業を実施しているが、その健康管理担当では 県職員のうち知事部局及び企業局職員の健康管理を担当している。職員数は4697人で、 男性は73.5%を占め、職員全体の51.9%が40才以上である。県職員のがん検診 としては、昭和63年度までは胃癌検診のみ実施していたが、過去10年間で肺癌の死亡 者が7人いたことを重要視し、元年度から肺がん検診を実施した。その内容については、 昨年第1報を行ったが、2年度も検診を行ったので、元年度の検診結果と比較しながら、、 その結果を報告し、今後の課題を明らかにしたいと思い報告する。 〈検診の目的〉 成人病検診の一環として肺がん検診を実施し、肺がんの早期発見、早期治療により職員 の健康増進を図ることを目的にした。 〈対象者と方法〉 問診は40才以上の全職員に行った。レントゲン検診は全職員が対象であり、喀疾検診 は40才以上の職員で問診によりハイリスクとされた者で検診を希望した職員とハイリス ク以外の希望者を対象とした。 問診は定期健診の問診表とは別に肺疾患問診表をあらかじめ配布して、保健婦が個別に 面接して行った。 レ線検診は定期健診で撮影された間接フイルムを使った。医師2人によるダブルチェッ ク(二重読影)と過去の撮影フイルムによる比較読影を行った。喀疾検診は説明書ととも 一53一に容器を配布し、3日間の蓄疾法で行った。 〈レ線検診の結果〉
総受診者数は元年度3969人だったが、2年度は4346人に増加した。受診率は
90%で元年度と変わっていないが、対象者に臨時及び非常勤、その他の職員を含んでい るので・多絃っている.二重読影の陽性者は元年度564人だった。2年度467人で、 率では2年度10.7%で低くなった。比較読影では、2年度陽性者は18人、陽性率0.41%で、元年度より0.93%低
くなっている。2年目となり、低率になっている。(表一1) 〈レ線検診の精検状況〉比較読影で要請になった18人が要精検者であるが、男性66.7%、女性33.3%
で、元年度より男性の占める割合が7%低くなっている。 次に、精検受診率をみると、20代の男性と女性、40代の男性、50代の男性の4人 が未受診であったため77.8%と、元年度より低くなっている。精密検診結果通知書に より受診を確認し、未受診者には必ず受診推奨を行うが20代の男性については、中途退 職をしてしまい、受診推奨をすることができなかった。(表一2) 精検結果では、元年度は肺がんは発見されませんでしたが、2年度も、肺がんは発見さ れませんでした。しかし、転移性肺腫瘍が1人いた。原発は鼻腔で、肝臓にもメタがあり 通院治療中だった。結核の1人は陳旧性肺結核だった。非結核の炎症性疾患は非定型抗酸 菌症で、7ケ月間治療し、現在経過観察中である。その他の1人は気管支拡張症で、経過 観察とされた。異常のない者が10人だった。 (表一3) <喀疾検診の結果>2年度の検診希望者は881人いたが、受診者数は605人で、希望者の68.7%だ
った。これは元年度71.3%より低くなっている。この605人は全職員の13.4%
にあたり、男性が91.4%、女性が8.6%で、元年度と大差なかった。年代別の受診者数でみると、50代では元年度と比較すると率で13.2%減少し、40代では4.8
%減少している。反対に40才以下では、18.6%上昇している。 検診の結果をみると、2年度にもD判定・E判定の者はなく異型細胞が認めちれたC判 定が9人いた。元年度のC判定は8人だった。2年度の要再検率は1.5%だった。検体 不良のA判定は10人で率は1.7%で、元年度0.3%より高くなっている。 (表一4) 〈要再検者の受診状況> C判定の9人に要再検として医療機関へ時期を区切って受診するよう勧めた。9人のう ち7人は受診し、2人は未受診だった。受診結果は、7人全員が異常なしだった。 再再検査の状況はく表一一 5)のとおりである。なお、2年度は血疾が出る人はいなかっ た。 −54一〈喀疾検診受診者の喫煙状況〉 喫煙者が受診者の73.9%で元年度は74.1%だったので、ほぼ横ばいだった。
喫煙指数(CI)を600以上と600以下で受診者数を比較してみると、元年度はCI
600以上の喫煙者の受診率が高かったが、2年度は600以下の方が受診率が56.1
%と高かった。(表一6) <喀疾検診を希望して未受診だった者の状況> 2年度、276人が疾がとれなかったが、元年度と比較すると率で2.6%多かった。 男女別に比較してみると男性の喫煙者に多かった。CI600以上の未受診者が83人と 元年度より多かった。(表一7) 〈喀疾検診を希望しない職員の喫煙指数〉 喫煙者の全員が検診を受診することが望ましいが、1074人が未受診だった。 男女別では、圧倒的に男性が多くなっていますが、喫煙者に対する割合では女性が高く なっています。とくにCI600以上をみると、207人が検診を希望しなかった。 (表一8) 〈喀疾検診で元年度C判定の者のうち2年度の受診状況〉 元年度C判定が8人いましたが、2年度受診者は3人で全員異常がなかった。未受診者 が5人いた。なお、元年度再検未受診だった1人は2年度受診し、異常なしでした。 (表一9) 〈平成2年度の喫煙状況〉 定期検診の問診から集計した数字であるが、全体では36,2%だった。年度毎、比較 すると、ほぼ横ばいであったが、元年度が37.6%であったので、1.4%低くなった。 年代別に喫煙率を見ると、20代は低く、40代が41.1%で平均を上回っている元年度40代の喫煙率は42.2%であった。また、2年度の1日の吸う本数では21本以上
が、529人でそのうち41本以上が42人だった。元年度では21本以上が638人で、
そのうちの41本以上が48人であった。(表一10) 〈検診以外で発見された胸部疾患〉 結核性胸膜炎が2人、いずれも20歳代の女性でした。胸膜炎は50歳代の男性ですが、 肺結核につきましては、他の疾病で入院中に発見された者で、40歳代の男性だった。 (表一11) 〈考察〉 元年度に引き続き、肺がん検診を実施したが、レ線検診では転移性肺腫瘍、非定型抗酸 菌症が発見された。転移性肺腫瘍の人は、精検から6ケ月後死亡した。非定型抗菌症が発 見された人は治療を終了し、経過観察となっている。 喀疾検診では、9人が要検診と判定され、7人が再検査を受けた。検診の成果としてこ れらがあげられるが、一方、検診以外で胸部疾患が4人発見され、検診ではいずれも発見 困難な事例であり、検診の限界と考えている。また、電算による集計により、喫煙指数6 −55一00以上のハイリスクグループで、喀疾検診未受診者が207人いることがわかった。 元年度の検診結果と比較した中では、レ線検診の精検率が低下したこと。喀疾検診につ いては喫煙指数600以上で50歳代の男性のハイリスクグループの受診が低くなった。 喀疾検診で希望しても疾のとれない人が依然として276人もいること。また、提出した 検体の中に検体不良が10人いたことがあげちれる。これらのことについては、昨年対策 として上げた吸入器は、3年度購入したので、3年度の結果を期待したい。レ線検診の受 診率については、90%台にとどまっているが、今年度、各職場の健康管理リーダーを対 象に研修会を開催し、検診のシステムを説明し、継続して受診することの利点を職員全員 が理解してくれるよう職場ぐるみの働きかけをしたところである。喀疾検診で前年度D判 定だった人に対し、翌年度は必ず受診するよう働きかけていきたい。 〈結語〉 この検診を2年間実施し、検討することにより、問題点が浮き彫りにされた。肺がんの 一・泓¥防としての禁煙対策や肺がんの理解についてさちにきめ細かい健康教育の必要性を 痛感した。これら対策を講じつつ肺がん検診を継続することにより、喫煙率がさらに低下 することを期待している。 最後になりましたが、フィルムの読影をしてくださる肺癌部会の先生方、検診を実施し ていただいてます山梨県健康管理事業団に感謝いたします。 (表一1) レ線検診の結果 元年度 2年度 総受診者数 3969人 4346人 二重読影 陽性者 z性率 P4.2%564人 i564/3969) 467人 P0.7% i467/4346) 比較読影 陽性者 z性率 53人P.34% i53/3969) 18人 O.41% i18/4346) (表一2) レ線検診の精検状況 要精検数(人) 精検受診率(%) 男 女 計 男 女 計 才 Q0∼29 元年度 Q年度 11 42 53 100
@0
75.0 T0.0 80.0 R3.3 30∼39 元年度 Q年度 71 30 10 P 100 P00 100 100 P00 40∼49 元年度 Q年度 12 S 31 15 T 100 V5.0 100 P00 100 W0.0 50∼59 元年度 Q年度 19 U 43 23 X 94.7 U6.7 100 P00 95.7 V7.8 計 元年度 Q年度 39 P2 14 U 53 P8 97.4 V5.0 92.9 W3.3 96.2 V7.8 一56一(表一3) 精検結果の内訳 人 数 所 見 元年度 2年度 2年度内容 肺がん ]移性肺腫瘍
糾j
結核の炎症性疾患 z環器疾患 サの他 ル常なし 原発鼻腔癌 ツ旧性肺結核 定型抗酸菌症 C管支拡張症 計51114
(表一4) 喀疾検査の結果 受診者数 結 果 男 女 計AlBlC}D E
才 S0歳以下 元年度 Q年度 27 P30 08 27 P38 2 27 P35 1 40∼49 元年度 Q年度 306 Q59 28 Q5 334 Q84 24 328 Q73 47 50∼59 元年度 Q年度 252 P64 29 P9 281 P83 4 277 P78 41 60歳以上 元年度 Q年度 40 00 40 4 計 元年度 Q年度 589 T53 57 T2 646 U051;旙
89 00 00 % 元年度 Q年度 91.2 Xt4 8.8 A8.6 100 P00 1:引ll::[:1 (表一5) 要再検者の状況 性別 喫煙指数 人数 結 果 司女・1欝閑鷲腱
血疾有 元年度 7 異常なし7人 5 2 2 0 1 2 2 1 受 診 2年度 7 異常なし7人 7 0 2 2 1 0 2 0 元年度 1 1 0 11 0 未受診 2年度 2 2 0 11 1 0 一57一(表一6) 喀疾検診受診者の喫煙状況 〆 (元年度) 喫 煙 喫煙指数 非 喫 煙 受診者数 男 女 計 課畿』1盟』隈 男}女 計 40才以下 27
2610
261218 5い
1 0 1 40∼49 33424011
2415577151158
66127 93 50∼59 28120711
208 34 33 84 57 4引 28 , 73 60才以上 44}0
41い}012
olo
0 計 64647712
479 10小1gi140 弓 118 112 55 167 % 100 74.1 1 25.9 (2年度) 喫 煙 喫煙指数 非 喫煙 受診者数 男1女 計 400び撰』漂』1鍵 男1女 計 40才以下 138 1071 0 107 77i 16巨2122318
31 40∼49 284 20釧 1 210 51 62}47}50 50124 74 50∼59 18212712
129 202414144 36h7
5360才以上 1 ∋ o 1
o巨1010
olo
0計 605
44413
447 148μ031100196 10gl 49 158 % 100 73.9 l I i 1 26.1 (表一7) 喀疾検診を希望して未受診だった者の状況 喫煙指数 非喫煙 喫煙伽⇒霊ド劃・。・肚
計 元年度 48 164 31 55 44 34 212 男 2年度 46 192 55 54 42 41 238 元年度 46 2 2 0・1・
48 女 2年度3117
6 1 t 0 0 38 元年度 33 55∋34
i100%)260 計 2年度晶,ぱ,
61 55P
42 P41 276 i100%) (表一8) 喀疾検診を希望しなかった喫煙者数 (2年度) 希望しない者喫煙指
数 (喫煙者に対する翻合) 400未満 400∼599 600∼799 800以上 男 532(76.3) 445 59 21 7 40歳以下 女 39(90.7) 39 0 0 0 計 571(77.2) 484 59 21 7 男 316(50.7) 123 108 43 42 40∼49 女 10(76.9) 9 1 0 0 計 326(51.3) 132 109 43 42 男 173(51.5) 43 36 54 40 50∼59 女 2(40.O) 2 0 0 0 計 175(51.3) 45 36 54 40 男 2(66.7) 1 1 0 0 60歳以上 女 0 (0) 0 0 0 0 計 2(66.7) 1 1 0 0 男 1023(61.7) 612 204 118 89 計 女 51(83.6) 50 1 0 0 計 1074(62.4) 662 205 118 89 一58一(表一一 9) 喀疾検診で元年度C判定の者のうち 2年度の受診状況 元年度C判定 8人 2年度受診 3人(異常なし) 未受診 5人 (表一10)